新刊案内:ハーシュマンの名著新訳!
会員の佐藤仁です。
欧米の開発系大学院で広く読み継がれてきた不朽の名著アルバート・ハーシュマンのDevelopment Projects Observed をこのたび『開発プロジェクトとは何かー不確実性のデザイン』(みすず書房)として新訳出版いたしました。60年近く前に出されたこの本をなぜ今出すのか。この点については今月の広島での開発学会で熱く語ります。また、開発学会では、昼休みと午後の第一セッションの直後に、書籍コーナーにて訳者による2割引き即売会を実施します(ご希望の方にはサインもいたします!)。
みなさん、この古くて新しい、そして何よりも驚きに満ちた本をぜひ手にとってみてください。下記に目次と、関係者による賛辞と本文のしびれる箇所を添付します。
「ハーシュマンは驚きと意外性とパラドックスを愛した。彼は人間の欠点を嬉しがり、そしてそれ以上に、人間の創造性を讃えた」
キャス・サンスティーン(ハーバード大学ロースクール教授)
「20世紀のもっとも桁外れの知性のひとりだ」
マルコム・グラッドウェル(『ティッピング・ポイント』)
以下は本文より。
「創造力はいつも不意に現れる…だからこそ人は、あらかじめ創造力を当てにすることは決してないし、実際に発揮されるまでその存在を信じようともしない…人が新しい仕事に飛び込んでいくのは、困難を受けて立とうとするからではなく、逆にその仕事が簡単で対処しやすく見える、つまり困難がないと誤解するからである」
「戦争に向かっていった出来事を振り返るとき、歴史家が〈過ちに手を染めてしまったのは、「つまずいてしまった」からだ〉という見方を示してくれると、私たちはほっとする。だが反対に経済的・社会的・政治的進歩といった高邁な成果については、決して「つまずきの結果」であったとは認めようとしない。人は「うっかり間違いを犯す」とは言っても「うっかり真理に達する」とは言わない」
「以上の経済学的議論は、キリスト教で顕著に見られる選好――高潔な人格者よりも懺悔する罪人を尊しとする考え方――に驚くほど類似している。ニーチェの箴言「私を破壊し尽くさないものが、私を強くする」は、本書で取り上げた開発プロジェクトの歴史を見事に要約している」
目次
新版(1994年)へのはしがき――密かな野心
序文 カーミット・ゴードン
著者による謝辞
序章
第一章 「目隠しの手」の原理
第二章 不確実性
様々な不確実性
供給面の不確実性――技術
供給側の不確実性――組織運営
供給面の不確実性――資金
超過需要
需要不足
余談――研究・開発(R&D)戦略
不確実性の緩和
第三章 許容性と規律
空間的許容性/場所的許容性
建設プロジェクトにおける時間的規律
建設から操業に至るまでの時間的規律
汚職への許容性
質を量で代替することへの許容性
政府支出を民間支出で代替する許容性
第四章 プロジェクトの設計(デザイン)──特性受容と特性形成
設計のジレンマ
暗黙の特性形成――ナイジェリアでの失敗
誘発される特性形成
混合体(ハイブリッド)としての独立機関
第五章 プロジェクトの評価──副次効果の重要性
必須要件としての副次効果
純粋な副次効果、混合的な副次効果
副次効果を通じて密かにもたらされる変化
費用便益分析と副次効果に対する反論
批判への反論
プロジェクト計画における謙虚さと野心
異端が開く可能性──訳者あとがきに代えて 佐藤仁
索引
原注
お問い合わせ先:佐藤仁 satoj[at]ioc.u-tokyo.ac.jp
(* [at] の部分を@に修正してご使用ください)
