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NL37巻1号 [2026.02]

第36回・全国大会セッション報告:一般口頭発表・J

一般口頭発表


[J1] 日本の開発協力政策の検証:評価・制度・民間連携・ジェンダー主流化の視点から

  • 日時:2025年11月29日 09:30 – 11:30
  • 聴講人数:30名
  • 座長:佐藤峰(横浜国立大学)
  • コメンテーター:松本悟(法政大学)、小林誉明(横浜国立大学)

第1発表:政府開発援助の成功要因の検証とリスク予測:事後評価データに基づく実証分析

発表者

  • 伊藤 雄一

コメント・応答など

発表者からは、「生成AiとML(マシーンラーニング)を利用した事業評価の予測モデル」について報告が行われた。それに対して、コメンテーターからは「膨大な作業量に脱帽、公開情報のみでここまでできると示したデザインが秀逸。非常に意欲的で先進的な取り組みである」という高い評価が行われた。その上で「プロジェクトの失敗と成功の基準とは」、「プロジェクトの失敗と開発の失敗とイコールか」「効果の差の変数で説明されていないことは何か」「プロセスや質的テキストの分析をどのように融合できるのか」という質問がなされた。

第2発表:JICA環境社会配慮ガイドライン運用初期段階における審査会答申の評価

発表者

  • 小泉 幸弘 (JICA)
  • 花岡 伸也(東京科学大学)

コメント・応答など

発表者からは「環境社会ガイドライン運用初期の審査会の答申の生成Aiによる分析」について報告があった。コメンテーターからは「JICA環境社会配慮ガイドラインやMDBsのセーフガード政策/ESFの議論は、環境アセスメント学会、計画行政学会等に比して国際開発学会では極めて少ない。第三者で作る審査会の公開資料(答申・議論)分析を研究したことに対して評価したいとの発言があった。その上で、研究の体裁として先行研究レビューの不足(『計画行政』の1回の特集記事のみ)であることや審査会答申だけでなく議事録が混在して分析されていることが指摘された。また実務的には本事例は旧JICAの開発調査であり現在の助言委員会とは異なるのではという指摘もあった。また「グッドプラクティスとは「誰から見て」なのか、そのせめぎ合いに目を向けるのがより興味深いのではないか」、そして「自身の関与の相対化の必要性があるのではないか」という質問が行われた。

第3発表:国際開発における民間企業参画の有効性と限界
―ラオス人民民主共和国における国連と民間企業の共創プロジェクトを事例に―

発表者

  • 田才 諒哉(株式会社坂ノ途中)

コメント・応答など

報告者からは「国際協力とスタートアップビジネスとの連携可能性の検証」が行われた。コメンテーターからは「官民連携」がうたい文句になるなかで、具体的にどのように「連携」しているかの実例を紹介し分析していることの意義について評価があり、類似の官民連携実例と比較することで、セッション構成という意味でも意義が高まるのではないかという指摘があった。また、研究という面では、「先行研究をODA主導の事業にとっていることの適切なのか(類似の官民共創型やNGOでは?)」「自給的な陸稲栽培からコーヒーという現金経済に向かうリスクをどう考えるか」「調査者と実施者が同じことによるバイアスをどう考え、俯瞰できるのか」「協働的ガバナンス構造」が依存脱却に繋がる理由は何か」という質問があった。実務としては、「利益とコストの分配や分析をどう考えているのか」「日本側の経営が悪化するリスクはないのか」「コーヒーの収穫がまだなのになぜ生活が安定しているのか。」「リスクや課題を踏まえると今後の方向性の示唆とまで言えるのか。」「二国間機関ではなく国際機関であることの含意は何か」という質問があった。

第4発表:日本のローカルSDGs事業のジェンダー主流化
ー地域循環共生圏事業を事例とした可能性の検討ー

発表者

  • 本間 まり子(早稲田大学)

コメント・応答など

環境省が地方自治体に対して行うローカルSDGs事業である「地域循環共生圏事業」におけるジェンダー主流化の可能性を検証する内容の報告があった。コメンテーターからは「地域総合計画と地域循環共生圏事業の関係性はどのようになっているのか」「ローカルSDGsということだが指標をどのくらい準拠しているのか」「環境省のジェンダー主流化そのものが進んでいないのでローカルでのジェンダー主流化の可能性はかなり低いことが予測できる際にこの研究をする理由は」「海外の類似例におけるジェンダー主流化と比較できるとより研究の精度が上がるのでは」等の質問があった。

総括

本セッションは一般口頭発表であったが、実務家の立場から、あるいは実務に向き合ってそれを研究にする取り組みが全ての報告でなされており、非常に調和があるセッションとなった。またA Iを使った研究が2点あり、時代を感じさせた。国際開発学会の英語名はJapan Society for International Developmentとなり、そこに「学」を示唆する英単語はなく、会員の一定数は実務家である。しかし実務家が研究者に「寄せないといけない空気感」が未だ存在するのではないか。そのことをどう考えて対応していくのかは学会全体で考えるに値すると思われた。

