第33回全国大会セッション報告(企画セッション)

企画セッション


B-2.ウクライナ紛争と中東・北アフリカ地域の食糧不安・危機
――レバノン・エジプト・チュニジアの事例より

  • 2022年12月3日(土曜)09:45 ー 11:45
  • 企画責任者:井堂有子(日本国際問題研究所)
  • 司会:佐藤寛(アジア経済研究所)
  • 討論者:河村有介(神戸大学)

発表題目と発表者

  1. 「中東・北アフリカ地域における食糧安全保障の共通課題―構造的脆弱性の背景―」
    井堂有子(日本国際問題研究所)
  2. 「レバノンの食料不安―金融危機と難民流入―」
    土屋一樹(アジア経済研究所)
  3. 「エジプトにおける食糧『危機』が直撃する脆弱層」
    岩崎えり奈(上智大学)、井堂有子(日本国際問題研究所)
  4. 「チュニジアにおける食料安全保障の構造的課題と食料主権」
    山中達也(駒澤大学)

第33回大会全体テーマ「グローバル危機にどう立ち向かうべきか―紛争、食料高騰、飢餓」に呼応する形で、本企画は「ウクライナ紛争と中東・北アフリカ地域の食糧不安・危機」というテーマで4つの報告を行った。

2022年2月に発生したロシアのウクライナ侵攻と黒海封鎖、さらに対ロシア経済制裁は、サプライチェーンを通じて相互依存を深めてきた世界全体に衝撃を与えたが、特に主要穀物を両国からの輸入に大きく依存してきていた中東・アフリカ地域は直接的打撃を受けた。

本企画セッションでは、中東・北アフリカ(MENA)地域の共通課題とともに、特に注目されるレバノン、エジプト、チュニジアの個々の構造的課題を掘り下げることを目的とした。

ウクライナ戦争以前から、同地域は2010-11年以降の幾度かの「アラブの春」、広範囲な抗議行動、世界的感染拡大、金融危機、極度のインフレ、気候変動による異常気象といった複合危機にすでに見舞われてきていた。こうした中での黒海封鎖は、この地域の食糧不安をさらに深刻化させ、政治危機を招く要因になりうる。

第一の発表は、企画の趣旨説明として、約6億の人口を擁するMENA地域に共通する構造的課題の論点整理(気候変動への脆弱性、穀物輸入依存、「社会契約」としての食糧補助金、食糧援助)を行った。この地域では主要穀物(小麦)を国内生産でではなく海外輸入に依存する傾向が強まってきたが、この背景として、農業生産向上を阻む気候・地理条件に加え、広く実施されてきた食糧補助金制度、外部要因としての食糧援助の影響を指摘した。

第二の発表では、ウクライナ危機以前、レバノンが既に深刻な金融危機(世界ワースト3位内)や政治的混乱、財政破綻等、度重なる危機に直面していたことが解説された。この背景として、脆弱な経済構造(送金・観光経由の外貨頼み、対外債務高)に加え、レバノン人380万~500万人に対してシリア難民150万人とパレスチナ難民1.6万人の受入れ等、元々厳しい状況にあったところ、低い小麦自給率(20%)もあり、黒海封鎖で市民と難民双方の食糧不安がさらに深刻化したことが報告された。

第三の発表では、小麦輸入大国エジプトの家計調査データ(2010年代後半)の分析から、食糧不安に最も脆弱な層と彼らの生存戦略の詳細が明らかにされた。エジプトの小麦輸入相手先は米国一辺倒から多角化の時代を経て、2020年頃にロシア・ウクライナに集中するようになっていた。食糧補助金の大半を占める小麦のパン配給制度は同国の「社会契約」を象徴してきたが、危機の際には脆弱層の命の綱となってきたことが報告された。

第四の発表では、革命期チュニジアの政治経済危機に関して、経済構造の諸課題が詳細に解説された。「アラブの春」唯一の成功例とされたチュニジアであっても、残存する縁故資本主義で硬直化した市場とFDIの停滞、30%もの高学歴失業者、インフォーマル部門の肥大化、財政赤字と対外債務の増大、低生産で脆弱な農業部門の現状により、コロナ禍以前において国民の4人に一人が中程度以上の食糧難に直面していた。こうした構造的悪循環を脱するため、国内穀物の半分を生産する小規模農民を中心としたチュニジアの市民社会による食料主権の樹立を求める動きが紹介された。

