参加者募集:開発と社会学ゼミ・第11期(会員・一般)

開発と社会学・11期(開社Ⅺ)~グローバルサプライチェーンの社会学~

下記の要領で「ゼミナール・開発と社会学」(第11期)の参加者を募集します。ご関心のある方はご応募下さい。ただし本ゼミナールは全10回完結のコースであり原則として全回出席が条件です。数回だけの参加は固くお断りします。

募集要項

主宰者

佐藤寛(開発社会学舎)

ゼミナールの目的

他者および自分自身の「よりよい生活」を目指して繰り広げられる『開発/開発援助』という社会現象を、社会学的な視点を活用しながら多角的に考えていきます。今期のメインテーマは「グローバルサプライチェーンの社会学」です。

開催場所

新型コロナ感染症の蔓延状況によりますが、基本的には東京都内の会議室を用いて実際に会合する(リアル参加方式)予定です。ただし4月のプレゼミはオンラインで開催します(ZOOMリンクは後日参加者に送付します)。

募集定員

  • リアル参加:20名程度
  • バーチャル参加:10人程度

*バーチャル参加:日本国内にいない、東京近郊にいないなどの特別の理由でゼミ会場に物理的に参加することが困難な方は、バーチャル参加の機会を提供します。ただし、課題図書等の分担はリアル参加と同一です。なお、ゼミの開催時刻は日本時間午後2時から6時までが基本ですので、海外からの参加の場合は時差にご注意ください。またバーチャル参加の場合はzoomを利用しますが、幹事の負担を軽減するため報告時以外「見るだけ参加」が基本となります。

開催日程

2023年5月~12月の土曜日、2時から6時半まで。

  • 全10回:原則として三週間に一回(例外あり)
  • 対面開催:各回のトピックスは参加者と相談の上変更の可能性があります

プレゼミ[自由参加]:4月29日(土曜)「ラナプラザ事件(2013年・バングラデシュ)の世界史的意味」
第1回:2023年5月13日(土曜)「進化は普遍か」
第2回:2023年6月 3日(土曜)「グローバリゼーションとサプライチェーン」
第3回:2023年6月24日(土曜)「倫理的な調達は可能か(1) バナナ」
第4回:2023年7月15日(土曜)「倫理的な調達は可能か(2) チョコレート」
第5回:2023年8月5日(土曜)「持続可能なコットンとは何か」
≪夏休み≫
第6回:2023年9月16日(土曜)「パーム油と認証ポリティクス」
第7回:2023年10月7日(土曜)「大農園と農業労働者 茶、大豆、サトウキビetc.」
第8回:2023年10月28日(土曜)「工業的農業・工業的畜産業とサステナビリティ」
第9回:2023年11月18日(土曜)「ブラッドダイヤモンド(紛争鉱物)の倫理性」
第10回:2023年2月16日(土曜)「『水と油』の関係」

応募資格

開発学会の会員であることは必要条件ではありません。
a)上記日程のうち最低7回以上出席出来ること
b)以下のどれかに当てはまること
(1)開発問題に社会学的な視点から取り組みたいと考えている人
(2)援助実務を経験し、開発事業に社会学的視点を取り入れる必要性を感じている人
(3)開発問題、開発援助問題を社会学的な研究対象にしたいと考えている人

ゼミナールの運営方法

各回のテーマに応じて課題図書を指定します(日本語、英語)。これを事前に読み、各自がテーマについて考察してきた結果を報告し、全員で議論する演習形式を取ります。
課題図書のレジメは輪番制により全員が担当します。毎回全員が課題図書を読んでくることが前提で、単に話を聞きに来るだけのセミナーではありませんので、強い熱意のある方だけを募集します。
なお、課題図書は各自調達が原則ですが、入手しにくいものについては適宜PDFで参加者に共有する場合もあります。

応募方法

  1. 氏名
  2. 所属
  3. 年齢
  4. 連絡先(住所あるいは携帯電話番号)
  5. メールアドレス
  6. 志望動機(50字程度)
  7. 関心のあるテーマ

参加希望者は上記項目をグーグルフォームに明記の上、お申し込みください。

応募締め切り

2023年5月1日(月曜)午後5時(必着)とします。
ただし、定員に達した場合は期日前に締め切ることがあります。

参加合否

応募者多数の場合は、志望動機等を勘案の上参加者を決定します。合否については、5月3日(水曜)までに電子メールで応募者に通知します。

参加費

3000円(会場費・資料コピー代等)。最初の参加時に徴収します。

課題図書

参加者全員が事前に読んでくることが前提です。4回目以降の課題図書は参加者決定後に各自に通知します。

プレゼミ(完全オンライン・4月29日)

この回に限り希望者は全員参加可能です。参加希望者には個別にURLをお送りします。参加者は事前に以下の書籍を読んできてください。

  • 長田華子『990円のジーンズがつくられるのはなぜ?: ファストファッションの工場で起こっていること』合同出版(2016)
  • また、可能であれば以下の映画(ビデオ)を視聴しておいてください。
    Made in Bangladesh 2019映画/Watch Made In Bangladesh Online | 2019 Movie | Yidio

第1回 (5月13日) 進化は普遍か

  • ピーター・ボウラー『進歩の発明~ヴィクトリア時代の歴史意識』平凡社(1995)
  • 梅棹忠男『文明の生態史観』中公文庫(1974)

第2回(6/3)グローバリゼーションとサプライチェーン

・David Mirillo, From Walmart to Al Qaeda: An Interdisciplinary Approach to Globalization (1st Edition) Greenleaf publishing 2015
・Mike Berners-Lee , How Bad are Bananas? Profile Books 2010

第3回(6/24)倫理的サプライチェーンは可能か

・Barrientos, Dolan Ethical Sourcing in the Global Food System Earthscan, 2006
・石井正子『甘いバナナの苦い現実』コモンズ(2020)


本件にかんするお問い合わせ先

開発社会学舎
佐藤寛

ご質問等ありましたら 下記メールアドレスまでお問い合わせください。ただし、参加回数(7回以上)の制限についてのご相談はできません。なお、本ゼミナールは「開発社会学舎」が主催するものですので、アジア経済研究所へのお問い合わせはご遠慮下さい(佐藤寛は3月末にアジア経済研究所を定年退職しました)。

  • satokan999 [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)



第33回全国大会セッション報告(企画セッション)

企画セッション


B-2.ウクライナ紛争と中東・北アフリカ地域の食糧不安・危機
――レバノン・エジプト・チュニジアの事例より

  • 2022年12月3日(土曜)09:45 ー 11:45
  • 企画責任者:井堂有子(日本国際問題研究所)
  • 司会:佐藤寛(アジア経済研究所)
  • 討論者:河村有介(神戸大学)

