開催案内「スーダン戦闘勃発から一年。人道危機下の 人々の奮闘と必要とされる支援 ~ジャーナリスト・JICA・NGOそれぞれの視点から」4月14日開催(会員・一般)

スーダン戦闘勃発から一年。人道危機下の人々の奮闘と必要とされる支援~ジャーナリスト・JICA・NGOそれぞれの視点から

2023年4月15日、北東アフリカに位置するスーダンで、大規模な軍事衝突が発生しました。

発生当初は、在スーダン日本人の避難問題など注目が集まったものの、紛争から1年が経ち、メディアなどで扱われる機会は大きく減りました。

しかし、現在も紛争状態は続いており、2024年3月現在、スーダン国内の避難民630万人、180万人は国境を越えて避難をし、さらには2,500万人もの人々が人道的支援を必要としている状態です。

3月20日に開かれた国連安全保障理事会の会合では、今後数カ月の間に約22万人の子どもが栄養失調で亡くなる可能性が指摘されるなど、日々の食糧も満足に摂ることができない状況が発生しています。

今回のイベントでは、危機的状況にありながらも日本では報道されることの少ない
スーダンに光を当て、現地での取材経験もあるジャーナリスト堀潤氏をモデレーターに、日本のODAを担うJICAスーダン事務所の仲佐かおい氏、そして日本のNGOとして活動を続ける日本国際ボランティアセンター(JVC)今中(*オンライン)が登壇。

特にスーダンの「人」に焦点を当てながら、スーダンという国の魅力や、危機的な状況にある現在の状況、そして苦しい状況に置かれながらも奮闘するスーダンの人々の力強さまで、クロストークを交えながらお届けします。

当日会場では、ジャーナリスト堀潤氏が現地で撮影した魅力あふれる写真も展示します。

会場に足を運び、スーダンのいまに触れ、知ることから始めてみませんか?

開催概要

  • 日時:2024年4月14日(日曜) 10:30 ~12:45(10:00開場、12:45から13:15まで任意の交流タイムあり)
  • 方法:対面開催
  • 会場:JICA地球ひろば セミナールーム201AB(東京都新宿区市谷本村町10-5)
  • アクセス:
  • 参加費:無料
  • 共催:独立行政法人 国際協力機構(JICA)・認定特定非営利活動法人 日本国際ボランティアセンター(JVC)

登壇者

  • ジャーナリスト・8bitNews代表 堀 潤
  • 国際協力機構(JICA)スーダン事務所 仲佐 かおい
  • 日本国際ボランティアセンター(JVC)スーダン事務所 今中 航(*オンライン)

申し込み方法

Peatixよりチケットをお申し込み下さい。


本件にかんするお問い合わせ先

(特活)日本国際ボランティアセンター

  • info [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)
  • 電話番号: 03-3834-2388 (平日 11:00-16:00)



全国・春季大会時の子育て中の会員支援について

国際開発学会では、多様な背景やニーズを持った会員の闊達な研究活動を促進したいと考えています。

大会のセッション会場に子ども連れで入室・発表しても構いません。

ただし、発表や議論の進行を大きく妨げないよう配慮をお願いします。

育児中の学会員の方々が参加しやすい環境づくりとして、どの大会でも、会場付近にお子さんの授乳、おむつ替え、子守り、食事、昼寝等ができるキッズスペース(子連れ休憩所)として使える部屋を用意するよう努めます。

キッズスペースで起きた事故等に関して、学会・会場施設では責任を負いません。

尚、個別の大会での対応の詳細については、当該大会ホームページをご覧ください。

また、大会参加のために民間の託児サービスを利用される会員に、託児費用助成制度(一大会・会員一人当たり5,000円まで)もあります。

託児費用助成の利用は原則、事前申し込み制となっておりますので、希望する会員は、オンラインでの大会参加申し込みの際に申告欄の記載を忘れないようにお願いいたします。


本件にかんするお問い合わせ先

大会組織委員会




CanDoマラウイ・準スタッフ募集(2024年6月初旬派遣)3月31日締切

0331-マラウイで初等学校におけるライフスキル教育を基盤とした活動形成事業に参加する準スタッフを募集します。

当会はケニア共和国で20年間の社会開発の協力を行なったあと、子どもの問題がより深刻なマラウイ共和国で活動を展開しています。
2023年12月からライフスキル教育を基盤とした子どもの教育と健康・安全を保障する活動形成事業に取り組んでいます。日本人・マラウイ人のスタッフと共に業務に参加する準スタッフを公募します。

県の行政官、伝統権威などの地域リーダー、初等学校保護者をはじめとする地域住民などさまざまな関係者と話し合って活動ができます。ご応募を待っています。

募集要項

  • 募集期間:2024年3月4日~3月31日(4月上旬に面接を予定)
  • 派遣準備期間:4月中旬~5月末
  • 派遣時期:2024年6月初旬
  • 業務期間:6か月 *期間を通して専従
  • 募集人数:若干名

勤務地

マラウイ共和国ブランタイヤ事務所およびパロンベ県

業務内容

調整員(日本人・マラウイ人)の業務補佐
―村での社会開発事業の調整、行政・地域住民・他機関との折衝、物品調達、活動や会議等の記録、公的支援金等の申請書・報告書のための資料作成、ブランタイヤ事務所の総務、会計事務など―

年齢

20歳以上

必要な語学力

英語(英語で業務を実施し、話し合いに参加することが必須です)

その他必要な経験・能力

  1. 当会の活動原則や事業実施の姿勢について、会報、ホームページ、報告会等を通じて理解・賛同し、業務に反映させる意欲のあること―会員(会員でない方には、採用決定後に入会していただきます)
  2. どんな業務(雑務を含む)にも真剣に、積極的に取り組み、そこから多くを学べること
  3. 将来にわたり、国際協力に携わっていく意志のあること
  4. 他のスタッフとの共同生活、途上国の村落地域での生活に適応できること
  5. 基本的なパソコン操作(Word、Excel)ができること

類似業務経験

不問

待遇

  • 準スタッフ手当の支給(滞在中の通常の食費を賄える金額)
  • 宿舎の提供
  • 海外旅行保険への加入
  • マラウイ国内での業務に関わる交通・通信・宿泊費

負担していただくもの

  • マラウイまでの旅費、ビザ代、予防接種代
  • マラウイ国内での食費、業務外の交通・通信費など

持参していただくもの

  • スマートフォンとパソコン

応募方法

以下の書類を作成の上、Eメールにて送付してください。

  • 履歴書(書式自由。志望動機と英語力に関する自己評価を明記のこと)
    *勤務開始可能時期を記載してください。
  • 課題作文「アフリカの将来と私」(A4サイズ1枚)
  • 送付先アドレス:tokyo [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)

選考方法

書類審査および面接審査(東京事務所において実施。海外在住などの
理由で難しい場合はズームを利用したオンライン)


本件にかんするお問い合わせ先

CanDo(担当:佐久間)

  • tokyo [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)
  • 電話番号:03-3822-1041



第34回全国大会セッション報告(一般口頭発表)

一般口頭発表


1C:教育(日本語)

  • 座長:小川 啓一(神戸大学) 
  • コメンテーター:坂上 勝基(神戸大学)、黒田 一雄(早稲田大学)
  • 2023年11月11日(土曜)09:30 〜 11:30
  • 会場:紀-B104 (紀尾井坂ビルB104)
  • 聴講人数:32名

第1発表:[1C01] ケニア農村部の初等教育の公正性と包摂性―公立と私立の二項対立分析の再考

西村 幹子(国際基督教大学)

西村会員は、ケニア農村部の初等教育において、それぞれの学校を率いる校長やシニア教員が公正性や包摂性をどのように捉えているかについて発表した。

学校の公正性と包摂性は、校長や教員の背景にある考え方や経験、マサイ族の文化、地域との関係性に依っており、必ずしも私立校、公立校という二項対立軸で捉えられるものではないことを明らかにした。

これに対して、コメンテーターの黒田会員から、私立-公立という二項対立軸ではなく、それぞれの学校運営を支えるコミュニティや民族の文化、校長や教員のこれまでの経験に関するインタビュー調査の分析に基づく、本発表のユニークネスについての評価がなされた。

第2発表:[1C02] 授業形態別にみた教育効果の検証:バリ島における環境教育を事例に

栗田 匡相(関西学院大学)

第二発表では栗田会員から、バリ島における環境教育を事例にして、授業形態別による教育効果の差について検証した研究成果の報告が行われた。

座学のみと比べて、地域における体験型の環境学習を組み合わせた形態によって授業を提供する方が、教育効果が中長期間継続することを示した。

これに対し、コメンテーターの坂上会員は、環境教育の効果を実証した本研究のSDGs時代における重要性を強調した上で、対照群と処置群の選定方法について確認する質問を行った。

また、環境問題に関する児童の認知能力向上のみならず、介入が環境保全状況の改善に与える効果まで検討する、今後の研究の展開の可能性についての指摘がなされた。

第3発表:[1C03] 現状に見るミャンマー連邦共和国の基礎・高等教育の課題 

牟田 博光(国際開発センター)

第三発表で牟田会員は、新型コロナウイルスと軍事政権の成立という二重のショックを受けたミャンマー連邦共和国の基礎・高等教育における現状と課題について、発表した。

教員研修の重要性、学力低下の危惧、人的資源蓄積の滞り、混乱収束後の課題が示された。

これに対して、コメンテーターの黒田会員は、日本が長年援助してきたミャンマーにおいて、教育システムが不安定になっている状況について言及した。

また、本発表で使用されたデータの貴重性を強調した上で、今後学術論文として世に公開されることへの期待を述べられた。

第4発表:[1C04] コートジボワールの初等教育における非認知能力の視点からみた教育の質

小松 勇輝(大阪大学大学院)

第四発表では小松会員から、コートジボワールの初等学校に通う児童の非認知能力、特に自己効力感と教育の質に関する報告がなされた。

学校内の児童-教師間のインタラクションと職業教育における徒弟制が、児童の自己効力感の涵養プロセスに関与していることが、主に参与観察を用いた長期間のフィールド調査によって明らかになった。

これに対してコメンテーターの坂上会員は、初等教育を対象とする研究の中で、公立校とインフォーマルセクターである職業教育の事例のみ取り出して、並列にして分析をすることの妥当性について質問した。

また、学術的蓄積が比較的乏しい西アフリカにおける、本研究の意義の大きさについても言及した。

【総括】

本セッションでは、ケニア、インドネシア、ミャンマー、コートジボワールにおける教育の現状や課題、最新の動向についての研究成果が報告された。

コメンテーターからのコメント・質問はもとより、フロアからも積極的に質問やコメントが挙がり活発な議論が行われ、発表者・参加者の双方にとって有意義なセッションとなった。

報告者:小川 啓一(神戸大学)

1D:若者と雇用(日本語)

  • 座長:吉田 和浩(広島大学) 
  • コメンテーター:狩野 剛(金沢工業大学)、谷口 京子(広島大学)
  • 2023年11月11日(土曜)09:30 〜 11:00
  • 会場:紀-B108 (紀尾井坂ビルB108)
  • 聴講人数:00名
  1. [1D01] ウガンダにおける社会的遺児の強いられた自立と職業訓練
    *朴 聖恩(京都大学大学院)
  2. [1D02] アフリカによるアフリカのための研修-ケニアの気候変動の脅威に対する第三国研修の実施を通じたサブサハラアフリカ諸国への貢献-
    *本庄 由紀(ケニア国技術協力プロジェクト)
  3. [1D03] ケニアにおけるコンピテンシーにもとづくカリキュラム改革-導入の背景と新たな課題-
    *大塲 麻代(帝京大学)

【総括】

報告者:吉田 和浩(広島大学)

1E:経済(日本語)

  • 座長:西浦 昭雄(創価大学) 
  • コメンテーター:山形 辰史(立命館アジア太平洋大学)、會田 剛史(一橋大学)
  • 2023年11月11日(土曜)09:30 〜 11:00
  • 会場:紀-B112 (紀尾井坂ビルB112)
  • 聴講人数:16名

第1発表:[1E01] 中国における地域の教育格差: CHFSに基づくジニ係数の分解分析

李 鋒(中央大学大学院)

コメンテーターの會田会員より、質の高い研究であり、都市・農村内の教育格差が都市と農村間の教育格差より大きいことを示した点がユニークである一方で、①どのような仮説を検証したいのか、なぜそれが重要なのか、先行研究の中でどのような貢献があるのか、といった研究課題を明らかにすべき点、②都市・農村内での教育格差が拡大した理由まで掘り下げる点、③2014年度の制度改革による教育格差の是正に関する効果を分析する点、のコメントがあった。

これに対して、李会員より、先行研究では都市に住んでいる農村出身の人々の格差までは計測できていないと回答した。

フロアからの質疑応答では、修学年数をジニ係数で計測した先行研究の存在や格差を示す値の目安、農村戸籍から都市戸籍にコンバージョンするプロセスについての質問があった。

第2発表:[1E02] 生成系 AIの勃興がもたらす開発途上国への影響の考察:機会と脅威

内藤 智之(神戸情報大学院大学)

コメンテーターの山形会員より、生成系AIがアフリカの労働者・農民にとって脅威なのか、それとも機会なのかという議論を経済学の代替性と補完性に分けて考えると、新技術が一般的労働者の補完的になったバングラデシュ縫製業による事例からも、一般的労働力(非熟練労働)が生成系AIによって補完的になることがアフリカ貧困削減につながることになるとのコメントがあった。

これに対し、内藤会員からは、過去のインターネットの経験から考察すると、アフリカの雇用とAIをトレードオフではなく、ポジティブな関係だと捉えていること、補完的になれるよう今後の20年を考えるための政策提言を考えていきたい、そのため農業の中では小作農のリテラシー教育が重要性をもつのではないかと、いう回答があった。

次にフロアより、大規模言語モデルではマイナー言語の蓄積が少なくなるので言語による格差が広がるのではないかという質問があった。

第3発表:[1E03] 農産品サプライチェーンにおける多様な連帯:グローバルノースとグローバルサウスの歯車

楊 殿閣(ソリダリダード・ジャパン)

コメンテーターの山形会員より、発表では社会的連帯経済を形成するために、インドネシアのパーム油とインドのコットンを事例に国際NGOであるソリダリダードの役割について考察しているが、その役割は研究や技術協力であり、買い付けや販売組織をもっているわけではなく、ユニリーバやサラヤといった買い付けを行う企業にとってソリダリダードはどのように評価されているかを視点に加えていくべきではないかというコメントがあった。

これに対し、楊会員より、植物油を使用する企業は人権や環境保護の観点からサプライヤーとの関係に注力しているが、農業生産を専門にしているわけではないため、農業が持続可能性を保つために小農、農法支援の面で市民社会と企業のパートナーシップをとる事例が増えているとの回答があった。

フロアからの、消費者の行動変容の視点、現地政府主導の認証システム、開発途上国発の加工企業の場合のグローバルノースとグローバルサウスの立て分けについてのコメント・質問があった。

【総括】

経済分野のセッションとして、中国の都市・農村の教育格差、生成系AIによるアフリカ雇用への影響、グローバルノースとサウスの社会的連帯経済の形成など広い観点から発表され、活発なコメントならびに質疑応答があった。

そこでは国際開発を考える上での新しい視点が多く提起されるなど、有意義なセッションであったと総括できる。このセッションを萌芽としてこれらの議論が発展することを願っている。

報告者:西浦 昭雄(創価大学)

1H:水と衛生(日本語)

  • 座長:杉田 映理(大阪大学) 
  • コメンテーター:西野 桂子(関西学院大学)、緒方 隆二(国際協力機構)
  • 2023年11月11日(土曜)09:30 〜 11:30
  • 会場:紀-108 (紀尾井坂ビル108)
  • 聴講人数:20名

第1発表:[1H01] バングラデシュ南西沿岸部における世帯単位の給水サービスの可能性-ポンド・サンド・フィルターと逆浸透膜給水装置の比較から-

山田 翔太(立教大学)

バングラデシュ沿岸部の水源管理および支払い意思に関しての研究であり、今後の現場での国際協力の方法を考える際に有用な研究発表であった。その点を評価したうえで、コメンテーターからは次のコメントがあった。

1)給水施設の区分に関して、公共の水源(コミュニティ型水源)、個人単位で設置や運営できる水源、ビジネスを通じた給水サービスの3区分に分けるべきではないか?また、その上で先行研究をもとにそれぞれの長所、短所をまとめると分かり易い。

2)結論に関して、一般化しすぎているようにも見える。例えば、PSFでもうまくいっている事例もあるはずであり、ビジネスを通じたサービスでもうまくいっていない事例もあるのではないか(もしくは収入によって支払い意思が低い層の存在もあるだろう)。

3)コミュニティ型水源にもPSF以外に深井戸や小規模水道もあり、今回の1カ所のPSFを通じた調査結果や教訓をすべての公共の水源に適用できるかは疑問が残る。

第2発表:[1H02] 住民は手押しポンプをどのように用いるのかーモザンビーク北部農村における水源の多様性と季節性に着目してー

近藤 加奈子(京都大学大学院)

コメンテーターからは、モザンビーク農村住民の複数水源の利用状況、季節による水源利用の違いを明らかにしようとしている興味深い研究であったと評価された。

一方で、次の点が指摘された。分析の方法を多少改良する必要があること。まず、いくつかの種類の水源を調査対象としているが、水源の客観的なカテゴリーを明らかにした上で比較検討する必要がある(JMPによるカテゴライズ:Improved or Unimproved もしくはSafely managed, Basic, Limited, Unimproved)。

住民が複数の水源を使う場合は、水源によって使い方(例えば飲料用、料理用、その他)が異なるはずであり、データがあれば具体的使い方も含めて分析すべきではないか。また、提言は具体的な例を入れた方が良い(従来の水源の改良が望ましい→例えばどのような改良?)。

さらに、用語に関しても、「手押しポンプ」→「深井戸」もしくは「手押しポンプ式深井戸」、水源は「メイン、サブ」ではなく、「飲料用、料理用、その他」で分けた方が良いのではとの助言があった。

第3発表:[1H03] ベトナム農村部における浄水需要:個別家庭型アプローチの有効性

黒川 基裕(高崎経済大学)

コメンテーターから、ヒ素除去が可能となる小型浄水ボトルの商品企画・開発」を通じて、ハノイ近郊農家のヒ素問題が解決できるかの実証実験を試みた意欲的な研究であると評価したいこと、また、援助ではなく、BOPビジネスを検討している点が経済発展が著しいベトナムに適していると考えられることが示された。

サブスクリプション形式とし、ラテライトのフィルターを回収するところまで寛がられており、今後に対して示唆が多いとのコメントもフロアからもあった。

第4発表:[1H04] 市民参加と情報公開を通じた統合水資源管理、環境管理分野の協力アプローチの可能性

大塚 高弘(独立行政法人国際協力機構)

「参加型の取り組みを効果的に活用する協力アプローチとは?」という問い、すなわち、「JICA・カウンターパート・住民(社会)の三方よしの協力アプローチが作れないか?」という問いに対する実践的な研究であるとコメンテーターから評価された。

また、行政から市民への情報公開の重要性は明らかである一方、タイとボリビアの2案件において参加のはしごの参加のレベルをどのように評価できるのか、質疑応答がなされた。

【総括】

個人発表枠で「水と衛生」というセッションが組めたのは、国際開発学会では久しぶりであり、非常に中身の濃い、有益なセッションとなった。

安全な水の確保を目的としながら、給水のしくみとしは、ポンド・サンド・フィルター、逆浸透膜給水装置、手押しポンプ付き深井戸、小型浄水ボトルと多様であり、水分野研究の奥行きを示すセッションであった。

また、すべての発表に共通して、住民が、それぞれの活動にどのように参加する(サブスクも含め)のかが議論されており、重要課題であることが確認された。

報告者:杉田 映理(大阪大学)

1L:海洋文化・先住民族(日本語)

  • 座長:関根 久雄(筑波大学) 
  • コメンテーター:佐藤 敦郎(九州大学)、東方 孝之(アジア経済研究所)
  • 2023年11月11日(土曜)09:30 〜 11:00
  • 会場:紀-404 (紀尾井坂ビル404)
  • 聴講人数:13名

第1発表:[1L01] 開発に直面する先住民族の協議・ FPICに関する国際比較研究プロジェクトの構想

寺内 大左(筑波大学)
小坂田 裕子(中央大学)
深山 直子(東京都立大学)

コメンテーターから、インドネシアの一民族であるダヤックを事例として取り上げた分析からはどの程度の一般化が可能なのか、多民族国家インドネシアに注目することにより分析を拡張できる可能性、そして地方政府の特徴に注意する必要性、といった指摘や質問があった。

これらに対して、事例研究としてダヤックに注目する(インドネシアの代表例として位置付けることは重視していない)ことや、アクターとしての地方政府についても注目する予定であることなどの回答があった。

また、「国連宣言の中には『継続的な協議』という文言がなく、FPICにおける『同意』が『契約』に近いことから、将来、予想外の悪影響が生じても『同意』が縛りとなり、先住民族に悪影響を強いる危険性がある」という発表内容について、フロアから国連宣言やFree Prior and Informed Consent((FRIC)の中に”Continuous”という文言を加える方法は取れないのか、という質問があり、それに対して、すでに採択された文言なに改良を行うことは非現実的であり、目の前で生じている事態に対する短期的・即効的な方策を考える必要がある、という応答があった。

第2発表:[1L02] コミュニティベース海洋環境教材の国際ネットワーク化に関する研究

小林 かおり(椙山女学園大学)

里海とは人が環境にアクセスすることであり、利活用が必然だとすれば、ゴミの海洋投棄は必要悪とも言える現象ではないのか。

「そういうもの」という発想に立脚して里海のあり方、環境教育のあり方、漂着ゴミ問題を考えることはできないか、という質問に対し、自然と人間との関係性の観点からそういう見方はありうるが、現状はすでに必要悪の次元を超えていて、改善すべき課題として直視しなければならないところまで来ており、その意味からも環境教育の必要性は待ったなしの状態にある、という趣旨の応答があった。

また、「海外と日本」の海洋環境教育といった具合に対象を二項対立的に捉えているのではないかという質問があり、それに対し、「先行研究において(海洋に限らず)環境保護は欧米と日本の捉え方は異なっていて二項対立的に捉えられ書かれる傾向があるものの、海洋環境教材はそのような発想で書かれているわけではない。

なぜなら、台湾の場合も日本と同様に「海洋環境の持続可能性」に焦点を当てた海洋環境教材が主流であるから」という回答であった。

第3発表:[1L03] 諫早湾干拓の開発史

松原 直輝(東京大学)

発表者が諫早湾干拓事業に関して、官の役割に着目していることに対して、コメンテーターは、事業主体としては官ではあるが、その中にも公共の論理と民間の論理が混在しているとの問題意識から、漁民、農民(半農半漁)、自然環境保護活動家、ディベロッパー、国(食糧増産、防災)、裁判所の立場で公共と民間の論理を指摘した。

また、歴史分析の反実仮想的な発想から、干拓事業を見るとどのように考えられるか、質問した。

コメントに対して、発表者からは、公共の論理と民間の論理について、前者について時代を越えて一貫したものが存在せず、後者が前者の中に吸収されている印象があること、また、反実仮想的な発想からの分析は今後の課題である、という回答があった。

また、諫早湾の事例について、第2発表者に対するものと同様に、発表者は「行政/市民」と二項対立的に対象を捉えているのではないかという質問が出されたが、過去の事例を踏まえると二項対立的に解釈せざるを得ない、という応答であった。

【総括】

3事例ともに外的要因に基づく開発行為が当該地域住民の暮らしに重大な影響を及ぼし、かつ彼らの生活域内における自然環境と地域住民との関係のあり方に懸念が生じたり、その関係性のあり方に変更を迫ったりするような事態を対象にした研究であった。

いずれも発表者の視点は地域住民の側に注目し、微視的に対象を捉えながら、自然環境と住民を取り巻くマクロな動きとミクロの現実との接合を試みる意欲的な研究内容であった。

報告者:関根 久雄(筑波大学)

1M:Development theory and practice (English)

  • 座長:新海 尚子(津田塾大学) 
  • コメンテーター:後藤 健太(関西大学)、島田 剛(明治大学)
  • 2023年11月11日(土曜)09:30 〜 12:00
  • 会場:紀-407 (紀尾井坂ビル407)
  • 聴講人数:00名
  1. [1M01] Dragon Rouge Redux: Assessing China’s Economic Hegemony in Cambodia
    *Toufic SARIEDDINE(Nagoya University)
  2. [1M02] CDMモデルから考察した途上国におけるイノベーションと外資系企業の役割ーベトナムの製造業企業を事例に
    *TranThi Hue(神戸女子大学)
  3. [1M03] Digital Currency and Development: Exploring the Potential Contribution and Challenges of Central Bank Digital Currency, “ Bakong,” for Development in Cambodia
    *Hisako KOBAYASHI(Oriental Consultants Global Co., Ltd.)
  4. [1M04] The Role of Private Sector toward Poverty Reduction – Analysis of Case Study in India –
    *伊波 浩美(JDI)
  5. [1M05] Regional decline and structural change in Northeast China: An exploratory space-time approach
    *Chen Yilin(Nagoya University, Graduate School of International Development)

【総括】

報告者:新海 尚子(津田塾大学)

1N:オンライン(日本語)

  • 座長:高柳 彰夫(フェリス女学院大学)
  • コメンテーター:戸田 隆夫(明治大学)、高橋 基樹(京都大学)
  • 2023年11月11日(土曜)09:30 〜 12:00
  • 会場:紀-409 (紀尾井坂ビル409)
  • 聴講人数:00名
  1. [1N01] インドネシア・リアウ州における泥炭火災予防:現状・課題・対応案 *久保 英之1、Albar Israr2、Kurniawan Anung 2 (1. JICA専門家、2. インドネシア国環境林業省)
  2. [1N02] ASEAN諸国におけるデジタル経済促進分析:課題と戦略
    *原 正敏1、*橋 徹2 (1. ビジネス・ブレークスルー大学大学院、2. 早稲田大学)
  3. [1N03] 障害者権利条約に基づく国際協力を巡る論点及び概念整理の課題に関する一考察一各国への総括所見及び建設的対話の分析から
    *福地 健太郎(国際協力機構)
  4. [1N04] 島嶼は日本の縮図たるか?——離島及び日本における水・エネルギーの対外依存状況に着目した一考察
    *關谷 武司1、*吉田 夏帆2、*芦田 明美3 (1. 関西学院大学、2. 兵庫教育大学、3. 名古屋大学)
  5. [1N05] エジプト日本科学技術大学における教育研究機器導入、および活用プログラム開発
    *松下 慶寿(エジプト日本科学技術大学)

【総括】

報告者:高柳 彰夫(フェリス女学院大学)

1O:援助機関と現場(日本語)

  • 座長:林 薫(グローバル・ラーニング・サポート・コンサルタンツ代表/元文教大学教授)
  • コメンテーター:小林 誉明(横浜国立大学)、志賀 裕朗(横浜国立大学)
  • 2023年11月11日(土曜)09:30 〜 11:00
  • 会場:紀-412 (紀尾井坂ビル412)
  • 聴講人数:20名

第1発表:[1O01] 日本の政府開発援助の効率性とコンサルタントの関係

*大須賀 誠(法政大学大学院 公共政策研究科 博士後期課程)

本報告は日本のODA の技術協力に関して、ODA 大綱の変遷、経済団体と政府の関与、援助体制とコンサルタントの役割などについて概観し、日本の援助実施体制が欧米に比較して弱体であること、このギャップを埋めているのがコンサルタントであるが、ODA予算の減少によって、コンサルタントの雇用が減少したり単価が引き下げられたりしていることなどが、ODAの実施体制を更に困難に陥れていることを説明しようとした報告である。

報告ではコンサルタントは相手国の要望に合わせた機材を国際的な経験によって把握しているので、助言や専門的知識を提供することで技術協力が効果的に推進できるであろうが、残念ながら、コンサルタントの知見が政策立案に十分反映される条件になっているとは言えない。

さらに、個々のコンサルタントの処遇も十分ではなく、何らかの育成策が必要であると結論づけている。

本報告に対しては、「日本のODAの効率性とコンサルタントの関係」がリサーチ・クエスチョンであり「コンサルタントを活用すること」がその答えなのだとすると、新聞報道、ODA大綱、経済団体の要望書、日本の援助体制の未整備(職員数の少なさ)はエビデンスとして不十分ではないかという疑問が提起された。

むしろ、人数で「効率性」を測っているのであるとすれば、現在すでに日本のODAは極めて効率的と判断することもできるわけであるから、そもそもODAの効率性とは何かという概念定義からしっかりと行う必要がある点も指摘された。

座長からも、ODAの規模の指標として予算額は必ずしも適切ではなく、事業規模も見るべきであること、コンサルタントの雇用形態や役割は多様であり、さらなる分析と考察が必要であることを指摘した。

第2発表:[1O02] バングラデシュ郡自治体円借款事業によるガバナンス改善:ガバナンス借款の可能性

*宗像 朗1、*杉山 卓2 (1. 独立行政法人国際協力機構、2.株式会社コーエイリサーチ&コンサルティング)

本報告は、バングラデシュの郡自治体借款事業(UGDP)1を事例にガバナンス借款の可能性を検討したものである。

この事業では①バングラデシュ全郡(約500 郡)を対象に実施した行政評価、②行政評価に基づいた開発資金の郡への供与、③研修とファシリテーターによる基本行政実施支援、の三つを柱にする約147 億円の円借款事業である。

このPDCAとインセンティブを組み合わせた仕組みにより、群自治体関係者のオーナーシップが高まり、説明責任の向上や適正な手続きの確保など実際にガバナンス改善が見られたとし、ガバナンス借款には大きな可能性があるとした報告である。

本報告に対しては、円借款によって全国的・広域的にガバナンス改革を促進する可能性を検討した興味深い論考であること、またその経緯を丹念に記録しデータを採った上でシンプルな記述統計を使って効果の発現を示した実証分析であることから、極めて高い評価がなされた。

一方、「日本の援助機関によるバングラデシュという特定の国に対する一事例」の紹介(アネクドート)にとどまっている嫌いがあるため、比較事例研究とするなどして、一国事例を超えた普遍的な教訓を引き出すことを検討してほしいとのコメントがなされた。

座長からは、これは日本の国際協力におけるプログラム支援の成功例であり、円借款という資金規模が大きい仕組みを使って全国をカバーできたことが、指摘されたような効果を生んだと考えられ、特筆すべきであるが、ガバナンス改善効果についてはより客観的なデータで評価する必要があること、インパクト評価を実施すれば教訓を一般化できることなどを指摘した。

第3発表:[1O03] 技術協力プロジェクトにおける効果的な実施・監理手法に関する考察~パキスタン国パンジャブ州上下水道管理能力強化プロジェクト(フェーズ1、フェーズ2)の事例における非技術的要素の検討~

*佐藤 伸幸(日本テクノ株式会社)

本報告は、技術協力のプロジェクト・マネジメントの一要素としてペタゴジー(Pedagogy;子供を教える技術と科学)に対するアンドラゴジー(Andragogy:成人の学習を援助する技術と科学)に焦点を当てた。

前者では知識を教えることに重点が置かれるが、後者では気づきと学びが重要である。

アンドラゴジーの要素を検討の結果、報告では、効果的なプロジェクト・マネジメントは、①どのような考え方でプロジェクトのカウンター・パートに対応してゆくのか、② どのような視点・問題意識とプロセスで協力を進めてゆくのか、③技術協力専門家の役割と立ち位置はどのようなものかの3点が重要であると結論づけた。

本報告に対しては、技術協力プロジェクトの成功要因の概念化に取り組んだ興味深い論考であり、見えにくく注目されにくい「非技術的要素」にも光を当てている点は意義深いとの評価がなされた。

そして、単一事例研究に終わらせずにより広い普遍的なrelevanceを持つものに発展させるためには、他国・他機関の事例との比較研究を行って理論的な精緻化を進めてほしいとの提案がなされた。

その一方で、「アンドラゴジー」という概念の有効性を証明するための事例分析をしているようなきらいがみられるため、既存のドグマに囚われすぎる必要はなく、むしろ現場の経験に基づいて既往理論に修正を加えるくらいの姿勢があっても良いのではないかという指摘もなされた。

座長からは、教育で「気づきと学び」を重視するアプローチは、現在ではアクティブ・ラーニングのように小中学校の学習でも重視されるようになってきており、ペダゴジーとアンドラゴジーの対比はやや古いパラダイムになりつつあるのではないかという指摘を行った。

【総括】

総じて、本セッションはODAを通じた人材育成の重要性に焦点が当てられ、その最適な手法についての議論が行われたセッションになった。

日本のODAの強みは人材育成であり、これが日本の国際的な役割として重要であること、ODA政策において人材育成がもっと重視されるべきであることを座長から指摘して、セッションを終わった。

報告者:林 薫(グローバル・ラーニング・サポート・コンサルタンツ代表/元文教大学教授)

2L:Health, gender, family (English)

  • 座長:松山 章子(津田塾大学)
  • コメンテーター:高松 香奈(国際基督教大学)、宇井 志緒利(明治学院大学)
  • 2023年11月12日(日曜)09:30 〜 11:30
  • 会場:紀-404 (紀尾井坂ビル404)
  • 聴講人数:20名

第1発表:[2L01] Scalable and Sustainable Adaptive Solutions to COVID-19 Disruptions in Family Planning (FP) Health Service Delivery in the Philippines

Leslie Advincula LOPEZ
Jessica Sandra Claudio
Haraya Marikit Mendoza
(Ateneo de Manila University)

The presentation was on a policy advocacy-oriented research on family planning health service delivery in the Philippines based on the experiences during the COVID-19 pandemic. Dr. Shiori Ui, the discussant, acknowledged its academic and practical significance in flexibility and innovative adaptation experiences of the project activities during normal time which can be utilized for the pandemic time. She, however, raised some important inquiries including the needs of detailed analysis of BARMM (Bangsamoro Autonomous Region in Muslim Mindanao). She also emphasized the importance of further analysis on its role of the identified Health Care Provider Network. Exploring how it contributes to UHC (Universal Health Care) would be very much insightful for us.

