1. HOME
  2. ブログ
  3. ニューズレター
  4. NL37巻1号 [2026.02]
  5. 第36回・全国大会セッション報告:一般口頭発表・L
WHAT'S NEW

Recent Updates

NL37巻1号 [2026.02]

第36回・全国大会セッション報告:一般口頭発表・L

一般口頭発表


[L1] 学校文化と教育の不均衡:現場から見る制度・権利・多様性

  • 日時:2025年11月29日 09:00 – 11:30
  • 聴講人数:15名
  • 座長:小川啓一(神戸大学)
  • コメンテーター:小川啓一(神戸大学)、畠山勝太(都留文科大学)

第1発表:Educational Administration and SDG4 in Burkina Faso: An Analysis of Teacher Deployment

発表者

  • Jean-Baptiste SANFO(University of Hyogo)
  • Keiichi Ogawa (Kobe University)

コメント・応答など

畠山会員からは、サブサハラ・アフリカにおける教員配置の重要性を踏まえつつ、統計分析の結果の解釈により注意を払う必要性、生徒教員比率において自然発生する分散と人為的要因により発生する分散を区別する必要性、さらに教員の背景や質を分析に含める重要性が指摘され、これに対し小川会員から教員配置にかかる教員の属性について捕捉がなされた。

小野会員からは、ブルキナファソにおける教員配置の制度的背景について質問があり、小川会員はブルキナファソでは教員が事前研修を受けた上で政府により配置される仕組みがある点を強調された。

石原会員からは、農村部への赴任に対する僻地手当の有無や制度設計について質問が挙がり、小川会員は、同様の議論は他のアフリカ諸国でも見られること、さらにアジア地域への応用可能性についても触れた。

第2発表:School Culture and Teacher Motivation in Malawian Community Day Secondary Schools: A Contextual Analysis

発表者

  • Matthews Kamzgezge Nyirenda(Hiroshima University)

コメント・応答など

小川会員からは、研究対象としてCommunity Day Secondary School (CDSS)を選択した理由、サンプリングした教員の地域的偏りの有無、特に北部地域に限定した場合の根拠、そして政策的示唆に関する質問があった。これに対し、Matthews Kamzgezge Nyirenda会員は、マラウイの中等教育在籍者の大多数がCDSSに通学している点、またデータ収集の利便性から北部地域を選択したことを説明した。

土久岡会員からは、学校文化の研究枠組みが西欧文献に基づくものである点について、マラウイの文脈へ適用する可能性についての指摘があった。これに対し、Matthews Kamzgezge Nyirenda会員は、分析の精度を高めた上で、マラウイに文脈に即した考察をさらに深めたいとした。

畠山会員からは、混合研究法の手順がどのようにされているのか、またインタビュー分析結果の妥当性をどのように担保するのかについて質問があった。これに対し、Matthews Kamzgezge Nyirenda会員は、量的・質的データを同時収集したことに触れ、三角測量を用いて分析の信頼性を確認するとした。

第3発表:ケニアにおける学校放火の報道分析―教育を受ける権利をめぐる論点―

発表者

  • 小川未空(大阪経済大学)

コメント・応答など

畠山会員からは、校内暴力研究や放火研究、メディア報道や言説分析など、どの領域に位置づく研究なのかについて質問があった。また、分析対象が新聞のみに限定されている点について、テレビやラジオ、SNSの扱いも検討すべきとの提案もなされた。さらに、権利の枠組みを用いる適切性についても触れられた。これに対し、小川未空会員は、コロナ以前は裁判記録が確認できたものの、コロナ下では裁判記録が存在しないこと、またネット記事には日付の欠如や信憑性の課題があることを説明した。

北村会員からは、非暴力ではなく逸脱研究として捉えるのか、あるいは西欧的な寄宿学校制度への批判として整理するのか、焦点を明確化する必要性が指摘された。また、学校放火報道の傾向推移など、事実データに基づく分析の精緻化が必要であるとのコメントがあった。小川美空会員は研究の位置付けを再検討しつつ、事実データの補強を進めながら分析を精緻化したいと応答した。

第4発表:マレーシアにおける難民の高等教育就学可能性―高等教育機関職員および難民の若者へのインタビューから―

発表者

  • 金子聖子(東洋大学)

コメント・応答など

小川会員からは、マレーシアに難民が流入する背景や経路について確認があり、研究対象としてA校を選定した理由について質問があった。金子会員は、マレーシアでは高等教育機関の多くが私立大学であるものの、難民の受け入れの制度的制約が存在し、その中でA校が例外的に多くの難民を受け入れている点を説明した。

黒川会員からは、第三国定住について質問があった。これに対し、金子会員は、第三国定住は存在するものの申請後の待機期間が長期化しており、再定住できる可能性は必ずしも高くなく、世代を超えて不確実性が続いている現状を説明した。

辻本会員からは、A校の対応策や研究の方向性についてコメントがあった。これに対して、金子会員はマレーシア社会における少数者教育機関の存在や理念的役割にも触れつつ、高等教育へアクセス可能であること自体が難民のモチベーション形成に寄与し得る点を回答された。

