第25回春季大会:合理的配慮、感染症対策等、託児とキ ッズルーム、Prayer Roomの利用について【第7報】

本大会は、多くの方にご参加いただけるよう、障害をもつ方への情報保障や化学物質過敏症に配慮した環境、その他お申し出のある合理的配慮を可能な範囲でいたします。

発表者・参加者のみなさまには、多くの方がご参加できるよう、大会における合理的配慮へのご協力をどうぞよろしくお願いいたします。

また当日の感染症対策等に関するお願いや、託児室の利用等についてまとめましたので、ご確認ください(以下の内容は、大会HPにも記載しています)。

1.合理的配慮

★大会発表における情報保障のお願い

本大会は、様々な障害をもつ会員の参加を前提に、発表者に情報保障への協力をお願いしています。

下記のリンクから、資料作成や当日の発表に関する留意点を確認のうえ、ご協力ください。

春季大会の参加にあたり、合理的配慮が必要な方は、大会実行委員会及びJASID合理的配慮ワーキンググループのメールアドレス(ページ下部参照)宛に、5月15日(水曜)までにお申し出ください。

追って、合理的配慮ワーキンググループの担当者より直接ご連絡を差し上げます。

  • 合理的配慮ワーキンググループHP(日本語)

2. 感染症対策、受動喫煙防止、化学物質過敏症対策など

本大会は一部のセッションを除いて対面開催です。大会実行委員会として、下記の感染対策等を実施します。安全・安心な大会の開催に向け、ご協力をお願いします。

• 参加者のみなさま

感染症対策として、来場前はご自身で検温など体調の異常がないか確認してください。

発熱(37.5度以上)あるいは体調不良がある場合は、感染症の陽性・陰性を問わず来場はお控えください。

宇都宮大学内は全面禁煙となっています。受動喫煙防止の観点からも喫煙はお控えください。また、化学物質過敏症対策のため、人工香料等はお控えください。

• 対面登壇者のみなさま

【発表者】

体調不良で来場できない場合等、欠席せざるを得ない事情が発生したときは、速やかに大会事務局とコメンテーター・座長にご一報ください。

但し、理由を問わず、来場できない場合は欠席となりますこと、ご了承ください。

オンライン発表への切り替えは出来ません。

また、ビデオ録画による発表も、その場での質疑応答ができないことから対応いたしません。

【コメンテーター】

体調不良で来場できない場合、大会事務局のメールアドレスをCCに入れた上で、座長にご相談ください。

事前にコメントを文書で用意しておられる場合は、座長宛にお送りください。

口頭コメントのみのご予定の場合は、代わりのコメントを座長にお願いするなど、セッション内での調整をお願いします。

【座長】

体調不良で来場できない場合、大会事務局のメールアドレスをCCに入れた上で、コメンテーターの方と連絡をとり司会・進行を兼ねていただくなど、セッション内での調整をお願いします。

• 会場での対応

感染症予防と化学物質過敏症対策のため、比較的広く換気がしやすく、化学物質の比較的少ない部屋を選び、開催校として準備をすすめています。

個人差もありますが、一定数いる化学物質過敏症の方も多少安心してご参加できると思います。

会場では、定期的な換気を行い、入り口に手指消毒剤を用意いたします。マスク着用は来場者の個々の判断に委ねます。

3.託児とキッズルームの利用について

6月15日(土曜)の託児とキッズルームについて、3つの利用方法をご案内します。

(1)  キャンパス内の保育園の利用

キャンパス内で、大会会場から徒歩5分以内にある「宇都宮大学まなびの森保育園」()を利用することができます。

対象は、0歳~小学6年生の児童になります。

利用料は年齢により5,000円から6,000円で、そのうち5,000円を学会から補助します*。

以下の利用案内で詳細を確認の上、5月15日(水曜)までにお申し込みください。

キャンパス内保育園の利用案内:

(2)キャンパス外の保育園の利用

キャンパス外の保育園をご利用される方は、学会から5,000円を上限に補助します*。

保育園の申し込みや連絡等は各自行っていただきます。

学会の補助をご希望の方は、以下のリンクから5月15日(水曜)までにお申し込みください。

ご利用の方は、お子様を預ける保育園にご自身で予約をして、当日保育園から領収書を受けとり、大会受付に提出し、上限5,000円の補助を受けるという流れになります。

キャンパス外保育園の利用補助の申し込み:

*上記の(1)と(2)のキャンパス内外の託児の補助は先着10人になります。

締め切りは5月15日(水曜)になりますが、早めにお申し込みください。

(3)キッズルーム(子連れ休憩場所)

大会会場である大学会館2階のお茶室をキッズルームとして開放します。

保育者はいませんが、利用者自らの管理責任の下で、お昼寝や授乳等に自由に利用できます。

お昼寝マットやおもちゃ等も含めて、各自でご準備いただく必要があります。

こちらは事前に申し込む必要はなく、当日ご自由にお使いいただけます。

4.Prayer Room(祈祷室)

Prayer Roomは大会会場である4号館1階にあります。

事前に申し込む必要はありませんが、男女共用の小部屋ですので、誰かが使用中の場合は使用できません。

大会受付で鍵を渡しますので、当日受付までお問い合わせください。


本件にかんするお問い合わせ先

国際開発学会第25回春季大会実行委員会
実行委員長:阪本 公美子(宇都宮大学)

  • 大会実行委員会メールアドレス:jasid2024spring [at]
  • 合理的配慮ワーキンググループメールアドレス:reasonable_accommodation [at]

(*いずれも、 [at] の部分を@に修正してご使用ください)




第34回全国大会セッション報告(一般口頭発表)

一般口頭発表


1C:教育(日本語)

  • 座長:小川 啓一(神戸大学) 
  • コメンテーター:坂上 勝基(神戸大学)、黒田 一雄(早稲田大学)
  • 2023年11月11日(土曜)09:30 〜 11:30
  • 会場:紀-B104 (紀尾井坂ビルB104)
  • 聴講人数:32名

第1発表:[1C01] ケニア農村部の初等教育の公正性と包摂性―公立と私立の二項対立分析の再考

西村 幹子(国際基督教大学)

西村会員は、ケニア農村部の初等教育において、それぞれの学校を率いる校長やシニア教員が公正性や包摂性をどのように捉えているかについて発表した。

学校の公正性と包摂性は、校長や教員の背景にある考え方や経験、マサイ族の文化、地域との関係性に依っており、必ずしも私立校、公立校という二項対立軸で捉えられるものではないことを明らかにした。

これに対して、コメンテーターの黒田会員から、私立-公立という二項対立軸ではなく、それぞれの学校運営を支えるコミュニティや民族の文化、校長や教員のこれまでの経験に関するインタビュー調査の分析に基づく、本発表のユニークネスについての評価がなされた。

第2発表:[1C02] 授業形態別にみた教育効果の検証:バリ島における環境教育を事例に

栗田 匡相(関西学院大学)

第二発表では栗田会員から、バリ島における環境教育を事例にして、授業形態別による教育効果の差について検証した研究成果の報告が行われた。

座学のみと比べて、地域における体験型の環境学習を組み合わせた形態によって授業を提供する方が、教育効果が中長期間継続することを示した。

これに対し、コメンテーターの坂上会員は、環境教育の効果を実証した本研究のSDGs時代における重要性を強調した上で、対照群と処置群の選定方法について確認する質問を行った。

また、環境問題に関する児童の認知能力向上のみならず、介入が環境保全状況の改善に与える効果まで検討する、今後の研究の展開の可能性についての指摘がなされた。

第3発表:[1C03] 現状に見るミャンマー連邦共和国の基礎・高等教育の課題 

牟田 博光(国際開発センター)

第三発表で牟田会員は、新型コロナウイルスと軍事政権の成立という二重のショックを受けたミャンマー連邦共和国の基礎・高等教育における現状と課題について、発表した。

教員研修の重要性、学力低下の危惧、人的資源蓄積の滞り、混乱収束後の課題が示された。

これに対して、コメンテーターの黒田会員は、日本が長年援助してきたミャンマーにおいて、教育システムが不安定になっている状況について言及した。

また、本発表で使用されたデータの貴重性を強調した上で、今後学術論文として世に公開されることへの期待を述べられた。

第4発表:[1C04] コートジボワールの初等教育における非認知能力の視点からみた教育の質

小松 勇輝(大阪大学大学院)

第四発表では小松会員から、コートジボワールの初等学校に通う児童の非認知能力、特に自己効力感と教育の質に関する報告がなされた。

学校内の児童-教師間のインタラクションと職業教育における徒弟制が、児童の自己効力感の涵養プロセスに関与していることが、主に参与観察を用いた長期間のフィールド調査によって明らかになった。

これに対してコメンテーターの坂上会員は、初等教育を対象とする研究の中で、公立校とインフォーマルセクターである職業教育の事例のみ取り出して、並列にして分析をすることの妥当性について質問した。

また、学術的蓄積が比較的乏しい西アフリカにおける、本研究の意義の大きさについても言及した。

【総括】

本セッションでは、ケニア、インドネシア、ミャンマー、コートジボワールにおける教育の現状や課題、最新の動向についての研究成果が報告された。

コメンテーターからのコメント・質問はもとより、フロアからも積極的に質問やコメントが挙がり活発な議論が行われ、発表者・参加者の双方にとって有意義なセッションとなった。

報告者:小川 啓一(神戸大学)

1D:若者と雇用(日本語)

  • 座長:吉田 和浩(広島大学) 
  • コメンテーター:狩野 剛(金沢工業大学)、谷口 京子(広島大学)
  • 2023年11月11日(土曜)09:30 〜 11:00
  • 会場:紀-B108 (紀尾井坂ビルB108)
  • 聴講人数:00名
  1. [1D01] ウガンダにおける社会的遺児の強いられた自立と職業訓練
    *朴 聖恩(京都大学大学院)
  2. [1D02] アフリカによるアフリカのための研修-ケニアの気候変動の脅威に対する第三国研修の実施を通じたサブサハラアフリカ諸国への貢献-
    *本庄 由紀(ケニア国技術協力プロジェクト)
  3. [1D03] ケニアにおけるコンピテンシーにもとづくカリキュラム改革-導入の背景と新たな課題-
    *大塲 麻代(帝京大学)

【総括】

報告者:吉田 和浩(広島大学)

1E:経済(日本語)

  • 座長:西浦 昭雄(創価大学) 
  • コメンテーター:山形 辰史(立命館アジア太平洋大学)、會田 剛史(一橋大学)
  • 2023年11月11日(土曜)09:30 〜 11:00
  • 会場:紀-B112 (紀尾井坂ビルB112)
  • 聴講人数:16名

第1発表:[1E01] 中国における地域の教育格差: CHFSに基づくジニ係数の分解分析

李 鋒(中央大学大学院)

コメンテーターの會田会員より、質の高い研究であり、都市・農村内の教育格差が都市と農村間の教育格差より大きいことを示した点がユニークである一方で、①どのような仮説を検証したいのか、なぜそれが重要なのか、先行研究の中でどのような貢献があるのか、といった研究課題を明らかにすべき点、②都市・農村内での教育格差が拡大した理由まで掘り下げる点、③2014年度の制度改革による教育格差の是正に関する効果を分析する点、のコメントがあった。

これに対して、李会員より、先行研究では都市に住んでいる農村出身の人々の格差までは計測できていないと回答した。

フロアからの質疑応答では、修学年数をジニ係数で計測した先行研究の存在や格差を示す値の目安、農村戸籍から都市戸籍にコンバージョンするプロセスについての質問があった。

第2発表:[1E02] 生成系 AIの勃興がもたらす開発途上国への影響の考察:機会と脅威

内藤 智之(神戸情報大学院大学)

コメンテーターの山形会員より、生成系AIがアフリカの労働者・農民にとって脅威なのか、それとも機会なのかという議論を経済学の代替性と補完性に分けて考えると、新技術が一般的労働者の補完的になったバングラデシュ縫製業による事例からも、一般的労働力(非熟練労働)が生成系AIによって補完的になることがアフリカ貧困削減につながることになるとのコメントがあった。

これに対し、内藤会員からは、過去のインターネットの経験から考察すると、アフリカの雇用とAIをトレードオフではなく、ポジティブな関係だと捉えていること、補完的になれるよう今後の20年を考えるための政策提言を考えていきたい、そのため農業の中では小作農のリテラシー教育が重要性をもつのではないかと、いう回答があった。

次にフロアより、大規模言語モデルではマイナー言語の蓄積が少なくなるので言語による格差が広がるのではないかという質問があった。

第3発表:[1E03] 農産品サプライチェーンにおける多様な連帯:グローバルノースとグローバルサウスの歯車

楊 殿閣(ソリダリダード・ジャパン)

コメンテーターの山形会員より、発表では社会的連帯経済を形成するために、インドネシアのパーム油とインドのコットンを事例に国際NGOであるソリダリダードの役割について考察しているが、その役割は研究や技術協力であり、買い付けや販売組織をもっているわけではなく、ユニリーバやサラヤといった買い付けを行う企業にとってソリダリダードはどのように評価されているかを視点に加えていくべきではないかというコメントがあった。

これに対し、楊会員より、植物油を使用する企業は人権や環境保護の観点からサプライヤーとの関係に注力しているが、農業生産を専門にしているわけではないため、農業が持続可能性を保つために小農、農法支援の面で市民社会と企業のパートナーシップをとる事例が増えているとの回答があった。

フロアからの、消費者の行動変容の視点、現地政府主導の認証システム、開発途上国発の加工企業の場合のグローバルノースとグローバルサウスの立て分けについてのコメント・質問があった。

【総括】

経済分野のセッションとして、中国の都市・農村の教育格差、生成系AIによるアフリカ雇用への影響、グローバルノースとサウスの社会的連帯経済の形成など広い観点から発表され、活発なコメントならびに質疑応答があった。

そこでは国際開発を考える上での新しい視点が多く提起されるなど、有意義なセッションであったと総括できる。このセッションを萌芽としてこれらの議論が発展することを願っている。

報告者:西浦 昭雄(創価大学)

1H:水と衛生(日本語)

  • 座長:杉田 映理(大阪大学) 
  • コメンテーター:西野 桂子(関西学院大学)、緒方 隆二(国際協力機構)
  • 2023年11月11日(土曜)09:30 〜 11:30
  • 会場:紀-108 (紀尾井坂ビル108)
  • 聴講人数:20名

第1発表:[1H01] バングラデシュ南西沿岸部における世帯単位の給水サービスの可能性-ポンド・サンド・フィルターと逆浸透膜給水装置の比較から-

山田 翔太(立教大学)

バングラデシュ沿岸部の水源管理および支払い意思に関しての研究であり、今後の現場での国際協力の方法を考える際に有用な研究発表であった。その点を評価したうえで、コメンテーターからは次のコメントがあった。

1)給水施設の区分に関して、公共の水源(コミュニティ型水源)、個人単位で設置や運営できる水源、ビジネスを通じた給水サービスの3区分に分けるべきではないか?また、その上で先行研究をもとにそれぞれの長所、短所をまとめると分かり易い。

2)結論に関して、一般化しすぎているようにも見える。例えば、PSFでもうまくいっている事例もあるはずであり、ビジネスを通じたサービスでもうまくいっていない事例もあるのではないか(もしくは収入によって支払い意思が低い層の存在もあるだろう)。

3)コミュニティ型水源にもPSF以外に深井戸や小規模水道もあり、今回の1カ所のPSFを通じた調査結果や教訓をすべての公共の水源に適用できるかは疑問が残る。

第2発表:[1H02] 住民は手押しポンプをどのように用いるのかーモザンビーク北部農村における水源の多様性と季節性に着目してー

近藤 加奈子(京都大学大学院)

コメンテーターからは、モザンビーク農村住民の複数水源の利用状況、季節による水源利用の違いを明らかにしようとしている興味深い研究であったと評価された。

一方で、次の点が指摘された。分析の方法を多少改良する必要があること。まず、いくつかの種類の水源を調査対象としているが、水源の客観的なカテゴリーを明らかにした上で比較検討する必要がある(JMPによるカテゴライズ:Improved or Unimproved もしくはSafely managed, Basic, Limited, Unimproved)。

住民が複数の水源を使う場合は、水源によって使い方(例えば飲料用、料理用、その他)が異なるはずであり、データがあれば具体的使い方も含めて分析すべきではないか。また、提言は具体的な例を入れた方が良い(従来の水源の改良が望ましい→例えばどのような改良?)。

さらに、用語に関しても、「手押しポンプ」→「深井戸」もしくは「手押しポンプ式深井戸」、水源は「メイン、サブ」ではなく、「飲料用、料理用、その他」で分けた方が良いのではとの助言があった。

第3発表:[1H03] ベトナム農村部における浄水需要:個別家庭型アプローチの有効性

黒川 基裕(高崎経済大学)

コメンテーターから、ヒ素除去が可能となる小型浄水ボトルの商品企画・開発」を通じて、ハノイ近郊農家のヒ素問題が解決できるかの実証実験を試みた意欲的な研究であると評価したいこと、また、援助ではなく、BOPビジネスを検討している点が経済発展が著しいベトナムに適していると考えられることが示された。

サブスクリプション形式とし、ラテライトのフィルターを回収するところまで寛がられており、今後に対して示唆が多いとのコメントもフロアからもあった。

第4発表:[1H04] 市民参加と情報公開を通じた統合水資源管理、環境管理分野の協力アプローチの可能性

大塚 高弘(独立行政法人国際協力機構)

「参加型の取り組みを効果的に活用する協力アプローチとは?」という問い、すなわち、「JICA・カウンターパート・住民(社会)の三方よしの協力アプローチが作れないか?」という問いに対する実践的な研究であるとコメンテーターから評価された。

また、行政から市民への情報公開の重要性は明らかである一方、タイとボリビアの2案件において参加のはしごの参加のレベルをどのように評価できるのか、質疑応答がなされた。

【総括】

個人発表枠で「水と衛生」というセッションが組めたのは、国際開発学会では久しぶりであり、非常に中身の濃い、有益なセッションとなった。

安全な水の確保を目的としながら、給水のしくみとしは、ポンド・サンド・フィルター、逆浸透膜給水装置、手押しポンプ付き深井戸、小型浄水ボトルと多様であり、水分野研究の奥行きを示すセッションであった。