第2発表:[2L02] Caring through a Pandemic: Filipino transnational families’ survival of disrupted mobility during the COVID-19 crisis

Derrace Garfield MCCALLUM(Aichi University)

The presentation was on the study exploring the impact of digital technology on Filipino transnational families, focusing on how ICT (Information and Communication Technology) ’s influence the (re)creation and maintenance of family bonds during the COVID-19 pandemic. The discussant, Dr. Kana Takamatsu, appreciated that the paper was convincing and well organized. Acknowledging its nique feature which challenged the existing notion, she inquired some important methodological and analytical approaches. She asked if the results would be different by age and gender. It was also pointed out by her the term, “care”, should be clarified and defined since care is an ambiguous word, could mean emotional and/or financial spheres. Moreover, she raised interesting question that intimate relationships of ICTs could become possible “possessive relationship”.

第3発表:[2L03] Gender dimensions of the world of work under crises: Trends and challenges

Naoko OTOBE

The presenter reported, using the existing panel data of world of work, how these multiple crises have impacted women and men differently in the arena of work. Dr. Kana Takamatsu acknowledged that it was an informative paper to enhance the understanding of the impact of COVID-19 on work/ employment by gender perspective. She raised several questions, however, including accuracy of analysis period. Although the paper covered the crises such as COVID-19, climate change, and Ukraine and Russia conflict, the framework of the analysis period for the study was not very clear. Moreover, “intersectionality” is an important notion in gender analysis and she suggested discussion on the point would be useful for further study.

第4発表:[2L04] カンボジアにおける紛争と信頼ー2021年カンボジア社会経済調査を用いた実証分析ー

大貫 真友子(早稲田大学)
小暮 克夫(会津大学)
高崎 善人(東京大学)

This was the presentation on the study on impact of conflict exposure on social trust in Cambodia, using Cambodia Socio-Economic Survey (CSES) 2021. The data on social trust was collected through informally added questions by one of the study collaborators who was a part of the CSES 2021 team. The significance of the research topic, how conflicts may affect attitude and feelings in relation to social trust of people and community is well taken at this time of violent conflict around the world. However, Dr. Shiori Ui, the discussant, who are familiar to Cambodian society, raised an important issue regarding relevance of the questions used to measure social trust. Additionally, validity of the study topic, whether the lack of trust in non-kin-based networks is attributable to violent conflict (genocide) in Cambodia, was questioned. Rather, Dr. Ui said, a deeper-rooted problem in Cambodian society may be that trust among close kin members such as family members, relatives, and friends has been affected by violent conflict. Finally, further study prospects were discussed.

【総括】

The session offered wide variety of topics ranging from health, gender, care among family through ICT, to social trust in relation to conflict. The first three presentations, although different in topic, were all related to the impact of the COVID-19 pandemic. The last presentation, which explored the relationship between historical conflict and people’s social trust, is a very timely and important topic in light of the current global situation. I believe that those who attended the session learned a lot from these presentations. The comments by the discussants and discussion followed were also insightful and thought-provoking which would contribute to the prospect of future research.

報告者:松山 章子(津田塾大学)

2M:Sustainability (English)

  • 座長:高田 潤一(東京工業大学)
  • コメンテーター:藤倉 良(法政大学)、道田 悦代(アジア経済研究所)
  • 2023年11月12日(日曜)09:30 〜 11:30
  • 会場:紀-407 (紀尾井坂ビル407)
  • 聴講人数:00名
  1. [2M01] Sustainability Reporting: Quality Concerns of Third-Party Tools and A Call for High-Quality Third-Party Tools to Avoid Greenwashing
    *Vivek Anand ASOKAN(Institute for Global Environmental Strategies)
  2. [2M02] 生物多様性条約の「 DSI」の国際開発への影響
    *渡邊 幹彦(山梨大学)
  3. [2M03] 太平洋島嶼地域における環境意識調査~ミクロネシア連邦の事例研究~
    *高木 冬太(立命館大学)
  4. [2M04] Global RCE Network: Action-oriented Education for Sustainable Development
    *Jongwhi Park2, *Sawaros Thanapornsangsuth1,2, *Shengru Li2, Fred Emmanuel Sato2(1. Tokyo Institute of Technology, 2. Institute of Advanced Studies, United Nations University)

【総括】

報告者:高田 潤一(東京工業大学)

2N:Online (English)

  • 座長:西村 幹子(国際基督教大学)
  • コメンテーター:マエムラユウ・オリバー(東京大学)、内海 悠二(名古屋大学)
  • 2023年11月12日(日曜)09:30 〜 10:30
  • 会場:紀-409 (紀尾井坂ビル409)
  • 聴講人数:00名
  1. [2N01] 観光と環境のネクサス:ラグーナ州パグサンハン、カビンティにおける地元の認識に対する多面的な検証
    *ALINSUNURIN Maria Kristina2、*新海 尚子1 (1. 津田塾大学、2. フィリピン大学ロスバニョス校)
  2. [2N02] インドネシアにおける職業教育と非認知能力が労働成果に与える影響
    *崔 善鏡(広島大学)

【総括】

報告者:西村 幹子(国際基督教大学)

2O:社会開発、コミュニティ(日本語)

  • 座長:小早川 裕子(東洋大学) 
  • コメンテーター:藤掛 洋子(横浜国立大学)、松丸 亮(東洋大学)
  • 2023年11月12日(日曜)09:30 〜 11:30
  • 会場:紀-412 (紀尾井坂ビル412)
  • 聴講人数:18名

第1発表:[2O01] 通域的な学びの実践 – Africa-Asia Business Forumにおける学び合いを媒介とした地域間のつながり

工藤 尚悟(国際教養大学)

本研究では、国際協力や開発学の地域研究に従来の研究者や実務者による知見共有から直線的に課題解決が設計される方法ではなく、具体的な現場を持つ全く異なる地域の実践者たちが共同フィールドワークを通して得られる視点や気づきのリフレクションを基に、習慣的な思考パターンへの気づきや新しい視点の獲得といった自己変容を促す「通域的な学び」に関する調査が行われた。

コメンテーターからの課題解決型ではないプログラムの成果をどう評価できるのか、との質問に対し、工藤会員は、課題の出口として、方法論を提供する発展的評価になる回答した。

第2発表:[2O02] 開発学における表情解析の応用可能性:マダガスカル農村の女性における事例

山田 浩之(慶應義塾大学)

開発研究における調査では、回答者の設問理解度の把握の難しさ、考えずに回答している可能性、主観的で要因が多様な幸福感の測定が難点であるため、客観的調査が可能な顔を認識するソフト、FaceReader (FR)を起用した。

マダガスカル農村女性の笑顔をデータ化したものと記述調査を照合し、幸福感と個人や世帯の特性との関連性が調査された。

コメンテーターからは、FRをマダガスカルで使う有効性、調査結果が従来の調査結果と変わらなかった事から、FRを開発学で利用する意義の説明が必要ではないかとの指摘があった。

第3発表:[2O03] ブータン東部におけるアブラナ科野菜の普及の実態とその要因-タシガン県バルツァム郡を事例に-

生駒 忠大(京都大学/日本学術振興会)

本研究は、ブータンにおける新たな換金作物の普及は単に高換金性が引き金になっているのではなく、農業実践や地域文化の変容が普及の要因となっている可能性を調査した。

その結果、アブラナ科野菜が普及していった要因として、若者の離村と労働力確保の難しい村において、長期間の栽培適期と栽培の簡便性、副次的栽培、労働集約性の低さと高い生産性が村の現状に適合していたこと、アブラナ科野菜の食文化への浸透、牛の飼料としての有用性などが明らかにされた。

第4発表:[2O04] 潜在的に田園回帰志向を持つ人の要因分析 -地方に関心のある大学生に魅力的な地方自治体の施策とは-

戸川 椋太(立命館大学大学院)

田園回帰志向を持つ学生の実態を把握し、地方自治体への政策提言を目的に、潜在的に回帰思考のある大学生の特徴を明らかにする目的の研究である。

追跡調査も予定されているが、本発表では、コメンテーターから、田園回帰の定義の明確化の必要性、アンケート調査の対象が立命館大学の学生に限定されていた事による一般化の難しさ、田園回帰志向分析の設問内容が、都市でも可能な活動ではないかとの指摘があった。

【総括】

各発表は時間通りに進んだ。どれも興味深い研究発表だったため、フロアーからの質疑がたくさんあるように見受けたが、時間が限られていたため、1名の質問しか受けられなかったのが残念だった。

報告者:小早川 裕子(東洋大学)

2L:Rural development (English)

  • 座長:澤田 康幸(東京大学) 
  • コメンテーター:髙橋 和志(政策研究大学院大学)、米倉 雪子(昭和女子大学)
  • 2023年11月12日(日曜)12:45 〜 14:45
  • 会場:紀-404 (紀尾井坂ビル404)
  • 聴講人数:不明

第1発表:[2L05] 「園芸の商品化と家庭の意思決定が小規模農家の収入に及ぼす不均一な影響:エチオピアのジマ地帯における準実験研究の証拠」

*FIKADU ASMIRO ABEJE、*Nomura Hisako(Kyushu University)

本論文はエチオピアでJICAが進めているSHEP(市場志向型農業振興)アプローチが農家所得の向上に寄与しているか、寄与している場合、それが所得レベルや男女間でどのような違いがあるか、定量分析したものである。

データは2022-23年に集めたクロスセクショナルデータで、610の農家から集めた。

推定には、マッチングとQuantile regressionを用いている。

推定の結果からは、SHEPは全体として農家所得を有意に増やしているが、その効果はもともとの高所得家庭、また男性の意思決定力が強い農家でより大きくなることが判明した。

本論文は潜在的に重要なイシューを扱っているものの、以下のような点を改訂することが望ましい。

  • アウトカムである園芸作物所得と、説明変数である園芸作物指数の間には強い相関があるため、これを説明変数に使わない方がよい。
  • アウトカムをレベルのまま使っていると、ほぼ必然的に高所得家計の方に強い影響が出がちなので、ログを採った方がよい。
  • 推定式の説明の際にいくつかの誤りが見られた。
  • マッチングの方法をもう少し丁寧に説明した方がよい。

第2発表:[2L06] Empowerment Mechanisms of the ‘ SHEP Approach’ on Horticultural Behaviour Change of Smallholder Farmers. A Case of Kenya

Peter Nyamwaya ORANGI,
Hisako Nomura
(KYUSHU UNIVERSITY)

本論文はケニアでJICAが進めているSHEP(市場志向型農業振興)アプローチ農家のビジネスや農業スキルに寄与しているか、またそれらのスキル向上を通じてエンパワメントに役立っているか、定量分析したものである。

データは4058家計によるパネルデータで。推定には、差の差の分析とOLSが用いられている。推定の結果からは、SHEPは全体としてスキル向上に寄与し、それにより、生産やマーケティング面におけるエンパワメントに繋がっていることが判明した。

本論文はSHEPのプロジェクト目標が満たされているか定量的に検証した点で意義深いものの、以下のような点を改訂することが望ましい。

  • スキルのカテゴリーづくりややや恣意的なだめ、どのような理論的背景があるのか示せるとなおよい。
  • データがどのようにとられたのか、また4058はバランスパネルなのかそうでないのかなど、詳しい説明が必要。
  • DIDよりも近年はANCOVAが好まれる傾向にあるため、DIDを使うメリットを丁寧に説明してほしい。
  • エンパワメントの分析にはOLSが使われているが、スキル変数は内生なので、その点を考慮した推定方法に改善する必要がある。

第3発表:[2L07] Economic Analysis of Income Generation Through Creation of Dairy Farmers Union. A Case Study on Balkh Dairy Union, Afghanistan

Hamed ARIF SAFI(Kyushu University)
Nomura HISAKO(Kyushu University)
Shoichi ITO(Kyushu University)
Hiroshi ISODA(Kyushu University)

Key Points
  • 7 interviewers conducted semi-structured interview in 8 villages in Dehdadi District, Balkh province in Aug 2014. 355 milk producers, 192 Balkh Livestock Development Union (BLDU) members and 163 dairy farmers not BLDU members.
  • Examination of the impact of dairy union membership on the productivity of dairy farmers and the net annual milk income of households using the propensity score matching method (PSM).
  • Union membership significantly reverberates impacts critical economic outcomes of dairy farming dynamics.
  • It recommends stakeholders in the dairy farming sector, including policymakers and farm management, to recognize the positive aspects of union participation on production and income.

Questions to understand the situation further to promote union

  1. The amounts of income and dairy production. How many cows do they have. Is the size of farmers relevant to the result?
  2. Why/how the farmers became union members: Did anybody suggest them to become members? What are the merits that they recognise? ie) info, training, funds, etc from the union.
  3. Why non-members do not join unions? What prevents them? ie) In Cambodia, people were traumatised by their experience of forced labor during communist/socialist era.
  4. How many days did 7 researchers interview 355 farmers in 8 villages. Did they simply ask their annual income and production or had farmers recorded the amounts?

第4発表:[2L08] 高価値な換金作物の導入後の農村移住と民族間の格差における変遷:ベトナム中央高地の台湾から導入されたウーロン茶産業の事例

呉 昀熹(京都大学)

Key Points
  • Semi-structured questionnaires targeting Kinh migrants for April-June 2019, and the minority settlements for Oct-Nov 2019 in D and L Communes, hubs for oolong tea enterprises, in Lam Dong province in the Central Highlands, Vietnam. Sites included oolong tea factories, farms, and various households. A total of 123 households heads: 96 Kinh, 10 ethnic minority migrants (Muong, Cham), 16 indigenous minorities (Kohor, Ma), 1 Vietnamese Chinese individual.
  • geographical access to employment, Kinh has easier access, Muong have relatively comparable access to Kinh, able to reach oolong tea enterprises within a half-hour walk, Ma and Kohor at more remote locations.
  • 2 categories of spontaneous migrants: Early migrants, dependent on network, organised migrants; Late migrants. less-dependent on network.
  • Ma, traditionally engaged in shifting agri, adapted themselves to the tea industry, changed gender roles. Kohor, traditionally nomadic lifestyle, limited engagement with industry.

Questions to understand the Discussion further

  1.  Describing “3 key attractions of the tea system included higher income, varied job chances, and accommodation” regarding each ethnic group may show the differences clearer. How it becomes as “a stepping stone to cash crop farming. As migrants’ farms become sustainable, their dependency on the system decreases”?
  2.  About Gender role, Ma has seen the changes while Kohor did not. How about other ethnic groups?
  3.  Explain more in section “3 Findings” about the socio economic impact including health risks and loss of personal time.
  4.  About “the indirect marginalization of indigenous groups”, may be discuss about Ma and Kohor separately? How about Muong and Cham?

【総括】

Rural Developmentセッションの名にふさわしい意欲的な論文が4本報告された。

特に、JICAが進めているSHEP(市場志向型農業振興)アプローチやアフガニスタンにおける酪農組合プロジェクトの評価など、厳密なエビデンス(科学的根拠)が求められている研究対象について、ミクロデータを用い、マッチング(matching)、差の差分析(difference in differences)、分位点回帰(quantile regression)など緻密な手法を用いた研究につき、計量分析を洗練化することのみならず、ドメイン知識に基づいて研究をさらに深化させるという観点から、コメンテータの高橋和志教授(政策研究大学院大学)、米倉雪子教授(昭和女子大学)より多数の建設的なコメントがなされ、活発な議論が行われた。

座長としては、今後も国際水準の開発研究・教育の成果が日本発で期待でき、国際開発学会のあるべき姿を示す有意義なセッションとなった、と感じた。

報告者:澤田 康幸(東京大学)

2M:国際開発援助(日本語)

  • 座長:伊東 早苗(名古屋大学) 
  • コメンテーター:大門(佐藤) 毅(早稲田大学)、宗像 朗(国際協力機構)
  • 2023年11月12日(日曜)12:45 〜 14:45
  • 会場:紀-407 (紀尾井坂ビル407)
  • 聴講人数:00名
  1. [2M05] 政府開発援助が海外直接投資に与えた影響―援助形態別の分析―
    *大野 沙織(京都大学)
  2. [2M06] 現地主導の開発(locally-led development)とCSOの南北パートナーシップの再検討
    *高柳 彰夫(フェリス女学院大学)
  3. [2M07] 日本政府の支援がパキスタン気象局の能力向上に果たした役割に関する考察
    *内田 善久(株式会社国際気象コンサルタント)
  4. [2M08] 国際協力における Co-Financeの「全体像」をどう捉えるか~中国と DACドナー間の取り組みを事例に~
    *石丸 大輝1、*土居 健市2、*汪 牧耘3、*林 薫4 (1. 独立行政法人国際協力機構、2. 早稲田大学、3. 東京大学、4.元 文教大学)

【総括】

報告者:伊東 早苗(名古屋大学) 

2N:環境、サスティナビリティ(日本語)

  • 座長:松岡 俊二(早稲田大学)
  • コメンテーター:佐々木 大輔(東北大学)、古沢 広祐(國學院大学)
  • 2023年11月12日(日曜)12:45 〜 14:15
  • 会場:紀-409 (紀尾井坂ビル409)
  • 聴講人数:25名

第1発表:[2N03] インドネシア国アッパーチソカン揚水発電所建設に関わる原石山の補償問題

筒井 勝治(株式会社ニュージェック)
冨岡 健一(Global Utility Development Co., Ltd)

インドネシア国アッパーチソカン揚水発電所周辺の地域住民に対する補償の法制度とその運用のあり方をめぐって議論をした。

第2発表:[2N04] 環境知識の移転をめぐる地政学的ダイナミクス:中国の環境協力機関の比較分析

WU Jingyuan(東京大学大学院)

中国における環境協力機関の展開について、リアリズムの視点、リベラリズムの視点、コンストラクティビズムの視点から議論を行った。

第3発表:[2N05] 生産国の実情から考える持続可能なパーム油-インドネシアとマレーシアの事例に着目して-

吉田 秀美(一般社団法人持続可能なサプライチェーン研究所)
楊 殿閣(一般社団法人ソリダリダード・ジャパン)

持続可能なパーム油の国際的認証と各国のナショナルな認証制度との関係のマーケット・企業の動向について議論を行った。

【総括】

インドネシアの発電所建設に伴う住民補償、中国の環境協力機関の歴史的展開、インドネシアとマレーシアの持続可能なパーム油の認証制度をめぐって議論を行い、東アジアの環境問題と環境協力のあり方について、深く考える機会となった。

報告者:松岡 俊二(早稲田大学)

2L:Education (English)

  • 座長:澤村 信英(大阪大学) 
  • コメンテーター:劉 靖(東北大学)、川口純(筑波大学)
  • 2023年11月12日(日曜)15:00 〜 17:00
  • 会場:紀-404 (紀尾井坂ビル404)
  • 聴講人数:20名

第1発表:[2L09] Inclusion in Higher Education: Exploring the Experiences of Nepalese College Students with Disabilities

Bhuwan Shankar BHATT(International Christian University, Tokyo)

障害を有するネパール人大学生の経験をもとに、高等教育におけるインクルージョンのあり方を多面的に検討するものである。

高等教育におけるインクルージョンに関する実証研究は貴重であり意義があり、その重要性はますます大きくなっている。

それゆえに、研究のスコープを発展させれば(例えば、学部生と大学院生、学生の専攻を分けるなど)、さらに学術的・実践的な示唆が得られるだろう。

集団的相互作用の概念枠組みに、なぜ財政上の視点を入れていないのか、あるいは今後の研究として制度的なインクルージョンに対する考え方について質疑応答があった。

第2発表:[2L10] Case studies of a positive outlier and a negative outlier municipal education departments in supporting primary schools in Brazil

Danilo LEITE DALMON(Kobe University)

ブラジルの同一州にある人口規模や経済指標が類似する市を対象として、初等学校を管轄する教育局の中で最も効果的な教育行政が行われている市と、反対にそうでない市を選別し、両者を比較検討、要因の分析を行おうとするものである。

ブラジルを対象とする希少性はあるが、これに類似する効果的学校研究に関わる蓄積は膨大にあるので、さらなる文献レビューを進めてほしい。

また、サンプリングをいかに行ったかのプロセスが不明であり、その妥当性を明確にする必要がある。対象とする国、地域、学校の状況がわかる基礎データを示してほしい。

オリジナルのファインディングが何なのか、従来の効果的学校研究に対していかなる貢献があるのかなど、質疑が行われた。

第3発表:[2L11] Citizenship education and Malagasy philosophy: An analysis of the upper secondary school curriculum

Andriamanasina Rojoniaina RASOLONAIVO(Osaka University)

マダガスカルの後期中等学校のカリキュラムを分析することにより、グローバルなシティズンシップ教育の中でいかなる価値観が育成されるのか、されようとしているのかを探索するものである。

脱植民地化やグローバル・シティズンシップ教育の議論の中で、学校のカリキュラムがいかなる影響を受けつつ内在化していくかを検討することは重要なことである。

一方で、シティズンシップ教育やマダガスカルのフィロソフィーがそれぞれ何を意味するかは、丁寧に記述する必要がある。リサーチクエスチョンに対する結果の提示にやや齟齬があるように思えるとの意見も出された。

第4発表:[2L12] Parental Involvement in Malagasy Students’ Career Planning: the Case of Public High Schools in Urban and Suburban Settings

Fanantenana Rianasoa ANDRIARINIAINA(Osaka University)

マダガスカルの都市部の公立高校を事例として、生徒のキャリア計画にいかに親が関わっているかを考察するものである。

このようなテーマ設定自体は、教育を受けた後の就業に関わることで興味深く、重要なテーマである。

ただし、キャリア計画の定義がやや不明瞭で、どのように親が子どものキャリア計画に関わっているのか、さらなる丁寧な分析と解釈がなされることが期待される。

現在の結論は、親が何を考えているか、何を行っているかに留まっており、いかに関わっているかが十分に探索できていないように思える。

【総括】

ネパール、ブラジル、マダガスカルと、発表者は日本の大学に属しながら、それぞれの母国を研究対象としている。

このような多様な対象国の研究発表が本学会の場で行われることは、少なくない影響を日本人研究者にも与えてくれているように思う。

今後もこのような学術面での国際交流が展開され、将来的に国際共同研究などに進展することを期待したい。

報告者:澤村信英(大阪大学)

2M:事業評価・分析(日本語)

  • 座長:大橋 正明(聖心女子大学) 
  • コメンテーター:石田 洋子(広島大学)、桑島 京子(青山学院大学)
  • 2023年11月12日(日曜)15:00 〜 16:00
  • 会場:紀-407 (紀尾井坂ビル407)
  • 聴講人数:8名

第1発表:女性自助組織を通した母親の資源獲得と子どもの教育への影響―インド Rajasthan州の Rajeevikaプログラムを事例に―[2M09] 

水島 侑香(東京大学)

この発表は、本年の3月に行ったインド西部の州の3県(District)の3つの郡(Block)で政府が進める女性の自助組織(Self-Help Group、以下SHGs)の15名のメンバーに、半構造化インタビューを行った結果を軸に分析したものである。

報告者によると、多くのメンバーがSHGのマイクロファイナンスにより事業やSHGs組織の役職報酬よる収入向上、情報や人間関係といった形での資源を獲得し、結果的に子どもの教育にポジティブな影響を与えることを示した。

この発表に対してコメンテーターである広島大学の石田洋子会員は、SHGsの活動によってその本人だけでなく、その夫、女性の両親、子ども、教員、上位機関メンバー等がどう変化して、結果的に子どもたちの教育における変化につながっているのかを、セオリー・オブ・チェンジ(Theory of Change)といった形で把握すること、SHGプログラムの全容や対象地域の教育事情などが不明である、といった指摘をした。

第2発表:カンボジア・つばさ橋建設をめぐる環境社会配慮と事業化検討プロセス[2M10] 

小泉 幸弘(独立行政法人国際協力機構)
花岡 伸也(東京工業大学)

小泉会員の報告は、カンボジアにおける同様な橋梁プロジェクトと比較して、本案件がカンボジア側からの要請から無償資金協力実施の意思決定に至るまでに、10年ほどの時間を費やしたことの要因として、2004年改定のJICA環境社会配慮ガイドラインを適用した経緯をもとにしたものであった。

結果として、早期開通を希望していたカンボジア側の声には応えられなかったことが提起された。

これに対して青山学院大学の桑島会員からは、改定後の環境社会配慮ガイドラインの画期性、外務省・JICAの権限関係の「今」、カンボジアの運輸交通開発における環境社会配慮の「今」などのより幅広い検討の必要が指摘された。

また会場から相次いだ質問を通じて、こうした配慮がなされることでより丁寧な検討がされたことを評価するという指摘や、他の新興ドナーとの対抗を意識する日本政府はこうした配慮の適用範囲を限定しようとする動きがあるという懸念などが示された。

【総括】

このセッションでは、二人のコメンテーターからのコメントと発表者による応答、そして会場の参加者との興味深いやり取りが行われた。

四人の発表者を前提にした時間枠に二人の発表だったため、時間的に余裕があったので、しっかりしたやり取りをすることができた。それでも16時半に終了した。

報告者:大橋 正明(聖心女子大学)

2N:平和構築、レジリエンス(日本語)

  • 座長:湖中 真哉(静岡県立大学) 
  • コメンテーター:松本 悟(法政大学)、桑名 恵(近畿大学)
  • 日時:2023年11月12日(日曜)15:00 〜 17:00
  • 会場:紀-409 (紀尾井坂ビル409)
  • 聴講人数:約40名

第1発表:[2N06] 特定地域における民族間の勢力均衡論(ドミノ式)についての一考察ー勢力均衡のパターン分析を中心にー

安部 雅人(東北大学)

安倍会員による最初の報告では、民族間の勢力均衡論として3つの類型が提示され、中国新疆ウイグル自治区の紛争、パレスチナ紛争、ルワンダのジェノサイド等の事例が、その3つの類型の観点から検討された。

これに対して、松本会員によるコメントでは、リサーチクエスチョンの所在、先行研究に対する位置づけ等に関する質問が投げかけられた。

また、フロアからは、なぜインクルーシブな国家を形成できなかったのかという問題意識からの再検討の可能性等の論点が提出され、報告された類型が多角的に検討された。

第2発表:[2N07] 中国の都市におけるコミュニティレジリエンスの構築に関する質的研究—ソーシャル・キャピタルの視点から

王 藝璇(大阪大学大学院)

つづく王会員による報告では、2021年の中国河南省洪水災害で被災したコミュニティを対象とするインタビュー調査結果がおもに報告された。

同会員は被災コミュニティを都市・農村の移行期コミュニティの脆弱性に注目しながら3つに類型化し、各コミュニティのレジリエンスをソーシャルキャピタルの類型の観点から分析した。

松本会員によるコメントでは、ソーシャルキャピタルの有効性を論じるに当たっての基準設定の問題、比較の前提となる影響要因の評価の問題、調査対象者の選定上の問題等が質問された。

王会員は質問に回答しながら、今後の研究にコメントをフィードバックしていく見通しを述べた。

第3発表:[2N08] エルサルバドル共和国帰国研修員によるパイロット事業の形成過程と実施に関する要因分析:
ポストコンフリクトにおける地域住民の主体的生活改善活動に着目して

藤城 一雄 (独立行政法人国際協力機構)

その後の藤城会員他の報告では、研究対象地はエルサルバドルに移り、長期内戦後のポストコンフリクト状況において、JICA本邦研修による中米地域生活改善研修を事例として、パイロット事業実施5年後の現地調査の分析結果が報告され、おもにインタビュー結果から、パイロット事業参加者の幸福感が変容した成果等が示された。

コメンテーターの桑名会員によるコメントでは、過去の教訓を踏まえている点等が評価され、今後の展望が質問された。

また、フロアからは、事業に対するネガティブな反応がなかったのかという点が質問された。藤城会員は、その後エルサルバドルで政権交代があったため、組織全体が消滅したこと等、その後の事業の経緯を踏まえつつ、これらの質問に回答した。

第4発表:[2N09] グローバル・ナレッジとしての東日本大震災とそこからの復興(途上国に役に立つ知識とするために何が必要か?)

林 薫 (グローバル・ラーニング・サポート・コンサルタンツ代表、元文教大学教授)

最後の林会員による報告は、東日本大震災の震災以降に着目し、震災伝承施設をグローバルなレッジの観点からどのように評価できるかを探究し、その調査成果が豊富な事例とともに示された。

コミュニティ防災の軽視や失敗学の不在等の課題を示しつつ、最後に何が世界に発信すべきコアなナラティブになり得るかという展望が示された。桑名会員はこれに対して調査の方法や協働知の双方向性について質問を投げかけた。

林会員は震災伝承施設の展示方針の硬直性の問題により、双方向性が現状では困難であること等を回答した。

【総括】

本セッションでは各報告が時間を超過しなかったため、充実した討議を行うことでき、多角的に報告を検討することができた。

なかでも林会員は報告を通じて、本セッションの他の報告やプレナリーセッションにも言及され、本大会の最後を締めくくるに相応しい報告となった。

報告者:湖中 真哉(静岡県立大学)

その他

  • 一般口頭発表
  • 企画セッション
  • ラウンドテーブル
  • プレナリー、ブックトーク、ポスター発表



第34回全国大会セッション報告(ラウンドテーブル)

ラウンドテーブル


[1I01] 国際教育開発のシングル・ストーリーを乗り越える:実務者と研究者の出会い直しに向けて

  • 日時:2023年11月11日(土曜)09:30 〜 11:30
  • 会場:紀-112 (紀尾井坂ビル112)
  • 聴講人数:20名
  • 座長:荻巣崇世
  • 司会:川口純
  • ディスカッサント/コメンテーター:林研吾(国際協力機構)、泉川みなみ(国際協力機構)、坂口真康(兵庫教育大学)、関口洋平(畿央大学)
  • 第1発表:国際教育開発の哲学̶背景と展開̶
    橋本憲幸(山梨県立大学)
  • 第2発表:国際教育開発のシングル・ストーリーを乗り越える:実務者と研究者の出会い直しに向けて〜ニカラグア〜
    吉村美弥(国際協力機構)
  • 第3発表:国際教育開発のシングル・ストーリーを乗り越える:実務者と研究者の出会い直しに向けて〜マダガスカル〜
    山縣弘照(国際協力機構)
  • 第4発表:ともに「学び」・「学び直す」関係へ
    興津妙子(大妻女子大学)
  • 第5発表:国際教育開発のシングル・ストーリーを乗り越える:実務者と研究者の出会い直しに向けて〜ヨルダン〜
    山上莉奈(国際協力機構)
  • 第6発表:国際教育開発のシングル・ストーリーを乗り越える:実務者と研究者の出会い直しに向けて〜ガーナ〜
    村田良太(国際協力機構)

【総括】

本企画は、国際教育開発における実務と研究を架橋し、双方向から国際教育開発という分野を捉え直すことを目的として、特に、若手を中心とする実務者と研究者の相互理解を深めるための対話の機会として企画するものである。

2022年度から実施してきた勉強会での議論を通して、研究者側はJICAを単体のアクターと捉える傾向があり、その中で実務に携わる実務者個人の想いや葛藤に十分に目を向けて来なかったことや、逆に、実務者側は、研究者が生み出す知見や批判的検討を実務の中で十分に活かしきれていないことなど、実務(者)と研究(者)の間には「すれ違い」があることが明らかになってきた。

そこで、本企画では、この「すれ違い」の背景に、国際教育開発に関わる人々の葛藤や戸惑い、願いなどの個人的な語りが覆い隠されてきたことがあるのではないかとの仮説に基づき、これへの反省から議論を進めた。

特に、国際教育開発の中で「研究(者)」と「実務(者)」のそれぞれについて生み出されてきた、一方的で固定的なイメージ(シングル・ストーリー)を批判的に捉え、国際教育開発の語りを具体化・複数化するところから始める必要があること、また、「語られること」だけでなく「語られないこと」にも注意を払い、シングル・ストーリーが何を可能にし、何を不可視化してきたのか、議論を深めることに留意し、いわゆる研究者と実務者双方から計6名が登壇し、討論者も双方から計4名が登壇して、議論を進めた。

発表者からは、実務や研究に携わることになった背景・想いに加えて、それぞれが抱える葛藤や喜びが共有され、双方の顔を見ながら、想いをも含めて「出会う」「出会い直す」ことの重要性が確認された。

また、コメンテーターからは、やっていることの中身からは、実務(者)と研究(者)の境界は極めて曖昧なものであるにもかかわらず、それぞれが敢えて立場性を意識する/させる関係の中ですれ違いが起きているのではないかとの指摘があった。

会場からは、国際教育開発の「現場」をどう捉えていけば良いかとの指摘や、教育は明確なゴールがない(あるべきでないとも言える)分野だからこそ、「良い教育とは何か」についての対話を継続的に行なっていかなければならないのではないか、との指摘があった。

今年度より、本ラウンドテーブルのメンバーが中心となって研究部会「国際教育開発」を発足させることから、実務者・研究者の出合い直しや自分自身との出会い直しを促すために、引き続き対話を続けていきたい。

報告者:荻巣崇世(上智大学)

[1J01] 地方展開委員会主催ラウンドテーブル 地方大会から何が見えたのか?ー改めて「地方」から国際開発を考えるー

  • 日時:2023年11月11日(土曜)09:30 〜 11:30
  • 会場:紀-115 (紀尾井坂ビル115)
  • 聴講人数:00名
  • 座長:
  • ディスカッサント/コメンテーター:
*木全 洋一郎1、*佐野 麻由子2、*工藤 尚吾3、*梶 英樹4、*生方 史数5、*辰己 佳寿子6 (1. 独立行政法人国際協力機構、2. 福岡県立大学、3. 国際教養大学、4. 高知大学、5.岡山大学、6. 福岡大学)

