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学会誌編集委員会からのお知らせ(2023年5月)

学会誌についてはの1号を現在、鋭意、編集中です。6~7月にお届けできる予定です。

さて、この学会誌の表紙が3月に発行されたグローバル連携委員会編集による英文号から新しいものに変わりました。日本語の学会誌の方でも今後、ひきつづきこちらの表紙を使っていく予定です。

この表紙デザインはグローバル連携委員会の北村友人先生と編集委員会の島田で相談をしつつ進めてきました。また、実際のデザイン案の調整については荻巣崇世先生のご尽力によるものです。

昨年12月の全国大会総会における投票に加え、ネットでの投票も実施しましたが票が割れて2つの案での決選投票までもつれこみました。決選投票でも大きな差はつきませんでしたが58.2%の票を得たデザインになりました(先日、お届けした3号の表紙です)。

今回のデザインについては、投票をいただいた案以外にも多くの案がありました。その過程で多くの方にご協力いただきました。ありがとうございました。ただ、デザインというのは人によっていいと思うものが異なり、また答えがあるわけでもないのでなかなか選定は難しく時間がかかってしまいました。

理事会でも、編集委員会でもどのデザインが良いかについては意見が人によってことなりました。個人的に、私自身が良いと思ったものは実は最も早い段階で脱落し、全国大会の総会での投票に進むこともできませんでした。次に良いと思ったものも決選投票まで進むことができず少し残念でした。

ただ、このデザイン案の選定を通じそれぞれの方の学会誌に対する理想のイメージが異なるということが分かり、とても勉強になりました。それは個人としての差もありますが、専門分野による違いもあるように思いました。

たかがデザインとはいいつつ、学会誌の顔になるものです。どんな学会誌であるかを表すのだと思いますが、最終的に選ばれた表紙もとても美しく、気に入っています。今後、この表紙に負けない中身の学会誌に育てていきたいと思います。

学会誌編集委員会
委員長:島田剛(明治大学)




グローバル連携委員会からのお知らせ(2023年5月)

グローバル連携委員会では、次の2つの活動を行いました。

1.学会誌英文号『国際開発研究』31巻3号(2023年2月)の刊行

本学会の学会誌で、毎年、英文号を刊行することとなり、そのための準備を進めてきました。今回、その最初の号として、『国際開発研究』31巻3号を刊行することができました。

今後、第3号は英語のみによって編纂されていきます。今回の英文号の立ち上げにあたっては、佐藤仁・会長ならびに島田剛・学会誌編集委員長をはじめ、多くの方のご支援を得て実現することができました。すべての方のお名前を挙げることはできませんが、この場をお借りして心よりお礼申し上げます。

また、会員の皆様には、ぜひ積極的に英語論文をご投稿いただくと共に、国内外の(元)留学生や関係者の方々にご投稿を勧めていただきますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。


2.英語論文執筆ワークショップ(Writeshop)の開催

2024年2月刊行予定の『国際開発研究』32号3号の特集論文を国内外の若手研究者の方々に執筆していただくために、タイのチュラロンコン大学との共催で英語論文執筆ワークショップ(Writeshop)を2023年3月27日にバンコクで開催しました。このワークショップで研究発表していただいた論文を中心に、特集を企画する予定です。また、今後も、こうしたワークショップを年に一回開催し、優れた論文の掘り起こしに努めていきたいと考えています。

【Writeshopの概要】

テーマ:

Shifting Practices and Experiences of Development Cooperation in Southeast Asia: Understanding local voice and agency

共催機関:

Center for Social Development Studies (CSDS) and M.A. and Ph.D. Program in International Development Studies (MAIDS-GRID), Faculty of Political Science, Chulalongkorn University; Office of International Affairs, Chulalongkorn University; and Japan Society for International Development

プログラム:

<Welcome remarks>

Dr. Bhanubhatra “Kaan” Jittiang
Assistant Dean for International Affairs and Director of the M.A. and Ph.D. Program in International Development Studies (MAIDS-GRID)

Dr. Yuto Kitamura
Graduate School of Education, University of Tokyo (on behalf of JASID)


<Overview and objectives for WriteShop / Participant self-introduction>

Dr. Carl Middleton
Director, Center for Social Development Studies, Faculty of Political Science, Chulalongkorn University


<Session 1>

Nguyen Thi Thuy Trang (with Dr. Edward Lahiff)
“Shifting Practices & Experiences of Development Cooperation in Southeast Asia: Understanding Local Voice and Agency”

Thol Dina
“Natures and Conditionalities of Traditional Donors and Its Effects on Project Implementation: Experiences from the World Bank Funded Projects in Cambodia”

  • Discussant: Dr. Jin Sato followed by Q&A

<Session 2>

Supitcha Punya
“Laos after graduation from the Least Developed Country status”

Tay Zar Myo Win and Ye Min Zaw
“The politics of International Aid in a post-coup of Myanmar: Norms, powers, and interests”

  • Discussant: Dr. Yuto Kitamura followed by Q&A

<Session 3>

Masatoshi Hara
“A Development Strategic Study on the ODA for Middle-Income Trap in Southeast Asia”

Josephine Therese Emily G. Teves
“Governmentality in the Context of a British-funded Activate Bangsamoro 1 Project in the Bangsamoro Autonomous Region in Muslim Mindanao, Philippines”

  • Discussant: Dr. Pattajit Tangsinmunkong followed by Q&A

<Session 4>

Thianchai Surimas
“How the villagers of Baan Boon Ruang think globally and act locally: co-creation of knowledge and Thai Baan Research”

Hanna Nur Afifah Yogar
“Designing Fairyland: The Enchantment of “Nusantara” and the Beings’ Disenchantment”

  • Discussant: Dr. Soyeun Kim followed by Q&A

グローバル連携委員会
委員長:北村友人(東京大学)




第33回全国大会セッション報告(一般口頭発表)

A. 一般口頭発表

A-1. 教育

  • 2022年12月3日(土曜)09:45ー11:45(アカデミーコモン8F 308F1E)
  • 座長:山田 肖子(名古屋大学)
  • ディスカッサント:荻巣 崇世(上智大学)、川口 純(筑波大学)

発表題目と発表者

(報告:山田 肖子)


A-2. Community

  • 2022年12月3日(土曜)13:20ー14:50(リバティタワー7F 10751B)
  • 座長:佐藤 峰(横浜国立大学)
  • ディスカッサント:野田 真里(茨城大学)、近藤 菜月(名古屋大学)

このセッションには対面で20名、オンラインで14名の参加を得て行われた。座長は佐藤峰(横浜国立大学)、コメンテーターは野田真理(茨城大学)と近藤菜月(名古屋大学)、佐藤峰が担当した。

まず、第一発表 “Youth Safeguarding Intangible Cultural Heritage in Luang Prabang through Community-centered Innovations”では、ラオスの古都ルアンプラバンにおける、コミュニティを中心とした若者の無形文化資産(ICH)保護の試みについての発表がなされた。野田会員からは、本研究の核となるコミュニティの示すものが明確ではないとの指摘がなされた。

続いて、SDGsの観点から、「持続可能な開発の第4の柱」としての開発リソースとしてのICHの在り方、経済・社会・環境の持続可能性との関係、ラオスの文化の基盤である仏教との関係について質問がなされた。

第二発表 “Group Identity and Self-Accountability with Autoethnography: A Privileged Mestizo amidst an Indigenous Community in Mexico”では、研究する側がオートエスノグラフィーを実施することで、より調査される側に対してより倫理的でアカウンタブルでいられるのではないかと言うアイディアが共有された。

佐藤会員からは、アイディア自体は優れているが、何故オートエスノグラフィーなのか、これがある調査とない調査での比較検討があったほうがより説得力があるのではないかと言う質問と共に、先住民およびメスチーソとしてのアイデンティティの流動性についてなどの指摘もあった。

第三発表 “Transdisciplinary Community Practice (TDCOP) for Rural Women’ s Empowerment: A Case Study in Gorontalo Province, Indonesia”では、伝統的な手工芸カラウォへの支援を通じて、女性の経済的エンパワーメントや、男性の人力小規模金採掘への参加率低下を目指すプロジェクトが紹介された。

近藤会員からは、プロジェクトが机やライトなどの物質的支援や技術的側面に焦点を当てているのに対し、伝統的手工芸や人力小規模金採掘に男女が従事する文化的社会的構造の調査とそれに基づくアプローチが必要ではないかという質問などが出された。

セッション自体はコメンテーターと発表者の対話があり有意義だったが、発表時間を5分短くしてフロアからの質問を受け付けられるとよりよいという印象を得た。

(報告:佐藤 峰)


A-3. 平和構築、レジリエンス

  • 2022年12月3日(土曜)15:10ー16:40(リバティタワー7F 10731A)
  • 座長:志賀 裕朗(横浜国立大学)
  • ディスカッサント:湖中 真哉(静岡県立大学)、関谷 雄一(東京大学)