また、すべての発表に共通して、住民が、それぞれの活動にどのように参加する(サブスクも含め)のかが議論されており、重要課題であることが確認された。

報告者:杉田 映理(大阪大学)

1L:海洋文化・先住民族(日本語)

  • 座長:関根 久雄(筑波大学) 
  • コメンテーター:佐藤 敦郎(九州大学)、東方 孝之(アジア経済研究所)
  • 2023年11月11日(土曜)09:30 〜 11:00
  • 会場:紀-404 (紀尾井坂ビル404)
  • 聴講人数:13名

第1発表:[1L01] 開発に直面する先住民族の協議・ FPICに関する国際比較研究プロジェクトの構想

寺内 大左(筑波大学)
小坂田 裕子(中央大学)
深山 直子(東京都立大学)

コメンテーターから、インドネシアの一民族であるダヤックを事例として取り上げた分析からはどの程度の一般化が可能なのか、多民族国家インドネシアに注目することにより分析を拡張できる可能性、そして地方政府の特徴に注意する必要性、といった指摘や質問があった。

これらに対して、事例研究としてダヤックに注目する(インドネシアの代表例として位置付けることは重視していない)ことや、アクターとしての地方政府についても注目する予定であることなどの回答があった。

また、「国連宣言の中には『継続的な協議』という文言がなく、FPICにおける『同意』が『契約』に近いことから、将来、予想外の悪影響が生じても『同意』が縛りとなり、先住民族に悪影響を強いる危険性がある」という発表内容について、フロアから国連宣言やFree Prior and Informed Consent((FRIC)の中に”Continuous”という文言を加える方法は取れないのか、という質問があり、それに対して、すでに採択された文言なに改良を行うことは非現実的であり、目の前で生じている事態に対する短期的・即効的な方策を考える必要がある、という応答があった。

第2発表:[1L02] コミュニティベース海洋環境教材の国際ネットワーク化に関する研究

小林 かおり(椙山女学園大学)

里海とは人が環境にアクセスすることであり、利活用が必然だとすれば、ゴミの海洋投棄は必要悪とも言える現象ではないのか。

「そういうもの」という発想に立脚して里海のあり方、環境教育のあり方、漂着ゴミ問題を考えることはできないか、という質問に対し、自然と人間との関係性の観点からそういう見方はありうるが、現状はすでに必要悪の次元を超えていて、改善すべき課題として直視しなければならないところまで来ており、その意味からも環境教育の必要性は待ったなしの状態にある、という趣旨の応答があった。

また、「海外と日本」の海洋環境教育といった具合に対象を二項対立的に捉えているのではないかという質問があり、それに対し、「先行研究において(海洋に限らず)環境保護は欧米と日本の捉え方は異なっていて二項対立的に捉えられ書かれる傾向があるものの、海洋環境教材はそのような発想で書かれているわけではない。

なぜなら、台湾の場合も日本と同様に「海洋環境の持続可能性」に焦点を当てた海洋環境教材が主流であるから」という回答であった。

第3発表:[1L03] 諫早湾干拓の開発史

松原 直輝(東京大学)

発表者が諫早湾干拓事業に関して、官の役割に着目していることに対して、コメンテーターは、事業主体としては官ではあるが、その中にも公共の論理と民間の論理が混在しているとの問題意識から、漁民、農民(半農半漁)、自然環境保護活動家、ディベロッパー、国(食糧増産、防災)、裁判所の立場で公共と民間の論理を指摘した。

また、歴史分析の反実仮想的な発想から、干拓事業を見るとどのように考えられるか、質問した。

コメントに対して、発表者からは、公共の論理と民間の論理について、前者について時代を越えて一貫したものが存在せず、後者が前者の中に吸収されている印象があること、また、反実仮想的な発想からの分析は今後の課題である、という回答があった。

また、諫早湾の事例について、第2発表者に対するものと同様に、発表者は「行政/市民」と二項対立的に対象を捉えているのではないかという質問が出されたが、過去の事例を踏まえると二項対立的に解釈せざるを得ない、という応答であった。

【総括】

3事例ともに外的要因に基づく開発行為が当該地域住民の暮らしに重大な影響を及ぼし、かつ彼らの生活域内における自然環境と地域住民との関係のあり方に懸念が生じたり、その関係性のあり方に変更を迫ったりするような事態を対象にした研究であった。

いずれも発表者の視点は地域住民の側に注目し、微視的に対象を捉えながら、自然環境と住民を取り巻くマクロな動きとミクロの現実との接合を試みる意欲的な研究内容であった。

報告者:関根 久雄(筑波大学)

1M:Development theory and practice (English)

  • 座長:新海 尚子(津田塾大学) 
  • コメンテーター:後藤 健太(関西大学)、島田 剛(明治大学)
  • 2023年11月11日(土曜)09:30 〜 12:00
  • 会場:紀-407 (紀尾井坂ビル407)
  • 聴講人数:00名
  1. [1M01] Dragon Rouge Redux: Assessing China’s Economic Hegemony in Cambodia
    *Toufic SARIEDDINE(Nagoya University)
  2. [1M02] CDMモデルから考察した途上国におけるイノベーションと外資系企業の役割ーベトナムの製造業企業を事例に
    *TranThi Hue(神戸女子大学)
  3. [1M03] Digital Currency and Development: Exploring the Potential Contribution and Challenges of Central Bank Digital Currency, “ Bakong,” for Development in Cambodia
    *Hisako KOBAYASHI(Oriental Consultants Global Co., Ltd.)
  4. [1M04] The Role of Private Sector toward Poverty Reduction – Analysis of Case Study in India –
    *伊波 浩美(JDI)
  5. [1M05] Regional decline and structural change in Northeast China: An exploratory space-time approach
    *Chen Yilin(Nagoya University, Graduate School of International Development)

【総括】

報告者:新海 尚子(津田塾大学)

1N:オンライン(日本語)

  • 座長:高柳 彰夫(フェリス女学院大学)
  • コメンテーター:戸田 隆夫(明治大学)、高橋 基樹(京都大学)
  • 2023年11月11日(土曜)09:30 〜 12:00
  • 会場:紀-409 (紀尾井坂ビル409)
  • 聴講人数:00名
  1. [1N01] インドネシア・リアウ州における泥炭火災予防:現状・課題・対応案 *久保 英之1、Albar Israr2、Kurniawan Anung 2 (1. JICA専門家、2. インドネシア国環境林業省)
  2. [1N02] ASEAN諸国におけるデジタル経済促進分析:課題と戦略
    *原 正敏1、*橋 徹2 (1. ビジネス・ブレークスルー大学大学院、2. 早稲田大学)
  3. [1N03] 障害者権利条約に基づく国際協力を巡る論点及び概念整理の課題に関する一考察一各国への総括所見及び建設的対話の分析から
    *福地 健太郎(国際協力機構)
  4. [1N04] 島嶼は日本の縮図たるか?——離島及び日本における水・エネルギーの対外依存状況に着目した一考察
    *關谷 武司1、*吉田 夏帆2、*芦田 明美3 (1. 関西学院大学、2. 兵庫教育大学、3. 名古屋大学)
  5. [1N05] エジプト日本科学技術大学における教育研究機器導入、および活用プログラム開発
    *松下 慶寿(エジプト日本科学技術大学)

【総括】

報告者:高柳 彰夫(フェリス女学院大学)

1O:援助機関と現場(日本語)

  • 座長:林 薫(グローバル・ラーニング・サポート・コンサルタンツ代表/元文教大学教授)
  • コメンテーター:小林 誉明(横浜国立大学)、志賀 裕朗(横浜国立大学)
  • 2023年11月11日(土曜)09:30 〜 11:00
  • 会場:紀-412 (紀尾井坂ビル412)
  • 聴講人数:20名

第1発表:[1O01] 日本の政府開発援助の効率性とコンサルタントの関係

*大須賀 誠(法政大学大学院 公共政策研究科 博士後期課程)

本報告は日本のODA の技術協力に関して、ODA 大綱の変遷、経済団体と政府の関与、援助体制とコンサルタントの役割などについて概観し、日本の援助実施体制が欧米に比較して弱体であること、このギャップを埋めているのがコンサルタントであるが、ODA予算の減少によって、コンサルタントの雇用が減少したり単価が引き下げられたりしていることなどが、ODAの実施体制を更に困難に陥れていることを説明しようとした報告である。

報告ではコンサルタントは相手国の要望に合わせた機材を国際的な経験によって把握しているので、助言や専門的知識を提供することで技術協力が効果的に推進できるであろうが、残念ながら、コンサルタントの知見が政策立案に十分反映される条件になっているとは言えない。

さらに、個々のコンサルタントの処遇も十分ではなく、何らかの育成策が必要であると結論づけている。

本報告に対しては、「日本のODAの効率性とコンサルタントの関係」がリサーチ・クエスチョンであり「コンサルタントを活用すること」がその答えなのだとすると、新聞報道、ODA大綱、経済団体の要望書、日本の援助体制の未整備(職員数の少なさ)はエビデンスとして不十分ではないかという疑問が提起された。

むしろ、人数で「効率性」を測っているのであるとすれば、現在すでに日本のODAは極めて効率的と判断することもできるわけであるから、そもそもODAの効率性とは何かという概念定義からしっかりと行う必要がある点も指摘された。

座長からも、ODAの規模の指標として予算額は必ずしも適切ではなく、事業規模も見るべきであること、コンサルタントの雇用形態や役割は多様であり、さらなる分析と考察が必要であることを指摘した。

第2発表:[1O02] バングラデシュ郡自治体円借款事業によるガバナンス改善:ガバナンス借款の可能性

*宗像 朗1、*杉山 卓2 (1. 独立行政法人国際協力機構、2.株式会社コーエイリサーチ&コンサルティング)

本報告は、バングラデシュの郡自治体借款事業(UGDP)1を事例にガバナンス借款の可能性を検討したものである。

この事業では①バングラデシュ全郡(約500 郡)を対象に実施した行政評価、②行政評価に基づいた開発資金の郡への供与、③研修とファシリテーターによる基本行政実施支援、の三つを柱にする約147 億円の円借款事業である。

このPDCAとインセンティブを組み合わせた仕組みにより、群自治体関係者のオーナーシップが高まり、説明責任の向上や適正な手続きの確保など実際にガバナンス改善が見られたとし、ガバナンス借款には大きな可能性があるとした報告である。

本報告に対しては、円借款によって全国的・広域的にガバナンス改革を促進する可能性を検討した興味深い論考であること、またその経緯を丹念に記録しデータを採った上でシンプルな記述統計を使って効果の発現を示した実証分析であることから、極めて高い評価がなされた。

一方、「日本の援助機関によるバングラデシュという特定の国に対する一事例」の紹介(アネクドート)にとどまっている嫌いがあるため、比較事例研究とするなどして、一国事例を超えた普遍的な教訓を引き出すことを検討してほしいとのコメントがなされた。

座長からは、これは日本の国際協力におけるプログラム支援の成功例であり、円借款という資金規模が大きい仕組みを使って全国をカバーできたことが、指摘されたような効果を生んだと考えられ、特筆すべきであるが、ガバナンス改善効果についてはより客観的なデータで評価する必要があること、インパクト評価を実施すれば教訓を一般化できることなどを指摘した。

第3発表:[1O03] 技術協力プロジェクトにおける効果的な実施・監理手法に関する考察~パキスタン国パンジャブ州上下水道管理能力強化プロジェクト(フェーズ1、フェーズ2)の事例における非技術的要素の検討~

*佐藤 伸幸(日本テクノ株式会社)

本報告は、技術協力のプロジェクト・マネジメントの一要素としてペタゴジー(Pedagogy;子供を教える技術と科学)に対するアンドラゴジー(Andragogy:成人の学習を援助する技術と科学)に焦点を当てた。

前者では知識を教えることに重点が置かれるが、後者では気づきと学びが重要である。

アンドラゴジーの要素を検討の結果、報告では、効果的なプロジェクト・マネジメントは、①どのような考え方でプロジェクトのカウンター・パートに対応してゆくのか、② どのような視点・問題意識とプロセスで協力を進めてゆくのか、③技術協力専門家の役割と立ち位置はどのようなものかの3点が重要であると結論づけた。

本報告に対しては、技術協力プロジェクトの成功要因の概念化に取り組んだ興味深い論考であり、見えにくく注目されにくい「非技術的要素」にも光を当てている点は意義深いとの評価がなされた。

そして、単一事例研究に終わらせずにより広い普遍的なrelevanceを持つものに発展させるためには、他国・他機関の事例との比較研究を行って理論的な精緻化を進めてほしいとの提案がなされた。

その一方で、「アンドラゴジー」という概念の有効性を証明するための事例分析をしているようなきらいがみられるため、既存のドグマに囚われすぎる必要はなく、むしろ現場の経験に基づいて既往理論に修正を加えるくらいの姿勢があっても良いのではないかという指摘もなされた。

座長からは、教育で「気づきと学び」を重視するアプローチは、現在ではアクティブ・ラーニングのように小中学校の学習でも重視されるようになってきており、ペダゴジーとアンドラゴジーの対比はやや古いパラダイムになりつつあるのではないかという指摘を行った。

【総括】

総じて、本セッションはODAを通じた人材育成の重要性に焦点が当てられ、その最適な手法についての議論が行われたセッションになった。

日本のODAの強みは人材育成であり、これが日本の国際的な役割として重要であること、ODA政策において人材育成がもっと重視されるべきであることを座長から指摘して、セッションを終わった。

報告者:林 薫(グローバル・ラーニング・サポート・コンサルタンツ代表/元文教大学教授)

2L:Health, gender, family (English)

  • 座長:松山 章子(津田塾大学)
  • コメンテーター:高松 香奈(国際基督教大学)、宇井 志緒利(明治学院大学)
  • 2023年11月12日(日曜)09:30 〜 11:30
  • 会場:紀-404 (紀尾井坂ビル404)
  • 聴講人数:20名

第1発表:[2L01] Scalable and Sustainable Adaptive Solutions to COVID-19 Disruptions in Family Planning (FP) Health Service Delivery in the Philippines

Leslie Advincula LOPEZ
Jessica Sandra Claudio
Haraya Marikit Mendoza
(Ateneo de Manila University)

The presentation was on a policy advocacy-oriented research on family planning health service delivery in the Philippines based on the experiences during the COVID-19 pandemic. Dr. Shiori Ui, the discussant, acknowledged its academic and practical significance in flexibility and innovative adaptation experiences of the project activities during normal time which can be utilized for the pandemic time. She, however, raised some important inquiries including the needs of detailed analysis of BARMM (Bangsamoro Autonomous Region in Muslim Mindanao). She also emphasized the importance of further analysis on its role of the identified Health Care Provider Network. Exploring how it contributes to UHC (Universal Health Care) would be very much insightful for us.

第2発表:[2L02] Caring through a Pandemic: Filipino transnational families’ survival of disrupted mobility during the COVID-19 crisis

Derrace Garfield MCCALLUM(Aichi University)

The presentation was on the study exploring the impact of digital technology on Filipino transnational families, focusing on how ICT (Information and Communication Technology) ’s influence the (re)creation and maintenance of family bonds during the COVID-19 pandemic. The discussant, Dr. Kana Takamatsu, appreciated that the paper was convincing and well organized. Acknowledging its nique feature which challenged the existing notion, she inquired some important methodological and analytical approaches. She asked if the results would be different by age and gender. It was also pointed out by her the term, “care”, should be clarified and defined since care is an ambiguous word, could mean emotional and/or financial spheres. Moreover, she raised interesting question that intimate relationships of ICTs could become possible “possessive relationship”.

第3発表:[2L03] Gender dimensions of the world of work under crises: Trends and challenges

Naoko OTOBE

The presenter reported, using the existing panel data of world of work, how these multiple crises have impacted women and men differently in the arena of work. Dr. Kana Takamatsu acknowledged that it was an informative paper to enhance the understanding of the impact of COVID-19 on work/ employment by gender perspective. She raised several questions, however, including accuracy of analysis period. Although the paper covered the crises such as COVID-19, climate change, and Ukraine and Russia conflict, the framework of the analysis period for the study was not very clear. Moreover, “intersectionality” is an important notion in gender analysis and she suggested discussion on the point would be useful for further study.

第4発表:[2L04] カンボジアにおける紛争と信頼ー2021年カンボジア社会経済調査を用いた実証分析ー

大貫 真友子(早稲田大学)
小暮 克夫(会津大学)
高崎 善人(東京大学)

This was the presentation on the study on impact of conflict exposure on social trust in Cambodia, using Cambodia Socio-Economic Survey (CSES) 2021. The data on social trust was collected through informally added questions by one of the study collaborators who was a part of the CSES 2021 team. The significance of the research topic, how conflicts may affect attitude and feelings in relation to social trust of people and community is well taken at this time of violent conflict around the world. However, Dr. Shiori Ui, the discussant, who are familiar to Cambodian society, raised an important issue regarding relevance of the questions used to measure social trust. Additionally, validity of the study topic, whether the lack of trust in non-kin-based networks is attributable to violent conflict (genocide) in Cambodia, was questioned. Rather, Dr. Ui said, a deeper-rooted problem in Cambodian society may be that trust among close kin members such as family members, relatives, and friends has been affected by violent conflict. Finally, further study prospects were discussed.

【総括】

The session offered wide variety of topics ranging from health, gender, care among family through ICT, to social trust in relation to conflict. The first three presentations, although different in topic, were all related to the impact of the COVID-19 pandemic. The last presentation, which explored the relationship between historical conflict and people’s social trust, is a very timely and important topic in light of the current global situation. I believe that those who attended the session learned a lot from these presentations. The comments by the discussants and discussion followed were also insightful and thought-provoking which would contribute to the prospect of future research.

