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NL37巻1号 [2026.02]

第36回・全国大会セッション報告:企画セッション

企画セッション


[A2] 21世紀の多元的現実における学術的脱植民地性を模索する開発研究:韓国・フィリピン・日本の研究者たちによる複数の学問分野からの視点(JASID-KAIDEC共催セッション)

Development Studies in Search of Academic Decoloniality in the Plural Realities of the 21st Century: Perspectives from South Korean, Filipino, and Japanese Scholars of Multiple Disciplines (JASID-KAIDEC Joint Session)

  • 日時:2025年11月29日 12:40 - 14:40
  • 聴講人数:25名
  • 座長:山田 肖子(名古屋大学:JASID会長)/ Shoko Yamada (Nagoya University; President of JASID)
  • 企画責任者:Tsunetaka Tsuchiya (Kanagawa University, University of Tokyo)
  • コメンテーター/討論者:北村 友人(東京大学)/ Yuto Kitamura (The University of Tokyo)

第1発表:脱植民地主義的制度化の形成:アフリカの視点からの示唆

Shaping Decolonial Institutionalization: Insights from African Perspectives

発表者

  • クワック ジェ・スン(慶熙大学校:KAIDEC会長)/ Jae Sung Kwak (Kyung Hee University; President of KAIDEC)

コメント・応答など

本発表は、開発研究における脱植民地主義的アプローチが、制度や構造の変革にいかに寄与し得るかをアフリカの事例から検討したものであった。CFAフランによる通貨主権の制限、ニジェールのクーデター後の資源と安全保障をめぐる主権回復の模索、エチオピアの民間医療スタートアップによる自律的デジタル医療モデルなど、多様なスケールでの脱植民地化の実践を提示し、国家・地域・民間の連動が不可欠であると、クワックKAIDEC会長は論じた。フロアーからは、アフリカの多くの国に見られる政治構造の複雑さや経済環境のダイナミックな変化を踏まえて、さらなる検討が必要であることが指摘された。

第2発表:フィリピンにおける脱植民地主義的開発研究の可能性と課題

The Possibilities and Challenges of Decolonial Development Studies in The Philippines

発表者

  • ロペス レスリー(アテネオ・デ・マニラ大学)/ Leslie Lopez ( Ateneo de Manila University)

コメント・応答など

フィリピンの高等教育は米国植民地主義の下で形成され、大学制度や治安部隊教育を通じて植民地的価値観が制度化された。1970年代の学生運動は脱植民地化教育の必要性を提起したが、現在も新自由主義的・欧米中心の教育国際化政策が残存している。いくつかの代表的な大学における開発学に関する教育プログラムが事例として提示され、既存の開発パラダイムの継承から代替的フィリピン独自の教育モデル創出まで多様な実践が存在し、卒業生の脱植民地的視点の習得にも差異が生じていることを、ロペス教授は指摘した。フロアーとの意見交換を通して、大学が労働市場から影響を受けていることを踏まえつつ、カリキュラム改革や革新的な教育実践を進めるなかで、開発学プログラム間の連携強化が求められることが確認された。

第3発表:プラクシスのために、脱植民地化され、プルリバースなGAD(ジェンダーと開発)を構想する:議論をいかに現場に位置づけ、実践へとつなげるか

Imagining Decolonized and Pluriversal GADs for Praxis: How to make discussions situated and practiced

発表者

  • 佐藤 峰(横浜国立大学)/ Mine Sato (Yokohama National University)

コメント・応答など

ジェンダーと開発(GAD)に関する研究は欧米中心の知識体系に依存しており、脱植民地化の議論が求められている。そうしたなか、多様な知や文脈を尊重するプルリバース的視点や、女性の経験を交差的に捉える重要性を佐藤会員は指摘した。本発表で事例として挙げられたパキスタンの女性保健員調査では、劣悪な労働条件や社会的制約などが明らかとなり、理論と実践を結ぶ脱植民地的GADの構築には協働的な実践の場づくりが必要とされることが強調された。フロアーからは、そうした場づくりのあり方について、さらに具体的な検討が必要であることが指摘され、今後の研究への期待が示された。

第4発表:認識論的脱植民地化を通じた研究者のポジショナリティの再構想 ― コミュニティとどのように関わるのか?

Reimagining Researcherʼs Positionality through Epistemic Decolonization ‒ How Do We Engage with a Community?