発表題目と発表者

  1. 「人道・開発・平和構築のポケットと人道的開発支援の可能性-ティモール島の国境をめぐる考察」
    堀江正伸(青山学院大学)
  2. 「自然資源管理におけるレジリエンス概念の役割について-東アフリカを事例として」
    久保英之(地球環境戦略研究機関)、三浦真理(国際協力機構)
  3. 「複合的災害下におけるパタンに居住するネワール民族の女性自助組織の果たす役割-2015年ネパール大地震と新型コロナウイルスパンデミック以後のコミュニティ復興の事例から」
    竹内愛(南山大学)

堀江会員は、東ティモールの独立に伴って東西に分断されたティモール島では、東ティモールへは国際社会の注目が集まる一方、東側からの難民も多い西側が話題に上ることはなかったとしたうえで、分断後20年を経て、両地域の人々が国境を越えた新たな経済社会的相互依存関係を生み出していると指摘し、そうした国境を越えた連帯を促す支援のあり方について検討した。

これに対して、討論者の湖中会員は、「人道的開発」とは、当事者以外の周辺住民等を含むアクターを対象とした社会集団の拡がりを想定した開発のあり方なのか、それとも緊急/平時の二分法に囚われず、時間的な拡がりを想定して、慢性的問題に取り組むことを主張する開発のあり方なのかといった点等を質問した。

また同じく討論者の関谷会員は、ティモールの事例は、欧米列強が画定した国境に沿って独立国として歩まざるを得なくなったアフリカ諸国の国境線沿いの人々を彷彿させると指摘したうえで、このような歴史を持つ人々にとって、持続的な開発の未来にはどのような落としどころがありうるのだろうか、との問いを提起した。

続いて、竹内愛会員は、ネパールのパタンにおける女性自助組織である「ミサ・プツァ」が2015年の大地震や新型コロナ感染爆発に際して実施したコミュニティ復興支援活動について報告し、彼女たちが20年にわたる活動を通じて地域行政組織やコミュニティの男性と信頼関係を構築した結果、災害等の緊急状態下で迅速かつ効果的な活動を展開することができたと主張した。

これに対して、討論者の関谷会員は、カースト制度や男性優位の伝統が根強いネパール社会において、「ミサ・プツァ」は女性が持続的な社会的役割を営むようになる突破口になりうるのか、その活動がネパール社会に根付き、ジェンダーバランスを是正したり、カーストを超えた女性の繋がりに発展したりする可能性があるのか、等の問いを投げかけた。

最後に、久保英之会員と三浦真理会員は、気候変動の影響を被りやすい乾燥・半乾燥地帯を抱えるエチオピアとケニアを事例として、気候変動レジリエンス概念の政策実施への反映状況を分析し、自然資源管理におけるレジリエンス概念の効果的な活用のあり方について検討した。

これに対して討論者の湖中会員は、そもそもレジリエンス概念は開発学にどんな新規性をもたらしうるのかを考える必要性を指摘したうえで、気候変動の影響を受ける社会生態システムの内部と外部が連動しながら変化するというシステムの変容可能性を考慮してレジリエンスをどのように定義すべきか、コンテクストが変化しうる状況下において、攪乱要因と社会生態システムの脆弱性を特定することはできるのか、といった問いを提起した。

このように、本セッションは、ティモール、ネパール、アフリカという多様な地域を対象とした観察結果をもとに、多様な人々が変化する自然社会環境の中で共存していく道筋を考えるうえで根本的に重要な「国境」「レジリエンス」「ジェンダー」等の概念について熟考する貴重な機会となった。座長の時間管理が不適切だったためにフロアとの質疑応答の時間が取れなかったことが悔やまれる。

(報告:志賀 裕朗)


A-4. 教育、子ども

  • 2022年12月3日(土曜)15:10 ー 16:40(リバティタワー7F 10751B)
  • 座長:黒田 一雄(早稲田大学)
  • ディスカッサント:山﨑 泉(学習院大学)、小川 未空(大阪大学)

本セッションは、会場とオンライン併用によるハイブリッド形式で行われ、日本語による2発表により構成された。

第一に、追手門学院大学の平井華代会員により、「Southから Northへ:フィリピンのNGOの支援事例から得る日本の子ども食堂への示唆」と題した発表が行われた。本研究は、岩手県の子ども食堂の活動と、フィリピン・セブにおける貧困な子ども・家庭を支援するNGOの活動を、インタビューを中心とした質的研究手法により比較する研究であった。

この研究の独自性は、貧困な子ども支援に先進的なフィリピンから、日本に対する教訓抽出を目的とするというユニークな問題意識から出発していることであり、その試みは発表で示された具体的な提言により、十分に達成されていると見受けられた。途上国の教育を対象とした比較研究の新しいあり方を提示しており、挑戦的な取り組みとなっていた。

第二の発表は、東洋大学の金子(藤本)聖子会員による、「マレーシアにおける難民の学習環境-クアラルンプール近郊のコミュニティセンターの多様性-」と題する報告であった。マレーシアは難民条約を批准していないながら東南アジア最大の難民受け入れ国となっており、その多くがミャンマーからのロヒンギャ難民である。

本研究では、クアラルンプール近郊の難民が集中する地域において、難民を対象とした4つのコミュニティスクールでの調査を基にして、難民にとっての教育の役割・重要性を考察しながら、各校に潜む多様な課題が明らかにされた。難民の教育は、世界的な政策課題としてはその重要性を認識されながらも、学術的な研究の乏しい分野であり、今後の一層の展開が期待される。

この2報告に次いで、学習院大学の山﨑泉会員、大阪大学の小川未空会員(名古屋大学)両指定討論者によるコメントが行われ、それぞれの学術研究としての方法論について活発な議論が行われた。

(報告:黒田 一雄)


A-5. 教育

  • 2022年12月3日(土曜)15:10ー16:40(リバティタワー7F 10761C)
  • 座長:日下部 達哉(広島大学)
  • ディスカッサント:佐野 麻由子(福岡県立大学)、坂上 勝基(神戸大学)

発表題目と発表者

(報告:日下部 達哉)


A-6. Gender, Education

  • 2022年12月3日(土曜)15:10ー16:40(アカデミーコモン8F 308E1D)
  • 座長:石田 洋子(広島大学)
  • ディスカッサント:島津 侑希(愛知淑徳大学)、崔 善鏡(広島大学)

本一般口頭発表では、教育開発における重要な課題の一つであるジェンダー平等について、各国における現状とそうした不平等を生み出す要因、或いはCOVID-19の感染拡大による影響などに関する研究発表が行われた。座長は石田洋子氏(広島大学)が、ディスカッサントは島津侑希氏(愛知淑徳大学)及び崔善鏡氏(広島大学)が務めた。

Jean-Baptiste SANFO氏(滋賀県立大学)の発表、“Factors Explaining Gender Inequalities in Learning Outcomes in Francophone Sab-Saharan African Primary Education”では、サブサハラアフリカ諸国の基礎教育の成果におけるジェンダー不平等について、教育制度や所得の影響に加えて、社会や家族など客観的な測定が難しい要因が影響していることを解明するため、PASECの結果を用いて分析の進捗について報告が行われた。

Naoko Otobe氏(Gender, Work and Development Expert)の発表、“The Socioeconomic impact of multiple global crisis: Gender dimensions”では、日本国内におけるCOVID-19感染拡大による社会・経済的影響によってより明確になったジェンダー不平等について、政府発表の国内データの分析やOECDデータを用いた国際比較を通して課題を示し、日本政府による対応策と今後の課題について報告が行われた。

本一般口頭発表には対面・オンラインを併せて約30名が参加した。両発表ともジェンダー平等についてタイムリーで重要な課題を扱っているが、現時点では二次データを用いた分析であり、今後は一次データを用いたより詳細な分析が期待されることなど、活発な議論が行なわれた。

(報告:石田 洋子)


A-7. 社会開発

  • 2022年12月3日(土曜)15:10ー16:40(大学会館3F 第1会議室1F)
  • 座長:木全 洋一郎(JICA)
  • ディスカッサント:松岡 俊二(早稲田大学)、関根 久雄(筑波大学)

発表題目と発表者

  1. 「潜在的に田園回帰志向を持つ人の要因分析」
    戸川 椋太(立命館大学)
  2. 「人口減少に関する要因研究–マーシャル諸島共和国を事例として–」
    野原 稔和(マーシャル諸島海洋資源局)
  3. 「米国社会における差別問題と負のスパイラル—トランプ政権における国民の分断を中心に—」
    安部 雅人(東北大学)

本セッションでは、3本の研究発表が行われ、会場16名、オンライン14名の計30名による議論が行われた。

第1の戸川報告では、日本の大都市圏から地方への移住(田園回帰)を志向する要因として、一軒家の購入や車の所有、農業体験の参加経験、勉強に意欲的の3点を挙げ、若い移住者向けの居住意欲のわく住宅を用意すること、農業体験を通じて特産品の魅力を印象付けることを提言した。

戸川報告に対し、討論者の松岡会員からは、世界的に人口減少社会になっていく中で社会や家族の在り方が問い直されており、その中で地方移住促進策を捉え直す重要性が指摘された。

第2の野原報告では、マーシャル諸島共和国で2011年から2021年に人口減少に転じた要因として、平均余命、人口移動、出生率の観点から分析し、0歳代から10歳代の人口が大幅に減少しており、特に0歳代は0歳代から10歳代の人口よりもさらに下回っていることから、出生率が人口減少の一因と結論づけた。