報告者:松山 章子(津田塾大学)

2M:Sustainability (English)

  • 座長:高田 潤一(東京工業大学)
  • コメンテーター:藤倉 良(法政大学)、道田 悦代(アジア経済研究所)
  • 2023年11月12日(日曜)09:30 〜 11:30
  • 会場:紀-407 (紀尾井坂ビル407)
  • 聴講人数:00名
  1. [2M01] Sustainability Reporting: Quality Concerns of Third-Party Tools and A Call for High-Quality Third-Party Tools to Avoid Greenwashing
    *Vivek Anand ASOKAN(Institute for Global Environmental Strategies)
  2. [2M02] 生物多様性条約の「 DSI」の国際開発への影響
    *渡邊 幹彦(山梨大学)
  3. [2M03] 太平洋島嶼地域における環境意識調査~ミクロネシア連邦の事例研究~
    *高木 冬太(立命館大学)
  4. [2M04] Global RCE Network: Action-oriented Education for Sustainable Development
    *Jongwhi Park2, *Sawaros Thanapornsangsuth1,2, *Shengru Li2, Fred Emmanuel Sato2(1. Tokyo Institute of Technology, 2. Institute of Advanced Studies, United Nations University)

【総括】

報告者:高田 潤一(東京工業大学)

2N:Online (English)

  • 座長:西村 幹子(国際基督教大学)
  • コメンテーター:マエムラユウ・オリバー(東京大学)、内海 悠二(名古屋大学)
  • 2023年11月12日(日曜)09:30 〜 10:30
  • 会場:紀-409 (紀尾井坂ビル409)
  • 聴講人数:00名
  1. [2N01] 観光と環境のネクサス:ラグーナ州パグサンハン、カビンティにおける地元の認識に対する多面的な検証
    *ALINSUNURIN Maria Kristina2、*新海 尚子1 (1. 津田塾大学、2. フィリピン大学ロスバニョス校)
  2. [2N02] インドネシアにおける職業教育と非認知能力が労働成果に与える影響
    *崔 善鏡(広島大学)

【総括】

報告者:西村 幹子(国際基督教大学)

2O:社会開発、コミュニティ(日本語)

  • 座長:小早川 裕子(東洋大学) 
  • コメンテーター:藤掛 洋子(横浜国立大学)、松丸 亮(東洋大学)
  • 2023年11月12日(日曜)09:30 〜 11:30
  • 会場:紀-412 (紀尾井坂ビル412)
  • 聴講人数:18名

第1発表:[2O01] 通域的な学びの実践 – Africa-Asia Business Forumにおける学び合いを媒介とした地域間のつながり

工藤 尚悟(国際教養大学)

本研究では、国際協力や開発学の地域研究に従来の研究者や実務者による知見共有から直線的に課題解決が設計される方法ではなく、具体的な現場を持つ全く異なる地域の実践者たちが共同フィールドワークを通して得られる視点や気づきのリフレクションを基に、習慣的な思考パターンへの気づきや新しい視点の獲得といった自己変容を促す「通域的な学び」に関する調査が行われた。

コメンテーターからの課題解決型ではないプログラムの成果をどう評価できるのか、との質問に対し、工藤会員は、課題の出口として、方法論を提供する発展的評価になる回答した。

第2発表:[2O02] 開発学における表情解析の応用可能性:マダガスカル農村の女性における事例

山田 浩之(慶應義塾大学)

開発研究における調査では、回答者の設問理解度の把握の難しさ、考えずに回答している可能性、主観的で要因が多様な幸福感の測定が難点であるため、客観的調査が可能な顔を認識するソフト、FaceReader (FR)を起用した。

マダガスカル農村女性の笑顔をデータ化したものと記述調査を照合し、幸福感と個人や世帯の特性との関連性が調査された。

コメンテーターからは、FRをマダガスカルで使う有効性、調査結果が従来の調査結果と変わらなかった事から、FRを開発学で利用する意義の説明が必要ではないかとの指摘があった。

第3発表:[2O03] ブータン東部におけるアブラナ科野菜の普及の実態とその要因-タシガン県バルツァム郡を事例に-

生駒 忠大(京都大学/日本学術振興会)

本研究は、ブータンにおける新たな換金作物の普及は単に高換金性が引き金になっているのではなく、農業実践や地域文化の変容が普及の要因となっている可能性を調査した。

その結果、アブラナ科野菜が普及していった要因として、若者の離村と労働力確保の難しい村において、長期間の栽培適期と栽培の簡便性、副次的栽培、労働集約性の低さと高い生産性が村の現状に適合していたこと、アブラナ科野菜の食文化への浸透、牛の飼料としての有用性などが明らかにされた。

第4発表:[2O04] 潜在的に田園回帰志向を持つ人の要因分析 -地方に関心のある大学生に魅力的な地方自治体の施策とは-

戸川 椋太(立命館大学大学院)

田園回帰志向を持つ学生の実態を把握し、地方自治体への政策提言を目的に、潜在的に回帰思考のある大学生の特徴を明らかにする目的の研究である。

追跡調査も予定されているが、本発表では、コメンテーターから、田園回帰の定義の明確化の必要性、アンケート調査の対象が立命館大学の学生に限定されていた事による一般化の難しさ、田園回帰志向分析の設問内容が、都市でも可能な活動ではないかとの指摘があった。

【総括】

各発表は時間通りに進んだ。どれも興味深い研究発表だったため、フロアーからの質疑がたくさんあるように見受けたが、時間が限られていたため、1名の質問しか受けられなかったのが残念だった。

報告者:小早川 裕子(東洋大学)

2L:Rural development (English)

  • 座長:澤田 康幸(東京大学) 
  • コメンテーター:髙橋 和志(政策研究大学院大学)、米倉 雪子(昭和女子大学)
  • 2023年11月12日(日曜)12:45 〜 14:45
  • 会場:紀-404 (紀尾井坂ビル404)
  • 聴講人数:不明

第1発表:[2L05] 「園芸の商品化と家庭の意思決定が小規模農家の収入に及ぼす不均一な影響:エチオピアのジマ地帯における準実験研究の証拠」

*FIKADU ASMIRO ABEJE、*Nomura Hisako(Kyushu University)

本論文はエチオピアでJICAが進めているSHEP(市場志向型農業振興)アプローチが農家所得の向上に寄与しているか、寄与している場合、それが所得レベルや男女間でどのような違いがあるか、定量分析したものである。

データは2022-23年に集めたクロスセクショナルデータで、610の農家から集めた。

推定には、マッチングとQuantile regressionを用いている。

推定の結果からは、SHEPは全体として農家所得を有意に増やしているが、その効果はもともとの高所得家庭、また男性の意思決定力が強い農家でより大きくなることが判明した。

本論文は潜在的に重要なイシューを扱っているものの、以下のような点を改訂することが望ましい。

  • アウトカムである園芸作物所得と、説明変数である園芸作物指数の間には強い相関があるため、これを説明変数に使わない方がよい。
  • アウトカムをレベルのまま使っていると、ほぼ必然的に高所得家計の方に強い影響が出がちなので、ログを採った方がよい。
  • 推定式の説明の際にいくつかの誤りが見られた。
  • マッチングの方法をもう少し丁寧に説明した方がよい。

第2発表:[2L06] Empowerment Mechanisms of the ‘ SHEP Approach’ on Horticultural Behaviour Change of Smallholder Farmers. A Case of Kenya

Peter Nyamwaya ORANGI,
Hisako Nomura
(KYUSHU UNIVERSITY)

本論文はケニアでJICAが進めているSHEP(市場志向型農業振興)アプローチ農家のビジネスや農業スキルに寄与しているか、またそれらのスキル向上を通じてエンパワメントに役立っているか、定量分析したものである。

データは4058家計によるパネルデータで。推定には、差の差の分析とOLSが用いられている。推定の結果からは、SHEPは全体としてスキル向上に寄与し、それにより、生産やマーケティング面におけるエンパワメントに繋がっていることが判明した。

本論文はSHEPのプロジェクト目標が満たされているか定量的に検証した点で意義深いものの、以下のような点を改訂することが望ましい。

  • スキルのカテゴリーづくりややや恣意的なだめ、どのような理論的背景があるのか示せるとなおよい。
  • データがどのようにとられたのか、また4058はバランスパネルなのかそうでないのかなど、詳しい説明が必要。
  • DIDよりも近年はANCOVAが好まれる傾向にあるため、DIDを使うメリットを丁寧に説明してほしい。
  • エンパワメントの分析にはOLSが使われているが、スキル変数は内生なので、その点を考慮した推定方法に改善する必要がある。

第3発表:[2L07] Economic Analysis of Income Generation Through Creation of Dairy Farmers Union. A Case Study on Balkh Dairy Union, Afghanistan

Hamed ARIF SAFI(Kyushu University)
Nomura HISAKO(Kyushu University)
Shoichi ITO(Kyushu University)
Hiroshi ISODA(Kyushu University)

Key Points
  • 7 interviewers conducted semi-structured interview in 8 villages in Dehdadi District, Balkh province in Aug 2014. 355 milk producers, 192 Balkh Livestock Development Union (BLDU) members and 163 dairy farmers not BLDU members.
  • Examination of the impact of dairy union membership on the productivity of dairy farmers and the net annual milk income of households using the propensity score matching method (PSM).
  • Union membership significantly reverberates impacts critical economic outcomes of dairy farming dynamics.
  • It recommends stakeholders in the dairy farming sector, including policymakers and farm management, to recognize the positive aspects of union participation on production and income.

Questions to understand the situation further to promote union

  1. The amounts of income and dairy production. How many cows do they have. Is the size of farmers relevant to the result?
  2. Why/how the farmers became union members: Did anybody suggest them to become members? What are the merits that they recognise? ie) info, training, funds, etc from the union.
  3. Why non-members do not join unions? What prevents them? ie) In Cambodia, people were traumatised by their experience of forced labor during communist/socialist era.
  4. How many days did 7 researchers interview 355 farmers in 8 villages. Did they simply ask their annual income and production or had farmers recorded the amounts?

第4発表:[2L08] 高価値な換金作物の導入後の農村移住と民族間の格差における変遷:ベトナム中央高地の台湾から導入されたウーロン茶産業の事例

呉 昀熹(京都大学)

Key Points
  • Semi-structured questionnaires targeting Kinh migrants for April-June 2019, and the minority settlements for Oct-Nov 2019 in D and L Communes, hubs for oolong tea enterprises, in Lam Dong province in the Central Highlands, Vietnam. Sites included oolong tea factories, farms, and various households. A total of 123 households heads: 96 Kinh, 10 ethnic minority migrants (Muong, Cham), 16 indigenous minorities (Kohor, Ma), 1 Vietnamese Chinese individual.
  • geographical access to employment, Kinh has easier access, Muong have relatively comparable access to Kinh, able to reach oolong tea enterprises within a half-hour walk, Ma and Kohor at more remote locations.
  • 2 categories of spontaneous migrants: Early migrants, dependent on network, organised migrants; Late migrants. less-dependent on network.
  • Ma, traditionally engaged in shifting agri, adapted themselves to the tea industry, changed gender roles. Kohor, traditionally nomadic lifestyle, limited engagement with industry.

Questions to understand the Discussion further

  1.  Describing “3 key attractions of the tea system included higher income, varied job chances, and accommodation” regarding each ethnic group may show the differences clearer. How it becomes as “a stepping stone to cash crop farming. As migrants’ farms become sustainable, their dependency on the system decreases”?
  2.  About Gender role, Ma has seen the changes while Kohor did not. How about other ethnic groups?
  3.  Explain more in section “3 Findings” about the socio economic impact including health risks and loss of personal time.
  4.  About “the indirect marginalization of indigenous groups”, may be discuss about Ma and Kohor separately? How about Muong and Cham?

【総括】

Rural Developmentセッションの名にふさわしい意欲的な論文が4本報告された。

特に、JICAが進めているSHEP(市場志向型農業振興)アプローチやアフガニスタンにおける酪農組合プロジェクトの評価など、厳密なエビデンス(科学的根拠)が求められている研究対象について、ミクロデータを用い、マッチング(matching)、差の差分析(difference in differences)、分位点回帰(quantile regression)など緻密な手法を用いた研究につき、計量分析を洗練化することのみならず、ドメイン知識に基づいて研究をさらに深化させるという観点から、コメンテータの高橋和志教授(政策研究大学院大学)、米倉雪子教授(昭和女子大学)より多数の建設的なコメントがなされ、活発な議論が行われた。

座長としては、今後も国際水準の開発研究・教育の成果が日本発で期待でき、国際開発学会のあるべき姿を示す有意義なセッションとなった、と感じた。

報告者:澤田 康幸(東京大学)

2M:国際開発援助(日本語)

  • 座長:伊東 早苗(名古屋大学) 
  • コメンテーター:大門(佐藤) 毅(早稲田大学)、宗像 朗(国際協力機構)
  • 2023年11月12日(日曜)12:45 〜 14:45
  • 会場:紀-407 (紀尾井坂ビル407)
  • 聴講人数:00名
  1. [2M05] 政府開発援助が海外直接投資に与えた影響―援助形態別の分析―
    *大野 沙織(京都大学)
  2. [2M06] 現地主導の開発(locally-led development)とCSOの南北パートナーシップの再検討
    *高柳 彰夫(フェリス女学院大学)
  3. [2M07] 日本政府の支援がパキスタン気象局の能力向上に果たした役割に関する考察
    *内田 善久(株式会社国際気象コンサルタント)
  4. [2M08] 国際協力における Co-Financeの「全体像」をどう捉えるか~中国と DACドナー間の取り組みを事例に~
    *石丸 大輝1、*土居 健市2、*汪 牧耘3、*林 薫4 (1. 独立行政法人国際協力機構、2. 早稲田大学、3. 東京大学、4.元 文教大学)

【総括】

報告者:伊東 早苗(名古屋大学) 

2N:環境、サスティナビリティ(日本語)

  • 座長:松岡 俊二(早稲田大学)
  • コメンテーター:佐々木 大輔(東北大学)、古沢 広祐(國學院大学)
  • 2023年11月12日(日曜)12:45 〜 14:15
  • 会場:紀-409 (紀尾井坂ビル409)
  • 聴講人数:25名

第1発表:[2N03] インドネシア国アッパーチソカン揚水発電所建設に関わる原石山の補償問題

筒井 勝治(株式会社ニュージェック)
冨岡 健一(Global Utility Development Co., Ltd)

インドネシア国アッパーチソカン揚水発電所周辺の地域住民に対する補償の法制度とその運用のあり方をめぐって議論をした。

第2発表:[2N04] 環境知識の移転をめぐる地政学的ダイナミクス:中国の環境協力機関の比較分析

WU Jingyuan(東京大学大学院)

中国における環境協力機関の展開について、リアリズムの視点、リベラリズムの視点、コンストラクティビズムの視点から議論を行った。

第3発表:[2N05] 生産国の実情から考える持続可能なパーム油-インドネシアとマレーシアの事例に着目して-

吉田 秀美(一般社団法人持続可能なサプライチェーン研究所)
楊 殿閣(一般社団法人ソリダリダード・ジャパン)

持続可能なパーム油の国際的認証と各国のナショナルな認証制度との関係のマーケット・企業の動向について議論を行った。

【総括】

インドネシアの発電所建設に伴う住民補償、中国の環境協力機関の歴史的展開、インドネシアとマレーシアの持続可能なパーム油の認証制度をめぐって議論を行い、東アジアの環境問題と環境協力のあり方について、深く考える機会となった。

報告者:松岡 俊二(早稲田大学)

2L:Education (English)

  • 座長:澤村 信英(大阪大学) 
  • コメンテーター:劉 靖(東北大学)、川口純(筑波大学)
  • 2023年11月12日(日曜)15:00 〜 17:00
  • 会場:紀-404 (紀尾井坂ビル404)
  • 聴講人数:20名

第1発表:[2L09] Inclusion in Higher Education: Exploring the Experiences of Nepalese College Students with Disabilities

Bhuwan Shankar BHATT(International Christian University, Tokyo)

障害を有するネパール人大学生の経験をもとに、高等教育におけるインクルージョンのあり方を多面的に検討するものである。

高等教育におけるインクルージョンに関する実証研究は貴重であり意義があり、その重要性はますます大きくなっている。

それゆえに、研究のスコープを発展させれば(例えば、学部生と大学院生、学生の専攻を分けるなど)、さらに学術的・実践的な示唆が得られるだろう。

集団的相互作用の概念枠組みに、なぜ財政上の視点を入れていないのか、あるいは今後の研究として制度的なインクルージョンに対する考え方について質疑応答があった。

第2発表:[2L10] Case studies of a positive outlier and a negative outlier municipal education departments in supporting primary schools in Brazil

Danilo LEITE DALMON(Kobe University)

ブラジルの同一州にある人口規模や経済指標が類似する市を対象として、初等学校を管轄する教育局の中で最も効果的な教育行政が行われている市と、反対にそうでない市を選別し、両者を比較検討、要因の分析を行おうとするものである。

ブラジルを対象とする希少性はあるが、これに類似する効果的学校研究に関わる蓄積は膨大にあるので、さらなる文献レビューを進めてほしい。

また、サンプリングをいかに行ったかのプロセスが不明であり、その妥当性を明確にする必要がある。対象とする国、地域、学校の状況がわかる基礎データを示してほしい。

オリジナルのファインディングが何なのか、従来の効果的学校研究に対していかなる貢献があるのかなど、質疑が行われた。

第3発表:[2L11] Citizenship education and Malagasy philosophy: An analysis of the upper secondary school curriculum

Andriamanasina Rojoniaina RASOLONAIVO(Osaka University)

マダガスカルの後期中等学校のカリキュラムを分析することにより、グローバルなシティズンシップ教育の中でいかなる価値観が育成されるのか、されようとしているのかを探索するものである。

脱植民地化やグローバル・シティズンシップ教育の議論の中で、学校のカリキュラムがいかなる影響を受けつつ内在化していくかを検討することは重要なことである。

一方で、シティズンシップ教育やマダガスカルのフィロソフィーがそれぞれ何を意味するかは、丁寧に記述する必要がある。リサーチクエスチョンに対する結果の提示にやや齟齬があるように思えるとの意見も出された。

第4発表:[2L12] Parental Involvement in Malagasy Students’ Career Planning: the Case of Public High Schools in Urban and Suburban Settings

Fanantenana Rianasoa ANDRIARINIAINA(Osaka University)

