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NL34巻4号 [2023.11]

第3回「国際開発論文コンテスト」受賞者のことば(2023年11月)

人材育成委員会

学部論文を対象とした第3回国際開発論文コンテストで優秀論文賞を受賞した方々の「受賞の言葉」です。

これまでは学会の大会でビデオメッセージを流していましたが、2023年春季大会は時間の関係で受賞者の紹介しかできませんでしたので、ニューズレターを通じて、皆さんの声をお伝え致します。

なお、所属は応募時(2023年3月時点)のものです。  

国際開発学会では2024年も学部生対象の国際開発論文コンテストを実施致します。詳しくは学会ホームページをご覧下さい。

意欲的な学生からの多くの応募をお待ちしております。

中西勇太(釧路公立大学)

「カンボジア農家の作物栽培と食料消費の実態―CSES2014を用いた計量経済分析―」

この度は、第3回国際開発論文コンテストにおいて優秀論文賞を頂き、大変光栄です。 研究当初はデータの整理や回帰分析に苦労し、執筆時もなかなか論理性を持った文章を書くことができませんでしたが、三輪加奈先生の丁寧で熱心なご指導のおかげで、この賞を受賞することができました。

私は、国際開発という研究分野は非常に重要であり、途上国の開発問題だけでなく、先進国においてもジェンダー問題や貧困格差など研究が必要な課題が山積みだと考えております。

一見、私たち個人が国際開発に対して貢献できることはとても少ないように思えますが、先行研究を読み、自分なりの解釈をし、論文を執筆するということは大きな一歩ではないでしょうか。

そして、学部生は他大学の方に自分の論文を読んでもらう機会があまりない中で、本コンテストに応募して、審査委員の方に読んで頂くのは非常に良い機会だと思います。

私は、受賞論文においてカンボジア農家の作物栽培と食料消費の現状について家計調査データを用いて明らかにしましたが、カンボジアの農業や栄養不足はまだまだ改善の余地があると考えます。

また、研究を進めるにつれ、カンボジアの人々の伝統的な食文化や生活習慣にも興味を持ちました。途上国の暮らしは日本で過ごす私たちからは想像し難いものではありますが、そこから学べることは多いと考えており、今後より一層理解を深めていきたいと考えております。


中本絢子、中泉澄美、棚橋愛梨咲(関西学院大学)

「マダガスカル農民のコメ生産性に男女のネットワークが与える影響~性格特性に着目した2段階推計を用いて~」

この度は、拙著『マダガスカル農民のコメ生産性に男女のネットワークが与える影響–性格特性に着目した2段階推計を用いて–』を第三回国際開発論文コンテストにて、優秀論文賞に選んでいただきまして、心より御礼申し上げます。

本論文は、2022年8月に、マダガスカルにて私達が独自に取得したデータを用い、執筆いたしました。本研究の舞台であるマダガスカルという国は、世界最貧国家のひとつであり、貧困脱却や今後の人口増加に備えるために、国の主要産業である農林水産業の早急な発展が必要だといわれています。

現在のマダガスカルにおいては、伝統的な農法が主流であり、化学肥料等も効果的に使用されていません。そこで、本研究ではマダガスカルの主食であるコメの生産性向上に着目し、ネットワークの構築と、それを促す性格特性についての研究を行いました。

国際開発論文コンテストでは、私たちのような学生が国際開発という観点から、論文執筆を行い、コンテストに出場することで自身の知見を深めるとともに、さらなる国際開発をめぐる研究の発展に貢献できるのではないかと考えます。

本論文の執筆と本コンテストで栄誉ある賞を頂けたことが、今後のマダガスカルにおいて、より良い政策の実行、また国の発展に貢献できることを心より願っております。私たちも、この度の経験を糧に国際発展という大きな目標に向かい日々精進してまいります。今後ともどうぞよろしくお願い致します。


任百香、石橋由唯、塚本真世(関西学院大学)

「子どもの認知・非認知能力を促すピア効果の影響~マダガスカル農村で行った介入実証実験をもとに~」

この度は『子どもの認知・非認知能力を促すピア効果の影響〜マダガスカル農村で行った介入実証実験をもとに〜』を2023年度国際開発学会賞という栄誉ある賞をいただき、誠にありがとうございます。

私たちは、最貧国家マダガスカルの農村地域で現地調査を行い研究を行いました。本研究の舞台であるマダガスカルは、世界の中でも特に貧困問題が深刻な国で、経済はもちろん、生活環境や教育環境なども決して良いとは言えません。

特に農村部の教育に注目して研究しました。マダガスカル農村では、学校に通えない子どもがいることはもちろん、教育免許を持っていない村人も教えていること、教科書が教室に数冊しかなく勉強道具も十分でないこと、十分な授業が提供されていないことなどの問題があり、小学校高学年でも四則演算ができない子どもがたくさんいます。

さらにその子どもたちの親世代となると、多くの親が子どもたちより計算問題ができない、字が読めない、字が書けないという現状があり、いかに昔から教育が不十分だったかがうかがえます。

そのような農村の教育の現状の中で、教育レベルを向上させるために「ピア効果」に着目して大規模な実証実験を行いました。ピア効果とはある個人が周囲の人々から受ける影響のことを言い、意識や能力の高い集団の中に身を置くことで切磋琢磨しお互いを高め合う効果やその逆もあります。

ピア効果によって、経験の豊富な教師を頼りにせず、しっかりした教科書を用いて子どもたちがグループ学習をすることによって、短期間で大きな学習効果があることを立証することができました。

本研究が少しでも途上国開発研究の貢献材料となればと幸いに存じます。最後に研究や調査に協力してくださったマダガスカル農村の皆さまに感謝を述べるとともに、皆さまの生活に少しでも貢献できることを願って受賞の言葉と変えさせていただきます。ありがとうございます。


渡辺彩(法政大学)

「ソ連崩壊後のロシアの開発協力―英文学術誌の研究サーベイをもとに―」

この度は優秀賞をいただき、心より感謝申し上げます。本コンテストに応募するということは私にとって「挑戦」でしたので、賞をいただくことができ、大変嬉しく思っております。 本論文は、冷戦後のロシアの開発協力に着目したサーベイ論文です。

冷戦期、東側の旗頭だったソ連を引き継いだロシアは、冷戦終結後、どのような開発協力を行い、新冷戦と呼ばれる状況に至る過程で、どのように変化しているのかという問いを探究しました。

本コンテストは、賞を受賞する機会があるだけではなく、応募者全員が講評をもらうことができます。書いたものを誰かに読んでもらうということは非常に重要だと論文執筆の過程で強く感じました。

なぜなら、執筆者本人では気がつくことができない指摘を得ることができるからです。その過程を踏むことにより、論文をより洗練されたものにすることができます。

講評をもらう機会はさほど多くありません。そのため、応募者全員が講評をもらうことができるというのは、本コンテストの特徴の一つであり、意義なのではないかと思います。

本論文を執筆するにあたり、たくさんの方に支えていただきました。これまでご指導、ご尽力いただきました、先生やゼミ生、関係者の皆様に心より感謝申し上げます。 いただいた講評を踏まえ、賞をいただいたことを励みに、より研究に努めてまいります。この度は誠にありがとうございます。


人材育成委員会
委員長:松本悟(法政大学)

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