発表者

  • 工藤 尚悟(国際教養大学)/ Shogo Kudo (Akita International University)

コメント・応答など

本発表は、研究者のポジショナリティを脱植民地化の観点から再考し、調査対象となるコミュニティとどのように関わるべきかを問い直すものであった。研究者と住民の非対称性や知の中心-周縁構造を批判し、フィールドと共に問いを形成し分析する協働的姿勢の重要性を、工藤会員は指摘した。また、二項対立を超え「あいだ」を開く思考や、複数の世界観を前提とするプルリバース的アプローチにより、研究を相互学習のプロセスへ変革していくことの必要性が強調された。フロアーからのコメントとして、研究者のポジショナリティに関わる政治性の問題などをさらに検討することの重要性が指摘された。

【総括】

本セッションは、座長である山田JASID会長による問題提起にもとづき、4名の発表者がそれぞれの専門分野やこれまでの経験にもとづき刺激的な議論を展開し、活発な意見交換が行われた。現代の「脱植民地化」論は、西洋近代が形成した価値観や制度への依存を問題視し、開発や知の在り方を多元化する必要性を訴えている。環境・文化・政治など複数の対立軸がある中、開発を誰の観点で語るのかが重要となる。

こうした問題意識を共有したうえで、韓国国際開発学会(KAIDEC)と共催した本セッションでは韓国とフィリピンの研究者たちとともに、開発研究の脱植民地化の意義と可能性を探った。各発表では、制度や知の脱植民地化、ジェンダー開発の再考、研究者の立場性などが論点となり、異なる知が対話可能となる枠組みの模索が課題として示された。

問題の多様性・多義性から、一回のセッションでは十分な議論を交わすことができたとは言えず、今後のさらなる学術交流を通して議論を発展させていくことで合意した。

報告者:北村 友人(東京大学)

[A3]SDGs時代のアジア・アフリカの子どもの健康と教育の保証のための学術研究の役割 —学校保健研究の可能性と課題—

The role of academic research in ensuring the health and education of children in Asia and Africa in the SDGs era: Possibilities and challenges of school health research

  • 日時:2025年11月29日 14:55 - 16:55
  • 聴講人数:19名
  • 座長・企画責任者:高柳妙子(東京女子大学)
  • コメンテーター/討論者:上原真名美(琉球大学)

第1発表:Historical Transitions of School Health Activities, Support, and Research in LMICs in Asia and Africa

発表者

  • 友川幸 (信州大学、国際学校保健コンソーシアム)/ Sachi Tomokawa (Shinshu University, Japan Consortium for Global School Health and Research )

コメント・応答など

質問:学校保健活動への教育への影響(効果)はどのように報告されているのか。回答:2010年代までの健康課題、例えば、水衛生施設の整備、駆虫、給食などは、出席状況の改善や学力などとの関連が報告されてきている。2010年以降のメンタルヘルスなどに関連する課題に関しては、外部の支援機関(海外ドナー)などの短期的な支援活動だけでは、問題の改善が容易ではないため、対象国の持続的かつ、自律的な活動の展開が求められている。

第2発表:ラオスにおける学童の主体的な参加によるタイ肝吸虫症対策の成果と課題-予防啓発のための寸劇活動の作成を通して

Achievements and Challenges of Opisthorchis viverrini  Control in Lao PDR by Children’s Active Participation Through the creation of short skits for prevention awareness activities

発表者

  • スクナリートゥマ (琉球大学・信州大学)/ Souknaly Thoumma(University of the Ryukyus)

コメント・応答など

質問:地域の活動において、地域のリーダーのリーダーシップが大切であると思うが、地域のリーダーが学校保健活動に及ぼす影響はどのようなものか、またリーダーがいない地域ではどのように活動を成功に導くのか。

回答:すべての活動において、地域のリーダーのリーダーシップはとても重要である。

第3発表:日本に中長期滞在する外国ルーツの子どもにおける感染症対策―地域によって異なる感染症発生状況とその対策―

Infectious Disease Control Measures for Foreign-Origin Children Residing Medium- to Long-Term in Japan : Regional Variations in Infectious Disease Incidence and Control Strategies

発表者

  • 城川美佳(神奈川県立保健福祉大学、国際学校保健コンソーシアム)/ Mika Kigawa (Kanagawa University of Human Services, The Japanese Consortium for Global School Health Research)

コメント・応答など

特にコメントなし

第4発表:月経衛生管理と学校生活の両立に向けて:ケニア・マサイ社会における質的フィールド研究

Navigating Menstrual Hygiene Management and School Life:A Field Study in Maasai Communities, Kenya

