1. HOME
  2. ブログ
  3. ニューズレター
  4. NL37巻1号 [2026.02]
  5. 第36回・全国大会セッション報告:ブックトーク
WHAT'S NEW

Recent Updates

NL37巻1号 [2026.02]

第36回・全国大会セッション報告:ブックトーク

ブックトーク

  • 開催日時:2025年11月29日 9:30 - 11:30
  • 聴講人数:30名
  • 座長・企画責任者:佐藤 寛(開発社会学舎)、島田 剛(明治大学)、汪 牧耘(東京大学)、道中 真紀(日本評論社)

コメンテーター・討論者 報告者(著者)[第一発表]佐藤仁(東京大学)、[第二発表]岡野内正(法政大学)、[第三発表]絵所秀紀(法政大学)

第1発表

友松夕香/著『グローバル格差を生きる人びと:「国際協力」のディストピア』岩波書店、新書、238頁、税込1,034円、2025年6月20日発行

発表者/報告者(著者・編集者)

  • 友松夕香(法政大学)
  • 石橋聖名(岩波書店)

コメント・応答

著者の友松会員の報告では、「鈍器本」ではなく学生が通読しうる本を目指して新書を企画したというエピソードにはじまり、専門的な議論を前面に出さず現地の人びとの日常や声を取り入れ物語性を重視した構成としたこと、日本の対アフリカ外交への注目が高まるTICAD9の直前に刊行したことなどの工夫が紹介された。いまや国際協力は出版社に「おもしろくない」と言われてしまうテーマになったが、政治性や不平等の構造的課題、現在の価値観の多様化・複雑化を内包しており、学術的に興味深い分野であるはずという見解も示された。担当編集の石橋氏からは、書名が当初案から変化した過程や、著者の精力的な改稿により草稿通読中に次の草稿が届き苦労したといったエピソードが紹介された。佐藤仁会員からのコメントでは、これまで開発論が受け流してきた人種、感情、詐欺・陰謀に光を当てた点が本書の面白さとして挙げられ、「格差」における問題は何かという問題提起や、本書の政策的インプリケーションに関する質問などがなされた。

第2発表

● 佐藤寛・馬場多聞/編著『イエメンを知るための63章』明石書店、四六判、384頁、税込2,200円、2025年6月30日発行

発表者/報告者(著者・編集者)

  • 佐藤寛(開発社会学舎)
  • 長島遥(明石書店)

コメント・応答

編著者の佐藤寛会員からは、内戦状態にある国に関する書籍を執筆する難しさとして、状況が落ち着くまで待つかの判断、「紛争下」の現状と「本来の平和な」姿のバランスなどが挙げられた。イエメンへの無関心は、現状の肯定や放置の容認につながりうるが、無関心なのは「知らない」からであり、一人でも多くの日本人にその国を「知ってもらう」ことが地域研究者の責務という思いも語られた。担当編集の長島氏からは、現在約220巻が刊行されているエリア・スタディーズシリーズの「旅行ガイド以上・専門書未満の入門書であり、地域礼賛でも『中立』でもない立場から、専門家の『見方』を提示する」というコンセプトや、本書の編集においては変動の大きい国ゆえの重みと難しさがあったことなどが説明された。岡野内会員によるコメントでは、世界を変えるためには政治システムだけではなく、日々の暮らしのなかで人々、とくに女性がパワーを持っていくことが重要であり、それがイエメンでできるか?という問題提起がなされた。

第3発表

アルバート・O・ハーシュマン/著、佐藤仁・杉浦菜月/訳『開発プロジェクトとは何か:不確実性のデザイン』(原題:Development Projects Observed, 1967)、みすず書房、四六判、256頁、税込4,290円、2025年12月1日発行

発表者/報告者(著者・編集者)

  • 佐藤仁(東京大学)
  • 杉浦菜月(三菱総合研究所)
  • 中林久志(みすず書房)

コメント・応答

訳者の佐藤仁会員・杉浦会員の報告では、原著と原著者の開発研究における位置づけが丁寧に紹介され、約60年前の原著を訳した理由として、開発研究が社会科学へ進化〈深化〉したメカニズムを知るうえで貴重な書であることに加え、邦訳初版(1973年)が現在では入手しづらく誤訳もあること、原著を乗り越えるために翻訳という作業で「模写」することの意義が挙げられた。原著の文脈や事例が1960年代のものであるため、当時の経済学の教科書などを徹底検索して訳注を充実させた苦労なども紹介された。担当編集の中林氏からは、新訳本は企画が通りにくいため、本書が一般的なビジネスパーソンにも有用だと社内会議でアピールしたエピソードが語られた。絵所会員のコメントでは、本書を含む原著者の初期の「開発」三部作のエッセンスが端的に解説されるとともに、「開発プロジェクトのリスクを過小評価させる動機は何か」という原著者への問いかけや、「訳者(佐藤会員)の発想は原著者に似ているところがある」というユニークな指摘もなされた。

総括

今回も著者と担当編集者のみなさまに、書籍の企画から刊行に至るまでの詳細な過程や、執筆のモチベーション、苦労や工夫の数々を語っていただき、共感・驚き・笑い・知的刺激にあふれた充実したセッションとなった。広い視点から書籍の意義を捉え、書籍への理解を深めるような素晴らしいコメントをくださった討論者のみなさま、活発な質疑応答でセッションを盛り上げてくださった参加者のみなさまにも、深く感謝申し上げたい。

報告者:道中 真紀(日本評論社)

「第36回全国大会」大会報告ページ

  1. 第36回・全国大会セッション報告:一般口頭発表・G,H
  2. 第36回・全国大会セッション報告:一般口頭発表・I
  3. 第36回・全国大会セッション報告:一般口頭発表・J
  4. 第36回・全国大会セッション報告:一般口頭発表・K
  5. 第36回・全国大会セッション報告:一般口頭発表・L
  6. 第36回・全国大会セッション報告:一般口頭発表・M
  7. 第36回・全国大会セッション報告:企画セッション
  8. 第36回全国大会セッション報告:ラウンドテーブル(A,
    B, C)
  9. 第36回全国大会セッション報告:ラウンドテーブル(D,
    E)
  10. 第36回全国大会セッション報告:ラウンドテーブル(F,
    G, H)
  11. 第36回・全国大会セッション報告:ブックトーク
  12. 第36回・全国大会セッション報告:ポスターセッション

関連記事

インタビュー