マダガスカルの都市部の公立高校を事例として、生徒のキャリア計画にいかに親が関わっているかを考察するものである。

このようなテーマ設定自体は、教育を受けた後の就業に関わることで興味深く、重要なテーマである。

ただし、キャリア計画の定義がやや不明瞭で、どのように親が子どものキャリア計画に関わっているのか、さらなる丁寧な分析と解釈がなされることが期待される。

現在の結論は、親が何を考えているか、何を行っているかに留まっており、いかに関わっているかが十分に探索できていないように思える。

【総括】

ネパール、ブラジル、マダガスカルと、発表者は日本の大学に属しながら、それぞれの母国を研究対象としている。

このような多様な対象国の研究発表が本学会の場で行われることは、少なくない影響を日本人研究者にも与えてくれているように思う。

今後もこのような学術面での国際交流が展開され、将来的に国際共同研究などに進展することを期待したい。

報告者:澤村信英(大阪大学)

2M:事業評価・分析(日本語)

  • 座長:大橋 正明(聖心女子大学) 
  • コメンテーター:石田 洋子(広島大学)、桑島 京子(青山学院大学)
  • 2023年11月12日(日曜)15:00 〜 16:00
  • 会場:紀-407 (紀尾井坂ビル407)
  • 聴講人数:8名

第1発表:女性自助組織を通した母親の資源獲得と子どもの教育への影響―インド Rajasthan州の Rajeevikaプログラムを事例に―[2M09] 

水島 侑香(東京大学)

この発表は、本年の3月に行ったインド西部の州の3県(District)の3つの郡(Block)で政府が進める女性の自助組織(Self-Help Group、以下SHGs)の15名のメンバーに、半構造化インタビューを行った結果を軸に分析したものである。

報告者によると、多くのメンバーがSHGのマイクロファイナンスにより事業やSHGs組織の役職報酬よる収入向上、情報や人間関係といった形での資源を獲得し、結果的に子どもの教育にポジティブな影響を与えることを示した。

この発表に対してコメンテーターである広島大学の石田洋子会員は、SHGsの活動によってその本人だけでなく、その夫、女性の両親、子ども、教員、上位機関メンバー等がどう変化して、結果的に子どもたちの教育における変化につながっているのかを、セオリー・オブ・チェンジ(Theory of Change)といった形で把握すること、SHGプログラムの全容や対象地域の教育事情などが不明である、といった指摘をした。

第2発表:カンボジア・つばさ橋建設をめぐる環境社会配慮と事業化検討プロセス[2M10] 

小泉 幸弘(独立行政法人国際協力機構)
花岡 伸也(東京工業大学)

小泉会員の報告は、カンボジアにおける同様な橋梁プロジェクトと比較して、本案件がカンボジア側からの要請から無償資金協力実施の意思決定に至るまでに、10年ほどの時間を費やしたことの要因として、2004年改定のJICA環境社会配慮ガイドラインを適用した経緯をもとにしたものであった。

結果として、早期開通を希望していたカンボジア側の声には応えられなかったことが提起された。

これに対して青山学院大学の桑島会員からは、改定後の環境社会配慮ガイドラインの画期性、外務省・JICAの権限関係の「今」、カンボジアの運輸交通開発における環境社会配慮の「今」などのより幅広い検討の必要が指摘された。

また会場から相次いだ質問を通じて、こうした配慮がなされることでより丁寧な検討がされたことを評価するという指摘や、他の新興ドナーとの対抗を意識する日本政府はこうした配慮の適用範囲を限定しようとする動きがあるという懸念などが示された。

【総括】

このセッションでは、二人のコメンテーターからのコメントと発表者による応答、そして会場の参加者との興味深いやり取りが行われた。

四人の発表者を前提にした時間枠に二人の発表だったため、時間的に余裕があったので、しっかりしたやり取りをすることができた。それでも16時半に終了した。

報告者:大橋 正明(聖心女子大学)

2N:平和構築、レジリエンス(日本語)

  • 座長:湖中 真哉(静岡県立大学) 
  • コメンテーター:松本 悟(法政大学)、桑名 恵(近畿大学)
  • 日時:2023年11月12日(日曜)15:00 〜 17:00
  • 会場:紀-409 (紀尾井坂ビル409)
  • 聴講人数:約40名

第1発表:[2N06] 特定地域における民族間の勢力均衡論(ドミノ式)についての一考察ー勢力均衡のパターン分析を中心にー

安部 雅人(東北大学)

安倍会員による最初の報告では、民族間の勢力均衡論として3つの類型が提示され、中国新疆ウイグル自治区の紛争、パレスチナ紛争、ルワンダのジェノサイド等の事例が、その3つの類型の観点から検討された。

これに対して、松本会員によるコメントでは、リサーチクエスチョンの所在、先行研究に対する位置づけ等に関する質問が投げかけられた。

また、フロアからは、なぜインクルーシブな国家を形成できなかったのかという問題意識からの再検討の可能性等の論点が提出され、報告された類型が多角的に検討された。

第2発表:[2N07] 中国の都市におけるコミュニティレジリエンスの構築に関する質的研究—ソーシャル・キャピタルの視点から

王 藝璇(大阪大学大学院)

つづく王会員による報告では、2021年の中国河南省洪水災害で被災したコミュニティを対象とするインタビュー調査結果がおもに報告された。

同会員は被災コミュニティを都市・農村の移行期コミュニティの脆弱性に注目しながら3つに類型化し、各コミュニティのレジリエンスをソーシャルキャピタルの類型の観点から分析した。

松本会員によるコメントでは、ソーシャルキャピタルの有効性を論じるに当たっての基準設定の問題、比較の前提となる影響要因の評価の問題、調査対象者の選定上の問題等が質問された。

王会員は質問に回答しながら、今後の研究にコメントをフィードバックしていく見通しを述べた。

第3発表:[2N08] エルサルバドル共和国帰国研修員によるパイロット事業の形成過程と実施に関する要因分析:
ポストコンフリクトにおける地域住民の主体的生活改善活動に着目して

藤城 一雄 (独立行政法人国際協力機構)

その後の藤城会員他の報告では、研究対象地はエルサルバドルに移り、長期内戦後のポストコンフリクト状況において、JICA本邦研修による中米地域生活改善研修を事例として、パイロット事業実施5年後の現地調査の分析結果が報告され、おもにインタビュー結果から、パイロット事業参加者の幸福感が変容した成果等が示された。

コメンテーターの桑名会員によるコメントでは、過去の教訓を踏まえている点等が評価され、今後の展望が質問された。

また、フロアからは、事業に対するネガティブな反応がなかったのかという点が質問された。藤城会員は、その後エルサルバドルで政権交代があったため、組織全体が消滅したこと等、その後の事業の経緯を踏まえつつ、これらの質問に回答した。

第4発表:[2N09] グローバル・ナレッジとしての東日本大震災とそこからの復興(途上国に役に立つ知識とするために何が必要か?)

林 薫 (グローバル・ラーニング・サポート・コンサルタンツ代表、元文教大学教授)

最後の林会員による報告は、東日本大震災の震災以降に着目し、震災伝承施設をグローバルなレッジの観点からどのように評価できるかを探究し、その調査成果が豊富な事例とともに示された。

コミュニティ防災の軽視や失敗学の不在等の課題を示しつつ、最後に何が世界に発信すべきコアなナラティブになり得るかという展望が示された。桑名会員はこれに対して調査の方法や協働知の双方向性について質問を投げかけた。

林会員は震災伝承施設の展示方針の硬直性の問題により、双方向性が現状では困難であること等を回答した。

【総括】

本セッションでは各報告が時間を超過しなかったため、充実した討議を行うことでき、多角的に報告を検討することができた。

なかでも林会員は報告を通じて、本セッションの他の報告やプレナリーセッションにも言及され、本大会の最後を締めくくるに相応しい報告となった。

報告者:湖中 真哉(静岡県立大学)

その他

  • 一般口頭発表
  • 企画セッション
  • ラウンドテーブル
  • プレナリー、ブックトーク、ポスター発表



第34回全国大会セッション報告(ラウンドテーブル)

ラウンドテーブル


[1I01] 国際教育開発のシングル・ストーリーを乗り越える:実務者と研究者の出会い直しに向けて

  • 日時:2023年11月11日(土曜)09:30 〜 11:30
  • 会場:紀-112 (紀尾井坂ビル112)
  • 聴講人数:20名
  • 座長:荻巣崇世
  • 司会:川口純
  • ディスカッサント/コメンテーター:林研吾(国際協力機構)、泉川みなみ(国際協力機構)、坂口真康(兵庫教育大学)、関口洋平(畿央大学)
  • 第1発表:国際教育開発の哲学̶背景と展開̶
    橋本憲幸(山梨県立大学)
  • 第2発表:国際教育開発のシングル・ストーリーを乗り越える:実務者と研究者の出会い直しに向けて〜ニカラグア〜
    吉村美弥(国際協力機構)
  • 第3発表:国際教育開発のシングル・ストーリーを乗り越える:実務者と研究者の出会い直しに向けて〜マダガスカル〜
    山縣弘照(国際協力機構)
  • 第4発表:ともに「学び」・「学び直す」関係へ
    興津妙子(大妻女子大学)
  • 第5発表:国際教育開発のシングル・ストーリーを乗り越える:実務者と研究者の出会い直しに向けて〜ヨルダン〜
    山上莉奈(国際協力機構)
  • 第6発表:国際教育開発のシングル・ストーリーを乗り越える:実務者と研究者の出会い直しに向けて〜ガーナ〜
    村田良太(国際協力機構)

【総括】

本企画は、国際教育開発における実務と研究を架橋し、双方向から国際教育開発という分野を捉え直すことを目的として、特に、若手を中心とする実務者と研究者の相互理解を深めるための対話の機会として企画するものである。

2022年度から実施してきた勉強会での議論を通して、研究者側はJICAを単体のアクターと捉える傾向があり、その中で実務に携わる実務者個人の想いや葛藤に十分に目を向けて来なかったことや、逆に、実務者側は、研究者が生み出す知見や批判的検討を実務の中で十分に活かしきれていないことなど、実務(者)と研究(者)の間には「すれ違い」があることが明らかになってきた。

そこで、本企画では、この「すれ違い」の背景に、国際教育開発に関わる人々の葛藤や戸惑い、願いなどの個人的な語りが覆い隠されてきたことがあるのではないかとの仮説に基づき、これへの反省から議論を進めた。

特に、国際教育開発の中で「研究(者)」と「実務(者)」のそれぞれについて生み出されてきた、一方的で固定的なイメージ(シングル・ストーリー)を批判的に捉え、国際教育開発の語りを具体化・複数化するところから始める必要があること、また、「語られること」だけでなく「語られないこと」にも注意を払い、シングル・ストーリーが何を可能にし、何を不可視化してきたのか、議論を深めることに留意し、いわゆる研究者と実務者双方から計6名が登壇し、討論者も双方から計4名が登壇して、議論を進めた。

発表者からは、実務や研究に携わることになった背景・想いに加えて、それぞれが抱える葛藤や喜びが共有され、双方の顔を見ながら、想いをも含めて「出会う」「出会い直す」ことの重要性が確認された。

また、コメンテーターからは、やっていることの中身からは、実務(者)と研究(者)の境界は極めて曖昧なものであるにもかかわらず、それぞれが敢えて立場性を意識する/させる関係の中ですれ違いが起きているのではないかとの指摘があった。

会場からは、国際教育開発の「現場」をどう捉えていけば良いかとの指摘や、教育は明確なゴールがない(あるべきでないとも言える)分野だからこそ、「良い教育とは何か」についての対話を継続的に行なっていかなければならないのではないか、との指摘があった。

今年度より、本ラウンドテーブルのメンバーが中心となって研究部会「国際教育開発」を発足させることから、実務者・研究者の出合い直しや自分自身との出会い直しを促すために、引き続き対話を続けていきたい。

報告者:荻巣崇世(上智大学)

[1J01] 地方展開委員会主催ラウンドテーブル 地方大会から何が見えたのか?ー改めて「地方」から国際開発を考えるー

  • 日時:2023年11月11日(土曜)09:30 〜 11:30
  • 会場:紀-115 (紀尾井坂ビル115)
  • 聴講人数:00名
  • 座長:
  • ディスカッサント/コメンテーター:
*木全 洋一郎1、*佐野 麻由子2、*工藤 尚吾3、*梶 英樹4、*生方 史数5、*辰己 佳寿子6 (1. 独立行政法人国際協力機構、2. 福岡県立大学、3. 国際教養大学、4. 高知大学、5.岡山大学、6. 福岡大学)

【総括】

報告者:

[2D01] なぜ日本で「国際開発」を学ぶのか——韓国・中国の(元)留学生の経験から紡ぎ出すその答え

  • 日時:2023年11月12日(日曜)09:30 〜 11:30
  • 会場:紀-B108 (紀尾井坂ビルB108)
  • 聴講人数:25名
  • 座長:汪 牧耘(東京大学)
  • ディスカッサント/コメンテーター:大山 貴稔(九州工業大学)・松本 悟(法政大学)・劉 靖(東北大学)・キム ソヤン(ソガン大学(韓国))・Wu Jingyuan(東京大学大学院)

第1発表:留学生は「国益」になるか:行政・研究・教育現場からの考察

松本 悟(法政大学)

松本氏は、日本政府が無償資金協力で実施している人材育成奨学計画(JDS)を中心に、国際開発の日本留学が持つ特殊性と本RTの意義を述べた。

JDSは開発途上国の若手行政官が日本の大学院で英語学位を取得するのを支援し、帰国後、その国のリーダーとして開発課題の解決に寄与することを目的としている。

過去20年間で5千人以上がJDSで日本に留学した。

こうした「開発奨学生」の中心は行政官であり、修了後に帰国して開発行政と日本との橋渡しという外交的な役割が期待されている。

JDSに見受けられる「意図的な国益」に比べて、本RTは私費留学生や非行政官に登壇してもらい、留学生が自ら感じ取った日本留学の価値をその個々人のストーリーから理解する場である。

松本氏は、このような背景の違いを踏まえて、本RTにおける登壇者の語りが持つ意味を際立たせた。

第2発表:“Made in China, Recycle in Japan?”:留学の「成功例」とは何か——教育で世界を変えよう

劉 靖(東北大学)

本発表では、劉氏が「教育で世界を変えよう」という信念を持つようになった過程を振り返った。

小・中学校から、「正解」や「特権」に塗られた教育に感じた不平と違和感が、その問題関心の原点だという。

来日してから、大切な日本人の方や先生との出会いが積み重なっているなかで、劉氏は国際開発学の教育・研究活動に踏み出した。

「教育の公平」を実現するため、批判的かつ建設的な学問のあり方を国内外の機関、大学や教育現場で思索してきた。

こうした経験を踏まえて、劉氏は「国際開発に関する知の借用」から「国際開発に関する知の共有・共創」への転換が、日本で国際開発を学ぶ意味として挙げた。

その転換を引き起こす主体は、「個人」だけではなく、「地域」でもある。アジアの諸国・諸社会が互いの参照点となることで、自己理解が変容し、主体性が再構築されていく試みは、劉氏の現在進行中の研究である。

第3発表:越境者[境界人]の思い[lived experience]:イギリスと韓国から日本を包み直す[reflecting upon Japanese development studies]

キム ソヤン(ソガン大学(韓国))

本発表の冒頭で、キム氏は本RTで用いる方法論である「オートエスノグラフィ(自伝的民族誌)」の系譜を概説し、個人が自らの多面的・流動的なアイデンティティと経験を再帰的に考察・表象・構築するという行いが持つ学問的意味を浮き彫りにした。

その上で、キム氏は、1990年代から今に至り、韓国、日本やイギリスの国境を超えてきた勉強・留学・研究の経験を、その時々の時代背景と変動をかい摘みながら共有した。

日本で出会った政治生態学の面白さや地域研究者の素晴らしさ、イギリスで受けた理論・議論・研究倫理の厳しい訓練などといった越境による光の部分だけではない。深刻な人種差別と他者排除をはじめとする影もまだ境界人の心身を洗練するものとなった。

キム氏は、30年にわたって見えてきた日本の国際開発研究の可能性を踏まえながら、批判的思考の欠如や議論の断片化などとった現状に対する危機感と変革の必要性を訴えた。

【総括】

これほどまでに人を笑わせたり、泣かせたりした学会のRTはあっただろうか。発表が終わっても、会場における議論が終わらなかった。

「人材をどう育成するか」を考える前に、まずは図らずも日本に来た留学生が見てきた世界に向き合ってみることの大切さを忘れないこと。

オートエスノグラフィという一見「小さな物語」がもつ力を丁寧に用いながら、日本における国際開発研究を批判的に再構築すること。

JASIDをより多くの人が他者との共創の中で自らの足場を見つめ直す場になること。

これらの貴重な課題を示してくださった発表者、コメンテーター、司会と参加者の皆様に深く御礼申し上げたい。

報告者:汪 牧耘 (東京大学) 

[2E01] Well-being, Economics Policy Making and Sustainable Development Goals (SDGs) (English)

  • 日時:2023年11月12日(日曜)09:30 〜 11:30
  • 会場:紀-B112 (紀尾井坂ビルB112)
  • 聴講人数:15名
  • 座長:石戸 光(千葉大学)
  • ディスカッサント/コメンテーター:Arthur Grimes(Victoria University)、小林 正弥(千葉大学)

第1発表:Using wellbeing concepts to enhance international development

Arthur Grimes (Victoria University of Wellington)

千葉大学の研究プロジェクト「公正社会研究の新展開-ポストコロナ時代の価値意識と公共的ビジョン」(代表:水島治郎・千葉大学大学院社会科学研究院教授)の招聘および共催により、ウェルビーイングと経済政策策定の分野における世界的な経済学者(アーサー・グライムス博士、Motu Economic and Public Policy Research Trustシニアフェロー、ビクトリア大学ウェリントン校経済学部非常勤教授、ニュージーランド・ワイカト大学経済学部名誉教授)を招聘し、主観的幸福度、客観的経済政策(国家予算として財政的価値が配分される)、持続可能な開発目標(SDGs)の相互関係について、ウェルビーイングを考察した哲学・経済学者の系譜や、ウェルビーイング指標の低下が米国におけるトランプ政権の誕生や英国のEU離脱をある意味で予測できる指標であったこと(ただしこの分析自体は事後的なものであるが)、ウェールズを含む各国のウェルビーイング関連政策の有効性、などの側面から学際的に発題していただいた。