野原報告に対し、討論者の松岡会員からは、出生率が減少した要因は何か、他の島嶼国の人口動態はどうなっているか、島嶼地域社会の持続性の阻害要因を考えるにはどういった問いを立てるのかといったコメントが出された。

第3の安部報告では、米国の差別問題の背景として歴史的な白人男性優位社会やコロナ禍による白人低所得者層の失業を挙げ、抗議運動の高まりが更なる警察の治安対策強化や民間人による銃の重武装化につながるとする負のスパイラルを指摘した。これに対し、黒人・アフリカ系の若年層からの教育・就業機会の充実化を提言した。

安部報告に対し、討論者の関根会員からは、差別問題の構造的問題は教育や収入向上の視点を超越しており、差別する側の視点から、なぜ差別をするのか、そもそも平等とは何なのかを問い直す必要性が指摘された。

3報告ともこれまでの国際開発学会ではあまり見られない課題設定をしている点に将来性を感じる一方で、必ずしも研究精度の高くない発表もあった。特に学生会員においては、大会での門戸を広げる意味でポスターセッションでの発表を奨励しているが、あえてセッション発表とするには、一定の質を確保すべく指導教官の監督指導の徹底をお願いしたい。

(報告:木全 洋一郎)


A-8. 経済と環境

  • 2022年12月3日(土曜)15:10ー16:40(大学会館3F 第2会議室1G)
  • 座長:豊田 利久(神戸大学)
  • ディスカッサント:黒川 清登(立命館大学)、渡邉 松男(立命館大学)

このセッションでは、途上国の経済と開発援助資金に関する3つの発表がなされた。その報告と討論の概要は次の通りである。なお、参加者は約20名であった。

(1) 「中国の国際協力資金が各国のIMFの金融支援プログラム参加に与える影響の検討」

大森佐和(国際基督教大学)

最近の中国の開発資金増大がIMFプログラムへの参加に影響するか否かを計量分析した。特に、中国の開発資金がIMFプログラムを短期的にはクラウドアウトしていること、中国と選好(国連投票行動)が離れている国では長期的にIMFプログラムに参加する傾向があること、などが示された。

討論者から、中国資金の長期的な影響の有無や異なった基準での選好の把握などを分析する必要性が指摘された。

(2) 「カンボジア銀行業の資本構成:高度ドル化経済における銀行業の計量分析」

奥田英信(帝京大学)

銀行経営の健全性を資本構成(資本金の体操資産比率)の決定要因によって解明することを試みた。2011年から7年間のデータを用いた計量分析により、ドル化経済の下で中央銀行の最後の貸手機能に制約があるにもかかわらず、商業銀行がリスクに十分な注意を払っていない可能性を見出した。討論では、ドル化経済と商業銀行の資本構成との関係に関する仮説のより明白な叙述の必要性が指摘された。

(3)「政府開発援助が直接投資に与える影響-VAR モデルによる検証」

大野沙織(京都大学)

主要5カ国のODAが海外直接投資(FDI)に及ぼす効果を2003年-2020年のデータによって計量分析した。主な結果は、ODAは必ずしもFDIに影響を及ぼしていないこと、1990年代のデータで実証されてきた日本のODAの先兵効果は見いだされないことである。討論では、日本の先兵効果が1990年代に終わったとされる理由のさらなる検討や分析手法再考の必要性が指摘された。

(報告:豊田 利久)


A-9. 教育

  • 2022年12月3日(土曜)16:50 ー 18:50(リバティタワー7F 10731A)
  • 座長:内海 成治(大阪大学)
  • ディスカッサント:澤田 康幸(東京大学)、平山 恵(明治学院大学)

12月3日16:50から行われた教育分科会には、会場に25人Zoom参加者約25人と合わせて約50人の参加があり、教育分野への関心の高さが感じられた。

本分科会では4つの発表が行われた。コメンテーターは澤田康幸先生(東京大学)、平山恵先生(明治学院大学)で、初めの2つの発表を澤田先生、後の2つの発表を平山先生に初めのコメントをいただいた。

最初の発表は内海悠二(名古屋大学)会員の「アフガニスタンにおける教育に対するコミュニティレジリエンス」であった。これは2014年の社会調査を利用したマルチ分析である。教育に対するコミュニティの役割を女性、児童労働、紛争状況等から分析したものである。澤田先生からは統計分性に関する指摘等があった。現在アフガニスタンは再びタリバン政権となり教女子教育は厳しい状況にあるが、こうしたコミュニティの意向は重要な意味を有すると思われる。

2つ目の発表は狩野豪(金沢工業大学)・石川健太(マンチェスター大学)会員の「日本のGIGAスクール構想はOne Laptop per Childと同じ道を歩むのか?」で、狩野会員が発表した。2005年から開始されたOLPCの経験から、現在日本で展開されているGIGAスクール構想の課題を分析したものである。標準仕様、教員研修、子どもの学習機会、性別や地域の格差等に考慮する必要性が明らかになった。澤田先生からはOLPCとGIGA構想とは状況が大きく変わっているので、比較対象の正当性への指摘があった。GIGA構想はOLPCのみならず、国際的な比較の中で検討されるべき重要な課題と思われる。

3番目は藤枝詢子(京都精華大学)会員の「フィジーにおける伝統的住居の建築技術継承の可能性」とい非常にユニークな教育課題である。フィジーのブレという伝統的な茅葺住居は全住居の1%と危機的状況にあり、その建築技術の継承には教育機関による技術教育の役割が重要であり、そのための課題を抽出したものである。平山先生からはこの発表がまとまりのある発表であるため、ご自身の経験した伝統的事業の継承に関する例が紹介された。ネパールの伝統医療、フィリピンの薬草事業、奈良正倉院の校倉津造りの継承の例である。

伝統技術の継承は国際的な課題であり、国際協力において注目する必要性が高いことが分かった。

4つ目の発表は、近藤葉月(名古屋大学)会員の「『いずれ自営業者のなりたい』若者たち:ガーナ農村部の学卒者のschool to work transition調査から」で、質問票調査とFG調査からの報告である。学卒者が政府セクターあるいはNGOへの就職を希望しながらも、将来的には自営業を目指していることが明らかになった。ガーナの雇用状況の不安定さが起業家精神を育んでいる状況が示された。平山先生からは、FGインタビューの採用、大学の教員の能力、雇用者側の問題等が指摘された。

熱心な発表と丁寧なコメントで非常に有意義な分科会になった。座長のミスで会場からのコメント・質問の時間がとれず申し訳なかった。今回の分科会は幅白い教育分野の各地の調査の報告であり、教育開発分野の広がりと深まりを感じた次第である。

(報告:内海 成治)


A-10. African Economy

  • 2022年12月3日(土曜)16:50 ー 18:20(リバティタワー7F 1075 1B)
  • 座長:笹岡 雄一(明治大学)
  • ディスカッサント:武内 進一(東京外国語大学)、福西 隆弘(ジェトロ・アジア経済研究所)

African Economyのセッションでは、Joseph Enoch Garcon氏が「TICADとアフリカの米セクターの参加型政策形成」Christian Otchia氏が「経済特別区(SEZ)の意味と構造変容」Hoi Yee Regina氏が「アフリカ地方の環境リスク認識」の3つの発表を行った。コメンテーターは武内進一氏、福西隆弘氏であった。

最初のTICADの発表ではTICADの経緯、米生産についてはアジアの緑の革命や日本の経済モデルとの関係、TICAD型開発理念の意義が語られたが、オーナーシップとパートナーシップの原則が反映されている特徴は首肯されるものの、日本の農業の実績とCARD実施体制に有意な関係はないのではないか、アフリカが力を注ぐべきは米なのかメイズなのかといったコメントがあった。

SEZについてはアジアやラ米では経済的な効果をもたらしたが、アフリカでは顕著な効果がなかった、ないしその効果は特定地域に限定されていたとの発表であった。なぜアフリカでは効果がなかったのかについてはlocal captureの問題があり、効果のスピルオーバーがアフリカでは低く、従ってマクロの産業構造も工業化などの変化に乏しかったという説明であった。発表趣旨は明確であったが、産業構造の変化はSEZだけで捉えられるのかといった問いや回帰分析で適切な変数について注意を払うべきとのコメントがあった。

環境リスクはナイジェリア中部の人々の認識について長年のデータ分析から行ったもので、降雨量や時期の集中化による洪水の発生や、気温の変化なども相まって牧畜民の移動や生活の変化をもたらす認識の変化が現れているという趣旨であった。これがフラニ族の移動や周囲の人々との紛争にもたらす影響については今後の課題とのことであった。

3つの発表とも内容の濃い力作であったが、最初の2つはやや当初の想定に思い込みもあった気がした。最後の発表は降雨量などの物理的なデータと遊牧民の意識とを組み合わせた長期の調査を反映したもので、構想の大きさにとても感心させられた。

(報告:笹岡 雄一)


