会長挨拶(2024年2月)

2023年11月の総会で12期会長を拝命しました名古屋大学の山田肖子と申します。

2026年総会まで、約3年間、皆様に気持ちよく、やりがいを持って関わっていただける学会になるよう、努めて参りたいと思っております。前任の佐藤仁会長をはじめ、この学会をこれまで作り上げてきた常任理事、理事経験者の礎と志を継ぎつつ、国際開発や学術を取り巻く今日の状況にみあった改革も進めていきたいと思っています。

今期の方針は

  1. 国際開発学の再定義
  2. 多様性からのシナジー
  3. ワクワクの創造

です。

まず1点目の “国際開発学の再定義” は、変化の節目を、この学問分野の発展に活かす発想です。

1990年に学会が設立されて30年以上が経ち、国際開発を取り巻く環境も大きく変わっています。今年(2023年)に改定された開発協力大綱をみると、援助国-被援助国の垂直的な関係が多極化し、開発の主要アクターとしての国家の在り方が揺らぐなか、日本社会でのODAの捉え方も大きく変わっていることが分かります。

また、持続可能な開発が標ぼうされ、「国際開発」が目指す人道的で公共の利益の実現についても、誰にとって何が望ましい状態なのかが一元的に語れなくなりました。昨今の地政学的な危機やコロナ禍を経て、「国際開発」が国内や先進国と切り離された途上国の課題だという発想も陳腐化しているように思われます。

そうした変化の局面で、研究がどんな役割を果たすのか、実務者と研究者が集うこの学会がどんな場になっていくのか、皆さんと一緒に創り、考えていけたらと思っています。

2点目の “多様性からのシナジー” は、学問分野や職業、属性の違いを尊重しながら、相乗効果を生むことです。

私自身は、この学会では初めての女性の会長です。しかし、性別に限らず、世界の様々な状況での人々と関わってきたこの学会の会員の皆さんは、きっと何かしらの属性においてマイノリティになった経験や、そうなる人々に関わったことがあるでしょう。他者との違いをいかに尊重するかは、国や社会の違いを超えて国際開発学の本質を問う姿勢にもつながると思います。学問の再定義をするためには、まず我々の活動の場である大会や研究部会、学会誌などが、多様性から前向きな化学反応を生む場でありたいと思います。

12期では、障がいを持った学会員への合理的配慮を進めるべく、以前から準備を進めていた山形辰史元会長をはじめとするメンバーが、ワーキンググループを立ち上げています。

また、研究面では、学際的なこの学会にふさわしく、様々なディシプリン、研究テーマ、手法、研究対象地域、所属機関の人々が、いつも同じ顔ぶれとだけ交流するのでなく、越境し、協働してくことが重要です。

どうすればそのようなシナジーが生まれるのか。それは、まずこの学会が、会員の皆さんにとって、「あそこに行けば、いつもとは違う学問的刺激がもらえる、新しい発想が得られる、面白い人に出会える」、そういう期待感を抱き、しかもそれを裏切らない経験をできる場になることだと思います。

ですから、この3年間、私を含め、12期の役員たちは、ここをワクワクする場にするために全力を尽くしたいと思います。

学術大会が、その開催を引き受けてくれる開催校にとって、作業負担の多さに圧倒されるのでなく、自分たちならではの魅力や研究、地域社会との関わりなどを発信できる機会となるよう、サポートしていきます。

また、良い研究をしている若手や、国際開発学会では従来あまり紹介されてこなかったような分野やその研究者にも注目が当たるよう、学会賞、学生論文コンクールなどを選考に注力するとともに、広報メディアを通じた受賞者の紹介や学会内外の活動への参加奨励なども進めたいと思います。

萌芽的、実験的な研究アイディアを持った会員が本学会の研究部会を立ち上げ、学術大会での企画セッションや学会誌での論文発表につながるような道筋も積極的に示していきたいと思っています。

学会で既に活動している人だけでなく、国際開発や地域の開発課題に取り組んでいる潜在的な関心層にリーチしていくイベントや仕組みも検討しています。

こうした盛りだくさんの活動をどこまで実現できるか?それは、我々役員自身がその活動を楽しみ、それが会員の皆さんにどこまで伝播していくかに依るかもしれません。

学会の運営は大いなるボランティアである、と佐藤前会長がよく言っておられました。我々は、直接的対価のためではなく、自分たちを育ててくれたこの学会が、今後も会員にとって自らの研究を発信し、先輩や他の会員からコメントをもらったり意見を交わしたりする中で成長する場であり続けるために貢献したいという思いでやっています。

会員の皆さんにワクワクしてもらう場をつくるために、まず我々役員が、「次は何をしよう、こうなったらもっといいんじゃないか?」と提案し、アクションを取る、そんな12期でありたいと思います。そしてそんな役員に対して、会員の皆さんからもアイディアを寄せていただければ幸いです。

第12期国際開発学会
会長 山田 肖子




第34回全国大会を終えて

第34回全国大会を終えて コロナ禍を経て、数年ぶりの全面対面の全国大会となりました。コロナ以前の大会がどうだったのか思い出しながら準備を進めました。

コロナ禍は我々の活動に多くの制限をもたらしましたが、遠く離れた人々とも連帯してグローバルな課題の解決に取り組む必要があることを改めて認識する機会ともなりました。危機は何かを生み出すチャンスにもなります。

このようなことから、今回の大会テーマは「複合的危機下における連帯と共創」としました。プレナリーでは日本の開発援助の行方を議論し、各セッションにおいても大会テーマに即した内容が多くあったように思います。

大会運営においては、参加者の皆様にとって安全で、持続可能な、そして包摂的な方法を模索しながら進めました。懇親会での個々盛弁当の提供やプレナリーでの情報保障(同時通訳、要約筆記など)などはその試みの例です。今後の大会運営の参考にして頂ければと思います。

2日間の大会では、450名ほどの参加者にご来校頂きました。当日は複数の他のイベントが学内で開催されており、やや狭い建物での開催になりましたが、逆にコンパクトに実施出来て良かったと思っています。

大会期間中、特に大きな問題も無く、円滑に実施することが出来ました。参加者の皆さま、運営に関わって下さった皆さまに深く御礼申し上げます。

第34回全国大会・実行委員会
委員長:小松太郎(上智大学)




第34回全国大会セッション報告(一般口頭発表)

一般口頭発表


1C:教育(日本語)

  • 座長:小川 啓一(神戸大学) 
  • コメンテーター:坂上 勝基(神戸大学)、黒田 一雄(早稲田大学)
  • 2023年11月11日(土曜)09:30 〜 11:30
  • 会場:紀-B104 (紀尾井坂ビルB104)
  • 聴講人数:32名

第1発表:[1C01] ケニア農村部の初等教育の公正性と包摂性―公立と私立の二項対立分析の再考

西村 幹子(国際基督教大学)

西村会員は、ケニア農村部の初等教育において、それぞれの学校を率いる校長やシニア教員が公正性や包摂性をどのように捉えているかについて発表した。

学校の公正性と包摂性は、校長や教員の背景にある考え方や経験、マサイ族の文化、地域との関係性に依っており、必ずしも私立校、公立校という二項対立軸で捉えられるものではないことを明らかにした。

これに対して、コメンテーターの黒田会員から、私立-公立という二項対立軸ではなく、それぞれの学校運営を支えるコミュニティや民族の文化、校長や教員のこれまでの経験に関するインタビュー調査の分析に基づく、本発表のユニークネスについての評価がなされた。

第2発表:[1C02] 授業形態別にみた教育効果の検証:バリ島における環境教育を事例に

栗田 匡相(関西学院大学)

第二発表では栗田会員から、バリ島における環境教育を事例にして、授業形態別による教育効果の差について検証した研究成果の報告が行われた。

座学のみと比べて、地域における体験型の環境学習を組み合わせた形態によって授業を提供する方が、教育効果が中長期間継続することを示した。

これに対し、コメンテーターの坂上会員は、環境教育の効果を実証した本研究のSDGs時代における重要性を強調した上で、対照群と処置群の選定方法について確認する質問を行った。

また、環境問題に関する児童の認知能力向上のみならず、介入が環境保全状況の改善に与える効果まで検討する、今後の研究の展開の可能性についての指摘がなされた。

第3発表:[1C03] 現状に見るミャンマー連邦共和国の基礎・高等教育の課題 

牟田 博光(国際開発センター)

第三発表で牟田会員は、新型コロナウイルスと軍事政権の成立という二重のショックを受けたミャンマー連邦共和国の基礎・高等教育における現状と課題について、発表した。

教員研修の重要性、学力低下の危惧、人的資源蓄積の滞り、混乱収束後の課題が示された。

これに対して、コメンテーターの黒田会員は、日本が長年援助してきたミャンマーにおいて、教育システムが不安定になっている状況について言及した。

また、本発表で使用されたデータの貴重性を強調した上で、今後学術論文として世に公開されることへの期待を述べられた。

第4発表:[1C04] コートジボワールの初等教育における非認知能力の視点からみた教育の質

小松 勇輝(大阪大学大学院)

第四発表では小松会員から、コートジボワールの初等学校に通う児童の非認知能力、特に自己効力感と教育の質に関する報告がなされた。

学校内の児童-教師間のインタラクションと職業教育における徒弟制が、児童の自己効力感の涵養プロセスに関与していることが、主に参与観察を用いた長期間のフィールド調査によって明らかになった。

これに対してコメンテーターの坂上会員は、初等教育を対象とする研究の中で、公立校とインフォーマルセクターである職業教育の事例のみ取り出して、並列にして分析をすることの妥当性について質問した。

また、学術的蓄積が比較的乏しい西アフリカにおける、本研究の意義の大きさについても言及した。

【総括】

本セッションでは、ケニア、インドネシア、ミャンマー、コートジボワールにおける教育の現状や課題、最新の動向についての研究成果が報告された。

コメンテーターからのコメント・質問はもとより、フロアからも積極的に質問やコメントが挙がり活発な議論が行われ、発表者・参加者の双方にとって有意義なセッションとなった。

報告者:小川 啓一(神戸大学)

1D:若者と雇用(日本語)

  • 座長:吉田 和浩(広島大学) 
  • コメンテーター:狩野 剛(金沢工業大学)、谷口 京子(広島大学)
  • 2023年11月11日(土曜)09:30 〜 11:00
  • 会場:紀-B108 (紀尾井坂ビルB108)
  • 聴講人数:00名
  1. [1D01] ウガンダにおける社会的遺児の強いられた自立と職業訓練
    *朴 聖恩(京都大学大学院)
  2. [1D02] アフリカによるアフリカのための研修-ケニアの気候変動の脅威に対する第三国研修の実施を通じたサブサハラアフリカ諸国への貢献-
    *本庄 由紀(ケニア国技術協力プロジェクト)
  3. [1D03] ケニアにおけるコンピテンシーにもとづくカリキュラム改革-導入の背景と新たな課題-
    *大塲 麻代(帝京大学)

【総括】

報告者:吉田 和浩(広島大学)

1E:経済(日本語)

  • 座長:西浦 昭雄(創価大学) 
  • コメンテーター:山形 辰史(立命館アジア太平洋大学)、會田 剛史(一橋大学)
  • 2023年11月11日(土曜)09:30 〜 11:00
  • 会場:紀-B112 (紀尾井坂ビルB112)
  • 聴講人数:16名

第1発表:[1E01] 中国における地域の教育格差: CHFSに基づくジニ係数の分解分析

李 鋒(中央大学大学院)

コメンテーターの會田会員より、質の高い研究であり、都市・農村内の教育格差が都市と農村間の教育格差より大きいことを示した点がユニークである一方で、①どのような仮説を検証したいのか、なぜそれが重要なのか、先行研究の中でどのような貢献があるのか、といった研究課題を明らかにすべき点、②都市・農村内での教育格差が拡大した理由まで掘り下げる点、③2014年度の制度改革による教育格差の是正に関する効果を分析する点、のコメントがあった。

これに対して、李会員より、先行研究では都市に住んでいる農村出身の人々の格差までは計測できていないと回答した。

フロアからの質疑応答では、修学年数をジニ係数で計測した先行研究の存在や格差を示す値の目安、農村戸籍から都市戸籍にコンバージョンするプロセスについての質問があった。

第2発表:[1E02] 生成系 AIの勃興がもたらす開発途上国への影響の考察:機会と脅威

内藤 智之(神戸情報大学院大学)

コメンテーターの山形会員より、生成系AIがアフリカの労働者・農民にとって脅威なのか、それとも機会なのかという議論を経済学の代替性と補完性に分けて考えると、新技術が一般的労働者の補完的になったバングラデシュ縫製業による事例からも、一般的労働力(非熟練労働)が生成系AIによって補完的になることがアフリカ貧困削減につながることになるとのコメントがあった。

これに対し、内藤会員からは、過去のインターネットの経験から考察すると、アフリカの雇用とAIをトレードオフではなく、ポジティブな関係だと捉えていること、補完的になれるよう今後の20年を考えるための政策提言を考えていきたい、そのため農業の中では小作農のリテラシー教育が重要性をもつのではないかと、いう回答があった。

次にフロアより、大規模言語モデルではマイナー言語の蓄積が少なくなるので言語による格差が広がるのではないかという質問があった。

第3発表:[1E03] 農産品サプライチェーンにおける多様な連帯:グローバルノースとグローバルサウスの歯車

楊 殿閣(ソリダリダード・ジャパン)

コメンテーターの山形会員より、発表では社会的連帯経済を形成するために、インドネシアのパーム油とインドのコットンを事例に国際NGOであるソリダリダードの役割について考察しているが、その役割は研究や技術協力であり、買い付けや販売組織をもっているわけではなく、ユニリーバやサラヤといった買い付けを行う企業にとってソリダリダードはどのように評価されているかを視点に加えていくべきではないかというコメントがあった。

これに対し、楊会員より、植物油を使用する企業は人権や環境保護の観点からサプライヤーとの関係に注力しているが、農業生産を専門にしているわけではないため、農業が持続可能性を保つために小農、農法支援の面で市民社会と企業のパートナーシップをとる事例が増えているとの回答があった。

フロアからの、消費者の行動変容の視点、現地政府主導の認証システム、開発途上国発の加工企業の場合のグローバルノースとグローバルサウスの立て分けについてのコメント・質問があった。

【総括】

経済分野のセッションとして、中国の都市・農村の教育格差、生成系AIによるアフリカ雇用への影響、グローバルノースとサウスの社会的連帯経済の形成など広い観点から発表され、活発なコメントならびに質疑応答があった。

そこでは国際開発を考える上での新しい視点が多く提起されるなど、有意義なセッションであったと総括できる。このセッションを萌芽としてこれらの議論が発展することを願っている。

報告者:西浦 昭雄(創価大学)

1H:水と衛生(日本語)

  • 座長:杉田 映理(大阪大学) 
  • コメンテーター:西野 桂子(関西学院大学)、緒方 隆二(国際協力機構)
  • 2023年11月11日(土曜)09:30 〜 11:30
  • 会場:紀-108 (紀尾井坂ビル108)
  • 聴講人数:20名

第1発表:[1H01] バングラデシュ南西沿岸部における世帯単位の給水サービスの可能性-ポンド・サンド・フィルターと逆浸透膜給水装置の比較から-

山田 翔太(立教大学)

バングラデシュ沿岸部の水源管理および支払い意思に関しての研究であり、今後の現場での国際協力の方法を考える際に有用な研究発表であった。その点を評価したうえで、コメンテーターからは次のコメントがあった。

1)給水施設の区分に関して、公共の水源(コミュニティ型水源)、個人単位で設置や運営できる水源、ビジネスを通じた給水サービスの3区分に分けるべきではないか?また、その上で先行研究をもとにそれぞれの長所、短所をまとめると分かり易い。

2)結論に関して、一般化しすぎているようにも見える。例えば、PSFでもうまくいっている事例もあるはずであり、ビジネスを通じたサービスでもうまくいっていない事例もあるのではないか(もしくは収入によって支払い意思が低い層の存在もあるだろう)。

3)コミュニティ型水源にもPSF以外に深井戸や小規模水道もあり、今回の1カ所のPSFを通じた調査結果や教訓をすべての公共の水源に適用できるかは疑問が残る。

第2発表:[1H02] 住民は手押しポンプをどのように用いるのかーモザンビーク北部農村における水源の多様性と季節性に着目してー

近藤 加奈子(京都大学大学院)

コメンテーターからは、モザンビーク農村住民の複数水源の利用状況、季節による水源利用の違いを明らかにしようとしている興味深い研究であったと評価された。

一方で、次の点が指摘された。分析の方法を多少改良する必要があること。まず、いくつかの種類の水源を調査対象としているが、水源の客観的なカテゴリーを明らかにした上で比較検討する必要がある(JMPによるカテゴライズ:Improved or Unimproved もしくはSafely managed, Basic, Limited, Unimproved)。

住民が複数の水源を使う場合は、水源によって使い方(例えば飲料用、料理用、その他)が異なるはずであり、データがあれば具体的使い方も含めて分析すべきではないか。また、提言は具体的な例を入れた方が良い(従来の水源の改良が望ましい→例えばどのような改良?)。

さらに、用語に関しても、「手押しポンプ」→「深井戸」もしくは「手押しポンプ式深井戸」、水源は「メイン、サブ」ではなく、「飲料用、料理用、その他」で分けた方が良いのではとの助言があった。

第3発表:[1H03] ベトナム農村部における浄水需要:個別家庭型アプローチの有効性

黒川 基裕(高崎経済大学)

コメンテーターから、ヒ素除去が可能となる小型浄水ボトルの商品企画・開発」を通じて、ハノイ近郊農家のヒ素問題が解決できるかの実証実験を試みた意欲的な研究であると評価したいこと、また、援助ではなく、BOPビジネスを検討している点が経済発展が著しいベトナムに適していると考えられることが示された。

サブスクリプション形式とし、ラテライトのフィルターを回収するところまで寛がられており、今後に対して示唆が多いとのコメントもフロアからもあった。

第4発表:[1H04] 市民参加と情報公開を通じた統合水資源管理、環境管理分野の協力アプローチの可能性

大塚 高弘(独立行政法人国際協力機構)

「参加型の取り組みを効果的に活用する協力アプローチとは?」という問い、すなわち、「JICA・カウンターパート・住民(社会)の三方よしの協力アプローチが作れないか?」という問いに対する実践的な研究であるとコメンテーターから評価された。

また、行政から市民への情報公開の重要性は明らかである一方、タイとボリビアの2案件において参加のはしごの参加のレベルをどのように評価できるのか、質疑応答がなされた。

【総括】

個人発表枠で「水と衛生」というセッションが組めたのは、国際開発学会では久しぶりであり、非常に中身の濃い、有益なセッションとなった。

安全な水の確保を目的としながら、給水のしくみとしは、ポンド・サンド・フィルター、逆浸透膜給水装置、手押しポンプ付き深井戸、小型浄水ボトルと多様であり、水分野研究の奥行きを示すセッションであった。

また、すべての発表に共通して、住民が、それぞれの活動にどのように参加する(サブスクも含め)のかが議論されており、重要課題であることが確認された。

報告者:杉田 映理(大阪大学)

1L:海洋文化・先住民族(日本語)

  • 座長:関根 久雄(筑波大学) 
  • コメンテーター:佐藤 敦郎(九州大学)、東方 孝之(アジア経済研究所)
  • 2023年11月11日(土曜)09:30 〜 11:00
  • 会場:紀-404 (紀尾井坂ビル404)
  • 聴講人数:13名

第1発表:[1L01] 開発に直面する先住民族の協議・ FPICに関する国際比較研究プロジェクトの構想

寺内 大左(筑波大学)
小坂田 裕子(中央大学)
深山 直子(東京都立大学)

コメンテーターから、インドネシアの一民族であるダヤックを事例として取り上げた分析からはどの程度の一般化が可能なのか、多民族国家インドネシアに注目することにより分析を拡張できる可能性、そして地方政府の特徴に注意する必要性、といった指摘や質問があった。

これらに対して、事例研究としてダヤックに注目する(インドネシアの代表例として位置付けることは重視していない)ことや、アクターとしての地方政府についても注目する予定であることなどの回答があった。

また、「国連宣言の中には『継続的な協議』という文言がなく、FPICにおける『同意』が『契約』に近いことから、将来、予想外の悪影響が生じても『同意』が縛りとなり、先住民族に悪影響を強いる危険性がある」という発表内容について、フロアから国連宣言やFree Prior and Informed Consent((FRIC)の中に”Continuous”という文言を加える方法は取れないのか、という質問があり、それに対して、すでに採択された文言なに改良を行うことは非現実的であり、目の前で生じている事態に対する短期的・即効的な方策を考える必要がある、という応答があった。

第2発表:[1L02] コミュニティベース海洋環境教材の国際ネットワーク化に関する研究

小林 かおり(椙山女学園大学)

里海とは人が環境にアクセスすることであり、利活用が必然だとすれば、ゴミの海洋投棄は必要悪とも言える現象ではないのか。

「そういうもの」という発想に立脚して里海のあり方、環境教育のあり方、漂着ゴミ問題を考えることはできないか、という質問に対し、自然と人間との関係性の観点からそういう見方はありうるが、現状はすでに必要悪の次元を超えていて、改善すべき課題として直視しなければならないところまで来ており、その意味からも環境教育の必要性は待ったなしの状態にある、という趣旨の応答があった。

また、「海外と日本」の海洋環境教育といった具合に対象を二項対立的に捉えているのではないかという質問があり、それに対し、「先行研究において(海洋に限らず)環境保護は欧米と日本の捉え方は異なっていて二項対立的に捉えられ書かれる傾向があるものの、海洋環境教材はそのような発想で書かれているわけではない。

なぜなら、台湾の場合も日本と同様に「海洋環境の持続可能性」に焦点を当てた海洋環境教材が主流であるから」という回答であった。

第3発表:[1L03] 諫早湾干拓の開発史

松原 直輝(東京大学)

発表者が諫早湾干拓事業に関して、官の役割に着目していることに対して、コメンテーターは、事業主体としては官ではあるが、その中にも公共の論理と民間の論理が混在しているとの問題意識から、漁民、農民(半農半漁)、自然環境保護活動家、ディベロッパー、国(食糧増産、防災)、裁判所の立場で公共と民間の論理を指摘した。

また、歴史分析の反実仮想的な発想から、干拓事業を見るとどのように考えられるか、質問した。

コメントに対して、発表者からは、公共の論理と民間の論理について、前者について時代を越えて一貫したものが存在せず、後者が前者の中に吸収されている印象があること、また、反実仮想的な発想からの分析は今後の課題である、という回答があった。

また、諫早湾の事例について、第2発表者に対するものと同様に、発表者は「行政/市民」と二項対立的に対象を捉えているのではないかという質問が出されたが、過去の事例を踏まえると二項対立的に解釈せざるを得ない、という応答であった。

【総括】

3事例ともに外的要因に基づく開発行為が当該地域住民の暮らしに重大な影響を及ぼし、かつ彼らの生活域内における自然環境と地域住民との関係のあり方に懸念が生じたり、その関係性のあり方に変更を迫ったりするような事態を対象にした研究であった。

いずれも発表者の視点は地域住民の側に注目し、微視的に対象を捉えながら、自然環境と住民を取り巻くマクロな動きとミクロの現実との接合を試みる意欲的な研究内容であった。

報告者:関根 久雄(筑波大学)

1M:Development theory and practice (English)

  • 座長:新海 尚子(津田塾大学) 
  • コメンテーター:後藤 健太(関西大学)、島田 剛(明治大学)
  • 2023年11月11日(土曜)09:30 〜 12:00
  • 会場:紀-407 (紀尾井坂ビル407)
  • 聴講人数:00名
  1. [1M01] Dragon Rouge Redux: Assessing China’s Economic Hegemony in Cambodia
    *Toufic SARIEDDINE(Nagoya University)
  2. [1M02] CDMモデルから考察した途上国におけるイノベーションと外資系企業の役割ーベトナムの製造業企業を事例に
    *TranThi Hue(神戸女子大学)
  3. [1M03] Digital Currency and Development: Exploring the Potential Contribution and Challenges of Central Bank Digital Currency, “ Bakong,” for Development in Cambodia
    *Hisako KOBAYASHI(Oriental Consultants Global Co., Ltd.)
  4. [1M04] The Role of Private Sector toward Poverty Reduction – Analysis of Case Study in India –
    *伊波 浩美(JDI)
  5. [1M05] Regional decline and structural change in Northeast China: An exploratory space-time approach
    *Chen Yilin(Nagoya University, Graduate School of International Development)

【総括】

報告者:新海 尚子(津田塾大学)

1N:オンライン(日本語)