発表者

  • 高柳妙子(東京女子大学)/ Taeko Takayanagi (Tokyo Woman’s Christian University)

コメント・応答など

コメント:ネパールでも生理の対処についての課題が問題になりつつある。この問題は、特に生理用品の廃棄の問題などで、環境の問題などとも関係している。児童婚の問題なども当国では重要な問題になっている。

第5発表:世界の児童婚対策の現状:文献レビュー

The current global situation of child marriage prevention: Literature review

発表者

  • 田平楓(琉球大学、国際学校保健コンソーシアム)/ Kaede Tabira (University of  the Ryukyus、Japan Consortium for Global School Health and Research )

コメント・応答など

特にコメントなし

第6発表:思春期における子どもの疾病予防の実践とその可能性—妊婦の受動喫煙予防と妊婦・循環器疾患患者への禁煙教育の知見を活かして-

Practical Applications and Potential of Disease Prevention in Adolescents:Insights from Secondhand Smoke Prevention in Pregnant Women and Smoking Cessation Education for Pregnant and Cardiovascular Patients

発表者

  • 稲岡 希実子(国際医療福祉大学、国際学校保健コンソーシアム)/ Kimiko Inaoka(International University of Health and Welfare、Japan Consortium for Global School Health and Research )

コメント・応答など

特にコメントなし

総括

アフリカ(ウガンダ)からの参加者から、サブサハラアフリカの子どもの栄養や衛生に関する問題の現状や課題について情報が共有された。発表者からは、各自の調査フィールドでの子どもの生理対処や、早期婚、FGM等の実態、日本の給食に関する情報が共有された。発表者と参加者が双方に、各自の調査経験などから、開発途上諸国の子どもの健康問題の実態や課題について情報共有をすることができた。

報告者:上原真名美(琉球大学)/ Manami Uehara (University of the Ryukyus)

[B1]Empirical Analyses using Micro-level Data in Developing Countries

  • 日時:2025年11月29日 9:30 - 11:30

第1発表:Empirical Analyses using Micro-level Data in Developing Countries

発表者

  • Souksavanh VIXATHEP1, Rie OKUDA3, Maina SATO2, Ziying LIU4 (1. Ritsumeikan University, 2. Kobe university, 3.Sonoda University, 4. Asia Pacic Institute of Research )

[C3] 援助が生み出す格差:地域研究からの国際協力の再構築に向けて

  • 日時:2025年11月29日 14:55 - 16:55

第1発表:援助が生み出す格差:地域研究からの国際協力の再構築に向けて

発表者

  • 友松 夕香2、絵所 秀紀2、寺内 大左4、麻田 玲1、網中 昭世3、山形 辰史5 (1. 山口大学、2. 法政大学、3. アジア経済研究所、4. 筑波大学、5. 立命館アジア太平洋大学)

[F1] 開発途上国におけるろう者の社会資本である手話と国家の言語政策

  • 日時:2025年11月29日 9:30 - 11:30
  • 聴講人数:15名
  • 座長・企画責任者:森 壮也(ジェトロ・アジア経済研究所・早稲田大学・神奈川大学)
  • コメンテーター/討論者:高橋基樹(京都大学・神戸大学)、山形辰史(立命館アジア太平洋大学)

第1発表:開発途上国におけるろう者の社会資本である手話と国家の言語政策―ろう者の開発への参加を阻んでいるもの―全体枠組とフィリピンの事例

The discussion on Sign Languages as Social Capital for the Deaf in Developing Countries and National Language Policy of these countries- the Framework for analysis and the case of the Philippines

発表者

  • 森 壮也(ジェトロ・アジア経済研究所・早稲田大学・神奈川大学)/ Soya MORI (IDE-JETRO, Waseda University and Kanagawa University)

コメント・応答など

 

トランプ現象や反DEI 政策・反包摂が広がりつつある世界において、このようなろう者の問題を基本的な重要性を持つ言語の面から考える研究は大いに意義があると思われる。

アメリカ手話(ASL)の影響をフィリピン手話(FSL)が大きく受けているというのは分かったが、このASL導入以前の植民地化・近代化以前のろう者のコミュニケーション、フィリピンの身振りのようなコミュニケーションについてもっと知りたい。一方で自然言語としてのFSLの形成過程は途上国の手話の研究上、重要なテーマであると考えられる。KWFの政治的問題について議論しているが、さらにKWFの法執行力の弱さを生み出している政治・社会・経済的背景も大局的にとらえるべきだろう。Peace CorpなどによるASLの導入がFSLの今日のあり方、またFSL自体にどのような影響を及ぼしたのかより深い研究が望まれる。