発表題目と発表者

  1. 「中東・北アフリカ地域における食糧安全保障の共通課題―構造的脆弱性の背景―」
    井堂有子(日本国際問題研究所)
  2. 「レバノンの食料不安―金融危機と難民流入―」
    土屋一樹(アジア経済研究所)
  3. 「エジプトにおける食糧『危機』が直撃する脆弱層」
    岩崎えり奈(上智大学)、井堂有子(日本国際問題研究所)
  4. 「チュニジアにおける食料安全保障の構造的課題と食料主権」
    山中達也(駒澤大学)

第33回大会全体テーマ「グローバル危機にどう立ち向かうべきか―紛争、食料高騰、飢餓」に呼応する形で、本企画は「ウクライナ紛争と中東・北アフリカ地域の食糧不安・危機」というテーマで4つの報告を行った。

2022年2月に発生したロシアのウクライナ侵攻と黒海封鎖、さらに対ロシア経済制裁は、サプライチェーンを通じて相互依存を深めてきた世界全体に衝撃を与えたが、特に主要穀物を両国からの輸入に大きく依存してきていた中東・アフリカ地域は直接的打撃を受けた。

本企画セッションでは、中東・北アフリカ(MENA)地域の共通課題とともに、特に注目されるレバノン、エジプト、チュニジアの個々の構造的課題を掘り下げることを目的とした。

ウクライナ戦争以前から、同地域は2010-11年以降の幾度かの「アラブの春」、広範囲な抗議行動、世界的感染拡大、金融危機、極度のインフレ、気候変動による異常気象といった複合危機にすでに見舞われてきていた。こうした中での黒海封鎖は、この地域の食糧不安をさらに深刻化させ、政治危機を招く要因になりうる。

第一の発表は、企画の趣旨説明として、約6億の人口を擁するMENA地域に共通する構造的課題の論点整理(気候変動への脆弱性、穀物輸入依存、「社会契約」としての食糧補助金、食糧援助)を行った。この地域では主要穀物(小麦)を国内生産でではなく海外輸入に依存する傾向が強まってきたが、この背景として、農業生産向上を阻む気候・地理条件に加え、広く実施されてきた食糧補助金制度、外部要因としての食糧援助の影響を指摘した。

第二の発表では、ウクライナ危機以前、レバノンが既に深刻な金融危機(世界ワースト3位内)や政治的混乱、財政破綻等、度重なる危機に直面していたことが解説された。この背景として、脆弱な経済構造(送金・観光経由の外貨頼み、対外債務高)に加え、レバノン人380万~500万人に対してシリア難民150万人とパレスチナ難民1.6万人の受入れ等、元々厳しい状況にあったところ、低い小麦自給率(20%)もあり、黒海封鎖で市民と難民双方の食糧不安がさらに深刻化したことが報告された。

第三の発表では、小麦輸入大国エジプトの家計調査データ(2010年代後半)の分析から、食糧不安に最も脆弱な層と彼らの生存戦略の詳細が明らかにされた。エジプトの小麦輸入相手先は米国一辺倒から多角化の時代を経て、2020年頃にロシア・ウクライナに集中するようになっていた。食糧補助金の大半を占める小麦のパン配給制度は同国の「社会契約」を象徴してきたが、危機の際には脆弱層の命の綱となってきたことが報告された。

第四の発表では、革命期チュニジアの政治経済危機に関して、経済構造の諸課題が詳細に解説された。「アラブの春」唯一の成功例とされたチュニジアであっても、残存する縁故資本主義で硬直化した市場とFDIの停滞、30%もの高学歴失業者、インフォーマル部門の肥大化、財政赤字と対外債務の増大、低生産で脆弱な農業部門の現状により、コロナ禍以前において国民の4人に一人が中程度以上の食糧難に直面していた。こうした構造的悪循環を脱するため、国内穀物の半分を生産する小規模農民を中心としたチュニジアの市民社会による食料主権の樹立を求める動きが紹介された。

討論者からは、地域の共通課題に対して、ロシア・ウクライナ産穀物への過度な輸入依存には経済的要因だけでなく政治的要因もあるのか、なぜ一般的な社会保障制度よりMENA地域では食糧補助金が大きな役割を果たしているのか、との質問がなされた。

個別発表に対しては、(1) レバノンでのシリア難民受入れ、パン価格引き上げへの国民の反応、国連の支援スキームの多くが現金給付であるのはなぜか、(2) ウクライナ危機がエジプトの社会保障改革に与える影響、(3) チュニジアにおける食料主権の主体は誰なのか、あるべき農業政策(戦略)とはどのようなものか、といった質問がなされ、発表者との議論が続いた。

初日午前の時間帯であったにもかかわらず、対面・オンライン併せて40名程度の参加を得た。

(報告:井堂有子)


B-3.中東における『障害と開発』

  • 2022年12月3日(土曜)12:50 ー 14:50
  • 企画責任者:森 壮也(ジェトロ・アジア経済研究所)
  • 討論者:小林 昌之(ジェトロ・アジア経済研究所)、長田 こずえ(名古屋学院大学)、細谷 幸子(国際医療福祉大学)、小村 優太(早稲田大学)、長沢 栄治(東京大学)、戸田隆夫(明治大学)

発表題目と発表者

(報告:森 壮也)


B-4.信頼と開発協力:研究の到達点と今後の課題

  • 2022年12月3日(土曜) 12:50 ー 14:50
  • 企画責任者:石塚 史暁(東京大学)
  • 座長:佐藤仁(東京大学)
  • 討論者:佐藤 寛(日本貿易振興機構アジア経済研究所)

発表題目と発表者

  • 大塚 高弘(独立行政法人国際協力機構)
  • 林 伸江(独立行政法人国際協力機構)
  • 大友 彩加(独立行政法人国際協力機構)

冒頭、座長より本テーマの意義について触れた後、事例分析の結果についての結果について3名(林:留学生受入事業、大塚:ボリビア国水資源管理技術協力、大友:フィリピン鉄道マスタープラン。いずれも所属は国際協力機構)より発表した。

発表では、いずれも信頼と開発協力に係る問題を、過去の事例分析を通じて扱った。林は関係者間の信頼関係が留学生の満足度に与えた影響、大塚はカウンターパートが頻繁に交代する国・地域における信頼の引継ぎ、大友は過去の実績の蓄積による信頼と案件実施中に新たに構築される信頼の構築過程を統合的に分析した。