  • 座長:高柳 彰夫(フェリス女学院大学)
  • コメンテーター:戸田 隆夫(明治大学)、高橋 基樹(京都大学)
  • 2023年11月11日(土曜)09:30 〜 12:00
  • 会場:紀-409 (紀尾井坂ビル409)
  • 聴講人数:00名
  1. [1N01] インドネシア・リアウ州における泥炭火災予防:現状・課題・対応案 *久保 英之1、Albar Israr2、Kurniawan Anung 2 (1. JICA専門家、2. インドネシア国環境林業省)
  2. [1N02] ASEAN諸国におけるデジタル経済促進分析:課題と戦略
    *原 正敏1、*橋 徹2 (1. ビジネス・ブレークスルー大学大学院、2. 早稲田大学)
  3. [1N03] 障害者権利条約に基づく国際協力を巡る論点及び概念整理の課題に関する一考察一各国への総括所見及び建設的対話の分析から
    *福地 健太郎(国際協力機構)
  4. [1N04] 島嶼は日本の縮図たるか?——離島及び日本における水・エネルギーの対外依存状況に着目した一考察
    *關谷 武司1、*吉田 夏帆2、*芦田 明美3 (1. 関西学院大学、2. 兵庫教育大学、3. 名古屋大学)
  5. [1N05] エジプト日本科学技術大学における教育研究機器導入、および活用プログラム開発
    *松下 慶寿(エジプト日本科学技術大学)

【総括】

報告者:高柳 彰夫(フェリス女学院大学)

1O:援助機関と現場(日本語)

  • 座長:林 薫(グローバル・ラーニング・サポート・コンサルタンツ代表/元文教大学教授)
  • コメンテーター:小林 誉明(横浜国立大学)、志賀 裕朗(横浜国立大学)
  • 2023年11月11日(土曜)09:30 〜 11:00
  • 会場:紀-412 (紀尾井坂ビル412)
  • 聴講人数:20名

第1発表:[1O01] 日本の政府開発援助の効率性とコンサルタントの関係

*大須賀 誠(法政大学大学院 公共政策研究科 博士後期課程)

本報告は日本のODA の技術協力に関して、ODA 大綱の変遷、経済団体と政府の関与、援助体制とコンサルタントの役割などについて概観し、日本の援助実施体制が欧米に比較して弱体であること、このギャップを埋めているのがコンサルタントであるが、ODA予算の減少によって、コンサルタントの雇用が減少したり単価が引き下げられたりしていることなどが、ODAの実施体制を更に困難に陥れていることを説明しようとした報告である。

報告ではコンサルタントは相手国の要望に合わせた機材を国際的な経験によって把握しているので、助言や専門的知識を提供することで技術協力が効果的に推進できるであろうが、残念ながら、コンサルタントの知見が政策立案に十分反映される条件になっているとは言えない。

さらに、個々のコンサルタントの処遇も十分ではなく、何らかの育成策が必要であると結論づけている。

本報告に対しては、「日本のODAの効率性とコンサルタントの関係」がリサーチ・クエスチョンであり「コンサルタントを活用すること」がその答えなのだとすると、新聞報道、ODA大綱、経済団体の要望書、日本の援助体制の未整備(職員数の少なさ)はエビデンスとして不十分ではないかという疑問が提起された。

むしろ、人数で「効率性」を測っているのであるとすれば、現在すでに日本のODAは極めて効率的と判断することもできるわけであるから、そもそもODAの効率性とは何かという概念定義からしっかりと行う必要がある点も指摘された。

座長からも、ODAの規模の指標として予算額は必ずしも適切ではなく、事業規模も見るべきであること、コンサルタントの雇用形態や役割は多様であり、さらなる分析と考察が必要であることを指摘した。

第2発表:[1O02] バングラデシュ郡自治体円借款事業によるガバナンス改善:ガバナンス借款の可能性

*宗像 朗1、*杉山 卓2 (1. 独立行政法人国際協力機構、2.株式会社コーエイリサーチ&コンサルティング)

本報告は、バングラデシュの郡自治体借款事業(UGDP)1を事例にガバナンス借款の可能性を検討したものである。

この事業では①バングラデシュ全郡(約500 郡)を対象に実施した行政評価、②行政評価に基づいた開発資金の郡への供与、③研修とファシリテーターによる基本行政実施支援、の三つを柱にする約147 億円の円借款事業である。

このPDCAとインセンティブを組み合わせた仕組みにより、群自治体関係者のオーナーシップが高まり、説明責任の向上や適正な手続きの確保など実際にガバナンス改善が見られたとし、ガバナンス借款には大きな可能性があるとした報告である。

本報告に対しては、円借款によって全国的・広域的にガバナンス改革を促進する可能性を検討した興味深い論考であること、またその経緯を丹念に記録しデータを採った上でシンプルな記述統計を使って効果の発現を示した実証分析であることから、極めて高い評価がなされた。

一方、「日本の援助機関によるバングラデシュという特定の国に対する一事例」の紹介(アネクドート)にとどまっている嫌いがあるため、比較事例研究とするなどして、一国事例を超えた普遍的な教訓を引き出すことを検討してほしいとのコメントがなされた。

座長からは、これは日本の国際協力におけるプログラム支援の成功例であり、円借款という資金規模が大きい仕組みを使って全国をカバーできたことが、指摘されたような効果を生んだと考えられ、特筆すべきであるが、ガバナンス改善効果についてはより客観的なデータで評価する必要があること、インパクト評価を実施すれば教訓を一般化できることなどを指摘した。

第3発表:[1O03] 技術協力プロジェクトにおける効果的な実施・監理手法に関する考察~パキスタン国パンジャブ州上下水道管理能力強化プロジェクト(フェーズ1、フェーズ2)の事例における非技術的要素の検討~

*佐藤 伸幸(日本テクノ株式会社)

本報告は、技術協力のプロジェクト・マネジメントの一要素としてペタゴジー(Pedagogy;子供を教える技術と科学)に対するアンドラゴジー(Andragogy:成人の学習を援助する技術と科学)に焦点を当てた。

前者では知識を教えることに重点が置かれるが、後者では気づきと学びが重要である。

アンドラゴジーの要素を検討の結果、報告では、効果的なプロジェクト・マネジメントは、①どのような考え方でプロジェクトのカウンター・パートに対応してゆくのか、② どのような視点・問題意識とプロセスで協力を進めてゆくのか、③技術協力専門家の役割と立ち位置はどのようなものかの3点が重要であると結論づけた。

本報告に対しては、技術協力プロジェクトの成功要因の概念化に取り組んだ興味深い論考であり、見えにくく注目されにくい「非技術的要素」にも光を当てている点は意義深いとの評価がなされた。

そして、単一事例研究に終わらせずにより広い普遍的なrelevanceを持つものに発展させるためには、他国・他機関の事例との比較研究を行って理論的な精緻化を進めてほしいとの提案がなされた。

その一方で、「アンドラゴジー」という概念の有効性を証明するための事例分析をしているようなきらいがみられるため、既存のドグマに囚われすぎる必要はなく、むしろ現場の経験に基づいて既往理論に修正を加えるくらいの姿勢があっても良いのではないかという指摘もなされた。

座長からは、教育で「気づきと学び」を重視するアプローチは、現在ではアクティブ・ラーニングのように小中学校の学習でも重視されるようになってきており、ペダゴジーとアンドラゴジーの対比はやや古いパラダイムになりつつあるのではないかという指摘を行った。

【総括】

総じて、本セッションはODAを通じた人材育成の重要性に焦点が当てられ、その最適な手法についての議論が行われたセッションになった。

日本のODAの強みは人材育成であり、これが日本の国際的な役割として重要であること、ODA政策において人材育成がもっと重視されるべきであることを座長から指摘して、セッションを終わった。

報告者:林 薫(グローバル・ラーニング・サポート・コンサルタンツ代表/元文教大学教授)

2L:Health, gender, family (English)

  • 座長:松山 章子(津田塾大学)
  • コメンテーター:高松 香奈(国際基督教大学)、宇井 志緒利(明治学院大学)
  • 2023年11月12日(日曜)09:30 〜 11:30
  • 会場:紀-404 (紀尾井坂ビル404)
  • 聴講人数:20名

第1発表:[2L01] Scalable and Sustainable Adaptive Solutions to COVID-19 Disruptions in Family Planning (FP) Health Service Delivery in the Philippines

Leslie Advincula LOPEZ
Jessica Sandra Claudio
Haraya Marikit Mendoza
(Ateneo de Manila University)

The presentation was on a policy advocacy-oriented research on family planning health service delivery in the Philippines based on the experiences during the COVID-19 pandemic. Dr. Shiori Ui, the discussant, acknowledged its academic and practical significance in flexibility and innovative adaptation experiences of the project activities during normal time which can be utilized for the pandemic time. She, however, raised some important inquiries including the needs of detailed analysis of BARMM (Bangsamoro Autonomous Region in Muslim Mindanao). She also emphasized the importance of further analysis on its role of the identified Health Care Provider Network. Exploring how it contributes to UHC (Universal Health Care) would be very much insightful for us.

第2発表:[2L02] Caring through a Pandemic: Filipino transnational families’ survival of disrupted mobility during the COVID-19 crisis

Derrace Garfield MCCALLUM(Aichi University)

The presentation was on the study exploring the impact of digital technology on Filipino transnational families, focusing on how ICT (Information and Communication Technology) ’s influence the (re)creation and maintenance of family bonds during the COVID-19 pandemic. The discussant, Dr. Kana Takamatsu, appreciated that the paper was convincing and well organized. Acknowledging its nique feature which challenged the existing notion, she inquired some important methodological and analytical approaches. She asked if the results would be different by age and gender. It was also pointed out by her the term, “care”, should be clarified and defined since care is an ambiguous word, could mean emotional and/or financial spheres. Moreover, she raised interesting question that intimate relationships of ICTs could become possible “possessive relationship”.

第3発表:[2L03] Gender dimensions of the world of work under crises: Trends and challenges

Naoko OTOBE

The presenter reported, using the existing panel data of world of work, how these multiple crises have impacted women and men differently in the arena of work. Dr. Kana Takamatsu acknowledged that it was an informative paper to enhance the understanding of the impact of COVID-19 on work/ employment by gender perspective. She raised several questions, however, including accuracy of analysis period. Although the paper covered the crises such as COVID-19, climate change, and Ukraine and Russia conflict, the framework of the analysis period for the study was not very clear. Moreover, “intersectionality” is an important notion in gender analysis and she suggested discussion on the point would be useful for further study.

第4発表:[2L04] カンボジアにおける紛争と信頼ー2021年カンボジア社会経済調査を用いた実証分析ー

大貫 真友子(早稲田大学)
小暮 克夫(会津大学)
高崎 善人(東京大学)

This was the presentation on the study on impact of conflict exposure on social trust in Cambodia, using Cambodia Socio-Economic Survey (CSES) 2021. The data on social trust was collected through informally added questions by one of the study collaborators who was a part of the CSES 2021 team. The significance of the research topic, how conflicts may affect attitude and feelings in relation to social trust of people and community is well taken at this time of violent conflict around the world. However, Dr. Shiori Ui, the discussant, who are familiar to Cambodian society, raised an important issue regarding relevance of the questions used to measure social trust. Additionally, validity of the study topic, whether the lack of trust in non-kin-based networks is attributable to violent conflict (genocide) in Cambodia, was questioned. Rather, Dr. Ui said, a deeper-rooted problem in Cambodian society may be that trust among close kin members such as family members, relatives, and friends has been affected by violent conflict. Finally, further study prospects were discussed.

【総括】

The session offered wide variety of topics ranging from health, gender, care among family through ICT, to social trust in relation to conflict. The first three presentations, although different in topic, were all related to the impact of the COVID-19 pandemic. The last presentation, which explored the relationship between historical conflict and people’s social trust, is a very timely and important topic in light of the current global situation. I believe that those who attended the session learned a lot from these presentations. The comments by the discussants and discussion followed were also insightful and thought-provoking which would contribute to the prospect of future research.

報告者:松山 章子(津田塾大学)

2M:Sustainability (English)

  • 座長:高田 潤一(東京工業大学)
  • コメンテーター:藤倉 良(法政大学)、道田 悦代(アジア経済研究所)
  • 2023年11月12日(日曜)09:30 〜 11:30
  • 会場:紀-407 (紀尾井坂ビル407)
  • 聴講人数:00名
  1. [2M01] Sustainability Reporting: Quality Concerns of Third-Party Tools and A Call for High-Quality Third-Party Tools to Avoid Greenwashing
    *Vivek Anand ASOKAN(Institute for Global Environmental Strategies)
  2. [2M02] 生物多様性条約の「 DSI」の国際開発への影響
    *渡邊 幹彦(山梨大学)
  3. [2M03] 太平洋島嶼地域における環境意識調査~ミクロネシア連邦の事例研究~
    *高木 冬太(立命館大学)
  4. [2M04] Global RCE Network: Action-oriented Education for Sustainable Development
    *Jongwhi Park2, *Sawaros Thanapornsangsuth1,2, *Shengru Li2, Fred Emmanuel Sato2(1. Tokyo Institute of Technology, 2. Institute of Advanced Studies, United Nations University)

【総括】

報告者:高田 潤一(東京工業大学)

2N:Online (English)

  • 座長:西村 幹子(国際基督教大学)
  • コメンテーター:マエムラユウ・オリバー(東京大学)、内海 悠二(名古屋大学)
  • 2023年11月12日(日曜)09:30 〜 10:30
  • 会場:紀-409 (紀尾井坂ビル409)
  • 聴講人数:00名
  1. [2N01] 観光と環境のネクサス:ラグーナ州パグサンハン、カビンティにおける地元の認識に対する多面的な検証
    *ALINSUNURIN Maria Kristina2、*新海 尚子1 (1. 津田塾大学、2. フィリピン大学ロスバニョス校)
  2. [2N02] インドネシアにおける職業教育と非認知能力が労働成果に与える影響
    *崔 善鏡(広島大学)

【総括】

報告者:西村 幹子(国際基督教大学)

2O:社会開発、コミュニティ(日本語)

  • 座長:小早川 裕子(東洋大学) 
  • コメンテーター:藤掛 洋子(横浜国立大学)、松丸 亮(東洋大学)
  • 2023年11月12日(日曜)09:30 〜 11:30
  • 会場:紀-412 (紀尾井坂ビル412)
  • 聴講人数:18名

第1発表:[2O01] 通域的な学びの実践 – Africa-Asia Business Forumにおける学び合いを媒介とした地域間のつながり

工藤 尚悟(国際教養大学)

本研究では、国際協力や開発学の地域研究に従来の研究者や実務者による知見共有から直線的に課題解決が設計される方法ではなく、具体的な現場を持つ全く異なる地域の実践者たちが共同フィールドワークを通して得られる視点や気づきのリフレクションを基に、習慣的な思考パターンへの気づきや新しい視点の獲得といった自己変容を促す「通域的な学び」に関する調査が行われた。

コメンテーターからの課題解決型ではないプログラムの成果をどう評価できるのか、との質問に対し、工藤会員は、課題の出口として、方法論を提供する発展的評価になる回答した。

第2発表:[2O02] 開発学における表情解析の応用可能性:マダガスカル農村の女性における事例

山田 浩之(慶應義塾大学)

開発研究における調査では、回答者の設問理解度の把握の難しさ、考えずに回答している可能性、主観的で要因が多様な幸福感の測定が難点であるため、客観的調査が可能な顔を認識するソフト、FaceReader (FR)を起用した。

マダガスカル農村女性の笑顔をデータ化したものと記述調査を照合し、幸福感と個人や世帯の特性との関連性が調査された。

コメンテーターからは、FRをマダガスカルで使う有効性、調査結果が従来の調査結果と変わらなかった事から、FRを開発学で利用する意義の説明が必要ではないかとの指摘があった。

第3発表:[2O03] ブータン東部におけるアブラナ科野菜の普及の実態とその要因-タシガン県バルツァム郡を事例に-

生駒 忠大(京都大学/日本学術振興会)

本研究は、ブータンにおける新たな換金作物の普及は単に高換金性が引き金になっているのではなく、農業実践や地域文化の変容が普及の要因となっている可能性を調査した。

その結果、アブラナ科野菜が普及していった要因として、若者の離村と労働力確保の難しい村において、長期間の栽培適期と栽培の簡便性、副次的栽培、労働集約性の低さと高い生産性が村の現状に適合していたこと、アブラナ科野菜の食文化への浸透、牛の飼料としての有用性などが明らかにされた。

第4発表:[2O04] 潜在的に田園回帰志向を持つ人の要因分析 -地方に関心のある大学生に魅力的な地方自治体の施策とは-

戸川 椋太(立命館大学大学院)

田園回帰志向を持つ学生の実態を把握し、地方自治体への政策提言を目的に、潜在的に回帰思考のある大学生の特徴を明らかにする目的の研究である。

追跡調査も予定されているが、本発表では、コメンテーターから、田園回帰の定義の明確化の必要性、アンケート調査の対象が立命館大学の学生に限定されていた事による一般化の難しさ、田園回帰志向分析の設問内容が、都市でも可能な活動ではないかとの指摘があった。

【総括】

各発表は時間通りに進んだ。どれも興味深い研究発表だったため、フロアーからの質疑がたくさんあるように見受けたが、時間が限られていたため、1名の質問しか受けられなかったのが残念だった。

報告者:小早川 裕子(東洋大学)

2L:Rural development (English)

  • 座長:澤田 康幸(東京大学) 
  • コメンテーター:髙橋 和志(政策研究大学院大学)、米倉 雪子(昭和女子大学)
  • 2023年11月12日(日曜)12:45 〜 14:45
  • 会場:紀-404 (紀尾井坂ビル404)
  • 聴講人数:不明

第1発表:[2L05] 「園芸の商品化と家庭の意思決定が小規模農家の収入に及ぼす不均一な影響:エチオピアのジマ地帯における準実験研究の証拠」

*FIKADU ASMIRO ABEJE、*Nomura Hisako(Kyushu University)

本論文はエチオピアでJICAが進めているSHEP(市場志向型農業振興)アプローチが農家所得の向上に寄与しているか、寄与している場合、それが所得レベルや男女間でどのような違いがあるか、定量分析したものである。

データは2022-23年に集めたクロスセクショナルデータで、610の農家から集めた。

推定には、マッチングとQuantile regressionを用いている。

推定の結果からは、SHEPは全体として農家所得を有意に増やしているが、その効果はもともとの高所得家庭、また男性の意思決定力が強い農家でより大きくなることが判明した。

本論文は潜在的に重要なイシューを扱っているものの、以下のような点を改訂することが望ましい。

  • アウトカムである園芸作物所得と、説明変数である園芸作物指数の間には強い相関があるため、これを説明変数に使わない方がよい。
  • アウトカムをレベルのまま使っていると、ほぼ必然的に高所得家計の方に強い影響が出がちなので、ログを採った方がよい。
  • 推定式の説明の際にいくつかの誤りが見られた。
  • マッチングの方法をもう少し丁寧に説明した方がよい。

第2発表:[2L06] Empowerment Mechanisms of the ‘ SHEP Approach’ on Horticultural Behaviour Change of Smallholder Farmers. A Case of Kenya

Peter Nyamwaya ORANGI,
Hisako Nomura
(KYUSHU UNIVERSITY)

本論文はケニアでJICAが進めているSHEP(市場志向型農業振興)アプローチ農家のビジネスや農業スキルに寄与しているか、またそれらのスキル向上を通じてエンパワメントに役立っているか、定量分析したものである。

データは4058家計によるパネルデータで。推定には、差の差の分析とOLSが用いられている。推定の結果からは、SHEPは全体としてスキル向上に寄与し、それにより、生産やマーケティング面におけるエンパワメントに繋がっていることが判明した。

本論文はSHEPのプロジェクト目標が満たされているか定量的に検証した点で意義深いものの、以下のような点を改訂することが望ましい。

  • スキルのカテゴリーづくりややや恣意的なだめ、どのような理論的背景があるのか示せるとなおよい。
  • データがどのようにとられたのか、また4058はバランスパネルなのかそうでないのかなど、詳しい説明が必要。
  • DIDよりも近年はANCOVAが好まれる傾向にあるため、DIDを使うメリットを丁寧に説明してほしい。
  • エンパワメントの分析にはOLSが使われているが、スキル変数は内生なので、その点を考慮した推定方法に改善する必要がある。

第3発表:[2L07] Economic Analysis of Income Generation Through Creation of Dairy Farmers Union. A Case Study on Balkh Dairy Union, Afghanistan

Hamed ARIF SAFI(Kyushu University)
Nomura HISAKO(Kyushu University)
Shoichi ITO(Kyushu University)
Hiroshi ISODA(Kyushu University)

Key Points
  • 7 interviewers conducted semi-structured interview in 8 villages in Dehdadi District, Balkh province in Aug 2014. 355 milk producers, 192 Balkh Livestock Development Union (BLDU) members and 163 dairy farmers not BLDU members.
  • Examination of the impact of dairy union membership on the productivity of dairy farmers and the net annual milk income of households using the propensity score matching method (PSM).
  • Union membership significantly reverberates impacts critical economic outcomes of dairy farming dynamics.
  • It recommends stakeholders in the dairy farming sector, including policymakers and farm management, to recognize the positive aspects of union participation on production and income.

Questions to understand the situation further to promote union

  1. The amounts of income and dairy production. How many cows do they have. Is the size of farmers relevant to the result?
  2. Why/how the farmers became union members: Did anybody suggest them to become members? What are the merits that they recognise? ie) info, training, funds, etc from the union.
  3. Why non-members do not join unions? What prevents them? ie) In Cambodia, people were traumatised by their experience of forced labor during communist/socialist era.
  4. How many days did 7 researchers interview 355 farmers in 8 villages. Did they simply ask their annual income and production or had farmers recorded the amounts?

第4発表:[2L08] 高価値な換金作物の導入後の農村移住と民族間の格差における変遷:ベトナム中央高地の台湾から導入されたウーロン茶産業の事例

呉 昀熹(京都大学)

Key Points
  • Semi-structured questionnaires targeting Kinh migrants for April-June 2019, and the minority settlements for Oct-Nov 2019 in D and L Communes, hubs for oolong tea enterprises, in Lam Dong province in the Central Highlands, Vietnam. Sites included oolong tea factories, farms, and various households. A total of 123 households heads: 96 Kinh, 10 ethnic minority migrants (Muong, Cham), 16 indigenous minorities (Kohor, Ma), 1 Vietnamese Chinese individual.
  • geographical access to employment, Kinh has easier access, Muong have relatively comparable access to Kinh, able to reach oolong tea enterprises within a half-hour walk, Ma and Kohor at more remote locations.
  • 2 categories of spontaneous migrants: Early migrants, dependent on network, organised migrants; Late migrants. less-dependent on network.
  • Ma, traditionally engaged in shifting agri, adapted themselves to the tea industry, changed gender roles. Kohor, traditionally nomadic lifestyle, limited engagement with industry.

Questions to understand the Discussion further

  1.  Describing “3 key attractions of the tea system included higher income, varied job chances, and accommodation” regarding each ethnic group may show the differences clearer. How it becomes as “a stepping stone to cash crop farming. As migrants’ farms become sustainable, their dependency on the system decreases”?
  2.  About Gender role, Ma has seen the changes while Kohor did not. How about other ethnic groups?
  3.  Explain more in section “3 Findings” about the socio economic impact including health risks and loss of personal time.
  4.  About “the indirect marginalization of indigenous groups”, may be discuss about Ma and Kohor separately? How about Muong and Cham?