第2発表:Comment on “Using wellbeing concepts to enhance international development”

小林正弥(千葉大学)

アーサー・グライムズ教授からの発題を受けて、開発における新たなアプローチとして、どのような「開発」を先進国においても目指すべきか、センのケイパビリティアプローチの特質、客観・主観指標、悲惨や貧困と比較してのウェルビーイング研究の特質、政治哲学およびコミュニタリアニズム、といった概念の差異および関連性について質疑がなされた。

また「多次元的アプローチ」が有益である点、将来世代に関する目配りを行うウェールズの幸福度・公共政策を評価する点についての質疑応答が行われた。

特に多次元的なウェルビーイングを考慮していくことは、低所得のみならず、高所得国においても、生活の質の観点から重要な「開発」の課題である点が提起された。

第3発表:ウェルビーイング、公共政策およびSDGsの関連性

石戸 光(千葉大学)

出席の方々も交えてラウンドテーブル(双方向的な討論)を発表者(石戸)の司会進行により行った。

フロアからの質疑やコメントとして、「経済研究者の方がウェルビーイングを主眼として研究されていることに、研究分野の広がりを感じた」、「韓国は所得的には上がったが、幸福度はむしろ下がっているのが体感であり、この種の研究は目の開かれるものであった」「アフリカではパンとバターなどの物質的な充足が依然として重要であるが、やはりウェルビーイングの低さもあって、両者は相関している」「南米の所得水準とウェルビーイングには、また独特の特徴があるようにも思われる」など種々のコメントが寄せられた。ウェルビーイングへの文化的影響と開発の関連なども重要な論点であることが討議された。

【総括】

冒頭にて、アーサー・グライムズ博士が、公共政策に関する実務との結びつきが強い著名なエコノミストであり、2003年から2013年までニュージーランド準備銀行総裁を務めたことに言及し、その後、同氏の研究テーマがウェルビーイングおよび公共政策についてのものになっていった点を紹介した。

この経歴の変遷が参加者にとって斬新なもので、ラウンドテーブルにおける発題では、開発を問題意識の根底に持ちつつも、主観的指標と客観的指標の相互関係について議論がなされ、続く質疑も活発で有意義なものであった。

報告者:石戸 光(千葉大学)

[2H01] アジアにおける子どもの教育と健康

  • 日時:2023年11月12日(日曜)09:30 〜 11:30
  • 会場:紀-108 (紀尾井坂ビル108)
  • 聴講人数:00名
  • 座長:
  • ディスカッサント/コメンテーター:
*高柳 妙子1、*日下部 達哉2、*藤崎 竜一3 (1. 早稲田大学、2. 広島大学、3. 帝京大学)

【総括】

報告者:

[2J01] ソーシャルビジネスにおける研究の貢献可能性:インドの離島エリアにおける e-Healthビジネスの事例から

  • 日時:2023年11月12日(日曜)09:30 〜 11:30
  • 会場:紀-115 (紀尾井坂ビル115)
  • 聴講人数:20名
  • 座長:狩野剛(金沢工業大学)
  • ディスカッサント/コメンテーター:佐藤峰(横浜国立大学)・内藤智之(神戸情報大学院大学)

第1発表:ソーシャルビジネスにおける研究の貢献可能性

功能聡子(ARUN合同会社)・岡崎善朗(早稲田大学)・狩野剛(金沢工業大学)

発表者の3名から、インドのiKure社の概要、共同研究の概要といった背景説明があった。

そのあと、引き続き発表者より、インドにおける医療機器の現状や新興国・途上国での医療機器ビジネスの難しさなどについて解説があった。

そして、ソーシャルビジネスにおける研究の貢献可能性として、工学系研究者・民間企業・投資家・社会科学系研究者・現地大学・住民という各ステークホルダーの視点から見える共同研究における貢献可能性について説明があった。

【総括】

発表の後、討論者や会場の参加者からの活発なコメント・質問が行われた。今後の共同研究推進に向けた主な助言は以下の通り。

  • 現地の視点として医療サービスを提供するiKureからの情報を主としているようだが、エンドユーザの声をきちんと拾い上げるべき。例えば、遠隔医療への抵抗感、医者・看護師による信頼の違い、文化・宗教的なハードルなどについてきちんと情報を集めるべき。
  • 研究による外国人・外国資金の介入によって、ソーシャルビジネスの持続性に悪影響が出ないように気をつけた方が良い。特にこの共同研究の出口はどうなるのかと言った点は事前に先方とも意識合わせをしておく必要があると考えられる。
報告者:狩野剛(金沢工業大学)

[2C02]「持続可能性」の多義性を問う-言説分析、認識調査、評価の先に何を見るか

  • 日時:2023年11月12日(日曜)12:45 〜 14:45
  • 会場:紀-B104 (紀尾井坂ビルB104)
  • 聴講人数:30名
  • 座長:山田肖子(名古屋大学)
  • ディスカッサント/コメンテーター:木山幸輔(筑波大学)・工藤尚悟(国際教養大学)
Questioning the polysemy of “sustainability”: What to Look For Based on Discourse Analysis, Perception Surveys, and Evaluations

第1発表:「持続可能な開発」は誰にとってのどのような課題なのか:フィリピン、ガーナでのオンライン質問票調査からの試論

山田肖子(名古屋大学)・島津侑希(愛知淑徳大学)

この報告に先立つ、山田による本セッションに関する説明においては、質問紙調査による演繹的モデル作りと、学校や農村でのフィールドワークによる帰納的知見とを用いて、「持続可能性」言説をめぐる多様なリアリティを明らかにするという本セッション参加者が今後目指す目的と、国際開発学との接合という課題が示された。

その後、山田・島津報告においては、質問調査をもとに「持続可能性」概念を基軸として行われた批判的言説分析の報告がなされた。

そこでは、持続可能性に関する人々の認識において、いくつかの指向が存在することが報告された。

フロアとの議論では、本研究が持ちうる意義として、持続可能性言説がトップダウン的政治性をもちつつ同時に拡散し定着していく動態との関係を明らかにしうること、西欧近代的な認識論・存在論を問い直しうることなどが指摘された。

第2発表:「持続可能な開発」を評価するとはどういうことなのか

米原あき(東洋大学)

米原報告と次の西川報告は、帰納的知見を用いるものである。米原報告は、持続可能性と関連し実施される評価について考察を行う。

すなわち、タイにおけるコミュニティ開発評価と日本のESDに関する評価である。

報告では、そうした評価において用いられる説明責任・エビデンス・合理性について、現場の当事者とともに協創される評価指標にもとづくそれらの像の可能性が指摘された。

こうした協創においては、共通認識をどのように、いかなる主体が形づくっていくことができるのか、コメント・質問がなされた。

これは、当事者の観点が、同じ人間であっても、地球市民、学校の生徒等、多様なものでありうることとも関係する。

第3発表:食と農のシステムの持続性のなにが厄介な問題か?

西川芳昭(龍谷大学)

西川報告では、食と農をめぐる持続性に関する議論において、人間中心主義が前景にあったことが指摘された。

そして、むしろ多様なアクターとの萃点の中で、むしろ評価になじまない当事者のまなざし、例えば「種をあやす」といった農業従事者の言葉をどのように位置付けるか、といった課題が提起された。

こうした議論について、例えば当事者の視点をむしろ規範的に固定化してしまうおそれについて提起がなさたり、研究者による価値判断が機能を果たす位置等について、質問がなされたりした。

【総括】

セッション全体に共通するコメントとして、「共創/協創/対話」といったモデルにおいて、研究者と調査対象者の望ましい関係のあり方、あるいは持続可能性概念に対する研究者のポジショナリティが問われた。

あるいは、研究によって明らかとなる人々の持続可能性をめぐる認識・世界観と、研究者の価値に関する探究の関係が問われた。

セッションでは、多様な学術領域および実務家からの本研究への観点が示されるとともに、参加者がもつ持続可能性の言葉に対する態度についても言葉が示された。

こうしたことを通じ、本研究の意義について考察が深められ、今後の研究の進展に大きな意義があったと思われる。

報告者:木山幸輔(筑波大学)

[2D02] 国際開発(学)の「埋葬」と「再生」―世代を超えた、グローバルなサステナビリティの確保を射程に入れて―

  • 日時:2023年11月12日(日曜)12:45 〜 14:45
  • 会場:紀-B108 (紀尾井坂ビルB108)
  • 聴講人数:00名
  • 座長:
  • ディスカッサント/コメンテーター:
*佐藤 峰1、*小林 誉明1、*木全 洋一郎2 (1. 横浜国立大学、2. 国際協力機構)

【総括】

報告者:

[2E02] 国際協力NGOの組織基盤強化支援におけるマッチ・ミスマッチ

  • 日時:2023年11月12日(日曜)12:45 〜 14:45
  • 会場:紀-B112 (紀尾井坂ビルB112)
  • 聴講人数:不明
  • 座長:中山雅之(国士舘大学大学院)
  • ディスカッサント/コメンテーター:東郷 琴子(パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社)、松元 秀亮(国際協力機構)、篠原 大作(特定非営利活動法人日本ハビタット協会)、田口 由紀絵(合同会社 コドソシ)、楯 晃次(株式会社EMA)

国際協力NGOの組織基盤強化支援について、表面的には見えないマッチ・ミスマッチが存在するのではないかと、支援組織、支援を受ける組織、評価・伴走者の3者の視点から議論をする企画であった。

まずコーディネーターの中山が組織とは何か、組織基盤強化とは何かについて、経営学の視点で整理した。

その後、報告、パネルディスカッション、フロアからのコメントの3パートで進められた。

報告

楯が、これまで行われてきた支援制度を研修型、助成金型の2つに分け、年表に沿い、その変遷を報告した。

研修型は1987年前後から開始されたが、組織基盤強化に直接資する組織マネジメント研修やリーダーシップ研修などは、2004年からの開始となり、2011年頃までに多く行われ、その後はファンドレイジング研修に変化した。

助成金型では、1993年に初めて助成制度を設けた組織が出たものの、その後助成金制度は増えず、数団体にとどまっている現状を報告した。

こうした変遷の中で、支援を行う組織として、パナソニック オペレーショナルエクセレンスの東郷、国際協力機構の松元が、支援を受ける組織として日本ハビタット協会の篠原が、評価・伴走者コドソシの田口が、 (1)組織基盤強化/支援に関する取組、(2)支援をする組織/支援を受ける組織への要望、(3)感じ考えていること、の3点について報告した。

支援を行う組織として東郷は、社会変革における組織基盤強化の重要性、また組織基盤強化の取り組みが組織文化として定着していくことの意義、そしてそれらノウハウが業界全体に共有・浸透されることの重要性を報告した。

一方で、セクター全体の成長を促進するために、どの層を応援することが効果的かまだ定まっていないとの課題を提示した。

続いて松元は、JICAとしての支援制度を説明した後、支援を受ける組織に対して、組織同士の繋がりと学び合いによって他組織と自組織との比較を通じた気付きの重要性を述べた。

制度を整えるだけでなく、組織自らが組織基盤強化の必要性・重要性を感じて取り組むモチベーションがなければ、制度があっても組織基盤強化に資さないのではといった問いを提示した。

支援を受ける組織として篠原は、支援を行う組織に対して、より効果的なものにする為には、結果だけでなく強化プロセスを重要視すべきであることを強調した。その為強化のための組織再構築のモデルケースを提示することが望ましいと述べた。

最後に評価・伴走者の田口からは、支援を行う組織に対しては、業界の現状と外部環境の変化を把握し、業界がどうなれば世界が良くなるのかという視点をプログラムに反映することの重要性が述べられた。

支援を受ける組織には、環境が変化する中で、組織変革に取り組むことに対して組織全体で合意形成をとることが、組織基盤強化の一歩目であると報告をした。

パネルディスカッション

報告を踏まえ、中山がコーディネーターとして、報告者が討論者となり、パネルディスカッションを行った。

特に組織基盤を強化するにあたって、組織内部での合意形成と組織基盤強化に関わる三者の緊密な連携について多くの議論がなされた。

組織内部での合意形成については、組織の根幹に関わる課題と向き合うため、多くの困難や痛みを伴うこともあり、その認識を組織全体が事前に共有・合意し、取り組まなければ、本質的な組織基盤強化への取り組みは難しいことが強調された。

また三者の連携は支援制度への申請前からコミュニケーションを図るべきであり、また実施前・中・後が有機的に連結された一連モデルケースを整備することが重要であることが合意された。

フロアからのコメント

組織基盤強化を考える上でも資金調達の重要性を感じたといった感想が述べられた。

そして組織の活動分野や特徴に合わせた強化方法や成長の特徴を整理する必要があるのではないか、さらに、組織の核となるミッション・ビジョンといったアイデンティティを明確化し継承することが組織の基盤強化には不可欠であり、具体的にどのように取り組むべきか改めて考えるきっかけとなったというコメントがなされた。

【総括】

組織基盤強化に関して、支援を行う組織、支援を受ける組織、評価・伴走者という異なる立場である者が一堂に会するということが、大きな意味をもった。

そして、今後NGOが継続して組織基盤を強化していく上で必要となる視点や支援制度の在り方について、率直な意見が開示され、開かれた議論が成されたことは、今後の支援制度設計、そして本業界の成長に大きな意義を見出すことが出来る成果となった。

報告者:楯晃次(株式会社EMA)

[2H02] メイキング・オブ・開発協力大綱:大綱はどう作られ、どこに向かうのか

  • 日時:2023年11月12日(日曜)12:45 〜 14:45
  • 会場:紀-108 (紀尾井坂ビル108)
  • 聴講人数:00名
  • 座長:
  • ディスカッサント/コメンテーター:
*山形 辰史1、*河野 敬子2、*原 昌平3、*井川 真理子4、*鈴木 千花5 (1. 立命館アジア太平洋大学、2. (一社)海外コンサルタンツ協会、3. 国際協力機構、4.(株)コーエイリサーチ&コンサルティング、5. 持続可能な社会に向けたジャパンユースプラットフォーム)

【総括】

報告者:

[2O05] JICA国際協力事業における評価の枠組みとグローバル危機について

  • 日時:2023年11月12日(日曜)12:45 〜 14:45
  • 会場:紀-412 (紀尾井坂ビル412)
  • 聴講人数:00名
  • 座長:佐藤 真司(独立行政法人国際協力機構)
  • 指定討論者:伊藤  晋(新潟県立大学)

第1発表:JICA事業評価の概況と最新課題-紛争影響国の事業評価の視点-

阿部 俊哉(独立行政法人国際協力機構)
山口 みちの(独立行政法人国際協力機構)

南スーダン、フィリピン(ミンダナオ)の事例を交え、紛争影響国の事業での評価の難しさとともに、「紛争影響国・地域に留意した事後評価の視点」を整理・公開していることを紹介した。また、外部要因の考え方の整理が重要であることを報告した。

指定討論者から、①感染症、経済危機、政権交代等で事業に影響が生じた際の評価での対応、②騒乱等の影響が事業実施段階に発生し、事業計画と異なる対応が生じた場合の評価の考え方について質問があった。

JICAから、①事業形成時には想定困難で事業期間中に対応困難な事象が発生した場合、外部要因と整理するが、一律の判断基準を設けることは困難なため、事業が受けた影響の記録を残すことが重要であること、②紛争影響国での事業は、案件計画当時に治安悪化等のリスク想定及びその対策の実施内容、計画時の想定を超える治安悪化等が事業に与えた影響、事業継続に向けた対応等を事後評価時に確認することを説明した。

第2発表:新事業マネジメント(クラスター事業戦略)でのモニタリング・評価の枠組み検討について

宮城  兼輔(独立行政法人国際協力機構)
菅原  貴之(独立行政法人国際協力機構)

JICAグローバル・アジェンダ(JGA)・クラスターの概要と、クラスター単位でのモニタリング・評価の試行案を紹介した。また、クラスター導入を踏まえたJICAの評価6項目の適用項目、確認時の重みの分散案を説明した。

指定討論者から、①クラスター外の技術協力への評価6項目の適用方針、②技術協力と資金協力の取扱が異なる理由、③クラスター単位での成果検証方法について質問があった。

JICAから、①評価6項目の適用項目や重みの分散は試行対象クラスター及び事業のみ、試行結果ではクラスター外の事業に適用する可能性がある、②技術協力は活動の過程でアウトプット、アウトカムが発現するが、資金協力は事業完了時にアウトプットが生成され、事業完了の一定期間後にアウトカムが発現するのが主流という違いを踏まえている、③クラスターは、技術協力以外に資金協力や民間連携事業、他機関とのプラットフォーム活動の成果も確認対象になること、を説明した。

【総括】

以下のような質問・コメントがあった。JICAからは、JGAとクラスターが目指す方向性は、今次大会のテーマである「複合的危機下における連帯と共創」とも通ずるものであり、指摘の点も踏まえ、試行プロセスを通じてよりよい制度設計をしていきたい旨回答。

  • 多様なステークホルダーを巻き込むクラスターは、JICA単体で事業監理が可能なのか。
  • EBPMならぬPBEM (Policy Based Evidence Making)にならぬようすべき。
  • IMM(Impact Measurement and Management)の発想が重要である。
報告者:佐藤 真司(独立行政法人国際協力機構)

[2P01] 2023 JASID 世銀協議―世界銀行 ・ 日本政府 ・ 住民を繋ぐ者たち―

  • 日時:2023年11月12日(日曜)12:45 〜 14:45
  • 会場:紀-413 (紀尾井坂ビル413)
  • 聴講人数:15名
  • 座長:玉村優奈(東京大学)
  • ディスカッサント/コメンテーター:大芝亮(広島市立大学広島平和研究所)、松本悟(法政大学)

第1発表:文化運動としての愛知用水ー仲介者「久野庄太郎」を中心にー

柴田 英知(歩く仲間)