第2発表:インドにおける手話と国家、教育の交点-言語・教育政策における「インド手話」に焦点をあてて-

The Intersection of Sign Language, State, and Education in India: Focusing on “Indian Sign Language” in Language and Education Policy

発表者

  • 古田 弘子(尚絅学院大学)/ Hiroko Furuta(Shokei Gakuin University)

コメント・応答など

インドにおいて公用語の地域語との階層性の中に手話も位置づけて考えた問題は大変に重要である。蓮歩言う政府におけるインド手話の標準化が歓迎されていたのは、モディ政権下のナショナリズムが関係しているようで興味深い。一方でインド手話という標準化された手話は、ろうの複数言語を操ると思われる少数エリートたちには満足のいくものであるのか。インドで標準手話とは別に地域手話があるのはろう学校単位で手話が生まれたことが背景にあるが、これも近代化の産物と見るべきなのか。またこうした手話の間にイギリス手話>インド手話>地域手話という階層性があると考えられるが、それは問題ではないのか。

第3発表:フランス語圏西・中部アフリカの手話と言語政策―カメルーンとコートジボワールでの現地調査をもとに

Sign Language and Language Policy in Francophone West and Central Africa: Based on Field Research in Cameroon and Côte d’Ivoire

発表者

  • 亀井 伸孝(愛知県立大学)/ Nobutaka Kamei (Aichi Prefectural University)

コメント・応答など

そもそもフォスターによるアメリカ手話が移植される以前の、つまり近代化以前、特に無文字社会アフリカにおけるろう者のコミュニケーション/対話はどのようなものであったと考えられるか。

音声言語の階層化がアフリカでは見られるが、同じように手話でも階層化はないのか。

LSAF(フランス語圏アフリカ手話)が歴史的に混淆の中で形成されたとすれば、その形成・発展の将来には、さらなる言語の形成と分岐が見られる可能性はないのか。ろう学校出身者以外のろう者へのLSAFの普及は人同士のコミュニケーションを通じて起きたということだが、それは都市部などの人の集まるところにいた人たちの間ではそうだったとしても農村部、辺境部ではどうだったのか。このLSAFは音声言語の分布状況とは異なって、国境を越えて西アフリカのろう者の大多数を包摂していると考えて良いのだろうか。また宗主国の英仏の違いで言語政策が異なっていて、それが手話の公認にも影響しているということであるが、それではコートジボワールとカメルーンのように前者が仏語圏と言えても後者が英仏の2つの言語権を持つという時、それでもLSAFが両国で使われていることの説明としてはまだ議論が不足しているのではないか。

総括

ろう者の開発への参加のための究極目標として手話利用の拡大ということだと思うが、その際に各国において「どの手話」の利用拡大かが問われているのではないか。

ブルデューの枠組からは、音声言語・書記言語と手話の間には上下関係があり、他方で旧宗主国の手話と旧植民地の手話の間には侵入関係があり、それぞれ前者がマジョリティ言語、後者がマイノリティ言語となっているという問題があることが明らかになった。また手話には、ホーム・サイン、一国(地域)手話、マジョリティ手話の三種があり、これらはこの純で数的便宜性は大きくなっていくものの、同時に正当性・文化的親和性は、より孤立的なものから支配的なものへと変わっていくという側面があるという多手話状況があることも分かった。

音声言語の持つ基本的な問題として流動性の問題があり、分岐と言語交代や消滅と言ったことがあるが手話ではどうなってくるのかの議論が必要と思われる。一方で途上国の言語問題の難しさとしては多様性・多層性、多層性と連動した階層性と言った問題があり、それらは手話の場合はどうなのか知りたい。また手話の存在/導入は、アフリカの多くの社会における書記言語のように、基本的に各国の近代の問題で植民地以後の問題なのか、どうなのだろうか。前近代のろう者のコミュニケーションはどうであったのだろうか。特定の種類の手話言語が各国において,ろう者の大多数の間に浸透しておらず、あるいは複数の手話が存在しているような場合、それは「社会資本」としての手話のあり方に大きな影響を及ぼすのではないか。国家全体の社会資本とは言えなくなってくるのではないか。

報告者:森 壮也(ジェトロ・アジア経済研究所・早稲田大学・神奈川大学)

「第36回全国大会」大会報告ページ

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