これに対し、討論者(佐藤寛・アジア経済研究所)より、日本の地方部における外国人に対する信頼の問題や、ODAの技術協力スキームにおける信頼の位置づけ、開発協力における信頼の構成要素などについてコメントがあった。加えて、フロアの参加者からも以下のような質問・コメントがあり、座長・発表者を交えて活発な意見交換を行った。

「信頼」は「安心」や「信用」と区別して議論すべきではないか。

(留学生の)満足度と信頼はかならず相関するものといえるのか。

(モノなど)非人間的な要素に対する信頼はありえるか(信頼はどこまで属人的か)。

日本企業以外が受注するアンタイド案件における日本への信頼はどう考えられるか。

時代の変化に伴って開発協力における信頼の役割はどのように変化してきたか。

個人・組織・国という信頼の主体を区別して議論すべきではないか。

信頼は開発の目的になりえるのか(現場としては違和感あり)。

信頼の効果を捉えるため信頼が得られなかった案件との比較をしてはどうか。

セッションで提示された問いの幅は、開発研究における信頼というテーマがさらに深堀すべき要素を多く含んでいることの証左である。今後も、研究を継続したいという気持ちを強くした。なお、セッション参加者は約60名(会場:約15名、オンライン:約45名)で、議論は大変活発であり、この分野に対する高い関心が感じられた。

(報告:佐藤仁)


B-5.The ‘Easternisation’ of Development: The politics of East Asia’s Developmentalist Cooperation

  • 2022年12月3日(土曜)16:50 ー 18:50
  • 企画責任者:伊東 早苗(名古屋大学)
  • 司会:藤川 清史(愛知学院大学)
  • 討論者:佐藤 仁(東京大学)、KIM Soyeun(Sogang University)

発表題目と発表者

  1. ”The Easternization of Development: The Politics of East Asia’s Developmentalist Cooperation”
    伊東 早苗(名古屋大学)
  2. ”The Politics of East Asian Developmentalism: Paradigms, Practices and Prospects of Foreign Development Assistance”
    von Luebke Christian(コンスタンツ応用科学大学)
  3. Huan Meibo(上海対外経貿大学)
  4. Wang Zhao(上海対外経貿大学)

本企画セッションは、対面とオンライン合わせて約30名ほどの参加者があり、盛況であった。藤川清史会員(愛知学院大学)による司会のもと、4名による研究報告を予定していたが、大会直前になって、急遽、上海対外経貿大学の報告者2名(Meibo Huan氏 およびWang Zhao氏)が不参加となった。

彼らの報告を期待して参加くださった会員の皆様には、深くお詫びしたい。一方で、報告者2名(Sanae Ito, ”The Easternization of Development: The Politics of East Asia’s Developmentalist Cooperation”およびChristian von Lübke, ”The Politics of East Asian Developmentalism: Paradigms, Practices and Prospects of Foreign Development Assistance”)の報告後、討論者2名(佐藤仁会長/東京大学、およびSoeun Kim会員/Sogang University)およびフロア全体を巻き込む諸議論に十分な時間を費やすことができ、その意味で、大変有意義なセッションであった。

2名の報告内容は、ポスト2015時代における開発協力のパラダイムシフトと、近年の、日本、韓国、中国による国益重視型開発協力をめぐる政治的力学を「開発主義国家」概念と合わせて論じるものであった。

報告者によると、国益重視の開発協力は、「持続可能な開発目標SDGs」を推進する国際社会が民間セクターとの協働を促進する動きと連動している。また、それぞれの東アジア諸国が「非欧米型開発モデル」という言説を掲げ、欧米先進国が先導する開発アプローチに代わる「オータナティブ」を標榜しがちな状況とも連動しているとする。

具体的な事例として、日本政府による「質の高いインフラ事業」がとりあげられ、日本企業によるインフラ投資を促進するためにODAが戦略的に使われていることを「開発主義国家的な産業政策の復活」として議論した。

討論者からは「開発の東洋化」という概念にどのような意味があるか、また、国内産業の振興を目的とする産業政策が外交面で開発協力政策と接続する場合の距離感等についてコメントおよび質問があった。さらに、「開発の南化」や「Blended Finance」といった概念に関わる研究と実践上の動向について、知見の共有がなされた。

フロアからは、グローバル社会の動向と東アジアの動向を区別できるか、開発実践の現場における民間企業の本音はどこにあるか、といった論点が指摘された。また、開発主義国家の定義や、その多様な側面について当該分野の専門家からコメントがあり、学びの多い議論につながった。

(報告:   )


B-6.包摂的な産業開発は可能か―アフリカにおけるものづくりの現場から

  • 2022年12月4日(日曜)12:45 ー 14:45
  • 企画責任者:井手上 和代(明治学院大学)
  • 討論者:黒川 基裕(高崎経済大学)、渡邉 松男(立命館大学)

発表題目と発表者

  1. 「アフリカにおける製造業の『失われた中間』を問い直す―ソファ製造の多系的発展の事例から―」
    高橋 基樹(京都大学)
  2. 「ケニアの小規模零細金属加工業者のものづくりと資金調達 ―企業者的能力に着目して―」
    井手上和代(明治学院大学)
  3. 「支援を渡る―政府と国際援助機関によるエチオピア皮革産業の現地企業への影響―」
    松原加奈(東京理科大学)
  4. 「ザンビア・ルサカにおける障害者団体の技能訓練と生産活動―技能形成に着目して―」
    日下部 美佳(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)

本セッションには、対面で11名、オンラインで11名の参加があった。本セッションは、「アフリカ・アジアにおけるものづくり」研究部会の活動を踏まえ、その成果を学会に還元することを念頭に置いて企画したものである。

アフリカ諸国が21世紀初頭からの高度成長を経てかえって強まった資源・一次産品への依存からの構造転換のために、ものづくり・製造業の現状を、実証研究を通じて考察することが要請されている。そこで必要なことは、多くの人が経済活動の担い手として参加する包摂的な開発が実現されてゆくことである。

最初の報告「アフリカにおける製造業の『失われた中間』を問い直す―ソファ製造の多系的発展の事例から―」(高橋基樹会員・京都大学)では、ケニア・ナイロビのソファ製造の複数のクラスターを取り上げ、製品について生じた革新的な知識が異なる業者の間で容易に共有される開放的なケースと知識が秘匿される閉鎖的なケースがあることが指摘された。それは従来の「失われた中間」=二重構造論では捉えきれない多系的な発展とそれに応じた包摂が生じている可能性を示唆するものである。