【総括】

報告者:

[2D01] なぜ日本で「国際開発」を学ぶのか——韓国・中国の(元)留学生の経験から紡ぎ出すその答え

  • 日時:2023年11月12日(日曜)09:30 〜 11:30
  • 会場:紀-B108 (紀尾井坂ビルB108)
  • 聴講人数:25名
  • 座長:汪 牧耘(東京大学)
  • ディスカッサント/コメンテーター:大山 貴稔(九州工業大学)・松本 悟(法政大学)・劉 靖(東北大学)・キム ソヤン(ソガン大学(韓国))・Wu Jingyuan(東京大学大学院)

第1発表:留学生は「国益」になるか:行政・研究・教育現場からの考察

松本 悟(法政大学)

松本氏は、日本政府が無償資金協力で実施している人材育成奨学計画(JDS)を中心に、国際開発の日本留学が持つ特殊性と本RTの意義を述べた。

JDSは開発途上国の若手行政官が日本の大学院で英語学位を取得するのを支援し、帰国後、その国のリーダーとして開発課題の解決に寄与することを目的としている。

過去20年間で5千人以上がJDSで日本に留学した。

こうした「開発奨学生」の中心は行政官であり、修了後に帰国して開発行政と日本との橋渡しという外交的な役割が期待されている。

JDSに見受けられる「意図的な国益」に比べて、本RTは私費留学生や非行政官に登壇してもらい、留学生が自ら感じ取った日本留学の価値をその個々人のストーリーから理解する場である。

松本氏は、このような背景の違いを踏まえて、本RTにおける登壇者の語りが持つ意味を際立たせた。

第2発表:“Made in China, Recycle in Japan?”:留学の「成功例」とは何か——教育で世界を変えよう

劉 靖(東北大学)

本発表では、劉氏が「教育で世界を変えよう」という信念を持つようになった過程を振り返った。

小・中学校から、「正解」や「特権」に塗られた教育に感じた不平と違和感が、その問題関心の原点だという。

来日してから、大切な日本人の方や先生との出会いが積み重なっているなかで、劉氏は国際開発学の教育・研究活動に踏み出した。

「教育の公平」を実現するため、批判的かつ建設的な学問のあり方を国内外の機関、大学や教育現場で思索してきた。

こうした経験を踏まえて、劉氏は「国際開発に関する知の借用」から「国際開発に関する知の共有・共創」への転換が、日本で国際開発を学ぶ意味として挙げた。

その転換を引き起こす主体は、「個人」だけではなく、「地域」でもある。アジアの諸国・諸社会が互いの参照点となることで、自己理解が変容し、主体性が再構築されていく試みは、劉氏の現在進行中の研究である。

第3発表:越境者[境界人]の思い[lived experience]:イギリスと韓国から日本を包み直す[reflecting upon Japanese development studies]

キム ソヤン(ソガン大学(韓国))

本発表の冒頭で、キム氏は本RTで用いる方法論である「オートエスノグラフィ(自伝的民族誌)」の系譜を概説し、個人が自らの多面的・流動的なアイデンティティと経験を再帰的に考察・表象・構築するという行いが持つ学問的意味を浮き彫りにした。

その上で、キム氏は、1990年代から今に至り、韓国、日本やイギリスの国境を超えてきた勉強・留学・研究の経験を、その時々の時代背景と変動をかい摘みながら共有した。

日本で出会った政治生態学の面白さや地域研究者の素晴らしさ、イギリスで受けた理論・議論・研究倫理の厳しい訓練などといった越境による光の部分だけではない。深刻な人種差別と他者排除をはじめとする影もまだ境界人の心身を洗練するものとなった。

キム氏は、30年にわたって見えてきた日本の国際開発研究の可能性を踏まえながら、批判的思考の欠如や議論の断片化などとった現状に対する危機感と変革の必要性を訴えた。

【総括】

これほどまでに人を笑わせたり、泣かせたりした学会のRTはあっただろうか。発表が終わっても、会場における議論が終わらなかった。

「人材をどう育成するか」を考える前に、まずは図らずも日本に来た留学生が見てきた世界に向き合ってみることの大切さを忘れないこと。

オートエスノグラフィという一見「小さな物語」がもつ力を丁寧に用いながら、日本における国際開発研究を批判的に再構築すること。

JASIDをより多くの人が他者との共創の中で自らの足場を見つめ直す場になること。

これらの貴重な課題を示してくださった発表者、コメンテーター、司会と参加者の皆様に深く御礼申し上げたい。

報告者:汪 牧耘 (東京大学) 

[2E01] Well-being, Economics Policy Making and Sustainable Development Goals (SDGs) (English)

  • 日時:2023年11月12日(日曜)09:30 〜 11:30
  • 会場:紀-B112 (紀尾井坂ビルB112)
  • 聴講人数:15名
  • 座長:石戸 光(千葉大学)
  • ディスカッサント/コメンテーター:Arthur Grimes(Victoria University)、小林 正弥(千葉大学)

第1発表:Using wellbeing concepts to enhance international development

Arthur Grimes (Victoria University of Wellington)

千葉大学の研究プロジェクト「公正社会研究の新展開-ポストコロナ時代の価値意識と公共的ビジョン」(代表:水島治郎・千葉大学大学院社会科学研究院教授)の招聘および共催により、ウェルビーイングと経済政策策定の分野における世界的な経済学者(アーサー・グライムス博士、Motu Economic and Public Policy Research Trustシニアフェロー、ビクトリア大学ウェリントン校経済学部非常勤教授、ニュージーランド・ワイカト大学経済学部名誉教授)を招聘し、主観的幸福度、客観的経済政策(国家予算として財政的価値が配分される)、持続可能な開発目標(SDGs)の相互関係について、ウェルビーイングを考察した哲学・経済学者の系譜や、ウェルビーイング指標の低下が米国におけるトランプ政権の誕生や英国のEU離脱をある意味で予測できる指標であったこと(ただしこの分析自体は事後的なものであるが)、ウェールズを含む各国のウェルビーイング関連政策の有効性、などの側面から学際的に発題していただいた。

第2発表:Comment on “Using wellbeing concepts to enhance international development”

小林正弥(千葉大学)

アーサー・グライムズ教授からの発題を受けて、開発における新たなアプローチとして、どのような「開発」を先進国においても目指すべきか、センのケイパビリティアプローチの特質、客観・主観指標、悲惨や貧困と比較してのウェルビーイング研究の特質、政治哲学およびコミュニタリアニズム、といった概念の差異および関連性について質疑がなされた。

また「多次元的アプローチ」が有益である点、将来世代に関する目配りを行うウェールズの幸福度・公共政策を評価する点についての質疑応答が行われた。

特に多次元的なウェルビーイングを考慮していくことは、低所得のみならず、高所得国においても、生活の質の観点から重要な「開発」の課題である点が提起された。

第3発表:ウェルビーイング、公共政策およびSDGsの関連性

石戸 光(千葉大学)

出席の方々も交えてラウンドテーブル(双方向的な討論)を発表者(石戸)の司会進行により行った。

フロアからの質疑やコメントとして、「経済研究者の方がウェルビーイングを主眼として研究されていることに、研究分野の広がりを感じた」、「韓国は所得的には上がったが、幸福度はむしろ下がっているのが体感であり、この種の研究は目の開かれるものであった」「アフリカではパンとバターなどの物質的な充足が依然として重要であるが、やはりウェルビーイングの低さもあって、両者は相関している」「南米の所得水準とウェルビーイングには、また独特の特徴があるようにも思われる」など種々のコメントが寄せられた。ウェルビーイングへの文化的影響と開発の関連なども重要な論点であることが討議された。

【総括】

冒頭にて、アーサー・グライムズ博士が、公共政策に関する実務との結びつきが強い著名なエコノミストであり、2003年から2013年までニュージーランド準備銀行総裁を務めたことに言及し、その後、同氏の研究テーマがウェルビーイングおよび公共政策についてのものになっていった点を紹介した。

この経歴の変遷が参加者にとって斬新なもので、ラウンドテーブルにおける発題では、開発を問題意識の根底に持ちつつも、主観的指標と客観的指標の相互関係について議論がなされ、続く質疑も活発で有意義なものであった。

報告者:石戸 光(千葉大学)

[2H01] アジアにおける子どもの教育と健康

  • 日時:2023年11月12日(日曜)09:30 〜 11:30
  • 会場:紀-108 (紀尾井坂ビル108)
  • 聴講人数:00名
  • 座長:
  • ディスカッサント/コメンテーター:
*高柳 妙子1、*日下部 達哉2、*藤崎 竜一3 (1. 早稲田大学、2. 広島大学、3. 帝京大学)

【総括】

報告者:

[2J01] ソーシャルビジネスにおける研究の貢献可能性:インドの離島エリアにおける e-Healthビジネスの事例から

  • 日時:2023年11月12日(日曜)09:30 〜 11:30
  • 会場:紀-115 (紀尾井坂ビル115)
  • 聴講人数:20名
  • 座長:狩野剛(金沢工業大学)
  • ディスカッサント/コメンテーター:佐藤峰(横浜国立大学)・内藤智之(神戸情報大学院大学)

第1発表:ソーシャルビジネスにおける研究の貢献可能性

功能聡子(ARUN合同会社)・岡崎善朗(早稲田大学)・狩野剛(金沢工業大学)

発表者の3名から、インドのiKure社の概要、共同研究の概要といった背景説明があった。

そのあと、引き続き発表者より、インドにおける医療機器の現状や新興国・途上国での医療機器ビジネスの難しさなどについて解説があった。

そして、ソーシャルビジネスにおける研究の貢献可能性として、工学系研究者・民間企業・投資家・社会科学系研究者・現地大学・住民という各ステークホルダーの視点から見える共同研究における貢献可能性について説明があった。

【総括】

発表の後、討論者や会場の参加者からの活発なコメント・質問が行われた。今後の共同研究推進に向けた主な助言は以下の通り。

  • 現地の視点として医療サービスを提供するiKureからの情報を主としているようだが、エンドユーザの声をきちんと拾い上げるべき。例えば、遠隔医療への抵抗感、医者・看護師による信頼の違い、文化・宗教的なハードルなどについてきちんと情報を集めるべき。
  • 研究による外国人・外国資金の介入によって、ソーシャルビジネスの持続性に悪影響が出ないように気をつけた方が良い。特にこの共同研究の出口はどうなるのかと言った点は事前に先方とも意識合わせをしておく必要があると考えられる。
報告者:狩野剛(金沢工業大学)

[2C02]「持続可能性」の多義性を問う-言説分析、認識調査、評価の先に何を見るか

  • 日時:2023年11月12日(日曜)12:45 〜 14:45
  • 会場:紀-B104 (紀尾井坂ビルB104)
  • 聴講人数:30名
  • 座長:山田肖子(名古屋大学)
  • ディスカッサント/コメンテーター:木山幸輔(筑波大学)・工藤尚悟(国際教養大学)
Questioning the polysemy of “sustainability”: What to Look For Based on Discourse Analysis, Perception Surveys, and Evaluations

第1発表:「持続可能な開発」は誰にとってのどのような課題なのか:フィリピン、ガーナでのオンライン質問票調査からの試論

山田肖子(名古屋大学)・島津侑希(愛知淑徳大学)

この報告に先立つ、山田による本セッションに関する説明においては、質問紙調査による演繹的モデル作りと、学校や農村でのフィールドワークによる帰納的知見とを用いて、「持続可能性」言説をめぐる多様なリアリティを明らかにするという本セッション参加者が今後目指す目的と、国際開発学との接合という課題が示された。

その後、山田・島津報告においては、質問調査をもとに「持続可能性」概念を基軸として行われた批判的言説分析の報告がなされた。

そこでは、持続可能性に関する人々の認識において、いくつかの指向が存在することが報告された。

フロアとの議論では、本研究が持ちうる意義として、持続可能性言説がトップダウン的政治性をもちつつ同時に拡散し定着していく動態との関係を明らかにしうること、西欧近代的な認識論・存在論を問い直しうることなどが指摘された。

第2発表:「持続可能な開発」を評価するとはどういうことなのか

米原あき(東洋大学)

米原報告と次の西川報告は、帰納的知見を用いるものである。米原報告は、持続可能性と関連し実施される評価について考察を行う。

すなわち、タイにおけるコミュニティ開発評価と日本のESDに関する評価である。

報告では、そうした評価において用いられる説明責任・エビデンス・合理性について、現場の当事者とともに協創される評価指標にもとづくそれらの像の可能性が指摘された。

こうした協創においては、共通認識をどのように、いかなる主体が形づくっていくことができるのか、コメント・質問がなされた。

これは、当事者の観点が、同じ人間であっても、地球市民、学校の生徒等、多様なものでありうることとも関係する。

第3発表:食と農のシステムの持続性のなにが厄介な問題か?

西川芳昭(龍谷大学)

西川報告では、食と農をめぐる持続性に関する議論において、人間中心主義が前景にあったことが指摘された。

そして、むしろ多様なアクターとの萃点の中で、むしろ評価になじまない当事者のまなざし、例えば「種をあやす」といった農業従事者の言葉をどのように位置付けるか、といった課題が提起された。

こうした議論について、例えば当事者の視点をむしろ規範的に固定化してしまうおそれについて提起がなさたり、研究者による価値判断が機能を果たす位置等について、質問がなされたりした。

【総括】

セッション全体に共通するコメントとして、「共創/協創/対話」といったモデルにおいて、研究者と調査対象者の望ましい関係のあり方、あるいは持続可能性概念に対する研究者のポジショナリティが問われた。

あるいは、研究によって明らかとなる人々の持続可能性をめぐる認識・世界観と、研究者の価値に関する探究の関係が問われた。

セッションでは、多様な学術領域および実務家からの本研究への観点が示されるとともに、参加者がもつ持続可能性の言葉に対する態度についても言葉が示された。

こうしたことを通じ、本研究の意義について考察が深められ、今後の研究の進展に大きな意義があったと思われる。

報告者:木山幸輔(筑波大学)

[2D02] 国際開発(学)の「埋葬」と「再生」―世代を超えた、グローバルなサステナビリティの確保を射程に入れて―

  • 日時:2023年11月12日(日曜)12:45 〜 14:45
  • 会場:紀-B108 (紀尾井坂ビルB108)
  • 聴講人数:00名
  • 座長:
  • ディスカッサント/コメンテーター:
*佐藤 峰1、*小林 誉明1、*木全 洋一郎2 (1. 横浜国立大学、2. 国際協力機構)

【総括】

報告者:

[2E02] 国際協力NGOの組織基盤強化支援におけるマッチ・ミスマッチ

  • 日時:2023年11月12日(日曜)12:45 〜 14:45
  • 会場:紀-B112 (紀尾井坂ビルB112)
  • 聴講人数:不明
  • 座長:中山雅之(国士舘大学大学院)
  • ディスカッサント/コメンテーター:東郷 琴子(パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社)、松元 秀亮(国際協力機構)、篠原 大作(特定非営利活動法人日本ハビタット協会)、田口 由紀絵(合同会社 コドソシ)、楯 晃次(株式会社EMA)

国際協力NGOの組織基盤強化支援について、表面的には見えないマッチ・ミスマッチが存在するのではないかと、支援組織、支援を受ける組織、評価・伴走者の3者の視点から議論をする企画であった。

まずコーディネーターの中山が組織とは何か、組織基盤強化とは何かについて、経営学の視点で整理した。

その後、報告、パネルディスカッション、フロアからのコメントの3パートで進められた。

報告

楯が、これまで行われてきた支援制度を研修型、助成金型の2つに分け、年表に沿い、その変遷を報告した。

研修型は1987年前後から開始されたが、組織基盤強化に直接資する組織マネジメント研修やリーダーシップ研修などは、2004年からの開始となり、2011年頃までに多く行われ、その後はファンドレイジング研修に変化した。

助成金型では、1993年に初めて助成制度を設けた組織が出たものの、その後助成金制度は増えず、数団体にとどまっている現状を報告した。

こうした変遷の中で、支援を行う組織として、パナソニック オペレーショナルエクセレンスの東郷、国際協力機構の松元が、支援を受ける組織として日本ハビタット協会の篠原が、評価・伴走者コドソシの田口が、 (1)組織基盤強化/支援に関する取組、(2)支援をする組織/支援を受ける組織への要望、(3)感じ考えていること、の3点について報告した。

支援を行う組織として東郷は、社会変革における組織基盤強化の重要性、また組織基盤強化の取り組みが組織文化として定着していくことの意義、そしてそれらノウハウが業界全体に共有・浸透されることの重要性を報告した。

一方で、セクター全体の成長を促進するために、どの層を応援することが効果的かまだ定まっていないとの課題を提示した。

続いて松元は、JICAとしての支援制度を説明した後、支援を受ける組織に対して、組織同士の繋がりと学び合いによって他組織と自組織との比較を通じた気付きの重要性を述べた。

制度を整えるだけでなく、組織自らが組織基盤強化の必要性・重要性を感じて取り組むモチベーションがなければ、制度があっても組織基盤強化に資さないのではといった問いを提示した。

支援を受ける組織として篠原は、支援を行う組織に対して、より効果的なものにする為には、結果だけでなく強化プロセスを重要視すべきであることを強調した。その為強化のための組織再構築のモデルケースを提示することが望ましいと述べた。

最後に評価・伴走者の田口からは、支援を行う組織に対しては、業界の現状と外部環境の変化を把握し、業界がどうなれば世界が良くなるのかという視点をプログラムに反映することの重要性が述べられた。

支援を受ける組織には、環境が変化する中で、組織変革に取り組むことに対して組織全体で合意形成をとることが、組織基盤強化の一歩目であると報告をした。

パネルディスカッション

報告を踏まえ、中山がコーディネーターとして、報告者が討論者となり、パネルディスカッションを行った。

特に組織基盤を強化するにあたって、組織内部での合意形成と組織基盤強化に関わる三者の緊密な連携について多くの議論がなされた。

組織内部での合意形成については、組織の根幹に関わる課題と向き合うため、多くの困難や痛みを伴うこともあり、その認識を組織全体が事前に共有・合意し、取り組まなければ、本質的な組織基盤強化への取り組みは難しいことが強調された。

また三者の連携は支援制度への申請前からコミュニケーションを図るべきであり、また実施前・中・後が有機的に連結された一連モデルケースを整備することが重要であることが合意された。

フロアからのコメント

組織基盤強化を考える上でも資金調達の重要性を感じたといった感想が述べられた。

そして組織の活動分野や特徴に合わせた強化方法や成長の特徴を整理する必要があるのではないか、さらに、組織の核となるミッション・ビジョンといったアイデンティティを明確化し継承することが組織の基盤強化には不可欠であり、具体的にどのように取り組むべきか改めて考えるきっかけとなったというコメントがなされた。

【総括】

組織基盤強化に関して、支援を行う組織、支援を受ける組織、評価・伴走者という異なる立場である者が一堂に会するということが、大きな意味をもった。

そして、今後NGOが継続して組織基盤を強化していく上で必要となる視点や支援制度の在り方について、率直な意見が開示され、開かれた議論が成されたことは、今後の支援制度設計、そして本業界の成長に大きな意義を見出すことが出来る成果となった。

報告者:楯晃次(株式会社EMA)

[2H02] メイキング・オブ・開発協力大綱:大綱はどう作られ、どこに向かうのか

  • 日時:2023年11月12日(日曜)12:45 〜 14:45
  • 会場:紀-108 (紀尾井坂ビル108)
  • 聴講人数:00名
  • 座長:
  • ディスカッサント/コメンテーター:
*山形 辰史1、*河野 敬子2、*原 昌平3、*井川 真理子4、*鈴木 千花5 (1. 立命館アジア太平洋大学、2. (一社)海外コンサルタンツ協会、3. 国際協力機構、4.(株)コーエイリサーチ&コンサルティング、5. 持続可能な社会に向けたジャパンユースプラットフォーム)

【総括】

報告者:

[2O05] JICA国際協力事業における評価の枠組みとグローバル危機について

  • 日時:2023年11月12日(日曜)12:45 〜 14:45
  • 会場:紀-412 (紀尾井坂ビル412)
  • 聴講人数:00名
  • 座長:佐藤 真司(独立行政法人国際協力機構)
  • 指定討論者:伊藤  晋(新潟県立大学)

第1発表:JICA事業評価の概況と最新課題-紛争影響国の事業評価の視点-

阿部 俊哉(独立行政法人国際協力機構)
山口 みちの(独立行政法人国際協力機構)

南スーダン、フィリピン(ミンダナオ)の事例を交え、紛争影響国の事業での評価の難しさとともに、「紛争影響国・地域に留意した事後評価の視点」を整理・公開していることを紹介した。また、外部要因の考え方の整理が重要であることを報告した。

指定討論者から、①感染症、経済危機、政権交代等で事業に影響が生じた際の評価での対応、②騒乱等の影響が事業実施段階に発生し、事業計画と異なる対応が生じた場合の評価の考え方について質問があった。

JICAから、①事業形成時には想定困難で事業期間中に対応困難な事象が発生した場合、外部要因と整理するが、一律の判断基準を設けることは困難なため、事業が受けた影響の記録を残すことが重要であること、②紛争影響国での事業は、案件計画当時に治安悪化等のリスク想定及びその対策の実施内容、計画時の想定を超える治安悪化等が事業に与えた影響、事業継続に向けた対応等を事後評価時に確認することを説明した。

第2発表:新事業マネジメント(クラスター事業戦略)でのモニタリング・評価の枠組み検討について

宮城  兼輔(独立行政法人国際協力機構)
菅原  貴之(独立行政法人国際協力機構)

JICAグローバル・アジェンダ(JGA)・クラスターの概要と、クラスター単位でのモニタリング・評価の試行案を紹介した。また、クラスター導入を踏まえたJICAの評価6項目の適用項目、確認時の重みの分散案を説明した。

指定討論者から、①クラスター外の技術協力への評価6項目の適用方針、②技術協力と資金協力の取扱が異なる理由、③クラスター単位での成果検証方法について質問があった。

JICAから、①評価6項目の適用項目や重みの分散は試行対象クラスター及び事業のみ、試行結果ではクラスター外の事業に適用する可能性がある、②技術協力は活動の過程でアウトプット、アウトカムが発現するが、資金協力は事業完了時にアウトプットが生成され、事業完了の一定期間後にアウトカムが発現するのが主流という違いを踏まえている、③クラスターは、技術協力以外に資金協力や民間連携事業、他機関とのプラットフォーム活動の成果も確認対象になること、を説明した。

【総括】

以下のような質問・コメントがあった。JICAからは、JGAとクラスターが目指す方向性は、今次大会のテーマである「複合的危機下における連帯と共創」とも通ずるものであり、指摘の点も踏まえ、試行プロセスを通じてよりよい制度設計をしていきたい旨回答。

  • 多様なステークホルダーを巻き込むクラスターは、JICA単体で事業監理が可能なのか。
  • EBPMならぬPBEM (Policy Based Evidence Making)にならぬようすべき。
  • IMM(Impact Measurement and Management)の発想が重要である。
報告者:佐藤 真司(独立行政法人国際協力機構)

[2P01] 2023 JASID 世銀協議―世界銀行 ・ 日本政府 ・ 住民を繋ぐ者たち―

  • 日時:2023年11月12日(日曜)12:45 〜 14:45
  • 会場:紀-413 (紀尾井坂ビル413)
  • 聴講人数:15名
  • 座長:玉村優奈(東京大学)
  • ディスカッサント/コメンテーター:大芝亮(広島市立大学広島平和研究所)、松本悟(法政大学)

第1発表:文化運動としての愛知用水ー仲介者「久野庄太郎」を中心にー

柴田 英知(歩く仲間)

2021年9月30日に通水60周年を迎えた愛知用水は、第二次世界大戦後の、日本初の地域総合開発事業ともいわれ、また世界銀行の借款事業としても知られている。

愛知用水の事業推進の内部構造を、ソーシャル・イノベーション論の枠組みで読み解き、「文化運動としての愛知用水」という観点から、発願者であり篤農家の「久野庄太郎」の開発思想、久野らを支えた官民、皇室にまで及ぶネットワークを中心に、地域開発事業をめぐる仲介者の協働ととらえる視点を提示した。

愛知用水の事例で何がなかったら失敗していたか、成功と失敗を決める事業評価の根本的な在り方(松本)、開発コミュニティはどのようにつくられるか(大芝)がコメントされ、愛知用水が他の対日融資と比べても特異な事例であることを柴田氏は強調した。

第2発表:日本のNGOと世界銀行・財務省との対話と課題

田辺 有輝(JACSES)

田辺氏は、世界銀行と融資事業地の住民らとの仲介的な存在である「財務省・NGO定期協議」について報告した。その中で、大芝氏による過去の外部評価が紹介され、信頼関係の醸成が財務省とNGOの双方にとっての成果として挙げられた。

その後の20年間の考察として、財務省内の人事異動による知識の蓄積や逐次議事録の公開が協議を発展させたと自己評価した。

また、愛知用水の比較事例として、世界銀行が1960年から1970年に「緑の革命」として推進したパキスタンの灌漑事業が深刻な塩害を引き起こした問題を取り上げた。塩害対策の事業が新たな環境社会被害を引き起こし、それが世界銀行のインスペクションパネルにかけられ、5つの政策違反が指摘された。

愛知用水という「図らずも」成功した農業事業がある一方で、「図らずも」問題の連鎖を引き起こした農業事業もあった。

コメンテーターからは、対日融資と現在の世銀事業との異同(松本)や、協議に参加するNGOとそうでないNGOとの線引き(大芝)などについてコメントがなされた。

第3発表:2023 JASID – 世界銀行協議―世界銀行・日本政府・住民を繋ぐ者たち―

米山 泰揚(世界銀行)

米山氏は、愛知用水を主管する農林省が3省と共管し、基本計画を5省庁と協議し、さらに実施計画は3県と協議したうえに農民の意見提出権が明記されていることは当時としては極めて珍しいと指摘した。

また、米山氏が財務省職員として関わったNGOとの定期協議の意義を評価し、住民等の関係者の視点を通じて事業の多面性を認識したこと、開発政策を巡る自由闊達な議論によって「開発コミュニティ」が形成されたこと、国際開発に携わる行政官の「教育」になったことを挙げた。

世界銀行の最新の動向として、気候変動・パンデミック・政情不安な脆弱国などに対処する国際公共財の供与を強化し、環境・社会配慮原則を緩めることなく案件組成に要する時間の大幅短縮を目指すこと、今後10年で1,500億ドルの融資を積み増すことなどを説明した。

コメンテーターからは、世界銀行の予算増額・時間短縮とAIIBや中国との繋がり(大芝)や市民社会と世界銀行の間を財務省が仲介することの煩雑さ(松本)について質問が出され、米山氏からは、AIIBは競争相手ではない点や、市民社会が国会を通じて問題提起するのと同時に、財務省との定期協議の場において掘り下げた議論を行うことで、実質的な改善に繋がるなどの認識が示された。

【総括】

世界銀行の対日融資である愛知用水と、1990年代以降の日本の財務省とNGO間の世銀に関する協議を取り上げ、仲介者の役割と組織を超えた知の蓄積の重要性を浮き彫りにした。

現在、世界銀行は融資額を増加する一方で、融資審査の期間を短縮する方針を打ち出している。

本RTが、現場と世銀を繋ぐ仲介者の活動をどのように活性化できるか、新たな制度的枠組みづくりと過去の経験の援用の限界と可能性といった新たな課題を提起したといえる。

さらに、本RTが今後の国際開発学会で、世界銀行を筆頭に国際開発金融機関への議論と関心が高まるきっかけとなることを期待する。

報告者:玉村 優奈(東京大学)

[2C03] 外国人技能実習制度を通じた技能移転をめぐる課題と可能性ーベトナムにおける社会的ニーズと技能実習生の生活戦略

  • 日時:2023年11月12日(日曜)15:00 〜 17:00
  • 会場:紀-B104 (紀尾井坂ビルB104)
  • 聴講人数:20名
  • 座長:生方史数(岡山大学)
  • ディスカッサント/コメンテーター:佐藤寛(開発社会学舎)

第1発表:ベトナム人元技能実習生における技能移転と将来設計

加藤丈太郎(武庫川女子大学)

コメント:「技能移転」を研究することは技能実習制度を擁護することにもつながるのではないか。

応答:本研究は、制度の是非を超えて、移民個人に制度がどのような影響を及ぼしたのか、その内実を明らかにすることを目指している。

コメント:分析枠組みにcapabilityを用いているが、移住と開発の研究分野ではaspirationも合わせて議論されている。元技能実習生のaspirationも考える必要があるのではないか。

応答:たしかにaspirationによって事象を説明し得る可能性がある。今後ぜひ取り入れていきたい。

コメント:研究方法は、31名へのインタビューとあるが、どのように調査対象者を確保したのか。

応答:データの偏りを防ぐために、在ベトナムの日本語通訳者、日本のベトナム寺院の住職、カトリック教会のシスター、自らの前の研究の調査対象者への再コンタクトなど、複数のルートをたどり調査対象者を集めた。結果的に相当数の方へのインタビューの実現につながった。

第2発表:ベトナムの農業をめぐる社会的ニーズと技能実習生の生活戦略としての技能移転

二階堂裕子(ノートルダム清心女子大学)

コメント:日本の農業分野で就労し、農業の技術を学んだとしても、技能実習生の母国の自然条件や地理的条件が異なるため、必ずしもその技術を活用することができるわけではないのではないか。

応答:狭い意味での技術ではなく、作業遂行のための能力、たとえば、農業経営の考え方や方法を身につけることで、それを母国で活用することは可能であると思う。

ただし、日本社会がもつ知識や技能を、技能実習生の母国のそれらよりも「優れたもの」と安易に位置づけ、「修得するに値するもの」として一方的に「押し付ける」といった姿勢があるとすれば、おおいに検討の余地があると考える。

そのためにも、送出国でどのようなニーズがあるのか、そのニーズに応えうる技能とは何かを吟味する必要がある。

第3発表:介護分野におけるベトナムへの技能移転の課題と可能性:「移民力」の視点から

比留間洋一(静岡大学)

コメント:Cさん(将来故郷で介護サービスを提供すべく、現在、日本在住ベトナム人高齢者に介護ボランティアを試行)は、ベトナムでは大卒、日本では(技能実習生ではなく)留学生(現在、介護福祉士)。

ここからも示唆されるように、調査対象者を技能実習生に限定しないほうがよいでは。また、(コミュニティのチェーンマイグレーションではなく)一人の個人によるものなので、故郷のコミュニティ開発への影響は限定的になるのではないか。

応答:確かにCさんのような介護職者はまだ少ない。しかし、介護ボランティアにはCさんの同僚のベトナム人介護職者(元技能実習生を含む)が自ら進んで参加している点で可能性が感じられる。

「上からの」日本式介護の輸出ではなく、「移民力」(故郷への思いと実践)を基盤としたベトナム人による「下からの」試みのほうが持続性の面で期待できるのでは。以上から、このような事例に今後とも注視していく必要がある。

【総括】

政府の有識者会議より、近日中に、技能実習制度に代わる新しい外国人労働者の制度が示される見込みである。

今年10月に立ち上がった「移住と開発」研究会では、こうした動向をふまえつつ、日本社会が外国人労働者から「選ばれ続ける」ための道筋を検討していきたい。

報告者:二階堂裕子(ノートルダム清心女子大学)

[2D03] SDGsを追い風とした国際協力人材の確保とキャリア形成~RiskとOpportunity~

  • 日時:2023年11月12日(日曜)15:00 〜 17:00
  • 会場:紀-B108 (紀尾井坂ビルB108)
  • 聴講人数:30名
  • 座長:佐藤仁(東京大学)
  • ディスカッサント/コメンテーター:山田肖子(名古屋大学)・末森満(国際開発ジャーナル社)

第1発表:国内外の社会課題解決を結ぶ国際協力キャリア

江崎千絵(JICA)

  • JICAを取り巻く国際協力人材の現状と課題
  • JICA内外の開発協力人材の養成・確保に向けたビジョン
    (多様化・複雑化・変化する世界規模の(開発途上国の)課題に、機動的・革新的に対応するために、活力ある魅力的な開発協力人材市場を実現する)
  • 職業としての国際協力の認知向上
  • 越境支援、人材の還流
  • 個人にとっての魅力的なキャリアアップと業界全体での共創促進の方策とは?

