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NL35巻2号 [2024.08]

『倫理的食農システムと農村発展』研究部会(2024年8月)

倫理的食農システムと農村発展 [FY2021-]

1. 研究部会概要

本研究部会は2021年度から活動している。目的は、いわゆるフェアトレードとエシカル消費を柱とする倫理的取引に基づく食農システム(これを倫理的食農システムとする)が生み出す農村発展の成果と課題を解明することにある。その参照枠組みとして、「食への権利」や「食料主権」、オーガニックや地産地消といった食料運動の観点も利用することとしている。理論的研究と実践からの学びとを二本の柱にしている。

代表者は池上甲一(近畿大学名誉教授)、副代表は牧田りえ(学習院大学教授)で、25人ほどが賛同者リストに名を連ねている。主な活動としてはオンラインによるオープン研究会(会員、一般)を行っている。副代表の牧田が研究代表者になっている科学研究費と合同で開催する場合もある。また、社会的連帯経済研究部会との共催研究会も行った。参加者は平均して15名程度である。

2. 活動実績

(1)秋季大会での企画セッションへの協力

秋季大会において、藤掛洋子会員が企画したセッション「プラネタリー・ヘルスの観点からパラグアイの農村開発を考える」に、研究部会として積極的に協力した。座長には本研究部会の代表・池上が座長を務めたほか、副代表の牧田りえ会員、賛同者の受田宏之会員コメンテーターを務めた。

(2)研究会

2024年度は、学会誌への特集企画を意図して、4年目の延長申請を行ったが、諸般の事情によりまだ十分動き出せていない。その代わりに、オンラインによる主催研究会を3回実施した。

第1回目は2023年10月7日(土曜)に開催した。報告者は一栁智子会員(立命館大学OIC総合研究機構 客員研究員)で、テーマは「ケニア農村地域における社会的企業の持続可能性の検討―フェアトレード組織 Meru Herbsの事例調査から」である。フェアトレードを標榜する社会的企業は、倫理的食農システムの中核を担うアクターであり、その意義と課題、克服条件について学ぶことができた。

第2回目は2024年1月26日(金曜)に開催した。報告者は非会員の花谷まゆ氏(コラコラ認証事務局、農業事業者)で、テーマは「さんごにやさしい八重山ローカル認証・コラコラ(coral collabo)」である。実践に基づく興味深い報告だった。とくに「倫理性」を担保するうえで一定の重要性を持つ認証を地元ベースで実践している点が参考になった。

第3回目は3月27日(水曜)に開催した。講師は池上で、前年度に実施した愛媛県今治市への視察ツアーの報告を社会的連帯経済研究部会との共催で行った。報告テーマは「今治市の食農政策と地域形成の特徴」。学校給食、地産地消、有機農業を中心とした食農政策に基づく地域形成の可能性と方向性について活発な議論が行われた。

(3)春季大会(宇都宮大学)での賛同者による口頭報告

  1. 牧田副代表が「北の倫理的消費主義に南の生産者はいかに対応するか:ネパールのコミュニティ森林利用者の事例より」を口頭発表した。
  2. 斎藤文彦会員が「持続可能性実現のためのローカル認証の可能性と限界性:沖縄・八重山諸島のコラコラ認証」を口頭発表した。

(4)その他

2024年1月26日(金曜)の研究会を踏まえて、3月16日~19日に牧田副代表と斎藤会が石垣島にて現地調査を実施した。


『倫理的食農システムと農村発展』研究部会
代表:池上甲一(近畿大学名誉教授)

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