【総括】

Rural Developmentセッションの名にふさわしい意欲的な論文が4本報告された。

特に、JICAが進めているSHEP(市場志向型農業振興)アプローチやアフガニスタンにおける酪農組合プロジェクトの評価など、厳密なエビデンス(科学的根拠)が求められている研究対象について、ミクロデータを用い、マッチング(matching)、差の差分析(difference in differences)、分位点回帰(quantile regression)など緻密な手法を用いた研究につき、計量分析を洗練化することのみならず、ドメイン知識に基づいて研究をさらに深化させるという観点から、コメンテータの高橋和志教授(政策研究大学院大学)、米倉雪子教授(昭和女子大学)より多数の建設的なコメントがなされ、活発な議論が行われた。

座長としては、今後も国際水準の開発研究・教育の成果が日本発で期待でき、国際開発学会のあるべき姿を示す有意義なセッションとなった、と感じた。

報告者:澤田 康幸(東京大学)

2M:国際開発援助(日本語)

  • 座長:伊東 早苗(名古屋大学) 
  • コメンテーター:大門(佐藤) 毅(早稲田大学)、宗像 朗(国際協力機構)
  • 2023年11月12日(日曜)12:45 〜 14:45
  • 会場:紀-407 (紀尾井坂ビル407)
  • 聴講人数:00名
  1. [2M05] 政府開発援助が海外直接投資に与えた影響―援助形態別の分析―
    *大野 沙織(京都大学)
  2. [2M06] 現地主導の開発(locally-led development)とCSOの南北パートナーシップの再検討
    *高柳 彰夫(フェリス女学院大学)
  3. [2M07] 日本政府の支援がパキスタン気象局の能力向上に果たした役割に関する考察
    *内田 善久(株式会社国際気象コンサルタント)
  4. [2M08] 国際協力における Co-Financeの「全体像」をどう捉えるか~中国と DACドナー間の取り組みを事例に~
    *石丸 大輝1、*土居 健市2、*汪 牧耘3、*林 薫4 (1. 独立行政法人国際協力機構、2. 早稲田大学、3. 東京大学、4.元 文教大学)

【総括】

報告者:伊東 早苗(名古屋大学) 

2N:環境、サスティナビリティ(日本語)

  • 座長:松岡 俊二(早稲田大学)
  • コメンテーター:佐々木 大輔(東北大学)、古沢 広祐(國學院大学)
  • 2023年11月12日(日曜)12:45 〜 14:15
  • 会場:紀-409 (紀尾井坂ビル409)
  • 聴講人数:25名

第1発表:[2N03] インドネシア国アッパーチソカン揚水発電所建設に関わる原石山の補償問題

筒井 勝治(株式会社ニュージェック)
冨岡 健一(Global Utility Development Co., Ltd)

インドネシア国アッパーチソカン揚水発電所周辺の地域住民に対する補償の法制度とその運用のあり方をめぐって議論をした。

第2発表:[2N04] 環境知識の移転をめぐる地政学的ダイナミクス:中国の環境協力機関の比較分析

WU Jingyuan(東京大学大学院)

中国における環境協力機関の展開について、リアリズムの視点、リベラリズムの視点、コンストラクティビズムの視点から議論を行った。

第3発表:[2N05] 生産国の実情から考える持続可能なパーム油-インドネシアとマレーシアの事例に着目して-

吉田 秀美(一般社団法人持続可能なサプライチェーン研究所)
楊 殿閣(一般社団法人ソリダリダード・ジャパン)

持続可能なパーム油の国際的認証と各国のナショナルな認証制度との関係のマーケット・企業の動向について議論を行った。

【総括】

インドネシアの発電所建設に伴う住民補償、中国の環境協力機関の歴史的展開、インドネシアとマレーシアの持続可能なパーム油の認証制度をめぐって議論を行い、東アジアの環境問題と環境協力のあり方について、深く考える機会となった。

報告者:松岡 俊二(早稲田大学)

2L:Education (English)

  • 座長:澤村 信英(大阪大学) 
  • コメンテーター:劉 靖(東北大学)、川口純(筑波大学)
  • 2023年11月12日(日曜)15:00 〜 17:00
  • 会場:紀-404 (紀尾井坂ビル404)
  • 聴講人数:20名

第1発表:[2L09] Inclusion in Higher Education: Exploring the Experiences of Nepalese College Students with Disabilities

Bhuwan Shankar BHATT(International Christian University, Tokyo)

障害を有するネパール人大学生の経験をもとに、高等教育におけるインクルージョンのあり方を多面的に検討するものである。

高等教育におけるインクルージョンに関する実証研究は貴重であり意義があり、その重要性はますます大きくなっている。

それゆえに、研究のスコープを発展させれば(例えば、学部生と大学院生、学生の専攻を分けるなど)、さらに学術的・実践的な示唆が得られるだろう。

集団的相互作用の概念枠組みに、なぜ財政上の視点を入れていないのか、あるいは今後の研究として制度的なインクルージョンに対する考え方について質疑応答があった。

第2発表:[2L10] Case studies of a positive outlier and a negative outlier municipal education departments in supporting primary schools in Brazil

Danilo LEITE DALMON(Kobe University)

ブラジルの同一州にある人口規模や経済指標が類似する市を対象として、初等学校を管轄する教育局の中で最も効果的な教育行政が行われている市と、反対にそうでない市を選別し、両者を比較検討、要因の分析を行おうとするものである。

ブラジルを対象とする希少性はあるが、これに類似する効果的学校研究に関わる蓄積は膨大にあるので、さらなる文献レビューを進めてほしい。

また、サンプリングをいかに行ったかのプロセスが不明であり、その妥当性を明確にする必要がある。対象とする国、地域、学校の状況がわかる基礎データを示してほしい。

オリジナルのファインディングが何なのか、従来の効果的学校研究に対していかなる貢献があるのかなど、質疑が行われた。

第3発表:[2L11] Citizenship education and Malagasy philosophy: An analysis of the upper secondary school curriculum

Andriamanasina Rojoniaina RASOLONAIVO(Osaka University)

マダガスカルの後期中等学校のカリキュラムを分析することにより、グローバルなシティズンシップ教育の中でいかなる価値観が育成されるのか、されようとしているのかを探索するものである。

脱植民地化やグローバル・シティズンシップ教育の議論の中で、学校のカリキュラムがいかなる影響を受けつつ内在化していくかを検討することは重要なことである。

一方で、シティズンシップ教育やマダガスカルのフィロソフィーがそれぞれ何を意味するかは、丁寧に記述する必要がある。リサーチクエスチョンに対する結果の提示にやや齟齬があるように思えるとの意見も出された。

第4発表:[2L12] Parental Involvement in Malagasy Students’ Career Planning: the Case of Public High Schools in Urban and Suburban Settings

Fanantenana Rianasoa ANDRIARINIAINA(Osaka University)

マダガスカルの都市部の公立高校を事例として、生徒のキャリア計画にいかに親が関わっているかを考察するものである。

このようなテーマ設定自体は、教育を受けた後の就業に関わることで興味深く、重要なテーマである。

ただし、キャリア計画の定義がやや不明瞭で、どのように親が子どものキャリア計画に関わっているのか、さらなる丁寧な分析と解釈がなされることが期待される。

現在の結論は、親が何を考えているか、何を行っているかに留まっており、いかに関わっているかが十分に探索できていないように思える。

【総括】

ネパール、ブラジル、マダガスカルと、発表者は日本の大学に属しながら、それぞれの母国を研究対象としている。

このような多様な対象国の研究発表が本学会の場で行われることは、少なくない影響を日本人研究者にも与えてくれているように思う。

今後もこのような学術面での国際交流が展開され、将来的に国際共同研究などに進展することを期待したい。

報告者:澤村信英(大阪大学)

2M:事業評価・分析(日本語)

  • 座長:大橋 正明(聖心女子大学) 
  • コメンテーター:石田 洋子(広島大学)、桑島 京子(青山学院大学)
  • 2023年11月12日(日曜)15:00 〜 16:00
  • 会場:紀-407 (紀尾井坂ビル407)
  • 聴講人数:8名

第1発表:女性自助組織を通した母親の資源獲得と子どもの教育への影響―インド Rajasthan州の Rajeevikaプログラムを事例に―[2M09] 

水島 侑香(東京大学)

この発表は、本年の3月に行ったインド西部の州の3県(District)の3つの郡(Block)で政府が進める女性の自助組織(Self-Help Group、以下SHGs)の15名のメンバーに、半構造化インタビューを行った結果を軸に分析したものである。

報告者によると、多くのメンバーがSHGのマイクロファイナンスにより事業やSHGs組織の役職報酬よる収入向上、情報や人間関係といった形での資源を獲得し、結果的に子どもの教育にポジティブな影響を与えることを示した。

この発表に対してコメンテーターである広島大学の石田洋子会員は、SHGsの活動によってその本人だけでなく、その夫、女性の両親、子ども、教員、上位機関メンバー等がどう変化して、結果的に子どもたちの教育における変化につながっているのかを、セオリー・オブ・チェンジ(Theory of Change)といった形で把握すること、SHGプログラムの全容や対象地域の教育事情などが不明である、といった指摘をした。

第2発表:カンボジア・つばさ橋建設をめぐる環境社会配慮と事業化検討プロセス[2M10] 

小泉 幸弘(独立行政法人国際協力機構)
花岡 伸也(東京工業大学)

小泉会員の報告は、カンボジアにおける同様な橋梁プロジェクトと比較して、本案件がカンボジア側からの要請から無償資金協力実施の意思決定に至るまでに、10年ほどの時間を費やしたことの要因として、2004年改定のJICA環境社会配慮ガイドラインを適用した経緯をもとにしたものであった。

結果として、早期開通を希望していたカンボジア側の声には応えられなかったことが提起された。

これに対して青山学院大学の桑島会員からは、改定後の環境社会配慮ガイドラインの画期性、外務省・JICAの権限関係の「今」、カンボジアの運輸交通開発における環境社会配慮の「今」などのより幅広い検討の必要が指摘された。

また会場から相次いだ質問を通じて、こうした配慮がなされることでより丁寧な検討がされたことを評価するという指摘や、他の新興ドナーとの対抗を意識する日本政府はこうした配慮の適用範囲を限定しようとする動きがあるという懸念などが示された。

【総括】

このセッションでは、二人のコメンテーターからのコメントと発表者による応答、そして会場の参加者との興味深いやり取りが行われた。

四人の発表者を前提にした時間枠に二人の発表だったため、時間的に余裕があったので、しっかりしたやり取りをすることができた。それでも16時半に終了した。

報告者:大橋 正明(聖心女子大学)

2N:平和構築、レジリエンス(日本語)

  • 座長:湖中 真哉(静岡県立大学) 
  • コメンテーター:松本 悟(法政大学)、桑名 恵(近畿大学)
  • 日時:2023年11月12日(日曜)15:00 〜 17:00
  • 会場:紀-409 (紀尾井坂ビル409)
  • 聴講人数:約40名

第1発表:[2N06] 特定地域における民族間の勢力均衡論(ドミノ式)についての一考察ー勢力均衡のパターン分析を中心にー

安部 雅人(東北大学)

安倍会員による最初の報告では、民族間の勢力均衡論として3つの類型が提示され、中国新疆ウイグル自治区の紛争、パレスチナ紛争、ルワンダのジェノサイド等の事例が、その3つの類型の観点から検討された。

これに対して、松本会員によるコメントでは、リサーチクエスチョンの所在、先行研究に対する位置づけ等に関する質問が投げかけられた。

また、フロアからは、なぜインクルーシブな国家を形成できなかったのかという問題意識からの再検討の可能性等の論点が提出され、報告された類型が多角的に検討された。

第2発表:[2N07] 中国の都市におけるコミュニティレジリエンスの構築に関する質的研究—ソーシャル・キャピタルの視点から

王 藝璇(大阪大学大学院)

つづく王会員による報告では、2021年の中国河南省洪水災害で被災したコミュニティを対象とするインタビュー調査結果がおもに報告された。

同会員は被災コミュニティを都市・農村の移行期コミュニティの脆弱性に注目しながら3つに類型化し、各コミュニティのレジリエンスをソーシャルキャピタルの類型の観点から分析した。

松本会員によるコメントでは、ソーシャルキャピタルの有効性を論じるに当たっての基準設定の問題、比較の前提となる影響要因の評価の問題、調査対象者の選定上の問題等が質問された。

王会員は質問に回答しながら、今後の研究にコメントをフィードバックしていく見通しを述べた。

第3発表:[2N08] エルサルバドル共和国帰国研修員によるパイロット事業の形成過程と実施に関する要因分析:
ポストコンフリクトにおける地域住民の主体的生活改善活動に着目して

藤城 一雄 (独立行政法人国際協力機構)

その後の藤城会員他の報告では、研究対象地はエルサルバドルに移り、長期内戦後のポストコンフリクト状況において、JICA本邦研修による中米地域生活改善研修を事例として、パイロット事業実施5年後の現地調査の分析結果が報告され、おもにインタビュー結果から、パイロット事業参加者の幸福感が変容した成果等が示された。

コメンテーターの桑名会員によるコメントでは、過去の教訓を踏まえている点等が評価され、今後の展望が質問された。

また、フロアからは、事業に対するネガティブな反応がなかったのかという点が質問された。藤城会員は、その後エルサルバドルで政権交代があったため、組織全体が消滅したこと等、その後の事業の経緯を踏まえつつ、これらの質問に回答した。

第4発表:[2N09] グローバル・ナレッジとしての東日本大震災とそこからの復興(途上国に役に立つ知識とするために何が必要か?)

林 薫 (グローバル・ラーニング・サポート・コンサルタンツ代表、元文教大学教授)

最後の林会員による報告は、東日本大震災の震災以降に着目し、震災伝承施設をグローバルなレッジの観点からどのように評価できるかを探究し、その調査成果が豊富な事例とともに示された。

コミュニティ防災の軽視や失敗学の不在等の課題を示しつつ、最後に何が世界に発信すべきコアなナラティブになり得るかという展望が示された。桑名会員はこれに対して調査の方法や協働知の双方向性について質問を投げかけた。

林会員は震災伝承施設の展示方針の硬直性の問題により、双方向性が現状では困難であること等を回答した。

【総括】

本セッションでは各報告が時間を超過しなかったため、充実した討議を行うことでき、多角的に報告を検討することができた。

なかでも林会員は報告を通じて、本セッションの他の報告やプレナリーセッションにも言及され、本大会の最後を締めくくるに相応しい報告となった。

報告者:湖中 真哉(静岡県立大学)

その他

  • 一般口頭発表
  • 企画セッション
  • ラウンドテーブル
  • プレナリー、ブックトーク、ポスター発表



第34回全国大会セッション報告(企画セッション)

企画セッション


[2C01] コンゴ盆地熱帯雨林における森林資源マネジメントの共創―住民がもつ在来知と科学知の統合から

  • 日時:2023年11月12日(日曜)09:30 〜 11:30
  • 会場:紀-B104 (紀尾井坂ビルB104)
  • 聴講人数:11名
  • 座長:戸田美佳子(上智大学)
  • コメンテーター/ディスカッサント:佐藤仁(東京大学)、華井和代(東京大学)

第1発表:アフリカ熱帯林における経済開発と保全の両立を目指した非木材林産物の促進とその課題

戸田美佳子(上智大学)
四方 篝(京都大学)
平井將公(京都大学)
Ndo Eunice (IRAD Cameroon)

SATREPSプロジェクトの舞台となるコンゴ盆地熱帯雨林における自然保護と経済開発の変遷を辿ることで、地域住民の森林資源に根差した生活が近年困難となってきている現状が報告された。

そのうえで、「非木材林産物(NTFPs)」の利用を通じたアフリカ熱帯林における経済開発と保全の両立を目指すために、地域社会どのような課題を抱えているのかを議論した。

討論者からは、誰のどのような意識が変われば、問題解決につながるという本質的な問いがなされ、アフリカ諸国における政府の機能に関する懸念が示されるとともに、グローバルスチュアードシップという大きな議論と繋げることの可能性が提案された。

第2発表:カメルーン熱帯雨林の野生動物モニタリング法における在来知と科学の接合

本郷峻(京都大学)

アフリカの野生動物に対する資源管理においては、生態学的な観点から重視される資源量を推定できるような、住民主体のモニタリング方法が確立しておらず、住民主体型管理の成功例はいまだほとんどない。

そこで本プロジェクトでは、狩猟実践による「収獲に基づく野生動物資源モニタリング」を提案し、本報告ではその有用性を生態学的に実証した。

討論者からは、狩猟のやり方は変化していくが、それに対して対応できるのかという質問があったのに対して、報告者からは対応できる仕組みであるとの応答があり、加えてモニタリングによって計ることが住民の行動変容につながる可能性も示された。

第3発表:「住民主体の森林資源マネジメントへむけた試行と課題」および「在来知と科学知の統合による森林資源マネジメントモデルの共創」

安岡宏和(京都大学)
平井將公(京都大学)

狩猟に基づく新しいモニタリング手法がどのように考案されたのかを、報告者による狩猟採集民と生業活動をともに実践してきた生態人類学的フィールドワークの経験から具体的に報告された。

とくに、在来知と科学知の共創のプロセスにおいては、地域住民の経験・知識を生態学者が習得し、生態学の経験・知識を人類学者が習得するという交差する経験が不可欠であり、その柱として地域住民との協働があることが強調された。

討論者からは、在来知とはどのようなレベルのものであるのか、伝統的知識や知恵のものであるのかという質問があった。

それに対して、在来知は暗黙知であり、可視化することは困難であることと応答され、伝統的知識や知恵という断片的なものとして切り出せるものではなく、多面的な土地利用をみとめて重層的な機能をもつランドスケープのなかで生物多様性を保全する「ランド・シェアリング(Land Sharing)」の視点に立ち、人々の生き方として実践される生活知として再評価する仕組み作りが重要であるという議論となった。

【総括】

討論者からはこの問題のスタートは誰がスタートなのかという問いが投げかけられた。

総合議論では、まず地域住民の生計活動が厳しく制限されている一方で、環境破壊につながる大規模開発が推進されている現状をあること、保全機関においてもリソース不足があり、保全機関と地域住民の相互不信が問題として表面化していることが再確認された。

野生動物の利用(狩猟)はネガティブな資源利用とされいるが、本プロジェクトの成果によって、狩猟のうち地域住民による自給的な狩猟は資源マネジメントを強化できるという観点からはポジティブなものになりうること、そのうえで、外来ハンターや都市への獣肉流出といったネガティブな資源利用を抑制できる可能性をして評価された。

報告者:戸田美佳子(上智大学)、本郷峻(京都大学)、安岡宏和(京都大学)、佐藤仁(東京大学)、華井和代(東京大学)

[2I02] Emerging and Advocating Donors?: The cases of Venezuela, Colombia, and NGO(English)

  • 日時:2023年11月12日(日曜)12:45 〜 14:45
  • 会場:紀-112 (紀尾井坂ビル112)
  • 座長:
  • コメンテーター/ディスカッサント:

*岡部 恭宜1、*サバルセ カルロス1、*林 明仁3、*ゴメズ オスカル2、*北野 尚宏4 (1. 東北大学、2. 立命館アジア太平洋大学、3. 上智大学、4. 早稲田大学)

【総括】

報告者:

[2J02] 開発途上国におけるミクロ実証分析

  • 日時:2023年11月12日(日曜)12:45 〜 14:45
  • 会場:紀-115 (紀尾井坂ビル115)
  • 聴講人数:10名
  • 座長:島村靖治(神戸大学)
  • コメンテーター/ディスカッサント:倉田正充(上智大学)、會田剛史(一橋大学)、樋口 裕城(上智大学)

第1発表:母親の自助組織活動への参加による娘の婚姻に与える影響

佐藤希(愛知学院大学)

インド農村部における女性の婚姻時の問題に関する実証分析として、前半は婚姻時に花嫁の生家から花婿側に支払われるダウリーに関連する要因についての分析、後半は女性のエンパワーメントを目的として行われている女性自助組織活動への参加による婚姻年齢への影響についての分析が紹介された。

コメントとしては、用語の定義や推計方法に関する質問に加えて、推計結果のなかでも女性の婚姻年齢とダウリー支払いとの間の負の相関は既存研究の「花嫁が高齢になるにつれてダウリーの額が上昇する」と矛盾するのではとの指摘があった。

発表者からは用語や推計方法についての補足的な説明と共に、既存研究との違いとしてアウトカーストのような最貧層を主な対象とした調査であることが示された。

また、女性自助組織の活動自体の多様性を指摘するコメントも出され、自助組織活動の異質性を考慮に入れた分析も提案された。

第2発表:感染症予防のためのナッジ介入による医療ボランティアの行動変容

劉 子瑩(神戸大学)

インドネシア・ジョグジャカルタ郊外で活動する医療ボランティアへ感染症予防のための情報介入(ナッジ)を行い、彼らの感染症予防行動にどのような変化が生じたのかを検証した分析結果が紹介された。

コメントして、分析結果の解釈がとても難しい結果となっていることを指摘した上で、5時点の調査データで3回の介入を実施している研究で介入効果が時間を通じて一定という強い仮定を置いている点に疑問が投げかけられた。

そして、介入効果が時間と共にどのように変化していったかを検証するほうが妥当でないかとの意見も出された。発表者からは、今後、提案された分析を採用していきたい旨、回答があった。

第3発表:インドシナ半島諸国の村落医療施設における患者満足度の分析

島村靖治(神戸大学)

ラオスにおいて実施した独自調査データを用いて、特に患者と医療従事者のリスクおよび時間選好に着目し、患者が公的村落医療施設で受けた医療サービスに対する満足度について分析が紹介された。

コメントしては、調査や分析に関するいくつかの確認の質問と共に、政策的に変えることができないリスクおよび時間選好に着目する理由についての質問が出された。

発表者の回答としては、医療従事者のリスクおよび時間選好の違いによって提供されている医療サービスの違いを検証していくことが次のステップであると説明された。

また、患者満足度について行動経済的視点からの分析を行うことについての意義を問う質問も出された。

回答として、本研究は保健学分野の専門家と共同で実施しており、提供されている医療サービスの適切さについても研究しているとの説明がなされた。

加えて、分析結果を慢性的な国家的な予算不足の問題とどのように関連付けていくかについても考えるよう提案があった。

【総括】

参加人数は比較的少人数であったが、それぞれの分野に詳しい専門家からのコメントをもらえたことで、発表者にとっては、大変有益な研究発表の場となった。

それぞれの研究は未だプリミティブなものであり、コメンテーターおよびフロアーから出された貴重な意見を採り入れて、今後、それぞれの研究の完成度を高めていくことが期待される。

報告者:島村靖治(神戸大学)

[2E03] 危機への対応とジェンダーージェンダー関係はどう危機と関係したか?ー

  • 日時:2023年11月12日(日曜)15:00 〜 17:00
  • 会場:紀-B112 (紀尾井坂ビルB112)
  • 聴講人数:不明
  • 座長:
  • コメンテーター/ディスカッサント:高松香奈(国際基督教大学)

*本間 まり子1、*高松 香奈2、甲斐田 きよみ3、小野 道子4、岡野内 正5 (1. 早稲田大学、2. 国際基督教大学、3.文京学院大学、4. 東洋大学、5. 法政大学)

  • 本間まり子
    「コロナ禍におけるバングラデシュのマイクロファイナンス事業―二重の制約に対する女性の生存戦略に着目して―」
  • 甲斐田きよみ
    「農家のリスクと機会への対応におけるジェンダーによる違い」(ナイジェリア)
  • 小野道子
    「母子家庭の母親たちの生存戦略―カラーチー市の「路上」で働く「ベンガリー」の女の子の母親たちの語りから」
  • 岡野内正
    「北東シリア自治区の奇跡」

【総括】

本企画セッションでは、「危機への対応とジェンダー」という共通テーマを設定し、議論を行なった。

危機とは、新型コロナウィルス感染症の拡大や経済的なショックだけではなく、革命などの政治的混乱や貧困、ジェンダー差別的な構造によって生活が安定しない状況など幅広く捉えた。

まず、本間会員が、バングラデシュのマイクロファイナス事業の主な利用者である貧困女性たちが、ジェンダー規範による制約とコロナ禍の影響の中で、事業をどのように利用していたかについて論じた。

次に、甲斐田会員が、ナイジェリアを事例として、農家が直面する農業におけるリスク、経済活動におけるリスク、生活におけるリスクや機会と、それらのリスクや機会への対応に、どのようにジェンダーの違いがあるかについて論じた。

さらに、小野会員により、カラーチー市の「路上」で働く「ベンガリー」を事例として、市民権を持たない母子家庭という平時から危機的状況にある女性たちが、新型コロナウィルス感染症の拡大という危機に対して、どのような対応を取ったのか議論した。

最後に、岡野内会員により、保守的なイスラム教徒が多数を占める北東シリアにおいて、ジェンダー関係に大きなインパクトを与えているロジャヴァ革命について、ジェンダー主流化政策やWPS アジェンダの視点から議論した。

コメンテーターの高松会員からは、「何が危機なのか」という問いかけがなされ、「社会的に構築された危機」と「状況的な危機」に4人の発表者の語った危機を整理し、どの発表内容も「危機は複合的である」ことを明示していたというコメントがされた。

また、「状況的な危機」とは偶発的な危機で、この状況的な危機ばかりに着目していると、常態化した危機が「正常」と捉えられる可能性がある。

そうするとジェンダー構造は「問題のあるノーマル」となっているのではという疑問を、4人の発表は提示していたと言及した。

そして、ジェンダー構造そのものが個人の「危機」であり、個人(特に女性)がどのように危機から影響を受けたかを4人の発表内容を整理して指摘した。

さらに、危機への対応がどのようにジェンダー関係に影響を与えたのか、4人の発表者に質問を投げかけた。

本間会員に対しては「世帯内、社会でジェンダー規範は軟化したと言えるか?もしくは強化された側面はあるか?」、甲斐田会員に対しては「さらなる危機を発生させながらも、どのように世帯内のジェンダー関係が変化するのか?可能性はあるか?」、小野会員に対しては「生存戦略と『こども』について、女児・男児を取り巻く関係性と変化はどのようなものか?」、岡野内会員に対しては「ロジャヴァ革命はジェンダー主流化なのか?強固な規範の中で、女性スペースをプラスαとして構築したという見方もできるのではないだろうか?」という問いがなされ、4人の発表者が回答した。

さらに、フロアも交え、4人の発表者と質疑応答により30分程度、活発な議論が続けられた。

本企画セッションを通じて、危機がジェンダー関係に与える影響とジェンダー関係が危機に与える影響、両方向からの議論が必要であること、今回のような異なるフィールドの事例の蓄積が、その議論を発展させるために必要であることに気付かされた。

今後の本研究部会での研究に向けて、必要な点を明確にすることができた。

なお、本企画セッションの冒頭で、本研究部会の代表を務められ、2023年9月26日に急逝された田中由美子会員の功績を讃え、会場の参加者とともに黙祷を捧げた。

また、本研究大会のポスターセッション会場において、田中由美子会員の業績と研究部会からの追悼メッセージを提示した。

急なお願いにも関わらず、ポスター掲示の場をいただきましたこと、この場をお借りして大会実行委員会に感謝の意を表したい。

報告者:

[2I03] プラネタリー・ヘルスの観点からパラグアイの農村開発を考える

  • 日時:2023年11月12日(日曜)15:00 〜 17:00
  • 会場:紀-112 (紀尾井坂ビル112)
  • 兆候人数:2名
  • 座長:池上甲一(近畿大学)
  • コメンテーター/ディスカッサント:受田宏之(東京大学)、牧田りえ(学習院大学)

第1発表:プラネタリー・ヘルスの観点から考える六次産業とアグリツーリズムの可能性:パラグアイにおける「農村女性生活改善プロジェクト」と「アグリツーリズムプロジェクト」を事例として

藤掛洋子(横浜国立大学)

コメンテーターから、ラテンアメリカにおける環境保全を掲げる言説(ブエン・ビビール)や社会運動が古くからみられると同時に、第一次産品に依存する構造も強化されている点がふれられた。

その中で、JICA草の根技術協力事業:「パラグアイ農村女性生活改善プロジェクト」(第一フェーズ)と「アグリツーリズム」(第二フェーズ)が展開されており援助研究として興味深いというコメントがあった。

質問は、対象となる小農のスケールと対象地域の人々はプラネタリー・ヘルスという先進国主導の概念を本当に受容できているのか、という点であった。

報告者は、対象は2つの市域の農村であり、小農の農村女性がメインであること、また、想定外に農村女性たちがプラネタリー・ヘルスという概念を受容できたのは、すでにプラネタリー・ヘルス・ダイエット的な食生活(豆食など)を農村女性たちが営んできたからではないか推察していると応答した。

第2発表:プラネタリー・ヘルスと自然資源管理の在り方 :エリノア・オストロムのコモンズ論の視点から

松田葉月(東京大学)

The comments received from the discussants included questions on how can we apply the theory of E. Ostrom to manage the Common Pool Resources in the context of agritourism, considering the previous studies on fisheries management. The presenter explained that the theoretical framework based on the eight institutional principles designed by Ostrom has been a preliminary study to evaluate the possibility to apply them to the field of agritourism in Paraguay or other country of Latin America, taking into account their governance of CPR. We are in the process to select the field area to start the assessment and application of Ostrom’s theory.

