新刊案内『新装版 人新世の開発原論・農学原論 内発的発展とアグロエコロジー』
『新装版 人新世の開発原論・農学原論 内発的発展とアグロエコロジー』
本書のオリジナルは2022年に刊行され、『国際開発研究』誌上でも、勝俣誠先生のご書評を賜ることができました。
2023年には「第21回日本NPO学会賞(選考委員会特別賞)」を受賞いたしました。
しかしながら同年11月に版元が倒産したため、供給が途絶えておりました。今般、創成社様のご厚意により、「新装版」として復刊するとともに、新たに「『新装版 人新世の開発原論・農学原論』によせて」「追補 内発性とデコロニアル:西洋近代的な人間中心主義を超えて」を追加収録いたしました。
引き続き、皆さまのご高配を賜ることができれば幸いです。
書誌情報
- 著者:北野収・西川 芳昭(編著)
- 出版社 : 創成社
- 価格:2,750円(税込み)
- 発売日 : 2024年11月25日
- 版型 : A5判・並製
- ページ数:288頁
- ISBN-13 : 978-4794432506
もくじ
人新世を生き続けるための二つの原論
人間の生存基盤という視点からの「農学原論」、「世直し」の主体としての人間の主体形成論による「開発原論」、この二つの原論をネパール、モザンビーク、タンザニア、フランス、イタリア、北米、日本などでの経験をふまえ追及する!政策実践や運動論としての内発的発展論とは距離をおき、「土と人間」の視点から吟味する。
開発学者=農学者としての2人の編者の「40年間」
2人の編者(北野・西川)の共通体験:学生だった1980年代の問題意識と「鶴見和子」との出会い、行政官・JICA職員としての実務経験、研究者への転身と国内外フィールドでの学び、新自由主義とコロナの時代の先の時代への想い…。本書は学術論文集の体裁を採りつつも、二人の編者の40数年間の研究と学びの軌跡を綴った「読み物」としての意味合いもある。そして、編者の仲間たち(同僚、研究仲間、教え子、その他)との出会いを祝福する協働・連帯の書でもある。
『新装版 人新世の開発原論・農学原論』によせて(編者)
はしがき(編者)
序章 二十一世紀の開発原論・農学原論について語れば(北野収)
1 編者のなかにあり続けた問題意識
2 三十年前、一九九〇年代に考えていたこと
3 二〇二〇年代の今、考えていること
4 チヅ子先生のこと
5 原論としての開発、原論としての農学を思い出すために
6 本書のアグロエコロジー観
7 内発的発展における中間領域と市民・民衆
8 むすび
第Ⅰ部 あの国、あの人たちは「遅れている」のか
第一章 モザンビーク農民の生活世界にみる性・生計・裁判(田村優)
1 はじめに
2 調査地概要
3 能動的な性
4 リオマの住民の経済的多面性
5 裁判所にみる「伝統」と「近代」の混在
6 むすび
第二章 ネパールの歴史都市とキー・パースンにみる内発的発展論-カトマンズ盆地でのフィールドワークから-(米川安寿)
1 はじめに
2 外側からの開発
3 カトマンズ盆地とネパールの歴史都市
4 都市と人々にみる内発的発展の諸事例
5 内発的発展の要件との照合とその考察
6 むすび
第Ⅱ部 農業・市場・社会
第三章 貧困軽減と食料安全保障の手段としての有機農業(宮下智衣、K. M.カユンゼ)-タンザニア・モロゴロ州での農家調査から-
1 はじめに
2 調査・解析手法
3 結果と考察
4 むすび
第四章 日本の有機農業における贈与と脱商品化(ルロン石原・ペネロープ、須田文明訳)
1 はじめに
2 金子美登の事例
3 相原農場の事例
4 欲求の重要性について
5 むすび
コラム フランスのアグロエコロジーと有機農業(須田文明)
1 フランスにおける近年の有機農業の発展
2 成長戦略としてのアグロエコロジー
3 社会運動としてのアグロエコロジー
4 地域食料プロジェクトPAT
5 成長を越えて
第五章 農業と社会をつなぐ包摂の場-イタリアの社会的農業-(中野美季)
1 はじめに
2 社会的弱者を包摂する農業
3 ヨーロッパとイタリアの社会的農業
4 イタリアにおける社会的農業国法の成立
5 社会的農業に至る二つのルート
6 社会的農業組合
7 社会的農業の実践者像
8 むすび:マウロ・ガレヴィとは誰だったか
第Ⅲ部 内発的発展と食料主権
第六章 CSAの実践による越境する持続可能な社会形成-イギリスとカナダの現地訪問から-(西川芳昭)
1 はじめに
2 英国におけるCOVID-19下のCSA訪問でみたこと、教えられたこと
3 過去のCSAおよび関連活動調査から考えたこと
4 むすび:CSAの実際から何が学べるか
第七章 「本当の幸せ」のための開発と発展を求めて-タンザニア地域社会の主体性回復と内発的発展の試み-(下田道敬)
1 はじめに
2 途上国への開発協力にみる近代化の功罪
3 タンザニアで試みてきたこと-地域社会の主体性の回復と内発的発展-
4 水俣、大分からの学び
5 むすび:日本人は大丈夫か-人々の本当の幸せを実現するための「開発」と「発展」を求めて
第八章 時空を超えて越境する小さな農的連帯-CSAとフェアトレードのパイオニアたち-(北野収)
1 はじめに
2 トーマス・ライソンと『シビック・アグリカルチャー』
3 世界初のCSA、東京都世田谷区・大平農園と大平博四
4 農民教育と国際協力の父、中田正一
5 越境する協同組合運動とフェアトレード
6 むすび
終章 人新世に再考する開発原論・農学原論内発的発展論と生命誌論を参考軸として-(西川芳昭)
1 改めて開発をめぐる世界の動向を見直す
2 内発的発展論を振り返る
3 農学原論・農本主義を振り返る
4 国際的に注目されるアグロエコロジーとその課題
5 内発的発展論と近代科学を結ぶ生命誌論
6 内発的発展論を組み込んだ新しい農学原論・開発原論の可能性
7 二〇五〇年に向けて考えていくこと
8 むすび
追補 内発性とデコロニアル:西洋近代的な人間中心主義を超えて(北野収、西川芳昭)
あとがき(編者)
本件にかんするお問い合わせ先
創成社
https://www.books-sosei.com/
北野収
shukitano1 [at] dokkyo.ac.jp(* [at] の部分を@に修正してご使用ください)