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NL35巻2号 [2024.08]

『国際教育開発における実務と研究の架橋』研究部会(2024年8月)

2024年度活動実践期報告書

1. 研究部会の目的

本研究部会では、国際教育開発における実務と研究を架橋し、双方向から国際教育開発という分野を捉え直すことを目的として、①若手を中心とする実務者と研究者の対話の機会を設けて相互理解を深めること、また、②実務者と研究者の協働によって、これからの国際教育開発の構想を提示すること、の2点の取り組みを行う。

本研究部会の立ち上げに先立ち、主にJICAを中心とする実務者と、途上国の教育研究をしている研究者による勉強会を2022年度より実施してきた。そこでの対話を通して、研究者側はJICAを単体のアクターと捉える傾向があり、その中で実務に携わる実務者の想いや葛藤に十分に目を向けて来なかったことや、逆に、実務者側は、研究者が生み出す知見や批判的検討を実務の中で十分に活かしきれていないことなど、実務(者)と研究(者)の間には「すれ違い」があることが明らかになってきた。

そこで、本研究部会を立ち上げ、より広く実務・研究に携わる会員を巻き込みながら、なぜ・どのように実務(者)と研究(者)がすれ違ってきたのか、また、そもそもこの「すれ違い」は克服すべきものであるのか、という点も含めて、国際教育開発における実務と研究の架橋を実務(者)と研究(者)の双方の視点から検討することによって、これからの国際教育開発という分野のあり方・関わり方を構想したい。議論の成果は書籍として整理し、広く世に問う。

2. 2024年度の活動

2023年11月:全国大会(上智大学)にてラウンドテーブルを実施

「国際教育開発のシングル・ストーリーを乗り越える:実務者と研究者の出会い直しに向けて」と題し、ラウンドテーブルを実施した。

研究者3名、実務者3名からの発表を受け、双方からのディスカッサントによる討論、および会場参加者との意見交換を実施した。NLでの実施報告は以下の通り。

本企画は、国際教育開発における実務と研究を架橋し、双方向から国際教育開発という分野を捉え直すことを目的として、特に、若手を中心とする実務者と研究者の相互理解を深めるための対話の機会として企画した。2022年度から実施してきた勉強会での議論を通して、研究者側はJICAを単体のアクターと捉える傾向があり、その中で実務に携わる実務者の想いや葛藤に十分に目を向けて来なかったことや、逆に、実務者側は、研究者が生み出す知見や批判的検討を実務の中で十分に活かしきれていないことなど、実務(者)と研究(者)の間には「すれ違い」があることが明らかになってきた。

そこで、本企画では、この「すれ違い」の背景に、国際教育開発に関わる人々の葛藤や戸惑い、願いなどの個人的な語りが覆い隠されてきたことがあるのではないかとの仮説に基づき、これへの反省から議論を進めた。特に、国際教育開発の中で「研究(者)」と「実務(者)」のそれぞれについて生み出されてきた、一方的で固定的なイメージ(シングル・ストーリー)を批判的に捉え、国際教育開発の語りを具体化・複数化するところから始める必要があること、また、「語られること」だけでなく「語られないこと」にも注意を払い、シングル・ストーリーが何を可能にし、何を不可視化してきたのか、議論を深めることに留意し、いわゆる研究者と実務者双方から計6名が登壇し、討論者も双方から計4名が登壇して、議論を進めた。

発表者からは、実務や研究に携わることになった背景・想いに加えて、それぞれが抱える葛藤や喜びが共有され、双方の顔を見て、想いをも含めて「出会う」「出会い直す」ことの重要性が確認された。また、コメンテーターからは、やっていることの中身からは、実務(者)と研究(者)の境界は極めて曖昧なものであるにもかかわらず、それぞれが敢えて立場性を意識する/させる関係の中ですれ違いが起きているのではないかとの指摘があった。

会場からは、国際教育開発の「現場」をどう捉えていけば良いかとの指摘や、教育は明確なゴールがない(あるべきでないとも言える)分野だからこそ、「良い教育とは何か」についての対話を継続的に行なっていかなければならないのではないか、との指摘があった。

今年度より、本ラウンドテーブルのメンバーが中心となって研究部会「国際教育開発」を発足させることから、実務者・研究者の出合い直しや自分自身との出会い直しを促すために、引き続き対話を続けていきたい。

2024年2月:河口湖にて研究合宿を実施

2月10日・11日に、上智大学河口湖ハイムにて研究合宿を実施した。

2月10日は、ラウンドテーブルに続いて研究者、実務者双方からの発表と討論をおこない、それぞれの立場から国際教育開発への期待や葛藤を交流した。

2月11日は、研究部会としての今後の活動方針とスケジュールについて議論した。研究部会チームでのJICA共創枠への応募内容や、本研究部会の取り組みを論文化・書籍化していくことについて話し合った。

2024年6月:慶應義塾大学にて研究会を実施

6月3日に、研究者6名、実務者4名(+オンライン参加者)が参加して研究会を実施した。

『国際開発研究』で特集を組むことを目指し、小グループに分かれて議論してきたことを発表し討議した。午後は、JICA共創枠の事業内容・進め方について話し合った。

2024年6月:名古屋大学にて研究会を実施

6月28日に、研究者6名、実務者6名(オンライン参加を含む)および一般参加者約10名にて、研究会を実施した。

当研究部会の関心やこれまでの活動内容についての紹介の後、実務と研究を行き来している発表者2名より、なぜ双方を行き来することになり現在その立場にあるのか、その位置取りには国際教育開発のなかの教育という部分が影響を与えたのか、その影響はどのようなものか、などについて発表した。

最後に、以上の点などをふまえて、国際教育開発の研究と実務という主題の論点を先行研究との接続線のもとに整理し、ありうべき差異と関係について、一般参加者も交えて議論した。


『国際教育開発における実務と研究の架橋』研究部会
代表:荻巣 崇世(上智大学)

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