『アグロエコロジーと食農システム』研究部会(2025年7月)

本研究部会は、「倫理的食農システムと農村発展」研究部会(2021年~2024年度)を発展的に継承し、アグロエコロジーによる食農システムの変革に向けた課題と方向性を探求する。この目的に向けて、10月以降6月末までに3回の研究会と春季大会(北海道大学)におけるラウンドテーブルを開催した。
ラウンドテーブルは、2025年6月21日(土)に「アグロエコロジーから開発を再考する」とのテーマの下に開催した。詳細はニューズレター本号(春季大会特集号)のラウンドテーブル報告を参照されたい。
本年度第1回目の研究会は静岡文化芸術大学(武田淳・研究室)を会場とし、「フェアトレード再考」というテーマで開催した。なお、開催方式はオンラインを併用するハイフレックスで行った。参加者は対面式が12名(同大学の学生FT団体のメンバー3名を含む)、オンラインが16名だった。報告は、報告1:池上甲一(近畿大学名誉教授)「浜松視察から得られたフェアトレードを考える新しい視点とフェアトレードからの『卒業』」、報告2:河村能夫(龍谷大学名誉教授)「大学運営の視点を入れたフェアトレード」、報告3:佐藤寛(開発社会学舎)「フェアトレード認証の三段階仮説:自己認証はフェアを担保できるか」の3本。報告の終了後に、武田淳氏(静岡文化芸術大学准教授)と三室千菜美氏(浜松フェアトレードタウン・ネットワーク代表)からそれぞれ研究者の視点と実務者の視点からコメントがあった。オンライン参加者を含めた活発な議論が行われた。この研究会をひとつのきっかけとして、フェアトレードに関する書籍の出版企画が実現された。研究部会の成果として取り上げておきたい。
第2回目の研究会は、3月4日(火)に第1回目と同じく、ハイフレックス方式で開催した。対面式の会場は龍谷大学・深草キャンパス。会場出席者は13名、オンライン出席者は12名。報告1は、北野収(獨協大学)「私たちの脱植民化と小さな農的連帯ー開発原論の視点からアグロエコロジーを捉えるー」、報告2は、西川芳昭(龍谷大学)「天地有情の思想と生命誌論ー農学原論の視点からアグロエコロジーを捉えるー」。討論者として登壇した池上甲一(近畿大学)は、「家農学と民間農学の視点から考える、同じく古沢広祐(國學院大學)は「発展とは何か?人類史(人新世)の視点から」、それぞれの見解を披瀝した。報告とコメントを踏まえて、有意義な討論が行われた。
第3回目の研究会は、3月31日(月)にオンラインで開催した。報告者は、「オーガニック雫石」の加藤淳氏(広報担当)で、報告タイトルは「オーガニック雫石のPGS活動」。「オーガニック雫石」は、日本で唯一の世界有機農業連盟(IFOAM)による参加型認証(PGS)認証団体である。その実情について学ぶことができた。出席者は19名。
第4回目の研究会として、7月19日(日)にオンライン方式による研究会を開催予定である。この研究会は春季大会のラウンドテーブルの補足版として開催される。
研究部会代表:池上 甲一(近畿大学 名誉教授)
副代表:牧田 りえ(学習院大学)