2021年9月30日に通水60周年を迎えた愛知用水は、第二次世界大戦後の、日本初の地域総合開発事業ともいわれ、また世界銀行の借款事業としても知られている。

愛知用水の事業推進の内部構造を、ソーシャル・イノベーション論の枠組みで読み解き、「文化運動としての愛知用水」という観点から、発願者であり篤農家の「久野庄太郎」の開発思想、久野らを支えた官民、皇室にまで及ぶネットワークを中心に、地域開発事業をめぐる仲介者の協働ととらえる視点を提示した。

愛知用水の事例で何がなかったら失敗していたか、成功と失敗を決める事業評価の根本的な在り方(松本)、開発コミュニティはどのようにつくられるか(大芝)がコメントされ、愛知用水が他の対日融資と比べても特異な事例であることを柴田氏は強調した。

第2発表:日本のNGOと世界銀行・財務省との対話と課題

田辺 有輝(JACSES)

田辺氏は、世界銀行と融資事業地の住民らとの仲介的な存在である「財務省・NGO定期協議」について報告した。その中で、大芝氏による過去の外部評価が紹介され、信頼関係の醸成が財務省とNGOの双方にとっての成果として挙げられた。

その後の20年間の考察として、財務省内の人事異動による知識の蓄積や逐次議事録の公開が協議を発展させたと自己評価した。

また、愛知用水の比較事例として、世界銀行が1960年から1970年に「緑の革命」として推進したパキスタンの灌漑事業が深刻な塩害を引き起こした問題を取り上げた。塩害対策の事業が新たな環境社会被害を引き起こし、それが世界銀行のインスペクションパネルにかけられ、5つの政策違反が指摘された。

愛知用水という「図らずも」成功した農業事業がある一方で、「図らずも」問題の連鎖を引き起こした農業事業もあった。

コメンテーターからは、対日融資と現在の世銀事業との異同(松本)や、協議に参加するNGOとそうでないNGOとの線引き(大芝)などについてコメントがなされた。

第3発表:2023 JASID – 世界銀行協議―世界銀行・日本政府・住民を繋ぐ者たち―

米山 泰揚(世界銀行)

米山氏は、愛知用水を主管する農林省が3省と共管し、基本計画を5省庁と協議し、さらに実施計画は3県と協議したうえに農民の意見提出権が明記されていることは当時としては極めて珍しいと指摘した。

また、米山氏が財務省職員として関わったNGOとの定期協議の意義を評価し、住民等の関係者の視点を通じて事業の多面性を認識したこと、開発政策を巡る自由闊達な議論によって「開発コミュニティ」が形成されたこと、国際開発に携わる行政官の「教育」になったことを挙げた。

世界銀行の最新の動向として、気候変動・パンデミック・政情不安な脆弱国などに対処する国際公共財の供与を強化し、環境・社会配慮原則を緩めることなく案件組成に要する時間の大幅短縮を目指すこと、今後10年で1,500億ドルの融資を積み増すことなどを説明した。

コメンテーターからは、世界銀行の予算増額・時間短縮とAIIBや中国との繋がり(大芝)や市民社会と世界銀行の間を財務省が仲介することの煩雑さ(松本)について質問が出され、米山氏からは、AIIBは競争相手ではない点や、市民社会が国会を通じて問題提起するのと同時に、財務省との定期協議の場において掘り下げた議論を行うことで、実質的な改善に繋がるなどの認識が示された。

【総括】

世界銀行の対日融資である愛知用水と、1990年代以降の日本の財務省とNGO間の世銀に関する協議を取り上げ、仲介者の役割と組織を超えた知の蓄積の重要性を浮き彫りにした。

現在、世界銀行は融資額を増加する一方で、融資審査の期間を短縮する方針を打ち出している。

本RTが、現場と世銀を繋ぐ仲介者の活動をどのように活性化できるか、新たな制度的枠組みづくりと過去の経験の援用の限界と可能性といった新たな課題を提起したといえる。

さらに、本RTが今後の国際開発学会で、世界銀行を筆頭に国際開発金融機関への議論と関心が高まるきっかけとなることを期待する。

報告者:玉村 優奈(東京大学)

[2C03] 外国人技能実習制度を通じた技能移転をめぐる課題と可能性ーベトナムにおける社会的ニーズと技能実習生の生活戦略

  • 日時:2023年11月12日(日曜)15:00 〜 17:00
  • 会場:紀-B104 (紀尾井坂ビルB104)
  • 聴講人数:20名
  • 座長:生方史数(岡山大学)
  • ディスカッサント/コメンテーター:佐藤寛(開発社会学舎)

第1発表:ベトナム人元技能実習生における技能移転と将来設計

加藤丈太郎(武庫川女子大学)

コメント:「技能移転」を研究することは技能実習制度を擁護することにもつながるのではないか。

応答:本研究は、制度の是非を超えて、移民個人に制度がどのような影響を及ぼしたのか、その内実を明らかにすることを目指している。

コメント:分析枠組みにcapabilityを用いているが、移住と開発の研究分野ではaspirationも合わせて議論されている。元技能実習生のaspirationも考える必要があるのではないか。

応答:たしかにaspirationによって事象を説明し得る可能性がある。今後ぜひ取り入れていきたい。

コメント:研究方法は、31名へのインタビューとあるが、どのように調査対象者を確保したのか。

応答:データの偏りを防ぐために、在ベトナムの日本語通訳者、日本のベトナム寺院の住職、カトリック教会のシスター、自らの前の研究の調査対象者への再コンタクトなど、複数のルートをたどり調査対象者を集めた。結果的に相当数の方へのインタビューの実現につながった。

第2発表:ベトナムの農業をめぐる社会的ニーズと技能実習生の生活戦略としての技能移転

二階堂裕子(ノートルダム清心女子大学)

コメント:日本の農業分野で就労し、農業の技術を学んだとしても、技能実習生の母国の自然条件や地理的条件が異なるため、必ずしもその技術を活用することができるわけではないのではないか。

応答:狭い意味での技術ではなく、作業遂行のための能力、たとえば、農業経営の考え方や方法を身につけることで、それを母国で活用することは可能であると思う。

ただし、日本社会がもつ知識や技能を、技能実習生の母国のそれらよりも「優れたもの」と安易に位置づけ、「修得するに値するもの」として一方的に「押し付ける」といった姿勢があるとすれば、おおいに検討の余地があると考える。

そのためにも、送出国でどのようなニーズがあるのか、そのニーズに応えうる技能とは何かを吟味する必要がある。

第3発表:介護分野におけるベトナムへの技能移転の課題と可能性:「移民力」の視点から

比留間洋一(静岡大学)

コメント:Cさん(将来故郷で介護サービスを提供すべく、現在、日本在住ベトナム人高齢者に介護ボランティアを試行)は、ベトナムでは大卒、日本では(技能実習生ではなく)留学生(現在、介護福祉士)。

ここからも示唆されるように、調査対象者を技能実習生に限定しないほうがよいでは。また、(コミュニティのチェーンマイグレーションではなく)一人の個人によるものなので、故郷のコミュニティ開発への影響は限定的になるのではないか。

応答:確かにCさんのような介護職者はまだ少ない。しかし、介護ボランティアにはCさんの同僚のベトナム人介護職者(元技能実習生を含む)が自ら進んで参加している点で可能性が感じられる。

「上からの」日本式介護の輸出ではなく、「移民力」(故郷への思いと実践)を基盤としたベトナム人による「下からの」試みのほうが持続性の面で期待できるのでは。以上から、このような事例に今後とも注視していく必要がある。

【総括】

政府の有識者会議より、近日中に、技能実習制度に代わる新しい外国人労働者の制度が示される見込みである。

今年10月に立ち上がった「移住と開発」研究会では、こうした動向をふまえつつ、日本社会が外国人労働者から「選ばれ続ける」ための道筋を検討していきたい。

報告者:二階堂裕子(ノートルダム清心女子大学)

[2D03] SDGsを追い風とした国際協力人材の確保とキャリア形成~RiskとOpportunity~

  • 日時:2023年11月12日(日曜)15:00 〜 17:00
  • 会場:紀-B108 (紀尾井坂ビルB108)
  • 聴講人数:30名
  • 座長:佐藤仁(東京大学)
  • ディスカッサント/コメンテーター:山田肖子(名古屋大学)・末森満(国際開発ジャーナル社)

第1発表:国内外の社会課題解決を結ぶ国際協力キャリア

江崎千絵(JICA)

  • JICAを取り巻く国際協力人材の現状と課題
  • JICA内外の開発協力人材の養成・確保に向けたビジョン
    (多様化・複雑化・変化する世界規模の(開発途上国の)課題に、機動的・革新的に対応するために、活力ある魅力的な開発協力人材市場を実現する)
  • 職業としての国際協力の認知向上
  • 越境支援、人材の還流
  • 個人にとっての魅力的なキャリアアップと業界全体での共創促進の方策とは?

本当に優秀な人を、国際協力人材として活躍してもらえる状態にしておくかが大事なのではないか、そのためにも待遇の工夫や地位向上への努力も必要だろう。

第2発表:「開発コンサルティング人材の確保とキャリア形成」

河野敬子(ECFA)

  • 開発コンサルタントの年代構成
    (20代と70代の増加、30代の減少)
  • 高齢化と中堅層の確保
  • 70代のプロジェクトマネジャーの増加
  • 課題と対応
    (ジェネレーションギャップ、働きやすさ、報酬、魅力発信、参入障壁対策)

開発コンサルタントは新規マーケットを目指しているのか?日本のコンサルがグローバル競争に入っていけるのか?などの質問があった。

第3発表:国際協力人材育成における大学の役割」

須藤智徳(立命館アジア太平洋大学)

  • 国際開発に関する学生アンケート結果
  • サステナビリティ学科の学生8割が国際開発に関心あり
    (ほとんどが授業をきっかけに関心)
  • 将来仕事として関わりたい人は6割
    (JICA等政府機関が人気)
  • 高校までの動機付けをどう作るか
  • 大学で国際開発教育の動機付けをどう強化するか

国際開発の仕事に関心がある学生に対して、新卒採用の門徒が狭いといった受け入れ側の課題も多く、学生からはハードルが高い印象。専門性や経験も具体的に何をといった提示があるとキャリア形成に役立つといった学生側からの声も聞かれた。

【総括】

江崎氏、河野氏、須藤氏の順にそれぞれの立場で感じている国際協力人材についての現状や課題について発表を行った後、討論者末森氏からは、①国際協力とは何かを明確にする、➁国際協力の担い手(国際協力人材)はグローバル人材である、③働く環境を改善する、④人材確保に対しターゲットを大学生に加えて中高生に拡大するといった指摘があった。

討論者山田氏からは、「国際開発学」「国際開発業界」という言葉が暗黙のうちに作ってしまっている職業上の参入障壁と″業界人”の思考枠組みをいかに変えるか?テーマとしては関心がある、既に関わっているという層といかにつながるか?といった点について、有機的につながり続けるための仕掛けにイノベーションが必要との指摘があった。

今後、学生を含めた20代、30代をターゲットとしたイベント等を検討していくべく、学生に協力を呼び掛けた。

報告者:河野敬子(ECFA)

[2H03] SDGs Reexamined-Lessons Learned from Afrian Experience (English)

  • 日時:2023年11月12日(日曜)15:00 〜 17:00
  • 会場:紀-108 (紀尾井坂ビル108)
  • 聴講人数:45名
  • 座長:Masato Noda (Ibaraki University)
  • ディスカッサント/コメンテーター:Woury M. Diallo (ex. World Bank)

第1発表:Aid Complementarity: Theory and Practice in Africa

Takeshi Daimon-Sato (Waseda University)

In this presentation, the author presented on aid complementarity in Africa. Main message can be summarized as follows: 1) competition is good, but coordination failure often results in costs for all parties. 2) there is a case for grand coalition for Win-Win-Win case, 3) It may be difficult to find a convergence for the Belt and Road Initiative (BRI) and Free and Open Indo-Pacific (FOIP) – but there exists a more realistic possibility for collaboration between FOCAC and TICAD for targeted topics. 4) in selected fields such as medical-public health/educational fields (example in Mauritania), there are some good practices in support of complementarity thesis, while transportation/energy infrastructure – there seems to be most difficult challenge to overcome. It is important to grasp the concept of complementarity with some gradation on the basis of a) Reciprocal Complementarities – South-South Cooperation, Equal Partner Cooperation / Interdependence, b) One-Sided Complementarities – Center-Periphery Relations (Growth Center vs Supplier Countries) / Dependence.  Further, the analysis could be broken into sectoral level (input-output inter-industry, or intra-industry) complementarities.  Also, multidimensionality of complementarities could apply to resources (skilled labor, capital), institutions, hardware and software (infrastructure and management system).

第2発表:Halfway of SDGs to 2030

Masato Noda(Ibaraki University)

SDGs are the global development goals 2016-2030. They are on halfway in 2023. They are required to reexamine based on the COVID-19 pandemic. Analysis of its impacts on SDGs requires multidimensional approach regarding to the three dimensions of sustainable development; economy, society and environment. The pandemic highlights vulnerability, especially people and are that left behind. COVID-19 pandemic is a global thread and crisis of human security. It is necessary to “rebuild our economies sustainably and inclusively.” “Remember, we are in this together,” “No one will ever be truly safe until everyone is safe” (Mohamed, A.J). SDGs motto, “No one left behind” is not just ideal but should be in practice. For post/with Corona society, it necessary to accelerate SDGs through human security approach in Anthropocene.

第3発表:Rely on China? Africa’s Path to SDG 10

Christian S. Otchia (Nagoya University)

This research explores the influence of Foreign Direct Investment (FDI) on regional inequality in Ghana, addressing the spatially imbalanced distribution of FDI, particularly in urban areas. Using a regional inequality index derived from predicted GDP, the study employs a panel data fixed effect model spanning 1994 to 2020 across ten regions, providing a nuanced regional-level analysis. Notably, FDI is found to significantly reduce regional inequality, highlighting the role of Ghana’s absorptive capacity. The study underscores the positive impact of FDI in the manufacturing sector, advocating for tailored policies to attract such investments to foster equitable regional development. Moreover, Chinese FDI is identified as a key contributor to reducing regional disparities, aligning with policies emphasizing infrastructure and employment. The research offers policy recommendations to optimize FDI distribution, strengthen bilateral relations with positive contributors like China, and align strategies with SDG 10. Emphasizing the non-linear relationship between FDI and regional inequality, the study calls for an adaptive approach to maximize benefits while mitigating potential disparities, emphasizing the manufacturing sector’s potential and aligning strategies with the African Continental Free Trade Area.

第4発表:China-Africa Cooperation and SDGs

Naohiro Kitano (Waseda University)

In this presentation, the author presented on the recent China-Africa relations and China’s efforts to make use of the SDGs to expand its influence, as well as challenges on the African side. China has been hosting the Forum of China Africa Cooperation (FOCAC) as a platform for enhancing relations with Africa. In 2021, for the first time, the ministerial conference adopted the long-term plan for FOCAC. The three-year plan shifted its focus from infrastructure to health, the digital economy, and human resource development. As for infrastructure, China has become more cautious about providing new loans as the debt problems of developing countries, including African countries, have worsened. A new initiative emerged in 2021: the Global Development Initiative (GDI), which provides a global platform hosted by China to accelerate the achievement of the SDGs. the GDI seems to be more of a foreign policy to increase the influence on global south rather than a development policy. Chinese government announced funding for the GDI, but not on the scale of the Belt and Road Initiative (BRI). From the developing countries’ perspective, taking Zambia as an example, good leadership and governance is the key to managing relations with China.

第5発表:China’s Party-State Relations in Africa

Takashi Nagatsuji (Waseda University)

How does the Communist Party of China (CPC) interact with the Chinese Ministry of Foreign Affairs (MFA)? Previous studies on party-state cooperation of China point out a clear division of work between the party and the state. However, in reality the divisional cooperation between the CPC and the MFA is blurry. My research untangles China’s party-state relations in Africa by constructing and analyzing original datasets covering the activities of both the International Department of the CPC Central Committee (IDCPC) and the MFA. The IDCPC is an organ in charge of the CPC’s external work. On the one hand, my research shows that party-state cooperation is not strong in terms of geographically selecting their partners and that their cooperation is weak even in the Belt and Road Initiative (BRI). On the other hand, my research shows that the IDCPC aligns with the MFA in their main activities, illustrating two types of party-state cooperation: Party-Led Cooperation and State-Led Cooperation. My research implies that China does not have one overarching Africa Strategy and the IDCPC and the MFA has its own Africa Strategy. This research contributes to the literature on China-Africa relations and advances understanding of the relations between political parties and state organizations.

【総括】

This round table is the kickoff session of new JASID ‘SDGs Re-examined’ Research Group. It aims to develop the research on SDGs post/with Corona era toward 2030, as the successor of precedent SDGs research groups of JASID: on ‘Sustainable Development and SDGs’ and ‘Resilience of Development and SDGs’. The book, Noda, M. ed. (2023) ‘SDGs Re-examined: Post/With Corona and Human Security’ is a fruit of them. Based on these, the research group plans to 1) conduct case studies of the regions, such as Africa, Asia and Pacific, and Latin America, 2) organize academic sessions and publish articles and books in English.

報告者:Masato Noda (Ibaraki University)

[2J03] 大国間競争の時代に ODAで「普遍的価値」を促進することの意味を問う

  • 日時:2023年11月12日(日曜)15:00 〜 17:00
  • 会場:紀-115 (紀尾井坂ビル115)
  • 聴講人数:00名
  • 座長:
  • ディスカッサント/コメンテーター:
*志賀 裕朗1、*福岡 杏里紗3、*荒井 真紀子2、*小林 誉明1(1. 横浜国立大学、2. JICA研究所、3. デロイトトーマツコンサルティング)

【総括】

報告者:

[2O06] 人口減少社会における創造的復興とは何か?