第3発表:家庭菜園の持続性を人間関係の緊密性から考える:パラグアイ農村地域の事例から

小谷博光(人間環境大学)

コメンテーターから、従来存在する社会資本を活かす、ないしは参加者間に新たにつながりを創出することで、家庭菜園を続ける純便益を高めることはできないのかという質問があった。

報告者は、参加者にとって経済的・社会的利益や価値を得られる枠組みを作ることができれば、家庭菜園を続けることの純便益を高めることが可能であると考えられるが、その様な枠組み作りが容易でなないと応答した。

その理由の一つとして、農村地域の狭いコミュニティ内での家庭菜園の推進を支援する際、指導者が特定の参加者の畑を訪問しただけで、別の参加者が嫉妬に近い感情を持ち得る可能性があることから、参加者の複雑な関係性と感情に配慮する必要がある、と補足があった。

第4発表:地場産物を活用した学校給食から考えるプラネタリー・ヘルスの可能性:パラグアイ共和国南東部の事例より

橋口奈奈穂(横浜国立大学)

パラグアイ南東部の市において、地場産物を活用した学校給食導入の試みがあったものの、政府の支援と分権化、農業生産者の組織化と調整等に課題があることが報告された。

コメンテーターから、パラグアイには小農支援のための政府機関はあるのか、また公共調達に応じた小農世帯数あるいは割合はどの程度なのか質問があった。

報告者は、パラグアイの小農支援の政府機関として、農牧省農業普及局があり、農業改良や生活改善に取り組んでいること、報告者が調査を行った地域では、市役所が落札した委託会社を中心に学校給食経営がなされるが、市役所と農牧省農業普及局の連携が不十分であったことが地産地消の推進に至らなかった要因の一つであると考えられると応答があった。

報告者が調査している市域において小農公共調達に参加した小農は15世帯程度であるが、地場産物の活用は求められていることから、今後さらに調査を行うと応答された。

【総括】

四つの事例全てが国際開発援助に関わっており、援助論であることから、良い企画であるというコメントを頂いた。

同時に、①プラネタリー・ヘルスとワンヘルスの違いは何か、②プラネタリー・ヘルスという先進国主導で作り上げられた概念が、パラグアイの小農の人々どの程度受け入れられるのか、②ラテンアメリカに特徴的なブエン・ビビール(良い生活)との関係性をさらに明らかにすること、④オストロムの8つの原則を用いる場合、アグリツーリズムを展開する際のコモンズは何なのかを明確にしていく必要があるなどの貴重なコメントを頂いた。

これらのコメントを活かして、今後さらに研究を発展させていきたいと考えている。誠にありがとうございました。

報告者:藤掛洋子(横浜国立大学)

その他

  • 一般口頭発表
  • 企画セッション
  • ラウンドテーブル
  • プレナリー、ブックトーク、ポスター発表



第34回全国大会セッション報告(ラウンドテーブル)

ラウンドテーブル


[1I01] 国際教育開発のシングル・ストーリーを乗り越える:実務者と研究者の出会い直しに向けて

  • 日時:2023年11月11日(土曜)09:30 〜 11:30
  • 会場:紀-112 (紀尾井坂ビル112)
  • 聴講人数:20名
  • 座長:荻巣崇世
  • 司会:川口純
  • ディスカッサント/コメンテーター:林研吾(国際協力機構)、泉川みなみ(国際協力機構)、坂口真康(兵庫教育大学)、関口洋平(畿央大学)
  • 第1発表:国際教育開発の哲学̶背景と展開̶
    橋本憲幸(山梨県立大学)
  • 第2発表:国際教育開発のシングル・ストーリーを乗り越える:実務者と研究者の出会い直しに向けて〜ニカラグア〜
    吉村美弥(国際協力機構)
  • 第3発表:国際教育開発のシングル・ストーリーを乗り越える:実務者と研究者の出会い直しに向けて〜マダガスカル〜
    山縣弘照(国際協力機構)
  • 第4発表:ともに「学び」・「学び直す」関係へ
    興津妙子(大妻女子大学)
  • 第5発表:国際教育開発のシングル・ストーリーを乗り越える:実務者と研究者の出会い直しに向けて〜ヨルダン〜
    山上莉奈(国際協力機構)
  • 第6発表:国際教育開発のシングル・ストーリーを乗り越える:実務者と研究者の出会い直しに向けて〜ガーナ〜
    村田良太(国際協力機構)

【総括】

本企画は、国際教育開発における実務と研究を架橋し、双方向から国際教育開発という分野を捉え直すことを目的として、特に、若手を中心とする実務者と研究者の相互理解を深めるための対話の機会として企画するものである。

2022年度から実施してきた勉強会での議論を通して、研究者側はJICAを単体のアクターと捉える傾向があり、その中で実務に携わる実務者個人の想いや葛藤に十分に目を向けて来なかったことや、逆に、実務者側は、研究者が生み出す知見や批判的検討を実務の中で十分に活かしきれていないことなど、実務(者)と研究(者)の間には「すれ違い」があることが明らかになってきた。

そこで、本企画では、この「すれ違い」の背景に、国際教育開発に関わる人々の葛藤や戸惑い、願いなどの個人的な語りが覆い隠されてきたことがあるのではないかとの仮説に基づき、これへの反省から議論を進めた。

特に、国際教育開発の中で「研究(者)」と「実務(者)」のそれぞれについて生み出されてきた、一方的で固定的なイメージ(シングル・ストーリー)を批判的に捉え、国際教育開発の語りを具体化・複数化するところから始める必要があること、また、「語られること」だけでなく「語られないこと」にも注意を払い、シングル・ストーリーが何を可能にし、何を不可視化してきたのか、議論を深めることに留意し、いわゆる研究者と実務者双方から計6名が登壇し、討論者も双方から計4名が登壇して、議論を進めた。

発表者からは、実務や研究に携わることになった背景・想いに加えて、それぞれが抱える葛藤や喜びが共有され、双方の顔を見ながら、想いをも含めて「出会う」「出会い直す」ことの重要性が確認された。

また、コメンテーターからは、やっていることの中身からは、実務(者)と研究(者)の境界は極めて曖昧なものであるにもかかわらず、それぞれが敢えて立場性を意識する/させる関係の中ですれ違いが起きているのではないかとの指摘があった。

会場からは、国際教育開発の「現場」をどう捉えていけば良いかとの指摘や、教育は明確なゴールがない(あるべきでないとも言える)分野だからこそ、「良い教育とは何か」についての対話を継続的に行なっていかなければならないのではないか、との指摘があった。

今年度より、本ラウンドテーブルのメンバーが中心となって研究部会「国際教育開発」を発足させることから、実務者・研究者の出合い直しや自分自身との出会い直しを促すために、引き続き対話を続けていきたい。

報告者:荻巣崇世(上智大学)

[1J01] 地方展開委員会主催ラウンドテーブル 地方大会から何が見えたのか?ー改めて「地方」から国際開発を考えるー

  • 日時:2023年11月11日(土曜)09:30 〜 11:30
  • 会場:紀-115 (紀尾井坂ビル115)
  • 聴講人数:00名
  • 座長:
  • ディスカッサント/コメンテーター:
*木全 洋一郎1、*佐野 麻由子2、*工藤 尚吾3、*梶 英樹4、*生方 史数5、*辰己 佳寿子6 (1. 独立行政法人国際協力機構、2. 福岡県立大学、3. 国際教養大学、4. 高知大学、5.岡山大学、6. 福岡大学)

【総括】

報告者:

[2D01] なぜ日本で「国際開発」を学ぶのか——韓国・中国の(元)留学生の経験から紡ぎ出すその答え

  • 日時:2023年11月12日(日曜)09:30 〜 11:30
  • 会場:紀-B108 (紀尾井坂ビルB108)
  • 聴講人数:25名
  • 座長:汪 牧耘(東京大学)
  • ディスカッサント/コメンテーター:大山 貴稔(九州工業大学)・松本 悟(法政大学)・劉 靖(東北大学)・キム ソヤン(ソガン大学(韓国))・Wu Jingyuan(東京大学大学院)

第1発表:留学生は「国益」になるか:行政・研究・教育現場からの考察

松本 悟(法政大学)

松本氏は、日本政府が無償資金協力で実施している人材育成奨学計画(JDS)を中心に、国際開発の日本留学が持つ特殊性と本RTの意義を述べた。

JDSは開発途上国の若手行政官が日本の大学院で英語学位を取得するのを支援し、帰国後、その国のリーダーとして開発課題の解決に寄与することを目的としている。

過去20年間で5千人以上がJDSで日本に留学した。

こうした「開発奨学生」の中心は行政官であり、修了後に帰国して開発行政と日本との橋渡しという外交的な役割が期待されている。

JDSに見受けられる「意図的な国益」に比べて、本RTは私費留学生や非行政官に登壇してもらい、留学生が自ら感じ取った日本留学の価値をその個々人のストーリーから理解する場である。

松本氏は、このような背景の違いを踏まえて、本RTにおける登壇者の語りが持つ意味を際立たせた。

第2発表:“Made in China, Recycle in Japan?”:留学の「成功例」とは何か——教育で世界を変えよう

劉 靖(東北大学)

本発表では、劉氏が「教育で世界を変えよう」という信念を持つようになった過程を振り返った。

小・中学校から、「正解」や「特権」に塗られた教育に感じた不平と違和感が、その問題関心の原点だという。

来日してから、大切な日本人の方や先生との出会いが積み重なっているなかで、劉氏は国際開発学の教育・研究活動に踏み出した。

「教育の公平」を実現するため、批判的かつ建設的な学問のあり方を国内外の機関、大学や教育現場で思索してきた。

こうした経験を踏まえて、劉氏は「国際開発に関する知の借用」から「国際開発に関する知の共有・共創」への転換が、日本で国際開発を学ぶ意味として挙げた。

その転換を引き起こす主体は、「個人」だけではなく、「地域」でもある。アジアの諸国・諸社会が互いの参照点となることで、自己理解が変容し、主体性が再構築されていく試みは、劉氏の現在進行中の研究である。

第3発表:越境者[境界人]の思い[lived experience]:イギリスと韓国から日本を包み直す[reflecting upon Japanese development studies]

キム ソヤン(ソガン大学(韓国))

本発表の冒頭で、キム氏は本RTで用いる方法論である「オートエスノグラフィ(自伝的民族誌)」の系譜を概説し、個人が自らの多面的・流動的なアイデンティティと経験を再帰的に考察・表象・構築するという行いが持つ学問的意味を浮き彫りにした。

その上で、キム氏は、1990年代から今に至り、韓国、日本やイギリスの国境を超えてきた勉強・留学・研究の経験を、その時々の時代背景と変動をかい摘みながら共有した。

日本で出会った政治生態学の面白さや地域研究者の素晴らしさ、イギリスで受けた理論・議論・研究倫理の厳しい訓練などといった越境による光の部分だけではない。深刻な人種差別と他者排除をはじめとする影もまだ境界人の心身を洗練するものとなった。

キム氏は、30年にわたって見えてきた日本の国際開発研究の可能性を踏まえながら、批判的思考の欠如や議論の断片化などとった現状に対する危機感と変革の必要性を訴えた。

【総括】

これほどまでに人を笑わせたり、泣かせたりした学会のRTはあっただろうか。発表が終わっても、会場における議論が終わらなかった。

「人材をどう育成するか」を考える前に、まずは図らずも日本に来た留学生が見てきた世界に向き合ってみることの大切さを忘れないこと。

オートエスノグラフィという一見「小さな物語」がもつ力を丁寧に用いながら、日本における国際開発研究を批判的に再構築すること。

JASIDをより多くの人が他者との共創の中で自らの足場を見つめ直す場になること。

これらの貴重な課題を示してくださった発表者、コメンテーター、司会と参加者の皆様に深く御礼申し上げたい。

報告者:汪 牧耘 (東京大学) 

[2E01] Well-being, Economics Policy Making and Sustainable Development Goals (SDGs) (English)

  • 日時:2023年11月12日(日曜)09:30 〜 11:30
  • 会場:紀-B112 (紀尾井坂ビルB112)
  • 聴講人数:15名
  • 座長:石戸 光(千葉大学)
  • ディスカッサント/コメンテーター:Arthur Grimes(Victoria University)、小林 正弥(千葉大学)

第1発表:Using wellbeing concepts to enhance international development

Arthur Grimes (Victoria University of Wellington)

千葉大学の研究プロジェクト「公正社会研究の新展開-ポストコロナ時代の価値意識と公共的ビジョン」(代表:水島治郎・千葉大学大学院社会科学研究院教授)の招聘および共催により、ウェルビーイングと経済政策策定の分野における世界的な経済学者(アーサー・グライムス博士、Motu Economic and Public Policy Research Trustシニアフェロー、ビクトリア大学ウェリントン校経済学部非常勤教授、ニュージーランド・ワイカト大学経済学部名誉教授)を招聘し、主観的幸福度、客観的経済政策(国家予算として財政的価値が配分される)、持続可能な開発目標(SDGs)の相互関係について、ウェルビーイングを考察した哲学・経済学者の系譜や、ウェルビーイング指標の低下が米国におけるトランプ政権の誕生や英国のEU離脱をある意味で予測できる指標であったこと(ただしこの分析自体は事後的なものであるが)、ウェールズを含む各国のウェルビーイング関連政策の有効性、などの側面から学際的に発題していただいた。

第2発表:Comment on “Using wellbeing concepts to enhance international development”

小林正弥(千葉大学)

アーサー・グライムズ教授からの発題を受けて、開発における新たなアプローチとして、どのような「開発」を先進国においても目指すべきか、センのケイパビリティアプローチの特質、客観・主観指標、悲惨や貧困と比較してのウェルビーイング研究の特質、政治哲学およびコミュニタリアニズム、といった概念の差異および関連性について質疑がなされた。

また「多次元的アプローチ」が有益である点、将来世代に関する目配りを行うウェールズの幸福度・公共政策を評価する点についての質疑応答が行われた。

特に多次元的なウェルビーイングを考慮していくことは、低所得のみならず、高所得国においても、生活の質の観点から重要な「開発」の課題である点が提起された。

第3発表:ウェルビーイング、公共政策およびSDGsの関連性

石戸 光(千葉大学)

出席の方々も交えてラウンドテーブル(双方向的な討論)を発表者(石戸)の司会進行により行った。

フロアからの質疑やコメントとして、「経済研究者の方がウェルビーイングを主眼として研究されていることに、研究分野の広がりを感じた」、「韓国は所得的には上がったが、幸福度はむしろ下がっているのが体感であり、この種の研究は目の開かれるものであった」「アフリカではパンとバターなどの物質的な充足が依然として重要であるが、やはりウェルビーイングの低さもあって、両者は相関している」「南米の所得水準とウェルビーイングには、また独特の特徴があるようにも思われる」など種々のコメントが寄せられた。ウェルビーイングへの文化的影響と開発の関連なども重要な論点であることが討議された。

【総括】

冒頭にて、アーサー・グライムズ博士が、公共政策に関する実務との結びつきが強い著名なエコノミストであり、2003年から2013年までニュージーランド準備銀行総裁を務めたことに言及し、その後、同氏の研究テーマがウェルビーイングおよび公共政策についてのものになっていった点を紹介した。

この経歴の変遷が参加者にとって斬新なもので、ラウンドテーブルにおける発題では、開発を問題意識の根底に持ちつつも、主観的指標と客観的指標の相互関係について議論がなされ、続く質疑も活発で有意義なものであった。

報告者:石戸 光(千葉大学)

[2H01] アジアにおける子どもの教育と健康

  • 日時:2023年11月12日(日曜)09:30 〜 11:30
  • 会場:紀-108 (紀尾井坂ビル108)
  • 聴講人数:00名
  • 座長:
  • ディスカッサント/コメンテーター:
*高柳 妙子1、*日下部 達哉2、*藤崎 竜一3 (1. 早稲田大学、2. 広島大学、3. 帝京大学)

【総括】

報告者:

[2J01] ソーシャルビジネスにおける研究の貢献可能性:インドの離島エリアにおける e-Healthビジネスの事例から

  • 日時:2023年11月12日(日曜)09:30 〜 11:30
  • 会場:紀-115 (紀尾井坂ビル115)
  • 聴講人数:20名
  • 座長:狩野剛(金沢工業大学)
  • ディスカッサント/コメンテーター:佐藤峰(横浜国立大学)・内藤智之(神戸情報大学院大学)

第1発表:ソーシャルビジネスにおける研究の貢献可能性

功能聡子(ARUN合同会社)・岡崎善朗(早稲田大学)・狩野剛(金沢工業大学)

発表者の3名から、インドのiKure社の概要、共同研究の概要といった背景説明があった。

そのあと、引き続き発表者より、インドにおける医療機器の現状や新興国・途上国での医療機器ビジネスの難しさなどについて解説があった。

そして、ソーシャルビジネスにおける研究の貢献可能性として、工学系研究者・民間企業・投資家・社会科学系研究者・現地大学・住民という各ステークホルダーの視点から見える共同研究における貢献可能性について説明があった。

【総括】

発表の後、討論者や会場の参加者からの活発なコメント・質問が行われた。今後の共同研究推進に向けた主な助言は以下の通り。

  • 現地の視点として医療サービスを提供するiKureからの情報を主としているようだが、エンドユーザの声をきちんと拾い上げるべき。例えば、遠隔医療への抵抗感、医者・看護師による信頼の違い、文化・宗教的なハードルなどについてきちんと情報を集めるべき。
  • 研究による外国人・外国資金の介入によって、ソーシャルビジネスの持続性に悪影響が出ないように気をつけた方が良い。特にこの共同研究の出口はどうなるのかと言った点は事前に先方とも意識合わせをしておく必要があると考えられる。
報告者:狩野剛(金沢工業大学)

[2C02]「持続可能性」の多義性を問う-言説分析、認識調査、評価の先に何を見るか

  • 日時:2023年11月12日(日曜)12:45 〜 14:45
  • 会場:紀-B104 (紀尾井坂ビルB104)
  • 聴講人数:30名
  • 座長:山田肖子(名古屋大学)
  • ディスカッサント/コメンテーター:木山幸輔(筑波大学)・工藤尚悟(国際教養大学)
Questioning the polysemy of “sustainability”: What to Look For Based on Discourse Analysis, Perception Surveys, and Evaluations

第1発表:「持続可能な開発」は誰にとってのどのような課題なのか:フィリピン、ガーナでのオンライン質問票調査からの試論

山田肖子(名古屋大学)・島津侑希(愛知淑徳大学)

この報告に先立つ、山田による本セッションに関する説明においては、質問紙調査による演繹的モデル作りと、学校や農村でのフィールドワークによる帰納的知見とを用いて、「持続可能性」言説をめぐる多様なリアリティを明らかにするという本セッション参加者が今後目指す目的と、国際開発学との接合という課題が示された。

その後、山田・島津報告においては、質問調査をもとに「持続可能性」概念を基軸として行われた批判的言説分析の報告がなされた。

そこでは、持続可能性に関する人々の認識において、いくつかの指向が存在することが報告された。

フロアとの議論では、本研究が持ちうる意義として、持続可能性言説がトップダウン的政治性をもちつつ同時に拡散し定着していく動態との関係を明らかにしうること、西欧近代的な認識論・存在論を問い直しうることなどが指摘された。

第2発表:「持続可能な開発」を評価するとはどういうことなのか

米原あき(東洋大学)

米原報告と次の西川報告は、帰納的知見を用いるものである。米原報告は、持続可能性と関連し実施される評価について考察を行う。

すなわち、タイにおけるコミュニティ開発評価と日本のESDに関する評価である。

報告では、そうした評価において用いられる説明責任・エビデンス・合理性について、現場の当事者とともに協創される評価指標にもとづくそれらの像の可能性が指摘された。

こうした協創においては、共通認識をどのように、いかなる主体が形づくっていくことができるのか、コメント・質問がなされた。

これは、当事者の観点が、同じ人間であっても、地球市民、学校の生徒等、多様なものでありうることとも関係する。

第3発表:食と農のシステムの持続性のなにが厄介な問題か?