続く「ケニアの小規模零細金属加工業者のものづくりと資金調達 ―企業者的能力に着目して―」(井手上和代会員・明治学院大学)では、ナイロビの金属加工業の資金調達と企業者能力について、製品と技術(機械化の程度)が異なる二つの地区の業者への聞き取り調査に基づき論じた。長期資金需要の相対的多さにもかかわらず、金融市場における機会が狭められており、機械化の進んだ事業者も自己資金への依存率が高く、金融機関からの借り入れが限られていることが分かった。事業者の企業者能力はそうした生産環境の負の要因を補うために発揮されている。

「支援を渡る―政府と国際援助機関によるエチオピア皮革産業の現地企業への影響―」(松原加奈会員・東京理科大学)は、最初にエチオピアの革靴産業と産業政策の歴史を跡付けた。それを踏まえて、異なる3つの規模の企業が受けてきた支援を詳述し、小企業にも政府による外国援助を活用した支援が及んでいることを指摘する。各企業は異なる複数の支援を渡りつつ恩恵を受けるものの、逆に支援を渡ることができずに廃業に追い込まれる場合があり、包摂が不均等なかたちで生じていることが示された。

「ザンビア・ルサカにおける障害者団体の技能訓練と生産活動―技能形成に着目して―」(日下部美佳会員・京都大学博士課程)は、福祉用具に携わる障害者団体の活動に着目し、個々人の技能の熟練及び多能工化と活動参加前の教育や技能の習得とがどのように関わっているかについて考察した。技能形成とものづくりという障害者の開発への主体的な参加が団体の存在によって可能となっている。

各報告に対して黒川基裕会員(高崎経済大学)、渡邉松男会員(立命館大学)から、理論的枠組みを踏まえた議論の陶冶に向けた助言や、考察をさらに深めるための問題の提起がなされた。これらは上記研究部会での議論を進展させるために非常に有益なものであり、本セッションを開催した意義を確認することができた。

(報告:井手上 和代)


B-7.開発途上国におけるミクロ実証分析

  • 2022年12月3日(土曜)09:45 ー 11:45(オンライン発表)
  • 企画責任者:島村 靖治(神戸大学)
  • 討論者:樋口 裕城(上智大学)、倉田 正充(上智大学)、會田 剛史(アジア経済研究所)

発表題目と発表者

  1. 「女性自助組織活動と公的雇用保証政策は女性の民間での雇用にどのような影響を及ぼしたのか?―インド・アーンドラ・プラデーシュ州農村部の事例―」
    佐藤 希(愛知学院大学)
  2. 「地域内における資源配分と消費水準との関係の探求―マラウイの農業用投入資材補助金政策を事例としてー」
    藤田 茜(神戸大学)
  3. 「インドネシア医療ボランティアの活動報酬に対する選好―離散選択実験による実証分析―」
  4. 劉 子瑩(神戸大学)
  5. 「ベトナム中部の村落医療施設における医療従事者の利他性の分析」
    島村 靖治(神戸大学)

本セッションでは開発途上国におけるミクロデータを用いた実証分析に関する4つの報告が行われた。

第1の発表では、インド、アーンドラ・プラデーシュ州農村部の女性の自助組織活動と全国農村雇用保障法(NREGA)による雇用保証事業との関係、ならびにNERGAの民間雇用への影響に関する分析結果が報告された。そして、コメントとして、自助組織活動への参加によってNREGAの効果に違いがみられる理由をより丁寧に分析し議論すべきとの指摘があった。

第2の発表では、マラウイの農業投入資材補助金政策を題材に地域内における資源配分と地域全体の平均的な一人あたり消費水準との関係に関する分析結果が報告された。コメントとしては、地域や地域内における資源配分の捉え方の手法を再検討した上で結論についてもより丁寧に議論すべきとの指摘があった。

第3の発表では、インドネシア、ジョグジャカルタ郊外で活動する医療ボランティアの活動報酬に対する選好がボランティアの利他性により異なることを見出した分析結果が報告された。一方で、コメントとして、結果の解釈にあたっては純粋利他性と不純利他性の違いを考慮に入れて行うべきとの指摘があった。

第4の発表では、ベトナム中部の村落医療施設(CHC)で働く医療従事者の利他性の分析を行い、医療従事者の利他性は同じCHCで働く同僚の利他性と強い相関関係があることが報告された。他方、コメントとして、そうした相関が生じる理由がピア効果なのか、社会における職業的なソーティングなのかを峻別すべきとの指摘があった。加えて、医療従事者の人数が増えたCHCほどその効果が大きくなるメカニズムについても探求すべきとの指摘もあった。

そして最後に、4つの発表すべてについての質疑応答の時間があり、それぞれの研究の今後の発展可能性について活発な議論が行われた。

(報告:島村 靖治)


B-8.ジェンダーと開発

  • 2022年12月4日(日曜) 09:30 ー 11:30
  • 司会:高松香奈(国際基督教大学)
  • コメンテーター:菅野美佐子(青山学院大学)

発表題目と発表者

  1. 「バングラデシュにおけるマイクロファイナンスと女性のエンパワメント」
    本間まり子(早稲田大学)
  2. 「ネパールの家族農業における変化への対応」
    甲斐田きよみ(文京学院大学)
  3. 「南スーダンでの全国スポーツ大会を通じたスポーツとジェンダー」
    古川光明(静岡県立大学)

ジェンダー平等と女性のエンパワメントの推進は、持続可能な開発目標(SDGs)をはじめ、開発における重要な取り組み課題として認識されている。しかし、SDGsの達成度やジェンダー格差指数が示すように、これらの課題を解決するための取り組みは、未だに十分であるとは言えない。

こうした状況において、実務者と研究者が活動報告や情報共有、調査や啓発活動のためのアプローチなどを紹介することにより、ジェンダーと開発を考えるうえでの課題や可能性について検討することを目的に「ジェンダーと開発」研究部会が、2022年8月に設立された。

本企画セッションでは、家父長制下で制約を受けている女性に焦点をあて、研究部会の有志会員が関わってきた事例を紹介した。コロナ禍において、女性は以前より増して不利な状況におかれている。しかし、受動的な弱者として位置付けるのではなく、変化を引き起こす主体として位置付けるために、国際協力を通じ何が出来るのか検討した。

セッションの冒頭で、司会の高松会員より、研究部会の目的や活動内容の紹介をおこなった。続いて本間会員の発表では、バングラデシュのマイクロファイナンス事業の参加女性たちの融資金の利用について、コロナ禍の影響と関連した現状及び今後の調査計画が共有された。

甲斐田会員の発表では、ネパールの先住少数民族で最貧困層のダヌワールを対象にした聞き取り調査結果に基づいて、様々な社会経済状況の変化に対する農民の対応を、ジェンダー視点で分析し、性別役割分業やジェンダー規範の影響が報告された。