本当に優秀な人を、国際協力人材として活躍してもらえる状態にしておくかが大事なのではないか、そのためにも待遇の工夫や地位向上への努力も必要だろう。

第2発表:「開発コンサルティング人材の確保とキャリア形成」

河野敬子(ECFA)

  • 開発コンサルタントの年代構成
    (20代と70代の増加、30代の減少)
  • 高齢化と中堅層の確保
  • 70代のプロジェクトマネジャーの増加
  • 課題と対応
    (ジェネレーションギャップ、働きやすさ、報酬、魅力発信、参入障壁対策)

開発コンサルタントは新規マーケットを目指しているのか?日本のコンサルがグローバル競争に入っていけるのか?などの質問があった。

第3発表:国際協力人材育成における大学の役割」

須藤智徳(立命館アジア太平洋大学)

  • 国際開発に関する学生アンケート結果
  • サステナビリティ学科の学生8割が国際開発に関心あり
    (ほとんどが授業をきっかけに関心)
  • 将来仕事として関わりたい人は6割
    (JICA等政府機関が人気)
  • 高校までの動機付けをどう作るか
  • 大学で国際開発教育の動機付けをどう強化するか

国際開発の仕事に関心がある学生に対して、新卒採用の門徒が狭いといった受け入れ側の課題も多く、学生からはハードルが高い印象。専門性や経験も具体的に何をといった提示があるとキャリア形成に役立つといった学生側からの声も聞かれた。

【総括】

江崎氏、河野氏、須藤氏の順にそれぞれの立場で感じている国際協力人材についての現状や課題について発表を行った後、討論者末森氏からは、①国際協力とは何かを明確にする、➁国際協力の担い手(国際協力人材)はグローバル人材である、③働く環境を改善する、④人材確保に対しターゲットを大学生に加えて中高生に拡大するといった指摘があった。

討論者山田氏からは、「国際開発学」「国際開発業界」という言葉が暗黙のうちに作ってしまっている職業上の参入障壁と″業界人”の思考枠組みをいかに変えるか?テーマとしては関心がある、既に関わっているという層といかにつながるか?といった点について、有機的につながり続けるための仕掛けにイノベーションが必要との指摘があった。

今後、学生を含めた20代、30代をターゲットとしたイベント等を検討していくべく、学生に協力を呼び掛けた。

報告者:河野敬子(ECFA)

[2H03] SDGs Reexamined-Lessons Learned from Afrian Experience (English)

  • 日時:2023年11月12日(日曜)15:00 〜 17:00
  • 会場:紀-108 (紀尾井坂ビル108)
  • 聴講人数:45名
  • 座長:Masato Noda (Ibaraki University)
  • ディスカッサント/コメンテーター:Woury M. Diallo (ex. World Bank)

第1発表:Aid Complementarity: Theory and Practice in Africa

Takeshi Daimon-Sato (Waseda University)

In this presentation, the author presented on aid complementarity in Africa. Main message can be summarized as follows: 1) competition is good, but coordination failure often results in costs for all parties. 2) there is a case for grand coalition for Win-Win-Win case, 3) It may be difficult to find a convergence for the Belt and Road Initiative (BRI) and Free and Open Indo-Pacific (FOIP) – but there exists a more realistic possibility for collaboration between FOCAC and TICAD for targeted topics. 4) in selected fields such as medical-public health/educational fields (example in Mauritania), there are some good practices in support of complementarity thesis, while transportation/energy infrastructure – there seems to be most difficult challenge to overcome. It is important to grasp the concept of complementarity with some gradation on the basis of a) Reciprocal Complementarities – South-South Cooperation, Equal Partner Cooperation / Interdependence, b) One-Sided Complementarities – Center-Periphery Relations (Growth Center vs Supplier Countries) / Dependence.  Further, the analysis could be broken into sectoral level (input-output inter-industry, or intra-industry) complementarities.  Also, multidimensionality of complementarities could apply to resources (skilled labor, capital), institutions, hardware and software (infrastructure and management system).

第2発表:Halfway of SDGs to 2030

Masato Noda(Ibaraki University)

SDGs are the global development goals 2016-2030. They are on halfway in 2023. They are required to reexamine based on the COVID-19 pandemic. Analysis of its impacts on SDGs requires multidimensional approach regarding to the three dimensions of sustainable development; economy, society and environment. The pandemic highlights vulnerability, especially people and are that left behind. COVID-19 pandemic is a global thread and crisis of human security. It is necessary to “rebuild our economies sustainably and inclusively.” “Remember, we are in this together,” “No one will ever be truly safe until everyone is safe” (Mohamed, A.J). SDGs motto, “No one left behind” is not just ideal but should be in practice. For post/with Corona society, it necessary to accelerate SDGs through human security approach in Anthropocene.

第3発表:Rely on China? Africa’s Path to SDG 10

Christian S. Otchia (Nagoya University)

This research explores the influence of Foreign Direct Investment (FDI) on regional inequality in Ghana, addressing the spatially imbalanced distribution of FDI, particularly in urban areas. Using a regional inequality index derived from predicted GDP, the study employs a panel data fixed effect model spanning 1994 to 2020 across ten regions, providing a nuanced regional-level analysis. Notably, FDI is found to significantly reduce regional inequality, highlighting the role of Ghana’s absorptive capacity. The study underscores the positive impact of FDI in the manufacturing sector, advocating for tailored policies to attract such investments to foster equitable regional development. Moreover, Chinese FDI is identified as a key contributor to reducing regional disparities, aligning with policies emphasizing infrastructure and employment. The research offers policy recommendations to optimize FDI distribution, strengthen bilateral relations with positive contributors like China, and align strategies with SDG 10. Emphasizing the non-linear relationship between FDI and regional inequality, the study calls for an adaptive approach to maximize benefits while mitigating potential disparities, emphasizing the manufacturing sector’s potential and aligning strategies with the African Continental Free Trade Area.

第4発表:China-Africa Cooperation and SDGs

Naohiro Kitano (Waseda University)

In this presentation, the author presented on the recent China-Africa relations and China’s efforts to make use of the SDGs to expand its influence, as well as challenges on the African side. China has been hosting the Forum of China Africa Cooperation (FOCAC) as a platform for enhancing relations with Africa. In 2021, for the first time, the ministerial conference adopted the long-term plan for FOCAC. The three-year plan shifted its focus from infrastructure to health, the digital economy, and human resource development. As for infrastructure, China has become more cautious about providing new loans as the debt problems of developing countries, including African countries, have worsened. A new initiative emerged in 2021: the Global Development Initiative (GDI), which provides a global platform hosted by China to accelerate the achievement of the SDGs. the GDI seems to be more of a foreign policy to increase the influence on global south rather than a development policy. Chinese government announced funding for the GDI, but not on the scale of the Belt and Road Initiative (BRI). From the developing countries’ perspective, taking Zambia as an example, good leadership and governance is the key to managing relations with China.

第5発表:China’s Party-State Relations in Africa

Takashi Nagatsuji (Waseda University)

How does the Communist Party of China (CPC) interact with the Chinese Ministry of Foreign Affairs (MFA)? Previous studies on party-state cooperation of China point out a clear division of work between the party and the state. However, in reality the divisional cooperation between the CPC and the MFA is blurry. My research untangles China’s party-state relations in Africa by constructing and analyzing original datasets covering the activities of both the International Department of the CPC Central Committee (IDCPC) and the MFA. The IDCPC is an organ in charge of the CPC’s external work. On the one hand, my research shows that party-state cooperation is not strong in terms of geographically selecting their partners and that their cooperation is weak even in the Belt and Road Initiative (BRI). On the other hand, my research shows that the IDCPC aligns with the MFA in their main activities, illustrating two types of party-state cooperation: Party-Led Cooperation and State-Led Cooperation. My research implies that China does not have one overarching Africa Strategy and the IDCPC and the MFA has its own Africa Strategy. This research contributes to the literature on China-Africa relations and advances understanding of the relations between political parties and state organizations.

【総括】

This round table is the kickoff session of new JASID ‘SDGs Re-examined’ Research Group. It aims to develop the research on SDGs post/with Corona era toward 2030, as the successor of precedent SDGs research groups of JASID: on ‘Sustainable Development and SDGs’ and ‘Resilience of Development and SDGs’. The book, Noda, M. ed. (2023) ‘SDGs Re-examined: Post/With Corona and Human Security’ is a fruit of them. Based on these, the research group plans to 1) conduct case studies of the regions, such as Africa, Asia and Pacific, and Latin America, 2) organize academic sessions and publish articles and books in English.

報告者:Masato Noda (Ibaraki University)

[2J03] 大国間競争の時代に ODAで「普遍的価値」を促進することの意味を問う

  • 日時:2023年11月12日(日曜)15:00 〜 17:00
  • 会場:紀-115 (紀尾井坂ビル115)
  • 聴講人数:00名
  • 座長:
  • ディスカッサント/コメンテーター:
*志賀 裕朗1、*福岡 杏里紗3、*荒井 真紀子2、*小林 誉明1(1. 横浜国立大学、2. JICA研究所、3. デロイトトーマツコンサルティング)

【総括】

報告者:

[2O06] 人口減少社会における創造的復興とは何か?

  • 日時:2023年11月12日(日曜)15:00 〜 17:00
  • 会場:紀-412 (紀尾井坂ビル412)
  • 聴講人数:20名
  • 座長:松岡俊二(早稲田大学)
  • ディスカッサント/コメンテーター:中村勝則(秋田県立大学)、工藤尚悟(国際教養大学)

第1発表:東日本大震災からの「ポスト復興」のまちづくり:岩手県陸前高田市の事例

木全洋一郎(JICA北海道帯広)

木全さんの陸前高田市の事例報告、戸川さんの紫波町オガールプロジェクトの事例報告、島田さん・辻さん・松岡の福島浜通り復興の事例報告は、まちづくりのビジョンやコンセプトの形成プロセス、公民連携(PPP)のプロセス、よそ者(外部者)と地域社会内の人々との関係、社会イノベーション創造のための知識創造や資源動員のあり方、政策形成と「対話の場」=「学びの場」の関係(科学と政治と社会の協働)のあり方など、さらに幾つかの基本的な評価軸で比較研究すると一層興味深い研究成果が生まれ、実践への教訓が明確になるように思います。

引き続き調査研究を続けたいと思います。

第2発表:多様な主体が地域で学習する場の形成を通じた地域再生に関する一考察:紫波町オガールプロジェクトの事例

戸川卓哉(国立環境研究所福島地域協働研究拠点)

中村さんのコメントの研究者・専門家としてのまちづくりや地域再生への関与(参与)のあり方は、大学に籍を置く研究者・学者として深く考える必要を感じました。

12年半前の東日本大震災・福島原発事故は日本の大学と政治や社会のあり方を考える大きな機会だったのですが、今になって思うと、持続的な大学改革への努力が根本的に不足していたように思います。

ある意味で、そうした自主的な持続的な努力の不足が、「失われた30年」の日本の科学技術力や日本の大学の国際的な地位低下の大きな要因の一つであるように思います。

第3発表:人口減少社会における原子力災害からの福島再生を考える:福島再生塾の設立に向けて

松岡俊二(早稲田大学)
島田剛(明治大学)
辻岳史(国立環境研究所福島地域協働研究拠点)

工藤さんが最後の方でコメントいただいた以下の指摘は、福島の復興や廃炉の研究をする者として大変重く心に響きました。

「この12年半、福島へボランティアや視察などで訪れた人は私の周りにも多くいる。しかし、そうした多くの人々の福島の復興や廃炉への関心は持続せず、福島県浜通り地域の関係人口とはなっていない。このことは、福島県のホープツーリズムなどが提供する福島復興のメッセージやコンセプトと日本社会や世界の福島への想いが乖離していることを示しているのではないか。『福島の問題は日本の問題であり、福島の問題は世界の問題である』ということを明確なメッセージやコンセプトとして示していくことが必要ではないか」。

【総括】

11月12日(日曜)15:00-17:00、上智大学で開催されました国際開発学会・第34回全国大会・企画セッション「人口減少社会における創造的復興とは何か?」では、創造的復興、まちづくり、地域再生などをめぐり、地域社会内外の多様なアクターによる「場」づくりのあり方や知識創造・イノベーション創出のあり方など、大変充実した議論が出来ました。

報告者の方々、秋田からご参加いただいた討論者の中村さん、工藤さん、福島(富岡町)から参加いただいた穂積さんなど、参加された皆さんに心から感謝申し上げます。

報告者:松岡俊二(早稲田大学)

[2P02] テストと学力改善

  • 日時:2023年11月12日(日曜)15:00 〜 17:00
  • 会場:紀-413 (紀尾井坂ビル413)
  • 聴講人数:00名
  • 座長:
  • ディスカッサント/コメンテーター:
*谷口 京子1、*光永 悠彦2、*渡邊 耕二3、*丸山 隆央4、*石井 洋5 (1. 広島大学、2. 名古屋大学、3. 宮崎国際大学、4. JICA緒方研究所、5. 北海道教育大学)

【総括】

報告者:

その他

  • 一般口頭発表
  • 企画セッション
  • ラウンドテーブル
  • プレナリー、ブックトーク、ポスター発表



開催案内「【中高生リサーチキャンパス】国際協力入門講座(全8回)」第1回: 2/23~(会員・一般)

地球的課題を解決するため、子どもたちにもさまざまな教育がなされています。企業やNGOなどの出張授業もその1つ。その後、子どもたちの行動変容に結びついているでしょうか。

「運動」は、みんなで同じ方向に向かってアクションを起こすこと。「運動」を進めるために必要なのが「情報」。

子どもたちが調べ、個人の中に蓄積された情報をデータベース化し、全国の子どもたちが使えるようにする試みが「リサーチ(調査)運動」です。

本講座は8回連続となっており、国際協力の問題がおおむねカバーされるようになっています。この中で、子どもたちが「リサーチ運動」のしくみを知るだけでなく、子どもたちの言葉で調査項目を作り、保護者、友人、学校の先生に世界の現状を語りながら回答を依頼していきます(テーマは「共感性」「自立性」「自分ごと化」などを予定)。

全国から集まった回答は研究所が集計し、別日に報告会を設定します。
「インプット」「アウトプット」「チェック」のサイクルで実際に社会貢献活動を行ってもらう講座です。ご家族、ご親戚などと一緒にご参加ください。

開催概要

■日程(前半)

  • 第1回 2月23日(金曜・祝日)10:00~12:00 「調査運動とは」
  • 第2回 3月23日(土曜)10:00~12:00 「児童労働」
  • 第3回 4月21日(日曜)時間近日公開 「貧困」
  • 第4回 5月25日(土曜)10:00~12:00 「紛争と人道支援」

※第5~8回は7~10月下旬頃を予定しています。
※1回のみの参加も可能です。

■参加対象:中高生

※興味があれば小5~大人の受け入れ可能です(1家族チケット1枚でOK)。
※総合学習などで国際協力の授業をする教員の方は無料で傍聴できます。

■費用:各回3,000円(税込)

※報告書、報告会含む

申し込み方法

下記よりチケットを購入してください。

各回、前日24時まで。定員になり次第締切。


本件にかんするお問い合わせ先

(公社)国際経済労働研究所 吉浜

  • yoshihama [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)
  • 電話番号:090-1242-1058/06-6943-9490



アジア・アフリカ研究所「公開研究会・シンポジウム」1月20日開催(会員・一般)

<公開研究会・シンポジウム>
ガザ・ウクライナ等の虐殺・戦争を超えて―非軍事の人類社会を展望する

ウクライナでの戦争が継続し、日本や欧米諸国の軍事費が倍増、急増する。

核兵器使用がほのめかされ、ロシア、中国の脅威を煽る発言が飛び交う。

地中海に派遣された米軍空母が見守り、イスラエル軍がガザの子ども、住民虐殺を続ける。

ガザの虐殺以前に書かれた、戦争と虐殺で儲ける仕組みに迫る雑誌特集論文の筆者たちに、その後の事態も含めて語っていただきます。

参加者も含めて、人類社会の大転換を展望する、議論をします。

開催概要

  • 日時:2024年1月20日(土曜) 13:30~18:00
  • 方法:会場参加およびZOOMも併用(ハイブリッド方式)
  • 会場:法政大学市ヶ谷キャンパス大内山校舎・Y501教室
  • 主催:NPO法人 アジア・アフリカ研究所

プログラム

趣旨説明「戦争と虐殺で儲かる仕組みをどう変えるか?―国境なき市民社会SDGs達成投資ファンド創設」

岡野内正(法政大学)

報告1「開発協力大綱改正に関する市民社会の動き―非軍事原則を巡っての交渉のプロセス」

重田 康博(宇都宮大学)

報告2「核管理体制の矛盾―ロシアのウクライナ侵攻の問いかけるもの」

太田 和宏(神戸大学)

報告3「グローバルな「悪徳商売」としての現代戦争―軍事産業、刑務所産業、ゲーム産業の事例から」

中村 理玄(法政大学・院)

参考文献

『アジア・アフリカ研究』第63巻第4号、2023年10月、特集「非軍事の人類社会を展望する」

参加方法

申し込みの必要はありません。会場あるいはZOOMに直接、おいでください。

ZOOM情報は下記の通りです。

  • ミーティング ID: 831 7216 8146
  • パスコード: 594966

本件にかんするお問い合わせ先

NPO法人 アジア・アフリカ研究所事務局 
鰐部行崇・岡野内正(otadashi [at] )

  • aaken [at] , [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)
  • 電話番号:03-5972-4740



法政大学社会学部公開授業「パレスチナ・ガザ問題講演会」12月6日開催(会員・一般)

<2023年法政大学社会学部公開授業・ゲスト講演会「イスラーム社会論」>パレスチナ・ガザ取材の25年―日本列島で暮らす人々に伝えたいこと―

アメリカ軍は空母を派遣して、パレスチナ・ガザ沖の地中海から見ています。
メディアは、日々、映像を伝えています。
国連は、次々に声明を出します。
NGOは撤退しました。

イスラエルの軍隊がパレスチナ・ガザ地区に侵攻し、すでに100万人が住居を追われ、半数は子どもの、1万人の命が失われました。

さらに多くの人びとが家を追われ、日々、次々に、命を奪われていきます。

なぜ、だれも止められないのか。
私たちは、ただ見ているだけでいいのか。
私たちに、何ができるか。

パレスチナ・ガザ地区の取材を続けて、25年。

日本ではもっともガザ地区の事情に詳しいジャーナリストをゲストにお迎えします。

現地住民の方々とのさまざまな体験と観察を踏まえて、この事態について、考えていることを語っていただき、質疑応答の時間を持ちます。

開催概要

日時:

2023年12月6日(水曜)15:30~17:10

ゲスト講師:

小田切(おだぎり) 拓(ひろむ) フリージャーナリスト

場所:

法政大学多摩キャンパス 社会学部棟3階 301教室
(「法政大学」バス停前の守衛所でお尋ねください)

上記の要領で、法政大学多摩キャンパスの通常の授業にゲストをお迎えして、公開講演会を行います。

社会学部の「イスラーム社会論」という授業の一環ですが、本学教職員、地域住民を含め、ご興味おありの方はどなたでも参加大歓迎の公開授業・講演会とします。入場無料で、事前連絡の必要もありません。ふるってご参加ください!

オンライン参加の方

*オンライン参加も歓迎です。以下のZOOM情報で直接ご参加ください。

2023年12月6日 03:30 PM

  • ミーティング ID:897 8231 6458
  • パスコード:478615
  • 招待リンク:

本件にかんするお問い合わせ先

2023年度「イスラーム社会論」
担当教員:岡野内 正

  • メール: otadashiあっと
  • 電話番号:042-783-2371



緊急セミナー「何が本当の問題?パレスチナ・ガザ攻撃」11月23日開催(会員・一般)

ショートノーティスで恐れ入りますが、表題のセミナー(オンライン・対面のハイブリッド方式)を下記の要領で開催予定です。

ご参加ご希望の方は11月19日(日用)までに下記のフォームにてお申し込みください。

対面定員48名/ZOOM定員100名に達し次第、締め切らせて頂きます。

日本在住のムスリマたちが企画・運営を行っております。対面参加の方限定となりますが、未就学児・小学生対象※の勉強会、お土産(パレスチナのお菓子)もあります。

※男の子は4年生以下が対象です。工作をしますが、未就学児の部屋には施設備付のおもちゃがあります。

皆様のご参加をお待ちしております。どうぞよろしくお願いいたします。

緊急セミナー「何が本当の問題?パレスチナ・ガザ攻撃」

開催概要

  • 日時:11月23日(祝日)13時30分~15時30分(13時開場)
  • 方式:ハイブリッド(Zoomミーティング)
  • 会場:ウィルあいち1階セミナールーム1・2(子ども勉強会同時開催)
    ()
  • 講師:金城美幸先生(パレスチナ研究・立命館大学客員研究員)
  • 使用言語:日本語
  • 参加費:無料
  • 主催:はちみつKIDSとママの会

申し込み方法

以下のフォームよりお申込みください。

  • 申込期限:11月19日(日曜)

本件にかんするお問い合わせ先

はちみつKIDSとママの会

  • honeykids [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)



国際シンポジウム「移動する子どもたちのことばの教育」12月16日開催(会員・一般)

移動する子どもたちのことばの教育-送り出し側・受け入れ側の役割を考える

開催概要

  • 日時:12月16日(土曜)9時30分 ‐ 17時00分
  • 場所:上智大学2号館17階国際会議場(対面およびWebinar配信)
  • 対象:上智大学学生、教職員、一般
  • 言語:日本語・英語同時通訳あり
  • 参加費:無料
  • 主催:上智大学グローバル・コンサーン研究所(IGC)
  • 共催:国際基督教大学社会科学研究所(ICU-SSRI)
  • 協力:トヨタ財団2022国際助成プログラム「日本と出身国を往来する移民の子どもの社会再統合を見据えた言語教育―母語・公用語の補習教室を地域の「多文化共生」 の拠点に」

申し込み

  • 対面会場参加用URL   
  • Webinar登録用URL  

プログラム

第一部(9:30-11:30)
移民の子どもの母語・継承語教育をとりまく現状

基調講演「トランスリンガリズムの視点で見たコミュニティ・ランゲージの可能性」
尾辻恵美(シドニー工科大学 准教授)

討論者

  • キム・アレン(国際基督教大学教養学部アーツ・サイエンス学科上級准教授、ICU-SSRI 所員)
  • 坂本光代(上智大学外国語学部英語学科 教授)

第二部(12:30-14:30) 多様なアクターによる母語教育の取り組み

事例報告「ベトナム政府による在外児童の母語教育に関する取り組み」
ディク・ムク・ダオ(ベトナム国家大学ホーチミン市校人文社会科学大学講師)

事例報告「ネパール国外でのネパール語教育:可能性と課題」
マーク・トゥリン(ブリティッシュコロンビア大学人類学部/先住民研究所准教授)

コメンテーター:榎井縁(大阪大学教授人間科学研究科附属未来共創センター 特任教授)

第三部(14:45-17:00)パネルディスカッション「日本における母語・継承語教育の実践と課題」

移民の当事者団体などによる母語・継承教育実践者

  • 安富祖 樹里(NPO法人ABCジャパン ユース・ワーカー)
  • チョウチョウソー(シュエガンゴの会/NPO法人ミャンマー日本教育のかけはし協会)
  • ラマ・ゴレ・プリタム(兵庫県立芦屋国際中等教育学校 外国人生徒教育推進委員/Sewa International School代表)
  • 中野理美(文部科学省総合教育政策局国際教育課長)
  • モデレーター:田中雅子(上智大学グローバル・コンサーン研究所員)

本件にかんするお問い合わせ先

上智大学グローバル・コンサーン研究所

  • i-glocon [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)
  • 電話番号:03-3238-3023



第3回「国際開発論文コンテスト」受賞者のことば(2023年11月)

学部論文を対象とした第3回国際開発論文コンテストで優秀論文賞を受賞した方々の「受賞の言葉」です。

これまでは学会の大会でビデオメッセージを流していましたが、2023年春季大会は時間の関係で受賞者の紹介しかできませんでしたので、ニューズレターを通じて、皆さんの声をお伝え致します。

なお、所属は応募時(2023年3月時点)のものです。  

国際開発学会では2024年も学部生対象の国際開発論文コンテストを実施致します。詳しくは学会ホームページをご覧下さい。

意欲的な学生からの多くの応募をお待ちしております。

中西勇太(釧路公立大学)

「カンボジア農家の作物栽培と食料消費の実態―CSES2014を用いた計量経済分析―」

この度は、第3回国際開発論文コンテストにおいて優秀論文賞を頂き、大変光栄です。 研究当初はデータの整理や回帰分析に苦労し、執筆時もなかなか論理性を持った文章を書くことができませんでしたが、三輪加奈先生の丁寧で熱心なご指導のおかげで、この賞を受賞することができました。

私は、国際開発という研究分野は非常に重要であり、途上国の開発問題だけでなく、先進国においてもジェンダー問題や貧困格差など研究が必要な課題が山積みだと考えております。

一見、私たち個人が国際開発に対して貢献できることはとても少ないように思えますが、先行研究を読み、自分なりの解釈をし、論文を執筆するということは大きな一歩ではないでしょうか。

そして、学部生は他大学の方に自分の論文を読んでもらう機会があまりない中で、本コンテストに応募して、審査委員の方に読んで頂くのは非常に良い機会だと思います。

私は、受賞論文においてカンボジア農家の作物栽培と食料消費の現状について家計調査データを用いて明らかにしましたが、カンボジアの農業や栄養不足はまだまだ改善の余地があると考えます。

また、研究を進めるにつれ、カンボジアの人々の伝統的な食文化や生活習慣にも興味を持ちました。途上国の暮らしは日本で過ごす私たちからは想像し難いものではありますが、そこから学べることは多いと考えており、今後より一層理解を深めていきたいと考えております。


中本絢子、中泉澄美、棚橋愛梨咲(関西学院大学)

「マダガスカル農民のコメ生産性に男女のネットワークが与える影響~性格特性に着目した2段階推計を用いて~」

この度は、拙著『マダガスカル農民のコメ生産性に男女のネットワークが与える影響–性格特性に着目した2段階推計を用いて–』を第三回国際開発論文コンテストにて、優秀論文賞に選んでいただきまして、心より御礼申し上げます。

本論文は、2022年8月に、マダガスカルにて私達が独自に取得したデータを用い、執筆いたしました。本研究の舞台であるマダガスカルという国は、世界最貧国家のひとつであり、貧困脱却や今後の人口増加に備えるために、国の主要産業である農林水産業の早急な発展が必要だといわれています。

現在のマダガスカルにおいては、伝統的な農法が主流であり、化学肥料等も効果的に使用されていません。そこで、本研究ではマダガスカルの主食であるコメの生産性向上に着目し、ネットワークの構築と、それを促す性格特性についての研究を行いました。

国際開発論文コンテストでは、私たちのような学生が国際開発という観点から、論文執筆を行い、コンテストに出場することで自身の知見を深めるとともに、さらなる国際開発をめぐる研究の発展に貢献できるのではないかと考えます。

本論文の執筆と本コンテストで栄誉ある賞を頂けたことが、今後のマダガスカルにおいて、より良い政策の実行、また国の発展に貢献できることを心より願っております。私たちも、この度の経験を糧に国際発展という大きな目標に向かい日々精進してまいります。今後ともどうぞよろしくお願い致します。


任百香、石橋由唯、塚本真世(関西学院大学)

「子どもの認知・非認知能力を促すピア効果の影響~マダガスカル農村で行った介入実証実験をもとに~」

この度は『子どもの認知・非認知能力を促すピア効果の影響〜マダガスカル農村で行った介入実証実験をもとに〜』を2023年度国際開発学会賞という栄誉ある賞をいただき、誠にありがとうございます。

私たちは、最貧国家マダガスカルの農村地域で現地調査を行い研究を行いました。本研究の舞台であるマダガスカルは、世界の中でも特に貧困問題が深刻な国で、経済はもちろん、生活環境や教育環境なども決して良いとは言えません。

特に農村部の教育に注目して研究しました。マダガスカル農村では、学校に通えない子どもがいることはもちろん、教育免許を持っていない村人も教えていること、教科書が教室に数冊しかなく勉強道具も十分でないこと、十分な授業が提供されていないことなどの問題があり、小学校高学年でも四則演算ができない子どもがたくさんいます。

さらにその子どもたちの親世代となると、多くの親が子どもたちより計算問題ができない、字が読めない、字が書けないという現状があり、いかに昔から教育が不十分だったかがうかがえます。

そのような農村の教育の現状の中で、教育レベルを向上させるために「ピア効果」に着目して大規模な実証実験を行いました。ピア効果とはある個人が周囲の人々から受ける影響のことを言い、意識や能力の高い集団の中に身を置くことで切磋琢磨しお互いを高め合う効果やその逆もあります。

ピア効果によって、経験の豊富な教師を頼りにせず、しっかりした教科書を用いて子どもたちがグループ学習をすることによって、短期間で大きな学習効果があることを立証することができました。

本研究が少しでも途上国開発研究の貢献材料となればと幸いに存じます。最後に研究や調査に協力してくださったマダガスカル農村の皆さまに感謝を述べるとともに、皆さまの生活に少しでも貢献できることを願って受賞の言葉と変えさせていただきます。ありがとうございます。


渡辺彩(法政大学)

「ソ連崩壊後のロシアの開発協力―英文学術誌の研究サーベイをもとに―」

この度は優秀賞をいただき、心より感謝申し上げます。本コンテストに応募するということは私にとって「挑戦」でしたので、賞をいただくことができ、大変嬉しく思っております。 本論文は、冷戦後のロシアの開発協力に着目したサーベイ論文です。

冷戦期、東側の旗頭だったソ連を引き継いだロシアは、冷戦終結後、どのような開発協力を行い、新冷戦と呼ばれる状況に至る過程で、どのように変化しているのかという問いを探究しました。

本コンテストは、賞を受賞する機会があるだけではなく、応募者全員が講評をもらうことができます。書いたものを誰かに読んでもらうということは非常に重要だと論文執筆の過程で強く感じました。

なぜなら、執筆者本人では気がつくことができない指摘を得ることができるからです。その過程を踏むことにより、論文をより洗練されたものにすることができます。

講評をもらう機会はさほど多くありません。そのため、応募者全員が講評をもらうことができるというのは、本コンテストの特徴の一つであり、意義なのではないかと思います。

本論文を執筆するにあたり、たくさんの方に支えていただきました。これまでご指導、ご尽力いただきました、先生やゼミ生、関係者の皆様に心より感謝申し上げます。 いただいた講評を踏まえ、賞をいただいたことを励みに、より研究に努めてまいります。この度は誠にありがとうございます。


人材育成委員会
委員長:松本悟(法政大学)




『子どもの安全保障への開発アプローチ』研究部会(2023年11月)

研究部会概要

「人間の安全保障(human security)」の概念は、国家の安全保障を補完するものとして、人間一人ひとりの安全と安心に着目する。

そして、人びとの生存・生活・尊厳に対する脅威(threat)や危険(hazard)そのものを軽減(mitigation)するために保護をいかに進めるか、また人びとの強靭性(resilience)を高めて社会環境に適応(adaptation)できるようにエンパワーメント(empowerment)をいか進めるか、という視点から安全を捉え直した概念である。

「子どもの安全保障への開発アプローチ」研究部会では、「人間の安全保障」について、子どもに焦点を絞った「子どもの安全保障(human security of children)」の概念について議論し、研究部会メンバーのそれぞれの研究領域における事例研究を発表し、政策提言にもつながるような理論的な枠組みを構築することを目指して研究活動を進めてきた。

近年、国際開発の潮流となっている持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)は、「誰も置き去りにしない(Leave no one behind)」という原則のもと、人間の安全保障の概念と課題を共有している。

SDGsへの取組みにおいて、国際開発論と「人間の安全保障」研究は、近年より近接しつつある学問領域だと言える。

「子どもの安全保障」への開発アプローチの可能性を模索しながら、国際開発論のなかで「子ども」を位置づけようとする。

国際開発論でも「人間の安全保障」研究においても子どもに焦点を絞った研究は少なく、また様々な学問分野からの分野横断的な取組みが求められていることから、「子どもの安全保障への開発アプローチ」研究部会を運営することの意義が高い。

年に4回程度の研究会を開催し、そこでの研究成果に基づき、国際開発学会の全国大会および春季大会で個人発表、企画セッション、ラウンドテーブルを提案してきた。

しかし、2023年度については、十分な活動を実施することができなかった。

活動実績(2022年11月から2023年11月)

なし

『子どもの安全保障への開発アプローチ』研究部会
代表:勝間靖(早稲田大学)




「東京 ネパールの教員が語る移民の子どもの教育」11月5日開催(会員・一般)

国際シンポジウム プレ企画

移動する子どもたちのことばの教育-ネパールから来た先生と話そう

開催概要

  • 日時:2023年11月5日(日曜)13:30-16:30 (受付開始:13:00)
  • 場所:上智大学四谷キャンパス6号館307(対面、第1部講演・映画部分のみWebinar配信)
  • 対象:外国ルーツの子どもの教育に関わる教員、支援者、学生、一般
  • 言語:日本語。一部、英語・ネパール語から日本語への逐次通訳あり。
  • 参加費:無料

申込方法

対面会場参加の方

Webinar参加の方

プログラム

第1部(13:30-15:40)

「外国につながる子どもと若者の母国語・母語・継承語使用アンケート調査」

中間報告 安念真衣子(国際ファッション専門職大学教員)
ドキュメンタリー映画上映

「Who is responsible for their future?: Voices of the returned children from Japan to Nepal」

(邦題「誰が彼らの将来に責任をもつのか?:日本からネパールに戻った子どもたちの声」)

  • 音声:ネパール語
  • 字幕:日本語

「コックの送り出し村の子ども」

ビル・バハドゥール・ボハラ(バグルン郡学校教員)

「親の移動が子どもの教育に与える影響」

マナ・バハドゥール・カトリ(カトマンズ市学校教員)

第2部(15:50-16:30)

ネパールの教員を囲んで、質疑応答および交流

司会・進行 田中雅子(上智大学教員)

主催

上智大学グローバル・コンサーン研究所(IGC)
「日本と出身国を往来する移民の子どもの社会再統合を見据えた言語教育―母語・公用語の補習教室を地域の「多文化共生」の拠点に」(Migrant Children Language: MICLE)プロジェクト

助成

トヨタ財団2022年度国際助成プログラム

書籍販売

会場で『厨房で観る夢―在日ネパール人コックと家族の悲哀と希望』(ビゼイ・ゲワリ著、田中雅子監訳・編著、上智大学出版、2022年)を定価1650円(税込み)のところ1400円で販売します。


本件にかんするお問い合わせ先

上智大学グローバル・コンサーン研究所

  • i-glocon [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)
  • 電話番号:03-3238-3023



【急募】CanDoマラウイ・準スタッフ(2023年11月初旬派遣)