討論者からは、地域の共通課題に対して、ロシア・ウクライナ産穀物への過度な輸入依存には経済的要因だけでなく政治的要因もあるのか、なぜ一般的な社会保障制度よりMENA地域では食糧補助金が大きな役割を果たしているのか、との質問がなされた。

個別発表に対しては、(1) レバノンでのシリア難民受入れ、パン価格引き上げへの国民の反応、国連の支援スキームの多くが現金給付であるのはなぜか、(2) ウクライナ危機がエジプトの社会保障改革に与える影響、(3) チュニジアにおける食料主権の主体は誰なのか、あるべき農業政策(戦略)とはどのようなものか、といった質問がなされ、発表者との議論が続いた。

初日午前の時間帯であったにもかかわらず、対面・オンライン併せて40名程度の参加を得た。

(報告:井堂有子)


B-3.中東における『障害と開発』

  • 2022年12月3日(土曜)12:50 ー 14:50
  • 企画責任者:森 壮也(ジェトロ・アジア経済研究所)
  • 討論者:小林 昌之(ジェトロ・アジア経済研究所)、長田 こずえ(名古屋学院大学)、細谷 幸子(国際医療福祉大学)、小村 優太(早稲田大学)、長沢 栄治(東京大学)、戸田隆夫(明治大学)

発表題目と発表者

(報告:森 壮也)


B-4.信頼と開発協力:研究の到達点と今後の課題

  • 2022年12月3日(土曜) 12:50 ー 14:50
  • 企画責任者:石塚 史暁(東京大学)
  • 座長:佐藤仁(東京大学)
  • 討論者:佐藤 寛(日本貿易振興機構アジア経済研究所)

発表題目と発表者

  • 大塚 高弘(独立行政法人国際協力機構)
  • 林 伸江(独立行政法人国際協力機構)
  • 大友 彩加(独立行政法人国際協力機構)

冒頭、座長より本テーマの意義について触れた後、事例分析の結果についての結果について3名(林:留学生受入事業、大塚:ボリビア国水資源管理技術協力、大友:フィリピン鉄道マスタープラン。いずれも所属は国際協力機構)より発表した。

発表では、いずれも信頼と開発協力に係る問題を、過去の事例分析を通じて扱った。林は関係者間の信頼関係が留学生の満足度に与えた影響、大塚はカウンターパートが頻繁に交代する国・地域における信頼の引継ぎ、大友は過去の実績の蓄積による信頼と案件実施中に新たに構築される信頼の構築過程を統合的に分析した。

これに対し、討論者(佐藤寛・アジア経済研究所)より、日本の地方部における外国人に対する信頼の問題や、ODAの技術協力スキームにおける信頼の位置づけ、開発協力における信頼の構成要素などについてコメントがあった。加えて、フロアの参加者からも以下のような質問・コメントがあり、座長・発表者を交えて活発な意見交換を行った。

「信頼」は「安心」や「信用」と区別して議論すべきではないか。

(留学生の)満足度と信頼はかならず相関するものといえるのか。

(モノなど)非人間的な要素に対する信頼はありえるか(信頼はどこまで属人的か)。

日本企業以外が受注するアンタイド案件における日本への信頼はどう考えられるか。

時代の変化に伴って開発協力における信頼の役割はどのように変化してきたか。

個人・組織・国という信頼の主体を区別して議論すべきではないか。

信頼は開発の目的になりえるのか(現場としては違和感あり)。

信頼の効果を捉えるため信頼が得られなかった案件との比較をしてはどうか。

セッションで提示された問いの幅は、開発研究における信頼というテーマがさらに深堀すべき要素を多く含んでいることの証左である。今後も、研究を継続したいという気持ちを強くした。なお、セッション参加者は約60名(会場:約15名、オンライン:約45名)で、議論は大変活発であり、この分野に対する高い関心が感じられた。

(報告:佐藤仁)


B-5.The ‘Easternisation’ of Development: The politics of East Asia’s Developmentalist Cooperation

