設立趣意
Prospects
第2次世界大戦の終結を契機として、旧植民地の政治的独立、社会主義経済の台頭、先進工業諸国の経済復興と共に、経済開発は世界のあらゆる主権国家の最大政策課題となった。
そのため、一方で各国は金融・財政・産業・貿易政策等を通じて自国経済の成長と産業構造の 高度化を計ると共に、他方ではかかる国民経済開発の適切な進展を促進せんがための国際経済協力体制の構築・強化に努めてきた。
その結果、貿易、民間投融資、政府開発援助は飛躍的に拡大し、世界各国間の経済関係は一層緊密化し、経済成長は先進工業国、社会主義経済、開発途上国地域を通じて全般的に高度化した。
しかしその間、米ソ超大国を基軸とした東西関係の緊張、世界各地における地域的紛争、開発途上国内の政治的不安定等を反映して、各国間には経 済開発の進展に大きな格差が生まれた。特に、先進工業国と開発途上国地域との格差は拡大し、いわゆる南北問題が激化した。
また、開発途上国間の格差も拡大し、いわゆる南々問題が国際経済政治の舞台にも登場してきた。さらに、多くの国々では、経済開発優先の下で社会的歪みが拡大し、とくに80年代に入ってからの構造調整下の開発途上国では、失業の増大、貧富格差の拡大、社会資本の弱体化、教育、保健水準の絶対的低下、難民の激増がみられ、いわゆる国内の南北問題が激化しつつある。
その上、貧困や乱開発による環境の破壊、地球的規模の環境汚染が進行しつつあり、今や国際開発課題は、経済開発にとどまらず、社会開発の諸問題へと広がっている。 このような国際政治経済社会環境の下で、経済大国日本の国際責務の増大は内外共に認識されている。
特に、世界経済のインフレなき持続的成長、開放的国際経 済体制の維持、国際流動性の偏在の是正、技術移転・技術開発の促進、開発途上国に対する政府開発援助体制の強化、地球的規模の環境保全、民族文化の保存、難民問題の解決等における日本の指導力に対する国際社会の期待は大きい。
しかし、日本の対応はややもすれば「こだしで遅れぎみ」であり、二国間通商、投資、援助交渉は勿論のこと、国際経済社会関係のルール作り、国際開発体制の強化という面で特に顕著である。われわれは日本の知的指導力に対する国際社会の期待に応えなければならないし、今日こそその好機である。
また、量的には世界一、二を誇る援助国となった今日、我が国民の開発問題に対する理解を深め、開発協力について一層の支援を得んがために、開発教育活動を拡充することが急務である。
そこで、ここに経済学、経営学、政治学、社会学、文化人類学、農学、工学、医学等、従来各学問分野で発展してきた開発問題に関する知識、経験体系を集約し「国際開発学会」という横断的な政策研究組織の創設を提唱する。この学会活動を通じ我が国における開発研究および開発協力に従事する人材の養成に貢献したい。