報告者:佐藤 峰(横浜国立大学)

[J2] グローバル秩序の多層的考察:国際規範、援助協調、地域統合、⼈⼝統治

  • 日時:2025年11月29日 12:40 -14:40
  • 聴講人数:約30名
  • 座長:稲田十一(専修大学)
  • コメンテーター:稲田十一(専修大学)、渡邉松男(立命館大学)、佐俣紀仁(武蔵野大学)

第1発表:統治技法としての開発協⼒:近現代⽇本における⼈⼝動態の調整装置

発表者

  • ⼤⼭ 貴稔 (九州⼯業⼤学)

コメント・応答など

報告に続いて、渡邉会員より以下のコメント・質問がなされた。(1) 報告は「近代日本における⼈⼝動態」を長期的な視点で制したものであるが、その政策が形成される過程において、相⼿国との相互関係性や、移り変わってきた国際開発レジームとの整合はどのようにとらえるのか。(2)幾つかの時期に分けて「統治目的」を正当化する説明がなされているが、これらを体系的に整理する⽅途はどのようになるのか。(3) 現在の外国⼈材受⼊や多⽂化共⽣⽀援は、「技能」を軸にした永住を前提としない⼀時的な労働⼒の利⽤としてとらえることができ、過去の統治技法とは性格が異なるように思えるが、どう対照させるのか。

これらに対して「社会の受容」と「人口統治」をキーワードに「人の移動に関するレジーム」の動態を分析したものとの説明等があった。

第2発表:地域機関の調整機能と援助協調の制度化―中米統合機構と日本の協力関係から―

発表者

  • 鳴海 ゆきの (独立行政法人国際協力機構、津田塾大学)

コメント・応答など

報告に続いて、稲田会員より以下のコメント・質問がなされた。(1)「国際援助協調」は通常、主要ドナー間の開発支援政策に関する協調を意味するが、ここでは「日本の地域機構を通じた援助」のことか?その意味では、論文タイトルは、例えば「日本の地域機構を通じた地域協力-中米統合機構(SICA)の調整機能と協力関係の制度化の事例」といったものになるか。(2) SICAの事例と他の地域機構(ASEAN)との比較は有意義であり、また第4節「より柔軟かつ段階的な制度設計」でまとめられている①②③④の整理は意味あるまとめとおもわれる。(3) 今後の研究として、他の地域機関との比較分析が期待され、一つの事例分析を超えてより一般的な結論を導けるとより良い。また、「地域公共財」の議論をより強調して、理論化・一般論に持っていっても良いように思った。

第3発表:持続可能な航空のための国際規範とグローバルガバナンス〜国連と国際⺠間航空機関における多国間外交

発表者

  • 勝間 靖 (早稲⽥⼤学、国連⼤学)

コメント・応答など

報告に続いて、渡邉会員より以下のコメント・質問がなされた。(1) 国連「持続可能な交通」アジェンダ(ハイレベル諮問グループ)と、ICAOの間で、どのような交渉や相互の影響があったのか。(2) 専⾨機関との位置づけにあるICAOが、より上位の国際機関としてどのように規範形成を担うようになりえるのか。また、 フロアよりIATAなど他の国際機関との関係についての質問があった。また、例えばカーボンニュートラルに関するルール形成に関して、パリ協定など他の国際的枠組みとどのような関係にあるのか、相互関係など全体像を描いてもらえるとありがたい、といった質問があった。

第4発表:メコン地域における人身取引:新たな状況に対応する開発課題

発表者

  • 齋藤 百合子 (大東文化大学)

コメント・応答など

報告に続いて、佐俣会員より主として専門の国際法の視点から、以下のコメント・質問がなされた。(1)分析の切り口として、ミャンマー・シャン州からタイへの「混在移動」は、避難民・非正規入国ととらえられる一方で、この問題を「人身取引」の問題とみなすとしたら、どのような法的根拠にもとづくものなのか。「アントーン事件」を「人身取引」とみなしうる国内法はあるのか。(2)ミャンマーからタイに逃れてきた子ども達を守るとしたら、どのような支援ができうるのか。タイ側で無国籍者に国籍を付与することで改善できるのか。

これらに対して、報告では実態調査に重点を置いたので、分析の枠組みについては今後さらに検討したい、等の説明があった。

総括

本セッションでは約30名の参加者があった。4名の報告者の報告テーマはそれぞれに異なり、セッション全体としての整合性はとりにくかったが、いずれも野心的な新しい研究テーマである興味深いものであった。各報告者が報告時間を正確に守ってくれたこともあって、時間配分等は問題なく実施できた。

報告者:稲田十一(専修大学)

[J3] ジェンダーが照らす社会関係:格差、研修、支援、調査の諸相

  • 日時:2025年11月29日 14:55 -16:55
  • 聴講人数:約30名
  • 座長:齋藤百合子(大東文化大学)
  • コメンテーター:齋藤百合子(大東文化大学)、本間まり子(早稲田大学)