  • 2022年12月3日(土曜)16:50 ー 18:50
  • 企画責任者:伊東 早苗(名古屋大学)
  • 司会:藤川 清史(愛知学院大学)
  • 討論者:佐藤 仁(東京大学)、KIM Soyeun(Sogang University)

発表題目と発表者

  1. ”The Easternization of Development: The Politics of East Asia’s Developmentalist Cooperation”
    伊東 早苗(名古屋大学)
  2. ”The Politics of East Asian Developmentalism: Paradigms, Practices and Prospects of Foreign Development Assistance”
    von Luebke Christian(コンスタンツ応用科学大学)
  3. Huan Meibo(上海対外経貿大学)
  4. Wang Zhao(上海対外経貿大学)

本企画セッションは、対面とオンライン合わせて約30名ほどの参加者があり、盛況であった。藤川清史会員(愛知学院大学)による司会のもと、4名による研究報告を予定していたが、大会直前になって、急遽、上海対外経貿大学の報告者2名(Meibo Huan氏 およびWang Zhao氏)が不参加となった。

彼らの報告を期待して参加くださった会員の皆様には、深くお詫びしたい。一方で、報告者2名(Sanae Ito, ”The Easternization of Development: The Politics of East Asia’s Developmentalist Cooperation”およびChristian von Lübke, ”The Politics of East Asian Developmentalism: Paradigms, Practices and Prospects of Foreign Development Assistance”)の報告後、討論者2名(佐藤仁会長/東京大学、およびSoeun Kim会員/Sogang University)およびフロア全体を巻き込む諸議論に十分な時間を費やすことができ、その意味で、大変有意義なセッションであった。

2名の報告内容は、ポスト2015時代における開発協力のパラダイムシフトと、近年の、日本、韓国、中国による国益重視型開発協力をめぐる政治的力学を「開発主義国家」概念と合わせて論じるものであった。

報告者によると、国益重視の開発協力は、「持続可能な開発目標SDGs」を推進する国際社会が民間セクターとの協働を促進する動きと連動している。また、それぞれの東アジア諸国が「非欧米型開発モデル」という言説を掲げ、欧米先進国が先導する開発アプローチに代わる「オータナティブ」を標榜しがちな状況とも連動しているとする。

具体的な事例として、日本政府による「質の高いインフラ事業」がとりあげられ、日本企業によるインフラ投資を促進するためにODAが戦略的に使われていることを「開発主義国家的な産業政策の復活」として議論した。

討論者からは「開発の東洋化」という概念にどのような意味があるか、また、国内産業の振興を目的とする産業政策が外交面で開発協力政策と接続する場合の距離感等についてコメントおよび質問があった。さらに、「開発の南化」や「Blended Finance」といった概念に関わる研究と実践上の動向について、知見の共有がなされた。

フロアからは、グローバル社会の動向と東アジアの動向を区別できるか、開発実践の現場における民間企業の本音はどこにあるか、といった論点が指摘された。また、開発主義国家の定義や、その多様な側面について当該分野の専門家からコメントがあり、学びの多い議論につながった。

(報告:   )


B-6.包摂的な産業開発は可能か―アフリカにおけるものづくりの現場から

  • 2022年12月4日(日曜)12:45 ー 14:45
  • 企画責任者:井手上 和代(明治学院大学)
  • 討論者:黒川 基裕(高崎経済大学)、渡邉 松男(立命館大学)

発表題目と発表者

  1. 「アフリカにおける製造業の『失われた中間』を問い直す―ソファ製造の多系的発展の事例から―」
    高橋 基樹(京都大学)
  2. 「ケニアの小規模零細金属加工業者のものづくりと資金調達 ―企業者的能力に着目して―」
    井手上和代(明治学院大学)
  3. 「支援を渡る―政府と国際援助機関によるエチオピア皮革産業の現地企業への影響―」
    松原加奈(東京理科大学)
  4. 「ザンビア・ルサカにおける障害者団体の技能訓練と生産活動―技能形成に着目して―」
    日下部 美佳(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)

本セッションには、対面で11名、オンラインで11名の参加があった。本セッションは、「アフリカ・アジアにおけるものづくり」研究部会の活動を踏まえ、その成果を学会に還元することを念頭に置いて企画したものである。

