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新刊案内:安部雅人 著『人新世における失われた世界の未来―米国社会の分断と中国社会の権威主義を中心に―』

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国際開発学会(※社会的連帯経済研究部会所属)会員の安部雅人(Masato Abe,Ph.D.)と申します。

この度、『人新世における失われた世界の未来―米国社会の分断と中国社会の権威主義を中心に―』(三恵社)【本体2,500円+税10%】【ISBN : ‎978-4-86693-756-4】を上梓致しましたので、御紹介させて戴きます。

「人新世(Anthropocene)」という言葉は、東京大学大学院総合文化研究科・東京大学教養学部の斎藤幸平准教授が執筆された「人新世の『資本論』」により、今日、広く耳にするようになっております。

この「人新世(Anthropocene)」という言葉は、ギリシャ語の「人間の新たな時代」から由来したものであり、人類による地質への影響や生態系に与える影響を鑑み、地質時代における12,000年前の農耕革命が始まった時期から現代を含む区分です。

「人新世(Anthropocene)」の最も若い年代、特に第一次世界大戦後から今日に至る時期においては、人類の技術革新が飛躍的に進んだ時期でもあります。特に21世紀以降においては、グローバル化による世界的な社会経済の発展と共に地球環境の変動が劇的に増加することになり「人新世(Anthropocene)」における「Great Acceleration(大加速)」と呼ばれるようになりました。

この「人新世(Anthropocene)」における「Great Acceleration(大加速)」の特徴は、地球温暖化等の気候変動、大量絶滅による生物多様性の喪失、リサイクルが難しい化学物質の大量排出による生態系への影響、化石燃料の燃焼による汚染物質の増加等により、地球全体の生命体が絶滅を含む危機的状況に陥る等、多岐に渡っております。特に、その多くが人類の活動が原因とされております。

他方、「人新世(Anthropocene)」における「Great Acceleration(大加速)」の状況下において冷戦後の旧ソビエト連邦の崩壊により誕生したロシアは、その初期においてペレストロイカによる社会構造の変化および急激なグローバル化の波にうまく対応できず、国内の経済的な混乱、国力の低下といった「負の側面」に晒されていくことになります。

それに対して、中華人民共和国(以下、「中国」という。) は、国際世論の厳しい批判を受けながらも冷戦後に発生した「第二次天安門事件」を武力鎮圧により収束させた中国共産党中央軍事委員会主席 (1981年~1989年) 鄧小平(以下、「鄧小平」という。) の決断により「改革開放」路線の継続を進めていった結果、高い経済成長を遂げると共に「世界の工場」としての地位を揺るぎないものにしております。

実際、中国の台頭により、外交戦略・経済戦略・安全保障戦略・環境戦略等に係るパワー・バランスに変化が生じております。「国際政治経済の重心」が大西洋から太平洋に移行したことで、アジア太平洋地域は、世界の「国際政治経済の重心」となりつつあります。そして、その将来の行方は、世界的な関心の対象となっております。

経済的な側面からみると、2022年時点では、世界第1位の経済大国がアメリカ合衆国(以下、「米国」という。)であり、第2位が中国であり、そして、第3位が日本であります。こうした世界の最も巨大な三つの経済大国がアジア太平洋地域を取り囲んでいるところを軍事大国であるロシアが北から注視していることになります。それ故にアジア太平洋地域は、世界で最もダイナミックかつ世界で最も注目される重要な地域であると同時に、この地域では、領土問題や安全保障上の対立が溢れており、偶発的な軍事衝突が起こりうる緊張も数多くみられます。そのため、この地域における今後の動向が将来の世界秩序の行方を大きく左右するといっても過言では、ありません。

そこで本著書は、「人新世における失われた世界の未来」と題して、「人新世(Anthropocene)」における「Great Acceleration(大加速)」の状況下における米国社会の分断と中国社会の権威主義について分析し考察すると共に今後の米中両国を含む国際社会の外交戦略・経済戦略・安全保障戦略・環境戦略等の特徴について論じております。

なお、本著書は、次のとおり、序章を除く9章によって構成されております。

本著書において示されている各種事例が、国際開発をめぐる知的営みに関心を持つ皆様にとって、一本の新しい補助線になれば幸いです。

Amazonによる紹介:

もくじ

序章

第1章  米国社会におけるトランプ政権の登場と影響
第1節 はじめに 7
第2節 2020年米国大統領選挙の概況 9
第3節 トランプ政権の光と影 15
第4節 むすび 18

第2章  トランプ政権下における米中対立と安全保障戦略
第1節 はじめに 20
第2節 トランプ政権下における新たな安全保障戦略とマネジメント 21
第3節 安全保障と武器輸出の拡大 23
第4節 むすび 28

第3章  米国社会における差別問題と負のスパイラル
第1節 はじめに 29
第2節 米国社会と人種差別 30
第3節 むすび 35

第4章  中国における「社会主義現代化強国」の実現とエネルギー資源調達のリスク分散
第1節 はじめに 37
第2節 中国の「社会主義現代化強国」を実現する時代 37
第3節 脱炭素社会における米中戦略の相違 41
第4節 むすび 44

第5章  中国の「核心的利益」と「一帯一路」構想
第1節 はじめに 45
第2節 中国の国際的役割と対外援助政策 45
第3節 むすび 49

第6章  中国社会におけるウイグル人
第1節 はじめに 51
第2節 (仮称)特定地域における民族間の勢力均衡論(ドミノ式) 53
第3節 シルクロード世界とウイグル人 54
第4節 むすび 58

第7章  国立大学の法人化と門戸開放
第1節 はじめに 59
第2節 国立大学の改革と外国人留学生 59
第3節 日本における中国からの留学生 63
第4節 東北大学における外国人留学生 65
第5節 むすび 70

第8章  現代の「進撃の巨人」:中国の進路
第1節 はじめに 72
第2節 地域別人口動向と中国 72
第3節 中国経済力の拡大と先進国から新興国および発展途上国への経済力のシフト 75
第4節 人口減少と国力との関係 76
第5節 中国における「法治」と「党治」 81
第6節 むすび 82

終章  人新生における失われた世界の未来
第1節 アジア太平洋地域における「価値観の相違」 83
第2節 グローバル化と貧困 85
第3節 「改革開放」と中国の産業立国化 86
第4節 米国と中国における国内での経済的格差 86
第5節 米国のアフガニスタン撤退と中国の進出 88
第6節 欧米諸国および中国におけるロシア産天然ガスに対する輸入戦略の違い 91
第7節 平和のための戦略 94

あとがき
参考文献
索引


本件にかんするお問い合わせ先

(出版社) 株式会社 三恵社

  • 〒462-0056 愛知県名古屋市北区中丸町2-24-1
  • TEL 052-915-5211
  • FAX 052-915-5019
  • URL:https://www.sankeisha.com

(著者)安部雅人(Masato Abe,Ph.D.)

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