A-11. 援助、環境

  • 2022年12月3日(土曜)16:50 ー 18:50(リバティタワー7F 1076 1C)
  • 座長:大塚 健司(ジェトロ・アジア経済研究所)
  • ディスカッサント:小林 尚朗(明治大学)、山口 健介(東京大学)

本セッションでは4本の報告があった。

まず槇田容子(国立環境研究所)会員から「開発援助における気候変動適応主流化―ボトムアップアプローチの普及について」というタイトルで報告があり、気候変動適応策の策定には、科学主導型のトップダウンアプローチに加えてコミュニティ主導型のボトムアップアプローチを組み合わせたデュアルアプローチが有効であることを指摘し、JICAのプロジェクトを事例にその課題と解決策を明らかにした。

次に侯テイ玉(お茶の水女子大学)会員から「市民社会の視点から見たミャンマーの経済特区における日本のODA政策と中国の『一帯一路』構想の実践に対する比較について」というタイトルで報告があり、ミャンマーにおける日本、中国それぞれの経済特区に対する開発援助のアプローチの同異を検討し、いずれも市民社会サイドから批判を受けてきたものの、その背景にある政策意図、リーダーシップと人的コネクションなどに違いがあることを指摘した。

続いて榎本直子(法政大学)会員から「健康的に、地球環境問題の解決を目指した『行動変容』モデルに関する一考察」というタイルとで報告があり、法政大学環境センターによる独自の環境マネジメントシステム「EMS」に注目して、学生アンケート調査を基に行動変容の実態を明らかにしつつ、さらなる行動変容を促す企画を行ったことを紹介した。

最後に高柳彰夫(フェリス女学院大学)会員から「DAC市民社会勧告の実施:南の市民社会の支援をめぐって」というタイトルで報告があり、DAC勧告を概観した上で勧告採択後に策定中の南の市民社会組織支援のためのツールキットのプロセスを紹介し、日本社会へのインプリケーションについて論じた。

槇田会員と榎本会員の報告に対しては小林尚朗会員(明治大学)から、侯会員と高柳会員の報告に対しては山口健介会員(東京大学)からコメントがあり、フロアからの質問やコメントも含めて報告者との間で質疑応答が活発に行われた。

(報告:大塚 健司)


A-12. Economy and Environment

  • 2022年12月3日(土曜)16:50 ー 18:20(大学会館3F 第2会議室1G)
  • 座長:小島 道一(ジェトロ・アジア経済研究所)
  • ディスカッサント:柳原 透(拓殖大学)、岡本 由美子(同志社大学)

発表題目と発表者

  • “Overseas Employment as Means to Sustain Economic Growth and Development: The Case of Overseas Filipino Workers”
    Armand Rolla
  • “Future Estimation of the Amount of Solid Waste in Fiji -Empirical analysis based on quantitative and qualitative analysis”
    高木 冬太(立命館大学)
  • “Addressing the Japanese elderly mobility problems with autonomous vehicle”
    PANDYASWARGO Andante Hadi (Waseda University)

Three presentations were delivered in the session on “Economy and Environment”.

Ms. Armand Rola made presentation on “Overseas Employment as Means to Sustain Economic Growth and Development: The Case of Overseas Filipino Workers“. This paper seeks to illustrate how the overseas employment of Filipinos can be both beneficial to the host country and to the Philippines by looking at the various host countries’ demand for labor and the overseas remittances’ contributions to the Philippines’ Gross National Product. Based on historical secondary data, the remittance contributions to the country’s GNP were valued at % in 1984 and grew to as much as % in 2006. In addition, there were only 350,982 Filipinos deployed in 1984 which grew to almost 2.3 million in 2018. Dr. Yumiko Okamoto, a commentor of the session, recommended to compare the magnitude and the role of remittances and foreign aid (grant portion) in the economy of the Philippines, because both of them appear in the current transfer balance of the current account of BOP.

Mr. Tota Takagi presented “Future Estimation of the Amount of Solid Waste in Fiji -Empirical analysis based on quantitative and qualitative analysis”. The paper estimated future generation of waste in Fiji, using Input-output Table with some assumption on consumption expenditure per tourist, and the number of tourists. It is estimated that waste generation would increase by 20,000 tons per year in 2030, at least compared to the amount in 2018. Mr. Michikazu Kojima, the chair of the session, suggested some further research such as impact of mismanaged waste in Fiji to tourism, comparing economic ripple effect and cost of waste management, and financing mechanism on waste management such as tourist tax.

Third speaker, Ms. PANDYASWARGO Andante Hadi, made a presentation titled “Addressing the Japanese elderly mobility problems with autonomous vehicle.” The study analyzed the Japanese Study of Aging and Retirement (JSTAR) data and gained insights through multiple correspondence analyses and nonparametric tests. The study found that technology adjustments, such as universal designs, may help ease the use of autonomous vehicles by drivers with lower cognitive and physical functions. However, the steep price of the technology must be aided with innovative business models. Dr. Toru Yanagihara, the commentator, pointed out that regarding transportation modes, it is necessary to consider not only the two extremes, personal vehicle and public transportation, but also various methods in between personal and public transportation. He also pointed out that autonomous driving was a major technological innovation, with maintaining the status quo in daily life and with reducing the psychological resistance.

(報告:小島 道一)


A-13. Disasters, Infrastructure, Education

  • 2022年12月4日(日曜)09:30 ー 11:00(リバティタワー8F 1085)
  • 座長:本田 利器(東京大学)
  • ディスカッサント:松丸 亮(東洋大学)、桜井 愛子(東洋英和女学院大学)

Disasters, Infrastructure, Educationのセッションでは、災害を軸に多岐にわたる発表がなされた。

“Preparedness of the Coastal Inhabitants of Pakistan towards Natural Hazards”では、パキスタンの4地区を対象とした住民の災害意識や災害情報の入手経路などの調査報告がなされた。当日はそれに加え、脆弱性および災害対応力に対する分析も報告された。会場から全国的な傾向との比較について質問があり、それを含めた分析を進める予定であることが報告された。

“Barriers to education and lifelong learning of the climate change displaced persons: a case study in Indonesia”においては、インドネシアの教育環境について女子の教育に課題があること等が報告された。また、気候変動対策の政策に対して教育制度が十分に対応できていない現状等が報告された。会場からのコメントとの議論の中では、行政が人々の移動等のデータを収集管理することや高度教育への支援の必要性も言及された。

“Case study of Biomass Clearance in Dam Reservoir related to Nam Ngiep 1 Hydropower Project in Lao PDR”では、ダム建設に伴うリスクとその対応として、不発弾処理の課題や地方行政の対応の遅さ、地元建設企業への技術指導の課題が紹介された。会場との議論で、これらがラオスだけではなく一般性のある課題であること等が言及された。いずれの発表も時宜を得た発展性のあるものであり、議論も有意義なものであった。

(報告:本田 利器)


A-14. Education and Culture

  • 2022年12月4日(日曜)09:30 ー 11:30(リバティタワー9F 1096)
  • 座長:工藤 尚悟(国際教養大学)
  • ディスカッサント:小川 啓一(神戸大学)、汪 牧耘(東京大学)

発表題目と発表者

  1. 「留学生・日本人学生の個人的体験と教科書をつなげる試み」
    吉田秀美(法政大学)
  2. “Measurement of the level of intangible cultural heritage awareness and knowledge among the local community of Luang Prabang in Lao People’s Democratic Republic”
    Jerome Silla (United Nations University)
  3. ”China’s Belt and Road Initiative and Reshaping Internationalization of Local Higher Education Institutions”
    劉靖(東北大学)
  4. “The factors influencing the diffusion process of the teacher portal use among lower secondary school teachers in Mongolia”
    Yuji Hirai (Tokyo Institute of Technology)

本セッションでは、以下の4件の発表があり、参加者は10名ほどであった。コメンテーターは、小川啓一(神戸大学)および、汪 牧耘(東京大学)の各会員であった。いずれの報告も国際化や新型コロナ感染症の拡大などで多様化する教育現場のダイナミズムを捉える、重要な研究テーマであった。

“留学生・日本人学生の個人的体験と教科書をつなげる試み”

吉田秀美(法政大学)

アジアからの留学生が増加していくなか、大学教育の現場でサステイナビリティを議論するとき、その背景となる条件に対する異なる意見があることによって、議論の深化が生まれるという内容であった。発表者はこれまで自身の担当する科目にて学生が用いた発表スライドを見せながら、学生の持つ多様性を示した。会場からは、豊富なデータに対するコメントや、一科目のデータからどのようにESD全体への提言につなげていくのかなどの質問が出された。

“Measurement of the level of intangible cultural heritage awareness and knowledge among the local community of Luang Prabang in Lao People’s Democratic Republic”

Jerome Silla (United Nations University)

ラオス・Luang Prabangにて、コミュニティの無形文化財(ICH: intangible cultural heritage)に対するawarenessとknowledgeの理解度を定量的に調査した内容が報告された。具体的にはICHに関する12項目を網羅するアンケートを作成し、Luang Prabangにある29村において435人に対して実施した内容が示された。会場からは、発表者が実施した大規模調査に対するコメントと共に、ICHに関わる政策の意思決定に誰がどのように関わるのかなどの質問が出された。