古川会員の発表では、南スーダンのジェンダーとスポーツに関連して、スポーツ大会がジュバ女性市民のスポーツ参加やスポーツを継続することの認識への与える効果について、質問票調査を通じた検証がなされた。

コメンテーターの菅野会員からは、各研究報告に対してより理解を深めるとともに、今後、研究を更に発展させるためのヒントとなるような質問やコメントが行なわれた。セッション参加者のうち、研究部会の新規登録者が数名あり、今後の活動に繋がった。

(報告:高松香奈)


A. 一般口頭発表

C. ラウンドテーブル

D. ブックトーク、プレナリーほか

第33回全国大会を終えて




社会的連帯経済に関する勉強会と研究会

社会的連帯経済(SSE)に関する勉強会と研究会についてお知らせします。

連帯経済勉強会・第7回(有料)

  • 開催日:2022年10月22日(土曜)13時~14時30分
  • テーマ:生産者と消費者の連帯

生産者と消費者の連帯は、連帯経済の古典的な事例です。地産地消の取り組みが地域経済活性化にもたらす効果、地域社会の総合的な関わり、食の豊かさに結びつく農業や食品サプライチェーンの現状について学びます。

講演では、愛媛県今治市の「さいさいきて屋」の取り組みについてご紹介します。地域農協による「地産地消」や地域の中小加工業者の連帯など、地域再生の多角的な取り組みとして注目される動きを語っていただく予定です。

  • 講師:吉田敏彦(「さいさいきて屋」直販課課長)
  • コメンテータ: 古沢広祐(国際開発学会社会的連帯経済研究部会代表)
  • モデレーター:佐藤寛(アジア経済研究所・上席主任調査研究員)

申込方法

下記ご案内ホームページをご参照ください。

社会的連帯経済/研究部会・第7回公開研究会

  • オンライン開催・参加申し込み(無料)
  • 開催日:2022年10月22日(土曜)15時~16時半頃を予定
  • 報告テーマ:「生産者と消費者の連帯 ~有機農業にみる社会的連帯経済」
  • 報告者:古沢広祐(國學院大學研究開発推進機構)

市場経済の矛盾への対抗として、連帯経済的な試みが1970年代から模索されてきた有機農業運動。内外の多面的な展開の時代動向を、社会的連帯経済の視点から考察します。

*第7回公開研究会は、本シリーズ企画の最終回となります。
テーマ報告の後に、シリーズ企画の簡単な振り返りと今後の企画について研究部会の主要メンバーのコメントを交えて自由討論を行います。

お申込:

勉強会および研究会についてご不明な点がございましたら、ご遠慮なく下記事務局までお問い合わせください。


本件にかんするお問い合わせ先

一般社団法人ソリダリダード・ジャパン事務局

  • japan-info☆(☆マークを@に変えてください)



ウェビナー「『ビジネスと人権』への取り組み」

日本でもビジネスにおける「人権」の重要性が指摘され始めていますが、オランダの児童労働デューデリジェンス法、欧州委員会の環境・人権に関するデューデリジェンスの義務化の動きなど、欧州では既に企業に対してサプライチェーン上の人権遵守が求められています。

本セミナーでは、オランダ及び欧州におけるビジネスと人権に関するルール化の最新動向や、いち早く人権人種を打ち出すことにより、商業的にも成功したオランダ企業トニーズ・チョコロンリーの取り組み、さらに日本における消費者教育の取り組みを紹介します。

日本の消費者市場においても「人権」は今後重要になると可能性が高い中、欧州の先行事例に学び、今後のビジネス展開のヒントを得る絶好の機会と存じます。ぜひご参加ください。

開催概要

  • 日時: 2022年9月28日(水曜)16:30~ 18:00(日本時間)
  • 会場: オンライン開催(ZOOMウェビナー)
  • 言語:日本語/英語(同時通訳)
  • 参加費:無料
  • 主催:駐日オランダ王国大使館、一般社団法人ソリダリダード・ジャパン

スピーカー

  1. フィレス・フットハルト氏(オランダ外務省 経済ガバナンス・通商政策局義務デューデリジェンス・コーディネーター)
  2. エンゾ・ファン ザンテン 氏(トニーズ・チョコロンリー キーノート・ヒーロー)
  3. 米山眞梨子 氏(消費者庁 消費者教育推進課 課長補佐)

パネルディスカッション

モデレータ

佐藤寛 氏(アジア経済研究所上席主任調査研究員 / ソリダリダード・ジャパン共同代表)

パネリスト

  1. 河口眞理子 氏(不二製油グループ本社㈱ CEO補佐 / 立教大学大学院 21世紀社会デザイン研究科・特任教授)
  2. 佐藤有希子 氏(認定NPO法人ACE(エース)ソーシャルビジネス推進事業チーフ)
  3. ハモンド・メンサ氏(国際NGOソリダリダード 西アフリカ・カカオプログラム担当)

申込み

にご記入の上、お申込みください。(〆切 9月27日)


本件にかんするお問い合わせ先

一般社団法人ソリダリダード・ジャパン事務局

  • japan-info [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)



連続公開ウェビナー「中東からみたウクライナ戦争とエネルギー・食糧問題」8月23・24日開催(会員・一般)

国際社会がコロナ禍から回復しつつあった時期に発生した今般のウクライナ戦争は、エネルギー・食糧・肥料を含むさまざまな資源の価格高騰と供給の不安定化をもたらし、世界のサプライチェーンの複雑性と脆弱性を明らかにしました。

とりわけ、穀物の大半をロシア・ウクライナに依存してきた中東・アフリカ地域では食糧不安の深刻化が懸念されています。他方、エネルギー価格の高騰は湾岸産油国に利益となる面もあり、この地域への影響も一様ではありません。

日本国際問題研究所では、下記のとおり、「中東からみたウクライナ戦争とエネルギー・食糧問題」と題し、2回の連続ウェビナーを開催いたします。それぞれ、各地域とエネルギー・食糧の専門家をお招きし、最新の動きを踏まえた議論を行って頂きます。是非ご参加下さいますようお願い申し上げます。

ウェビナー1 『中東からみたウクライナ戦争とエネルギー問題』

ウクライナ戦争を受け、エネルギー分野を中心に中東ではどのような影響・動きがみられるのかについて、4名の専門家が各国の状況を踏まえつつ多角的な視点から議論を行います。

開催概要

  • 日時:2022年8月23日(火曜)15:00 -16:30(日本時間)
  • 使用言語:日本語
  • 参加費:無料
  • 申込登録: 参加をご希望の方は下記のURLよりお申し込みください。

登壇者&プログラム

冒頭挨拶:
市川とみ子(日本国際問題研究所・所長)