<急募>マラウイで初等学校における学校保健の活動に参加する準スタッフ

当会はケニア共和国で20年間の社会開発の協力を行なったあと、子どもの教育や健康、安全の問題がより深刻なマラウイ共和国で活動を展開しています。

初等学校保護者の参加による教室建設が6月に終了し、次にライフスキル教育を基盤とした学校保健の活動の形成に取り組んでいます。

日本人・マラウイ人のスタッフと共に業務に参加する準スタッフを公募します。

県の行政官、伝統首長などの地域リーダー、初等学校保護者をはじめとする地域住民、とさまざまな関係者と話し合って活動ができます。

ご応募を待っています。

募集要項

  • 募集期間:2023年9月19日~10月10日
  • 業務開始:2023年11月初旬
  • 業務期間:6か月 *期間を通して専従
  • 募集人数:若干名

勤務地:

マラウイ共和国ブランタイヤ事務所およびパロンベ県

業務内容:

調整員(日本人・マラウイ人)の業務補佐

村での社会開発事業の調整、行政・地域住民・他機関との折衝、物品調達、活動や会議等の記録、公的支援金等の申請書・報告書のための資料作成、ブランタイヤ事務所の総務、会計事務など

年齢:

20歳以上

必要な語学力:

英語
*英語で業務を実施し、話し合いに参加することが必須です。

その他必要な経験・能力

  1. 当会の活動原則や事業実施の姿勢について、会報、ホームページ、報告会等を通じて理解・賛同し、業務に反映させる意欲のあること―会員(会員でない方には、採用決定後に入会していただきます)
  2. どんな業務(雑務を含む)にも真剣に、積極的に取り組み、そこから多くを学べること
  3. 将来にわたり、国際協力に携わっていく意志のあること
  4. 他のスタッフとの共同生活、途上国の村落地域での生活に適応できること
  5. 基本的なパソコン操作(Word、Excel)ができること

類似業務経験:

不問

待遇

  • 準スタッフ手当の支給(滞在中の通常の食費を賄える金額)
  • 宿舎の提供
  • 海外旅行傷害保険への加入
  • マラウイ国内での業務に関わる交通・通信・宿泊費

負担していただくもの

  • マラウイまでの旅費、ビザ代、予防接種代
  • マラウイ国内での食費、業務外の交通・通信費など

持参していただくもの

スマートフォンとパソコン

応募方法:

以下の書類を作成の上、Eメールにて送付してください。

  • 履歴書(書式自由。志望動機と英語力に関する自己評価を明記のこと)
    *勤務開始可能時期を記載してください。
  • 課題作文「アフリカの将来と私」(A4サイズ1枚)
  • 送付先アドレス tokyo [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)

選考方法:

書類審査および面接審査(東京事務所において実施。海外在住などの理由で難しい場合はズームを利用したオンライン)


本件にかんするお問い合わせ先

担当:佐久間

  • E-mail: tokyo [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)
  • 電話番号:03-3822-1041



新刊案内:大谷順子編著『子育ても、キャリア育ても ― ウィズ/ポストコロナ時代の家族のかたち』

大谷順子編著『子育ても、キャリア育ても ― ウィズ/ポストコロナ時代の家族のかたち』九州大学出版会 2023年

  • A5判 234ページ 並製
  • 価格:2,200円 (消費税:200円)
  • ISBN978-4-7985-0353-0 C3036

内容紹介

超少子高齢化がすすむ日本では、女性は多くを期待されている。出産育児とキャリア形成は両立できるのか。子育ては個人が負うべきものなのか。男女の別や世代を問わず、社会の構成員がおのおのの生を充実させるには、社会はどうあるべきか。

本書では、国際保健学・母子保健学、国際開発教育の背景を持つ研究者らが、身近な例からこの課題について論じる。キャリアと次世代育成の両方を尊重しながらどのように人生設計に取り組むべきか、若い世代に示唆を与える。

帯より

自分らしく生きるために、SDGsのもと「誰一人取り残さない」社会を目指す現代(いま)、新しい人生設計を考える若い世代へ―― 悪戦苦闘しながら子育てとキャリア形成を両立してきた著者たちが贈る、未来を切り開くためのメッセージ。

目次

まえがき

第1部 授かる

第1章 人口学からみる少子高齢化社会と共生

はじめに
1.子育てと共生
2.人口学からみる
3.女性の就労と出産・育児の選択と子育て支援
おわりに ペアレンティング(parenting)と子育て(child rearing)

  • コラム1:少子化をとりまくデータ

第2章 グローバルヘルスとSDGs–コロナ禍の妊娠・出産・子育て

1.ミレニアム開発目標(MDGs)から持続可能な開発目標(SDGs)へ–「誰ひとりとして取り残さない」というSDGsの理念
2.SDGSと性差
3.日本発、世界に拡がる母子健康手帳
4.多文化共生–エスニック・マイノリティのヘルス
5.新型コロナ感染拡大時代–2020年初めから
おわりに

  • コラム2:UNESCOによる包括的性教育(CSE)

第3章 東京、上海、香港の独身女性の結婚、家族、道徳観

はじめに
1.東アジアにおける結婚の特徴
2.各都市の国家政策–結婚の2つのモデル/3都市で出会った女性の具体例/3つの都市における異なる
結婚モデルの説明/独身女性、家族の責任と道徳的価値
おわりに

第2部 支える

第4章 日本における乳幼児期の子育て支援–当事者研究・参与観察

はじめに
1.参加事例–公共イベント/商業イベント
2.超少子高齢化社会で子どもを持つ
3.産後うつ病
4.母乳育児
5.働く母親の子どものための保育園
おわりに

  • コラム3:妊娠と出産の人類学
  • コラム4:防災と母親

第5章 発達障害を日本社会がどう扱うか–生産性、インクルージョン(包摂性)、人間の価値に関する視点から

はじめに
1.政府の見解
2.メディアの見解
3.アドボケート(支持者)と教育者
4.母親の見解
おわりに

  • コラム5:幼保園 就学前の子育て環境
  • コラム6:現代の多様化する幼児教育

第3部 育てる

第6章 「ユニバーサル社会」の子育てとは–With-Coronaの状況に直面した教育学者である父親としての雑感

はじめに 子育てのプロって誰?
1.子育ての中で「褒められる男」?!
2.急変する社会状況がもたらす教育課題
3.深刻な教育格差
4.子どもたちは幸福なのか?
おわりに 固定観念にとらわれない子育て

第7章 医師の職場環境とキャリア形成–大学病院における女性医師の環境を通して日本における育児と医療を考える

はじめに
1.社会の年齢構成の変化に伴う医療への要請
2.医師の働き方と女性医師–医師の年齢と男女の比率/医師の男女の比率と就業/育児中の医師の職場環境/医師の働き方の改善に向けた課題/医師の働きがい・モチベーション/医師の勤務と家族構成
3.無意識の思い込み(バイアス)–Unconscious Bias
おわりに

第8章 台湾における女性専門職のワーク・ライフ・バランス–葛藤、心身の健康状態を中心に

はじめに
1.統計学における男女格差–高等教育機関における学生の性別分布/医学生の性別分布/高等教育機関における教員の性別分布/医師の性別分布
2.男女格差が生じる原因と影響–家庭教育の過程/学校教育の過程/キャリア形成/仕事と家庭の間での葛藤/夫婦関係、独身と独身女性への潜在的差別/妊娠と出産
3.結論と提言–職場における母性保護(maternal protection)制度の改善/労働時間管理/育児・介護制度

第9章 多様な社会における共生–或る女性のライフストーリー

はじめに
1.多様な社会における共生:或る女性のライフストーリーと気づき–大学時代:アジア諸国を歴訪/専門家の経験:ラオスでの保健医療協力/留学の経験:ベルギー/出産の経験:米国/子育ての経験:スウェーデン/ワーク・ライフ・バランスの経験:沖縄/学校教育の経験:沖縄
2.多様な社会と日本の若者
3.共生のための助言
おわりに 他者と繋がるきっかけとしてのボランティア

あとがき

編著者

大谷順子(おおたに じゅんこ)

まえがき、第1章、第2章、第4章、コラム2-6、あとがき

大阪大学大学院人間科学研究科教授・国際交流室室長。
ハーバード大学公衆衛生大学院MPH(国際保健学)・MS(人口学)。ロンドン大学経済政治大学院・同衛生熱帯医学大学院PhD。世界銀行、世界保健機関(WHO)、九州大学を経て、2008年に大阪大学に着任。2014-2017年、大阪大学東アジアセンター長(上海拠点)兼任。

主な著書

  • 『事例研究の革新的方法‐阪神淡路大震災被災高齢者の五年と高齢化社会の未来像』九州大学出版会、2006年
  • 『国際保健政策からみた中国―政策実施の現場から』九州大学出版会、2007年
  • Older People in Natural Disasters, Kyoto University Press, and Trans Pacific Press, 2010
  • 『四川大地震から学ぶ―復興のなかのコミュニティと「中国式レジリエンス」の構築』九州大学出版会、2021年
  • Reconstructing Resilient Communities after the Wenchuan Earthquake, Lexington: Roman & Littlefield, 2023.
  • Handbook of Disaster Studies in Japan, MHM Limited & Amsterdam University Press, 2023.

分担執筆者

小川寿美子(おがわ すみこ)

第9章

名桜大学人間健康学部教授。大阪大学大学院医学研究科修士課程修了(ウィルス学)、アントワープ熱帯医学研究所修士課程修了(公衆衛生学)。博士(人間科学、大阪大学)。琉球大学医学部保健医療学講座助手、JICA/WHOプライマリ・ヘルスケア(PHC)専門家(ラオス)等を経て現職。

主な著書

  • Okinawa’s Post-War Health Recovery and Development 青山社、2009年
  • 『国際保健医療のキャリアナビ』南山堂、2016年
  • 『やんばる 世界を拓く』沖縄タイムス社、2022年

北村友人(きたむら ゆうと)

第6章

東京大学大学院教育学研究科教授。カリフォルニア大学ロサンゼルス校教育学大学院Ph.D.(教育学)。国連教育科学文化機関(UNESCO)パリ本部教育局教育担当官補、名古屋大学大学院国際開発研究科准教授、上智大学総合人間科学部准教授を経て、現職。

主な著書

  • 『国際教育開発の研究射程─「持続可能な社会」のための比較教育学の最前線』東信堂、2015年
  • Memory in the Mekong: Regional Identity, Schools, and Politics in Southeast Asia (co-editor), Teachers College Press, 2022

城戸瑞穂(きど みずほ)

第7章

佐賀大学医学部教授。博士(歯学、九州大学)。九州大学大学院歯学研究院准教授を経て現職。2016~2017年、佐賀大学男女共同参画室室長、2017~2019年、同大学ダイバーシティ推進室室長、2020~2022年、同大学附属図書館副館長をそれぞれ兼任。2007年、資生堂女性研究者サイエンスグラント受賞。2017年、厚生労働省女性医師キャリア支援モデル普及推進事業、2019-2024年、文部科学省科学技術人材育成費補助事業「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ」にそれぞれ参画。

馬場幸子(ばば さちこ)

コラム1

大阪母子医療センター母子保健調査室室長、大阪大学大学院医学系研究科招へい准教授。博士(医学、大阪大学)。カロリンスカ研究所PD。大阪大学大学院医学系研究科医学科国際交流センター副センター長を経て現職。

Nakano, Lynne Yukie(中野幸江)

第3章、第5章

香港中文大学文学院日本研究学系教授・系主任、大阪大学大学院人間科学研究科招へい教授。イェール大学Ph.D.(人類学)。

主な著書

  • Community Volunteers in Japan: Everyday Stories of Social Change, Routledge, 2004
  • Making Our Own Destiny: Single Women, Opportunity, and Family in Shanghai, Hong Kong, and Tokyo, University of Hawaii Press, 2022

鄭雅文(Yawen CHENG)

第8章

国立台湾大学公共衛生学院公共衛生学系教授、同学院健康政策・管理研究所所長・公共衛生学部長・教授、大阪大学大学院人間科学研究科招へい教授、台湾公共衛生学会理事。ハーバード大学公衆衛生大学院ScD(疫学)。2012年、ドイツ連邦共和国労働安全衛生研究所研究員。

主な著書

  • 《致命粉塵 : 石綿疾病,工業發展史中的職業病風暴》台北: 台灣職業安全健康連線、2017年
  • 《職災之後 : 補償的意義、困境與出路》高雄 : 巨流圖書公司、2019年。

瞿瑞瑩(Jui-Ying CHU)

第8章

国立台湾大学公共衛生学院健康政策・管理研究所修士。台北馬偕紀念医院漢方・産婦人科・小児科医師。社団法人台湾中医臨床医学会常務監事。


本件にかんするお問い合わせ先

大阪大学大学院人間科学研究科
大谷順子

  • [at]  (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)



鳴門教育大学「国際協力トークライブ」10月7日開催(会員・一般)

『中米の子どもたちの算数・数学の学力向上への挑戦-国際協力に捧げた30年-』

令和5年度第3回国際協力トークライブのご案内です。今回は、JICAの教育分野の国際協力専門員である西方憲広氏をお招きし、国際協力に捧げた人生を振り返りお話し頂きます。

開催概要

  • 日時:2023年 10月7日(土曜)10:00~12:00
  • 場所:対面&オンライン
  • 言語:日本語(英語の同時通訳を付ける予定です)

登壇者

西方憲広 氏(JICA国際協力専門員・人間開発部課題アドバイザー:教育)

参加方法

参加をご希望の方は下記URLにアクセスしてお申し込みください。


本件にかんするお問い合わせ先

詳細は下記をご覧ください。みなさまのご参加をお待ちしております。

鳴門教育大学グローバル教育コース
日下智志

  • kusaka [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)



オンライン「紛争9年目のイエメンから:~混迷の中に希望を見ることはできるか?」8月31日開催(会員・一般)

2015年3月に武力衝突が激化し、イエメン全土が大規模な人道危機に陥ってから、今年で9年目になります。

長期化した人道危機下にあるイエメンでは、人口の3分の2にあたる2,160万人が支援を必要としています。

紛争、気候変動、経済破綻、食料危機等の影響により、イエメンでは約450万人もの子どもや大人が避難を余儀なくされ、国内避難民として暮らしています。

そして、今まで経験したことのない燃料不足やさらなる飢饉の危機に直面しています。一方で、イエメンに対する国際社会の関心は薄れつつあります。

そのような状況下、昨年4月から10月にかけて、イエメンでは紛争後初となる長期停戦が合意・履行されました。

また、今年のサウジアラビアとイランの国交回復を受けて、初めて和平プロセスに向けての光が見えてきましたが、予断を許さない状態が続いています。

今回は、ジャパン・プラットフォームおよびイエメンで活動を行ってきたNGO3団体が、イエメンの深刻な状況や、それに対するNGOの支援とその状況についてご報告するとともに、イエメンの今後や支援のあり方などについてゲストと議論します。一人でも多くの方に、イエメンのいまを知り、そして未来について考えていただく機会になれば幸いです。ご参加をお待ちしております。

  • 日時:2023年8月31日(木曜)19:00~20:45 (18:45より入場開始)
  • 場所:オンライン
  • 参加費:無料
  • 言語:日本語
  • 主催:特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォーム、特定非営利活動法人ADRA Japan、特定非営利活動法人アクセプト・インターナショナル、公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン

申込方法

ウェブ申込からお申し込みください。

プログラム

19:00-19:05
開会挨拶
樋口博昭(特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォーム事業推進部・事業評価部・事業管理部部長)

19:05-19:20
「戦争でも平和でもない状態」から一歩踏み出すために: 私たちが目を向けるべきこと
佐藤寛氏(開発社会学舎主宰)

19:20-19:25
「イエメン国内紛争におけるアクター関係」
吉田智聡氏(防衛研究所理論研究部社会・経済研究室)

19:25-19:30
「イエメンの紛争と解決に向けた支援」
槌谷恒孝氏(国際協力機構緒方貞子平和開発研究所リサーチオフィサー)

19:30-19:35 
JPFイエメン人道危機プログラムについて
藤井康平(特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォーム事業推進部・事業評価部・事業管理部)

19:35-19:50 
NGO活動紹介

  • 小出一博(特定非営利活動法人ADRA Japan)
  • 高橋みづき(特定非営利活動法人アクセプト・インターナショナル海外事業局)
  • 福原真澄(公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン海外事業部)

19:50-20:05 
現地からのビデオメッセージ

20:05-20:40
オープンパネルディスカッション
〔パネリスト〕

  • 佐藤寛氏(開発社会学舎主宰)
  • 槌谷恒孝氏(国際協力機構緒方貞子平和開発研究所リサーチオフィサー)
  • 吉田智聡氏(防衛研究所理論研究部社会・経済研究室)
  • 小出一博(特定非営利活動法人ADRA Japan)
  • 高橋みづき(特定非営利活動法人アクセプト・インターナショナル海外事業局)
  • 藤井康平(特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォーム事業推進部・事業評価部・事業管理部)
  • 福原真澄(公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン海外事業部)

20:40-20:45 
閉会挨拶
樋口博昭(特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォーム事業推進部・事業評価部・事業管理部部長)

登壇者詳細

佐藤寛氏

開発社会学舎主宰、国際開発学会理事、元ジェトロ・アジア経済研究所 研究推進部上席主任調査研究員。イエメンのサナア大学で客員研究員や保健大臣アドバイザーを勤めるなど、30年以上の間イエメンに関する研究や調査に携わる日本のイエメン研究の第一人者。

槌谷恒孝氏

2023年4月まで国連開発計画(UNDP)イエメン共和国サヌア事務所平和事業支援ユニットチームリーダーとしてイエメンに駐在。現在は国際協力機構緒方貞子平和開発研究所リサーチオフィサーとして、平和構築・人道支援領域の研究業務に携わっている。

吉田智聡氏

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究科、大和総研を経て2021年より防衛研究所理論研究部 社会経済研究室 防衛教官・研究員としてイエメン国内政治と関連諸国の国際関係を研究。イエメン情勢と該当期重要トピックについて解説する「イエメン情勢クォータリー」を四半期毎に発信している。

団体紹介

特定非営利活動法人ADRA Japan

ADRAは、世界約120国に支部を持つ世界最大規模の国際NGOです。ADRA Japanはその日本支部として1985年に設立され、途上国や災害被災地において、人種・宗教・政治の区別なく、自然災害や紛争の被災者、医療を必要としている人々、教育を受けられない女性や子どもたちなどに、自立を助ける支援や緊急支援を届けています。

特定非営利活動法人アクセプト・インターナショナル

テロや紛争のない世界を目指し、いわゆるテロリストになってしまった若者たちを受け入れ、 彼らが武器を置いて人生をやり直す支援や、人々の和解やコミュニティ開発、テロリストを含む若者の権利を明確にする国際条約の制定、などに取り組む日本発の国際NGOです。2011年の創設以来、ニーズが非常に高いにも関わらず見捨てられてきた地域・分野・対象者に対して取り組みを実施してきました。

特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォーム

ジャパン・プラットフォーム(JPF)は、NGO、経済界、政府が対等なパートナーシップのもとに協働し、2000年に発足した日本の緊急人道支援のしくみです。平時より、3者および多様な人々が、強みや資源を生かして連携できるプラットフォームとして機能し、国内外の被災者、難民・国内避難民に、日本からの支援を届けています。

公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン

セーブ・ザ・チルドレンは、生きる・育つ・守られる・参加する「子どもの権利」が実現された世界を目指して活動する国際NGOです。1919年にイギリスで創設され、現在、世界約120ヶ国で子ども支援活動を実施しています。日本では1986年にセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが設立され、国内外で活動を展開しています。


本件に対するお問い合わせ先

特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォーム
事業推進部・事業評価部・事業管理部
藤井康平

  • [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)



参加募集『第3回・教育協力ウィーク』9月7~9日開催(会員・一般)

国際協力機構(JICA)、開発コンサルタント協力企業、教育協力NGOネットワーク(JNNE)の共催により「第3回教育協力ウィーク」を2023年9月7日~9日に開催します(オンライン・ハイブリッド)。

昨年に引き続き、教育セクターにおける幅広い関係者の情報共有、意見交換、知識創造、ネットワーク形成、日本の教育協力の拡充等の一助となることを目的としています。

つきましては、教育協力ウィーク概要及び参加登録に関し、下記のとおりご案内します。

今年は参加対象に制限はないため、団体内およびご関心ある方に広く共有いただけますと幸いです。みなさまのご参加を心よりお待ちしております。

教育協力ウィーク概要

日時

  • 2023年9月7日(木曜)~9日(土曜)

※2023年9月8日は国際識字デー、9月9日は教育を攻撃から守るための国際デーとなっております。

テーマ

未来を拓く教育協力

今年のコンセプト

教育協力プラットフォーム通じて、2030年までのSDGs達成への貢献とともに教育協力の未来に繋がる成果を生み出していく

今年の開催の狙い

2023年は6月に開発協力大綱が改定されたほか、日本の教育協力政策が改訂される予定です。加えて、5月にG7広島サミットが開催されたなど、日本の教育協力において、重要な一年となっています。

途上国の子ども・若者たちの未来を切り開く教育協力に関わる実務者が一堂に会し、2030年までのSDGs達成に向けて、教育協力の拡充などを含めた未来に繋がる成果を生み出していくことを念頭に、教育協力が現在直面する様々な課題や新たな展開について議論します。

あわせて、昨年立ち上がった「教育協力プラットフォーム」の具体化を進めていきます。

プログラム詳細は、以下JNNEウェブサイト掲載の添付資料をご覧ください。

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参加登録フォーム

教育協力ウィーク2023 参加登録フォーム
(以下URLからお申込みください)

  • 締切:9月4日(日曜) 日本時間23:59 ()
    ※対面参加は人数制限がありますのであらかじめご了承ください。

本件にかんするお問い合わせ先

教育協力ウィーク事務局

  • kkw2023 [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)



第24回春季大会セッション報告(一般口頭発表)

一般口頭発表

[A1] Education(個人・英語)

  • 9:30 〜 11:30
  • 座長: Kazuhiro Yoshida(Hiroshima University)
  • コメンテーター: Hideki Maruyama(Sophia University), Mikiko Nishimura(International Christian University)
    1. [A1-01] CLASSROOM STRATEGIES OF MULTIGRADE TEACHING IN PRIMARY SCHOOLS IN LAO PDR
      Souksamay INTHAVONGSA (Hiroshima University)
    2. [A1-02] Community Participation in School Management Contributing to Promotion Rate: A Case of Kampong Thom Province in Cambodia
      Sokunpharoth SAY (Hirohsima University)
    3. [A1-03] Parental Involvement in Secondary School Students’ Career Planning in Low-Income Areas of Kenya: Focusing on a Low-Fee Private School and a Public Day School
      Fanantenana Rianasoa ANDRIARINIAINA (Osaka University)
    4. [A1-04] Global citizenship education in Madagascar: How do students identify themselves within the global world?Andriamanasina Rojoniaina RASOLONAIVO (Osaka University)
    5. [A1-05] Research on the Effect of the Improvisation of Teaching Materials in Angola: Focus on the Secondary School Chemistry Teachers
      Manuel Jordão, Satoshi KUSAKA (Naruto University of Education)

[A1-01] CLASSROOM STRATEGIES OF MULTIGRADE TEACHING IN PRIMARY SCHOOLS IN LAO PDR

Ms. Inthavongsa, reported that in Lao PDR teachers used numerous strategies for managing a multi-grade class, but had challenges in preparing individual tasks, using assessment rubrics, and coping with ethnic minority’s language, for which teachers need more training and experiences. Prof. Nishimura commented that further explanation were needed on teachers’ perception on their challenges, their experiences and skills.

[A1-02] Community Participation in School Management Contributing to Promotion Rate: A Case of Kampong Thom Province in Cambodia

Mr. Sokunpharoth reported that community’s roles of fund raising, children’s attendance, infrastructure development, and monitoring students’ progress help improving promotion rate of students in Cambodia. Prof. Maruyama asked about his sampling method, the membership and functions of the school management committee, and differences in the local dynamism.

[A1-03] Parental Involvement in Secondary School Students’ Career Planning in Low-Income Areas of Kenya: Focusing on a Low-Fee Private School and a Public Day School

Mr. Andriariniaina presented both parents in the slum areas in Nairobi, Kenya and parents, relatives and guardians in the pastoral area where women have no assets, are trying hard to help their children go to secondary school for a better prospect for future employability. Prof. Nishimura commented on the sample size, generalizability, and need to consider the diversity of the study area.

[A1-04] Global citizenship education in Madagascar: How do students identify themselves within the global world?

Ms. Rasolonaivo discussed that high school students in Madagascar were exposed to the COVID-19 pandemic and the global economic crises which gave them knowledge and awareness of global issues, helped by the new curriculum on the citizenship education that has more commonalities with global citizenship education. Prof. Maruyama suggested that the background and diversity of students, communities and schools need to be explained further.

[A1-05] Research on the Effect of the Improvisation of Teaching Materials in Angola: Focus on the Secondary School Chemistry Teachers

Mr. Manuel reported that a carefully designed workshop/training can strengthen teachers’ scientific knowledge and their attitude toward improvisation of teaching material in the secondary schools of Angola. Prof. Nishimura questioned about the particulars of the workshop, whether the presenter observed the classes, and changes in the motivation of teachers after the workshop.

総括

The five presenters of this session covered education challenges ranging from multi-grade teaching, community’s roles in school management, parental perspectives on children’s career planning, global citizenship education, and the improvisation of teaching materials, in African and Asian countries. The analytical methods also varied from qualitative, quantitative and mixed methods.

There were constantly some 30 participants many of whom joined and left during the session, and rich Q and A interactions.

報告者:Kazuhiro Yoshida(Hiroshima University)


[A2] 教育(個人・日本語)

  • 12:30 〜 14:30
  • 座長:小川 啓一(神戸大学)
  • コメンテーター:山田 肖子(名古屋大学)、小松 太郎(上智大学)
  1. [A2-01] 開発途上国における継続的な学力測定のためのテスト開発 ―マラウイ・ガーナ・ウガンダの事例―
    谷口 京子(広島大学)
  2. [A2-02] モザンビーク教育大学学生の教職志望動機に関する一考察-FIT-Choice 尺度を活用して-
    谷川 夏菜子、脇田 祐輔、Simbine Alberto、日下 智志(鳴門教育大学)
  3. [A2-03] 東ティモールにおける大規模縦断 EMISデータとGIS情報を用いた学生の教育進級履歴の決定要因に関する分析
    内海 悠二(名古屋大学)
  4. [A2-04] ケニアにおける教育改革の進捗と問題点―Competency-Based Curriculumの導入と教育制度の変更をめぐって―
    澤村 信英(大阪大学)
  5. [A2-05] 東ティモールにおける「母語を基礎とした多言語教育(MTB-MLE)」の適用可能性の検討-初等教育学校と前期中等教育学校の連携に着目して-
    須藤 玲(東京大学大学院)

コメント・応答など

谷口会員は、サブサハラ・アフリカ地域における生徒の学力を、各国のカリキュラムに照らし合わせて分析することの重要性を指摘し、マラウイ・ウガンダ・ガーナの3カ国におけるテスト開発および学力調査の結果を報告した。学力調査の結果からは、作成したテストの信頼性や3カ国間での学力比較を共有した。

これに対して、コメンテーターの小松会員から、各国のカリキュラムに照らしたテスト開発を進める上で3カ国を比較することの意義についての質問がなされた。また、選択国の代表性や他国への適応可能性などの観点から、3カ国を選定した理由等が問われた。

谷川会員らの第2発表では、モザンビークにおける教員の離職率の高さに関連して、教員の早期離職の原因を調査した結果が共有された。教員志望の大学生が教職を選択する理由に焦点を当て、現職教員に対する調査とは異なる視点からの考察を提示した。

コメンテーターの山田会員からは、分析における説明・被説明変数が離職率の要因を明らかにする上で妥当な選択であるのか指摘がなされた。また、分析結果について山田会員の視点による考察も加えられた。

内海会員による第3発表では、複雑な社会構造を有する東ティモールにおける生徒の就学生存率を、地理情報データを活用して空間的に把握する試みが共有された。

地理的に就学生存率が高い(低い)学校が密集するホット(コールド)スポットの存在を指摘するとともに、マルチレベル・ロジスティック回帰分析による要因の検討を行った。

小松会員からは、経年的に結果を見た際に一時的にホットスポットとなる地域の存在について質問が挙げられた。また、スポットが生じる要因の分析において十分に検討されていなかった社会的な要因としていくつかの可能性を提示した。

第4発表では澤村会員から、ケニアにおいて2018年から導入され始めた教育改革の進捗や課題について、教育改革の歴史を踏まえた報告がなされた。Competency-based Curriculumの推進が、学習者の能力を公正に伸ばすと期待されていながらも、実態としては不公正な社会に向かっているのではないかと評した。

山田会員は、Competencyとして求められる能力は、各時代における社会の在り方によって異なるのではないかと指摘し、ケニアの教育改革の歴史の中でCompetencyの在り方がどのように変化してきたのか等の質問を投げかけた。

須藤会員による第5発表では、多言語社会において推進されている「母語を基礎とした多言語教育(MTB-MLE)」の東ティモールにおける適用可能性について、教員側からの受容と反発に焦点を当てた考察が行われた。

前期中等教育学校において教員がMTB-MLE校に対して反発を示したことを踏まえ、初等教育段階と前期中等教育段階の連携における課題を指摘した。

小松会員は発表を受け、多言語教育における教育者の重要性を再確認した上で、彼らの声だけを「MTB-MLEへの社会的反発」と捉えることについて疑問を投げかけた。

また、MTB-MLEの試験的導入から彼らの受容と反発に至るまでのプロセスに目を向けることの意義を指摘した。

総括

コメンテーターからのコメント・質問はもとより、フロアからも積極的に質疑が挙がり、活発な議論が行われた。発表者・参加者の双方にとって有意義なセッションとなった。

報告者:小川 啓一(神戸大学)


[A3] 産業(個人・日本語)

  • 14:45 〜 16:45
  • 座長:高橋 基樹(京都大学)
  • コメンテーター:島田 剛(明治大学)、池上 寛(大阪経済法科大学)
  • 聴講人数:22名
  1. [A3-01] 南アフリカ小規模食品加工企業の存続と BEE政策の影響
    西浦 昭雄(創価大学)
  2. [A3-02] 職業教育の効果:ケニアの首都ナイロビを例として
    松本 愛果(京都大学)
  3. [A3-03] インドネシア西部における無煙クッキングストーブの潜在需要
    黒川 基裕(高崎経済大学)

コメント・応答など

同セッションの報告者は、西浦昭雄、松本愛果、黒川基裕の3会員、また討論者は池上寛、島田剛の両会員であった。また、22人ほどの参加者があった。

西浦報告「南アフリカ小規模食品加工企業の存続とBEE政策の影響」では、報告者から、アフリカの小規模企業がどのように、産業の二重構造を越えようとしているかという問題意識に立ち、個別の企業の成長の軌跡に注目することを念頭に置きつつ、南アフリカの小規模食品加工業に注目したことが説明された。

そのうえで、南アの企業に関する最も網羅的なデータベースであるWOWEBを利用し、HPも参照して、5年以上成長の軌跡をたどることのできる企業を絞り込み、その軌跡においてBlack Economic Empowerment(BEE)による調達面の優遇や、資金やエネルギーの調達、市場の開拓の問題などの影響を検討したことが説明され、企業の継続には段階的な規模拡大、需要の獲得、事業継承の容易さなどがカギとなっているとの知見が紹介された。

討論者から、BEEが経営者の属性(「人種」)によって受ける影響、業種による規模の違いなどを考慮すること、また企業者の経営能力、輸出の成否、また事業継続の失敗例とその要因などを検討に含めることなどの必要性の指摘があった。また参加者から行政の衛生管理をクリアするかどうかで大きな違いが生じることやノウハウを伝えやすいなどの食品加工の業種としての特殊性への注意喚起があった。

松本報告「職業教育の効果:ケニアの首都ナイロビを例として」は、大学と中等学校の中間に置かれた職業教育校が、労働者の技能、賃金・所得に与えている影響について、ケニアでの実証調査を踏まえて論じた。調査では、フォーマル及びインフォーマルな企業の採用担当者、官民の職業訓練校の製造業関連職種の現役生・卒業生が対象となった。

調査研究の結果、職業訓練修了者の賃金は大学と中等教育の間であるが、企業採用担当者からすると、スキルや学力は中等教育より上で、また大卒よりも労働市場で必要とされる適正なスキルと知識を備えているために雇用機会は高く、より確実に仕事を得ることができ、その点において職業教育は相対的に人材養成において優位である可能性が示された。

討論者からは、対象の職種の選定理由を明示すること、労働者や使用者の賃金の認識のしかた(短期か、それとも終身まで視野に入れた長期か)を考慮すること、企業による職業訓練の成果の活用について検討すること、また世界銀行による職業訓練校への批判について念頭に置いた議論を展開することなどの必要性が指摘された。

黒川報告「インドネシア西部における無煙クッキングストーブの潜在需要」は、途上国に広く見られる、調理の際の排煙によって健康被害をもたらしかねないかまどに代わるものとして、報告者自身が開発・普及に携わっている「無煙クッキングストーブ」の事例についての報告であった。

報告者の研究においては、開発された無煙ストーブをインドネシア西部バンテン州の農家に貸与し、その潜在需要をCVMとWTP(willingness to pay)の手法を使って検証する方法が採用された。

WTPを通じて農家の側に、比較的低いながらも市場価格を支払う意欲があり、あるいは無煙の燃焼に必要なペレット、商用のための長時間燃焼可能なモデルへのニーズが存在することが確認されたこと、また、環境性能と収益性能の間のトレードオフやストーブ・ペレットの改善上の課題が指摘された。

討論者からは、潜在需要と農家の生存水準及び健康問題への関心との相関性を検討すること、また採算性を考える際に、ストーブ自体の製造やペレットの生産のための固定費用まで計算に入れることなどの必要性の指摘があった。

総括

製造業・ものづくりについての研究は国際開発研究において大きな潜在的な重要性と発展可能性を持つものであり、このようなセッションが今後も継続的に開催されることが期待される。

報告者:高橋 基樹(京都大学)


[B1] Economy(個人・英語)

  • 9:30 〜 11:30
  • 座長/ Chairman: Akio Nishiura (Soka University)
  • コメンテーター/ Commentator: Yukimi Shimoda (Waseda University), Takeshi Daimon (Waseda University)
  • 聴講人数/ Number of the audience: 15
  1. [B1-01] Visits of Chinese Officials and Chinese Investments in Africa
    Christian OTCHIA (Nagoya University)
  2. [B1-02] Are Lifestyle Enterprises growth-averse? Kindling the Entrepreneurial Fire within 
    Sanjeewa POLGAHAGEDARA DON PUBUDU (University of Utsunomiya)
  3. [B1-04] Regional Educational Disparities in China: A Shapley Decomposition Analysis
    Feng LI (Chuo University)

コメント・応答など

[B1-01] Visits of Chinese Officials and Chinese Investments in Africa

Christian OTCHIA conducted an empirical analysis examining the impact of Chinese Officials’ visits, including the Foreign Minister, on the increase in direct investments from China into Africa. In response, Takeshi Daimon, acting as the discussant, commended the study’s geopolitical approach in exploring the determinants of private investment, and its adept utilization of propensity score matching methods (PSM) to correcting for endogeneity. Daimon also sought information concerning the influence of Russia as an invisible actor and its role in conflicts, as well as insights on the case of Tunisia, the host country of TICAD VIII, in the context of Japanese investments in Africa.