西川芳昭(龍谷大学)

西川報告では、食と農をめぐる持続性に関する議論において、人間中心主義が前景にあったことが指摘された。

そして、むしろ多様なアクターとの萃点の中で、むしろ評価になじまない当事者のまなざし、例えば「種をあやす」といった農業従事者の言葉をどのように位置付けるか、といった課題が提起された。

こうした議論について、例えば当事者の視点をむしろ規範的に固定化してしまうおそれについて提起がなさたり、研究者による価値判断が機能を果たす位置等について、質問がなされたりした。

【総括】

セッション全体に共通するコメントとして、「共創/協創/対話」といったモデルにおいて、研究者と調査対象者の望ましい関係のあり方、あるいは持続可能性概念に対する研究者のポジショナリティが問われた。

あるいは、研究によって明らかとなる人々の持続可能性をめぐる認識・世界観と、研究者の価値に関する探究の関係が問われた。

セッションでは、多様な学術領域および実務家からの本研究への観点が示されるとともに、参加者がもつ持続可能性の言葉に対する態度についても言葉が示された。

こうしたことを通じ、本研究の意義について考察が深められ、今後の研究の進展に大きな意義があったと思われる。

報告者:木山幸輔(筑波大学)

[2D02] 国際開発(学)の「埋葬」と「再生」―世代を超えた、グローバルなサステナビリティの確保を射程に入れて―

  • 日時:2023年11月12日(日曜)12:45 〜 14:45
  • 会場:紀-B108 (紀尾井坂ビルB108)
  • 聴講人数:00名
  • 座長:
  • ディスカッサント/コメンテーター:
*佐藤 峰1、*小林 誉明1、*木全 洋一郎2 (1. 横浜国立大学、2. 国際協力機構)

【総括】

報告者:

[2E02] 国際協力NGOの組織基盤強化支援におけるマッチ・ミスマッチ

  • 日時:2023年11月12日(日曜)12:45 〜 14:45
  • 会場:紀-B112 (紀尾井坂ビルB112)
  • 聴講人数:不明
  • 座長:中山雅之(国士舘大学大学院)
  • ディスカッサント/コメンテーター:東郷 琴子(パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社)、松元 秀亮(国際協力機構)、篠原 大作(特定非営利活動法人日本ハビタット協会)、田口 由紀絵(合同会社 コドソシ)、楯 晃次(株式会社EMA)

国際協力NGOの組織基盤強化支援について、表面的には見えないマッチ・ミスマッチが存在するのではないかと、支援組織、支援を受ける組織、評価・伴走者の3者の視点から議論をする企画であった。

まずコーディネーターの中山が組織とは何か、組織基盤強化とは何かについて、経営学の視点で整理した。

その後、報告、パネルディスカッション、フロアからのコメントの3パートで進められた。

報告

楯が、これまで行われてきた支援制度を研修型、助成金型の2つに分け、年表に沿い、その変遷を報告した。

研修型は1987年前後から開始されたが、組織基盤強化に直接資する組織マネジメント研修やリーダーシップ研修などは、2004年からの開始となり、2011年頃までに多く行われ、その後はファンドレイジング研修に変化した。

助成金型では、1993年に初めて助成制度を設けた組織が出たものの、その後助成金制度は増えず、数団体にとどまっている現状を報告した。

こうした変遷の中で、支援を行う組織として、パナソニック オペレーショナルエクセレンスの東郷、国際協力機構の松元が、支援を受ける組織として日本ハビタット協会の篠原が、評価・伴走者コドソシの田口が、 (1)組織基盤強化/支援に関する取組、(2)支援をする組織/支援を受ける組織への要望、(3)感じ考えていること、の3点について報告した。

支援を行う組織として東郷は、社会変革における組織基盤強化の重要性、また組織基盤強化の取り組みが組織文化として定着していくことの意義、そしてそれらノウハウが業界全体に共有・浸透されることの重要性を報告した。

一方で、セクター全体の成長を促進するために、どの層を応援することが効果的かまだ定まっていないとの課題を提示した。

続いて松元は、JICAとしての支援制度を説明した後、支援を受ける組織に対して、組織同士の繋がりと学び合いによって他組織と自組織との比較を通じた気付きの重要性を述べた。

制度を整えるだけでなく、組織自らが組織基盤強化の必要性・重要性を感じて取り組むモチベーションがなければ、制度があっても組織基盤強化に資さないのではといった問いを提示した。

支援を受ける組織として篠原は、支援を行う組織に対して、より効果的なものにする為には、結果だけでなく強化プロセスを重要視すべきであることを強調した。その為強化のための組織再構築のモデルケースを提示することが望ましいと述べた。

最後に評価・伴走者の田口からは、支援を行う組織に対しては、業界の現状と外部環境の変化を把握し、業界がどうなれば世界が良くなるのかという視点をプログラムに反映することの重要性が述べられた。

支援を受ける組織には、環境が変化する中で、組織変革に取り組むことに対して組織全体で合意形成をとることが、組織基盤強化の一歩目であると報告をした。

パネルディスカッション

報告を踏まえ、中山がコーディネーターとして、報告者が討論者となり、パネルディスカッションを行った。

特に組織基盤を強化するにあたって、組織内部での合意形成と組織基盤強化に関わる三者の緊密な連携について多くの議論がなされた。

組織内部での合意形成については、組織の根幹に関わる課題と向き合うため、多くの困難や痛みを伴うこともあり、その認識を組織全体が事前に共有・合意し、取り組まなければ、本質的な組織基盤強化への取り組みは難しいことが強調された。

また三者の連携は支援制度への申請前からコミュニケーションを図るべきであり、また実施前・中・後が有機的に連結された一連モデルケースを整備することが重要であることが合意された。

フロアからのコメント

組織基盤強化を考える上でも資金調達の重要性を感じたといった感想が述べられた。

そして組織の活動分野や特徴に合わせた強化方法や成長の特徴を整理する必要があるのではないか、さらに、組織の核となるミッション・ビジョンといったアイデンティティを明確化し継承することが組織の基盤強化には不可欠であり、具体的にどのように取り組むべきか改めて考えるきっかけとなったというコメントがなされた。

【総括】

組織基盤強化に関して、支援を行う組織、支援を受ける組織、評価・伴走者という異なる立場である者が一堂に会するということが、大きな意味をもった。

そして、今後NGOが継続して組織基盤を強化していく上で必要となる視点や支援制度の在り方について、率直な意見が開示され、開かれた議論が成されたことは、今後の支援制度設計、そして本業界の成長に大きな意義を見出すことが出来る成果となった。

報告者:楯晃次(株式会社EMA)

[2H02] メイキング・オブ・開発協力大綱:大綱はどう作られ、どこに向かうのか

  • 日時:2023年11月12日(日曜)12:45 〜 14:45
  • 会場:紀-108 (紀尾井坂ビル108)
  • 聴講人数:00名
  • 座長:
  • ディスカッサント/コメンテーター:
*山形 辰史1、*河野 敬子2、*原 昌平3、*井川 真理子4、*鈴木 千花5 (1. 立命館アジア太平洋大学、2. (一社)海外コンサルタンツ協会、3. 国際協力機構、4.(株)コーエイリサーチ&コンサルティング、5. 持続可能な社会に向けたジャパンユースプラットフォーム)

【総括】

報告者:

[2O05] JICA国際協力事業における評価の枠組みとグローバル危機について

  • 日時:2023年11月12日(日曜)12:45 〜 14:45
  • 会場:紀-412 (紀尾井坂ビル412)
  • 聴講人数:00名
  • 座長:佐藤 真司(独立行政法人国際協力機構)
  • 指定討論者:伊藤  晋(新潟県立大学)

第1発表:JICA事業評価の概況と最新課題-紛争影響国の事業評価の視点-

阿部 俊哉(独立行政法人国際協力機構)
山口 みちの(独立行政法人国際協力機構)

南スーダン、フィリピン(ミンダナオ)の事例を交え、紛争影響国の事業での評価の難しさとともに、「紛争影響国・地域に留意した事後評価の視点」を整理・公開していることを紹介した。また、外部要因の考え方の整理が重要であることを報告した。

指定討論者から、①感染症、経済危機、政権交代等で事業に影響が生じた際の評価での対応、②騒乱等の影響が事業実施段階に発生し、事業計画と異なる対応が生じた場合の評価の考え方について質問があった。

JICAから、①事業形成時には想定困難で事業期間中に対応困難な事象が発生した場合、外部要因と整理するが、一律の判断基準を設けることは困難なため、事業が受けた影響の記録を残すことが重要であること、②紛争影響国での事業は、案件計画当時に治安悪化等のリスク想定及びその対策の実施内容、計画時の想定を超える治安悪化等が事業に与えた影響、事業継続に向けた対応等を事後評価時に確認することを説明した。

第2発表:新事業マネジメント(クラスター事業戦略)でのモニタリング・評価の枠組み検討について

宮城  兼輔(独立行政法人国際協力機構)
菅原  貴之(独立行政法人国際協力機構)

JICAグローバル・アジェンダ(JGA)・クラスターの概要と、クラスター単位でのモニタリング・評価の試行案を紹介した。また、クラスター導入を踏まえたJICAの評価6項目の適用項目、確認時の重みの分散案を説明した。

指定討論者から、①クラスター外の技術協力への評価6項目の適用方針、②技術協力と資金協力の取扱が異なる理由、③クラスター単位での成果検証方法について質問があった。

JICAから、①評価6項目の適用項目や重みの分散は試行対象クラスター及び事業のみ、試行結果ではクラスター外の事業に適用する可能性がある、②技術協力は活動の過程でアウトプット、アウトカムが発現するが、資金協力は事業完了時にアウトプットが生成され、事業完了の一定期間後にアウトカムが発現するのが主流という違いを踏まえている、③クラスターは、技術協力以外に資金協力や民間連携事業、他機関とのプラットフォーム活動の成果も確認対象になること、を説明した。

【総括】

以下のような質問・コメントがあった。JICAからは、JGAとクラスターが目指す方向性は、今次大会のテーマである「複合的危機下における連帯と共創」とも通ずるものであり、指摘の点も踏まえ、試行プロセスを通じてよりよい制度設計をしていきたい旨回答。

  • 多様なステークホルダーを巻き込むクラスターは、JICA単体で事業監理が可能なのか。
  • EBPMならぬPBEM (Policy Based Evidence Making)にならぬようすべき。
  • IMM(Impact Measurement and Management)の発想が重要である。
報告者:佐藤 真司(独立行政法人国際協力機構)

[2P01] 2023 JASID 世銀協議―世界銀行 ・ 日本政府 ・ 住民を繋ぐ者たち―

  • 日時:2023年11月12日(日曜)12:45 〜 14:45
  • 会場:紀-413 (紀尾井坂ビル413)
  • 聴講人数:15名
  • 座長:玉村優奈(東京大学)
  • ディスカッサント/コメンテーター:大芝亮(広島市立大学広島平和研究所)、松本悟(法政大学)

第1発表:文化運動としての愛知用水ー仲介者「久野庄太郎」を中心にー

柴田 英知(歩く仲間)

2021年9月30日に通水60周年を迎えた愛知用水は、第二次世界大戦後の、日本初の地域総合開発事業ともいわれ、また世界銀行の借款事業としても知られている。

愛知用水の事業推進の内部構造を、ソーシャル・イノベーション論の枠組みで読み解き、「文化運動としての愛知用水」という観点から、発願者であり篤農家の「久野庄太郎」の開発思想、久野らを支えた官民、皇室にまで及ぶネットワークを中心に、地域開発事業をめぐる仲介者の協働ととらえる視点を提示した。

愛知用水の事例で何がなかったら失敗していたか、成功と失敗を決める事業評価の根本的な在り方(松本)、開発コミュニティはどのようにつくられるか(大芝)がコメントされ、愛知用水が他の対日融資と比べても特異な事例であることを柴田氏は強調した。

第2発表:日本のNGOと世界銀行・財務省との対話と課題

田辺 有輝(JACSES)

田辺氏は、世界銀行と融資事業地の住民らとの仲介的な存在である「財務省・NGO定期協議」について報告した。その中で、大芝氏による過去の外部評価が紹介され、信頼関係の醸成が財務省とNGOの双方にとっての成果として挙げられた。

その後の20年間の考察として、財務省内の人事異動による知識の蓄積や逐次議事録の公開が協議を発展させたと自己評価した。

また、愛知用水の比較事例として、世界銀行が1960年から1970年に「緑の革命」として推進したパキスタンの灌漑事業が深刻な塩害を引き起こした問題を取り上げた。塩害対策の事業が新たな環境社会被害を引き起こし、それが世界銀行のインスペクションパネルにかけられ、5つの政策違反が指摘された。

愛知用水という「図らずも」成功した農業事業がある一方で、「図らずも」問題の連鎖を引き起こした農業事業もあった。

コメンテーターからは、対日融資と現在の世銀事業との異同(松本)や、協議に参加するNGOとそうでないNGOとの線引き(大芝)などについてコメントがなされた。

第3発表:2023 JASID – 世界銀行協議―世界銀行・日本政府・住民を繋ぐ者たち―

米山 泰揚(世界銀行)

米山氏は、愛知用水を主管する農林省が3省と共管し、基本計画を5省庁と協議し、さらに実施計画は3県と協議したうえに農民の意見提出権が明記されていることは当時としては極めて珍しいと指摘した。

また、米山氏が財務省職員として関わったNGOとの定期協議の意義を評価し、住民等の関係者の視点を通じて事業の多面性を認識したこと、開発政策を巡る自由闊達な議論によって「開発コミュニティ」が形成されたこと、国際開発に携わる行政官の「教育」になったことを挙げた。

世界銀行の最新の動向として、気候変動・パンデミック・政情不安な脆弱国などに対処する国際公共財の供与を強化し、環境・社会配慮原則を緩めることなく案件組成に要する時間の大幅短縮を目指すこと、今後10年で1,500億ドルの融資を積み増すことなどを説明した。

コメンテーターからは、世界銀行の予算増額・時間短縮とAIIBや中国との繋がり(大芝)や市民社会と世界銀行の間を財務省が仲介することの煩雑さ(松本)について質問が出され、米山氏からは、AIIBは競争相手ではない点や、市民社会が国会を通じて問題提起するのと同時に、財務省との定期協議の場において掘り下げた議論を行うことで、実質的な改善に繋がるなどの認識が示された。

【総括】

世界銀行の対日融資である愛知用水と、1990年代以降の日本の財務省とNGO間の世銀に関する協議を取り上げ、仲介者の役割と組織を超えた知の蓄積の重要性を浮き彫りにした。

現在、世界銀行は融資額を増加する一方で、融資審査の期間を短縮する方針を打ち出している。

本RTが、現場と世銀を繋ぐ仲介者の活動をどのように活性化できるか、新たな制度的枠組みづくりと過去の経験の援用の限界と可能性といった新たな課題を提起したといえる。

さらに、本RTが今後の国際開発学会で、世界銀行を筆頭に国際開発金融機関への議論と関心が高まるきっかけとなることを期待する。

報告者:玉村 優奈(東京大学)

[2C03] 外国人技能実習制度を通じた技能移転をめぐる課題と可能性ーベトナムにおける社会的ニーズと技能実習生の生活戦略

  • 日時:2023年11月12日(日曜)15:00 〜 17:00
  • 会場:紀-B104 (紀尾井坂ビルB104)
  • 聴講人数:20名
  • 座長:生方史数(岡山大学)
  • ディスカッサント/コメンテーター:佐藤寛(開発社会学舎)

第1発表:ベトナム人元技能実習生における技能移転と将来設計

加藤丈太郎(武庫川女子大学)

コメント:「技能移転」を研究することは技能実習制度を擁護することにもつながるのではないか。

応答:本研究は、制度の是非を超えて、移民個人に制度がどのような影響を及ぼしたのか、その内実を明らかにすることを目指している。

コメント:分析枠組みにcapabilityを用いているが、移住と開発の研究分野ではaspirationも合わせて議論されている。元技能実習生のaspirationも考える必要があるのではないか。

応答:たしかにaspirationによって事象を説明し得る可能性がある。今後ぜひ取り入れていきたい。

コメント:研究方法は、31名へのインタビューとあるが、どのように調査対象者を確保したのか。

応答:データの偏りを防ぐために、在ベトナムの日本語通訳者、日本のベトナム寺院の住職、カトリック教会のシスター、自らの前の研究の調査対象者への再コンタクトなど、複数のルートをたどり調査対象者を集めた。結果的に相当数の方へのインタビューの実現につながった。

第2発表:ベトナムの農業をめぐる社会的ニーズと技能実習生の生活戦略としての技能移転

二階堂裕子(ノートルダム清心女子大学)

コメント:日本の農業分野で就労し、農業の技術を学んだとしても、技能実習生の母国の自然条件や地理的条件が異なるため、必ずしもその技術を活用することができるわけではないのではないか。

応答:狭い意味での技術ではなく、作業遂行のための能力、たとえば、農業経営の考え方や方法を身につけることで、それを母国で活用することは可能であると思う。

ただし、日本社会がもつ知識や技能を、技能実習生の母国のそれらよりも「優れたもの」と安易に位置づけ、「修得するに値するもの」として一方的に「押し付ける」といった姿勢があるとすれば、おおいに検討の余地があると考える。

そのためにも、送出国でどのようなニーズがあるのか、そのニーズに応えうる技能とは何かを吟味する必要がある。

第3発表:介護分野におけるベトナムへの技能移転の課題と可能性:「移民力」の視点から

比留間洋一(静岡大学)

コメント:Cさん(将来故郷で介護サービスを提供すべく、現在、日本在住ベトナム人高齢者に介護ボランティアを試行)は、ベトナムでは大卒、日本では(技能実習生ではなく)留学生(現在、介護福祉士)。

ここからも示唆されるように、調査対象者を技能実習生に限定しないほうがよいでは。また、(コミュニティのチェーンマイグレーションではなく)一人の個人によるものなので、故郷のコミュニティ開発への影響は限定的になるのではないか。

応答:確かにCさんのような介護職者はまだ少ない。しかし、介護ボランティアにはCさんの同僚のベトナム人介護職者(元技能実習生を含む)が自ら進んで参加している点で可能性が感じられる。

「上からの」日本式介護の輸出ではなく、「移民力」(故郷への思いと実践)を基盤としたベトナム人による「下からの」試みのほうが持続性の面で期待できるのでは。以上から、このような事例に今後とも注視していく必要がある。

【総括】

政府の有識者会議より、近日中に、技能実習制度に代わる新しい外国人労働者の制度が示される見込みである。

今年10月に立ち上がった「移住と開発」研究会では、こうした動向をふまえつつ、日本社会が外国人労働者から「選ばれ続ける」ための道筋を検討していきたい。

報告者:二階堂裕子(ノートルダム清心女子大学)

[2D03] SDGsを追い風とした国際協力人材の確保とキャリア形成~RiskとOpportunity~

  • 日時:2023年11月12日(日曜)15:00 〜 17:00
  • 会場:紀-B108 (紀尾井坂ビルB108)
  • 聴講人数:30名
  • 座長:佐藤仁(東京大学)
  • ディスカッサント/コメンテーター:山田肖子(名古屋大学)・末森満(国際開発ジャーナル社)

第1発表:国内外の社会課題解決を結ぶ国際協力キャリア

江崎千絵(JICA)

  • JICAを取り巻く国際協力人材の現状と課題
  • JICA内外の開発協力人材の養成・確保に向けたビジョン
    (多様化・複雑化・変化する世界規模の(開発途上国の)課題に、機動的・革新的に対応するために、活力ある魅力的な開発協力人材市場を実現する)
  • 職業としての国際協力の認知向上
  • 越境支援、人材の還流
  • 個人にとっての魅力的なキャリアアップと業界全体での共創促進の方策とは?

本当に優秀な人を、国際協力人材として活躍してもらえる状態にしておくかが大事なのではないか、そのためにも待遇の工夫や地位向上への努力も必要だろう。

第2発表:「開発コンサルティング人材の確保とキャリア形成」

河野敬子(ECFA)

  • 開発コンサルタントの年代構成
    (20代と70代の増加、30代の減少)
  • 高齢化と中堅層の確保
  • 70代のプロジェクトマネジャーの増加
  • 課題と対応
    (ジェネレーションギャップ、働きやすさ、報酬、魅力発信、参入障壁対策)

開発コンサルタントは新規マーケットを目指しているのか?日本のコンサルがグローバル競争に入っていけるのか?などの質問があった。

第3発表:国際協力人材育成における大学の役割」

須藤智徳(立命館アジア太平洋大学)

  • 国際開発に関する学生アンケート結果
  • サステナビリティ学科の学生8割が国際開発に関心あり
    (ほとんどが授業をきっかけに関心)
  • 将来仕事として関わりたい人は6割
    (JICA等政府機関が人気)
  • 高校までの動機付けをどう作るか
  • 大学で国際開発教育の動機付けをどう強化するか

国際開発の仕事に関心がある学生に対して、新卒採用の門徒が狭いといった受け入れ側の課題も多く、学生からはハードルが高い印象。専門性や経験も具体的に何をといった提示があるとキャリア形成に役立つといった学生側からの声も聞かれた。

【総括】

江崎氏、河野氏、須藤氏の順にそれぞれの立場で感じている国際協力人材についての現状や課題について発表を行った後、討論者末森氏からは、①国際協力とは何かを明確にする、➁国際協力の担い手(国際協力人材)はグローバル人材である、③働く環境を改善する、④人材確保に対しターゲットを大学生に加えて中高生に拡大するといった指摘があった。

討論者山田氏からは、「国際開発学」「国際開発業界」という言葉が暗黙のうちに作ってしまっている職業上の参入障壁と″業界人”の思考枠組みをいかに変えるか?テーマとしては関心がある、既に関わっているという層といかにつながるか?といった点について、有機的につながり続けるための仕掛けにイノベーションが必要との指摘があった。

今後、学生を含めた20代、30代をターゲットとしたイベント等を検討していくべく、学生に協力を呼び掛けた。

報告者:河野敬子(ECFA)

[2H03] SDGs Reexamined-Lessons Learned from Afrian Experience (English)

  • 日時:2023年11月12日(日曜)15:00 〜 17:00
  • 会場:紀-108 (紀尾井坂ビル108)
  • 聴講人数:45名
  • 座長:Masato Noda (Ibaraki University)
  • ディスカッサント/コメンテーター:Woury M. Diallo (ex. World Bank)

第1発表:Aid Complementarity: Theory and Practice in Africa

Takeshi Daimon-Sato (Waseda University)

In this presentation, the author presented on aid complementarity in Africa. Main message can be summarized as follows: 1) competition is good, but coordination failure often results in costs for all parties. 2) there is a case for grand coalition for Win-Win-Win case, 3) It may be difficult to find a convergence for the Belt and Road Initiative (BRI) and Free and Open Indo-Pacific (FOIP) – but there exists a more realistic possibility for collaboration between FOCAC and TICAD for targeted topics. 4) in selected fields such as medical-public health/educational fields (example in Mauritania), there are some good practices in support of complementarity thesis, while transportation/energy infrastructure – there seems to be most difficult challenge to overcome. It is important to grasp the concept of complementarity with some gradation on the basis of a) Reciprocal Complementarities – South-South Cooperation, Equal Partner Cooperation / Interdependence, b) One-Sided Complementarities – Center-Periphery Relations (Growth Center vs Supplier Countries) / Dependence.  Further, the analysis could be broken into sectoral level (input-output inter-industry, or intra-industry) complementarities.  Also, multidimensionality of complementarities could apply to resources (skilled labor, capital), institutions, hardware and software (infrastructure and management system).

第2発表:Halfway of SDGs to 2030

Masato Noda(Ibaraki University)

SDGs are the global development goals 2016-2030. They are on halfway in 2023. They are required to reexamine based on the COVID-19 pandemic. Analysis of its impacts on SDGs requires multidimensional approach regarding to the three dimensions of sustainable development; economy, society and environment. The pandemic highlights vulnerability, especially people and are that left behind. COVID-19 pandemic is a global thread and crisis of human security. It is necessary to “rebuild our economies sustainably and inclusively.” “Remember, we are in this together,” “No one will ever be truly safe until everyone is safe” (Mohamed, A.J). SDGs motto, “No one left behind” is not just ideal but should be in practice. For post/with Corona society, it necessary to accelerate SDGs through human security approach in Anthropocene.

第3発表:Rely on China? Africa’s Path to SDG 10

Christian S. Otchia (Nagoya University)

This research explores the influence of Foreign Direct Investment (FDI) on regional inequality in Ghana, addressing the spatially imbalanced distribution of FDI, particularly in urban areas. Using a regional inequality index derived from predicted GDP, the study employs a panel data fixed effect model spanning 1994 to 2020 across ten regions, providing a nuanced regional-level analysis. Notably, FDI is found to significantly reduce regional inequality, highlighting the role of Ghana’s absorptive capacity. The study underscores the positive impact of FDI in the manufacturing sector, advocating for tailored policies to attract such investments to foster equitable regional development. Moreover, Chinese FDI is identified as a key contributor to reducing regional disparities, aligning with policies emphasizing infrastructure and employment. The research offers policy recommendations to optimize FDI distribution, strengthen bilateral relations with positive contributors like China, and align strategies with SDG 10. Emphasizing the non-linear relationship between FDI and regional inequality, the study calls for an adaptive approach to maximize benefits while mitigating potential disparities, emphasizing the manufacturing sector’s potential and aligning strategies with the African Continental Free Trade Area.

第4発表:China-Africa Cooperation and SDGs

Naohiro Kitano (Waseda University)

In this presentation, the author presented on the recent China-Africa relations and China’s efforts to make use of the SDGs to expand its influence, as well as challenges on the African side. China has been hosting the Forum of China Africa Cooperation (FOCAC) as a platform for enhancing relations with Africa. In 2021, for the first time, the ministerial conference adopted the long-term plan for FOCAC. The three-year plan shifted its focus from infrastructure to health, the digital economy, and human resource development. As for infrastructure, China has become more cautious about providing new loans as the debt problems of developing countries, including African countries, have worsened. A new initiative emerged in 2021: the Global Development Initiative (GDI), which provides a global platform hosted by China to accelerate the achievement of the SDGs. the GDI seems to be more of a foreign policy to increase the influence on global south rather than a development policy. Chinese government announced funding for the GDI, but not on the scale of the Belt and Road Initiative (BRI). From the developing countries’ perspective, taking Zambia as an example, good leadership and governance is the key to managing relations with China.

第5発表:China’s Party-State Relations in Africa

Takashi Nagatsuji (Waseda University)

How does the Communist Party of China (CPC) interact with the Chinese Ministry of Foreign Affairs (MFA)? Previous studies on party-state cooperation of China point out a clear division of work between the party and the state. However, in reality the divisional cooperation between the CPC and the MFA is blurry. My research untangles China’s party-state relations in Africa by constructing and analyzing original datasets covering the activities of both the International Department of the CPC Central Committee (IDCPC) and the MFA. The IDCPC is an organ in charge of the CPC’s external work. On the one hand, my research shows that party-state cooperation is not strong in terms of geographically selecting their partners and that their cooperation is weak even in the Belt and Road Initiative (BRI). On the other hand, my research shows that the IDCPC aligns with the MFA in their main activities, illustrating two types of party-state cooperation: Party-Led Cooperation and State-Led Cooperation. My research implies that China does not have one overarching Africa Strategy and the IDCPC and the MFA has its own Africa Strategy. This research contributes to the literature on China-Africa relations and advances understanding of the relations between political parties and state organizations.