モデレーター:
立山良司(防衛大学校・名誉教授)

報告者:

  • 齋藤純(日本貿易振興機構アジア経済研究所・副主任研究員)
    「GCC諸国の脱炭素化政策の現状」
  • 中西俊裕(帝京大学・教授)
    「2022年秋以降の石油需給、ロシア-サウジアラビア関係」
  • 鈴木恵美(中央大学・教授)
    「イスラエル・エジプト・EU間の天然ガス輸出」

ディスカッサント:
柳沢崇文(日本エネルギー経済研究所・主任研究員)

ウェビナー2 『中東からみたウクライナ戦争と食糧不安・危機』

ウクライナ戦争を受け、中東・アフリカ地域やインド、世界の食糧安全保障や食糧援助の現場に詳しい有識者をパネリストに迎え、今般の戦争が各地にどのような影響を与えているのかについて議論を行います。

開催概要

  • 日時:2022年8月24日(水曜)17:00 -18:30(日本時間)
  • 使用言語:日本語
  • 参加費:無料
  • 申込登録: 参加をご希望の方は下記のURLよりお申し込みください。

登壇者&プログラム

冒頭挨拶:
市川とみ子(日本国際問題研究所・所長)

モデレーター:
井堂有子(日本国際問題研究所・研究員)

報告者:

  • 服部倫卓(ロシアNIS貿易会・ロシアNIS経済研究所・所長)
    「ロシア・ウクライナからみた黒海穀物輸送」
  • 近藤則夫(日本貿易振興機構アジア経済研究所・主任研究員)
    「インドの食糧輸出とウクライナ戦争」
  • 浦香織里(国連WFPエチオピア事務所・支援事業責任者)
    「エチオピアの食糧不安・危機の現状」

ディスカッサント:
佐藤寛(日本貿易振興機構アジア経済研究所・上席主任調査研究員)


本件にかんするお問い合わせ先

日本国際問題研究所
担当研究員:井堂有子 / 研究助手:中山玲子

  • 2208-me-webinar@



ソリダリダード・ジャパン『全7回・連帯経済勉強会2022』(会員・一般)

グローバル資本主義の限界が指摘される中、世界的に「連帯経済」が注目されていますが日本国内における認知度はまだまだ高くありません。ソリダリダード・ジャパンは昨年度から「連帯経済」に関する基礎知識の普及のための勉強会を開催しており、今年度は日本国内の地域活性化と連帯経済の関係に焦点を当てた内容で進めていきたいと考えています。

資本効率を優先する企業は、労働力と市場を求めてグローバルにビジネスを展開します。一方で、コスト面等で劣る日本国内の生産拠点は閉鎖され、少子高齢化や人口流出により縮小する地方市場から撤退する企業も増えています。グローバル化・市場経済化の進展に伴い、国内の地域経済は徐々に弱体化しています。このような中、利潤の最大化のみを目的としない「連帯経済」による地域経済活性化の取り組みが始まっています。

本勉強会では、地域活性化に向けた実践を行っている方、地域活性化のための新たな連携の形を模索されている実務者・研究者の皆様にも参考になる内容です。

なお、本勉強会とセットで、国際開発学会の「社会的連帯経済」研究部会とのコラボレーションで研究会も実施します。研究会では、本勉強会で取り上げるテーマについて、研究者を中心に更に議論を深めていきます。本勉強会の参加者は、国際開発学会の研究会にも参加することができます。

開催概要

開催日時

2022年4月23日(土曜)~10月22日(土曜)毎月第四土曜日(全7回)
第1回は15:00~17:00、第2回~第7回は13:00~14:30。
なお、第2回以降は同日の15:00~17:00に国際開発学会の「社会的連帯経済」研究部会と共催で研究会も実施します。

開催形式

ZOOMを利用したオンラインウェビナー(申込者には後日受講方法をご案内します)

定員

各回50名(定員に達し次第受付終了とさせていただきます)

受講料

  • 第1回(4月23日)は無料
  • 第2回~第7回のパック料金:12,000円(学生割引7,000)
  • 第2回以降、各回の受講料:2,500円(学生割引:1,500円)

※国際開発学会会員特典は、学生割引と同額になります。
※受講料の支払期日は、開催日の前日となります。原則として、お支払いの確認後にZOOMリンクを送付いたします。

申込方法

本勉強会の申込は以下のURLより「参加申込書」を取得し、必要事項をご記入のうえ、下記メールアドレスに添付ファイルとして送付してください。
0bll2kfojmytq1r/%E5%8F%82%E5%8A%A0%E7%94%B3%E8%BE%BC%E6%9B%?dl=0

  • メール送付の際は、件名を【「連帯経済勉強会」2022応募】としてください
  • 学生割引をご利用の方は学生証又は在学証明書の写しもご提出ください
  • 国際開発学会会員特典ご利用の方は、会員番号の記入が必要となります

参加申込書送付先メールアドレス:

  • japan-info [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)

応募メールをいただきましたら、3 営業日以内に応募受付完了メールをお送り致します。応募受付完了メールが届かない場合は上記までご確認のご連絡をお願いいたします。

申込締切

  • パック割引の場合:5月16日(月曜)
  • 各回受講の場合:開催日の1週間前まで

全体スケジュール

◆第1回 4月23日(土曜)連帯経済は地方経済活性化を後押しできるのか

ねらい:21世紀に入り、「社会的連帯経済」の活動は再び注目されています。ここでは用語の整理や様々な活動展開の潮流について解説し、スペインでの実践事例を手掛かりに、地域経済活性化において「連帯経済」が果たす役割について学びます。

  • 講師:廣田裕之(スペイン社会的通貨研究所共同創設者)
  • コメンテータ:古沢広祐(国際開発学会社会的連帯経済研究部会代表)
  • モデレーター:佐藤寛(アジア経済研究所・上席主任調査研究員)

◆第2回 5月28日(土曜)地域通貨によるコミュニティづくり

ねらい:地域通貨の仕組みと、地域通貨というツールを通じて、地域の活動を促し、新たな関係性を構築していくメカニズム、>それが地域社会に与えるインパクトを学びます。

  • 講師:柳澤大輔(面白法人カヤック 代表取締役CEO)
  • コメンテータ:古沢広祐(国際開発学会社会的連帯経済研究部会代表)
  • モデレーター:佐藤寛(アジア経済研究所・上席主任調査研究員)