”China’s Belt and Road Initiative and Reshaping Internationalization of Local Higher Education Institutions”

劉靖(東北大学)

中国の一帯一路政策における高等教育の国際化について、ドキュメント分析手法を用いて調査した内容が報告された。一帯一路政策は中国の地方大学においても国際化を起こすカタリストとしての役割が期待されているという内容に対して、興味深いという会場からのコメントが多くあった。

“The factors influencing the diffusion process of the teacher portal use among lower secondary school teachers in Mongolia”

Yuji Hirai (Tokyo Institute of Technology)

新型コロナ感染症の拡大によって学校教師の研修制度が実施できなくなるなか、モンゴルではインターネットを介した研修プログラムの普及が進んでいる。本発表は、モンゴルの中学校教師の間でオンライン研修プログラムの普及プロセスを、ウランバートル内の4地区で実施したアンケート調査(835件)のデータを用いて分析した内容が報告された。会場からはクラスター分析の内容に対する質問の他、現地での大規模調査に対するコメントなどが出された。

(報告:工藤 尚悟)


A-15. Aid Organization, Economic Growth and Poverty

  • 2022年12月4日(日曜)09:30 ー 11:00(リバティタワー10F 1105)
  • 座長:岡部 正義(共立女子大学)
  • ディスカッサント:高橋 基樹(京都大学)、伊東 早苗(名古屋大学)

本セッションは2名の会員による報告が行われ、参加者は対面8名・オンライン2名、進行は全て英語で行われた。

第一報告は、伏見勝利会員(JICA緒方貞子平和開発研究所)による”Ceremonial Implementations at Overseas Locations: A Multi-Case Study of a Bilateral Development Cooperation Agency”

報告者はまず、様々な事業体が海外展開し、海外子会社や現地海外事務所(OO)を展開する中で、HQから下された事業がOOの実施局面では、“ceremonial implementations”(儀礼的な実施、CI)にとどまっていることの功罪に問題意識を示し、二国間開発協力機関(BDCA)にも該当すると問題提起があった。

そして、報告者自身の豊富なこれまでの情報の蓄積に加え、OOに勤務する現地スタッフへのインタビュー調査を用いて一次データを構築し、CIが行われる背景やその性格、メカニズムを丹念に分析。HQや本国との関係に緊張性をはらむなかで、CIはセーフガードとしての機能を果たしていることをBDCAの事例でも立証したとする結論が報告された。

第二報告は、原正敏会員(ビジネスブレークスルー大学)による“A Development Strategy on Middle-Income Trap and Startups Promotion in the Philippines”

報告者は、高所得国や上位中所得国に移行した域内近隣国の台頭と対照的に、フィリピンが過去三十年にわたり低位中所得国から抜け出せない「中所得国の罠(MIT)」に問題関心を設定する。そして、MITから抜け出せない原因のひとつに、同国ではスタートアップにかかる取引費用・初期コスト等が高いという仮説を開発計画や先行研究から示した。

世銀のWorld Development Indicatorsから「ビジネスのしやすさ(EDB)」尺度という変数を集計・構築してこれを関心ある独立変数とし、経済成長の尺度として一人当たりGDPに回帰する線形回帰分析を行った。さらに政府文書等の丹念な解釈に基づく定性的分析も実施した。主たる結果はEDBの説明力を示す結果となったとする結論が報告された。

各報告後、第一報告には伊東早苗会員(名古屋大学)、第二報告には高橋基樹会員(京都大学)がディスカッサントとなって質問や提案事項を議論し、さらにフロア参加者の質問も活発に寄せられ、所期の時間を超えて活発に報告者との間に議論を展開することができ、たいへん有意義なセッションとなった。

(報告:岡部 正義)


A-16. 援助機関と現場

  • 2022年12月4日(日曜)09:30 ー 11:00(リバティタワー10F 1106)
  • 座長:源 由理子(明治大学)
  • ディスカッサント:松本 悟(法政大学)、北野 収(獨協大学)

本セッションの第一報告は、隅田姿(広島修道大学)会員による「開発援助における現地実務者の役割~境界連結者としての貢献~」である。現地に派遣された援助実務者の働き方に焦点をあて、境界連結者(boundary spanner)の概念を使い、現地実務者が果たす役割について検討したものである。報告に対しコメンテーターの松本悟(法政大学)会員から、境界線の両側の視点から見る必要性や現地実務者の役職による違いなどについてコメントがあった。

続く第二報告は、松原直輝(東京大学)会員による「現場主義の理想と現実~JICAの本部・現地事務所関係から見た組織経営~」である。JICA独立行政法人化にともなう「現場主義」の組織改革プロセスで組織改革の巻き戻しが起きた背景を、地方分権化の議論を分析の枠組みとして考察したものである。

松本会員からは、効率性に重きをおく地方分権化の枠組みで「現場主義」を検討することの是非、現場を理解した中堅職員の増加との関係性、緒方貞子氏の存在の影響についてコメントがあった。また、隅田報告と松原報告をつなぎ、境界連結者分析と「現場主義」双方から考えるとどうなるのかという問いかけがあり、両者の継続的・発展的な研究への期待が述べられた。

最後に、第三報告である若林基治(JICA)会員による「開発途上におけるソーシャルイノベーションの実現にかかる開発協力機関の役割について」は、開発途上国のソーシャルイノベーションのためには開発協力機関が一定の役割を果たすという仮説のもと、日本の高専がアフリカにおいて企業、大学等と協力して行ったプロジェクトを事例として仮説検証を行ったものである。

コメンテーターの北野収(獨協大学)会員からは、かつての技術移転論・普及教育論との違い、語法としてのイノベーションの整理上の課題、イノベーションの目的が成長に限定されることへの懸念、イノベーションにおける市民社会の位置づけなどのコメントがあった。

フロアからの質問・コメントも含め、3人の報告者ともに可能な範囲でのフィードバックを行いつつ、今後の研究上の課題として捉えていくことが表明された。援助の現場と理論を架橋する研究の更なる発展を期待したい。

(報告:源 由理子)


A-17. 経済

  • 2022年12月4日(日曜)12:45 ー 14:45(リバティタワー8F 1083)
  • 座長:後藤 健太(関西大学)
  • ディスカッサント:受田 宏之(東京大学)、會田 剛史(ジェトロ・アジア経済研究所)

第一報告:「インドネシアにおける労働市場の構造変化と賃金格差」

  • 報告者:本台進会員(神戸大学)
  • 討論者:會田剛史会員(ジェトロ・アジア経済研究所)

本報告は、通貨危機後のインドネシアの労働市場に起きた構造変化の分析にフォーカスをあて、その賃金格差への影響を分析したものであった。討論者からは、非常に多くの示唆に富む報告であるというコメントとともに、現在の分析が労働供給側の観点に限定されていることから、ミクロレベルでの賃金の決定要因や、男女間・都市農村間の賃金格差の決定要因の推定など、労働需要側の分析の可能性が示された。

第二報告:「GVCと自律共生的発展との連携:日系自動車メーカーのASEAN地域活動史の検討」

  • 報告者:竹野忠弘会員(名古屋工業大学)
  • 討論者:受田宏之会員

本報告は、東南アジアにおける日系自動車メーカーの事業展開を、多国籍企業とローカル企業・産業間連携におけるメリットを、製品・製造設計の観点から検討し、地場企業にとっての「経営発展」の可能性に関してするものであった。討論者からは、東南アジア地域の多様性をどのように考えるのか、さらにグローバル・バリューチェーンの開発的な側面をどのように扱うのか、といった質問があった。

第三報告:「メキシコにおけるトランジット移民―法整備と現実のはざまで」

  • 報告者:柴田修子会員(同志社大学)
  • 討論者:受田宏之会員

本報告では、最近の米墨国境における非正規な越境者の急増と、そこにおける非メキシコ人(トランジット移民)の比率の急増という背景の下、メキシコにおける移民・難民に関する法整備の状況と、これとの整合性な政策実践に焦点を当てていた。そこでは、移民をプロセスととらえる視点の重要性や、最終目的地として考えられてきた米国に向けて、トランジット移民が必ずしも直線的な移動経路を取らない多様な実態を、詳細な現地調査でえられた知見に基づいた報告がなされた。討論者からは、こうした、データの取りにくい課題に対して、NGOからアクセスした点に対する評価があった。また、プッシュ・プル要因の中でも、近年高まりを見せているプッシュ要因の重要性、さらにはNGOのアドボカシー活動の影響などに関する質問があった。

第四報告:「ラオス日系企業工場労働者の生産性改善とピア効果―作業グループにおける性格特性の異質性に着目したミクロ計量分析―」

  • 報告者:栗田匡相会員(関西学院大学)
  • 討論者:會田剛史会員

本研究は、途上国(ラオス)の工場労働者を対象に、観測不能な「能力」を性格特性(性格五⼤因⼦)で代用とし、こうした能力のグループ内の異質性の労働生産性への影響を推計することで、そのピア効果を検証しようとしたものである。討論者からは、本研究のユニークで意欲的な側面への言及があった。また、理論モデルおよびデータ収集(実験)にいける作業環境に関するにいくつかの重要なコメントがなされた。