【総括】

This round table is the kickoff session of new JASID ‘SDGs Re-examined’ Research Group. It aims to develop the research on SDGs post/with Corona era toward 2030, as the successor of precedent SDGs research groups of JASID: on ‘Sustainable Development and SDGs’ and ‘Resilience of Development and SDGs’. The book, Noda, M. ed. (2023) ‘SDGs Re-examined: Post/With Corona and Human Security’ is a fruit of them. Based on these, the research group plans to 1) conduct case studies of the regions, such as Africa, Asia and Pacific, and Latin America, 2) organize academic sessions and publish articles and books in English.

報告者:Masato Noda (Ibaraki University)

[2J03] 大国間競争の時代に ODAで「普遍的価値」を促進することの意味を問う

  • 日時:2023年11月12日(日曜)15:00 〜 17:00
  • 会場:紀-115 (紀尾井坂ビル115)
  • 聴講人数:00名
  • 座長:
  • ディスカッサント/コメンテーター:
*志賀 裕朗1、*福岡 杏里紗3、*荒井 真紀子2、*小林 誉明1(1. 横浜国立大学、2. JICA研究所、3. デロイトトーマツコンサルティング)

【総括】

報告者:

[2O06] 人口減少社会における創造的復興とは何か?

  • 日時:2023年11月12日(日曜)15:00 〜 17:00
  • 会場:紀-412 (紀尾井坂ビル412)
  • 聴講人数:20名
  • 座長:松岡俊二(早稲田大学)
  • ディスカッサント/コメンテーター:中村勝則(秋田県立大学)、工藤尚悟(国際教養大学)

第1発表:東日本大震災からの「ポスト復興」のまちづくり:岩手県陸前高田市の事例

木全洋一郎(JICA北海道帯広)

木全さんの陸前高田市の事例報告、戸川さんの紫波町オガールプロジェクトの事例報告、島田さん・辻さん・松岡の福島浜通り復興の事例報告は、まちづくりのビジョンやコンセプトの形成プロセス、公民連携(PPP)のプロセス、よそ者(外部者)と地域社会内の人々との関係、社会イノベーション創造のための知識創造や資源動員のあり方、政策形成と「対話の場」=「学びの場」の関係(科学と政治と社会の協働)のあり方など、さらに幾つかの基本的な評価軸で比較研究すると一層興味深い研究成果が生まれ、実践への教訓が明確になるように思います。

引き続き調査研究を続けたいと思います。

第2発表:多様な主体が地域で学習する場の形成を通じた地域再生に関する一考察:紫波町オガールプロジェクトの事例

戸川卓哉(国立環境研究所福島地域協働研究拠点)

中村さんのコメントの研究者・専門家としてのまちづくりや地域再生への関与(参与)のあり方は、大学に籍を置く研究者・学者として深く考える必要を感じました。

12年半前の東日本大震災・福島原発事故は日本の大学と政治や社会のあり方を考える大きな機会だったのですが、今になって思うと、持続的な大学改革への努力が根本的に不足していたように思います。

ある意味で、そうした自主的な持続的な努力の不足が、「失われた30年」の日本の科学技術力や日本の大学の国際的な地位低下の大きな要因の一つであるように思います。

第3発表:人口減少社会における原子力災害からの福島再生を考える:福島再生塾の設立に向けて

松岡俊二(早稲田大学)
島田剛(明治大学)
辻岳史(国立環境研究所福島地域協働研究拠点)

工藤さんが最後の方でコメントいただいた以下の指摘は、福島の復興や廃炉の研究をする者として大変重く心に響きました。

「この12年半、福島へボランティアや視察などで訪れた人は私の周りにも多くいる。しかし、そうした多くの人々の福島の復興や廃炉への関心は持続せず、福島県浜通り地域の関係人口とはなっていない。このことは、福島県のホープツーリズムなどが提供する福島復興のメッセージやコンセプトと日本社会や世界の福島への想いが乖離していることを示しているのではないか。『福島の問題は日本の問題であり、福島の問題は世界の問題である』ということを明確なメッセージやコンセプトとして示していくことが必要ではないか」。

【総括】

11月12日(日曜)15:00-17:00、上智大学で開催されました国際開発学会・第34回全国大会・企画セッション「人口減少社会における創造的復興とは何か?」では、創造的復興、まちづくり、地域再生などをめぐり、地域社会内外の多様なアクターによる「場」づくりのあり方や知識創造・イノベーション創出のあり方など、大変充実した議論が出来ました。

報告者の方々、秋田からご参加いただいた討論者の中村さん、工藤さん、福島(富岡町)から参加いただいた穂積さんなど、参加された皆さんに心から感謝申し上げます。

報告者:松岡俊二(早稲田大学)

[2P02] テストと学力改善

  • 日時:2023年11月12日(日曜)15:00 〜 17:00
  • 会場:紀-413 (紀尾井坂ビル413)
  • 聴講人数:00名
  • 座長:
  • ディスカッサント/コメンテーター:
*谷口 京子1、*光永 悠彦2、*渡邊 耕二3、*丸山 隆央4、*石井 洋5 (1. 広島大学、2. 名古屋大学、3. 宮崎国際大学、4. JICA緒方研究所、5. 北海道教育大学)

【総括】

報告者:

その他

  • 一般口頭発表
  • 企画セッション
  • ラウンドテーブル
  • プレナリー、ブックトーク、ポスター発表



第34回全国大会セッション報告(プレナリー、ブックトーク、ポスター発表)


プレナリー(対面・オンライン)


日本の開発援助はどこに向かうのか―開発協力大綱の改定を受けて—

  • 2023年11月11日(土曜)13:30 〜 16:30
  • 2-1702 (2号館1702)

【司会】小松 太郎:上智大学総合人間科学部教育学科教授、国際開発学会大会実行委員長

【モデレーター】田中 雅子:上智大学総合グローバル学部教授、国際開発学会大会実行委員会事務局長

基調講演「国益、地政学、人間の安全保障―開発協力はどこへ行く?」

峯 陽一:国際協力機構(JICA)緒方貞子平和開発研究所所長、同志社大学グローバル・スタディーズ研究科教授、開発協力大綱の改定に関する有識者懇談会委員、国際開発学会員

コメンテーター

  • 伊豆山 真理:防衛研究所理論研究部長、専門分野:南アジアの政治・外交・安全保障
  • 佐藤 仁:東京大学東洋文化研究所教授、国際開発学会 会長
  • 松本 悟:法政大学国際文化学部教授、外務省開発協力適正会議委員、国際協力機構(JICA)環境社会配慮助言委員、国際開発学会 常任理事

前半は、峯陽一(同志社大学、JICA緒方貞子平和開発研究所所長)による基調講演「国益、地政学、人間の安全保障―開発協力はどこへ行く?」に続いて、伊豆山真理(防衛研究所)、佐藤仁(東京大学)、松本悟(法政大学)がコメントを述べた。

また、バングラデシュとフィリピンの研究者、ならびにケニアの市民社会組織のオピニオンリーダーからのビデオレターを上映した。

後半は、会場からの質問をもとに、政府開発援助(ODA)と政府安全補償能力強化支援(OSA)の区別、それらのモニタリング過程への相手国政府や市民社会の関与、国際協力に関わる人材を増やすための大学教育のあり方、開発援助の新たな価値の創造に学会や研究者はどう関わっていくかという点などについて、コメンテーターによる討論を行った。

司会は大会実行委員長の小松太郎が、モデレーターは大会実行委員会事務局長の田中雅子(ともに上智大学)が務めた。

上智大学国連WEEKSのポスト企画として実施し、日英同時通訳と日本語字幕による情報保障を行った。上智大学国際協力人材育成センター(SHRIC)からも協力を得た。

大会参加者の他、上智大学国連WEEKSの申込者あわせて約200名が対面で、100名以上がオンラインで参加した。

第34回全国大会・実行委員会
委員長:小松太郎(上智大学)


ブックトーク

  • 日時:2023年11月12日(日曜)09:30 〜 11:30
  • 会場:紀-112 (紀尾井坂ビル112)
  • 聴講人数:50名
  • 企画責任者・モデレーター:佐藤寛(開発社会学舎)、島田剛(明治大学)、道中真紀(日本評論社)芦田明美(名古屋大学)

報告書籍(1)『争わない社会――「開かれた依存関係」をつくる』

  • 発表者:佐藤 仁(東京大学東洋文化研究所)
  • 担当編集者:倉園 哲(NHK出版)
  • 討論者:志賀裕朗(横浜国立大学)

コメント・応答

国家間の戦争、社会の分断、個人同士やネット上の諍(いさか)いなど、豊かになり余裕ができた時代にも争いが絶えないのはなぜか?国からは「自助」を、市場からは「競争に勝ち残ること」を求められて、個人が孤立無援となってしまうのはなぜか?

本書は、その原因が近代人の「自立」への欲求にあったと見て、その陰で見落とされてきた「依存」の可能性を問う試みである。

誤読された進化論、支援国の利益になる対外援助、明治から100年近く闘われた入会権闘争、社会問題の発見を通じて居住地域への帰属意識を育んだ生活綴方までを分析。機能的な中間集団への依存が争いの芽を摘む可能性を示す。領域を横断する考察が切りひらく、社会科学からの挑戦の書。

報告書籍(2)『未来へ繋ぐ災害対策:科学と政治と社会の協働のために』

  • 発表者:松岡俊二(早稲田大学)
  • 担当編集者:渡部一樹(有斐閣)
  • 討論者:木全洋一郎(JICA)

コメント・応答

従来の災害対策では有効に対応できない災害が多発し、従来のやり方では「未来へ繋ぐ災害対策」にならないのではないかという深く本質的な「問い」を踏まえ、どのようにすれば「未来へ繋ぐ災害対策」を創ることができるのかという「問い」に「応えたい」と思い、本書「未来へ繋ぐ災害対策」を編集した。

しかし、本書は「未来へ繋ぐ災害対策」とは何かという「問い」に対する「答え」を提示しない。より正確に言えば、「問い」への唯一の正解や最適解はないし、正解は幾つもあるというのが本書の基本的な立場である。

幾つも存在する正解から、科学と政治と社会は協働して「対話の場」=「学びの場」を形成し、社会的に納得可能な解決策を共創することが必要であり重要だというのが、本書の一貫したメッセージである。

さらに言えば、「学びの場」とはLearning Communityであり、災害対策の新しい知識を創造するという目的をもったコミュニティである。

科学と政治と社会による「対話の場」=「学びの場」が有効に機能するには、参加者のエンパシー能力の形成や境界知作業者の役割が決定的である。

こうした点も、本書の重要なメッセージとして終章で詳しく述べている。

報告書籍(3)『入管の解体と移民庁の創設ー出入国在留管理から多文化共生への転換』

  • 発表者:加藤丈太郎(武庫川女子大学)
  • 担当編集者:黒田貴史(明石書店)
  • 討論者:齋藤百合子(大東文化大学)

コメント・応答

法務省入国管理局は入管法の執行者として自らをあらゆる権力の上位に置いてきた。

2019年4月に、出入国在留管理庁へと格上げされる中、スリランカ人女性の死亡事件が起きた。入管は現在のまま存続して良いのであろうか。

入管を一度解体し、新たに移民庁を創設するアイディアを本書では構想した。第1章から第16章まで16 名の著者(監修者を含む)による論考を収録した。

第1部は「人権無視の外国人管理」と題し、出入国在留管理庁において人権が守られていない状況を主に実務家が事例をもとに示した。

第2部は、「元入管職員の『中の視点』から」と題し、実際に入管に務めた経験を有する元職員が出入国在留管理庁における問題点を「中の視点」から述べた。

特に元東京入国管理局長からは、「交流共生庁」の創設という具体的な案が示された。

第3部は戦後から21 世紀にかけての「入管の歴史」を4名の研究者の論考をつないで追いかけた。

第4部「移民庁の創設に向けて」では、3名の研究者の論考から「民族」概念を問い直し、入管に存在する「レイシズム」を明らかにし、「諸外国の入管・統合政策担当機関」のあり方を整理した。

報告書籍(4)『SDGs時代の評価:価値を引き出し、変容を促す営み』

  • 発表者:米原あき(東洋大学)
  • 担当編集者:鶴見治彦(筑波書房)
  • 討論者:山田肖子(名古屋大学)

コメント・応答

SDGsの取り組みは評価が難しいと言われる。それは、SDGsがこれまでの国際開発目標とは異なる次元で問題提起をしているのに対し、その取り組みを評価する方法や思考が旧次元に留まっているからではないか。

本書では、「評価evaluation」という活動を価値(value)を引き出す(ex-)ための営みと捉えて、SDGs時代に求められる評価の在り方を検討している。

「不確実性のなかで多様な個人や集団が協働して持続可能な社会を構築することが求められる時代」であるSDGs時代の評価には、ふたつのシフトが求められる。

それらは、①評価をPDCAの「C」という一点でとらえる「点の視点」から、PDCAという一連の流れやそのサイクルの積み重ねという「線や面の視点」へのシフトと、②評価を与えられた指標に基づく測定と前提して「いかに測るべきか」(measurability)を問う姿勢から、そもそも評価したい/すべき価値は何なのかという大前提からの問い直し(evaluability)を前提とする姿勢へのシフトである。

本書の各章では、これらのシフトにかかる事例や、これらのシフトに関連する新たな評価理論を紹介している。

報告書籍(5)『SDGsを問い直す ポスト/ウィズ・コロナと人間の安全保障』

  • 発表者:野田真里(茨城大学)
  • 担当編集者:舟木和久(法律文化社)
  • 討論者:山形辰史(立命館アジア太平洋大学)

コメント・応答

SDGs(2016~2030年)の中間年にあたる2023年、SDGsを問い直す野心的研究として、人間の安全保障上の危機であるコロナ禍の教訓を踏まえ、ポスト/ウィズ・コロナを展望しています。

本書はSDGsの17目標に因んで17の論稿から構成されています。SDGsのゴールの達成状況の分析とともに、今回のコロナ禍によってもたらされた課題を2つの角度から分析しています。

1つは、「取り残される人々」やレジリエンス(強靭性、回復力)の観点です。もう1つは、「ポスト/ウィズ・コロナ」の観点です。

「取り残された人々」が具体的にどのような危機的状況におかれているのか、また、SDGsの観点からどのように取り組んでいくべきなのかを詳細に描いています。

本書では、これまでSDGsについて充分論じられてこなかったテーマ(高齢者、障害者等)やSDGsへの批判的観点を含めて、踏み込んだ検討を行っています。

また本書は国際開発学会員のSDGsに関する2016年からの2つの研究部会(「持続可能な開発とSDGs」、「開発のレジリエンスとSDGs」)の成果でもあり、多くの学会員が執筆しています。

【総括】

本ブックトークセッションでは会員による近刊5冊の書籍についての紹介が、著者および出版社の編集担当者よりなされ、出版に至ったきっかけや経緯、苦労等が共有された。

討論者からは、内容を踏まえての貴重なコメントが提供された。参加者は常時50名にのぼり、活発な質疑応答となった。

報告者:芦田明美(名古屋大学)

ポスター発表

  • 2023年11月11日(土曜)09:30 〜 13:00(コアタイム11:45-12:45)
  • 2号館5階学生食堂
  1. [1R01] 僧院が担う新たな社会的包摂機能
    ―ブータン王国における仏教とウェルビーイング―

    *佐藤 美奈子(京都大学)
  2. [1R02] Space-Time Analysis of East-West Inequality of Economic Development and Digital Financial Inclusion: Province-level Evidence from China
    *Jiaqi LI(Nagoya University)
  3. [1R03] ミャンマーとバングラデシュにおける SDGsの達成状況
    ー目標1を中心にー
    *頼藤 瑠璃子、*エイチャン プイン(熊本学園大学)
  4. [1R04] ポストコロナにおけるスマートツーリズム:ヨーロッパとアジアの事例比較分析
    *ZHU Ningxin(立命館大学大学院)
  5. [1R05] 高校生は SDGsから何を考えイメージするのか~イメージマップテストを用いた分析~
    *坂根 咲花(関西学院大学大学院)
  6. [1R06] 気候変動の影響が武力紛争を招く社会の脆弱性条件
    *長野 貴斗(京都大学大学院)
  7. [1R07] ガーナにおける就学前教育が与えるスクールレディネスへの影響の分析
    *内山 かおり(神戸大学大学院)
  8. [1R08] Influence of Maternal Decision-Making on Children’ s Years of Schooling in Malawi
    *Yudai ISHII(Kobe University)
  9. [1R09] Analysis of Demand-Side and Supply-Side Factors on Learning Outcomes in Myanmar
    *Htet Myet Aung(Graduate School of International Cooperation Studies, Kobe University)
  10. [1R10] 地域 SDGsプロジェクト共創を促進するオープンソーシャルイノベーションプラットフォーム事業の実証研究 – 石川県金沢市 IMAGINE KANAZAWA2030パートナーズ事業の分析から-
    *津田 祐也1、*富田 揚子2 ( 無所属、2. 国連大学サステイナビリティ高等研究所)
  11. [1R11] An Assessment of Digital Competence of Freshmen at Top Ranked Public Universities in Bangladesh
    *Rakibul HASSAN(Kobe University)
  12. [1R12] Analysis of Parental Involvement and Secondary School Students’ Academic Achievement in Cambodia
    *SARA Thavrith(Kobe University)
  13. [1R13] 太平洋島嶼国パラオに見る開発の多元性
    ー援助ドナーとの相互依存関係と地域社会に着目してー
    *井川 摩耶(東京大学大学院)
  14. [1R14] Perception of Students with Disability on Inclusivity in Higher Educational Institutes of Bangladesh *Sheikh Rashid Bin ISLAM(Kobe University)
  15. [1R15] 発達障害のつくられ方−個性と障害の境界線をめぐる人々の認識と国際的診断基準のギャップ−
    *八郷 真理愛(横浜国立大学大学院)
  16. [1R16] An Analysis of the Factors Influencing Primary School Students Learning Achievements in Burundi
    *Deo KABANGA(Kobe University)
  17. [1R18] Analysis of Influence of Student and Family Factors on Learning Achievements in the Philippines.
    *Minghao Wang(Kobe Univ.)
  18. [1R17] An Analysis of Teacher Quality and Primary School Students’ Learning Achievement in Cambodia
    *Sreymech HOEUN(Kobe University)
  19. [1R19] フィリピンの若者が困難な状況を乗り越えるためのパターン・ランゲージの作成
    *金井 貴佳子、太田 深月、井庭 崇(慶應義塾大学)
  20. [1R20] バングラデシュにおける普遍的就学前教育政策下での就学前学校の種類の決定要因
    *宇野 耕平(神戸大学大学院国際協力研究科)
  21. [1R21] Assessment of community ICT access and connectivity for development of an intangible cultural heritage digital repository in Luang Prabang
    *Jerome SILLA1, Jun-ichi Takada2, Shinobu Yamaguchi1, Sengthong Lueyang3, Souvalith Phompadith3, Xaykone Phonesavath3 ( United Nations University, 2. Tokyo Institute of Technology, 3. Luang Prabang World Heritage Office)
  22. [1R22] グローバル企業経営戦略・ GVCMとの連携による産業発展に関する「発展経営論」試論
    *竹野 忠弘(名古屋工業大学)

その他

  • 一般口頭発表
  • 企画セッション
  • ラウンドテーブル
  • プレナリー、ブックトーク、ポスター発表



2023年度「国際開発学会賞」選考結果と受賞者からのことば

池田真也会員、杉江あい会員の2著書に、2023年度学会賞を授与

第34回全国大会(上智大学:2023年11月11・12日)において、池田真也会員の著書『商人が絆す市場―インドネシアの流通革命に交わる伝統的な農産物流通』(京都大学学術出版会)と、杉江あい会員の著書『カースト再考―バングラデシュのヒンドゥーとムスリム』(名古屋大学出版会)に奨励賞を授与しました。

今年度も本事業にたくさんの応募がありました。 その中で惜しくも受賞に至らなかったものの最終選考に残った作品としては、湖中真哉会員の編書Reconsidering Resilience in African Pastoralism (Trans Pacific Press, 2022)、 一柳智子会員の著書『社会的企業の挫折―途上国開発と持続的エンパワーメント―』(名古屋大学出版会2023)、杉田映理会員・新本万里子会員の編書『月経の人類学―女子生徒の「生理」と開発支援』(世界思想社2022)の3つがありました。

応募くださった皆様、誠にありがとうございます。選考委員一同、応募作から多くのことを学ばせていただきました。学会賞の趣旨は、会員の研究を励ますことにあります。会員の皆様には、ご自身の研究を、さらに磨き高めていくための機会として、ご活用いただけましたら幸いです。

賞選考委員会
委員長:三重野文晴(京都大学)


選評


奨励賞:池田真也

『商人が絆す市場―インドネシアの流通革命に交わる伝統的な農産物流通』(京都大学学術出版会 2022)

本作品は、インドネシアにおける農産物の生産・流通市場についての多角的な分析によって、農産物流通の変容と、そこにおける伝統的な取引慣行がどのように変容し、その機能をどのように変えてきたのかを考察するものである。

現地調査と個票データ分析という実証分析によって、スーパーマーケットを代表とした近代的な農産物流通システムの導入がインドネシア(ジャワ)の伝統的な農産物流通システムを完全に代替するのではなく、そうした環境変化の下で伝統的な流通システムの方も進化し、場合によっては近代的なシステムを補完っているという実態を明らかにしている。

本作品は課題設定が先行研究の中によく位置付けられている。ギアツに代表される人類学・農村研究的なインドネシア農村の伝統構造についての問題提起を踏まえ、それを実証的な農業経済研究によって解明するという研究スタンスは、多くの研究者が関心を持ちながらも容易には実現できずにきたものであり、その意味で大きな貢献をなしている。

各章のテーマと分析アプローチの統一性・統合性や、一部の分析において設問と分析結果・解釈の間の一貫性に不明確さが残るといった課題が残るにせよ、国際開発研究として新しい知見を提出していることは間違いない。長期にわたる現地調査を踏まえて完成された本書をもとに、著者が今後一層の活躍によって本学会に貢献してくれる期待をこめて奨励賞に選出された。(三重野文晴)

奨励賞:杉江あい

『カースト再考―バングラデシュのヒンドゥーとムスリム』(名古屋大学出版会 2023)

本書は、カーストを属性的に捉える還元主義を批判的に捉える立場から、バングラデッシュにおけるヒンドゥーとムスリムの関係性というテーマについて、農村の調査を通じて住民の交流や関係性の現状を明らかにしようとしている。

インド・南アジアのカースト制度に関わる膨大な既存研究を整理した上で、バングラデシュ人の家族をもつ著者のポジショナリティをうまく利用しながら、複数の村の全数調査という丹念なフィールド調査をおこなっている。

綿密で精度の高いデータから、複数の宗教的背景をもつ人びとが空間を共有する中で、人々は必ずしもカーストに規定された捉えられ方をしておらず、多様な相互行為が行われている実態を析出する。それによって、植民地主義的、還元主義的な見方を乗り越えようとする、良質の地域研究の成果である。

提示するデータの完成度に改善の余地があること、社会空間の変動と動態に目を向けるアプローチがポストモダニズム的解釈の視点を克服するという結論が若干不明確なことなど、いくつかの課題が残ってはいるが、本書が南アジア社会の研究において一石を投じるものであることは間違いなく、国際開発研究とその周辺分野への貢献は大変大きい。今後の一層の活躍への期待もこめて、奨励賞に選出された。(三重野文晴)


学会賞(奨励賞)受賞の言葉


奨励賞・池田真也

『商人が絆す市場―インドネシアの流通革命に交わる伝統的な農産物流通』(京都大学学術出版会 2022)

このたびは、国際開発学会奨励賞を頂戴し、誠に光栄に思います。選考委員の先生方、これまでご指導いただきました先生方に厚く御礼申し上げます。また、出版にあたりご尽力いただいた京都大学学術出版会の方々にも改めて御礼申し上げます。

この本では、インドネシア・ジャワ島の伝統的な野菜流通に着目してその発展経路を明らかにしようとしました。具体的には、新興国のインドネシアでは伝統的な流通が今後も残り続けるのか、それとも2000年代以降に台頭したスーパーマーケットが形成する近代的な流通に代替されるのかという問題です。2008年1月に初めてインドネシアを訪問して以来、生産地から消費地までの各地の商人を追って得た結果をまとめました。

その回答を簡潔にまとめれば、伝統的な流通はスーパーの台頭に適応して残り続けるとしました。具体例を1つ挙げると、スーパーが農作物を集荷する段階で、自ら集荷するのではなく地場商人に委託することが多いです。農家を監視・モニタリングする費用が高いので、それを地場商人が担っており、伝統的な流通と近代的な流通が補完的に機能していると言えます。

国際開発への直接的な貢献という点でこの本には不十分な点もあります。そうした反省もあって、ここ数年ほど野菜流通に関する技術協力プロジェクトに関わっています。開発の現場では、伝統的な流通の商人は農家を買い叩き搾取していると認識されることもあり、伝統的な流通を近代的な流通に代替させるための戦略が注目されがちです。

