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NL32巻4号 [2021.11]

活動報告『倫理的食農システムと農村発展』研究部会(2021年11月)

倫理的食農システムと農村発展 [FY2021-]

1.研究部会概要

「倫理的食農システムと農村発展」研究部会は池上甲一(近畿大学名誉教授)を代表者、牧田りえ(学習院大学教授)を副代表者として、2020年11月にスタートした。本研究会の目的は、いわゆるフェアトレードとエシカル消費(人権、環境、公正さに配慮する消費)の両者を倫理的取引として把握し、この倫理的取引に基づく倫理的食農システムが生み出す農村発展の成果と課題を解明することにある。

その際に、北側諸国でも関心を集めている「食への権利」や「食料主権」といった食料運動の観点も参照枠として利用する。具体的には、第1に現行食農システムの問題解明と倫理的食農システムの構築・拡大条件、第2に貧困削減を含む農村の総合的な発展への道筋、第3に「先進国」を中心とする消費者に対する倫理的食農システムの利点の提示とそれによるフェアトレード市場の拡大可能性を解明することをめざしている。

貧困削減・撲滅はPRSPの登場以降、人類共通の課題として捉えられてきた。2015年に合意されたSDGsでも第1目標に位置づけられている。しかし、とりわけCOVID-19による感染症の世界的な拡大によって、減少傾向にあった貧困人口が再び増大に転じている。貧困人口の多くは、医療・保健体制の脆弱な南側諸国の農民である。だから、農村発展はSDGsの観点からも国際公共保健の観点からも優先度が高いといえる。

2.活動実績概要

2021年度は、新型コロナウィルス感染症の拡大を受けて、オンラインによる研究会の開催を行ってきた。研究会の実施状況は次のとおりである。

第1回(2020年12月27日)

科研費(代表・牧田りえ学習院大学教授)との共催で開催された。講師は安藤丈将氏(武蔵大学教授)に依頼し、「フード・アクティヴィズムの論じ方」というテーマの報告を受けた。

第2回(2021年3月12日)

に、本研究部会代表の池上が「食料主権とアグロエコロジー」について報告した。この研究会には、賛同者と科研の研究メンバー以外にも国際開発学会会員、それ以外の一般参加者も多数参加し、このテーマに対する関心が大きいことを痛感した。

第3回(2021年5月15日)

ソリダリダード・ジャパンの楊殿閣氏に、「持続可能な農産品サプライチェーン構築と倫理的生産活動の支援」というタイトルで国際NGOソリダリダードの活動について報告してもらった。

第4回(2021年7月31日)

龍谷大学名誉教授の河村能夫氏に「JICAインドネシア・スラウェシ貧困対策支援農村開発計画の経験」を報告してもらった。


年度内に共催を含めて、4回程度の研究会を予定していたが、その計画を達成することができた。次年度は学会大会での企画セッションまたはラウンドテーブルを企画したいと考えている。

『倫理的食農システムと農村発展』研究部会
代表:池上甲一(近畿大学名誉教授)

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