総括

ディスカスタントによる建設的なコメントや助言に加え、セッションフロアからも活発に質問や意見が寄せられ、セッション全体として実りある議論が展開された。本セッションは、発表者ならびに参加者双方にとって研究の視点を広げ、今後の研究の進展に繋がる有意義な機会となった。

報告者:小川啓一(神戸大学)

[L2] 大学が動かし、大学で育まれる開発のかたち:環境・教育・学術・技術の結節点

  • 日時:2025年11月29日 12:40 -14:40
  • 聴講人数:10名
  • 座長:星野晶成(名古屋大学)
  • コメンテーター:梅宮直樹(上智大学)、星野晶成(名古屋大学)

第1発表:But what about the Trees? Exploring Tensions in a Philippine Campus using Multispecies Ethnography and its Implications for Alternative Approaches to Development and Ecological Justice

発表者

  • SARMIENTO EMILY (ATENEO DE MANILA UNIVERSITY)

コメント・応答など

This presentation applies a multispecies ethnography lens to examine tensions at Ateneo de Manila University, where tree removal for parking and e-jeep lanes sparked debates on sustainability and mobility. Trees are treated as active agents shaping human spaces and decisions. Through analysis of memos, student publications, and social media, the presentation reveals competing narratives: the administration justified cutting invasive species under Laudato Si’ and biodiversity goals, while the community advocated for green spaces and participatory governance. Findings underscore anthropocentric biases in sustainability and propose inclusive frameworks that recognize nonhuman agency and advance ecological justice. Participants engaged in vigorous discussions about methodologies for treating non-human entities as participants rather than mere data in multispecies ethnography research.

第2発表:科学技術分野の大学教員の留学を通じて形成される国際学術協力関係のメカニズムに関する実証研究

発表者

  • 梅宮直樹(上智大学)
  • 萱島信子(JICA緒方平和開発研究所)

コメント・応答など

本発表は、日本留学を経験したインドネシアの大学教員との学術協力のメカニズムを実証的に分析したものでした。日本の大学とガジャマダ大学やバンドン工科大学の事例を対象に、半構造化インタビューを通じて学術協力がなぜ発生・継続しうるのか、その促進要因、阻害要因を検討しました。結果、共通の研究課題、信頼関係に基づく人的ネットワーク、制度的支援が協力を持続させる鍵であり、互恵性・公平性に基づく関係が信頼を醸成することが確認されました。国際学術協力には資金や制度的枠組みも不可欠であることが示されています。参加者からのコメントと質問として、この研究の大きなスコープ(他分野・他国への比較)への展望、メカニズム解明という点から提示された要因がどのように有機的に関わって、学術協力が成立するかなどの活発な議論がなされました。

第3発表:ガーナ農村部における大学から仕事への移行プロセスーオンライン質問紙での追跡調査から

発表者

  • 近藤菜月(名古屋大学)

コメント・応答など

本発表は、ガーナ農村部の大学卒業生を対象に、卒業前から卒業後3年間のキャリア展望と就労状況の変化を追跡調査したものでした。卒業後の国家奉仕(NS)終了後も就職率は低く、卒業3年後でも半数以上が失業状態でした。政府主導の起業促進政策にもかかわらず、自営業は多くの場合「生存のため」であり、長期的なキャリア展望としては安定志向が強まる傾向が確認されました。政府の期待と若者の現実には乖離があり、起業家精神の促進には卒業後の就労移行支援が不可欠であることが示唆された。参加者からのコメントとして、対象者の大学時代の専攻が与える進路選択への影響、研究設問にある「どのようにキャリア展望を描くのか」の議論をするにあたってのフォーカスグループのインタビュー結果への質問、そして、分析するにあたっての理論的枠組みに関する内容が提示され、セッション内で議論されました。

総括

本セッションでは、大学を起点とした開発の多様な側面が議論されました。

第一発表は、フィリピンの大学キャンパスにおける樹木伐採問題を通じ、マルチスピーシーズ・エスノグラフィーの視点から人間中心的な持続可能性の課題を問い、非人間の主体性を含む包括的な枠組みが提案されました。

第二発表は、日本留学を契機とした国際学術協力のメカニズムを分析し、信頼関係と制度的支援が持続的協力を支える要因であることが示されました。

第三発表は、ガーナ農村部の大学卒業生のキャリア移行を追跡し、起業促進政策と現実の乖離が明らかになりました。

全体として、大学が果たす役割は教育・研究にとどまらず、環境・国際協力・雇用創出をめぐる課題解決に向けた結節点であることが確認され、今後の比較研究や政策的示唆がありました。

報告者:星野晶成(名古屋大学)

[L3] 激動する援助秩序:アメリカ、イギリス、トルコ、韓国から捉える現在地

  • 日時:2025年11月29日 14:55 -16:55
  • 聴講人数:20名
  • 座長:大平剛(北九州市立大学)
  • コメンテーター:大平剛(北九州市立大学)、堀江正伸(青山学院大学)

第1発表:How and why has the UK’s aid motivation shifted towards securing national interests?