アフリカ諸国が21世紀初頭からの高度成長を経てかえって強まった資源・一次産品への依存からの構造転換のために、ものづくり・製造業の現状を、実証研究を通じて考察することが要請されている。そこで必要なことは、多くの人が経済活動の担い手として参加する包摂的な開発が実現されてゆくことである。

最初の報告「アフリカにおける製造業の『失われた中間』を問い直す―ソファ製造の多系的発展の事例から―」(高橋基樹会員・京都大学)では、ケニア・ナイロビのソファ製造の複数のクラスターを取り上げ、製品について生じた革新的な知識が異なる業者の間で容易に共有される開放的なケースと知識が秘匿される閉鎖的なケースがあることが指摘された。それは従来の「失われた中間」=二重構造論では捉えきれない多系的な発展とそれに応じた包摂が生じている可能性を示唆するものである。

続く「ケニアの小規模零細金属加工業者のものづくりと資金調達 ―企業者的能力に着目して―」(井手上和代会員・明治学院大学)では、ナイロビの金属加工業の資金調達と企業者能力について、製品と技術(機械化の程度)が異なる二つの地区の業者への聞き取り調査に基づき論じた。長期資金需要の相対的多さにもかかわらず、金融市場における機会が狭められており、機械化の進んだ事業者も自己資金への依存率が高く、金融機関からの借り入れが限られていることが分かった。事業者の企業者能力はそうした生産環境の負の要因を補うために発揮されている。

「支援を渡る―政府と国際援助機関によるエチオピア皮革産業の現地企業への影響―」(松原加奈会員・東京理科大学)は、最初にエチオピアの革靴産業と産業政策の歴史を跡付けた。それを踏まえて、異なる3つの規模の企業が受けてきた支援を詳述し、小企業にも政府による外国援助を活用した支援が及んでいることを指摘する。各企業は異なる複数の支援を渡りつつ恩恵を受けるものの、逆に支援を渡ることができずに廃業に追い込まれる場合があり、包摂が不均等なかたちで生じていることが示された。

「ザンビア・ルサカにおける障害者団体の技能訓練と生産活動―技能形成に着目して―」(日下部美佳会員・京都大学博士課程)は、福祉用具に携わる障害者団体の活動に着目し、個々人の技能の熟練及び多能工化と活動参加前の教育や技能の習得とがどのように関わっているかについて考察した。技能形成とものづくりという障害者の開発への主体的な参加が団体の存在によって可能となっている。

各報告に対して黒川基裕会員(高崎経済大学)、渡邉松男会員(立命館大学)から、理論的枠組みを踏まえた議論の陶冶に向けた助言や、考察をさらに深めるための問題の提起がなされた。これらは上記研究部会での議論を進展させるために非常に有益なものであり、本セッションを開催した意義を確認することができた。

(報告:井手上 和代)


B-7.開発途上国におけるミクロ実証分析

  • 2022年12月3日(土曜)09:45 ー 11:45(オンライン発表)
  • 企画責任者:島村 靖治(神戸大学)
  • 討論者:樋口 裕城(上智大学)、倉田 正充(上智大学)、會田 剛史(アジア経済研究所)

発表題目と発表者

  1. 「女性自助組織活動と公的雇用保証政策は女性の民間での雇用にどのような影響を及ぼしたのか?―インド・アーンドラ・プラデーシュ州農村部の事例―」
    佐藤 希(愛知学院大学)
  2. 「地域内における資源配分と消費水準との関係の探求―マラウイの農業用投入資材補助金政策を事例としてー」
    藤田 茜(神戸大学)
  3. 「インドネシア医療ボランティアの活動報酬に対する選好―離散選択実験による実証分析―」
  4. 劉 子瑩(神戸大学)
  5. 「ベトナム中部の村落医療施設における医療従事者の利他性の分析」
    島村 靖治(神戸大学)

本セッションでは開発途上国におけるミクロデータを用いた実証分析に関する4つの報告が行われた。

第1の発表では、インド、アーンドラ・プラデーシュ州農村部の女性の自助組織活動と全国農村雇用保障法(NREGA)による雇用保証事業との関係、ならびにNERGAの民間雇用への影響に関する分析結果が報告された。そして、コメントとして、自助組織活動への参加によってNREGAの効果に違いがみられる理由をより丁寧に分析し議論すべきとの指摘があった。