  • 日時:2023年11月12日(日曜)15:00 〜 17:00
  • 会場:紀-412 (紀尾井坂ビル412)
  • 聴講人数:20名
  • 座長:松岡俊二(早稲田大学)
  • ディスカッサント/コメンテーター:中村勝則(秋田県立大学)、工藤尚悟(国際教養大学)

第1発表:東日本大震災からの「ポスト復興」のまちづくり:岩手県陸前高田市の事例

木全洋一郎(JICA北海道帯広)

木全さんの陸前高田市の事例報告、戸川さんの紫波町オガールプロジェクトの事例報告、島田さん・辻さん・松岡の福島浜通り復興の事例報告は、まちづくりのビジョンやコンセプトの形成プロセス、公民連携(PPP)のプロセス、よそ者(外部者)と地域社会内の人々との関係、社会イノベーション創造のための知識創造や資源動員のあり方、政策形成と「対話の場」=「学びの場」の関係(科学と政治と社会の協働)のあり方など、さらに幾つかの基本的な評価軸で比較研究すると一層興味深い研究成果が生まれ、実践への教訓が明確になるように思います。

引き続き調査研究を続けたいと思います。

第2発表:多様な主体が地域で学習する場の形成を通じた地域再生に関する一考察:紫波町オガールプロジェクトの事例

戸川卓哉(国立環境研究所福島地域協働研究拠点)

中村さんのコメントの研究者・専門家としてのまちづくりや地域再生への関与(参与)のあり方は、大学に籍を置く研究者・学者として深く考える必要を感じました。

12年半前の東日本大震災・福島原発事故は日本の大学と政治や社会のあり方を考える大きな機会だったのですが、今になって思うと、持続的な大学改革への努力が根本的に不足していたように思います。

ある意味で、そうした自主的な持続的な努力の不足が、「失われた30年」の日本の科学技術力や日本の大学の国際的な地位低下の大きな要因の一つであるように思います。

第3発表:人口減少社会における原子力災害からの福島再生を考える:福島再生塾の設立に向けて

松岡俊二(早稲田大学)
島田剛(明治大学)
辻岳史(国立環境研究所福島地域協働研究拠点)

工藤さんが最後の方でコメントいただいた以下の指摘は、福島の復興や廃炉の研究をする者として大変重く心に響きました。

「この12年半、福島へボランティアや視察などで訪れた人は私の周りにも多くいる。しかし、そうした多くの人々の福島の復興や廃炉への関心は持続せず、福島県浜通り地域の関係人口とはなっていない。このことは、福島県のホープツーリズムなどが提供する福島復興のメッセージやコンセプトと日本社会や世界の福島への想いが乖離していることを示しているのではないか。『福島の問題は日本の問題であり、福島の問題は世界の問題である』ということを明確なメッセージやコンセプトとして示していくことが必要ではないか」。

【総括】

11月12日(日曜)15:00-17:00、上智大学で開催されました国際開発学会・第34回全国大会・企画セッション「人口減少社会における創造的復興とは何か?」では、創造的復興、まちづくり、地域再生などをめぐり、地域社会内外の多様なアクターによる「場」づくりのあり方や知識創造・イノベーション創出のあり方など、大変充実した議論が出来ました。

報告者の方々、秋田からご参加いただいた討論者の中村さん、工藤さん、福島(富岡町)から参加いただいた穂積さんなど、参加された皆さんに心から感謝申し上げます。

報告者:松岡俊二(早稲田大学)

[2P02] テストと学力改善

  • 日時:2023年11月12日(日曜)15:00 〜 17:00
  • 会場:紀-413 (紀尾井坂ビル413)
  • 聴講人数:00名
  • 座長:
  • ディスカッサント/コメンテーター:
*谷口 京子1、*光永 悠彦2、*渡邊 耕二3、*丸山 隆央4、*石井 洋5 (1. 広島大学、2. 名古屋大学、3. 宮崎国際大学、4. JICA緒方研究所、5. 北海道教育大学)

【総括】

報告者:

その他

  • 一般口頭発表
  • 企画セッション
  • ラウンドテーブル
  • プレナリー、ブックトーク、ポスター発表



報告募集「京滋支部・研究報告会」4月5日締切(会員・一般)

京滋支部では、研究(計画)発表・交流会を下記の日程で開催を予定しております。

研究成果に加え、中間発表(たとえば研究テーマ、背景、意義、研究仮説、予想される結論・政策提言など)も歓迎いたします。

若手・院生会員の全国大会発表に向けた準備を後押しし、また外国人留学生と日本人研究者の研究交流の促進も企図しています。ぜひふるって応募ください。

開催概要

  • 日時:2024年4月20日(土曜) 13:30-17:30
  • 方法:ハイブリッド(オンライン参加のURLは追って参加者に連絡します)
  • 会場:立命館大学朱雀キャンパス(JR・地下鉄 二条駅)
  • 言語:日本語/英語

発表時間:

一人あたり15分程度(応募者数によります)の発表と意見交換10-15分を予定しています。

募集期限:

2024年4月5日(金曜)23:55

応募方法:

報告概要(300〜400字、または英200-250語程度)、およびJELコードまたはキーワード(3から5個)を以下のGoogleフォームに提出

Keiji Branch, Call for research report

JASDI Keiji (Kyoto, Shiga) will have a research conference and exchange
(in-person/online).

This is intended to assist young researchers and graduate students to
prepare for his/her presentation in the JASID annual conferences, plus to
facilitate exchange between foreign students and Japanese scholars and
researchers.

Date: April 20, 2024, Saturday, 13:30-17:30
Venue: Ritsumeikan Suzaku Campus (JR/Kyoto Subway NIJO Station)
(In-person/Online)

Language: Japanese/ English
Presentation: 15 minutes (depending on # of presentors) followed by 10-15 miniute Q&A per presentation.

Deadline: 5 April 2022 (Fri) 23:55
Submit your abstract (about 200-250 words) and JEL codes/3-5 key words at

E-mail: @

※We welcome applications from researchers and graduate students of various backgrounds.


本件にかんするお問い合わせ先

JASID 京滋支部
渡邉松男(京滋支部長:立命館大学)

  • [at](* [at] の部分を@に修正してご使用ください)



『社会課題解決のための開発とイノベーション』研究部会(2023年11月)

2023年度活動報告(Oct. 2022-Sept. 2023)

This year will be the second year since the establishment of our research group, IDSSP (Innovation and Development for Solving Social Problems). Based on the activities conducted in the FY 2022, we discussed the directions of research, examined research progress of our group members, organized an oral session at the 24th JASID Spring Conference, and made presentations to share research findings of our group members.

In Dec. 2022 and Jan. 2023, we consulted with member representatives about the directions of research.

In Feb. 2023, we reviewed research progress of our group members, organized an oral session for the 24th JASID Spring Conference, prepared abstracts of papers for presentations and also of our session, and submitted a plan of our session to the conference secretariat. We also elected a commentator for our session.

In March and April 2023, designated presenters prepared full papers.
In May 2023, full papers from presenters were collected and submitted to the conference secretariat. In the meantime, we were consolidating research activities for the next year.

In June 2023, our session we held at the 24th JASID Spring Conference.

Title: Learning from Current Practices in Sustainable Society

  • Organizer: Naoko Shinkai (Tsuda University)
  • Chair/Moderator: Naoko Shinkai (Tsuda University)
  • Discussant: Shirantha Heenkenda (University of Sri Jayewardenepura)

Presenter:

  1. Pei-Hsin Hsu (Taiwan Forestry Research Institute)
    “Using reflective methods to develop the indigenous seasonal calendar.”
  2. Rido That (CamEd Business School/Royal University of Phnom Penh)
    “Sustainability of Community Tourism in Cambodia.”
  3. 〇Maria Kristina Alinsunurin (University of the Philippines Los Baños) and Naoko Shinkai (Tsuda University)
    “Micro and Small Enterprise Practices in the Philippines: Navigating Resilience and Sustainability
    Challenges Amidst the COVID-19 Pandemic-A Case of Eco-tourism Sites-.”
  4. 〇Bangkit A. Wiryawan (Diponegoro University) and Esther Sri Astuti (Diponegoro University)
    “The role of innovation and entrepreneurial spirit on sustainable SME growth amidst Covid-19 pandemics.”

This session was conducted virtually, while some presenters presented in person. We received constructive suggestions during the session, and we could deepen our understanding of sustainable society by integrating our research findings.

In August and September 2023, we were consolidating research activities for the next year.

『社会課題解決のための開発とイノベーション』研究部会/Innovation and Development for Solving Social Problems
代表:新海尚子(津田塾大学)/Representative: Naoko Shinkai, Tsuda University




第39回「プロフェッショナル統計分析ワークショップ」12月19-22日開催(会員・一般)

39th Professional Statistical Analysis Workshop: Basic and Advanced techniques for Impact Evaluation

“Anyone can understand without fail and you can be a professional !!”

国際開発センター(IDCJ)では以下の統計分析ワークショップを開催することになりました。今回の使用言語は英語です。修了者には修了証書(英文、講師サイン済)が交付されます。ぜひ受講をご検討ください。

  • 受講生の声1:『インストラクターは本当に+, −, ×, ÷のみで説明しきった。関心した。』
  • 受講生の声2:『統計学を使ったインパクト評価の学術論文が読めるようになった。今は毎日読みまくっています。』
  • Participant’s voice 1: “The instructor explained everything using only +, −, ×, ÷. It was truly amazing”.
  • Participant’s voice 2: “Very happy because I became able to read academic theses using statistics, and now I am reading many day by day”.

参加条件

  1. 足し算・引き算・かけ算・わり算ができること
  2. エクセルを搭載したパソコンを用意できること

内容

(1)インパクト評価の5つの基本デザインと実例の解説、(2)事前-事後のt検定、(2)2群のt検定、(3)カイ二乗検定、(4)重回帰分析、(5)特別講義、(6)個別相談会です。

それぞれの講義は、エクセル分析ツール、手計算(回帰分析も手計算します)、演習問題、学術論文の読み方(MIT J-PALの論文など使用します)という構成です。
この機会にぜひご参加をご検討ください。

開催概要/Outline

  • Date: December 19 (Tue), 21 (Thu) , 22 (Fri), 2023
  • Venue: Zoom. You can access anywhere in the world. Lectures will be video-recorded. Participants can access and watch those videos (in one week after the workshop)
  • Language: English. (The instructors are Ph.D. holders from American universities)
  • Host: IDCJ Evaluation Department

(Website)

(Program)

Instructor

– Ryo SASAKI, Ph.D. in Evaluation, Western Michigan University (USA)
– Keiichi TAKAKI, Ph.D. in Sociology, Stanford University (USA)

Max and Minimum Number of participants

Max 20 (Minimum Attendants for implementation:10 people)

Prerequisites

(1) You should be able to implement addition, subtraction, multiplication, division (+, –, ÷, ×).

Register

Click and fill-in the following google form: (i) your name, (ii) organization name, (iii)email address and (iv) any comment/inquiry.

(Google forms)

Fee

JPY 29,000 (tax included) for full two days participation: JPY 8,000 (tax included) for only 1st session (“Presentation of Impact Evaluation Case Studies”)

Due date

December 1(Fri), 2023

Text

A set of softcopy of texts will be distributed in advance in PDF format. In addition, a set of hardcopies of texts will be sent to the residents in Japan in advance.


Contact

国際開発センター(IDCJ)主任研究員
佐々木亮(Ryo SASAKI, Ph.D.)
Senior Researcher, Evaluation Department.
International Development Center of Japan (IDCJ).

  • [at]  (replace [at] with @)



Q :大会発表していない論文も投稿できますか?

Answer

大会発表していなくても、学会誌への投稿は可能です


本件にかんするお問い合わせ先

国際開発学会・学会誌編集員会




「日本アフラシア学会(JSAS)名古屋大会」10月7日開催(会員・一般)

10月7日に愛知学院大学にて日本アフラシア学会(JSAS)の学術大会を開催します。

「Redefining Development: Examining alternative approaches in Africa and Asia」をテーマとして基調講演、ラウンドテーブル、研究発表とディスカッションを行います。

小さな学会ですが、在日アフリカ人研究者を中心としてアジアとアフリカをつなぐ研究プラットフォームを形成しています。

ぜひご参加いただければ幸いです。

Japan Society for Afrasian Studies (JSAS) 2023 Annual International Conference

Date:

October 7th, 2023

Venue:

Aichi Gakuin University, Meijo Koen Campus, ALICE TOWER (7th Floor)

Website:

Theme:

Redefining Development: Examining Alternative Approaches in Africa and Asia

Asian and African countries have for centuries partnered with the colonial West. What have been the results? New partnerships have lately been developing, for example between Asian powers China, India, Japan, Korea, and their less developed partners in Africa and Asia. This year’s theme suggests the need to analyze the traditional approaches to development in these regions, and to explore and consider both the recent trends and other alternative approaches to development that may better address the unique needs and challenges faced by communities in Africa and Asia.

Conference Program:

The one-day conference will be held on October 7th (Saturday) 2023. In the morning, we will have a plenary session with two key note speeches followed by two round-table project presentations and discussions. The academic presentations will take place in the afternoon starting at 13:00. Parallel sessions will fall under two broad themes:

1. SYMBIOTIC AFRASIAN PARTNERSHIPS: Lessons & Future ambitions
2. REDIFINING AFRASIAN POLITICAL &SOCIO-ECONOMIC DEVELOPMENT

A third plenary session, and the main one, will be held at 16:20 after the academic presentations.

Hosts

Japan Society for Afrasian Studies (JSAS).

Co-Hosts

Aichi Gakuin University.

Organizing Committee

  • Christian Otchia, Nagoya University
  • Vick L. Ssali, Aichi Gakuin University
  • Hedwig Rosznyoi, Aichi Gakuin University

Inquiries

Inquiries about the conference should be directed to:

  • nagoyajsas2023 [at]  (replace [at] with @)

General inquiries about JSAS should be directed to:

  • info [at]  (replace [at] with @)



第34回全国大会:合理的配慮、感染症対策、託児室利用について【第5報】

本大会は、多くの方にご参加いただけるよう、障害をもつ方への情報保障など、合理的配慮を可能な範囲でいたします。

発表者のみなさまは、準備段階から情報保障にご協力ください。その他、当日の感染症対策や託児室の利用についてまとめましたので、ご確認ください(以下の内容は、大会HPにも記載しています)。

なお、各分科会における発表内容を含めたプログラムの公開は、10月2日(月曜)を予定しています。

1. 合理的配慮

発表者へのお願い

本大会は、様々な障害をもつ会員の参加を前提に、発表者に情報保障への協力をお願いしています。

下記のリンクから、資料作成や当日の発表に関する留意点を確認のうえ、ご協力ください。

★大会発表における情報保障のお願い

参加にあたって合理的配慮が必要な方は、下記のフォームより【10月10日(火曜)】までにご連絡ください。

★相談フォーム

2. 感染症対策

本大会は、プレナリーと一部の分科会を除いて、対面開催です。大会実行委員会として、下記の感染対策を実施します。安全・安心な大会の開催に向け、ご協力をお願いします。

参加者のみなさま

  • 来場前はご自身で検温など体調の異常がないか確認してください。発熱(37.5度以上)あるいは体調不良がある場合は、感染症の陽性・陰性を問わず来場はお控えください。
  • プレナリーのみ、対面とオンラインを併用します。会場のWI-FI環境や設備の都合上、他のセッションをオンライン併用とすることはできません。オンラインのみの分科会を予め設けていますので、対面での参加が難しい方は、そちらにご参加ください。

対面登壇者のみなさま

発表者

理由を問わず、来場できない場合は欠席となります。

欠席せざるを得ない事情が発生したときは、速やかに大会事務局にご一報ください。

オンライン発表への切り替えは出来ません。また、ビデオ録画による発表も、その場での質疑応答ができないことから、対応いたしません。

コメンテーター

体調不良で来場できない場合、大会事務局メールアドレスをCCに入れた上で、座長にご相談ください。

事前にコメントを文書で用意しておられる場合は、座長宛にお送りください。

口頭コメントのみのご予定の場合は、代わりのコメントを座長にお願いするなど、分科会内での調整をお願いします。

座長

体調不良で来場できない場合、大会事務局メールアドレスをCCに入れた上で、コメンテーターの方と連絡をとり、司会・進行を兼ねていただくなど分科会内での調整をお願いします。

会場での対応

  • 会場では、各所に手指消毒剤を用意、講演会場等の定期的換気、各教室備え付けマイクの消毒のための消毒剤の用意をいたします。
  • マスク着用は来場者の個々の判断に委ねます。
  • 懇親会は、ビュッフェ形式ではなく、1名分ずつ箱に入れた「個々盛」で対応します。

3.託児室の利用

大会期間中、未就学児を対象とした学内託児室を設置します。

利用料

  • 一般・正会員:500円/時間
  • 学生:300円/時間

利用方法

以下の案内で詳細を確認の上、【10月10日(火曜)】までにお申込みください。

★託児案内

4.【リマインダー】報告(発表)論文提出について

一般口頭発表および企画セッションのカテゴリーで発表される方は、報告論文を【9月30日(土曜)】までに提出して頂きます。

提出方法などを大会HPでまとめているのでご確認下さい。

★大会HP

5. 今後のスケジュール

  • 報告論文提出期限:9月30日(土曜)23:59まで
  • プログラム公開:10月2日(月曜)
  • 大会事前参加登録期限(割引あり):10月11日(水曜)
  • 懇親会の参加申込・支払(大会参加登録と同時):11月5日(日曜)
  • 大会:11月11日(土曜)・12日(日曜)

本件にかんするお問い合わせ先

第34回全国大会実行委員会
実行委員長:小松 太郎(上智大学)

  • お問い合わせ先:jasid2023fall [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)



第24回春季大会報告・総括

第24回春季大会報告

第24回春季大会は2023年6月10日(土曜)に、秋田市文化創造館にて開催されました。当日は188名の方にお集まり頂きました。

3つの企画、5つのラウンドテーブル、11の個人発表と、17のポスター発表があり、各会場にて活発な議論が行われました。

 

プレナリーでは、「世代間のつながりとサステイナビリティ:何を引き継ぎ、何を見直し、次世代に何を手渡していくのか」をテーマに、4名の登壇者からの話題提供をして頂きました。

秋田という地方社会において、どのような人々の声が聞こえにくいものとなってきたのか、そうした声を拾い上げながら、将来世代につないでいくものを語っていくのか、についての議論が交わされました。

 

翌日のエクスカーションでは、男鹿市と五城目町の2つのグループに分かれ、それぞれの地域において「企て型のアントレプレナーシップ」を発揮し、自らの手で地域での暮らしをより良くしている人々との対話の機会を持って頂きました。

