『若手による開発研究』研究部会(2025年2月)
![若手による開発研究 [FY2021-]](https://jasid.org/wp/wp-content/uploads/2021/04/rersearch-groups-eye-7.png)
活動実績報告書
活動最初年度である本年度は、名古屋大学における研究発表会を対面イベントと、春季大会でのラウンドテーブル、そして6回のオンライン研究会を開催しました。
今期特筆すべき活動実績として、2024年3月16日にて名古屋大学大学院国際開発研究科にて、「第1回・若手部会主催若手のための開発研究アイデアソン」を同学会東海支部と共催にて行った。
本イベントは、国際開発学会に所属しているまたは国際開発に関する研究をしている大学院生に研究発表の機会を提供することを目的としつつ、かつて、支部大会レベルで行われていた修士・博士論文の報告を一つにまとめることで、それまで支部大会内で終わっていた学会報告の研究活動をより広範なものとし、各々の研究の情報交換や、若手研究者の交流の場を企画した。
当日は周辺の大学生や大学院生15名程度(留学生含む)の有志が参加し、専門分野における広範な議論と若手ならではの交流が行われた。研究報告では日本語報告4件、英語報告2件の全6件の研究報告が行われた。とはいえ、参加者も運営サイドいずれもまだ学生や、若手研究者であるため、特段優劣を決めるものではなく、自由に研究に対しての意見交換が行われた。
また参加者の中には学部生がおり、フィールドワークの方法や、そもそもの研究の方法についての質問があり、会は非常に盛り上がった。
2つ目の活動である2024年度国際開発学会春季大会のラウンドテーブル(報告日6月15日、於 宇都宮大学)での報告は、若手が次世代を牽引するために必要なスキルと意識を高める場として設計された。今回のセッションでは、内発的動機を育むことの重要性が強調され、参加者は在りたい姿や目指すべき方向性を明確にすることの価値について深く掘り下げた。
参加者は、「次世代を牽引する若手像とは何か」という問いかけを通じて、自己の研究と社会的役割を反省する機会を持った。また、質の高い対話を実現するために、外部の専門家を招聘し、様々な視点から意見を交換することで、学術的な見識を広げることができた。このプロセスは、若手が自らの研究を社会に適用し、より大きな影響を与えるための理解と技術を深めるための場を提供したと考えている。
以下、報告者らのコメントである。
神正光氏(名古屋市立大学大学院)は、社会人としての実務と若手研究者としての取り組みの重複部分を整理し、災害ボランティアや被災地のコーディネート、コミュニティ構築支援を行う実務と、途上国の自然災害と貧困や社会資本の関係を研究する学術活動を通じて、人々の厚生に貢献する重要性を強調した。彼は、SDGsの普及に伴い、国際開発学の専門性がますます重要になる中、学際的な国際開発学の深化と実務レベルでの応用が次世代の社会の発展に寄与すると確信している。
八郷真理愛氏(横浜国立大学大学院)は、「次世代を牽引する若手像」に関して、「次世代を牽引した後の目的」を明確に持つことの重要性を強調した。彼女は、世界中の人々と「開発のあるべき姿」や「開発した先の目的」を議論する必要性を述べ、多様な年代の参加者からの意見を取り入れ、世代間の交流の活発な仕組みづくりが必要であると結論づけた。
橋本武龍氏(京都大学大学院)は、批判的思考の重要性について発表し、論理的・合理的思考、目標思考的思考、内省的・熟慮的思考の3つの観点から批判的思考を深化させる必要があると述べた。これらの観点を通じて、新たな研究やプロジェクトにおいて望ましい未来を描くための新しい視野を切り開くことが、次世代を牽引する若手研究者の使命であり、革新的なアプローチがより良い社会の実現に繋がると確信している。
さらに、このラウンドテーブルは、異なる世代や分野の研究者間の対話を促進し、国際開発学会の枠を超えた協力と理解を深める場となった。このような対話を通じて、参加者は多様な視点を統合し、持続可能な発展への貢献を模索した。結果として、本ラウンドテーブルは若手が直面する現代の課題に対応し、未来に向けて自らの在り方・生き方を思考する機会を提供した。
次年度はこれらの活動を踏まえ、若手の開発研究への間口を広げ、若手同士の研究内容の発信する活動の展開を予定している。
『若手による開発研究』研究部会
代表:森 泰紀(同志社大学)