4つの全ての研究発表が、それぞれ大変興味深いものだった。二人の討論者の的を射た建設的なコメントもあり、新たな研究の視点を提供するような有意義なセッションだった。なお、本セッションでは4つの報告があり、それぞれ20分の発表、討論者による5分のコメント、その後の討論者の回答とフロアからの質問を合わせて5分という時間配分となっていたが、やや時間不足な印象があったのが若干残念であった。

(報告:後藤 健太)


A-18. 思想、人類学、文化

  • 2022年12月4日(日曜)12:45 ー 14:45(リバティタワー10F 1103)
  • 座長:重田 康博(宇都宮大学)
  • ディスカッサント:橋本 憲幸(山梨県立大学)、木山 幸輔(筑波大学)

本報告は、一般口頭発表「思想、人類学、文化」セッションについてである。参加者は、4名の発表者、2名の討論者など事務局関係者を含めて約20名であった。

最初の清水大地(筑波大学大学院)会員の「多元世界におけるアフリカの開発論:ウブントゥ的開発論への展望」は、エスコバルの多元的世界観におけるアフリカのウブントゥ的開発論を ILO、マラウィの事例に考察し、その本質が他者との関係性にあるとした。

討論者の橋本憲幸(山梨県立大学)会員からは、「ウブントゥ」概念が表象の政治のなかで利用されてきたことを清水会員自身はどう評価しているのかといった質問が出された。

次の浅田直規(筑波大学)会員の「人類学と開発(学)の交点としての『開発予後』を考える―ルーマニアの児童福祉制度を事例に」は、開発プロジェクト終了後の影響を「開発予後」として、ルーマニアの児童福祉制度/国際援助を事例に調査し、その歴史、児童養護施設の長所と課題を取り上げ、ポスト共産主義の文化からどのように持続するのかが重要だと述べた。橋本会員からは、ルーマニアへの児童福祉制度に対する国際援助が共産主義の文化とどのように結びついているのかという質問があった。

三番目の宮澤尚里(早稲田大学)会員の「伝統文化の現代的役割―インドネシア・バリ島の事例から」は、インドネシアのガムラン音楽活動は参加者のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)にどのような影響を与えているかのアンケート調査を行い考察した。討論者の木山幸輔会員(筑波大学)からは、QOL 増進を目指す「政策提言」の位置付け、ガムランの営みと QOL の因果関係などの質問があった。

最後の岡野内正(法政大学)会員の「SDGs 思想の歴史的起源―トーマス・スペンス(1750-1814)の自由移民・土地総有・全員参加・住民管理原則に基づくグローバルなベーシックインカム資本主義発展構想」は、総有制法人によるオーナーシップの確立構想を提案しベーシックインカム理念の創設者スペンスの著作などをテキスト分析しグローバル資本主義発展と普遍的人権保障が両立できるかを検討している。木山会員からはスペンスの総有制法人とSDGs や人権の概念との関係、SDGs や人権の「何に」寄与するのかといった質問があった。

(報告:重田 康博)


A-19. 保健衛生

  • 2022年12月4日(日曜)12:45 ー 14:15(リバティタワー10F 1106)
  • 座長:杉田 映理(大阪大学)
  • ディスカッサント:松山 章子(津田塾大学)、福林 良典(宮崎大学)

発表題目と発表者

(報告:杉田 映理)


A-20. 社会開発、コミュニティ

  • 2022年12月4日(日曜)12:45 ー 14:45(リバティタワー11F 1113)
  • 座長:長畑 誠(明治大学)
  • ディスカッサント:大橋 正明(聖心女子大学)、秋吉 恵(立命館大学)

発表題目と発表者

(報告:長畑 誠)


B. 企画セッション

C. ラウンドテーブル

D. ブックトーク、プレナリーほか

第33回全国大会を終えて




学会誌編集委員会からのお知らせ(2022年11月)

学会誌31巻2号について編集作業をしております。今回は論争的な論文も掲載できる予定で新しい試みです。少し遅れている原稿もあり12月に発行を予定しておりますが、年末年始の印刷の状況では来年1月にずれ込む可能性もあります。

学会誌編集委員会
委員長:島田剛(明治大学)




グローバル連携委員会からのお知らせ(2022年11月)

1.北東アジア開発協力フォーラムの共催

国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)がコーディネーターとなり、北東アジア4か国(日本、中国、韓国、ロシア)における国際開発関連学会の共催で毎年開いている北東アジア開発協力フォーラムを、2022年8月24・25日に開催しました。

国際開発学会(JASID)からは、佐藤寛会員(アジア経済研究所)がJASID主催セッションでの基調講演を行い、内海悠二会員(名古屋大学)、劉靖会員(東北大学)、芦田明美会員(名古屋大学)が中国、韓国、ロシアの各主催セッションでコメンテーターとして登壇しました。それぞれのセッションで、今後の国際開発協力のあり方について活発な議論が交わされました。

北東アジア開発協力フォーラム2022:プログラム
North-East Asia Development Cooperation Forum 2022

  • Virtual / 24-25 August 2022
  • 9:00 am (Moscow) / 2:00 pm (Beijing) / 3:00 pm (Seoul / Tokyo)

Organized by

  • ESCAP East and North-East Asia Office,
  • China International Development Research Network (CIDRN),
  • Japan Society for International Development (JASID),
  • Korea Association of International Development and Cooperation (KAIDEC), and
  • Russian Association of International Development Assistance Experts (RAIDAE)

Concept Note

Overall theme of the Forum 2022: Agile and risk-informed development cooperation towards achieving the 2030 Agenda for Sustainable Development

Target participants
• Members of partner networks (CIDRN, JASID, KAIDEC, RAIDAE)
• Policymakers, development cooperation agencies, and international organizations
• Experts, practitioners, stakeholders working on development cooperation from the East and North-East Asia subregion and development cooperation partner countries

Provisional Programme

24 August (Wednesday): Day 1

15:00 – 15:10 Opening
Mr. Ganbold Baasanjav (Head, ESCAP East and North-East Asia Office)

15:10 – 16:10 Scene-Setting Session: Highlights of the 2022 Development Cooperation Forum Survey Study
  • Moderator: Ms. Fideles Sadicon (Sustainable Development Officer, ESCAP East and North-East Asia Office)
  • Presentation of the survey study (Financing for Sustainable Development Office, UN DESA) [20 mins]
  • Perspectives from partner networks [10 mins each]
    Dr. Yao Shuai (Associate Research Fellow, Deputy Director of Institute of International Development Cooperation, Chinese Academy of International Trade and Economic Cooperation, Ministry of Commerce)
    Dr. Yuto Kitamura (The University of Tokyo)
    Prof. Youngwan Kim (Sogang University)
16:10 – 17:10 Session 1: New Cosmopolitanism? North-East Asia’s contribution to Global Public Goods for Development
  • Moderator: Dr. Chuanhong Zhang (Associate Professor/Director of Development Aid Studies at COHD/CIDGA, CAU)
  • Keynote speech/presentation Prof. Xu Xiuli (Dean, CIDGA, CAU) [20 mins]
  • Discussants: [10 mins]
    Prof. Kyung Ryul Park (Korea Advanced Institute of Science and Technology)
    Dr. Yuji Utsumi (Associate Professor, Nagoya University)
    Prof. Evgeniy N. Grachikov (RUDN University)
  • Q&A [10 minutes]

25 August (Thursday): Day 2

15:00 – 16:00 Session 2: Implementing Sustainable Development Goals in Korea
  • Moderator: Prof. Heejin Lee (Yonsei University)
  • Keynote speech/presentation Prof. Jooyoung Kwak (Yonsei University) [20
    mins]
  • Discussants: [10 mins each]
    Zhou Taidong (Director, China Center for International Knowledge on Development)
    Dr. Jing Liu (Associate Professor, Tohoku University)
    Mr. Andrey Sakharov (RANEPA)
  • Q&A [10 minutes]
16:00 – 17:00 Session 3: Exploring a New Discourse for International Cooperation
  • Moderator: Dr. Yuto Kitamura (The University of Tokyo)
  • Keynote speech/presentation (Dr. Kan Hiroshi Sato, Institute of Developing
    Economies) [20 mins]
  • Discussants: [10 mins]
    Dr. Chuanhong Zhang (Associate Professor/Director of Development Aid Studies at COHD/CIDGA, CAU)
    Prof. Kyungyon Moon (Jeonbuk National University)
    Prof. Denis Degterev
  • Q&A [10 minutes]

17:00 – 18:00 Session 4: Boosting cooperation: How to incorporate academic expertise into the work on the ground

  • Moderator: Prof. Denis Degterev
  • Keynote speech/presentation [20 mins]
  • Discussants: [10 mins]
    Prof. Zheng Yu (Fudan University)
    Dr. Akemi Ashida (Associate Professor, Nagoya University)
    Prof. Hyunjin Choi (Kyunghee University)
  • Q&A [10 minutes]

2.書籍『ウクライナ危機から考える「戦争」と「教育」』の出版

グローバル連携委員会が、日本教育学会国際交流委員会ならびに日本比較教育学会国際交流委員会と連携して2022年3月25日に開催した緊急セミナー「ウクライナ情勢を考える――教育学に何ができるか?」での議論をベースにした書籍が、10月5日に刊行されました。