◆第3回 6月25日(土曜)信用金庫と地域経済

ねらい:地域に密着した金融メカニズムとしての信用金庫の仕組みを理解し、地域の情報や特徴を熟知した金融が、地域経済活性化に果たす役割について学びます。

  • 講師:新田信行(開智国際大学局員教授・一般社団法人ちいきん会代表理事)
  • コメンテータ:多賀俊二(草の根金融研究所「くさのーね」代表、中小企業診断士)
  • モデレーター:佐藤寛(アジア経済研究所・上席主任調査研究員)

◆第4回 7月23日(土曜)ワーカーズコープと活力ある地域社会の実現

ねらい:労働者協同組合(ワーカーズコープの仕組みと取り組みを理解し、地域経済活性化における労働者協同組合法の意義、地域での暮らしや働きを支える空間、市民同士の相互扶助など、社会課題の解決におけるワーカーズコープの役割について学びます。

  • 講師:相良孝雄(日本労働者協同組合「ワーカーズコープ」連合会理事)
  • コメンテータ: 古沢広祐(国際開発学会社会的連帯経済研究部会代表)
  • モデレーター:佐藤寛(アジア経済研究所・上席主任調査研究員)

◆第5回 8月27日(土曜)農福連携による地域の活性化

ねらい:過疎化が進む地方では、地域活性化に多様なアクターの動員が求められています。一次産業と福祉の連携は相互補完的な関係を築き上げることが可能であり、新しい生産活動の形態として期待されています。農福連携の実践事例から新しい連帯経済の可能性について学びます。

  • 講師:調整中
  • コメンテータ: 古沢広祐(国際開発学会社会的連帯経済研究部会代表)
  • モデレーター:佐藤寛(アジア経済研究所・上席主任調査研究員)

◆第6回 9月24日(土曜)「よそ者」と社会的企業

ねらい:日本国内で昨年生まれた赤ちゃんは過去最少の約84万人にとどまっており、少子化、地方の人口減少は深刻度を増しています。そうした中で、地方の活性化のための「関係人口」の重要性が脚光を浴びています。地域での経済活動に貢献する「よそ者」の関わりについて学びます。

  • 講師:調整中
  • コメンテータ: 古沢広祐(国際開発学会社会的連帯経済研究部会代表)
  • モデレーター:佐藤寛(アジア経済研究所・上席主任調査研究員)

◆第7回 10月22日(土曜)生産者と消費者の連帯

ねらい:生産者と消費者の連帯は、連帯経済の古典的な事例です。地産地消の取り組みが地域経済活性化にもたらす効果、地域社会の総合的な関わり、食の豊かさに結びつく農業や食品サプライチェーンの現状について学びます。

  • 講師:調整中
  • コメンテータ: 古沢広祐(国際開発学会社会的連帯経済研究部会代表)
  • モデレーター:佐藤寛(アジア経済研究所・上席主任調査研究員)

本件にかんするお問い合わせ先

一般社団法人ソリダリダード・ジャパン事務局

  • 案内状%E3%80%8C%E9%80%A3%E5%B8%AF%E7%B5%8C%E6%B8%88%E3%80%8D%E5%8B%89%E5%BC%B7%E4%BC%9A%E3%81%AE%E6%A1%88%E5%86%85%E7%8A%?dl=0
  • japan-info [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)



JSCI勉強会「国際認証(サステナブル・ラベル)とサステナブル消費」3月10日開催(会員・一般)

本勉強会では、JSCI(日本サステナブル・ コットン・イニシアティブ)メンバーやゲストスピーカーによる情報提供やディスカッションなどを通して、生産者・加工業者・企業・消費者といった異なる立場の実情と課題を浮き彫りにし、持続可能なコットンの生産・取引・消費に向けて課題の解決策を包括的に検討し、多様な視点から学ぶことができます。また、サステナブル・コットンへの取り組みにおける重要な情報を提供し、参加者のネットワーキング・意見交換の場としての役割も果たします。

今回のテーマは「国際認証(サステナブル・ラベル)とサステナブル消費」です。
事業活動や製品をサステナブルにしていくために、透明性・信頼性を担保しながら持続可能な責任ある調達や、サプライチェーンにおける環境・社会的課題解決をどう実践していくのか。国際認証との関係性や、サステナブル・エシカル消費との繋がりについて説明します。質疑応答あり。終了後に登壇者と参加者の交流時間を設けます(約30分)。

開催概要

  • 日時:2022年3月10日(木曜)16:00~17:30(終了後30分程度交流時間あり)
  • 場所:オンライン(ZOOM)
  • 定員:90人(先着順・3月9日までに要申込)
  • 参加費:教育機関と市民社会団体の方・学生:無料、企業・一般の方:5,000円
    ※所属先発行のメールアドレス(所属先ドメインが含まれるもの) を登録フォームにご記入ください。

お申込み

登壇者

  • 松本 フィオナ氏(GOTS日本代表)
  • 山口真奈美氏(一般社団法人日本サステナブル・ラベル協会(JSL)代表理事)

本件にかんするお問い合わせ先

日本サステナブル・コットン・イニシアティブ(JSCI)

  • [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)



活動報告『開発とビジネス』研究部会(2021年11月)

《2021年7-9月期》

本部会は民間企業、とりわけ日本の中小企業アクター(場合によっては大企業、多国籍企業も含む)がどのような形で「途上国の開発問題/社会問題」解決に貢献できるのかを、具体的な取り組み事例の検討を中心に行うことを目指している。2021年7-9月期は、2回研究会を開催した。

まず1つめに、2021年8月24日(木曜)、午後1時30分~午後5時にオンラインの形で開発とビジネスに関連した研究を行なう若手研究者を対象としたブートキャンプを、学会員から参加者を募り実施した。

本ブートキャンプは、近年、国際開発学会の若手会員のなかで、国際開発とビジネスとを結びつける分野の活動に注目し、これを論文のテーマに設定している人も増えているが、大学院等で研究する場合、国際開発、国際貿易、国際経営、さらにはボランティア学など、さまざまな指導教官がいるなかで、適切な指導が受けにくいという現状に対処するものである。

また、国際開発学会の春季大会、全国大会などで研究報告をしても扱うテーマごとに「教育」「保健」「農村開発」などのセッションに配置されてしまい、同じような切り口で研究している人とうまく情報共有できないという問題が散見されていた。

研究部会では、若手研究者を中心にこの「開発とビジネス」分野を研究テーマとしている方からの話題提供を求め、これに対してシニア、中堅研究者がコメントをする「ブートキャンプ」を試行することとした。

会の進行および主コメンテーターとして佐藤寛氏(ジェトロ・アジア経済研究所)が助言を行なったほか、下記の開発とビジネスの分野に経験豊かな各研究者がコメントおよび指導を行った。吉田秀美氏(法政大学)、下田恭美氏(早稲田大学)、小林かおり氏(椙山女学園大学)、功能聡子氏(ARUN)、八鍬(山崎)ひかり氏(元ボーダレスジャパン)。

