『開発のレジリエンスとSDGs』研究部会(2023年11月)
2023年活動報告
学会の全国大会・春季大会においてラウンドテーブルの開催をそれぞれ1回ずつ行った。
全国大会(2022年12月4日、5日開催)
全国大会(2022年12月4日、5日開催)では、本研究部会による第4回目のラウンドテーブルを実施した。テーマは「食のレジリエンスとSDGs」ということで、専門家を招聘し、オンラインのラウンドテーブル議論を行った。
SDGs17 の目標の1 つが2030 年までに「飢餓をゼロに」することであるが、昨今の世界情勢、例えば新型コロナウィルスのパンデミックやロシアのウクライナ侵攻に伴う食糧供給危機や物価高騰などの諸問題を踏まえ改めて食のレジリエンスとSDGs を様々な角度から検討してみた。
基調講演として山形県高畠町の和法薬膳研究所主宰の菊地良一氏から、主としてミネラル濃度の高い食品の重要性と普及に関する実践と重要性に関する報告を頂いた後、中西徹氏からは国際社会における、グローバル金融資本がもたらす食の格差拡大を是正するための有機農業の意義に関する報告がなされた。
次いで西川芳昭会員からは、農業の産業化と近代化による種子システムの脆弱化に関して現状に関する具体的な説明とともにその持続性を保つために必要な管理の在り方について報告がなされた。さらに、安藤由香里氏からはフードロスをめぐり、フランスおよびイタリアで適用されている社会連帯経済関連法・食品廃棄禁止法の効力、日本への適用可能性について報告がなされた。
討論者の野田真里会員からは各報告者に対し、それぞれのテーマに関して新型コロナ禍との関係やポスト/ウィズ・コロナを見据えた展望について問いがなされ、各報告者による応答があった。課題として、複合的なグローバル危機と食のレジリエンスに関し、さらに各テーマに関する追究が必要だという認識が共有された。
春季大会(2023年6月10日開催)
春季大会(2023年6月10日開催)では本研究部会最後のラウンドテーブルとして国際開発学会会員が多数執筆に携わっている、『SDGs を問い直す』の刊行(2023 年5 月、法律文化社、野田真里編著)が取り上げられた。
COVID-19 パンデミックは、スペイン風邪以来の100 年ぶりの大規模な感染症による危機とされ、SDGs に大きな影響を与えている。また、新型コロナ禍は、国家の枠組みをこえて人々の生存を脅かす、人間の安全保障上の危機でもある。
ポスト/ウィズ・コロナを見据えて、2030年までのSDGs の中間年である2023 年に、SDGs の真価を問い直す試みを行った。本セッションは東京大学グローバル地域研究機構持続的開発研究センターおよび早稲田大学国際平和戦略研究所が共催した。
ラウンドテーブルでは野田真里会員を座長に、執筆を担当した大門毅会員、大谷順子会員、そして関谷雄一が登壇し、1)新型コロナ危機を踏まえてSDGs を問い直す意義、2)新型コロナ危機が資本主義経済そしてSDGsにおいて「取り残される」脆弱な人々」とされる災害弱者や女性・女子にもたらす影響とレジリエンス、3)SDGs の加速化にむけた人間の安全保障の再考、4)SDGs とポスト/ウィズ・コロナへの展望などを論点に議論を交わした。
SDGs を問い直すうえで、新型コロナ危機をふまえた資本主義経済および「取り残される」脆弱な人々(災害弱者や女性・女子)の課題、今後の展望、そして人間の安全保障との関係等が議論された。また、今後の当学会を中心とする新型コロナ危機、SDGs や人間の安全にかかる共同研究の加速化や、ネットワーク強化が約束された。
『開発のレジリエンスとSDGs』研究部会
代表:関谷雄一(東京大学)