第1発表:ケイパビリティ・アプローチに基づく障害女性のケイパビリティ評価―バングラデシュの外出/在宅活動調査(第1回)

発表者

  • 金澤真実(上智大学、帝京大学)

コメント・応答など

コメンテーターからの指摘は主に次の2点だった。①同じ条件でも、障害の状況により、アクセスの判断は異なるのではないか。②ヌスバウムとセンのケイパビリティ論の違いを金澤論文ではどのように捉えるか。報告者は次のように応答した。①障害状況は個々異なるものである。しかし政策提言をして、より個々のケイパビリティを伸長させるために、量的及び質的調査によって障害を持つ女性たちの困難をあたかも障害を持つ一人の人のように描き出すことが必要だと考えている。②ヌスバウムのケイパビリティ論は、正義論に基づいており、ケイパビリティのリストを作成して政府に対して制度や規範形成を求めている。一方、センのケイパビリティ論はヌスバウムのような「〜べきだ」ではなく、自由を拡大するために何が機会を阻んでいるのか、という視点でケイパビリティ論を展開しており、規範形成を求めていない。

第2発表:カンボジアの縫製工場の女性若年労働者のエンパワメント・プロジェクト(初期調査結果)

発表者

  • 阿部貴美子(実践女子大学)

コメント・応答など

阿部報告はカンボジアの若年女性労働者のSRHRとエンパワーメント、そして人権デューデリデンス(DD)の3種類の方向の概念を用い、さらに理論的背景を求めているが、研究目的が不明瞭になっていることが指摘された上で、その中でもこれまで国際保健分野で研究を重ねてきた報告者の本報告はSRHRの中のHealthとRightsのどちらに焦点を当てるのかとの本間会員の質問があった。報告者は、SRHRではRightsに焦点を当てていること、特に若年女子労働者の妊娠率の高さと性教育の関連について報告にあったSRHRに関する情報を教育機関や労働現場ではほぼなされておらず、不正確なものもあるインターネットの情報に依存しておりSRHRの情報アクセスの必要性を述べた。座長のコメントとしてカンボジアの女子労働者に対する状況(労働組合や賃金交渉に対する弾圧など)この20年の経過の分析や考察を踏まえて、政策レベルの人権DD議論に繋げる必要を述べた。

第3発表:ジェンダー研修と世帯内意思決定過程への女性の参加

発表者

  • 甲斐田きよみ(文教学院大学)

コメント・応答など

甲斐田報告はジェンダー研修に関する自身の豊富な経験と研究蓄積に基づいた報告である。しかしその豊富さゆえにそれぞれの説明がやや煩雑な印象を受けるので、研修方法や内容、その効果、利点やマイナス点などを表にするなど視覚的に提示することの提案、途上国だけでなく日本社会へのジェンダー研修の可能性への指摘、また報告にあったジェンダー研修を実施したザンビアとネパールでのジェンダー政策との関連、ジェンダー研修を実施する人と研修者の関係性について齋藤がコメントで述べた。報告者の応答としては、各国のジェンダー政策やジェンダー研修の有無を整理した上で課題を抽出することで、議論がより分かりやすくなるとの説明があった。今回ザンビアとネパールでのジェンダー研修についての報告があるが、主にアフリカ地域では90年代にジェンダー政策が進んでおり、農業普及員に対するジェンダー研修もなされているにもかかわらず末端の家族世帯では女性の役割や負担は変化していないことから本研究を進めたと応答があった。

第4発表:「子連れフィールドワーク」とポジショナリティ:エクアドル社会とその女性たちに向き合う

発表者

  • 河内久美子(横浜国立大学)

コメント・応答など

齋藤からは、本報告は研究調査のために家族を帯同する研究者のポジショナリティについて、自身の子連れフィールドワークから考察した人類学的および開発学的に興味深い内容であること、また調査者と調査対象者との関係性の変化や利点およびリスクについて、また帯同される側(子)に関する観察や配慮も必要とコメントした。河内会員からは自身の行動や感想などをジャーナルに記しており、調査対象者らとの関係について今後も観察を続けていきたいと応答した。フロアから「子連れフィールドワークすることによる調査対象者の変化とは何か」と質問があり、河内会員は、調査者単独調査の時よりも緊張感を伴わない調査が可能となった、と答えた。

総括

本セッション「ジェンダーが照らす社会関係:格差、研修、支援、調査の諸相」はタイトルが示すようにジェンダーが照らす社会関係に焦点を当てた4人の会員から報告があった。障害を持つ女性のケイパビリティ(金沢会員)、ジェンダー研修を通した家庭内男女格差の是正の試み(甲斐田会員)、カンボジアの女子労働者のSRHR(阿部)、家族帯同の研究者のポジショナリティ(河内会員)に内容は、国際開発研究の中でジェンダーを通した開発視点を問う意義深いものであった。

報告者:齋藤百合子(大東文化大学)

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