参加した若手研究者及び、テーマは下記のとおりであった。

発表1.「世帯内ジェンダー格差とデジタルテクノロジー -バングラデシュおける賃⾦⽀払いのデジタル化の事例から」

綿貫竜史氏(名古屋大学国際開発研究科博士課程)

発表2.「The mechanism of promoting corporate responsibility to respect for human rights through international norms – how it works in Africa」

井上直美(東京外国語大学サステナビリティ研究博士課程)

発表3.「ウガンダの難民起業家の成功要因について」

中村恵理氏(慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科博士課程/ 独立行政法人国際協力機構)

発表4.「日本の民間教育団体の海外展開史-民営化する国際教育協力との関係に注目して-」

朝倉隆道氏(株式会社富士通総研、一橋大学大学院)

参加者からは、経験・知識が豊富な、いつもは指導を受けることが出来ない先生方から助言をいただけたこと、開発とビジネスという共通の分野で研究を進める若手研究者から学ぶことが出来たこと、および知り合えたこと、実務と学術の両方の視点をつなげて議論できたこと、多岐に渡る話題を議論できたこと、等が非常に有意義であったとの感想をいただいた。

気軽に発表し、分野横断的に意見交換できる会をもっと企画して欲しいという声も多くあがった。今回は、代表の佐藤のアイデアでこうした会を開催したが、今後も、同様の企画を何らかの形でできないか検討することに価値があることが確認できた。


ミズノヘキサスロンのベトナム公教育への導入について

-対立事物の相互浸透の法則-

2回目は、2021年9月24日(金曜)に、開発途上国の抱える課題に、本業を通じて取り組む企業の事例を学ぶオンライン研究会を開催した。企業の担当者に話をうかがい、参加者全員で意見交換を行なった。研究会のタイトルは、「ミズノヘキサスロンのベトナム公教育への導入について-対立事物の相互浸透の法則-」。

講師には、森井征五(もりい・せいご)氏(ミズノ株式会社・総合企画室・アジアグローバルセールスマネジャー)をお招きした。なお、研究部会の開催時間は、通常の昼間の研究部会には参加できないとの会員の声を反映し、ランチタイムに開催した。参加者は、合計で21名であった。

ミズノ株式会社のベトナムでのヘキサスロン運動プログラム事業の背景は次のとおりである。ベトナムでは、2021年9月から、40数年ぶりに初等義務教育「学習指導要領」の改訂と、その運用の開始が予定されている。ミズノ株式会社はベトナム教育訓練省と、同社ヘキサスロン運動プログラムを新学習指導要領に採用する「協力覚書」を2018年10月に締結し、本プログラムを、同国の学習指導要領へ導入すべく、その採用に向けた活動を行なっている。

当日は、まず同社の事業概要を説明するムービーを使用し、その後に森井氏から、事業概要と現状の取り組み内容をご報告いただいた。そして、今後想定されるサービスの価格や知的財産権を含めたサプライチェーン、事業収益化への課題、日越関係機関との合意形成や連携のあり方について議論を進めていただいた。

同社は、急速な経済成長が進むベトナムで問題となっているこどもの肥満、そこからつながる健康被害等のリスクを社会課題と捉え、この課題を解決するための鍵は、限られた時間とカリキュラムで行なわれる体育授業にあると特定した。

同社のプログラムは、学習指導要領に採用されることで体育授業プログラムを多様化させ、子どもの前述の問題を解決することに役に立つものであるとのことであった。現に、報告では、ベトナムの小学校が十分に体育授業を行うためのフィールドを確保できないままに、ごく短時間の簡単な運動の機会しか与えられていないという現状が、ビデオで報告された。

森井氏からは、ベトナム政府との交渉、関係各所との役割分担、価格や知的財産権の商流に関する各所との合意形成活動、現地日本大使館との連携等における、難しさや事業を進める喜び等が共有され、参加者との意見交換が行われた。

参加者からは、同社がベトナムで事業を推進する理由やきっかけについての質問、本事業の競合に対する優位性や模倣品への対策、そこから派生して知的財産権をベトナムのようなコントロールの難しい国で守りつつ利益を確保する事業を進めるための工夫に関する意見交換が行われた。

また、本事業が当初、公的資金の援助を受けつつパイロット事業をベトナムで始めたことに関連し、今後そうした公的資金の支援を受けずに利益事業として成り立つためには何が必要か、利益確保するためのマーケット規模は十分か、ベトナム以外のマーケットへの進出予定等について参加者から質問が挙がり、これに関する意見交換が行われた。

また、ODA事業として進めた経験から、国際協力分野に経験の厚いコンサルタントと企業がどのように協力し、お互いの得意分野を使い事業拡大の可能性を広げることが出来るか、ということについて、コンサルタントと企業の双方の立場からの率直な意見を聞くことが出来た。

意見交換の話題は、同社のサプライチェーン・マネジメント、SDGsに関する取り組み、CSRに関してまで広がった。短時間ではあったが、非常に密度の濃い意見交換を行うことが出来た会であった。

「開発とビジネス」研究部会
代表:佐藤寛(ジェトロ・アジア経済研究所)




活動報告『倫理的食農システムと農村発展』研究部会(2021年8月)

本研究部会の目的は、いわゆるフェアトレードとエシカル消費(両者を合わせて倫理的取引とする)に基づく倫理的食農システムが生み出す農村発展の成果と課題を解明することにある。その参照枠組みとして、「食への権利」や「食料主権」といった食料運動の観点も利用することとしている。

前回のニューズレター・活動報告では、2020年12月と2021年3月に行った2回の研究会について報告した。その後、5月15日(土曜)午後1時半からオンラインで、ソリダリダード・ジャパンの楊殿閣さんに「持続可能な農産品サプライチェーン構築と倫理的生産活動の支援-国際NGOソリダリダードの挑戦」というテーマで報告してもらった。連帯経済についてはかなり研究の蓄積もあるが、まだ広く知られていないソリダリダードについての紹介はそれだけで有意義だった。また本研究部会の趣旨からすると、フェアトレードから連帯経済への転換過程および「フェアデーター」の試行は興味深い論点となりうる。

次回は7月31日に、河村能夫さん(龍谷大学名誉教授・京都府立農業大学校名誉校長)に「JICAインドネシア・スラウェシ貧困対策支援農村開発計画の経験(仮)」をテーマにオンライン研究会を実施する予定である。

『倫理的食農システムと農村発展』研究部会
代表:池上甲一(近畿大学名誉教授)