日本教育学会国際交流委員会編『ウクライナ危機から考える「戦争」と「教育」』(教育開発研究所)という本で、小松太郎会員(上智大学)、小玉重夫氏(東京大学)、澤野由紀子氏(聖心女子大学)、そして私(北村)の4名で、戦争と教育についてさまざまな視点から議論を行いました。

今後も、情勢の変化を見極めながら、紛争の問題についてグローバル連携委員会としても考えていきたいと思います。

グローバル連携委員会
委員長:北村友人(東京大学)




横浜支部(2022年11月)

2022年度活動報告

  1. 2022年3月31日に「若手による開発研究部会」の協力を受け、3つの修士論文を対象にした「修了記念領域横断ゼミ」を実施した。参加は20名。
  2. 2022年7月2日に「国際開発学会若手部会」と共催し、「博士論文作成の経験をめぐる座談会」を実施した。将来的に博士課程に進む予定がある方と現在博士論文の作成を考えている方を主要な対象に、先輩方より博士論文の思考プロセスやスケジュール、現地調査、学術誌への論文投稿、メンタル管理、研究調査や生活費の入手に関する経験の共有を行う目的で開催した。発表者と参加者の交流を通じて、参加者は現在直面している課題をどのように取り組むかについて発表者よりの助言をいただく機会ともなった。
  3. このほかに日常的に情報交換活動を活発に行った。

横浜支部
支部長:林薫(文教大学)




横浜支部・オンライン「博士論文作成の経験をめぐる座談会 」7月2日開催(会員・一般)

国際開発学会横浜支部は、「若手による開発研究」研究部会と共催し、博士後期課程卒業者を対象にした「博士論文作成の経験をめぐる座談会」を行います。

これは、将来的に博士課程に進む予定がある方と現在博士論文の作成を考えている方を主要な対象に、先輩方より博士論文の思考プロセスやスケジュール、現地調査、学術誌への論文投稿、メンタル管理、研究調査や生活費の入手に関するご経験をめぐってお話になります。発表者と参加者の交流を通じて、参加者は現在直面している課題をどのように取り組むかについて発表者よりのご助言をいただく機会もあります。

ご多忙な時期とはなりますが、ご都合が合う会員・一般の方々は、是非ともご参加下さいますと幸いです。

開催概要

  • 日時: 2022年7月2日(土曜)13:00~15:30
  • 方法:オンライン(Zoomミーティング)

講演者

  • 余乾生さん(横浜国立大学修了)
  • 宮川慎司さん (東京大学修了)

スケジュール

講演者一人当たりの時間:75分(発表時間45分+討論時間30分)

13:00-13:45
余乾生さんのご発表(日本語による発表)

研究テーマ
「高齢者権益保障法における介護保障:立法府解釈からみる家族と国・社会の役割」

発表概要
余乾生さんのご発表では、博士論文の問題意識が生み出されたプロセス、博士論文の問題意識から提出するまでのスケジュール(ジグザグな博士論文の進捗状況)などの内容を中心に、博士論文を作成するにあたっての経験と教訓、また後輩たちに伝えたいについてお話しになります。

13:45-14:15
参加者よりの質問応答

14:15-15:30
宮川慎司さんのご発表 (日本語による発表)

研究テーマ:
「マニラ首都圏の貧困層に関するインフォーマリティと制度」

発表概要:
宮川慎司さんのご発表では、博士論文の研究内容というよりは、修士課程と博士課程を合わせた8年強をどのように過ごしたかを中心に説明していただきます。具体的にいうと、どのように研究調査や生活費を得ていたか、どのようなスケジュールで現地調査や論文執筆を行ったか、学術誌への論文投稿をどのように行ったか、将来のキャリア展望をどのように考えて行動したか、どのようにメンタル管理をしたかなど、大学院生時代をサバイブした方法ついて詳しくお話になります。

15:00-15:30 
参加者よりの質問応答

発表用の資料

  1. 報告者の博士論文の内容についてのレコーディングを、開催日の一週間前に事前に申し込んだ参加者に配布する
  2. 当日の座談会の配布資料なし

お申し込み方法

  • 申込締切日:2022年6月25日(土曜)まで
  • 以下の事項をご確認の上お申し込みください。
    ※当日の録画・録音は固くお断りいたします。
    ※事前に配布する資料の転用は固くお断りいたします。
    ※参加の際は、お申し込み時のお名前で入室してください。

以下の項目をご記入のうえ、お問い合わせメールアドレスまでお申し込みください。

  • お名前(フリガナ)
  • ご所属
  • 連絡先メールアドレス
  • 当日連絡が取れる電話番号

本件にかんするお問い合わせ先

国際開発学会・横浜支部
石暁宇

  • shixiaoyu319 [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)



学会誌編集委員会からのお知らせ(2022年5月)

「国際開発研究」は現在,6月の発行(31巻1号)に向けて原稿を準備中です。2月中旬以降に6本の論文が投稿されました。これを受けて多くの会員の方に査読にご協力いただいております。ありがとうございます。日程的に1号への掲載に間に合いそうな原稿もあり,できるだけタイムリーに出版できるよう,発行時期を少し後ろに遅らせることも検討しています。

また,国際開発学会の会員がメインとなって出版された本の書評を充実させたいとも思っております。ただ,学会誌編集委員会の方で本の出版情報を網羅できているわけではありませんので,もし,ご出版になられた際にはご連絡賜れば幸いです。

これとも関連して,次回の春季大会におけるブックトークで取り上げる本が決まりました。

  • Mine Sato, Nobuo Sayanagi, Toru Yanagihara. 2022. Empowerment through Agency Enhancement: An Interdisciplinary Explorations. Palgrave Macmillan
  • 木山 幸輔(2022)「人権の哲学:基底的価値の探究と現代世界」東京大学出版会
  • 加藤丈太郎(2022)「日本の「非正規移民」:『不法性』はいかにつくられ、維持されるか」明石書店
  • リチャード・ヒークス著、竹内知成監訳、ICT4D Lab訳(2022)「デジタル技術と国際開発」日本評論社

著者の方々のお話をお伺いできるのを楽しみにしています。ぜひ,多くの方にご参加いただければと考えています。

学会誌編集委員会
委員長:島田剛(明治大学)




JICEライターズワークショップ5月10日開催(会員・一般)

広島大学教育開発国際協力研究センター(CICE)は、このたびエメラルド社とともに、5月10日にJournal of International Cooperation in Education(JICE)誌25号(2022年11月)、26号(2023年前期)投稿希望者向けに、ライターズワークショップを開催することとなりました。

本ワークショップでは、約15分の研究発表に対してエディター陣がコメント、さらに次回以降、原稿作成を進めるような取り組みをしていきます。

ご自身の教育開発に関する知見の国際流通、これから研究室に英文による論文生成ユニットを作りたい、などの関心がある場合、本ワークショップは最適な研究環境整備に貢献いたします。

また参加者(要旨審査あり)には、英文校閲支援、Emerald社 教育系論文のInter Library Licenseに基づく閲覧、日本人掲載経験者による助言などの掲載に至るまでの支援があります。

登録締め切りは4月14日です。奮ってご応募ください。

開催概要

第1回ライターズ・ワークショップ

  • 日時:2022年5月10日(火曜)17:00–20:00
    ・英文ジャーナルへの論文投稿に関する講演
    ・参加者による論文発表(15分/人)
    ・エディターからのコメント
  • 詳細・登録:

本件にかんするお問い合わせ先

広島大学 教育開発国際協力研究センター(CICE)

  • cice [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)



学会誌編集委員会からのお知らせ(2022年2月)

学会誌編集委員会では12月に第30回第2号を刊行いたしました。

今号の特集は学際的かつ、実務との連携も重要な要素であるこの学会に相応しい特集「越境的実践がつむぐガバナンス」になりました。大塚健司先生の冒頭の論文にこの特集の重要な論点が書かれていますので、ぜひ読まれることをお勧めします。

この学会の研究者は専門的でありつつ、同時に学際的な観点が求められます(専門―学術)。また、学術的でありながら、実務的でもある必要があります(学術―実務)。さらには、地域な文化の個別性を考えつつも、普遍性のある規則あるいは価値などについても考える必要があります(個別―普遍)。

こうした国際開発に取り組むにあたっての課題を考えさせられる特集であると感じています。また、今回は論文2本と、研究ノート1本、調査研究報告2本、書評7本という充実した内容にすることができました。本数もですが、内容的にもかなり斬新な内容の興味深い論文が多かったのも特徴です。

ただ、内容が斬新であればあるほど(また専門分野をまたがる内容であればあるほど)査読は難しいものがあります。査読にご協力いただきました先生方にはこの場をお借りして感謝申し上げます。今回は従来にも増して、査読いただいた先生方のご負担が大きかったと思います。

投稿は随時受け付けをしておりますので、引き続き皆様からのご投稿をお待ちしています。また、書評対象の図書についても随時受け付けています。編集事務局へご連絡いただければ、書評対象として検討させていただきます。