第2の発表では、マラウイの農業投入資材補助金政策を題材に地域内における資源配分と地域全体の平均的な一人あたり消費水準との関係に関する分析結果が報告された。コメントとしては、地域や地域内における資源配分の捉え方の手法を再検討した上で結論についてもより丁寧に議論すべきとの指摘があった。

第3の発表では、インドネシア、ジョグジャカルタ郊外で活動する医療ボランティアの活動報酬に対する選好がボランティアの利他性により異なることを見出した分析結果が報告された。一方で、コメントとして、結果の解釈にあたっては純粋利他性と不純利他性の違いを考慮に入れて行うべきとの指摘があった。

第4の発表では、ベトナム中部の村落医療施設(CHC)で働く医療従事者の利他性の分析を行い、医療従事者の利他性は同じCHCで働く同僚の利他性と強い相関関係があることが報告された。他方、コメントとして、そうした相関が生じる理由がピア効果なのか、社会における職業的なソーティングなのかを峻別すべきとの指摘があった。加えて、医療従事者の人数が増えたCHCほどその効果が大きくなるメカニズムについても探求すべきとの指摘もあった。

そして最後に、4つの発表すべてについての質疑応答の時間があり、それぞれの研究の今後の発展可能性について活発な議論が行われた。

(報告:島村 靖治)


B-8.ジェンダーと開発

  • 2022年12月4日(日曜) 09:30 ー 11:30
  • 司会:高松香奈(国際基督教大学)
  • コメンテーター:菅野美佐子(青山学院大学)

発表題目と発表者

  1. 「バングラデシュにおけるマイクロファイナンスと女性のエンパワメント」
    本間まり子(早稲田大学)
  2. 「ネパールの家族農業における変化への対応」
    甲斐田きよみ(文京学院大学)
  3. 「南スーダンでの全国スポーツ大会を通じたスポーツとジェンダー」
    古川光明(静岡県立大学)

ジェンダー平等と女性のエンパワメントの推進は、持続可能な開発目標(SDGs)をはじめ、開発における重要な取り組み課題として認識されている。しかし、SDGsの達成度やジェンダー格差指数が示すように、これらの課題を解決するための取り組みは、未だに十分であるとは言えない。

こうした状況において、実務者と研究者が活動報告や情報共有、調査や啓発活動のためのアプローチなどを紹介することにより、ジェンダーと開発を考えるうえでの課題や可能性について検討することを目的に「ジェンダーと開発」研究部会が、2022年8月に設立された。

本企画セッションでは、家父長制下で制約を受けている女性に焦点をあて、研究部会の有志会員が関わってきた事例を紹介した。コロナ禍において、女性は以前より増して不利な状況におかれている。しかし、受動的な弱者として位置付けるのではなく、変化を引き起こす主体として位置付けるために、国際協力を通じ何が出来るのか検討した。

セッションの冒頭で、司会の高松会員より、研究部会の目的や活動内容の紹介をおこなった。続いて本間会員の発表では、バングラデシュのマイクロファイナンス事業の参加女性たちの融資金の利用について、コロナ禍の影響と関連した現状及び今後の調査計画が共有された。

甲斐田会員の発表では、ネパールの先住少数民族で最貧困層のダヌワールを対象にした聞き取り調査結果に基づいて、様々な社会経済状況の変化に対する農民の対応を、ジェンダー視点で分析し、性別役割分業やジェンダー規範の影響が報告された。

古川会員の発表では、南スーダンのジェンダーとスポーツに関連して、スポーツ大会がジュバ女性市民のスポーツ参加やスポーツを継続することの認識への与える効果について、質問票調査を通じた検証がなされた。

コメンテーターの菅野会員からは、各研究報告に対してより理解を深めるとともに、今後、研究を更に発展させるためのヒントとなるような質問やコメントが行なわれた。セッション参加者のうち、研究部会の新規登録者が数名あり、今後の活動に繋がった。

(報告:高松香奈)


A. 一般口頭発表

C. ラウンドテーブル

D. ブックトーク、プレナリーほか

第33回全国大会を終えて