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NL37巻2号 [2026.08]

第27回春季大会報告:ラウンドテーブル–B

B2:青年海外協力隊は何をもたらしたか、そしてどこへ行くのか

  • 開催日時:6月27日 11:15 - 13:15
  • 聴講人数:約30名
  • 座長・企画責任者:岡部恭宜(東北大学)
  • コメンテーター・討論者:三次啓都(北海道大学)

【第一発表】協力隊の3つの成果(①開発協力、②人材育成・人間的成長、③日本への社会貢献・還元)

発表者

  • 岡部恭宜(東北大学)、関根久雄(筑波大学)、大貫真友子(早稲田大学)

コメント・応答など

討論者の三次は、JICA青年海外協力隊事務局での経験から次のコメントを行った。開発協力は従来JICAや外務省等により制度的な担保がある一方で、人材育成や日本への社会貢献については、明示的ではなく、近年になって取り組みが進められてきた。今後は、募集、訓練、派遣、進路相談といったリニアーな形の制度を、帰国後の活動を含め、それがさらに次の募集や派遣に繋がるような、サーキュラーなものにしていくべきではないだろうか。また、そのような展開をするにあたっては、様々な隊員の活動に関するナラティブを積み上げることで、事業全体への信頼を得ることが重要である。「協力隊らしさ」については、昔は「奥地前進主義」というものがあったが、現在、それに代わるアイデンティティーとは何だろうか。機構法では、国民参加型事業として協力隊事業を規定しているが、国民参加という言葉にはフィロソフィーは感じられない。その辺りを含め、事業を見つめてみてはどうか。

【第二発表】登壇者(発表者と討論者)による議論

発表者

  • 岡部、関根、大貫、三次

コメント・応答など

岡部より、協力隊事業の正当性について、歴史的に協力隊は①開発協力を公式に掲げながらも②人材育成が重視されてきたが、最近では②よりも③社会還元が前面に出てきたことを指摘、事業の正当性をどこに置くべきか問いかけた。また、国家(日本政府)が国際ボランティア事業を行っていることや日本ブランドの意義についても意見を求めた。

関根より、まず①があり、それに②や③が付随してくるという理解であること、何より協力隊の強調されるべき点は「現地住民との一体化」という理念であり、これがなければ「協力隊らしさ」を失うことが示された。また、②については、個人の内面的変化としてだけでなく、赴任した後に感じる「落胆」、規範としての「隊員らしさ」、そして「協力隊的互酬感」という3つの契機を通じて生起する過程として捉える必要があることが指摘された。

大貫よりは、①②③が混在していることは、様々な隊員や日本社会の要請に応える意味では合理性があるとの指摘があった。

【第三発表】参加者との質疑応答

発表者

  • 岡部、関根、大貫、三次

コメント・応答など

参加者からの質問やコメントは次の通り。

  • 協力隊でないとできないことは開発協力である。企業とは違ってお金のためにやっているわけではない。存在意義はそこにある。
  • 人材育成があって社会貢献・還元があると考える。意義のある事業であり、最近減少している応募者が増えるような提案を求めたい。
  • 教育分野の協力隊について研究しているが、元隊員が学校の校長になったり、教育現場で活躍したりしており、彼らから見て日本の教育がどう見えるのか、関心がある。そのような隊員のライフストーリー研究も面白いと思うが、そのような研究はあるだろうか。(関根より、人類学の視点からもエスノグラフィという方法がある旨回答。岡部より、神奈川県で元隊員の小学校校長が外国人児童の問題に積極的に取り組んでいるという話を聞いたことがある旨コメント。大貫より、教育分野において隊員活動をどのように捉え、どのように社会還元したと自覚しているかについて質的に調査した研究について紹介した。)
  • 日本で働く技能実習生の研究をしている。どんなときに②や③の効果が出ると考えるか。(関根より、やはり現地にどっぷり浸かることで、効果が出るのではないかと回答。)
  • 地域活動に従事する元隊員は「現地の体験のおかげで日本が客観的に見える」と言っている。これはどっぷり現地に浸かったからこその意見であり、隊員経験は意義がある。
  • 現地との一体化は、昔はともかく今は難しい。例えば協力隊事務局はエチオピアの治安を気にしすぎで、隊員活動を制約している。それ以前の隊員は少々危ないところも派遣されていた。事務局には良く考えてほしい。(岡部より、事務局は隊員の声に対応すべきことは言うまでもないが、その一方で、別の次元の関係者、例えば外務省や政治家の声にも対応する必要があるので、見方によってはそれが不充分な対応に見えることがあるかもしれないと回答。)

総括

本ラウンドテーブルは、協力隊の3つの成果について先行研究を振り返り、それを踏まえて、今後の事業のあり方を研究、実務両面で考えていこうという企画であった。ラウンドテーブルらしく、来場者から多くの質問やコメントが出され、終了後も続いたほど盛況であった。また、世代間バランスも良く、1970年代に隊員であった方から協力隊に関心を持つ大学院生まで、多様な来場者に恵まれた。

他方、ラウンドテーブル自体の構成上の問題のせいかもしれないが、事業のあり方に関するコメントが多く、研究に関する質問は相対的に少なかったのが、バランスを少々欠いていたかもしれない。しかし、協力隊に関心を持つ会員が数多くいることが確認でき、我々の今後の研究にとって大変参考になると同時に、刺激となる機会であった。

報告者(所属):岡部恭宜(東北大学)


「第27回春季大会」報告ページ

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