Furthermore, Yukimi Shimoda, another discussant, raised a query concerning whether China’s increasing economic influence, beyond the visits of Chinese diplomatic envoys, was responsible for the upsurge in private investments. In response, OTCHIA emphasized the significance of political backing for Chinas investments to Africa and suggested conducting an analysis with a dedicated focus on this aspect.

[B1-02] Are Lifestyle Enterprises growth-averse? Kindling the Entrepreneurial Fire within

Sanjeewa POLGAHAGEDARA DON PUBUDU conducted a thematic analysis based on qualitative research, which involved surveys conducted with 54 Owner-Managers of Lifestyle Enterprises (OME) and 8 experts in Sri Lanka, aimed at investigating whether Lifestyle Enterprises exhibit a tendency to be growth averse. In response to the presentation, Shimoda, the discussant, acknowledged the study’s significance in contributing to policy formation, particularly regarding the formalization of the informal sector, and praised the ample sample size. Furthermore, Shimoda suggested that a more comprehensive analysis could be achieved by providing insights related to various aspects of owner-managers, such as age, gender, education, life stage, and other relevant factors, considering Sri Lanka’s specific context, and encompassing various types of lifestyle enterprises, including street vendors, manufacturer and distributors.

Shimoda also raised questions, seeking clarification on the definition of lifestyle enterprises, exploring the relationship between the informal sector and lifestyle enterprises, and inquiring about the perspectives of the 10% of respondents who expressed a growth-oriented outlook. Additionally, questions from the audience addressed the motivations behind OMEs’ business establishment, the targeted company sizes, and the educational levels of the samples.

[B1-04] Regional Educational Disparities in China: A Shapley Decomposition Analysis

Feng LI conducted an analysis using Shapley decomposition to examine regional and educational disparities caused by China’s Hukou (household registration) system. The results reported improvements in educational access in China due to economic development, particularly for the younger generation. The study also found that the Hukou influenced educational disparities between 2010 and 2018, while regional disparities were smaller than initially anticipated.

In response to the presentation, participant Daimon acknowledged the significance of the research and proceeded to inquire about the relationship between “sent down” policy and urban status. Daimon also raised questions regarding polarization and the feasibility of obtaining data at the village level. Additionally, comments from the floor suggested the need for analysis at the local level and explored the possibility of comparative studies with other regions.

総括

The session offered a fresh perspective on the multifaceted nature of “economy.” I was impressed by the innovative and original viewpoints presented in each presentation. Overall, the lively exchange of opinions made it a meaningful session. I would like to express my heartfelt appreciation to the presenters for their insightful papers and well-prepared presentation slides, and to the discussants for their meticulous comments and questions while preparing their slides. I also extend my gratitude to all the participants who actively participated in the question and answer sessions.

Reporter: Akio Nishiura (Soka University)


[B2] 国際協力(個人・英語)

  • 12:30 〜 14:30
  • 座長:佐藤 寛(開発社会学舎)
  • コメンテーター:西川 芳昭(龍谷大学)、高田 潤一(東京工業大学)
  1. [B2-01] Local Resilience in agricultural globalization: A Study of the Oolong Tea Industry in Vietnam
    Yunxi WU (Kyoto University)
  2. [B2-02] A study on the verification of the educational support project in Kumamoto Laos Friendship Association
    Hanami SAKAI (Kumamoto University)
  3. [B2-03] Significance of DSI in the Arena of the Convention on Biological Diversity for International Development
    Mikihiko WATANABE (University of Yamanashi)

コメント・応答など

本セッションでは英語による三本の報告があった。

第一報告は京都大学のYunxi Wu会員がLocal Resilience in agricultural globalization: A Study of the Oolong Tea Industry in Vietnamとして、台湾のビジネスも関与しているベトナム高地における輸出志向型ウーロン茶生産と地元の起業家の関係に関するケーススタディに基づいた報告があった。

コメンテーターの高田潤一会員らは、なぜこれらケースが選ばれているのか、事例の代表性、他地域への応用可能性などについて質問があった後、Wu会員がプレゼン資料に用いたAI絵画の妥当性について指摘があった。

聴衆に現地をイメージしてもらうための架空の風景をプレゼンの背景に使用することの、事実誤認誘導や虚偽性などについて興味深い議論があった。

第二報告は熊本大学のHanami SAKAI会員よりA study on the verification of the educational support project in Kumamoto Lao Friendship Associationと題して、熊本出身で元駐ラオス大使の坂井弘臣氏が立ち上げた熊本の市民団体の活動を取り上げ、ラオスの農村部の学生に奨学金を送る活動の評価とその将来的な持続可能性についての考察を行った。

高田会員からは、組織の内部資料等の情報をどのように収集したのか、本研究で用いた評価手法は地方のNGOに適しているのか等のコメントがあった。

1990年代から2000年代頃に日本各地で立ち上がった有志による特定途上国への支援NGOは、その多くが現在世代交代の時期を迎えており、当初のミッションの喪失や創設者の影響力の低下などで持続可能性の危機に瀕している。

本研究はこうした他の事例との比較の糸口になると有意義であろう。

第三報告は山梨大学のMikihiko WATANABE会員による、Significance of DSI in the Arena of the Convention on Biological Diversity for International Developmentと題する報告で、Digital Sequence Information の活用に関するやや専門的な内容であったが、コメンテーターの西川芳昭会員が生物多様性に関する国際条約の流れなどを整理したうえで、データの共有のメリットとコストについての議論があった。

三報告を通じて参加者は10人弱であったが、それぞれの報告に即した議論を行えたことは有意義であった。

報告者:佐藤 寛(開発社会学舎)


[B3] 移民・難民(個人・日本語)

  • 14:45 〜 16:45
  • 座長:内海 悠二(名古屋大学)
  • コメンテーター:林 裕(福岡大学)、小林 誉明(横浜国立大学)
  1. [B3-01] 難民の教育:人間の安全保障の観点からの検討
    小松 太郎(上智大学)
  2. [B3-02] 往来する外国ルーツの子どもの母語・継承語教育― 在日ネパール人が運営する母語教室の事例から―
    田中 雅子(上智大学)
  3. [B3-03] ボスニア・ヘルツェゴビナにおけるマイグレーションの変遷:人口流入、人口流出と平和構築
    片柳 真理(広島大学)

コメント・応答など

本セッションでは3つの報告がなされた。

一つ目の報告は小松太郎会員(上智大学)による「難民の教育:人間の安全保障の観点からの検討」であった。教育セクターに対する人間の安全保障における理論的枠組みとして「保護とエンパワーメント」、「学びの継続」、「国際社会の責任分担」という3つの側面が説明され、これらの側面からヨルダン補習教育プログラムにおける意味と課題が報告された。

コメンテーターの林裕会員から、ホスト国(第一次庇護国)における負担やホスト国への国際支援の重要性が説明され、ホスト国への支援の重要性が国際社会で認識されているにも関わらず、実際には継続的な支援が実施されていない理由について質問・コメントが挙げられた。

二つ目の報告は、田中雅子会員(上智大学)による「往来する外国ルーツの子どもの母語・継承語教育-在日ネパール人が運営する母語教室の事例から-」であった。日本に在住する外国ルーツの子供たちに開放される母語教育を持続的に運営するための課題と努力について、複数の母語教室を事例として運営者とのインタビュー結果と運営形態に関する詳細な結果が報告された。

コメンテーターの林裕会員から、母語・母文化修得よりも日本社会への統合・日本語教育が優先されている社会や、家族滞在者よりも永住者が優先される現状について説明があり、詳細なフィールドワークの実施を評価すると同時に、ネパール人を取り上げる意味やインタビューで得た関係者の生の声をより深く知りたいといったコメントが挙げられた。

三つ目の報告は、片柳真理会員(広島大学)による「ボスニア・ヘルツェゴビナにおけるマイグレーションの変遷:人口流入、人口流出と平和構築」であった。ボスニア・ヘルツェゴビナを事例として、マイグレーション理論をもとに紛争中から紛争後にかけて人々が移動する理由や移動の是非を決める選択(願望・能力)に関する理論的考察が説明された。コメンテーターの小林誉明会員(横浜国立大学)からはマイグレーション理論が他国の事例に適用される場合にどのような課題があるのかが説明されるとともに、移動の是非を決める選択は願望の前に選択を入れることでさらに詳細なモデル(選択・願望・能力)とすることも可能である等のコメントが挙げられた。

総括

会場の参加者が多いというわけではなかったが、セッション時間を通して終始アットホームな雰囲気があり、会場からも様々な質問が挙げられるなど、とても活発な意見交換の場となった。報告会員によるしっかりとした理論に基づく考察や説明がなされたことや、地に足のついた長年のフィールドワークによる知見が報告されたこともあり、質問やコメントに対する更なるコメントが挙げられるなど、質問者と回答者だけではない議論が行われてたことが印象的であった。

報告者:内海 悠二(名古屋大学)


[D2] 環境(個人・日本語)

  • 12:30 〜 14:30
  • 座長:大塚 健司(ジェトロ・アジア経済研究所)
  • コメンテーター:佐々木 大輔(東北大学)、日下部 尚徳(立教大学)
  • 聴講人数:20名
  1. [D2-01] バヌアツ離島集落のおけるコミュニティベースのサイクロン対応
    藤枝 絢子(京都精華大学)
  2. [D2-02] インドネシア都市スラムのサニテーションを取り巻く人びとの係り合いと開発協力
    池見 真由(札幌国際大学)
  3. [D2-03] バングラデシュ南西沿岸部における NGOによる給水施設の設置-地域の有力者の役割に着目して-
    山田 翔太(立教大学)

コメント・応答など

藤枝会員報告は災害頻発国バヌアツでのフィールドワークを踏まえたコミュニティレベルでの災害対応についての報告であった。

質疑応答では防災教育のあり方、SNSの活用方法、災害対応の課題、行政と住民の関係など多岐にわたる議論が行われた。災害対応組織の役割など国家とコミュニティの関係についてさらに深められるとよいと感じた。

池見会員報告は総合地球環境学研究所のプロジェクトで行われてきた研究者と現地の人びと(非研究者)とのトランスディシプリナリー研究のプロセスやその成果に関するものであった。

多様なステークホルダーの協働による取り組みにおけるインセンティブや価値、イニシャルコストや維持管理コスト、公共私の空間認識など幅広い議論が行われた。本報告で提起されたサニタリーバリューチェーンというコンセプトがどのように研究者と現地住民の間で共有されてきたのかというプロセスが興味深いところであった。

山田会員報告はバングラデシュで大規模に実施されている村落小規模水道の設置にあたって、地域の有力者の利害が大きな要因であることを指摘したものであった。

ヒ素汚染に比べて塩水化は直接知覚できることから住民の関心が高いこと、管理においてはケアテーカーが担っていること、NGOが請け負った事業であるが前身は外国援助機関によるプロジェクトに由来するものであることなどが質疑応答の中で明らかにされた。

集落単位ではなく個人単位での水道敷設が望ましいという結論についてはさらなる検討が必要と感じた。

総括

テーマは災害、衛生、水道、国はバヌアツ、インドネシア、バングラデシュといずれも異なる対象を扱った報告であったが、現地調査を踏まえた具体的な事例をもとにした考察は大変興味深く、参加者からの質問やコメントも活発で集まった参加者の間での関心の高さをうかがうことができた。

今後、各事例研究を広く先行研究の中で位置づけることによって学術的かつ社会的な貢献をより明確にして、論文発表がなされることを期待したい。

報告者:大塚 健司(ジェトロ・アジア経済研究所)


[D3] 保健・福祉(個人・日本語)

  • 14:45 〜 16:45
  • 座長:杉田 映理(大阪大学)
  • コメンテーター:松山 章子(津田塾大学)、西野 桂子(関西学院大学)
  • 聴講人数:20名
  1. [D3-01] ノンフォーマル教育をエントリー・ポイントとする女性たちの社会参加と自己実現-ブータン農村部における地域保健医療とビレッジ・ヘルスワーカー-
    佐藤 美奈子(京都大学)
  2. [D3-02] サブサハラアフリカの出生率低下は持続するか?
    大橋 慶太(国連人口基金)
  3. [D3-03] 社会的に構築された障害への批判と社会的実践によるその変革ータイ障害者の経験と語りを通じて
    横山 明子(大阪大学人間科学研究科)

コメント・応答など

第1報告者の佐藤美奈子会員の報告に対し、ブータン王国での調査の経験を持つ西野会員からコメントがなされた。ブータンでの現地調査はかなり困難が伴うと推察され、それを乗り越えて調査を実施していることがまず評価された。

さらに、本研究は、ノンフォーマル教育(NFE)を通してリテラシーを得た農村の女性たちがVillage Health Workerとして地域保健医療活動に参与する道を拓くことを目的とした、多角的な調査結果に基づく政策提言を主とする研究であると評された。

一方、グローバリセーションの影響を鑑みて、政府だけではなく、女性たちの自己実現を促すには民間の力も視野にいれて研究する必要性が指摘された。佐藤会員からは、能力をつけた人がオーストラリアに移住してしまう事例も見られることが報告された。

第2報告はサブサハラアフリカの出生率低下について、大橋慶太会員からの報告であり、松山会員からは、本研究はプロダクティブヘルスの観点からも、またアフリカにおいても既に議論され始めている今後の高齢化社会の課題を考える上でも、重要なテーマで学術的意義が高いと評価された。

一方で、セネガルとケニアを比較し、文化・社会的要因に着目しながらも、出生率の近成要因モデルを用いた分析方法を利用することや、国単位で分析することの妥当性について問われた。

中絶に関する信頼性の高いデータ収集は難しいが、例えばGuttmacher Instituteなどが出しているデータを検討することの助言があった。

第3報告の横山明子会員の発表に対するコメントは、再び西野会員が行った。

本研究は、タイ障害者への現地語でのインタビューを通じて、障害者への差別構造と変革主体・アプローチの分析を試みる意欲的な研究であると評価された。

研究対象のタイは、経済発展が著しい反面、政治的な混乱が続いており、加えて「前世の行い」という宗教的思想も差別や偏見につながっていることが指摘された。

また、3つの用語Impairment (a problem with a structure or organ of the body), Disability (a functional limitation with regard to a particular activity), Handicap (a disadvantage in filling a role in life relative to a peer group) のタイ語におけるニュアンスについて質問がなされた。

総括

3つの報告は、それぞれ異なる地域、異なる切り口での研究内容であったが、広くヘルスの課題を地域の視点からとらえようという共通性があったと言える。

それぞれが意欲的な研究であった。また、会場が普段の学会ではあまり利用経験のない横長の形状であったが、結果的に、参加者(オーディエンス)と発表者の距離が近く、質疑応答も活発に行うことができた。

報告者:杉田 映理(大阪大学)


[E2] 国際協力(個人・日本語)

  • 12:30 〜 14:30
  • 座長:山形 辰史(立命館アジア太平洋大学)
  • コメンテーター:林薫(グローバル・ラーニング・サポート・コンサルタンツ)、志賀裕朗(横浜国立大学)
  • 聴講人数:30名
  1. [E2-01] ナレッジマネジメントから見た国際協力の有効性
    河田 卓(株式会社ナレッジノード)、林 俊行(Nyika Energy Consultant)、佐藤 伸幸(日本テクノ株式会社)
  2. [E2-02] 新型コロナウィルス感染症拡大と国際ボランティアの一斉帰国一 JICA海外協力隊を事例としてー
    河内 久実子(横浜国立大学)
  3. [E2-03] 現代社会における「流通」の役割と社会経済システムへの影響
    安部 雅人(東北大学)

コメント・応答など

E2「国際協力」セッションは多様な3つの報告に関して議論が行われた。

第一報告の河田卓・林俊行・佐藤伸幸「ナレッジマネジメントから見た国際協力の有効性」は、技術協力を行うに際し、(1)コメンスメント、(2)アダプティブ、(3)インクルーシブ、(4)インサイドアウト、という4つの要素を満たすことで、プロジェクトが有効に実施されると主張した。

それを示すに際し、バングラデシュにおけるクリーンダッカ・プロジェクト、パキスタン・パンジャブ州における上下水道管理能力強化プロジェクト、日本の学校法人アジア学院の研修プロジェクトの円滑な実施が、これらの4つの要素を基準として確認することの有効性を示した。

第二報告の河内久実子「新型コロナウィルス感染症拡大と国際ボランティアの一斉帰国―JICA海外協力隊を事例として―」は、新型コロナ感染拡大のために一時帰国を余儀なくされた青年海外協力隊員、シニア隊員、計17名に対してインタビューを行い、突然の帰国に関する効果を分析したものである。

帰国した隊員の感情は大きく分けて「落胆型」と「安堵型」に分けられることが検出された。「同じ境遇の人と情報共有や気持ちの共有をする場があれば、隊員の不安を和らげることができる」ということが一つの結論である。

第三報告の安部雅人「現代社会における「流通」の役割と社会経済システムへの影響」は、SDGsにおいても一定の役割を果たす「流通」を分析対象として取り上げた研究である。

流通の対象をモノ、ヒト、カネとし、モノは「ビジネス」、「商社」、「公共」、「輸送」(中単元)にさらに分割した。それぞれの中単元ごとに4つの様態を指定し、6×4の「流通マトリックス」を定義する。各セル(モノ×4,ヒト、カネ)×4の現状を詳述したことで研究成果とした。

3報告の間の共通性は小さい。それぞれの議論の妥当性、他の事例への適用可能性が課題として討論者から示された。

2時間のセッションを通じて、30人程度の聴衆が参加した。

報告者:山形 辰史(立命館アジア太平洋大学)


[E3] 文化と開発(個人・日本語)

  • 14:45 〜 16:45
  • 座長: 真崎 克彦(甲南大学)
  • 討論者: 関根 久雄(筑波大学)、佐野 麻由子(福岡県立大学)
  • 聴講人数:30名
  1. [E3-01] インドネシアにおける食料消費の現状と変化:西ジャワ農村の事例
    伊藤 紀子(拓殖大学)
  2. [E3-02] 小規模支援のインパクト分析 -ソーラーランタン支援事業の事例より
    柏﨑 梢(関東学院大学)
  3. [E3-03] 頭脳流出から頭脳流入へ:スーダン人高度人材の母国貢献意識に着目して
    黒川 智恵美(上智大学)

コメント・応答など

本セッションでは関根久雄会員と佐野麻由子会員をコメンテーターとして迎え、以下の3名の会員による報告があった。

最初は伊藤紀子会員による「インドネシアにおける食料消費の現状と変化:西ジャワの事例」であった。西ジャワ州タシクラヤ県の稲作地帯で、近代食が身近になるにつれていかに伝統食をめぐる考えや摂取行為が変わってきたのかについての現地調査の成果である。

双方を摂る食習慣が根づくようになった今日でも、調査対象の女性の間では自覚的かつ主体的に伝統食に価値を見出されていることが分かった。

コメンテーターからは、「近代食」と「伝統食」という二項対立に関して次の課題が指摘された。第一に、たとえば伝統食の要素が入った近代食、または近代知によってリアレンジされた伝統食など、食の現状は「近代なのか、伝統なのか」という二分法だけでは把握できないはずであり、住民の視線に沿った理解が欠かせない。

第二に、「伝統食は健康に良い」と考えているという住民の認識自体も、近代知に拠るものであろうから、同じく「近代なのか、伝統なのか」という分類では説明し尽くされない。

続く柏﨑梢会員の「小規模のインパクト分析―ソーラーランタン支援事業の事例より」では、ベトナム山間民族集落のための活動が紹介された。国際協力事業のもと、ソーラーランタンが学校を通して子供に供給され、学校と家庭の連携が強まり、また保護者の教育意識も高まるとともに子供の自己肯定感が向上した。

こうした支援活動は身の丈に合ったものであったため、在来の生活様式に大きな影響は与えていないことも分かった。限定的な光源であることから文化面や慣習面における影響はほとんどみられない。

コメンテーターからは、今後の課題として次の点が指摘された。ランタンの文化的な影響の有無や程度について論じる際、住民が限定的な光源をどのように捉えているのかについて、さらに深く検証されるべきではないのか。

また、ランタンによって勉強の習慣がついて子どもの自己肯定感が醸成された、という指摘があったが、それらはランタンだけでもたらされたことなのだろうか。1つの事象が単一の要素だけで構成されることはほとんどなく、他の種々の要素も併せて考察することが欠かせない。

最後に黒川智恵美会員による「頭脳流出から頭脳流入へ:スーダン人高度人材の母国貢献意識に着目して」が報告された。エジプトと日本への移民や難民、帰還民の間では、母国への貢献の意志は、イスラム社会の価値観や個人の母国や移住先との関係に左右されている。

母国貢献の思いは身近な人との互助共同体の構築に表れている。現在進行中の紛争を解決することで、そうした「私の国への恩義は身近な人への貢献として返還したい」という気持ちが活かせるようにすべきである。

コメンテーターからは今後の課題として次が挙げられた。第一に、家族、親族、コミュニティというものがクローズアップされておらず、国家という抽象的存在が前景化されている。

最後の「国への恩義は身近な人への貢献として返還したい」という部分をもっと具体的に説明すべきである。第二に、報告者は頭脳流出の類型化を行ったが、1人の人間は複数の型にまたがったり、状況に応じて往還したりするものではないか。そうである場合、1人の人間が型を変えるときの文脈も注目すべき点になるのではないか。

総括

3名の会員による報告は、それぞれが「文化と開発」を考える上で有用な事例であった。セッション全体としても、コメンテーターのインプットで「文化と開発」について主要論点が浮き彫りにされた。

報告者:真崎克彦(甲南大学)


[G1] オンラインセッション

  • [オンライン口頭発表]
  • 座長:川口純(筑波大学)
  • コメンテーター:戸田隆夫(明治大学特別招聘教授)、新海尚子(津田塾大学)
  • 参加者:約12名
  • [G1-01] A Making of Cambodian Teacher Education: Competition and Coordination among Donors, Ministry, Teacher Educators, and Future Teachers
    Takayo OGISU (Sophia University)
  • [G1-03] 農村における気候変動適応活動のアプローチ:エチオピア国の事例より
    久保 英之(地球環境戦略研究機関)三浦 真理(国際協力機構)

コメント・応答など

本セッションはオンラインにて、2名の会員(荻巣崇世会員、久保英之・三浦真理会員)のご発表が行われ、各発表に対して1名ずつの指定討論者がコメントを付した。参加者は累計で12名程であった。

まず荻巣会員のご発表では、カンボジアの教員養成について、特に2013年の改革以降のドナー間の国際協調や競争の実態について報告がなされた。多種多様なドナーが各々のプロジェクトを進行させていく中で、カンボジア教育省のオーナーシップの重要性や学校現場の教員の教育観にも焦点化された示唆に富む発表であった。

荻巣会員の発表に対しては、戸田隆夫会員より、カンボジアの凄惨な歴史とその中でも教育関係者たちが“より良い教育”を実施すべく尽力してきた経緯を踏まえつつ、未来志向の建設的な研究を実施するよう、熱いコメントがなされた。

次に、久保会員らの発表では、エチオピアの農村を対象に気候変動に対応する活動について、その妥当性を検討する報告がなされた。特に、新しいコンセプト(適応、レジリエンス)を導入することで現場がどう変わり得るのかについて議論がなされた。

久保会員らのご発表に対しては、新海尚子会員から、水関連の災害が気候変動の中でも貧困層により大きな影響がある中で、影響、評価についてもコンテクストに応じて考えることが重要とのコメントがなされた。また対象者についても、女性、子供、高齢者、障害者等、気候変動の影響力を受けやすい人々に寄り添う重要性も指摘された。

報告者:川口純(筑波大学)


その他の座長報告




第3回「国際開発論文コンテスト」選考結果(2023年8月)

国際開発に関心を持つ学部生の人材育成を目的とする「第3回国際開発論文コンテスト」について報告致します。

  1. 募集期間:
    2023年3月1日~24日(前年秋の学会誌及び学会メーリングリストで広報)
  2. 応募状況:
    応募論文13編(全て和文)。2023年3月時点の所属大学は、共立女子大学、関西学院大学、釧路公立大学、法政大学。
  3. 審査結果:
    それぞれの応募論文を複数の委員で審査した結果、以下の通りとなった。

【最優秀論文賞】

該当者なし

【優秀論文賞】

4編(順不同)

「カンボジア農家の作物栽培と食料消費の実態―CSES2014を用いた計量経済分析―」

中西勇太(釧路公立大学)

カンボジアの世帯調査ミクロデータを用い、カンボジア農家の生産、消費の両側面に配慮した同時方程式モデルに基づく分析を行っている。

学部学生でミクロデータを用いた分析を行っている点や消費と生産の同時性に配慮した分析手法を採用するなど、技術的な点で優れた論文といえる。全体として文章表現が的確かつ明瞭で、論理構成も一貫性がとれている点が高く評価できる。

研究の目的と意義が明確に示されており、それぞれの分析結果を受けた要因をその都度考察し、分析の内容や結果そのものにおいて不備や不十分がある点を筆者自身が理解・認識した上で、それらについても適所に言及しているところも、論述の丁寧さが伺えた。

本研究のオリジナリティである分析手法を提示する決定関数の定式化の記述のところでも、詳細に読み手に分かり易く説明されていた。

「マダガスカル農民のコメ生産性に男女のネットワークが与える影響~性格特性に着目した2段階推計を用いて~」

中本絢子、中泉澄美、棚橋愛梨咲(関西学院大学)

本論文は、マダガスカル農民を事例に、個人の男女という性格特性や認知能力・非認知能力の違いがソーシャルネットワークを介して農業生産性に与える影響を検証し、農業のソーシャルネットワークの大きさが生産性向上に影響を与えることを明らかにしている。

先行研究の指摘を踏まえて現地調査を設計し、独自の調査データを用いて2段階推計を行っており、外向性と神経性に関しては男女で正反対の作用をしているという興味深い結果も得られている。

これらの点について多角評価された一方で、章見出しなど執筆要項のルールおよび要件を満たしていない体裁であるために残念ながら減点対象となってしまった。その他、本研究の課題を最後に示すと、論文全体の流れが引き締まって説得力が増す論文になる、などのコメントが審査委員からなされた。

「ソ連崩壊後のロシアの開発協力―英文学術誌の研究サーベイをもとに―」

渡辺彩(法政大学)

ソ連邦崩壊後のロシアにおける開発協力の変遷を英文誌のサーベイ、並びにロシアの行政文書を元に読み解き、4つの時代に区分しうることを明らかにしている。ロシアの行政文書についての比較分析を行ったり、レビューから浮かび上がった今後の研究課題を示したりと、独自の議論を展開しているところも高く評価された。

ソ連崩壊後のロシアに着目する意義についても丁寧な説明を行っており、読者との共通理解を築くことにも成功している。

調査方法(レビューする文献の抽出方法)を明示することで、自身の調査の射程と限界について自覚的であろうとする姿勢も窺えた。文章表現も明確で学部生のサーベイ論文としては良い評価を得られた一方で、審査委員からは文献レビューの範囲を狭く絞りすぎているという指摘もなされた。

「子どもの認知・非認知能力を促すピア効果の影響~マダガスカル農村で行った介入実証実験をもとに~」

任百香、石橋由唯、塚本真世(関西学院大学)

マダガスカル農村の教育において、短期間の物的介入が子どもの成績にどの程度影響するのかという実験を行い、その分析・考察を通してマダガスカルの学校現場及び学習環境の改善に向けた政策提言に繋げた論文である。

本研究のオリジナリティは、10歳から12歳の子ども計296人もの対象者に3週間という期間をかけて独自の介入実験(使用する数学と読解問題の教材を自分たちで作成して実験を設計)を行ったところにある。

先行研究の体系的なレビューや独自の現地調査など、学部生としては非常に高い水準の調査が行われていることが評価された。

その一方で、介入実験の説明や実験結果の記載など、論文の根幹に係わる部分が曖昧な記載になっており、研究論文としての完成度については改善の余地が指摘された。

表彰等

春季大会での表彰は実施せず、受賞者には賞状と記念品を郵送し、規程に基づく研究奨励金を授与した。受賞者の声については、次号のニュースレターで掲載する。

また、受賞論文の要旨を今年秋に発行する学会誌で公表する予定である。なお、人材育成というコンテストの目的に鑑み、応募者全員には審査員からの講評を伝えている。

人材育成委員会
委員長:松本悟(法政大学)




候補者募集「第17回・スミセイ女性研究者奨励賞」(~9月8日まで)

第17回 未来を強くする子育てプロジェクト:女性研究者への支援

募集要項

  • 主催:住友生命保険相互会社
  • 後援:文部科学省/子ども家庭庁

1.趣旨

育児のため研究の継続が困難となっている女性研究者および、育児を行いながら研究を続けている女性研究者が、研究環境や生活環境を維持・継続するための助成金を支給します。人文・社会科学分野における萌芽的な研究の発展に期待する助成です。

2.対象

現在、育児のため研究の継続が困難な女性研究者および、子育てをしながら研究を続けている女性研究者を対象とし、次の要件を満たす方の中から決定します。

3.要件

  1. 人文・社会科学分野の領域で、有意義な研究テーマを持っていること。
  2. 原則として、応募時点で未就学児(小学校就学前の幼児)の育児を行っていること。
  3. 原則として、修士課程資格取得者または、博士課程在籍・資格取得者であること。
  4. 2名の推薦者がいること(うち1名は、所属・在籍する大学・研究所等の指導教官または所属組織の上長であることが必須)。
  5. 原則として、研究を継続していく意思のある方。
  6. 支援を受ける年度に、他の顕彰制度、助成制度で個人を対象とした研究助成を受けていないこと(科研費・育児休業給付などは受給していてもご応募いただけます)。
  7. 受賞時に、氏名(本名)やご家族との写真、研究内容等を、新聞・雑誌、インターネット等での公表にご協力いただける方。また、マスコミなどからの取材にご協力いただける方。

※この事業では、過去の実績ではなく、子育てをしながら研究者として成長していく方を支援したいと考えています。そのため、研究内容のみで判断することはありません。
※国籍は問いませんが、応募資料等への記載は日本語に限ります。

4.応募方法

webサイトより応募用紙をダウンロードし基本情報をご記入の上、必要資料と一緒にお送りください。

(募集要項)応募用紙ダウンロード先

5.選考

事務局による選考の後、「未来を強くする子育てプロジェクト」選考委員による選考会を経て、受賞者を決定します。

6.選考委員

選考委員長

汐見 稔幸 [東京大学名誉教授、白梅学園大学名誉学長]

選考委員

  • 大日向 雅美 [恵泉女学園大学学長]
  • 奥山 千鶴子 [認定NPO法人びーのびーの理事長]
  • 米田 佐知子 [子どもの未来サポートオフィス代表]
  • 角 英幸 [住友生命保険相互会社 取締役 代表執行役専務]

7.発表

受賞者は、2024年3月に都内で実施予定の表彰式*および「未来を強くする子育てプロジェクト」のwebサイト等で発表します。受賞者には2024年1月末までに直接ご連絡いたします。
*表彰式は、開催日時点の社会状況よって、実施内容を変更する可能性がございます。

8.表彰

スミセイ女性研究者奨励賞 10名程度

助成金として1年間に100万円(上限)を2年間まで支給します。助成期間は2024年4月から2026年3月までの2年間の予定です。

9.募集期間

2023年7月10日(月曜)~2023年9月8日(金曜)必着

10.注意事項

  1. 応募用紙は、片面印刷とし、ホチキス止めはしないようお願いいたします。
  2. ご提出いただいた資料類は返却いたしませんのであらかじめご了承ください。
  3. 選考に関するお問合せには応じられませんのでご了承ください。
  4. 受賞者は、原則として、助成開始から半年後に近況報告、1年後に研究活動の中間報告、2年目終了後に最終報告をしていただきます。2年目の助成継続には、原則として助成要件を引き続き満たしていることが必要です。中間報告にて2年目の助成継続可否を判断させていただきます。
  5. 受賞された方は、助成対象となる研究の発表時に、本助成を受けた旨を明示してください。

11.個人情報の取扱い

応募者の個人情報は、審査および運営に必要な範囲内で利用し、第三者へ提供することは一切ありません。応募者の同意なく、利用目的の範囲を越えて利用することはありません。


