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NL36巻1号 [2025.02]

『グローバル化の中の足尾銅山開発の光と影』研究部会(2025年2月)

『グローバル化の中の足尾銅山開発の光と影』

The Light and Shadow of the Development of the Ashio Copper Mine in the Midst of Globalization

申請代表者氏名

  • 重田康博

研究部会の目的と期待される成果

明治期より企業城下町を形成した足尾銅山には、開発の経過における経済成長という「光」と公害や労働問題等の「影」を持つ歴史がある。そしてその「影」を救済するためには、「国家、市場、市民社会による公共圏」(重田、2017)を形成することが重要であるとする。しかし、足尾銅山を擁する足尾町での「光と影」の継承においては「影」よりも「光」に偏りがある状況が、第25回国際開発学会春季大会(2024年6月15日、於:宇都宮大学)の企画セッションで明らかにされた。

多くの「影」の被害者となったのは住民であり、国や企業に被害の救済を求めてきた。それにもかかわらず、足尾町ではなぜ「影」よりも「光」に偏って歴史が継承されようとしているのか。本研究では、第25回国際開発学会春季大会の企画セッション・エクスカーションを受けて、グローバル化に直面する足尾銅山開発に注目し、市民社会としての住民団体の活動目的やその内容を把握し、企業や行政との関係性も考慮しながら「光」と「影」との向き合い方を整理し、行政、企業、住民団体の「光」と「影」への向き合い方から、足尾および渡良瀬川周辺地域における公共圏の形成の特異性を明らかにすることを目的とする。

この成果は、第1に、日本の開発の原点であるグローバル化の中の足尾銅山開発の光と影を再考すること、第2に、海外の鉱山開発の現状と環境社会配慮や市民社会の活動にも応用して考察することが可能である。

2025年度(2024年10月~2025年9月)の活動計画

足尾町の「光と影」―足尾歴史館から足尾銅山記念館への変遷から―

2026年5月に古河が足尾銅山記念館を開館するにあたり、これまでの歴史館が閉鎖される。住民が立ち上げたNPO法人によって運営されていた歴史館が、企業の組織へと収斂されていくその変遷を把握し、足尾町において「光」と「影」がいかに残されていくかを考察する。

  • 2024年10月:古河足尾歴史館の調査と長井館長へのインタビュー(匂坂)
  • 2025年7月頃:新しく建設された足尾銅山記念館の見学(全員)
  • 2025年9月頃:勉強会の開催、見学会のまとめと小松裕先生の文献読書会(全員)

2026年度(2025年10月~2026年9月)の活動計画

今も継続している渡良瀬川下流域の鉱毒問題 いまだ渡良瀬川下流域では鉱毒問題が継続している。その一つが、渡良瀬川鉱毒根絶太田期成同盟会であり古河との交渉を継続している。この団体を中心に、現在の鉱毒問題、古河との交渉内容について把握し、現在の「影」の実態を考察する。

  • 2025年10月:渡良瀬川鉱毒根絶太田期成同盟会の活動にかんする勉強会(全員)
  • 2026年4月:関連施設の見学と勉強会(全員)
  • 2026年9月:海外の文献についての読書会(全員)

2027年度(2026年10月~2027年9月)の活動計画

世界へ広げる足尾銅山鉱毒問題  鉱毒問題の世界の現状や環境社会配慮を把握しつつ、足尾銅山鉱毒問題を世界に広げていく。

2026年10月~2027年3月:国内の関係機関・団体への調査(例、JICA、エネルギー・金属鉱物資源機構)などインタビュー調査とそのまとめ 2027年5月:シンポジウム(海外研究者の講演会)

成果の公表予定

  • 2027年9月:報告書作成
  • 2027年5月~7月:シンポジウム(海外研究者の講演会)、または国際開発学会企画セッションでの発表

合理的配慮

本研究部会では、性別、国籍、ライフステージ、障害など多様な背景の会員の参加と活動に配慮するように対応します。


『グローバル化の中の足尾銅山開発の光と影』研究部会
重田康博

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