『ICTと国際開発(ICT4D)』研究部会(2024年8月)
「ICTと国際開発」研究部会:活動実績報告
2024年6月 春季大会
ここから始める「デジタル技術の国際開発への活用」の導入として狩野会員(金沢工業大学)からイントロ、内藤会員(神戸情報大学院大学)からGood Practice and Bad Practiceの発表、そして山田会員(長岡造形大学)からデジタルはローカルなものづくりを加速するというタイトルで発表があった。
討論者の高田会員(東京工業大学)、森会員(同志社大学)、そして会場参加者と以下のような議論がなされた。
ICTがWell-beingに資するものなのかは、ICT活用による悪いところをいかに捉え消していくかが重要。現在のSNSなどはフェイクニュースなどが相次いでいるが、これはエコシステムの構造的問題があり、放置した方が企業が儲かってしまう仕組みなどが根本な点としてある。
ICT4Dに適する人材、ゼネラリスト・スペシャリストのどちらが望まれるかのなどについての質問に対し、これしかできない人というがスペシャリストならば、そのような人が固まっても何もできない。間に入るゼネラリストは調整のスペシャリストにいもなりえる。生成AIは雇用を奪うのか?という点については、最新技術が搾取構造を加速させる可能性がある。逆にいうと、適切な政策を適切な時代に施すことによって国は発展する。ただ、それは学術的にまだ研究は進んでいないので研究を進めていく。
3Dプリンターでどこまで作れるのかという質問に対し、データを持ってきさえしてくれたら3Dプリンターでなんでも作れる。そのくらいオープンソースでクラウド上にはデータが溢れている。一方、それをリミックスして機能追加・デザイン変更したい、と思った時にはハードルが上がる。知財に関する質問に対し、知財をどうするか、という点はFab academyなどで公開する際に問われる。前に利用したソースコードがあるならば、それを明確にしてオープンソースにするか、どうかを選ぶ。
全体総括としては、ICT技術の国際開発への応用に関する入門セッション的な位置付けで開催したが、知財、人材の考え方、最新技術など多様な質問が活発に議論された。一方、プレゼントピックとしては広くなりすぎた印象はあり、次回以降では応用編として具体的なプロジェクト・課題にフォーカスしたものであってもよいと感じた。
2024年5月 研究会 /話題提供者:狩野剛(金沢工業大学)
Lessons Learned from EdTech Integration during the COVID-19 Pandemic: Socio-technical Case Analyses of Bhutan and Nepalというタイトルで、研究部会およびJASID会員向けに勉強会を開催した。
2024年4月 内部ミーティング
春季大会でのラウンドテーブル提案に向けたコンテンツの企画を行なった。
2024年3月 内部ミーティング
研究部会メンバーの自己紹介、今後の活動予定について意見交換を行った。
2024年2月 研究会/ 話題提供者:外山健太郎(ミシガン大学教授)
研究部会およびJASID会員向けに研究会を開催。
ミシガン大学 情報学部の外山健太郎教授(Prof. Kentaro Toyama, School of Information, University of Michigan)を講師にお招きした研究会を金沢工業大学虎ノ門キャンパスとオンラインのハイブリッドで2024年2月22日に開催。外山教授はこの研究会のテーマであるICT4Dの先駆者のお一人であり、元Microsoftのエンジニアでありながら、インドのMicrosoft Research立ち上げに尽力した経験を持つ。
タイトルは「ICTと国際開発 これまでのICTD分野の研究を振り返って」ということで、同分野のこれまでの議論の歴史や教訓について、幅広く取り上げていただいた。プレゼンの中では「これまでのICT4D分野の研究の合意点」として以下の4つが挙げられた。
- ICTが社会経済界開発のためになる可能性はある
- ICTの影響はプラスにならない場合が多い
- ICTの影響の多くは、人と組織に依存する
- 効果があるICTのデザインはコンテキストによる
そしてその後に、外山教授の提唱する「増幅の法則(Theory of amplification)」や「生成AIによる影響」について事例とともにご説明いただいた。
2023年11月 JASID全国大会(上智大学)
発表者の3名(岡崎会員、功能会員、狩野会員)から、インドのiKure社の概要、共同研究の概要といった背景説明があった。
そのあと、引き続き発表者より、インドにおける医療機器の現状や新興国・途上国での医療機器ビジネスの難しさなどについて解説があった。そして、ソーシャルビジネスにおける研究の貢献可能性として、工学系研究者・民間企業・投資家・社会科学系研究者・現地大学・住民という各ステークホルダーの視点から見える共同研究における貢献可能性について説明があった。
発表の後、討論者や会場の参加者からの活発なコメント・質問が行われた。今後の共同研究推進に向けた主な助言は以下の通り。
- 現地の視点として医療サービスを提供するiKureからの情報を主としているようだが、エンドユーザの声をきちんと拾い上げるべき。例えば、遠隔医療への抵抗感、医者・看護師による信頼の違い、文化・宗教的なハードルなどについてきちんと情報を集めるべき。
- 研究による外国人・外国資金の介入によって、ソーシャルビジネスの持続性に悪影響が出ないように気をつけた方が良い。特にこの共同研究の出口はどうなるのかと言った点は事前に先方とも意識合わせをしておく必要があると考えられる。
『ICTと国際開発(ICT4D)』研究部会
代表:狩野 剛(金沢工業大学)