本件にかんするお問い合わせ先

「未来を強くする子育てプロジェクト」事務局

  • mirai-sien [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)
  • 電話番号:03-3265-2283(平日10:00~17:30)
  • 〒102-0072 東京都千代田区飯田橋2-14-7 光ビル



日本評価学会:社会実験分科会『話題提供:EBPMの最新動向と課題』7月1日開催(会員・一般)

日本評価学会-社会実験分科会では2023年度研究報告会を開催することになりました。

毎回100名近くの参加申込をいただいている大会です。今回も自由論題セッションにて、国際協力分野の発表が3本ございます。

なお、社会実験分科会では、過去20年で4回にわたり「エビデンスに基づく実践」(EBP)および「エビデンスに基づく政策立案」(EBPM)をテーマとした学会誌特集号を発行して参りました(日本評価学会の学会誌「日本評価研究」2006,2010,2016,2020)。

今回も珠玉の発表が揃えておりますところ、ぜひご参加ください。Zoom開催で参加は無料です。

開催主旨

近年、『エビデンスはあるのか?』が、政策論争において叫ばれるようになりました。エビデンスとは効果検証の結果のことを指します。今回の研究報告会は、『話題提供:EBPMの最新動向と課題』と題して開催致します。また、例年通りに自由論題セッションも開催して、幅広くエビデンスに基づく実践の研究成果をご発表いたたく場と致します。指定討論者も置き、成果は日本評価学会の本体にも提出される、正式な学会発表の場となります。

  • 主催:日本評価学会-社会実験分科会
  • 日時:2023年7月1日(土曜)9:30~12:30
  • 場所:Zoom
  • 参加費用:無料

プログラム

9:30-9:40 キーノートスピーチ
田辺智子(早稲田大学教育総合科学学術院 准教授、日本評価学会-社会実験分科会長)

9:40-10:20 話題提供:EBPMの最新動向と課題
<このセッションの主旨>
EBPM(Evidence-Based Policy Making)(エビデンスに基づく政策立案)が国内外で盛り上がっております。この最新動向と課題について、当分科会の各研究者から短時間でご発表いただきます。(10分x3名程度+質疑応答10分の予定)

  1. 『Theory of Change に関わる階層とレベル感』
    正木朋也・国際開発機構(JICA)
  2. 『ODAにおけるインパクト評価の再現性の問題』
    佐々木亮・国際開発センター(IDCJ)

10:20-12:20 自由論題セッション
<このセッションの主旨>
通常の学会の自由論題セッションと同じです。定量的な分析・評価の報告を想定しています。指定討論者を社会実験分科会から指名します。

発表1:尾瀬国立公園トイレチップ支払増加プロジェクト
Oze National Park Toilet Tip Payment Increase Project
鈴木宏和(特定非営利活動法人Policy Garage)
指定討論者:選定中

発表2:子どもの心理的ストレスに対する図書館活動の効果―ミャンマー帰還難民の事例から-
Impact of library activities on the psychological stress of children: Case of the returnees from Myanmar
三宅隆史・シャンティ国際ボランティア会 指定討論者:津富宏・静岡県立大学

発表3:SDGs達成に向けた革新的資金のインパクト評価の可能性:ODAとグローバル・タックスの支出に関する一考察
A Study on the Potential Impact Assessment of Innovative Financing mechanism for SDGs Achievement: An Examination of ODA and Global Tax Expenditures
唐語思(横浜市立大学)
指定討論者:佐々木亮・国際開発センター(IDCJ)

発表4:ヨルダン国ヨルダンにおけるシリア難民への平和の創出に係るインパクト評価
Evaluation of the Peacebuilding Impact: Water Supply Improvement in the Host Communities of Syrian Refugees in Jordan
佐々木亮/高杉真奈・国際開発センター(IDCJ)
指定討論者:田辺智子・早稲田大学

12:20-12:30 閉会の挨拶
正木朋也(国際協力機構(JICA))

参加申し込み方法

参加(視聴)を希望される方は以下のURLして必要事項を記載して6/26(月曜)までにお申し込みください(最大100名まで)。

その他

本会は全日程をZoomで実施します。最新情報につきましては参加登録の際に登録いただきましたメールアドレスにご案内をいたします。ご確認いただきますようよろしくお願いいたします。また、ご登録いただいたメールアドレスに今後の社会実験分科会の活動のご案内をお送りさせていただく場合があります。


本件にかんするお問い合わせ先

国際開発センター(IDCJ) 評価部
主任研究員 佐々木亮/Ryo SASAKI

  • [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)
  • 電話番号:03-6718-5932
  • FAX番号:03-6718-0910
  • 〒108-0075 東京都港区港南1-6-41 芝浦クリスタル品川12階



ミャンマーの民主化を考える国軍による見せかけの「選挙」と日本からできること

法政大学国際文化学部、法政大学大学院メコン・サステナビリティ研究所、特定非営利活動法人メコン・ウォッチが共催し、以下のセミナーを開催いたします。

お時間、ご関心のある方はぜひご参加ください。会場の人数制限、オンラインでの参加のご連絡をお届けするため、事前申し込みが必要です。

詳しくは以下の案内をご覧ください。

FICオープンセミナー:ミャンマーの民主化を考える:国軍による見せかけの「選挙」と日本からできること

2021年2月1日にミャンマー国軍が引き起こしたクーデター以降、同国では国軍や警察による民間人に対する暴力が継続し、多数の死傷者及び拘束者が発生している。

クーデターから2年3ヶ月になる2023年5月初旬の国連の報告では、ミャンマーには推定180万人以上の国内避難民(IDP)(クーデター以降の新たな避難民150万)が存在する。

国軍は無差別砲撃や空爆を続け、子どもを含む多数の民間人が死傷、やむを得ず武器を取った市民も増え、各地で武力衝突が発生し事態は混迷を極めている。

日本政府はクーデター以降、ミャンマー国軍に対し、暴力の即時停止、拘束された関係者の解放、民主的な政治体制の早期回復を求めている一方、 7千億円にも上る円借款(政府開発援助)を継続するなど、ミャンマーへの経済支援は停止していない。

国軍は各地で市民や少数民族武装勢力と戦闘を行い、また、自らに批判的な政党の活動を妨害したまま、「選挙」を実施しようとしている。この国軍の動きを日本政府が支援するのではないか、とミャンマーの市民社会からは強い懸念の声が上がっている。

今回のセミナーでは、ミャンマー市民社会の声を集め発信してきたProgressive Voiceのキンオーンマー氏をゲストに招き、市民社会がなぜ「選挙」に反対しているか、また、日本からどのような支援を求めているか話を伺い、議論する。

開催概要

  • 日時:2023年6月4日(日曜)13:30-16:00(開場13:00)
  • 場所:法政大学市ヶ谷キャンパス・ボアソナードタワー3階マルチメディアスタジオ(BT0300)およびオンライン
  • 共催:法政大学国際文化学部、法政大学大学院メコン・サステナビリティ研究所、NPO法人メコン・ウォッチ
  • 協力:NPO法人アーユス仏教国際協力ネットワーク、国際環境NGO FoE Japan、NPO法人日本国際ボランティアセンター(JVC)、武器取引反対ネットワーク(NAJAT)

申込みフォーム

こちらにご記入ください。

プログラム(予定)

  1. 「ミャンマー情勢、市民社会の望む支援」
    発表者:キンオーンマー(Progressive Voice)英語、逐次通訳付き
  2. 「ミャンマー国軍と日本の資金的なつながり」
    発表者:木口由香(NPO法人メコン・ウォッチ事務局長)
  3. 「議論・意見交換」
    モデレーター:松本悟(法政大学国際文化学部教授)

キンオーンマー氏

(民主化・人権運動家。NGO Progressive Voice 創設者・会長)

大学時代から民主化運動に参加し、1988年の軍事クーデターでタイ国境に逃れた。以降、海外を拠点にミャンマーの民主化を目指す世界各国の団体の調整を担っている。

Progressive Voice(プログレッシヴ・ヴォイス)

ミャンマーに連邦制の民主主義がもたらされることをめざして活動する調査・政策提言団体。ミャンマーにおける民主主義と人権を求める諸団体の連合であったビルマ・パートナーシップを前身とする。ミャンマー全土の草の根団体との協力関係を活かし、ミャンマーの市民社会からの声を国際社会に伝える架け橋の役割を果たしている。


本件にかんするお問い合わせ先

NPO法人メコン・ウォッチ

  • info* [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)
  • 電話:03-3832-5034(開催前日と当日は不在にしております。メールでご連絡ください)



『子どもの安全保障への開発アプローチ』研究部会(2023年5月)

「子どもの安全保障への開発アプローチ」研究部会では、「人間の安全保障」について子どもに焦点を絞った「子どもの安全保障」の概念について議論し、研究部会メンバーのそれぞれの研究領域における事例研究を発表し、政策提言にもつながるような理論的枠組みを構築することを目指して研究活動を進めている。

今年度は、隔月くらいのペースで、研究会を開催することを計画している。

『子どもの安全保障への開発アプローチ』研究部会
代表:勝間靖(早稲田大学)




上映&アフタートーク「移民の子どもたちと言語」5月20日開催(会員・一般)

映画を見て考える「移民の子どもたちと言語」 ―「僕の帰る場所」上映&アフタートーク

東京で暮らす在日ミャンマー人の一家。父は入国管理局に捕まり、日本育ちの子どもたちは、その寂しさから喧嘩ばかり。母は生活に不安を抱き、ミャンマーに帰りたい想いを募らせてゆくが…。

実話に基づく「移民」の物語を、ドキュメンタリータッチで描き出した作品。上映後、在日ビルマ/ミャンマー人の子どもの教育に関わるチョウチョウソーさんから、日本における母国語教育の現状と課題についてお話を聞く。

開催概要

  • 日時:2023年5月20日(土曜)13:00-16:00
  • 映画:「僕の帰る場所 Passage of Life」
    (監督・脚本・編集:藤元明緒、98分、音声:日本語・ミャンマー語、日本語・英語字幕つき)
  • 方式:対面とWebinar併用
  • 会場:上智大学6号館307(会場参加は先着180名まで)
  • 対象:上智大学学生、教職員、一般
  • 協力:「日本と出身国を往来する移民の子どもの社会再統合を見据えた言語教育―母語・公用語の補習教室を地域の「多文化共生」の拠点に」プロジェクト
  • 主催:上智大学グローバル・コンサーン研究所

お申し込み

1)対面会場参加者:
2)Webinar参加者:

登壇者:チョウチョウソーさん

NPO法人ミャンマー日本教育かけはし協会理事長、シュエガンゴの会代表、NHK国際放送ビルマ語キャスター、レストラン「ルビー」店主。

1991年、ビルマ軍事政権の弾圧を逃れるため来日。レストランで働きながら、祖国の民主化運動を続け、1998年に難民認定を受けた。

2002年、同胞の居場所づくりを目指して妻とレストランを開店。代表を務めるシュエガンゴの会は、週末に母語教室を運営している。2021年2月のミャンマーでの軍事クーデター発生後は、市民による民主化運動の支援を行っている。


本件にかんするお問い合わせ先

上智大学グローバル・コンサーン研究所

  • i-glocon@(* [at] の部分を@に修正してご使用ください)
  • 電話番号:03-3238-3023



公開ワークショップ「親子deリサーチ」3月25日開催(会員・一般)

国際協力に携わられている方で、ご自身や社会の子どもたちにも国際問題に目を向けてほしい方にお勧めです

1948 年以来、働く人たちの社会運動を支えてきた(公社)国際経済労働研究所が主催する、これからの国際社会を生きる子どもたちに知っておいてほしい国際協力の方法を、「運動」という観点で話し合うワークショップです。

「運動」とは何かを知り、そのなかでも、氾濫する情報に惑わされず正しい情報を得て国際協力につなげていく「調査運動」の方法を提案します。

SDGs、ウクライナ情勢のニュースなどを通じ、子どもたちにとっても国際問題を身近に感じやすくなっているのではないでしょうか。まずは自分の関心のあるできごとに「どうしたらかかわれるのか」「自分にできることだけをやっていて問題が解決するのか」という疑問をもってもらい、その解決方法の一つ「調査運動」を知ってもらう、体験してもらう半日です。

前半は授業形式ですが、後半はワークショップの参加者全体を1つの「社会」とみたてて、参加者の関心のある問題を発表し、パソコンやスマホ、本などを駆使しながら、参加者同士で助け合って情報を集めます。子供に照準を合わせ、大人はサポートに回っていただきますが、大人の方たちも初めて聞く話が多いのではないかと思います。

普段目にする情報について、「データの見方」も説明します。ネットの情報は物事のほんの一部でしかなく、「みんなで調べる」ことで様々な見方、正しい情報、たくさんの情報が得られるのだと知ってもらいます。

「調査運動」に1人でも多く取り組めば、世界はきっと変えられる。春休みに皆さんで一緒に考えてみませんか。

日時・プログラム

2023年3月25日(土曜)
13:00ー14:00(第一部:授業形式)
14:00ー15:00(休憩)
15:00ー16:30(第二部:ワークショップ)
※途中退室可。途中からのご参加は難しいためお控えください。

進行・スピーカー

吉浜智美(国際経済労働研究所 研究員)

参加対象

  • 国際協力に興味のある小5~高校生とその親(パソコンの操作が可能であればお1人での参加も可能です)
  • 「調査運動」に興味のある一般の大学生、社会人
    ※大人の方もご参加いただけますが、話す言葉は参加者の中で一番年齢の低い方に合わせますので、ご了承ください。
    ※内容は参加者によって大きな変更はありません。

実施方法

Zoom(参加者にURLをお送りします)

費用

チケット制

・同じ世帯は2名まで(親子以外に、きょうだいも可)1チケットで参加可能。
・無料・500円・1,000円から任意でお選びください。無料チケットは5組限定。

定員

20名程度

申込フォーム


本件にかんするお問い合わせ先

(公社)国際経済労働研究所
吉浜

  • yoshihama [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)
  • 090-1242-1058



『SDGsと地域社会』出版記念シンポジウム「SDGsを地域社会で実現しよう!」

SDGs の究極の目標は「誰も取り残されない社会」 。そのためには、地域社会で直面している課題を可視化し、住民参加で問題を解決していく必要があります。そこで私たちは、人間の安全保障指標〈宮城モデル〉をつくり、35 市町村ごとに、「命・生活・尊厳」に関わる問題をあぶりだしました 。その成果が、赤石書店より『 SDGs と地域社会』として刊行されました。このシンポジウムでは、指標の概要をわかりやすく説明するとともに、どのようにSDGs の実践を進めることができるか、地域の事例を交え議論します。

開催概要

  • 日時:2023年3月18日(土曜)午後1時30分〜3時30分(開場:午後1時)
  • 場所:エルパーク仙台6階 スタジオホール(仙台市青葉区1番町4-11-1)
  • 参加費:無料
  • 方式:会場およびオンライン参加(zoom)のハイブリッド
  • 共催:「人間の安全保障」フォーラム/SDGs市民社会ネットワーク
  • 協力・後援:米日財団/宮城県ユニセフ協会/みやぎ生活協同組合/公益社団法人日本青年会議所東北地区宮城ブロック協議会/JICA東北/宮城学院女子大学/宮城大学事業構想学群地域創生学類/人間の安全保障学会/国際開発学会/NPO法人ウィメンズアイ

申込方法

*申込締切日:3月17日

当日の流れ

  • 開会挨拶
  • 基調講演:「SDGsを地域で実現するために」高須幸雄
  • シンポジウム「SDGsを地域社会で実現しよう!」
    『SDGsと日本』に寄稿した宮城県の関係者が中心になり、指標を応用しながら、 「誰も取り残されない地域社会」をどうやって実現させるか、語り合います。子ども、女性、災害など、人間の尊厳にかかわるテーマをとりあげ、気仙沼の実践を紹介し、市民社会と企業のパートナーシップについて、そして宮城県と全国の取り組みがどうつながるかについて、意見を交換しながら議論を深めていきます。宮城県の内部、そして宮城県の内外の実践をつなげ、地域社会でSDGsを効果的に進めていくためのヒントを共有します。
  • 質疑応答
  • 閉会挨拶

登壇者等

  • 基調講演:高須幸雄(「人間の安全保障」フォーラム理事長、国際連合事務総長特別顧問(人間の安全保障担当)
  • モデレーター:峯陽一(同志社大学グローバル・スタディーズ研究科教授、JICA(国際協力機構)緒方貞子平和開発研究所客員研究員)
  • コメンテーター:新田英理子(SDGs市民社会ネットワーク理事・事務局長)
  • 司会:五十嵐光(ウィメンズアイ事務局長)

シンポジウム・スピーカー

  • 猪股純子(富谷市保健福祉部子育て支援課、とみや子育て支援センター所長)
  • 天童睦子(宮城学院女子大学一般教育部教授)
  • 三浦友幸(プロジェクトリアス代表理事、気仙沼市議会議員)
  • 尾形長治(公益社団法人日本青年会議所東北地区宮城ブロック協議会 2023年度直前会長)
  • 石本めぐみ(「人間の安全保障」フォーラム理事、ウィメンズアイ代表理事)

本件にかんするお問い合わせ先

「人間の安全保障」フォーラム

  • hsfkesennuma [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)
  • 090-5287-9106

同志社大学グローバル・スタディーズ研究科
峯陽一

  • ymine [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)



公開シンポジウム「ウクライナ避難民受入の今 ― 共生社会のあり方と教育の未来について」

2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻を受け、日本には2000人を越えるウクライナ避難民の方々が暮らしています。これら日本に避難しているウクライナ市民を支援すべく、笹川平和財団、NPO法人国際活動市民中心(CINGA)、NPO法人なんみんフォーラム(FRJ)はウクライナ避難民の電話相談窓口である避難民相談センター (Support Center for Refugees Japan、Support-R)を2022年5月19日に開設しました。

以降、Support-Rでは、入国間もない当事者のためのガイドや、その後の生活の長期化を視野にいれたFAQなどを作成し、発信してきました。また、ウクライナ周辺国から日本に渡航を希望する方や、全国に暮らすウクライナ避難民の方、またその支援者からの相談を受け付けてきました。心理面の相談のみならず、ビザの発給や渡航プロセス、日本での滞在資格や住まい、家族と離別したことによる問題、日本語学習等について様々な困難を抱えている現状がわかってきました。

また、ウクライナ避難民の子どもたちについて、日本国内において各地方自治体・国際交流協会等の支援の下、小・中学校に相当する学年の避難民の就学は各学校等で受け入れ努力がなされている一方で、特に義務教育ではない高校に相当する学年の生徒における学習継続や日本語の習得が困難であると懸念されています。そのため笹川平和財団では、在日本ウクライナ大使館及び日本財団の協力の下、2022年10月~11月に、ウクライナ避難民の教育分野に関する状況・支援調査(日本国内調査)を実施しました。

上記Support-Rの電話相談の実施に携わる各団体の調査および教育状況調査の結果に基づき、笹川平和財団とNPO法人なんみんフォーラム、NPO法人国際活動市民中心では、関係機関とともに、ウクライナ避難民の現状と調査結果を共有するシンポジウムを開催いたします。これまでの学びに加え、難民・避難民の方たちおよび外国ルーツの子どもたちへの十分な教育機会の提供に向けたより良い方策を議論できればと考えています。多くの方のご参加をお待ち申し上げます。

公開シンポジウム「ウクライナ避難民受入の今 ― 共生社会のあり方と教育の未来について」

日時

2023年3月7日(火曜)14:00-17:00 (JST)

開催方法

オンライン(Zoom利用)

主催

  • 笹川平和財団 アジア・イスラム事業グループ
  • NPO法人なんみんフォーラム
  • NPO法人国際活動市民中心

協力

日本財団

プログラム

14:00-14:05
開会挨拶 角南篤(笹川平和財団 理事長)

14:05-14:20
基調講演(ビデオメッセージ) セルギー・コルスンスキー氏(駐日ウクライナ特命全権大使)

14:20-14:27
講演1・伊藤礼樹氏(国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)駐日代表)

14:27-14:34 第1部 ウクライナ避難民の受入政策と現状
講演2・ウクライナ避難民の受入政策と支援について
山形正洋氏(出入国在留管理庁出入国管理課補佐官)

14:34-14:41
講演3・文化庁による日本語教育支援について
相田恭輔氏(文化庁国語課 日本語教育評価専門官)

14:41-14:51
質疑応答

15:00-15:10 第2部 実践報告:民間セクターによる取組
報告1・日本財団の実施しているウクライナ支援について
神谷圭市氏(日本財団 経営企画広報部 ソーシャルイノベーション推進チーム ウクライナ避難民支援室 リーダー)

15:10-15:28
報告2・NPO法人国際活動市民中心(CINGA)報告
「避難民生活相談センター(Support-R)の活動から見える支援者支援の在り方」
青柳りつ子氏(Support-R相談コーディネーター/行政書士/社会福祉士)

「ウクライナ語の『心のよりそい電話』の活動報告」
Zhuravel Olha氏(ウクライナ避難民 心理士)

「ウクライナ避難民への日本語教育支援の問題と新たな挑戦」
中川美保氏(Support-R相談コーディネーター/日本語教師)

15:28-15:43
報告3・NPO法人なんみんフォーラム(FRJ)の報告
「ウクライナの人々の受け入れから見えてきたこと」
赤阪むつみ氏(なんみんフォーラム理事)

15:43-15:53
質疑応答

16:00-16:15 第3部 実践報告・パネルディスカッション:難民/避難民の教育支援
報告4・ウクライナ避難民の教育分野に関する状況・支援調査
安達一(笹川平和財団常務理事)
岩品雅子(笹川平和財団 アジア・イスラム事業グループ 研究員)

16:15-17:00
パネルディスカッション
パネリスト:
明石純一氏(筑波大学人文社会系教授)
田中宝紀氏(NPO法人青少年自立援助センター定住外国人支援事業部責任者)

モデレーター:
石川美絵子氏(社会福祉法人日本国際社会事業団(ISSJ)常務理事・社会福祉士)

質疑応答

17:00
閉会 山口薫氏(なんみんフォーラム理事)

使用言語

日本語・英語 同時通訳

お申込

参加ご希望の方は、3月6日(月曜)正午(日本時間/JST)までに本ページよりお申し込みください。

※ お申込いただく際、メールアドレスの情報が正しく入力されているか、必ずご確認ください。もし受付確認のメールが届かない場合、「迷惑メール」フォルダもあわせてご確認いただきますよう、お願いいたします。

※ お申込み後、登録されたメールアドレスに仮登録確認メールが届きます。お手数ですが24時間以内にメールにあるURLをクリックし登録を完了してください。

※ お申込みいただいた皆様には、3月6日(月曜)の申込締切後にウェビナー参加用のURLをご案内いたします。

※ お申込みの際に皆様からいただく個人情報は、当財団の主催または後援によるセミナー・講演会等へご案内する際に使用させていただきます。


本件にかんするお問い合わせ先

<シンポジウムに関するお問い合わせ>
笹川平和財団 アジア・イスラム事業グループ(岩品、ロックマン)

  • asia-middleeast [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)
  • 電話番号:03-5157-5160

※取材についてのお問い合わせはコミュニケーション企画部広報課へお願いいたします。

  • spfpr [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)
  • 電話番号:03-5157-5389



採用公募:津田塾大学学芸学部「多文化・国際協力学科」教員 

津田塾大学学芸学部 多文化・国際協力学科では、下記の通り教員(専任講師、准教授または教授)の公募を行います。

担当科目

国際ウェルネスに関わる講義、1~4年セミナー。フィールドワーク、大学院での指導。
なお、一部の科目については英語での授業を担当していただく可能性があります。

勤務地住所

〒187-8577 東京都小平市津田町2-1-1 津田塾大学 小平キャンパス

募集人員

1名

着任時期

2024年4月1日(予定)

応募資格

  1. 国際ウェルネスの視点で、保健・医療、福祉、ケア、子ども、ジェンダーなどに関わる研究をしている方。
  2. 国際ウェルネスに関わる講義、1~4年セミナー、フィールドワークの指導を担当できる方。
  3. フィールドワークにもとづく人文・社会科学的な研究業績がある方。また、将来的に国際ウェルネスの領域で社会的貢献ができる人材の育成に熱意がある方。
  4. 博士号取得、あるいはそれと同程度の研究業績を有する方。
  5. 本学の建学の精神を理解し、教育・研究にくわえて入試など学内外の業務に貢献していただけること。
  6. 英語による授業ができることが望ましい。
  7. 大学院での指導をできる方。
  8. 国籍は問わない。ただし、日本語を母語としない場合には、業務に支障のない日本語運用能力を有すること。

雇用期間

定年68歳

募集期間

2023年04月20日 必着


本件にかんするお問い合わせ先

応募方法等の詳細については下記をご参照ください。

  • 大学HP:
  • JREC:

ご関心ありましたら詳細を確認いただき、ぜひ応募をご検討ください。また、適任の方をご存知でしたら、本件についてご周知いただきたくお願いいたします。




第33回全国大会セッション報告(一般口頭発表)

A. 一般口頭発表

A-1. 教育

  • 2022年12月3日(土曜)09:45ー11:45(アカデミーコモン8F 308F1E)
  • 座長:山田 肖子(名古屋大学)
  • ディスカッサント:荻巣 崇世(上智大学)、川口 純(筑波大学)

発表題目と発表者

(報告:山田 肖子)


A-2. Community

  • 2022年12月3日(土曜)13:20ー14:50(リバティタワー7F 10751B)
  • 座長:佐藤 峰(横浜国立大学)
  • ディスカッサント:野田 真里(茨城大学)、近藤 菜月(名古屋大学)

このセッションには対面で20名、オンラインで14名の参加を得て行われた。座長は佐藤峰(横浜国立大学)、コメンテーターは野田真理(茨城大学)と近藤菜月(名古屋大学)、佐藤峰が担当した。

まず、第一発表 “Youth Safeguarding Intangible Cultural Heritage in Luang Prabang through Community-centered Innovations”では、ラオスの古都ルアンプラバンにおける、コミュニティを中心とした若者の無形文化資産(ICH)保護の試みについての発表がなされた。野田会員からは、本研究の核となるコミュニティの示すものが明確ではないとの指摘がなされた。

続いて、SDGsの観点から、「持続可能な開発の第4の柱」としての開発リソースとしてのICHの在り方、経済・社会・環境の持続可能性との関係、ラオスの文化の基盤である仏教との関係について質問がなされた。

第二発表 “Group Identity and Self-Accountability with Autoethnography: A Privileged Mestizo amidst an Indigenous Community in Mexico”では、研究する側がオートエスノグラフィーを実施することで、より調査される側に対してより倫理的でアカウンタブルでいられるのではないかと言うアイディアが共有された。

佐藤会員からは、アイディア自体は優れているが、何故オートエスノグラフィーなのか、これがある調査とない調査での比較検討があったほうがより説得力があるのではないかと言う質問と共に、先住民およびメスチーソとしてのアイデンティティの流動性についてなどの指摘もあった。

第三発表 “Transdisciplinary Community Practice (TDCOP) for Rural Women’ s Empowerment: A Case Study in Gorontalo Province, Indonesia”では、伝統的な手工芸カラウォへの支援を通じて、女性の経済的エンパワーメントや、男性の人力小規模金採掘への参加率低下を目指すプロジェクトが紹介された。

近藤会員からは、プロジェクトが机やライトなどの物質的支援や技術的側面に焦点を当てているのに対し、伝統的手工芸や人力小規模金採掘に男女が従事する文化的社会的構造の調査とそれに基づくアプローチが必要ではないかという質問などが出された。

セッション自体はコメンテーターと発表者の対話があり有意義だったが、発表時間を5分短くしてフロアからの質問を受け付けられるとよりよいという印象を得た。

(報告:佐藤 峰)


A-3. 平和構築、レジリエンス

  • 2022年12月3日(土曜)15:10ー16:40(リバティタワー7F 10731A)
  • 座長:志賀 裕朗(横浜国立大学)
  • ディスカッサント:湖中 真哉(静岡県立大学)、関谷 雄一(東京大学)

発表題目と発表者

  1. 「人道・開発・平和構築のポケットと人道的開発支援の可能性-ティモール島の国境をめぐる考察」
    堀江正伸(青山学院大学)
  2. 「自然資源管理におけるレジリエンス概念の役割について-東アフリカを事例として」
    久保英之(地球環境戦略研究機関)、三浦真理(国際協力機構)
  3. 「複合的災害下におけるパタンに居住するネワール民族の女性自助組織の果たす役割-2015年ネパール大地震と新型コロナウイルスパンデミック以後のコミュニティ復興の事例から」
    竹内愛(南山大学)

堀江会員は、東ティモールの独立に伴って東西に分断されたティモール島では、東ティモールへは国際社会の注目が集まる一方、東側からの難民も多い西側が話題に上ることはなかったとしたうえで、分断後20年を経て、両地域の人々が国境を越えた新たな経済社会的相互依存関係を生み出していると指摘し、そうした国境を越えた連帯を促す支援のあり方について検討した。

これに対して、討論者の湖中会員は、「人道的開発」とは、当事者以外の周辺住民等を含むアクターを対象とした社会集団の拡がりを想定した開発のあり方なのか、それとも緊急/平時の二分法に囚われず、時間的な拡がりを想定して、慢性的問題に取り組むことを主張する開発のあり方なのかといった点等を質問した。

また同じく討論者の関谷会員は、ティモールの事例は、欧米列強が画定した国境に沿って独立国として歩まざるを得なくなったアフリカ諸国の国境線沿いの人々を彷彿させると指摘したうえで、このような歴史を持つ人々にとって、持続的な開発の未来にはどのような落としどころがありうるのだろうか、との問いを提起した。

続いて、竹内愛会員は、ネパールのパタンにおける女性自助組織である「ミサ・プツァ」が2015年の大地震や新型コロナ感染爆発に際して実施したコミュニティ復興支援活動について報告し、彼女たちが20年にわたる活動を通じて地域行政組織やコミュニティの男性と信頼関係を構築した結果、災害等の緊急状態下で迅速かつ効果的な活動を展開することができたと主張した。

これに対して、討論者の関谷会員は、カースト制度や男性優位の伝統が根強いネパール社会において、「ミサ・プツァ」は女性が持続的な社会的役割を営むようになる突破口になりうるのか、その活動がネパール社会に根付き、ジェンダーバランスを是正したり、カーストを超えた女性の繋がりに発展したりする可能性があるのか、等の問いを投げかけた。

最後に、久保英之会員と三浦真理会員は、気候変動の影響を被りやすい乾燥・半乾燥地帯を抱えるエチオピアとケニアを事例として、気候変動レジリエンス概念の政策実施への反映状況を分析し、自然資源管理におけるレジリエンス概念の効果的な活用のあり方について検討した。

これに対して討論者の湖中会員は、そもそもレジリエンス概念は開発学にどんな新規性をもたらしうるのかを考える必要性を指摘したうえで、気候変動の影響を受ける社会生態システムの内部と外部が連動しながら変化するというシステムの変容可能性を考慮してレジリエンスをどのように定義すべきか、コンテクストが変化しうる状況下において、攪乱要因と社会生態システムの脆弱性を特定することはできるのか、といった問いを提起した。

このように、本セッションは、ティモール、ネパール、アフリカという多様な地域を対象とした観察結果をもとに、多様な人々が変化する自然社会環境の中で共存していく道筋を考えるうえで根本的に重要な「国境」「レジリエンス」「ジェンダー」等の概念について熟考する貴重な機会となった。座長の時間管理が不適切だったためにフロアとの質疑応答の時間が取れなかったことが悔やまれる。

(報告:志賀 裕朗)


A-4. 教育、子ども

  • 2022年12月3日(土曜)15:10 ー 16:40(リバティタワー7F 10751B)
  • 座長:黒田 一雄(早稲田大学)
  • ディスカッサント:山﨑 泉(学習院大学)、小川 未空(大阪大学)

本セッションは、会場とオンライン併用によるハイブリッド形式で行われ、日本語による2発表により構成された。

第一に、追手門学院大学の平井華代会員により、「Southから Northへ:フィリピンのNGOの支援事例から得る日本の子ども食堂への示唆」と題した発表が行われた。本研究は、岩手県の子ども食堂の活動と、フィリピン・セブにおける貧困な子ども・家庭を支援するNGOの活動を、インタビューを中心とした質的研究手法により比較する研究であった。

この研究の独自性は、貧困な子ども支援に先進的なフィリピンから、日本に対する教訓抽出を目的とするというユニークな問題意識から出発していることであり、その試みは発表で示された具体的な提言により、十分に達成されていると見受けられた。途上国の教育を対象とした比較研究の新しいあり方を提示しており、挑戦的な取り組みとなっていた。

第二の発表は、東洋大学の金子(藤本)聖子会員による、「マレーシアにおける難民の学習環境-クアラルンプール近郊のコミュニティセンターの多様性-」と題する報告であった。マレーシアは難民条約を批准していないながら東南アジア最大の難民受け入れ国となっており、その多くがミャンマーからのロヒンギャ難民である。

本研究では、クアラルンプール近郊の難民が集中する地域において、難民を対象とした4つのコミュニティスクールでの調査を基にして、難民にとっての教育の役割・重要性を考察しながら、各校に潜む多様な課題が明らかにされた。難民の教育は、世界的な政策課題としてはその重要性を認識されながらも、学術的な研究の乏しい分野であり、今後の一層の展開が期待される。

この2報告に次いで、学習院大学の山﨑泉会員、大阪大学の小川未空会員(名古屋大学)両指定討論者によるコメントが行われ、それぞれの学術研究としての方法論について活発な議論が行われた。

(報告:黒田 一雄)


A-5. 教育

  • 2022年12月3日(土曜)15:10ー16:40(リバティタワー7F 10761C)
  • 座長:日下部 達哉(広島大学)
  • ディスカッサント:佐野 麻由子(福岡県立大学)、坂上 勝基(神戸大学)

