1. HOME
  2. ブログ
  3. ニューズレター
  4. NL37巻2号 [2026.08]
  5. 『アグロエコロジーと食農システム』研究部会活動報告(2026年7月)
WHAT'S NEW

Recent Updates

NL37巻2号 [2026.08]

『アグロエコロジーと食農システム』研究部会活動報告(2026年7月)

アグロエコロジーと食農システム

Transformation of Agrifood Systems by Agroecology
  • 代表者:池上甲一(近畿大学名誉教授)
  • 副代表:牧田りえ(学習院大学)

本研究部会は、「倫理的食農システムと農村発展」研究部会(2021年~2024年度)を母体として、2025年度に「アグロエコロジーと食農システム」へと発展的に継承した。目的は、アグロエコロジーによる食農システムの変革に向けた課題と方向性を探求することである。この目的に向けて、2025年10月以降26年7月末までに4回の研究会を開催した。また前身の研究部会および本研究部会の活動成果として、2026年7月に明石書店から『サステナブル市場とフェアトレードの転換』を刊行することができた。

本年度第1回目の研究会は、2026年2月21日(土)にオンラインで開催した。報告者はフェリス女学院大学(日本学術振興会RPD)の飯田悠哉さん、テーマは「フードシステムに従事するマイノリティの健康被害はいかに再⽣産されるか ~園芸農業における外国⼈労働者を中⼼に~」。参加者は14名だった。外国人排斥がひとつのうねりを形成する一方で、日本農業は外国人労働者抜きには成立し得ないという実情がある。園芸農業において、不安定な地位ゆえに生じる健康被害とその再生産というリアリティが報告され、フードシステム全体を通じた研究の必要性が示唆された。

第2回目の研究会は、3月26日(木)にオンラインで開催した。報告者は静岡文化芸術大学文化政策学部・准教授の武田 淳さん、テーマは「コーヒーと気候変動―『コーヒー2050年問題』とフェアトレードの環境化をめぐって」。参加者は21名だった。Christian Bunらの論文によって一躍注目を集めることになった「コーヒー2050年問題」に対してフェアトレード生産者団体は「環境化」と呼ぶべき戦略で生き残りを計っている。その意義と課題について議論が行われた。

第3回目の研究会は、6月6日(土)にオンラインで開催した。報告者は、早稲田大学文学学術院・教授の箕曲在弘さん、テーマは「ラオスのコーヒー産地におけるフェアトレードの現状―『フェアトレードの人類学』以降の農家の生活と協同組合」。参加者は19名だった。長年の調査地であるラオス南部のボラベン高原のコーヒー豆栽培とフェアトレード(民衆交易)との関連について報告された。季節ごとの農家手持ち現金の量的変化とレジリエンスという興味深い論点も浮かび上がった。

第4回目の研究会は、7月20日(月・祝)にオンラインで開催した。この回は、8月末に予定している長野県飯田市・松川町でのフィールドツアーの事前学習を兼ねるため、本部会代表の池上甲一と飯田市の自然栽培農家の寅本芳郎さんの2本立て報告とした。出席者は19名。全体テーマは「環境文化都市・飯田市の魅力と地域形成の方向」。最初に、池上が「 飯田市の農業と農業政策」というタイトルでなぜ飯田市なのかを説明した。続いて、「くわのみ農園」を営む新規就農者の寅本さんが「小規模農家が取り組む自然栽培の可能性」を報告した。自然栽培というなじみの薄い「農」のあり方、有機農業者の緩やかなネットワーク組織「みなみ信州ゆうき人」などをめぐって活発な議論が行われた。

8月末には上記の通り、長野県飯田市・松川町においてフィールドツアーを予定している。目下、9名の参加申し込みがある。両市町は有機農業とオーガニック給食を中心に、独自の地域形成に踏み出している。また飯田市は地域循環都市を市の目標に定めており、再生可能エネルギーへの取り組みが早くから注目されてきた。こうした施策と実践を通じて、アグロエコロジーと食農システムの変革に迫ることができると確信している。

なお、冒頭で述べたように、これまでの研究成果を単行本として取りまとめ、刊行にこぎつけた。編著者は賛同者の畑山要介さんと池上、執筆者は副代表の牧田りえさんほか5名であり、大半の執筆者が前身の「倫理的食農システムと農村発展」研究部会または現在の「アグロエコロジーと食農システム」研究部会の関係者である。少し時間がかかったが、研究部会の設置を認めていただいた国際開発学会のおかげである。記して感謝したい。


『アグロエコロジーと食農システム』研究部会
池上甲一(近畿大学名誉教授)

関連記事