この本から言えることは、伝統的な流通を所与としたうえでの近代化戦略が必要ということになります。では具体的にどうすればいいのかという点を今開発の現場を視野に入れつつ考えています。

今回の受賞を励みとして、研究をさらに発展させていきたいと思います。今後とも皆様からのご指導ご鞭撻のほど宜しくお願いいたします。このたびは、誠にありがとうございました。


奨励賞・杉江あい

『カースト再考―バングラデシュのヒンドゥーとムスリム』(名古屋大学出版会 2023)

このたびは国際開発学会奨励賞という栄誉ある賞を賜り、誠にありがとうございます。

賞をいただきました拙著は、調査に協力してくださったフィールドの方がた、指導してくださった先生方、度重なる改稿に根気強くお付き合いくださった出版社の方がた、そしていつも見守り、支えてくれる家族なしには出版できませんでした。

このたびの賞は、私だけでなく、本書に関わるこれらのすべての方がたにいただいたものと思っております。改めて心から感謝いたします。

拙著はフランスの社会地理学者であるアンリ・ルフェーヴルの理論的枠組みに拠っており、一見すると理屈っぽく見えるかもしれませんが、フィールドの現状をいかに理解できるのかを追究する中で生まれたものです。

私のもともとの関心は地域社会の実態から開発援助を捉え直すことにあります。拙著のもととなったバングラデシュ農村でのフィールドワークも、はじめはこの開発援助に対する関心から、はじめたものでした。

しかし、私がフィールドで目の当たりにしたのは、一部の集落の人びとだけが、近年の目覚ましい経済発展や社会開発から取り残され、多くの人が物乞いをして暮らし、近隣の村の人びとから差別されている状態でした。もともとの開発援助に対する関心にもとづく研究をする前に、まずはこのような状況がどのように生みだされたのかを明らかにしなければ、と思いました。

そして、この疑問に答えるには、従来の研究で使われてきたカーストという概念や、「ヒンドゥー社会」「ムスリム社会」という枠組みを再検討する必要がありました。未熟な私がそのような大仕事をするのはとても勇気がいることで、拙著は処刑台に乗せるような気持ちで出版したものです。それがこのような形で評価されたことは、望外の喜びです。

私の研究はまだまだ途上の段階にありますが、このたびの受賞を励みに、いっそう研鑽を積んでまいりたいと思います。ありがとうございました。




第34回全国大会「優秀ポスター発表賞」選考結果

第34回全国大会において、八郷真理愛会員に優秀ポスター発表賞を、佐藤美奈子会員と井川摩耶会員に優秀ポスター発表奨励賞を授与

第34回全国大会において、八郷真理愛会員(報告タイトル:発達障害のつくられ方-個性と障害の境界線をめぐる人々の認識と国際的診断基準のギャップ-)に優秀ポスター発表賞、佐藤美奈子会員(報告タイトル:僧院が担う新たな社会的包摂機能-ブータン王国における仏教とウェルビーイング-)と、井川摩耶会員(報告タイトル:太平洋島嶼国パラオに見る開発の多元性-援助ドナーとの相互依存関係と地域社会に着目して-)に優秀ポスター発表奨励賞を授与しました。

優秀ポスター発表賞

八郷真理愛 会員

『発達障害のつくられ方-個性と障害の境界線をめぐる人々の認識と国際的診断基準のギャップ-』

優秀ポスター発表 奨励賞

佐藤美奈子 会員

『僧院が担う新たな社会的包摂機能-ブータン王国における仏教とウェルビーイング-』

井川摩耶 会員

『太平洋島嶼国パラオに見る開発の多元性-援助ドナーとの相互依存関係と地域社会に着目して-』

今大会のポスターセッションでは、22件の意欲的な研究報告がありました。

大会の対面開催再開以降、報告者数は顕著に増加しています(2023年度春大会:17件、2022年度全国大会:9件)。報告内容は教育開発分野を中心に、幅広い分野からの発表で構成されました。

若手研究者に留まらず、大学教員、社会人会員の報告も多く、引き続きポスターセッションの裾野の広がりが感じられます。3人の受賞者は賞選考委員会による審査の結果、主題の独創性などが評価され、選出されました。

ポスター発表セッションの参加してくださった皆さま、誠にありがとうございました。

賞選考委員会
委員長 三重野文晴(京都大学)




2024年度第25回春季大会(宇都宮大学)開催のお知らせ

The 25th JASID Spring Conference

地域発! 国際協力と共創の実践
グローバル・グローカルな人材育成

Realizing International Cooperation and Interactive Co-creation in Local Context: Global & Glocal Human Resource Development
  • 日時:2024年6月15日(土曜)春季大会、16日(日曜)エクスカーション予定
  • 場所:宇都宮大学 峰キャンパス、足尾・宇都宮(予定)
  • 方式:対面(一部オンライン)

この度、上記の概要にて栃木県の宇都宮大学にて春季大会を開催します!

宇都宮大学では、教育・研究・地域貢献を有機的に活かした国内外における国際協力や共創にかかわるグローバル・グローカル人材育成を実践しており、プレナリーでもその一部をご紹介します。

また栃木県には、公害の原点ともいえる足尾銅山があり、国際開発を議論するにあたって伝えるべき日本の経験である公害について学ぶ場としてエクスカーションの訪問先として計画中です。

宇都宮(エクスカーションの可能性もあり)のLRTや餃子や、日光や那須などの栃木県内のご観光などもあわせて是非ご堪能ください。

第25回春季大会・実行委員会
委員長:阪本公美子(宇都宮大学)


スケジュール

  • 2月 1日:HP公開予定()
  • 2月 1日:発表申込開始予定
    [2月下旬:発表希望者の学会入会申請期限※]
  • 3月18 日:発表申込締め切り
  • 4月初旬:参加登録開始
  • 4月下旬:採否結果通知
  • 5月上旬:報告論文(ショートペーパー4頁、フルペーパー16頁)提出締め切り

発表申込要項

1)口頭発表・ポスター発表(日本語、英語)

  • 発表者は、会員であることが必要
学会入会申請・会費支払サイト:
  • 1名につき、1論文・1発表まで(ファーストオーサーとして)可
  • 提出論文はファーストオーサーではなく登壇をしない場合は2本の提出可
  • 共同研究者・共著者は学会員であることが望ましい
  • 学生会員は応募時に指導教員の推薦状が必要
  • 要旨は、A4 – 1枚、日本語の発表の場合は、日本語(400〜800字)で、英語の場合は英語(200〜300 Words)で作成すること
※ 発表者は、申し込み時点で会員であり、かつ会費を未納していないこと。なお、新規の会員申し込みをしてから学会として諾否を審議するのに2週間を要するため、申込期限の遅くとも2週間前には会員申し込みを完了していること。
※ また会費未納の方は、ご発表予定の場合、早めに納入の完了をお願いいたします。

2)企画セッション・ラウンドテーブル(日本語、英語)

  • どちらも代表者は、会員であることが必要
  • 代表者は、司会・コメンテーター・報告者・登壇者の了承を事前に得ること
  • 代表者以外は非会員の登壇も可能だが、学会への入会を強く推奨する

企画セッション:

各発表者の発表要旨に加え、企画全体のタイトル、趣旨や司会、コメンテーター、報告者等を要旨と合わせて1つのファイルにし、代表者が応募すること

ラウンドテーブル:

企画セッション同様、企画全体のタイトル、趣旨や登壇者を1つのファイルに取りまとめ、代表者が申し込むこと

発表申込

  • 申込期間:2024年2月1日~3月18日まで(予定)
  • 申込方法:大会ホームページ(近日申し込み用ページを公開予定)

国際開発学会・第25回春季大会実行委員会

実行委員長:

阪本公美子(宇都宮大学国際学部・教授)

事務局長:

  • 藤井広重(宇都宮大学国際学部・准教授)
  • 飯塚明子(宇都宮大学留学生国際交流センター・准教授)

実行委員:

  • Arjon Sugit(宇都宮大学国際学部・助教)
  • 重田康博(宇都宮大学国際学部・客員教授)
  • 松尾昌樹(宇都宮大学国際学部・教授)
  • 高橋若菜(宇都宮大学国際学部・教授)
  • 栗原俊輔(宇都宮大学国際学部・教授)
  • 丸山剛史(宇都宮大学教育学部・教授)
  • 大森玲子(宇都宮大学地域デザイン学部・教授)

学生実行委員:

  • 匂坂宏枝(宇都宮大学国際学研究科・博士課程)
  • 菊池翔(宇都宮大学地域創生科学研究科・博士前期課程)
  • 福原玲於奈(宇都宮大学地域創生科学研究科・博士前期課程)
  • Frimpong Andrew Charles(宇都宮大学地域創生科学研究科・博士前期課程)
  • Polgahagedara Don Pubudu Sanjeewa(宇都宮大学地域創生科学研究科・博士前期課程)

第25回春季大会にかんするお問い合わせ先

  • jasid2024spring [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)



企画運営委員会からのおしらせ(2024年2月)

企画運営委員会は、国でいえば、内閣官房のような存在です。つまり、学会活動を活性化し、よりよい研究交流を行うための方針や仕組みを企画立案したり、そのために必要な情報や知恵を集めたりするところです。また、各委員会(国の場合は省庁)が所管するほど業務が恒常的にまとまっていなくても、試験的に制度導入をすることもあります。

従来から、企画運営委員会では、研究部会・支部の申請受付や運営サポートを行ってきました。今12期では、研究部会・支部が裾野の広い学会員の参加と交流を従来にも増して促進するよう、規定や制度の見直しに着手しています。

また、企画運営委員会内の目的特化型の機動チームとして、合理的配慮ワーキンググループ(WG)と人材推薦WGが活動しています。合理的配慮WGは、山形辰史会員を中心に、障がいを持った会員の方の参加促進を担ってくれています。また、人材推薦WGは、伊東早苗会員を中心に、学術大会のセッション司会や国内外の外部組織との交流活動に学会を代表して関わる人材などを幅広く求め、依頼する役割を担っています。

このほか、学術大会での託児サービスのルール作りによって、子育て中の会員が研究発表を続けやすい環境を作ることも検討中です。

学会の魅力を上げ、多くの人が参加したくなるためのアイディアをお持ちの方は、企画運営委員会にお寄せください。

企画運営委員会
委員長:山田肖子(名古屋大学)




企画運営委員会:合理的配慮WGからのおしらせ(2024年2月)

国際開発学会第12 期:委員会の構成および幹事の委嘱

委員長

山田肖子(名古屋大学)

委員

副会長、常任理事、本部事務局長、本部事務局次長

企画運営委員会 合理的配慮WG

WG長

山形辰史(立命館アジア太平洋大学)

委員

小國和子(日本福祉大学)
川口 純(筑波大学)

幹事

土橋喜人(金沢工業大学)
森 壮也(アジア経済研究所)

2024年度活動計画

  • タスクフォースの立ち上げ
  • 問い合わせ窓口の準備と試験運用
  • 大会参加者が希望する合理的配慮にかんする相談対応

企画運営委員会
合理的配慮WGグループ長:山形辰史
(立命館アジア太平洋大学)




企画運営委員会:人材推薦WGからのおしらせ(2024年2月)

国際開発学会第12 期:委員会の構成および幹事の委嘱

委員長

山田肖子(名古屋大学)

委員

副会長、常任理事、本部事務局長、本部事務局次長

企画運営委員会 人材推薦WG

WG 長

伊東早苗(名古屋大学)

委員

高橋基樹(京都大学)
山形辰史(立命館アジア太平洋大学)

2024年度活動計画

各委員長の依頼に基づき、学会間交流事業や大会座長・コメンテーター等、学会の重要事業を担う人材の推薦を行う


企画運営委員会
人材推薦WGグループ長:伊東早苗(名古屋大学)




大会組織委員会からのお知らせ(2024年2月)

2023年度活動報告

  • 明治大学を開催校とし(島田剛実行委員長)、第33 回全国大会を開催した(2022 年12月3 日、4 日;対面・オンラインのハイブリッド開催)。
  • 国際教養大学を開催校とし(工藤尚悟実行委員長)、第24 回春季大会を開催した(2023年6 月10 日;対面・オンラインのハイブリッド開催)。
  • 上智大学を開催校とし(小松太郎実行委員長)、2023 年11 月11、12 日に第34 回全国大会の開催に向けて、プログラム編成や大会運営の円滑化のための各種支援を行った。
  • 2024 年6 月予定の第25 回春季大会を宇都宮大学(阪本公美子実行委員長)で開催する見込みとなった。

大会組織委員会
第11期 委員長:山田肖子(名古屋大学 )


国際開発学会第12 期:委員会の構成および幹事の委嘱

委員長

松本 悟(法政大学)

委員

池見真由(札幌国際大学)

幹事

汪牧耘(東京大学大学院)

大山貴稔(九州工業大学)

栗田匡相(関西学院大学)

会長、副会長、事務局長

2024年度活動計画

  • 春季大会と全国大会の運営(実行委員会のサポート)
  • 大会運営の再編に向けた論点整理
  • 2025 年の大会開催校の打診・決定

大会組織委員会
第12期 委員長:松本 悟(法政大学)




学会誌編集委員会からのお知らせ(2024年2月)

すでにお気づきの方もおられると思いますが、前号からJ-stageに書評などこれまで掲載されなかったカテゴリーの原稿も掲載するようになりました。

現在、今年度の予算の範囲内で過去に遡って順次掲載していく予定です。4月ごろまでに掲載をできればと思って作業を進めています。

今年度の予算内で対応できなかった原稿についても、来年度以降、少しずつ遡っていく予定です。

現在、次号の学会誌の編集作業をしております。今回は開発協力大綱をテーマにした特集を予定しており、関係の先生方でこれまでオンラインで打ち合わせを重ねながら内容を練っているところです。また、今回は現地調査の工夫に焦点をあてた特集も予定しています。

また、全体像が見えてきていない中で作っていくこの時期はやや苦しいところもありますが、少しずつ形が見えていくのは編集の喜びでもあります。

6月下旬から7月ごろにお手元にお届けできるように進行していきたいと思います。

学会誌編集委員会
委員長:島田剛(明治大学)




グローバル連携委員会からのお知らせ(2024年2月)

グローバル連携委員会では、以下の3つの活動を行いました。

1.北東アジア開発協力フォーラムへの代表者派遣

2023年11月27日(月)にタイのバンコク市で開催された北東アジア開発協力フォーラム(North-East Asia Development Cooperation Forum 2023)に、国際開発学会の代表として高田潤一会員(東京工業大学)と狩野剛会員(金沢工業大学)にご参加いただきました。

中国、韓国、ロシアの国際開発学会と連携し、国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)がホストとして毎年開催している同フォーラムでは、各国の開発援助・国際協力のトレンドについて情報交換すると共に、特定のテーマについて議論を交わしています。

今回のフォーラムでは、国際協力と技術的イノベーションというテーマのもと、活発な議論が交わされました。高田会員(情報通信と国際開発)と狩野会員(デジタル技術と国際開発)は、それぞれの専門分野における知見・経験を踏まえて、会議での議論に重要な貢献をしていただきました。

2.学会年次大会における韓国国際開発学会との合同セッションの開催

2023年11月12日(日曜)に上智大学で開催された国際開発学会・年次大会において、韓国国際開発学会(KAIDEC)との合同セッションを開催しました。

「日本と韓国による国際開発協力の展望」と題した同セッションでは、KAIDECから招聘したDr. Han Seung-Heon(Korea Institute of Public Administration)による講演「Global emerging issues and context shifts in the era of complex crisis: Integrated perspectives on the field of public administration in Korea」と、Dr. Kang Woo Chul(Korea EXIM Bank)による講演「Solidarity between Korea and Japan in the era of complex crises」があり、ディスカッサントして鄭傚民会員(京都大学)にご参加いただきました。

韓国の国際開発研究ならびに開発援助実務の潮流を踏まえつつ、いかにして複合的な危機が起きている途上国の現状に対して支援を行うことができるのかについて、多様な視点から刺激的な議論が交わされました。とくに、ディスカッサントの鄭会員には、韓国と日本の両国の状況を踏まえた視点から非常に示唆的なコメントをしていただきました。

3.韓国国際開発学会の冬季大会への代表者派遣

2023年12月8日(金曜)に韓国のソウル市で開かれた韓国国際開発学会(KAIDEC)の冬季大会に、国際開発学会の代表として近藤久洋会員(埼玉大学)と牛久晴香会員(北海学園大学)にご参加いただきました。

同大会において、近藤会員は「How Should Politics Be Positioned in International Development?: Implications from International Development in Japan」と題した講演を行い、牛久会員は「Beyond Pride and Prejudice: International Development Studies and African Area Studies in Japan」と題した講演を行いました。

どちらの講演も韓国の国際開発研究者たちから高い評価を得たとのメッセージが、後日、KAIDECの国際交流委員長からJASIDグローバル連携委員長宛てに送られてきたことを申し添えます。

このように、秋から冬にかけて開かれた国際的な議論の場に、積極的に会員の方々にご参加いただいてきました。いずれの会員も、非常にご多忙なスケジュールの中にもかかわらずご快諾くださり、とても貴重なご貢献をしていただきました。グローバル連携委員会として、心よりお礼申し上げます。

また、これらの国際会議等への派遣にあたり、今期新たに立ち上がった人材推薦ワーキンググループの先生方から多大なご支援を賜りました。この場をお借りしてお礼申し上げます。

なお、こうした国際的な場への代表派遣を検討する際には、会議のテーマと合致した専門分野の方々にお願いをしておりますが、できるだけ若手の会員にもご参加いただけるようにしたいと考えております。引き続き、会員の皆さまのご理解とご協力を賜りますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。

グローバル連携委員会
委員長:北村友人(東京大学)




社会共創委員会からのお知らせ(2024年2月)

2024年度より、以下の3委員会を統合し、新たに「社会共創委員会」を設置することとなった。

統合前の各委員会の昨年度の活動報告は以下のとおり。

2023年度活動報告

社会連携委員会(委員長:川口純)

  1. 市民社会との連携企画:「開発協力大綱の改定とその主要論点ー市民社会の主張とはどのようなものか?」を開催した。国際協力系NGO のスタッフ4名が登壇し、前回の改定時のふりかえり、今回の改定にあたって開発協力の理念や実施原則等について議論を実施した。
  2. グローバルフェスタにおいて「国際開発キャリアセミナー」を開催した。佐藤会長、大橋委員、荻巣会員がご登壇し、多数の若手参加者を得た。院生の参加者が主であり、闊達な質疑応答がなされた。

研究×実践委員会(委員長:小林誉明)

第34 回全国大会にて委員会主催(共催も含む)のラウンドテーブルを三つ企画しました。それぞれのセッションは委員会のメンバーがイニシアティブをとり、学会内外からリソースパーソンを巻き込んで企画を進めているものとなります。

1.「ソーシャルビジネスにおける研究の貢献可能性:インドの離島エリアにおけるe-Health ビジネスの事例から」
登壇者:狩野剛、功能聡子、岡崎善朗、佐藤峰、内藤智之

2.「国際開発(学)の「埋葬」と「再生」―世代を超えた、グローバルなサステナビリティの確保を射程に入れて―」(地方展開委員会との共催)
登壇者:佐藤峰、小林誉明、木全洋一郎、梶英樹

3.「大国間競争の時代にODA で「普遍的価値」を促進することの意味を問う」
登壇者:志賀裕朗、福岡杏里紗、荒井真紀子、小林誉明

地方展開委員会(委員長:佐野麻由子)

  • 2023 年6 月10 日の第24 回春季大会(国際教養大学)で「地方展開委員会RT 地方からみた『内なる国際化』と協働の可能性」を主催、参加者と内なる国際化を中長期的、短期的どのように位置づけるのか、移民社会にむけて検討すべき課題は何かについて意見交換を行った。
  • 国際開発学会出前講座の今後の運営について考えるために登録して下さった会員にアンケートを実施、今後の在り方について検討した。

国際開発学会第12期:委員会の構成および幹事の委嘱

共同委員長

  • 木全洋一郎(JICA)
  • 工藤尚悟(国際教養大学)
  • 杉田映理(大阪大学)

委員

  • 坂上勝基(神戸大学)
  • 佐藤 寛(開発社会学舎)
  • 藤山真由美(NTC インターナショナル)

幹事

  • 梶 英樹(高知大学)
  • 河野敬子(ECFA)
  • 小林誉明(横浜国立大学)

2024年度活動計画

◆設置目的

日本・先進国を含めたグローバルな観点から時代に合った国際開発学の再定義、学会から日本社会への貢献、新たな学会・パートナーの獲得のため、国際開発学会の内外の多様な団体・個人と連携した事業の企画・形成をし、広く学会員に呼び掛けてその実施展開を先導・調整・支援する。

◆活動計画

以下の3 つの柱において、具体的な企画を検討していく。

(1)連携・協働

  • 地方、企業・団体、他学会との共同セミナー・研究プロジェクトを実施
  • 海外の学会・団体、国際機関との連携 ※グローバル連携委員会との連携

(2)発信

  • 学部生、高校生等若者向け発信 ※人材育成委員会との連携
  • 各種イベント(グローバルフェスタ等)での発信

(3)支援・協働

  • 地方大会におけるプレナリーやエクスカーションプログラム

社会共創委員会・共同委員長:
木全洋一郎(JICA)
工藤尚悟(国際教養大学)
杉田映理(大阪大学)




人材育成委員会からのお知らせ(2024年2月)

1.活動報告

(1)委員会

(定例会は2 か月に1 度、最終日曜日の20 時~22 時)

2022/11/26(日曜)

臨時会合:理事会報告。全国大会でのRT の打ち合わせ。

2023/2/26(日曜)

第1 回定例会:第3 回国際開発論文コンテストのスケジュール確定。
「(留学生は)なぜ日本で国際開発を学ぶのか」企画、春季大会で東大EAA と「開発と文学」のセッションを共催。

2023/4/23(日曜)

第2 回定例会:第2回国際開発論文コンテスト審査方法とスケジュールの審議・決定。「(留学生は)なぜ日本で国際開発を学ぶのか」で11 人のインタビュー終了。

2023/5/21(日曜)

国際開発論文コンテスト(第3 回)審査会
[2023/5/28 常任理事会で審査結果を審議承認。コメントへの対応は後日検討]
[国際開発研究2023/6 号に第2 回国際開発論文コンテストの入賞者の要旨掲載]

2023/7/1(土曜)

  • 第3 回定例会:第3 回国際開発論文コンテストの振り返り。
  • 第4 回国際開発論文コンテストの実施決定。
  • 全国大会に「(留学生は)なぜ日本で国際開発を学ぶのか」のセッション開催。
  • 1 年間の活動計画の達成状況を確認。

2023/8/27(日曜)

第4 回:今後の人材育成活動について。

2023/10/9(日曜)

第5 回:2023 年度活動報告案・決算案の審議。

(2)学部生を対象とした第3 回国際開発論文コンテスト(日本語、英語)

前年度より3 カ月早い2022 年11 月から広報開始(学会誌、ホームページ、メーリングリスト)。

  • 2023 年3 月1 日~24 日募集。
  • 5 月21 日(日曜)審査会。最優秀論文賞は該当なし。
  • 優秀論文賞は4 編。6 月春季大会(秋田)で公表。
  • 賞状、楯、学習奨励金を授与(郵送・振込)。
  • 入賞論文の要旨を学会誌掲載予定。

(3)2022 年12 月全国大会で、「授業という開発実践―わたしたちはどんな「人材」を「育成」するのか」と題したセッションを開催。

(4)留学生がなぜ日本で国際開発・国際協力を学ぶ/研究するのかについて聞き取り調査を実施。それをもとに、2023 年11 月の全国大会でRT を開催予定。

2.活動の評価

(1)目的:

以下の機会を提供することで人材の育成を目指す

  1. 学部生が参加できる機会
  2. 「国際開発の人材」とは何かを若手研究者(院生など)が考えられる機会

(2)年度当初の活動計画

  1. 学部生対象の「国際開発論文コンテスト」第2 回受賞論文の学会誌掲載、第3 回コンテストの実施。周知活動に力を入れて、応募論文の増加を図る。
  2. 留学生を対象にしたアンケートを実施し、日本で国際開発や開発協力を学び研究する意義を把握し人材育成活動に繋げる糸口を見つける。
  3. 「授業という開発実践―わたしたちはどんな「人材」を「育成」するのか」と題した学会セッションを開催し、その成果をもとに活動の継続を検討する。

(3)評価

  • 活動計画①を実施し、目的①は達成している。
  • 活動計画②と③を実施して目的②の達成に近づいてはいるが、まだ明確には打ち出せていない。次期に向けた課題としたい。