発表題目と発表者

(報告:日下部 達哉)


A-6. Gender, Education

  • 2022年12月3日(土曜)15:10ー16:40(アカデミーコモン8F 308E1D)
  • 座長:石田 洋子(広島大学)
  • ディスカッサント:島津 侑希(愛知淑徳大学)、崔 善鏡(広島大学)

本一般口頭発表では、教育開発における重要な課題の一つであるジェンダー平等について、各国における現状とそうした不平等を生み出す要因、或いはCOVID-19の感染拡大による影響などに関する研究発表が行われた。座長は石田洋子氏(広島大学)が、ディスカッサントは島津侑希氏(愛知淑徳大学)及び崔善鏡氏(広島大学)が務めた。

Jean-Baptiste SANFO氏(滋賀県立大学)の発表、“Factors Explaining Gender Inequalities in Learning Outcomes in Francophone Sab-Saharan African Primary Education”では、サブサハラアフリカ諸国の基礎教育の成果におけるジェンダー不平等について、教育制度や所得の影響に加えて、社会や家族など客観的な測定が難しい要因が影響していることを解明するため、PASECの結果を用いて分析の進捗について報告が行われた。

Naoko Otobe氏(Gender, Work and Development Expert)の発表、“The Socioeconomic impact of multiple global crisis: Gender dimensions”では、日本国内におけるCOVID-19感染拡大による社会・経済的影響によってより明確になったジェンダー不平等について、政府発表の国内データの分析やOECDデータを用いた国際比較を通して課題を示し、日本政府による対応策と今後の課題について報告が行われた。

本一般口頭発表には対面・オンラインを併せて約30名が参加した。両発表ともジェンダー平等についてタイムリーで重要な課題を扱っているが、現時点では二次データを用いた分析であり、今後は一次データを用いたより詳細な分析が期待されることなど、活発な議論が行なわれた。

(報告:石田 洋子)


A-7. 社会開発

  • 2022年12月3日(土曜)15:10ー16:40(大学会館3F 第1会議室1F)
  • 座長:木全 洋一郎(JICA)
  • ディスカッサント:松岡 俊二(早稲田大学)、関根 久雄(筑波大学)

発表題目と発表者

  1. 「潜在的に田園回帰志向を持つ人の要因分析」
    戸川 椋太(立命館大学)
  2. 「人口減少に関する要因研究–マーシャル諸島共和国を事例として–」
    野原 稔和(マーシャル諸島海洋資源局)
  3. 「米国社会における差別問題と負のスパイラル—トランプ政権における国民の分断を中心に—」
    安部 雅人(東北大学)

本セッションでは、3本の研究発表が行われ、会場16名、オンライン14名の計30名による議論が行われた。

第1の戸川報告では、日本の大都市圏から地方への移住(田園回帰)を志向する要因として、一軒家の購入や車の所有、農業体験の参加経験、勉強に意欲的の3点を挙げ、若い移住者向けの居住意欲のわく住宅を用意すること、農業体験を通じて特産品の魅力を印象付けることを提言した。

戸川報告に対し、討論者の松岡会員からは、世界的に人口減少社会になっていく中で社会や家族の在り方が問い直されており、その中で地方移住促進策を捉え直す重要性が指摘された。

第2の野原報告では、マーシャル諸島共和国で2011年から2021年に人口減少に転じた要因として、平均余命、人口移動、出生率の観点から分析し、0歳代から10歳代の人口が大幅に減少しており、特に0歳代は0歳代から10歳代の人口よりもさらに下回っていることから、出生率が人口減少の一因と結論づけた。

野原報告に対し、討論者の松岡会員からは、出生率が減少した要因は何か、他の島嶼国の人口動態はどうなっているか、島嶼地域社会の持続性の阻害要因を考えるにはどういった問いを立てるのかといったコメントが出された。

第3の安部報告では、米国の差別問題の背景として歴史的な白人男性優位社会やコロナ禍による白人低所得者層の失業を挙げ、抗議運動の高まりが更なる警察の治安対策強化や民間人による銃の重武装化につながるとする負のスパイラルを指摘した。これに対し、黒人・アフリカ系の若年層からの教育・就業機会の充実化を提言した。

安部報告に対し、討論者の関根会員からは、差別問題の構造的問題は教育や収入向上の視点を超越しており、差別する側の視点から、なぜ差別をするのか、そもそも平等とは何なのかを問い直す必要性が指摘された。

3報告ともこれまでの国際開発学会ではあまり見られない課題設定をしている点に将来性を感じる一方で、必ずしも研究精度の高くない発表もあった。特に学生会員においては、大会での門戸を広げる意味でポスターセッションでの発表を奨励しているが、あえてセッション発表とするには、一定の質を確保すべく指導教官の監督指導の徹底をお願いしたい。

(報告:木全 洋一郎)


A-8. 経済と環境

  • 2022年12月3日(土曜)15:10ー16:40(大学会館3F 第2会議室1G)
  • 座長:豊田 利久(神戸大学)
  • ディスカッサント:黒川 清登(立命館大学)、渡邉 松男(立命館大学)

このセッションでは、途上国の経済と開発援助資金に関する3つの発表がなされた。その報告と討論の概要は次の通りである。なお、参加者は約20名であった。

(1) 「中国の国際協力資金が各国のIMFの金融支援プログラム参加に与える影響の検討」

大森佐和(国際基督教大学)

最近の中国の開発資金増大がIMFプログラムへの参加に影響するか否かを計量分析した。特に、中国の開発資金がIMFプログラムを短期的にはクラウドアウトしていること、中国と選好(国連投票行動)が離れている国では長期的にIMFプログラムに参加する傾向があること、などが示された。

討論者から、中国資金の長期的な影響の有無や異なった基準での選好の把握などを分析する必要性が指摘された。

(2) 「カンボジア銀行業の資本構成:高度ドル化経済における銀行業の計量分析」

奥田英信(帝京大学)

銀行経営の健全性を資本構成(資本金の体操資産比率)の決定要因によって解明することを試みた。2011年から7年間のデータを用いた計量分析により、ドル化経済の下で中央銀行の最後の貸手機能に制約があるにもかかわらず、商業銀行がリスクに十分な注意を払っていない可能性を見出した。討論では、ドル化経済と商業銀行の資本構成との関係に関する仮説のより明白な叙述の必要性が指摘された。

(3)「政府開発援助が直接投資に与える影響-VAR モデルによる検証」

大野沙織(京都大学)

主要5カ国のODAが海外直接投資(FDI)に及ぼす効果を2003年-2020年のデータによって計量分析した。主な結果は、ODAは必ずしもFDIに影響を及ぼしていないこと、1990年代のデータで実証されてきた日本のODAの先兵効果は見いだされないことである。討論では、日本の先兵効果が1990年代に終わったとされる理由のさらなる検討や分析手法再考の必要性が指摘された。

(報告:豊田 利久)


A-9. 教育

  • 2022年12月3日(土曜)16:50 ー 18:50(リバティタワー7F 10731A)
  • 座長:内海 成治(大阪大学)
  • ディスカッサント:澤田 康幸(東京大学)、平山 恵(明治学院大学)

12月3日16:50から行われた教育分科会には、会場に25人Zoom参加者約25人と合わせて約50人の参加があり、教育分野への関心の高さが感じられた。

本分科会では4つの発表が行われた。コメンテーターは澤田康幸先生(東京大学)、平山恵先生(明治学院大学)で、初めの2つの発表を澤田先生、後の2つの発表を平山先生に初めのコメントをいただいた。

最初の発表は内海悠二(名古屋大学)会員の「アフガニスタンにおける教育に対するコミュニティレジリエンス」であった。これは2014年の社会調査を利用したマルチ分析である。教育に対するコミュニティの役割を女性、児童労働、紛争状況等から分析したものである。澤田先生からは統計分性に関する指摘等があった。現在アフガニスタンは再びタリバン政権となり教女子教育は厳しい状況にあるが、こうしたコミュニティの意向は重要な意味を有すると思われる。

2つ目の発表は狩野豪(金沢工業大学)・石川健太(マンチェスター大学)会員の「日本のGIGAスクール構想はOne Laptop per Childと同じ道を歩むのか?」で、狩野会員が発表した。2005年から開始されたOLPCの経験から、現在日本で展開されているGIGAスクール構想の課題を分析したものである。標準仕様、教員研修、子どもの学習機会、性別や地域の格差等に考慮する必要性が明らかになった。澤田先生からはOLPCとGIGA構想とは状況が大きく変わっているので、比較対象の正当性への指摘があった。GIGA構想はOLPCのみならず、国際的な比較の中で検討されるべき重要な課題と思われる。

3番目は藤枝詢子(京都精華大学)会員の「フィジーにおける伝統的住居の建築技術継承の可能性」とい非常にユニークな教育課題である。フィジーのブレという伝統的な茅葺住居は全住居の1%と危機的状況にあり、その建築技術の継承には教育機関による技術教育の役割が重要であり、そのための課題を抽出したものである。平山先生からはこの発表がまとまりのある発表であるため、ご自身の経験した伝統的事業の継承に関する例が紹介された。ネパールの伝統医療、フィリピンの薬草事業、奈良正倉院の校倉津造りの継承の例である。

伝統技術の継承は国際的な課題であり、国際協力において注目する必要性が高いことが分かった。

4つ目の発表は、近藤葉月(名古屋大学)会員の「『いずれ自営業者のなりたい』若者たち:ガーナ農村部の学卒者のschool to work transition調査から」で、質問票調査とFG調査からの報告である。学卒者が政府セクターあるいはNGOへの就職を希望しながらも、将来的には自営業を目指していることが明らかになった。ガーナの雇用状況の不安定さが起業家精神を育んでいる状況が示された。平山先生からは、FGインタビューの採用、大学の教員の能力、雇用者側の問題等が指摘された。

熱心な発表と丁寧なコメントで非常に有意義な分科会になった。座長のミスで会場からのコメント・質問の時間がとれず申し訳なかった。今回の分科会は幅白い教育分野の各地の調査の報告であり、教育開発分野の広がりと深まりを感じた次第である。

(報告:内海 成治)


A-10. African Economy

  • 2022年12月3日(土曜)16:50 ー 18:20(リバティタワー7F 1075 1B)
  • 座長:笹岡 雄一(明治大学)
  • ディスカッサント:武内 進一(東京外国語大学)、福西 隆弘(ジェトロ・アジア経済研究所)

African Economyのセッションでは、Joseph Enoch Garcon氏が「TICADとアフリカの米セクターの参加型政策形成」Christian Otchia氏が「経済特別区(SEZ)の意味と構造変容」Hoi Yee Regina氏が「アフリカ地方の環境リスク認識」の3つの発表を行った。コメンテーターは武内進一氏、福西隆弘氏であった。

最初のTICADの発表ではTICADの経緯、米生産についてはアジアの緑の革命や日本の経済モデルとの関係、TICAD型開発理念の意義が語られたが、オーナーシップとパートナーシップの原則が反映されている特徴は首肯されるものの、日本の農業の実績とCARD実施体制に有意な関係はないのではないか、アフリカが力を注ぐべきは米なのかメイズなのかといったコメントがあった。

SEZについてはアジアやラ米では経済的な効果をもたらしたが、アフリカでは顕著な効果がなかった、ないしその効果は特定地域に限定されていたとの発表であった。なぜアフリカでは効果がなかったのかについてはlocal captureの問題があり、効果のスピルオーバーがアフリカでは低く、従ってマクロの産業構造も工業化などの変化に乏しかったという説明であった。発表趣旨は明確であったが、産業構造の変化はSEZだけで捉えられるのかといった問いや回帰分析で適切な変数について注意を払うべきとのコメントがあった。

環境リスクはナイジェリア中部の人々の認識について長年のデータ分析から行ったもので、降雨量や時期の集中化による洪水の発生や、気温の変化なども相まって牧畜民の移動や生活の変化をもたらす認識の変化が現れているという趣旨であった。これがフラニ族の移動や周囲の人々との紛争にもたらす影響については今後の課題とのことであった。

3つの発表とも内容の濃い力作であったが、最初の2つはやや当初の想定に思い込みもあった気がした。最後の発表は降雨量などの物理的なデータと遊牧民の意識とを組み合わせた長期の調査を反映したもので、構想の大きさにとても感心させられた。

(報告:笹岡 雄一)


A-11. 援助、環境

  • 2022年12月3日(土曜)16:50 ー 18:50(リバティタワー7F 1076 1C)
  • 座長:大塚 健司(ジェトロ・アジア経済研究所)
  • ディスカッサント:小林 尚朗(明治大学)、山口 健介(東京大学)

本セッションでは4本の報告があった。

まず槇田容子(国立環境研究所)会員から「開発援助における気候変動適応主流化―ボトムアップアプローチの普及について」というタイトルで報告があり、気候変動適応策の策定には、科学主導型のトップダウンアプローチに加えてコミュニティ主導型のボトムアップアプローチを組み合わせたデュアルアプローチが有効であることを指摘し、JICAのプロジェクトを事例にその課題と解決策を明らかにした。

次に侯テイ玉(お茶の水女子大学)会員から「市民社会の視点から見たミャンマーの経済特区における日本のODA政策と中国の『一帯一路』構想の実践に対する比較について」というタイトルで報告があり、ミャンマーにおける日本、中国それぞれの経済特区に対する開発援助のアプローチの同異を検討し、いずれも市民社会サイドから批判を受けてきたものの、その背景にある政策意図、リーダーシップと人的コネクションなどに違いがあることを指摘した。

続いて榎本直子(法政大学)会員から「健康的に、地球環境問題の解決を目指した『行動変容』モデルに関する一考察」というタイルとで報告があり、法政大学環境センターによる独自の環境マネジメントシステム「EMS」に注目して、学生アンケート調査を基に行動変容の実態を明らかにしつつ、さらなる行動変容を促す企画を行ったことを紹介した。

最後に高柳彰夫(フェリス女学院大学)会員から「DAC市民社会勧告の実施:南の市民社会の支援をめぐって」というタイトルで報告があり、DAC勧告を概観した上で勧告採択後に策定中の南の市民社会組織支援のためのツールキットのプロセスを紹介し、日本社会へのインプリケーションについて論じた。

槇田会員と榎本会員の報告に対しては小林尚朗会員(明治大学)から、侯会員と高柳会員の報告に対しては山口健介会員(東京大学)からコメントがあり、フロアからの質問やコメントも含めて報告者との間で質疑応答が活発に行われた。

(報告:大塚 健司)


A-12. Economy and Environment

  • 2022年12月3日(土曜)16:50 ー 18:20(大学会館3F 第2会議室1G)
  • 座長:小島 道一(ジェトロ・アジア経済研究所)
  • ディスカッサント:柳原 透(拓殖大学)、岡本 由美子(同志社大学)

発表題目と発表者

  • “Overseas Employment as Means to Sustain Economic Growth and Development: The Case of Overseas Filipino Workers”
    Armand Rolla
  • “Future Estimation of the Amount of Solid Waste in Fiji -Empirical analysis based on quantitative and qualitative analysis”
    高木 冬太(立命館大学)
  • “Addressing the Japanese elderly mobility problems with autonomous vehicle”
    PANDYASWARGO Andante Hadi (Waseda University)

Three presentations were delivered in the session on “Economy and Environment”.

Ms. Armand Rola made presentation on “Overseas Employment as Means to Sustain Economic Growth and Development: The Case of Overseas Filipino Workers“. This paper seeks to illustrate how the overseas employment of Filipinos can be both beneficial to the host country and to the Philippines by looking at the various host countries’ demand for labor and the overseas remittances’ contributions to the Philippines’ Gross National Product. Based on historical secondary data, the remittance contributions to the country’s GNP were valued at % in 1984 and grew to as much as % in 2006. In addition, there were only 350,982 Filipinos deployed in 1984 which grew to almost 2.3 million in 2018. Dr. Yumiko Okamoto, a commentor of the session, recommended to compare the magnitude and the role of remittances and foreign aid (grant portion) in the economy of the Philippines, because both of them appear in the current transfer balance of the current account of BOP.

Mr. Tota Takagi presented “Future Estimation of the Amount of Solid Waste in Fiji -Empirical analysis based on quantitative and qualitative analysis”. The paper estimated future generation of waste in Fiji, using Input-output Table with some assumption on consumption expenditure per tourist, and the number of tourists. It is estimated that waste generation would increase by 20,000 tons per year in 2030, at least compared to the amount in 2018. Mr. Michikazu Kojima, the chair of the session, suggested some further research such as impact of mismanaged waste in Fiji to tourism, comparing economic ripple effect and cost of waste management, and financing mechanism on waste management such as tourist tax.

Third speaker, Ms. PANDYASWARGO Andante Hadi, made a presentation titled “Addressing the Japanese elderly mobility problems with autonomous vehicle.” The study analyzed the Japanese Study of Aging and Retirement (JSTAR) data and gained insights through multiple correspondence analyses and nonparametric tests. The study found that technology adjustments, such as universal designs, may help ease the use of autonomous vehicles by drivers with lower cognitive and physical functions. However, the steep price of the technology must be aided with innovative business models. Dr. Toru Yanagihara, the commentator, pointed out that regarding transportation modes, it is necessary to consider not only the two extremes, personal vehicle and public transportation, but also various methods in between personal and public transportation. He also pointed out that autonomous driving was a major technological innovation, with maintaining the status quo in daily life and with reducing the psychological resistance.

(報告:小島 道一)


A-13. Disasters, Infrastructure, Education

  • 2022年12月4日(日曜)09:30 ー 11:00(リバティタワー8F 1085)
  • 座長:本田 利器(東京大学)
  • ディスカッサント:松丸 亮(東洋大学)、桜井 愛子(東洋英和女学院大学)

Disasters, Infrastructure, Educationのセッションでは、災害を軸に多岐にわたる発表がなされた。

“Preparedness of the Coastal Inhabitants of Pakistan towards Natural Hazards”では、パキスタンの4地区を対象とした住民の災害意識や災害情報の入手経路などの調査報告がなされた。当日はそれに加え、脆弱性および災害対応力に対する分析も報告された。会場から全国的な傾向との比較について質問があり、それを含めた分析を進める予定であることが報告された。

“Barriers to education and lifelong learning of the climate change displaced persons: a case study in Indonesia”においては、インドネシアの教育環境について女子の教育に課題があること等が報告された。また、気候変動対策の政策に対して教育制度が十分に対応できていない現状等が報告された。会場からのコメントとの議論の中では、行政が人々の移動等のデータを収集管理することや高度教育への支援の必要性も言及された。

“Case study of Biomass Clearance in Dam Reservoir related to Nam Ngiep 1 Hydropower Project in Lao PDR”では、ダム建設に伴うリスクとその対応として、不発弾処理の課題や地方行政の対応の遅さ、地元建設企業への技術指導の課題が紹介された。会場との議論で、これらがラオスだけではなく一般性のある課題であること等が言及された。いずれの発表も時宜を得た発展性のあるものであり、議論も有意義なものであった。

(報告:本田 利器)


A-14. Education and Culture

  • 2022年12月4日(日曜)09:30 ー 11:30(リバティタワー9F 1096)
  • 座長:工藤 尚悟(国際教養大学)
  • ディスカッサント:小川 啓一(神戸大学)、汪 牧耘(東京大学)

発表題目と発表者

  1. 「留学生・日本人学生の個人的体験と教科書をつなげる試み」
    吉田秀美(法政大学)
  2. “Measurement of the level of intangible cultural heritage awareness and knowledge among the local community of Luang Prabang in Lao People’s Democratic Republic”
    Jerome Silla (United Nations University)
  3. ”China’s Belt and Road Initiative and Reshaping Internationalization of Local Higher Education Institutions”
    劉靖(東北大学)
  4. “The factors influencing the diffusion process of the teacher portal use among lower secondary school teachers in Mongolia”
    Yuji Hirai (Tokyo Institute of Technology)

本セッションでは、以下の4件の発表があり、参加者は10名ほどであった。コメンテーターは、小川啓一(神戸大学)および、汪 牧耘(東京大学)の各会員であった。いずれの報告も国際化や新型コロナ感染症の拡大などで多様化する教育現場のダイナミズムを捉える、重要な研究テーマであった。

“留学生・日本人学生の個人的体験と教科書をつなげる試み”

吉田秀美(法政大学)

アジアからの留学生が増加していくなか、大学教育の現場でサステイナビリティを議論するとき、その背景となる条件に対する異なる意見があることによって、議論の深化が生まれるという内容であった。発表者はこれまで自身の担当する科目にて学生が用いた発表スライドを見せながら、学生の持つ多様性を示した。会場からは、豊富なデータに対するコメントや、一科目のデータからどのようにESD全体への提言につなげていくのかなどの質問が出された。

“Measurement of the level of intangible cultural heritage awareness and knowledge among the local community of Luang Prabang in Lao People’s Democratic Republic”

Jerome Silla (United Nations University)

ラオス・Luang Prabangにて、コミュニティの無形文化財(ICH: intangible cultural heritage)に対するawarenessとknowledgeの理解度を定量的に調査した内容が報告された。具体的にはICHに関する12項目を網羅するアンケートを作成し、Luang Prabangにある29村において435人に対して実施した内容が示された。会場からは、発表者が実施した大規模調査に対するコメントと共に、ICHに関わる政策の意思決定に誰がどのように関わるのかなどの質問が出された。

”China’s Belt and Road Initiative and Reshaping Internationalization of Local Higher Education Institutions”

劉靖(東北大学)

中国の一帯一路政策における高等教育の国際化について、ドキュメント分析手法を用いて調査した内容が報告された。一帯一路政策は中国の地方大学においても国際化を起こすカタリストとしての役割が期待されているという内容に対して、興味深いという会場からのコメントが多くあった。

“The factors influencing the diffusion process of the teacher portal use among lower secondary school teachers in Mongolia”

Yuji Hirai (Tokyo Institute of Technology)

新型コロナ感染症の拡大によって学校教師の研修制度が実施できなくなるなか、モンゴルではインターネットを介した研修プログラムの普及が進んでいる。本発表は、モンゴルの中学校教師の間でオンライン研修プログラムの普及プロセスを、ウランバートル内の4地区で実施したアンケート調査(835件)のデータを用いて分析した内容が報告された。会場からはクラスター分析の内容に対する質問の他、現地での大規模調査に対するコメントなどが出された。

(報告:工藤 尚悟)


A-15. Aid Organization, Economic Growth and Poverty

  • 2022年12月4日(日曜)09:30 ー 11:00(リバティタワー10F 1105)
  • 座長:岡部 正義(共立女子大学)
  • ディスカッサント:高橋 基樹(京都大学)、伊東 早苗(名古屋大学)

本セッションは2名の会員による報告が行われ、参加者は対面8名・オンライン2名、進行は全て英語で行われた。

第一報告は、伏見勝利会員(JICA緒方貞子平和開発研究所)による”Ceremonial Implementations at Overseas Locations: A Multi-Case Study of a Bilateral Development Cooperation Agency”

報告者はまず、様々な事業体が海外展開し、海外子会社や現地海外事務所(OO)を展開する中で、HQから下された事業がOOの実施局面では、“ceremonial implementations”(儀礼的な実施、CI)にとどまっていることの功罪に問題意識を示し、二国間開発協力機関(BDCA)にも該当すると問題提起があった。

そして、報告者自身の豊富なこれまでの情報の蓄積に加え、OOに勤務する現地スタッフへのインタビュー調査を用いて一次データを構築し、CIが行われる背景やその性格、メカニズムを丹念に分析。HQや本国との関係に緊張性をはらむなかで、CIはセーフガードとしての機能を果たしていることをBDCAの事例でも立証したとする結論が報告された。

第二報告は、原正敏会員(ビジネスブレークスルー大学)による“A Development Strategy on Middle-Income Trap and Startups Promotion in the Philippines”

報告者は、高所得国や上位中所得国に移行した域内近隣国の台頭と対照的に、フィリピンが過去三十年にわたり低位中所得国から抜け出せない「中所得国の罠(MIT)」に問題関心を設定する。そして、MITから抜け出せない原因のひとつに、同国ではスタートアップにかかる取引費用・初期コスト等が高いという仮説を開発計画や先行研究から示した。

世銀のWorld Development Indicatorsから「ビジネスのしやすさ(EDB)」尺度という変数を集計・構築してこれを関心ある独立変数とし、経済成長の尺度として一人当たりGDPに回帰する線形回帰分析を行った。さらに政府文書等の丹念な解釈に基づく定性的分析も実施した。主たる結果はEDBの説明力を示す結果となったとする結論が報告された。

各報告後、第一報告には伊東早苗会員(名古屋大学)、第二報告には高橋基樹会員(京都大学)がディスカッサントとなって質問や提案事項を議論し、さらにフロア参加者の質問も活発に寄せられ、所期の時間を超えて活発に報告者との間に議論を展開することができ、たいへん有意義なセッションとなった。

(報告:岡部 正義)


A-16. 援助機関と現場

  • 2022年12月4日(日曜)09:30 ー 11:00(リバティタワー10F 1106)
  • 座長:源 由理子(明治大学)
  • ディスカッサント:松本 悟(法政大学)、北野 収(獨協大学)

本セッションの第一報告は、隅田姿(広島修道大学)会員による「開発援助における現地実務者の役割~境界連結者としての貢献~」である。現地に派遣された援助実務者の働き方に焦点をあて、境界連結者(boundary spanner)の概念を使い、現地実務者が果たす役割について検討したものである。報告に対しコメンテーターの松本悟(法政大学)会員から、境界線の両側の視点から見る必要性や現地実務者の役職による違いなどについてコメントがあった。

続く第二報告は、松原直輝(東京大学)会員による「現場主義の理想と現実~JICAの本部・現地事務所関係から見た組織経営~」である。JICA独立行政法人化にともなう「現場主義」の組織改革プロセスで組織改革の巻き戻しが起きた背景を、地方分権化の議論を分析の枠組みとして考察したものである。

松本会員からは、効率性に重きをおく地方分権化の枠組みで「現場主義」を検討することの是非、現場を理解した中堅職員の増加との関係性、緒方貞子氏の存在の影響についてコメントがあった。また、隅田報告と松原報告をつなぎ、境界連結者分析と「現場主義」双方から考えるとどうなるのかという問いかけがあり、両者の継続的・発展的な研究への期待が述べられた。

最後に、第三報告である若林基治(JICA)会員による「開発途上におけるソーシャルイノベーションの実現にかかる開発協力機関の役割について」は、開発途上国のソーシャルイノベーションのためには開発協力機関が一定の役割を果たすという仮説のもと、日本の高専がアフリカにおいて企業、大学等と協力して行ったプロジェクトを事例として仮説検証を行ったものである。

コメンテーターの北野収(獨協大学)会員からは、かつての技術移転論・普及教育論との違い、語法としてのイノベーションの整理上の課題、イノベーションの目的が成長に限定されることへの懸念、イノベーションにおける市民社会の位置づけなどのコメントがあった。

フロアからの質問・コメントも含め、3人の報告者ともに可能な範囲でのフィードバックを行いつつ、今後の研究上の課題として捉えていくことが表明された。援助の現場と理論を架橋する研究の更なる発展を期待したい。

(報告:源 由理子)


A-17. 経済

  • 2022年12月4日(日曜)12:45 ー 14:45(リバティタワー8F 1083)
  • 座長:後藤 健太(関西大学)
  • ディスカッサント:受田 宏之(東京大学)、會田 剛史(ジェトロ・アジア経済研究所)

第一報告:「インドネシアにおける労働市場の構造変化と賃金格差」

  • 報告者:本台進会員(神戸大学)
  • 討論者:會田剛史会員(ジェトロ・アジア経済研究所)

本報告は、通貨危機後のインドネシアの労働市場に起きた構造変化の分析にフォーカスをあて、その賃金格差への影響を分析したものであった。討論者からは、非常に多くの示唆に富む報告であるというコメントとともに、現在の分析が労働供給側の観点に限定されていることから、ミクロレベルでの賃金の決定要因や、男女間・都市農村間の賃金格差の決定要因の推定など、労働需要側の分析の可能性が示された。

第二報告:「GVCと自律共生的発展との連携:日系自動車メーカーのASEAN地域活動史の検討」

  • 報告者:竹野忠弘会員(名古屋工業大学)
  • 討論者:受田宏之会員

本報告は、東南アジアにおける日系自動車メーカーの事業展開を、多国籍企業とローカル企業・産業間連携におけるメリットを、製品・製造設計の観点から検討し、地場企業にとっての「経営発展」の可能性に関してするものであった。討論者からは、東南アジア地域の多様性をどのように考えるのか、さらにグローバル・バリューチェーンの開発的な側面をどのように扱うのか、といった質問があった。

第三報告:「メキシコにおけるトランジット移民―法整備と現実のはざまで」

  • 報告者:柴田修子会員(同志社大学)
  • 討論者:受田宏之会員

本報告では、最近の米墨国境における非正規な越境者の急増と、そこにおける非メキシコ人(トランジット移民)の比率の急増という背景の下、メキシコにおける移民・難民に関する法整備の状況と、これとの整合性な政策実践に焦点を当てていた。そこでは、移民をプロセスととらえる視点の重要性や、最終目的地として考えられてきた米国に向けて、トランジット移民が必ずしも直線的な移動経路を取らない多様な実態を、詳細な現地調査でえられた知見に基づいた報告がなされた。討論者からは、こうした、データの取りにくい課題に対して、NGOからアクセスした点に対する評価があった。また、プッシュ・プル要因の中でも、近年高まりを見せているプッシュ要因の重要性、さらにはNGOのアドボカシー活動の影響などに関する質問があった。

第四報告:「ラオス日系企業工場労働者の生産性改善とピア効果―作業グループにおける性格特性の異質性に着目したミクロ計量分析―」

  • 報告者:栗田匡相会員(関西学院大学)
  • 討論者:會田剛史会員

本研究は、途上国(ラオス)の工場労働者を対象に、観測不能な「能力」を性格特性(性格五⼤因⼦)で代用とし、こうした能力のグループ内の異質性の労働生産性への影響を推計することで、そのピア効果を検証しようとしたものである。討論者からは、本研究のユニークで意欲的な側面への言及があった。また、理論モデルおよびデータ収集(実験)にいける作業環境に関するにいくつかの重要なコメントがなされた。

4つの全ての研究発表が、それぞれ大変興味深いものだった。二人の討論者の的を射た建設的なコメントもあり、新たな研究の視点を提供するような有意義なセッションだった。なお、本セッションでは4つの報告があり、それぞれ20分の発表、討論者による5分のコメント、その後の討論者の回答とフロアからの質問を合わせて5分という時間配分となっていたが、やや時間不足な印象があったのが若干残念であった。

(報告:後藤 健太)


A-18. 思想、人類学、文化

  • 2022年12月4日(日曜)12:45 ー 14:45(リバティタワー10F 1103)
  • 座長:重田 康博(宇都宮大学)
  • ディスカッサント:橋本 憲幸(山梨県立大学)、木山 幸輔(筑波大学)

本報告は、一般口頭発表「思想、人類学、文化」セッションについてである。参加者は、4名の発表者、2名の討論者など事務局関係者を含めて約20名であった。

最初の清水大地(筑波大学大学院)会員の「多元世界におけるアフリカの開発論:ウブントゥ的開発論への展望」は、エスコバルの多元的世界観におけるアフリカのウブントゥ的開発論を ILO、マラウィの事例に考察し、その本質が他者との関係性にあるとした。

討論者の橋本憲幸(山梨県立大学)会員からは、「ウブントゥ」概念が表象の政治のなかで利用されてきたことを清水会員自身はどう評価しているのかといった質問が出された。

次の浅田直規(筑波大学)会員の「人類学と開発(学)の交点としての『開発予後』を考える―ルーマニアの児童福祉制度を事例に」は、開発プロジェクト終了後の影響を「開発予後」として、ルーマニアの児童福祉制度/国際援助を事例に調査し、その歴史、児童養護施設の長所と課題を取り上げ、ポスト共産主義の文化からどのように持続するのかが重要だと述べた。橋本会員からは、ルーマニアへの児童福祉制度に対する国際援助が共産主義の文化とどのように結びついているのかという質問があった。

三番目の宮澤尚里(早稲田大学)会員の「伝統文化の現代的役割―インドネシア・バリ島の事例から」は、インドネシアのガムラン音楽活動は参加者のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)にどのような影響を与えているかのアンケート調査を行い考察した。討論者の木山幸輔会員(筑波大学)からは、QOL 増進を目指す「政策提言」の位置付け、ガムランの営みと QOL の因果関係などの質問があった。

最後の岡野内正(法政大学)会員の「SDGs 思想の歴史的起源―トーマス・スペンス(1750-1814)の自由移民・土地総有・全員参加・住民管理原則に基づくグローバルなベーシックインカム資本主義発展構想」は、総有制法人によるオーナーシップの確立構想を提案しベーシックインカム理念の創設者スペンスの著作などをテキスト分析しグローバル資本主義発展と普遍的人権保障が両立できるかを検討している。木山会員からはスペンスの総有制法人とSDGs や人権の概念との関係、SDGs や人権の「何に」寄与するのかといった質問があった。

(報告:重田 康博)


A-19. 保健衛生

  • 2022年12月4日(日曜)12:45 ー 14:15(リバティタワー10F 1106)
  • 座長:杉田 映理(大阪大学)
  • ディスカッサント:松山 章子(津田塾大学)、福林 良典(宮崎大学)

発表題目と発表者

(報告:杉田 映理)


A-20. 社会開発、コミュニティ

  • 2022年12月4日(日曜)12:45 ー 14:45(リバティタワー11F 1113)
  • 座長:長畑 誠(明治大学)
  • ディスカッサント:大橋 正明(聖心女子大学)、秋吉 恵(立命館大学)

発表題目と発表者

(報告:長畑 誠)


B. 企画セッション

C. ラウンドテーブル

D. ブックトーク、プレナリーほか

第33回全国大会を終えて