現在、学会誌の表紙のデザインや内容について新たなものにすべく、編集委員会のなかで検討をしています。今後、決まってきましたら学会員の皆さまに共有していきたいと思っております。

学会誌編集委員会
委員長:島田剛(明治大学)




学会誌編集委員会からのお知らせ(2021年11月)

今年度、編集委員会は佐藤仁会長から示された「Visible, Inclusive, and Entertaining」というスローガンのなかで、とくに「社会に発信すること」(Visible)、「読んで面白い」(Entertaining)という要素を意識して活動を行ないました。

30巻1号では、そうした試みの一環として特集のなかで「討論」というこれまでにないカテゴリーの論考を掲載しました。より正確には、これまでもカテゴリーとしてはあったのですが、過去にこのカテゴリーでの掲載はありませんでした。これは学会誌が活発な議論をする場にすることが目的でした。

また、特集が2本あり、そのうちの一本は誌上シンポジウムとして学会のラウンドテーブルにおける議論を掲載させていただきました。この誌上シンポジウムは学会の大会との連携をより深めていきたいという狙いもあり、そうした試みの一環で掲載させていただいたものです。

新型コロナで海外での調査ができないなかで、開発学はどうあるべきかを議論したものを掲載しました。投稿原稿については調査研究報告を4本掲載し、また、書評については5本を掲載しました。

30巻2号については10月下旬現在のところ、12月上旬に発行する予定で編集作業を実施中です。特集は「越境的実践がつむぐガバナンス―持続可能性課題の協働解決に向けて」です。投稿原稿については論文2本、調査研究報告2本、研究ノート1本を掲載する予定です。また、書評については6冊を取り上げる予定です。 引き続きまして、皆さまからの投稿をお待ちしています。

お忙しいなかで、査読および書評をお引き受けいただきました先生方に厚く御礼を申し上げます。

学会誌編集委員会
委員長・島田剛(明治大学)




グローバル連携委員会からのお知らせ(2021年11月)

グローバル連携委員会では、下記のとおり、英語による論文執筆のためのワークショップを開催します。このワークショップは、当委員会で来年からの刊行を目指して準備を進めている学会誌・英文号の立ち上げを見据えて、若手学会員の方々が英語で論文を執筆する力を底上げするために企画したものです。

  • 日時:2021年12月15日(水曜)18:00~19:30
  • 講師:マエムラ ユウ オリバー(東京大学大学院工学系研究科講師)

国際開発分野で研究を行なっている若手研究者に対する、英語による論文執筆のためのワークショップを開催します。このワークショップでは、英語で論文を執筆するにあたって意識すべき諸点や、論文投稿の際に留意すべきことなどについて紹介します。本ワークショップの対象者は、以下のとおりです。

  • 国際開発に関連する研究を行なっている留学生
  • 国際会議での研究発表や国際学術誌での論文掲載を目指している日本人学生
  • 国際開発分野の若手研究者で、英語での論文執筆や書籍出版に関する情報を求めている方

今回のワークショップに関しては、学会メーリングリストを通した応募をすでに締め切り、多くの方に参加登録をしていただくことができました。今後も、同様のワークショップを定期的に開催していく予定ですので、今回ご参加いただけない若手学会員の方々も、次の機会にご参加いただければと思います。

グローバル連携委員会
委員長・北村友人(東京大学)




学会誌編集委員会からのお知らせ(2021年8月)

第30回第1号を発刊いたしました。今号は新しい編集委員会での最初の発刊となりました。今執行部では佐藤仁会長から「Visible, Inclusive, and Entertaining」というスローガンが示されています。本誌も特に社会に発信すること(Visible)、読んで面白い(Entertaining)要素をこれまでの学会誌の歴史に付け加えられればと思い編集をしました。

今号ではそうした試みの一環として特集の中で「討論」というこれまでにないカテゴリーの論考を掲載しました。さらに学会誌が活発な議論をする場になる一歩として考えています。

また、今号は特集が2本組みになっています。一つは「開発協力の歴史研究アプローチの可能性」と題したもので興味深い論文と討論により構成されています。

また、もう一本の特集は誌上シンポジウムとして学会のラウンドテーブルにおける議論を掲載させていただきました。この誌上シンポジウムは学会の大会との連携をより深めていきたいという狙いもあり、そうした試みの一環で掲載させていただいたものです。新型コロナで海外での調査ができない中で、開発学はどうあるべきかを議論したものです。ぜひお読みいただければ幸いです。

投稿原稿については調査報告を4本掲載させていただきました。また、書評については5本を掲載いたしました。投稿は随時受け付けをしておりますので、引き続き皆様からのご投稿をお待ちしています。また、書評対象の図書についても随時受け付けています。編集事務局へご連絡いただければ幸いです。

学会誌編集委員長・島田剛(明治大学)




Q:入会しているはずなのに論文投稿や大会発表の申込をしたら、学会員でないといわれました

Answer

入会を申し込んだだけでは学会員の資格を得たことにはなりません。

入会の申請後、常任理事会での審査を経て、初回の会費の支払い完了後に、会員番号が付与されてはじめて、在会者として会員サービスの利用が可能となります。

入会承認の通知が届いた後に初年度会費の支払がなされていないため、ステータスが「申請中」から変更になっていないケースがあります。

また、会費の滞納が続いたり、事務局がEメール・郵便のいずれでも当該会員と連絡が取れなくなったことにより退会処分となっている事例も散見されます。また、海外赴任等で会費の送金ができない期間があったなどで籍を失うケースもあります。

海外へ転出されるなどで学会活動を休止したい会員は、事前に休会手続きをお取りください。


本件にかんするお問い合わせ先

国際開発学会・本部事務局




Q:正会員ですが、大学生になりました。

Answer

社会人で大学院等に在学されている方は、学生会員ではなく正会員での在籍となります。

常勤職をもたないばあいは年会費減額制度のご利用が可能です。

参考情報

職を持たずに在学されている場合は、以下の手続きにより次年度から学生会員への種別変更が可能ですが、学生会員は学会活動において正会員には求められない制約(学会発表や論文投稿など)を受けますので、可能な限りは継続して正会員で在籍されることをお勧めしています。

資格変更申請手順

申請方法

  • 毎年1回、9月に審査を行ないます(審査結果は10月に通知します)
  • 8月にメーリングリストにて告知いたします
  • メーリングリストに記載する指定の申請フォームよりお申込みください
  • 常任理事会にて審査のうえ、次年度より学生会員に変更させて頂きます

会員種別の基準日

会員種別は、毎年10月1日時点の在籍によって決定されます。

例1)2023年4月入学

  1. 2023年8月中に申請手続き(学生証コピー/在学証明書の提出)
  2. 常任理事会での審査をうける
  3. 2024年度(2023年10月~)から学生会員に切替
  4. 2024年4月に発行される年会費請求書から学生会員料金に変更される

例2)2023年10月入学

  1. 2023年8月中に申請手続き(在学証明書の代わりに入学許可証を提出)
  2. 常任理事会での審査をうける
  3. 2024年度(2023年10月~)から学生会員に切替
  4. 2023年10月中に学生証コピーまたは在学証明書を提出する
  5. 2024年4月に発行される年会費請求書から学生会員料金に変更される

ご注意

正会員から学生会員への種別変更において申請期限内に届け出がなかった場合、翌年度の学生会員への種別変更には応じられません

期限内に学籍確認の書類の手配が間に合わないときは、期限内に本部事務局へご相談ください。


本件にかんするお問い合わせ先

国際開発学会・本部事務局




Q: 『国際開発研究』に論文を投稿したいのですが

Answer

『国際開発研究』に掲載を希望する原稿を随時受け付けています。投稿先は学会誌刊行センターとなります。投稿に関するお問い合わせは、すべて学会誌刊行センターまでお願いいたします。

また、論文の投稿は学会員に限ります。投稿規程は以下をご参照ください。

投稿規程


本件にかんするお問い合わせ先

国際開発学会・学会誌編集員会




学会誌編集委員会

Editorial Board

学会員の研究活動の成果にもとづき学会誌を発行

  • 委員長:島田剛(明治大学)
  • 委員:杉田映理(大阪大学)、西川芳昭(龍谷大学)
  • 幹事:日下部達哉(広島大学)、久保田利惠子(世界銀行/国立環境研究所)、桑島京子(青山学院大学)、花岡伸也(東京工業大学)、藤川清史(愛知学院大学)、古川光明(静岡県立大学)、佐藤寛(開発社会学舎)、道中真紀(日本評論社)、芦田明美(早稲田大学)

投稿に関するお問い合わせ先

(財)学会誌刊行センター「国際開発研究」編集係

  • E-mailアドレス:ed-office [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)
  • 電話番号:03-3817-5821
  • Fax番号:03-3817-5820
  • 住所:〒113-0032 東京都文京区弥生2-4-16

「国際開発研究」投稿規程

関連情報




Q : 学会誌への論文投稿は学会員でなければいけませんか?

Answer

学会員しか投稿はできません。

学会員が投稿を希望するばあいは、以下のページをご参照ください。


本件にかんするお問い合わせ先

国際開発学会・学会誌編集員会