3.第11 期で俎上にあがったものの実現できなかった活動

  1. 国際開発論文コンテスト応募者との座談会:
    論文コンテスト入賞者のその後を追うことで、コンテストがどのように人材育成と繋がるかを考える。
  2. 継続検討事項=アイディアのストック:
    A. 人材育成実践としての国際開発や国際協力の授業の経験共有。
    B. 開発学会員お勧めの小説紹介。
    C. 15 分程度の「オンライン講座」(テーマごと)の発信。
    D. 国連フォーラムの「国連職員NOW」の国際開発学会版。若手学会員がインタビューすることで国際開発の多様性や変化を具体的に学び、将来目指すべき道を考えるきっかけにしてもらう。
    E. 国際機関やJICA はどのような人材を求めているのか、国際開発の教育はどのような人材を育てているのかを議論するフォーラムの開催(大会)。
    F. 開発学会員の留学生はどんな「人材」を目指しているのか、どんな学びを期待しているのか、文字や言葉にする【学会誌の特集など】。
    G. 以上の活動はホームページの活用と繋がっているので、学会のホームページをどう更新するかと合わせて考えていく。

人材育成委員会
第11期 委員長:松本悟(法政大学)


国際開発学会第12 期:委員会の構成および幹事の委嘱

委員長

小山田英治(同志社大学)

委員

志賀裕朗(横浜国立大学)

幹事

汪 牧耘(東京大学大学院)
大山貴稔(九州工業大学)
栗田匡相(関西学院大学)
森 泰紀(同志社大学大学院)

2024年度活動計画

  • 国際開発論文コンテスト企画・実施
  • 全国大会での企画・RT 開催活動計画

人材育成委員会
第12期 委員長:小山田英治(同志社大学)




賞選考委員会からのお知らせ(2024年2月)

2023年度活動報告

(1)2023年度(2022年10月~2023年9月)活動報告(事業概要)

  1. 学会賞応募作を公募・審査し、受賞作を決定・表彰した。
  2. 全国大会、春季大会において優秀ポスター発表賞の審査を実施し、受賞作を決定・表彰した。今年度から対面開催が再開したため両大会とも実地のポスター発表とその評価のプロセスに戻った。全国大会、春季大会においてそれぞれ2件の報告への表彰を行った。
  3. 学会ウェブサイトの学会賞ページを更新し、学会賞受賞者とその作品を紹介した。

(2) 事業の成果と課題

  1. ポスター発表表彰については、対面による発表と審査に復帰した。ポスター発表の件数が全国大会で9件、春季大会で17件と増加する傾向があり、また発表者参加者も多様になってきた。一方で、半日の短時間で審査の結論を出すこと、複数の賞選考委員にこの日時に時間を確保する必要があること、昼に開催される理事会との時間重複が発生すること、など運営の負荷が大きくなってきており、その解決について、検討する必要がでてきている。
  2. 2021 年度(2023 年12 月の全国大会で表彰)の学会賞事業については、著書6件、論文0 件と、応募が低迷したが、2022 年度(2022 年12 月全国大会で表彰)については著書13 件、論文2件の応募があり、大きく回復した。2023 年度(2023 年11 月全国大会で表彰予定)については、引き続き著書12 件、論文3 件の応募があり、活発な状況が継続している。
  3. 著書の出版形態が、電子出版も含めて多様化する中、どこまでを出版物書籍として取り扱うか、また、応募者に審査委員の人数分の作品の提出を印刷物によって求めるべきかなど、内規を検討する余地がある。
  4. 論文に対する表彰(論文賞)については、「論文」の定義、学会誌における審査対象論文、公募方式など運営方法に課題が多く、今後抜本的な改革の必要がある。

賞選考委員会
第11期 委員長・三重野文晴(京都大学)


国際開発学会第12 期:委員会の構成および幹事の委嘱

委員長

澤田康幸 (東京大学)

委員

小川啓一(神戸大学)
樹神昌弘(神戸大学)
佐藤 仁(東京大学)
佐野麻由子(福岡県立大学)
澤村 信英(大阪大学)
藤掛 洋子(横浜国立大学)

幹事

加治佐敬(京都大学)
幹事 山田浩之(慶応義塾大学)




広報委員会からのお知らせ(2024年2月)

2023年度活動報告

  • 2023 年度もWeb サイト,メーリングリスト,ニューズレターの3 本立てで活動を行った
  • Web サイトは昨年度に引き続き担当管理者(本部事務局兼務)を配置し,随時更新できる体制とした.メーリングリストと連携し,合計236 件の会員発情報を掲載したほか,選挙管理委員会のYouTube チャンネルや学生幹事Twitter,大会実行委員会Web サイトとの連携を行った
  • メーリングリストは昨年度に引き続きWeb フォームにより受付を行いWeb 掲載と連動する体制とした.幹事が全て内容をチェックして不備がないことを確認してから,送信作業をアルバイトに委託している.このため,依頼から配信まで最長1 週間を頂いているが,直前の依頼が引き続き一定数あり,配信をお断りした事例もある.合計280 件を配信した
  • ニューズレターは従来通りWeb サイトおよびPDF 版で年4 回発行した.全国大会および春季大会の全セッション報告を掲載したほか,告知を中心として86 件の記事を掲載した
  • SNS を利活用については,第11 期中に成果を上げることができず,第12 期への申し送り事項とした

広報委員会
第11期 委員長:高田潤一(東京工業大学)


国際開発学会第12 期:委員会の構成および幹事の委嘱

委員長

狩野 剛(金沢工業大学)

委員

高田潤一(東京工業大学)
藤山真由美(NTC インターナショナル)

幹事

神 正光(名古屋市立大学)

2024年度活動計画

  • メーリングリストの運営
  • 学会HP の運営
  • ニューズレターの発行

広報委員会
第12期 委員長:狩野 剛(金沢工業大学)




選挙管理委員会からのお知らせ(2024年2月)

2023年度活動報告

  1. 選挙システムの刷新:国際文献社との契約、体制構築、マニュアル等整備
  2. 第12 期1号理事選挙の実施・無事完了(2023 年5 月)
  3. ツイッター、YouTube 等での学会の委員会の広報活動

選挙管理委員会
第11期 委員長:杉田映理(大阪大学)


国際開発学会第12 期:委員会の構成および幹事の委嘱

委員長

小國和子(日本福祉大学)

委員

池見真由(札幌国際大学)
杉田映理(大阪大学)

幹事

鍋島孝子(北海道大学)
Fanantenana Rianasoa Andriariniaina(大阪大学)

2024年度活動計画

  • 第12 期選挙手順の確認
  • 学生選管幹部の公募とSNS 発信のスタート
  • 他学会の投票促進事例の情報収集

選挙管理委員会
第12期 委員長:小國和子(日本福祉大学)




総務委員会からのお知らせ(2024年2月)

決算報告

表1:2023年度決算

(1) 収支

収入に関し、会費収入、事業収益、その他収益とも予算額より多い結果となりました。これは会費収入では正会員が滞りなく会費を支払われた結果です。また、事業収益では学会誌販売、抜刷り/超過頁の立替が想定より上回ったこと、その他収益では明治大学で行われた全国大会での大会余剰金が戻ってきたことによるものです。

つぎに、支出に関しては、事業系委員会では多くの委員会で当初予算よりも少ない支出となりました。その結果、全体として予算額より385万円余り少ない支出となりました。

とくに、社会×実践委員会はコロナ後にフィールドワークの実施を検討していましたが、結果的に少ない金額でのフィールドワークとなりました。管理系委員会と本部事務局の支出でぇあ全体として予算通りの支出となりました。

業務委託費の部分では145万円の支出増となっています。これは、明治大学での参加者数が予定よりも多くなったことで、大会参加システム(Confit)の追加払いが生じたことが要因の一つと考えらえます。

これらを踏まえても、当初予算より685万円減の1563万円余りの支出となりました。各委員会・本部事務局ごとの支出については、表2をご覧ください。

表2:財務諸表の注記

(2) 貸借対照表

表3:貸借対照表

次に、貸借対照表について説明します。

2022年度と比較できるようになっています。まず、資産のうち、未収金のうち学会費に関するものは9月に会員サイトからクレジットカード、あるいは銀行振り込みで支払われた場合、実際に学会の口座に入金されるのが翌年度になるためであり、前年度より大きく増加しています。

なお、2年間会費未納で退会となる方が少なからずいますが、実質的に退会届を出さずに退会する方たちであり、予算上もそのような方の会費は収入に計上していないため、それらの方からの会費は未収金に入れていません。

会費の未収金は、いずれも2023年10月31日に確実に入金するものであり、回収できないリスクのあるようなものではないので、財政上問題ありません。

つぎに、負債のうち未払金は、9 月の会費支払いの手数料支払いが 10 月に行われることによるものです。

また、2022年の預り金は、新年度の会費を前年度中に支払う会員があるために生じているものです。以上により、負債に関しても、財政上問題のあるものではありません。

貸借対照表全体を通じて、資産では2022年度と比べて前年度より94万円増加することになりました。負債は前年よりも5万円あまり増加しています。また、繰越金合計は前年度より88万円あまりが前年度より増加しました。

(3) 監査役意見

石田洋子・西野桂子両監査役に対する説明を2023年10月30日午前10時から11時までオンラインで行ないました。両監査役からは事業及び会計が適切に行なわれた旨の報告を受けております。監査報告書(別紙)


2023年度活動報告

  • 2022 年度決算とりまとめと 2023 年度予算案作成を行った。また、2022 年度学会決算ついての監査を受けた。
  • 予算の配賦、会計管理を実施した。各委員会に対しては記帳説明会を、支部・研究部会については本部事務局と共に運営説明会をオンラインで開催した。
  • 会費の徴収作業を実施した。
  • 本部事務局移転に備え、保管文書類の整理を実施した。

総務委員会
第11期 委員長:池上寛(大阪経済法科大学)


2024年度予算

表4:2024年予算

(1) 収入

2024年度会費収入については、恒常的な減額制度の導入に伴い、各種減額会費による収入見込みを2023年度決算とほぼ同額に設定しました。例年のパターンも読み込み若干の会員増を期待した額にもなっております。

事業収益およびその他収益のうち受取利息は2023年度決算とほぼ同額としました。受取利息以外のその他収益については2023年度の秋田での春季大会における余剰金を計上しております。以上を踏まえて、2023年度収入は昨年度決算より約2%減の1450万円余としました。前期繰越金2494万円弱を合わせ、収入合計は3944万円余となりました。

(2) 支出

支出のうち、事業費委員会計については、1358万円余りを計上しました。そのうち、支部・研究部会については、上限20万円として助成金を渡します(5支部・11研究部会)。

大会助成金について、春季・全国ともに、ホームページ管理費を本部で負担する体制をとるので、前年度予算に比して若干減額をしております。

また、学会誌は昨年度から3号発行となりましたが、そのうち英文特集号の編集・印刷費は科研費から支出されております。ただし、会員への発送経費の支出が認められていないため、学会から支出することとします。

それ以外の委員会では、社会連携・研究×実践・地方展開の3委員会を統合した社会共創委員会が新たに設置されたので、それに合わせて予算を組み直しております。

管理系委員会・本部事務局では631万円を計上しています。例年通り会員管理システム、大会管理システムに関する経費を業務委託費に計上しております。それ以外に、人件費は広報委員会や本部事務局の作業によるものです。通信費は新入会員への学会誌送付等を想定しています。会議費・旅費交通費は、対面での会議を想定し昨年度並みに計上しています。手数料・その他雑費については振込手数料や会費システムの使用料を計上しています。なお、予備費については昨年度同様、300万円を計上しています。

各委員会の項目ごとの支出予定額については表5+1をご覧ください。

表5+1:財務諸表の注記(予算)

以上を踏まえ、支出全体は2289万円余りとなりました。

予備費を除くと1989万円余りとなり、昨年度予算とほぼ同額に設定しております。

ワクワク感のある学会活動を目指しながら、効率的な支出を考慮し運営できるように各委員会をサポートする所存です。

総務委員会
委員長:関谷雄一(東京大学)


国際開発学会第12 期:委員会の構成および幹事の委嘱

委員長

関谷雄一(東京大学)

委員

池上 寬(大阪経済法科大学)
初鹿野直美(ジェトロ・アジア経済研究所)

2024年度活動計画

  • 2023 年度決算とりまとめと2024 年度予算案作成を行う。
  • 予算の配賦、会計管理を実施する。
  • 規程書類の整理、規程集の最新版作成。

総務委員会
第12期 委員長:関谷雄一(東京大学)




本部事務局からのお知らせ(2024年2月)

2023年度活動報告

  1. 学会全体の管理運営を行うとともに、各委員会のバックアップをした。
  2. 会員管理システムなどの会員業務や学会サーバー管理を実施した。
  3. 会員総会、理事会、常任理事会の会議業務を実施した。
  4. 総務委員会と共に、支部・研究部会について運営説明会をオンラインで開催した。
  5. 定款細則の改正および定款の改正作業を実施した。

本部事務局
第11期 本部事務局長:志賀裕朗(横浜国立大学)


国際開発学会第12 期:委員会の構成および幹事の委嘱

事務局長

星野晶成(名古屋大学)

事務局次長

尾和潤美(中京大学)
島津侑希(愛知淑徳大学)

2024年度活動計画

  • 学会全体の管理運営を行うとともに、各委員会のバックアップを実施する。
  • 総務委員会と共に、支部・研究部会の運営説明会を開催する。
  • 常任理事会、理事会などの会議業務、必要な報告書類などの作成を実施する。
  • 定款および定款細則の改正を実施する。

本部事務局
第12期 本部事務局長:星野晶成(名古屋大学)




横浜支部(2024年2月)

代表メンバー(第12期:2024年度)

支部長

志賀裕朗(横浜国立大学)

副支部長

吉田栄一(横浜市立大学)

監事

佐藤峰(横浜国立大学)

事務局長

小林誉明(横浜国立大学)


2024年度の支部活動スケジュール

4半期に1回程度、研究会および研究交流・情報交換会を行う。今年度は学会員以外へのアウトリーチ活動を積極的に検討する:

  • 2023年10月:定例研究会開催
  • 2024年03月:定例研究会開催
  • 2024年07月:定例研究会開催
  • 2024年09月:定例研究会開催

女性会員、外国人会員、若手研究者(若手正会員)の活動奨励策

若手会員(留学生を含む)が研究(修士論文、博士論文を含む)のアイディアを発展させるための機会を増やすべく、定例研究会では積極的に若手の研究発表を推奨する。具体的には女性研究者が多い、社会開発や教育分野に重点を置く。

また、横浜市、神奈川県在住の外国人研究者との交流を深めるなどの働きかけを行う。

またJICAや世銀との留学プログラムへの留学生の発表の機会を提供すると共に、日本で博士課程に所属する女性外国人留学生の都市開発系のグループInterlabなどとの協力関係を強化することで、女性/外国人/若手研究者への活動奨励を行う。


横浜支部
支部長:志賀裕朗(横浜国立大学)




東海支部(2024年2月)

代表メンバー(第12期:2024年度)

支部長

梅村 哲夫(名古屋大学)

副支部長

染矢 將和(名古屋大学)
林 尚志(南山大学)


2024年度の支部活動スケジュール

  • 2023年10月:公開講座開催(名古屋大学と共催)
  • 2023年11月:国際開発学会秋季大会 企画セッション開催
  • 2024年03月:若手研究者報告会開催(於:名古屋大学)
  • 2024年06月:国際開発学会春季大会 企画セッション開催
  • 2024年07月:支部講演会開催(於:南山大学)
  • 2024年09月:若手研究者報告会開催(於:名古屋大学)

女性会員、外国人会員、若手研究者(若手正会員)の活動奨励策

国際開発学会東海支部では、若手研究者の育成を促進するため、広く全国に呼びかけ、毎年度「若手研究者報告会」を開催してきた。

実施に関しては単に希望者全員に報告させるのではなく、書類審査を行ってスクリーニングを行っている。報告者の中から特に優れた者に対して、国際開発学会全国大会での報告ための交通費も一部補助することとしてる。

2024年度は幹事として、新たに女性会員2名、男性会員3名(内、外国人会員2名)を追加し、支部における多様性を広げることとした(ただし、LGBTQの観点から、性別の観点を取り入れることが適切かどうかは今後検討する必要がある)。


東海支部
代表:梅村哲夫(名古屋大学)
副支部長:染矢将和(名古屋大学)
副支部長:林尚志(南山大学)




京滋支部(2024年2月)

代表メンバー(第12期:2024年度)

支部長

渡邉 松男(立命館大学)

副支部長

斎藤 文彦(龍谷大学)

幹事

山田 翔太(立教大学PD)


2024年度の支部活動スケジュール

  • 若手研究者を対象とする研究成果・計画報告会(秋・春)
  • 研究会、シンポジウムの開催
  • 支部による調査・研究の実施
  • 当該地区の国際開発・協力に関わる人材の連携強化と情報共有
  • その他、必要な活動

女性会員、外国人会員、若手研究者(若手正会員)の活動奨励策

若手研究者の春季大会・全国大会への発表と大学の枠を超えた研究協力を促すことを目的に、研究成果・計画報告、交流会を実施している。

2023年度は4月23日(日曜)に京都大学にて、学生会員(博士前・後期課程)およびPD、助教レベルの会員による15の研究成果および中間報告が行われた。

特に関東地区の学生会員数名が対面で報告を行うなど、地域を問わず会員に研究成果の機会を提供する形となった。

外国人会員の活動については、京滋支部地域の各大学院所属の留学生に対し入会勧誘を行い、上記報告会への参加、発表を促している。

4月の報告会では、8件の発表が外国籍会員によるものであった。


京滋支部
支部長:渡邉松男(立命館大学)




関西支部(2024年2月)

代表メンバー(第12期:2024年度)

代表

小川 啓一(神戸大学)

副代表

關谷 武司(関西学院大学)


2024年度の支部活動スケジュール

定期的(月に一回程度を目安にする)に研究会を開催して議論を進めていく。その際、国際開発・国際協力の講師をお招きして、講演を依頼し、それをもとにして議論を進めていくことを予定している。


女性会員、外国人会員、若手研究者(若手正会員)の活動奨励策

関西支部ではこれまでも若手研究者の育成を目的として、定期的に研究会を開催し、活発な議論の場を設けてきた。

引き続き2024年度も、若手研究者が、現在活躍されている研究者や実務者から新たな知識を吸収し、直接意見を交わすことができる機会を提供していくよう努める。

また、全ての研究会で英語を使用言語としてきたことを踏まえ、2024年度も研究会を英語で開催することにより、外国人会員にも門戸を開く支部の活動を実施していく。

関西支部の賛同者の多くは女性会員であるので、女性会員に研究会での発表を積極的に奨励する。


関西支部
支部長:小川啓一(神戸大学)
副支部長:關谷武司(関西学院大学)




広島支部(2024年2月)

メンバー(第12期:2024年度)

支部長

市橋 勝(広島大学)

副代表

関 恒樹(広島大学)
金子 慎治(広島大学)


2024年度の支部活動スケジュール

  • 2023年12月 第1回支部会議(東広島)
  • 2024年 3月 第2回支部会議(東広島)
  • 2024年 6月 第3回支部会議(東広島)
  • 2024年 7月 第4回支部会議(東広島)
  • 2024年 8月 第11回西日本地区研究発表会(広島大学)

女性会員、外国人会員、若手研究者(若手正会員)の活動奨励策

外国人会員や若手研究者の育成を促進するため、年に1度開催している西日本地区の研究発表会では広く外国人留学生などにも入会を呼び掛けるようにしているので、今年度もそういう働きかけを行なっていきたい。


広島支部
支部長:市橋 勝(広島大学)




『移住と開発』研究部会(2024年2月)

移住と開発

Migration and Development

メンバー

代表

加藤 丈太郎(武庫川女子大学)

副代表

  • 生方 史数(岡山大学)
  • 二階堂裕子(ノートルダム清心女子大学)

活動開始から活動終了までの予定

1年目(2023年10月~2024年9月)←今年度

  • 全国大会「ラウンドテーブル」 外国人技能実習制度を通じた技能移転をめぐる課題と可能性:ベトナムにおける社会的ニーズと技能実習生の生活戦略
  • 第1回研究会 日本への移住経験は発展途上国社会にどのような影響を及ぼす(した)のか
  • 第2回研究会 中国から日本への労働移動の教訓を探る

2年目(2024年10月~2025年9月)

  • 第3回研究会 Migration and Development Studiesにおける分析枠組みの検討(1)
  • 第4回研究会 Migration and Development Studiesにおける分析枠組みの検討(2)
  • 第5回研究会 理論と実証データをどのように結びつけるか
  • 春季大会and/or全国大会での発表 Migration and Development Studiesにおける分析枠組みを活かした報告とする

3年目(2025年10月~2026年9月)

  • 第6回研究会 特集企画・政策提言に向けて(1)
  • 第7回研究会 特集企画・政策提言に向けて(2)
  • 第8回研究会 特集企画・政策提言報告会

成果の公表予定

<学会での発表、学会誌での特集企画など>

1年目<今年度>

全国大会においてラウンドテーブルを出す

2年目

春季大会もしくは全国大会で部会メンバーによる発表を行う

3年目

学会誌での特集を企画する、政策提言集をまとめる


女性会員、外国人会員、若手研究者(若手正会員)の活動奨励策

賛同者の半数が女性会員である。外国人会員のうち非日本語話者でも参加できるよう研究会の一部は英語で行うことも検討する。若手正会員に研究会やラウンドテーブルに積極的に参加してもらう。


『移住と開発』研究部会
代表:加藤 丈太郎(武庫川女子大学)




『ICTと国際開発(ICT4D)』研究部会(2024年2月)

ICTと国際開発(ICT4D)

ICT for Development(ICT4D)

メンバー

代表

狩野 剛(金沢工業大学)

副代表

竹内知成(監査法人トーマツ)


活動開始から活動終了までの予定

1年目(2023年10月~2024年9月)←今年度

研究会(招待公演を含む)を年3〜4回程度開催する。

以下は議論トピックの例であり、1年目の活動を踏まえて2年目以降のトピック・活動内容を検討する。

  • AIツールと情報倫理
  • 外国人IT人材育成と日本の国際化
  • 国際開発におけるICTの具体的活用例
  • ICT導入によってもたらされる政策実施への変化

また、研究・実務への提言も視野に入れていることから、研究会は部会内部に閉じることなく広く学会員に開かれるとともに、当該分野に関心がある非会員の研究者・実務家もその対象とすることを想定する。

2年目(2024年10月~2025年9月)

研究会(招待公演を含む)の開催

3年目(2025年10月~2026年9月)

研究会(招待公演を含む)の開催


成果の公表予定

<学会での発表、学会誌での特集企画など>

1年目<今年度>

全国大会または春季大会での企画セッションまたは論文投稿

2年目

全国大会または春季大会での企画セッションまたは論文投稿、書籍執筆

3年目

全国大会または春季大会での企画セッションまたは論文投稿、書籍執筆


女性会員、外国人会員、若手研究者(若手正会員)の活動奨励策

まず、ICTはジェンダーの観点からも課題解決に貢献しうる技術であるため、ジェンダー x ICTをテーマとしたトピックも積極的に採り上げる。また、賛同者に外国人会員も含まれるため、英語での研究会開催や情報共有の際の二言語化を推奨・推進する。

そして、最新技術など若手研究者も興味を持ちうる内容も多いと考えられるため、若手会員の研究部会などとも情報共有し、積極的な巻き込みを図っていく。加えて、本部会は地理的・時差的な不利益をなくすために、オンライン開催を主としつつ、定期的に対面開催する。


『ICTと国際開発(ICT4D)』研究部会
代表:狩野 剛(金沢工業大学)




『SDGs を問い直す』研究部会(2024年2月)

SDGs を問い直す

Sustainability Development Goals, Re-examined

メンバー

代表

大門(佐藤)毅(早稲田大学)

副代表

野田真里(茨城大学)


活動開始から活動終了までの予定

1年目(2023年10月~2024年9月)←今年度

春季大会(日本語)、全国大会(英語)でのセッションおよび研究会(日本語/英語)等

2年目(2024年10月~2025年9月)

春季大会(日本語)、全国大会(英語)でのセッション(日本語/英語)および研究会等

3年目(2025年10月~2026年9月)

春季大会(日本語)、全国大会(英語)でのセッション開催および研究会(日本語/英語)等、国際ジャーナル(英語)での特集企画や出版等


成果の公表予定

<学会での発表、学会誌での特集企画など>

1年目

春季大会、全国大会でのセッション開催等

2年目

春季大会、全国大会でのセッション開催等

3年目

春季大会、全国大会でのセッション開催、および英文による学会誌での特集企画や出版等


女性会員、外国人会員、若手研究者(若手正会員)の活動奨励策

ダイバーシティ推進にかんがみ、英語による研究部会活動を促進し、外国人会員の参加や若手研究者とくに女性会員の国際的な活躍を推進する。賛同に女性会員が多数おり、外国人会員や若手会員にも参加いただいている。各年次の大会等で開催するセッション等の半分は英語とし、学会誌での特集企画や出版等も英語で企画する。


『SDGs を問い直す』研究部会
代表:大門(佐藤)毅(早稲田大学)