発表者

  • Masumi OWA(Chukyo University)

コメント・応答など

尾和会員の報告は1997年から現在に至るまでの英国における援助政策の変遷を、政党のビジョン、世論の動き、そして政治家のリーダーシップという3つの観点から明らかにした。昨今の「国益」を重視する方向性への変化によって、援助受け取り国に違いが生じたのかという堀江会員からの質問に対しては、最貧国重視から安全保障面を重視した供与先の変更がみられるという回答があった。また、従来、国民はそれほどODAに関心は無かったものの、経済状況の悪化に伴い、ODAとしての税金の支出に否定的となり、「国益」を重視する方向へと変化していること、そこにメディアによるODA批判も関係しているという指摘が報告者からなされた。

第2発表:西側援助体制の自壊

発表者

  • 志賀裕朗(横浜国立大学)

コメント・応答など

志賀会員の報告タイトルにある「自壊」について、米国がUSAIDを解体し援助を大幅に減らすことは、米中対立が激しさを増す中にあっては、中国からすれば「敵失」と映るのではないか、また、米中が勢力圏争いをしている南太平洋の島嶼国においても、米国の動きは中国を利するだけであって、外交上も失敗しているとの大平会員によるコメントがあった。また、志賀報告の結論部では、そのような自壊する欧米と新興国という2つのアクターの動きに注目していく必要があるとの指摘があるが、より正確には、米国を除くDAC諸国、自壊する米国、中国のような非DACドナー、そして非DACではあるもののDACに協力的なドナーという4つに分類できるのではないか、その4つに着目して開発援助秩序を見ていく必要があるのではないか、と大平会員から指摘があった。

第3発表:韓国の開発協力政策の再構築:DAC加盟後の変化を中心に

発表者

  • 姜宇哲(韓国輸出輸入銀行)

コメント・応答など

坂根会員から韓国の援助について誰が戦略を練るのかとの質問があった。それに対して、姜会員からは、DAC加盟後の2011年以降に策定されてきた3次にわたる国際協力の基本計画と政権交代のタイミングがずれてきたことで、それが不明確になっているとの回答があった。しかしながら、現在策定中の第4次においては、初めて政権交代と策定の時期が一致しており、周辺国の動きを見ながら戦略性が強調される見通しであることも付け加えられた。また、フロアーからは、日本が韓国から学べる点は無いかとの質問に対して、DACのピアレビューに対する韓国の反応が指摘された。韓国政府はピアレビューの結果を真摯に受け止め、それをもとに政策を変化させてきたとの回答であった。

第4発表:変容するトルコ援助―汎トルコ主義、欧州化、新オスマン主義、戦略的深度―

発表者

  • 近藤久洋(埼玉大学)

コメント・応答など

報告で使用されている「ハイブリッド」という言葉は、本来、異種の2つのモノが組み合わさったことを意味するが、報告からはトルコの援助を「ハイブリッド」とするのは不正確ではないかとの堀江会員からの指摘があった。それに対して、近藤会員からは、トルコ政府は試行錯誤を行いながらも、姜報告にある戦略の積み重ね(layering)を行っており、量的には人道援助が多いことが示された。また、フロアーから「汎トルコ主義」と「オスマン主義」の関係がわかりにくいとの指摘があった。それに対して、近藤会員からは「オスマン主義」は領土的な野心を含んでいるのではないかという批判もあり、最近ではトルコ政府も言及しなくなってきた概念であるとの補足説明があった。また、志賀会員からは、報告内で使われている「戦略的深度」という用語はもともと軍事用語なのではないかという指摘があった。

総括

各報告は、援助政策の変化や変化を促した国内および国外要因を分析した大変興味深いものであった。各国はそれぞれ置かれた状況が違い、援助政策に独自性が認められるものの、昨今の世界情勢を反映し、自国第一主義や援助の安全保障化といった共通項があることが確認できた。今後は、多様化したドナーの動向に注目しながら開発援助秩序の行方を見ていかなければならないということを確認してセッションを締めくくった。

報告者:大平剛(北九州市立大学)

「第36回全国大会」大会報告ページ

  1. 第36回・全国大会セッション報告:一般口頭発表・G,H
  2. 第36回・全国大会セッション報告:一般口頭発表・I
  3. 第36回・全国大会セッション報告:一般口頭発表・J
  4. 第36回・全国大会セッション報告:一般口頭発表・K
  5. 第36回・全国大会セッション報告:一般口頭発表・L
  6. 第36回・全国大会セッション報告:一般口頭発表・M
  7. 第36回・全国大会セッション報告:企画セッション
  8. 第36回全国大会セッション報告:ラウンドテーブル(A,
    B, C)
  9. 第36回全国大会セッション報告:ラウンドテーブル(D,
    E)
  10. 第36回全国大会セッション報告:ラウンドテーブル(F,
    G, H)
  11. 第36回・全国大会セッション報告:ブックトーク
  12. 第36回・全国大会セッション報告:ポスターセッション

関連記事

インタビュー