東日本大震災や新型コロナ感染症など、社会のあり様を変えた禍事をきっかけに、自らの生き方を問い直し、大都市圏から地方へと移住し、暮らし方や働き方を主体的にデザインする人々が増加傾向にあります。

そうした企てをする彼らの価値観や創造性に触れることで、日本型の国際協力・開発の形成につながるようなアイデアを、秋田の現場にて見出して頂けたのではないでしょうか。

 

今大会は、国際教養大学の学生を中心に44名の学生ボランティアに支援を頂いたことで実施ができた大会でした。

こうした機会に会員の皆さまとの交流の機会を得ることで国際開発学会に関心を持ち、次の世代が国際協力・開発学の分野に足を踏み入れてきてくれることを期待したいと思います。

秋田という多くの方にとって遠方の地での開催であったにも関わらず、当日はたくさんの方に会場に足を運んで頂き、誠に有難うございました。また、学会関係者の皆様、そして、本大会の実施を様々な形でサポート頂いた地域の皆様に心より感謝申し上げます。

第24回春季大会実行委員長
工藤尚悟(国際教養大学)


セッション報告




第24回春季大会セッション報告(企画セッション)

企画セッション

[C1-01] ブックトーク

企画責任者・モデレーター
学会誌編集委員会・ブックトーク担当:佐藤 寛(開発社会学舎)、島田 剛(明治大学)、芦田 明美(名古屋大学)、道中 真紀(日本評論社)

本ブックトークセッションでは会員による近刊4冊の書籍についての紹介が、著者および出版社の編集担当者よりなされ、出版にいたったきっかけや経緯、苦労等が共有された。

討論者からは、内容を踏まえての貴重なコメントが提供された。参加者は常時30名にのぼり、活発な質疑応答となった。

1. 報告者: 山形 辰史(立命館アジア太平洋大学)

  • 担当編集者: 酒井 孝博(中央公論新社)
  • 報告書籍: 「入門 開発経済学:グローバルな貧困削減と途上国が起こすイノベーション」(2023年3月、新書判、288ページ、990円)
  • 討論者: 島田 剛(明治大学)

SDGsにおいて実質上の国際開発離れが進み、日本の国際協力は「開発協力」の名の下に、安全保障の一部に組み入れられようとしている。そんな現況において、(1)貧困削減は多くの国・地域で進んだが、いまだに「理不尽な悲惨さ」は残っていること、(2)開発途上国独自の技術革新が、一定程度進んでいて、今後も期待されること、を中心にして本書をまとめた。

開発経済学の入門書ということで企画を開始したが、経済学を学んでいない読者層を念頭に置いて執筆した。立命館アジア太平洋大学(APU)において「開発学入門」、「開発経済学」といった授業で教えた内容から、本書をまとめた。

2. 報告者: 山口 健介(東京大学公共政策大学院)

  • 担当編集者:倉園 哲(株式会社NHK出版)
  • 報告書籍:「ミャンマー『民主化』を問い直す ――ポピュリズムを越えて」
    (2022年5月、B6版、288ページ、1,650円)
  • 討論者:折山 光俊(公益社団法人2025年日本国際博覧会協会)

アウンサンスーチー率いる国民民主連盟(NLD)によってようやくめどが立ちはじめていたミャンマーの民主化は、2021年、軍部のクーデターでリセットされてしまった。

では、ふたたびNLDが政権の座に戻ればそれでよいのか?本書は、それでは再度のクーデターを防げないとする立場から、軍部・民主派が共有する「ビルマ民族中心主義」の克服に向けて、経済的再分配を通じた新しいナショナリズムの形成に照準する。

当地の政治家と官僚の懐で開発政策を担った経験を踏まえ、イデオロギーに頼らない国民国家建設を提言する「希望」の書。

3. 報告者:吉田 鈴香(前千葉大学)

  • 担当編集者:福島 延好(フリーランス)
  • 報告書籍:「ミャンマー クーデターの謎ーカギは中国にありー」
    (三恵社、2022年3月、B6版、218ページ、2,035円)
  • 討論者: 石戸 光(千葉大学)

20年間ミャンマーが起きていることをと歴史を追いかけてきたが、ミャンマー国軍の強さと政策の不可解さをきちんと解説する研究所はなかった。既存の定説は整合性がなくミャンマーの歴史の全容を理解する壁ですらあった。

星雲状態だった疑問を5つの「謎」に絞り込み、定説の記述→非整合性の指摘→関連文献の記述→仮説→当事者にインタビューを繰り返しながら追求した。特に中国との関係から理解を進めた。

学術研究者・地域研究者に向けてその過程を書き著すことで、既存の研究書の誤解を解きたく思った。2020年から本書を執筆し始めた途中の2021年2月、クーデターが起きた。

ミャンマーの建国の歴史について定説を覆す謎の解明を終えていた故、クーデターの背景を理解することができた。国境画定未達成を前提に開発、内政、外交、国防を同時に進める平和構築に協力できるか、学術研究者に問いたい。

4. 報告者:山田 肖子(名古屋大学)

  • 担当編集者:下田 勝司(東信堂)
  • 報告書籍:「『持続可能性』の言説分析」(2023年6月、A5判、128ページ、1,980円)
  • 討論者:西川 芳昭(龍谷大学)

人々は「持続可能性」をどのようなものと認識し、その言葉を用いて何を議論し、それを社会制度や行為に反映させようとするのか。そして、そうした認識や行為は、人々の社会的立場や帰属する組織・集団、専門性によってどのように異なるのか。

本書では、持続可能な社会を思い描く際に、人々の思考の根底にある基底価値をマッピングするとともに、その基底価値をもとに、個々人がどのように持続可能性を脅かす可能性のある課題とその解決策を認識するかを定量的・定性的な言説分析の手法を用いてときほぐそうとしている。

第1章で、持続可能性の概念史、さらにSDGsという国際目標が作られ、合意された過程について概観する。

第2章では、1990年代以降、「持続可能性」を主題とする学術論文が理系に傾倒していき、思想的、社会的、文化的な考察がほとんどなされていないことを示す。そのうえで、第3章は「教育」と「持続可能性」を検索語としてウェブからダウンロードした文書の定量テキスト分析、第4章では、「経済」「教育」「持続可能性」に関する新聞分析、第5章は、「持続可能性」への貢献を謳っている企業広告に対する消費者の反応についての質問票調査の結果を示している。

報告者:芦田 明美(名古屋大学)


[C2-02] ポスト資本主義時代における経済振興のあり方を考える―地域主義の観点より

Examining how best to advance economic promotion in the post-capitalist era: From a local community-based perspective

  • 12:30~14:30
  • 企画責任者:真崎 克彦(甲南大学)、藍澤 淑雄(拓殖大学)
  • 司会者:真崎 克彦 (甲南大学)
  • 討論者: 藍澤 淑雄(拓殖大学)、高須 直子(神田外語学院)
  • 聴講人数:約20名
  1. 地域主義の意義と可能性―ポスト資本主義時代における価値創造
    真崎 克彦(甲南大学)
  2. 加工業者・グループの発展とローカル経済の関わり―タンザニア・モロゴロ州における「混合粥の素」の生産
    加藤(山内)珠比(京都大学)
  3. 地域から掘り起こす新しい「豊かさ」―東日本大震災を経験した福島県二本松市の取り組みから
    斎藤 文彦(龍谷大学)

コメント・応答など

本企画セッションは、国際開発学会「市場・国家との関わりから考える地域コミュニティ開発」研究部会の成果に基づく。

最初の座長による趣旨説明では、地域主義(地域住民の一体感を基盤として地域の経済循環を推進)の今日的意義とそれを取り巻く課題について説明があった。その上で加藤会員と斎藤会員の報告について、質疑応答やディスカッションを行う形で進められた。

加藤報告では、在来食材に栄養価の高い食材を混ぜた粥の加工に従事する女性グループの事例として、女性どうしの加工技術や市場情報の相互共有を原動力としてコミュニティ経済を振興する可能性が例証された。

コメンテーターの藍澤会員と高須会員からは、加工業者・グループが在来粥を商品に発展せしめた過程や、経済効果に関わる数値データを明示することで、今後の研究でグループの地域の経済への貢献度をより明らかにすることへの期待が表明された。

また、コミュニティ経済の成功を地域在来の文化や価値がどのように後押ししたのか、成功の結果、どのような社会変化がもたらされたのかについての質問が出された。

加藤会員からは、タンザニア固有のウジャマ―の価値観がグループメンバー間の互助につながったのではないか、またグループ活動の結果、グループ内での助け合いが強まった、またグループ外では食の安全性に対する意識やそれを満たす標準品を作ろうと言う動きにつながったと回答があった。

斎藤報告では二本松市の事例を通して、三重運動の視点より「豊かさ」の鍵が主体の自律性、セーフティネット、平等や公平性の実現にあることが論じられた。そうした「豊かさ」と現状の乖離を解消していく上で、ケアの倫理を基盤としたポジティブサムの関係性が大切となる。

コメンテーターの藍澤会員と高須会員からは、二本松市の社会連帯経済の関係者に共有されている「価値あるもの」とはどういうものなのかについて、さらに明快な言語化を進めることへの期待が表明された。また、行政主導による「オーガニックビレッジ構想」が地域の「豊かさ」につながり難い理由と対処法について質問が出された。

この質問に対して、これまでのさまざまな取り組みの積み重ねが複雑に絡み合って影響している旨、回答された。同時に、例えば農家民宿を営む宿は増えつつあり、必ずしも先発組が利益を独占せずに後発組とも客を分け合い、地域全体として目に見える利益も見えない利益も分かち合おうとするポジティブサムの関係性が見られる、と説明された。

総括

2篇の事例報告を通して、人どうしの顔が見えやすい地域において、地元の風土に基づく一体感を活かした経済振興を進めれば、より「実質的な意味」(人間の生存・生活との関わり)に即した経済振興を進めることができることが明らかにされた。

同様の地域実践を広めていくことで、経済を「形式的な意味」(経済合理性や効率性の観点)でとらえがちな時勢を改めていく契機を手繰り寄せることができよう。

報告者:真崎克彦(甲南大学)/ 藍澤淑雄(拓殖大学)


[G3-01] Learning from Current Practices in Sustainable Society

  • [オンライン]  14:45~16:45
  • Organizer: Naoko Shinkai (Tsuda University)
  • Chair/Moderator: Naoko Shinkai (Tsuda University)
  • Discussant: Shirantha Heenkenda (University of Sri Jayewardenepura)
  1. “Using reflective methods to develop the indigenous seasonal calendar.” 
    Pei-Hsin Hsu (Taiwan Forestry Research Institute)
  2. “Sustainability of Community Tourism in Cambodia.” 
    Rido That (CamEd Business School/Royal University of Phnom Penh)
  3. “Micro and Small Enterprise Practices in the Philippines: Navigating Resilience and Sustainability Challenges Amidst the COVID-19 Pandemic-A Case of Eco-tourism Sites-.”
    Maria Kristina Alinsunurin (University of the Philippines Los Baños) and Naoko Shinkai (Tsuda University)
  4. “The role of innovation and entrepreneurial spirit on sustainable SME growth amidst Covid-19 pandemics.”
    Bangkit A. Wiryawan (Diponegoro University) and Esther Sri Astuti (Diponegoro University)

コメント・応答など

This session on “Learning from Current Practices in Sustainable Society” aimed to share practices and issues encountered when developing a sustainable society in Asia.

This session was organized by the research group on IDSSP (Innovation and Development for Solving Social Problems) of JASID to reassure the direction of research on innovation and development.

Four presenters were invited to give their experiences in the fields.

First, Dr. Pei-Hsin Hsu from Taiwan Forestry Research Institute presented on “Using reflective methods to develop the indigenous seasonal calendar“ and shared the results in the research on preserved traditional local knowledge and resource management system in one of the indigenous communities in Taiwan, Kalibuan.

As a research method, a participatory seasonal calendar approach was employed to detect farming activities of traditional crops, beans, in the community.

She suggested the use of this calendar for educational purposes to prepare for the loss of cultivation of traditional crops.

Second, Dr. Rido THATH at Royal University of Phnom Penh, presented on “Sustainability of Community-Based Tourism in Cambodia” and talked about tourism, which is one of the main contributors to economic growth in Cambodia, and the prospect of community-based tourism as a driver of local economic growth.

Through his literature survey and analysis, promising tourism communities, environmental resources, and intrusive factors were identified.

Third, Dr. Maria Kristina G. Alinsunurin at the University of the Philippines, Los Baños, presented on “Micro and Small Enterprise Practices in the Philippines: Navigating Resilience and Sustainability Challenges Amidst the COVID-19 Pandemic-A Case of Eco-tourism Sites-“, which is co-authored by Dr. Naoko Shinkai at Tsuda University.

She demonstrated the impact of COVID-19 in the tourism sector, remaining effects, and coping methods, based on the findings from key informant interviews in the tourism sector at selected ecotourism sites in Laguna province, along with the research framework.

The stakeholder analysis was applied and the strategies and innovation of MSEs in the tourism sector for resilience and sustainability were identified as well as policies to consolidate those activities.

Lastly, Dr. Bangkit A. Wiryawan at Diponegoro University presented on “The role of innovation and entrepreneurial spirit on sustainable SME growth amidst Covid-19 pandemics”, on which Dr. Esther Sri Astuti at Diponegoro University is a co-author, and illustrated the findings from the research on the relationships among three variables, entrepreneurship, innovation, and SME development in the third year of the COVID-19 pandemic in Indonesia.

Regression analyses with sectoral and provincial dummies were made with the primary data on SMEs, collected recently in thirteen provinces in Indonesia.

The positive relationship between entrepreneurship and sales was found, whereas the relationship between innovation and sales was negative.

Comments for all four presentations were provided by Dr. Shirantha Heenkenda, Dean of the Faculty of Humanities and Social Sciences at the University of Sri Jayewardenepura.

The points addressed were the existing initiative of the indigenous community on traditional knowledge and local resource management, the strategy for ownership creation in community-based tourism, the mechanism to connect stakeholders in tourism, and the role of seed capital in entrepreneurship and SME development.

Most of the participants of this session joined from various parts of the world and the efforts to enable this session are very much appreciated.

I am also thankful to JASID and JASID Conference organizers, conference participants, for having established the online venue and provided support.

Naoko Shinkai at Tsuda University,
the Chair of the IDSSP, served as a facilitator.


その他の座長報告




第24回春季大会セッション報告(プレナリー、ポスター発表)

[PL] プレナリーセッション

[PL-01] 世代間のつながりとサステイナビリティ – 何を引き継ぎ、何を見直し、次世代に何を手渡していくのか

登壇者1

工藤尚悟(国際教養大学国際教養学部グローバルスタディズ領域・准教授)

“Role of Intergenerational Ties in Sustainability: What to Sustain, What to Revise, and What to Pass Across Generations?”

登壇者2

Divine Fuh(Director of Institute of Humanities in Africa, Associate Professor at the Department of Anthropology, University of Cape Town)

“Making New Dances: Sustainability Thinking and the Opportunity for Decolonial Japanese Thought”

登壇者3

千葉加恵子(国際教養大学国際教養学部グローバルコネクティビティ領域・准教授)

“What Should We Sustain? Voices from Local Women”

登壇者4

丸山英樹(上智大学総合グローバル学部総合グローバル学科・教授)

“The Role of Non-formal Education in Enhancing Sustainability”

  • ファシリテーター:近江加奈子(国際基督教大学アーツ・サイエンス研究科博士課程)

セッションサマリー

1987年に持続可能な開発が提唱され、一世代ほどの時間がこの概念を軸とした開発パラダイムとして経過してきている。本セッションは、持続可能な開発概念の中心にある、世代間のつながり(intergenerational ties)に焦点を当て、開催地である秋田の風土、アフリカにおける脱植民地化の動きと日本文化、農村社会における女性の声、そしてノンフォーマル教育の枠組みにおけるサステイナビリティについて、各登壇者より報告があった。

はじめに工藤より、グローバルに語られる持続可能な開発概念において目標とされる項目がローカルの文脈で解釈されるとき、そもそも人と自然の関係性が個別の地域性に依拠しており、そのときに風土という自然感に注意を払う必要があるという問題提起をした。

その上で、先行世代から何を継承し、現行世代において何を見直し、将来世代に何を手渡していくべきなのかについて、専門や拠点とする場所の異なる3名の登壇者より報告をしてもらった。

ケープタウン大学のFuh准教授は、アフリカにおける脱植民地化の議論を日本の文脈に当てはめ、日本文化に固有な表現の中に見出しながら、サステイナビリティを批判的に検討する必要性を主張した。

特にある部族においてあらゆる種類のダンスの模倣が得意だった女性の話を紹介し、その部族において誰も彼女自身のダンスを見たものがいなかったという比喩を用いて、自らの文化に固有な言葉を用いることの重要性を挙げた。

千葉准教授は、秋田の民俗や女性の暮らしに焦点を当てた文化人類学的なフィールドワークを元に、国内地方の農山村において女性の声が如何に文化的に隠されたものとされてきたのかを示した。

伝統的な社会におけるジェンダーロールの再考を論じると同時に、先行世代から現行世代への民俗文化の継承の重要性と困難さを指摘した。

丸山教授は、教育におけるフォーマル・インフォーマル・ノンフォーマルの違いを明確にしつつ、それぞれのフォーマットの教育スタイルがどのようにサステイナビリティに貢献しうるのかについて論じた。そのなかでもノンフォーマル教育の視点からの考察を共有してもらった。

会場からは、異なる専門性を持つ研究者が協働するときに、どのように個々の持つ認識論の違いを乗り越えていくのかや、農村社会において隠された声(hidden voice)とされてしまいがちな女性の意見を拾い上げる仕組みをどのように構築しうるのか、国内大学院に固有な研究室文化における先輩と後輩の間における世代間のつながりについての指摘など、世代間とサステイナビリティに限らず、国内外の文脈を広く捉えた質問が出された。

今大会の開催地である秋田は、人口減少と高齢化が全国で最も早いペースで進んでおり、世代間のつながりを通じた資源や文化の継承が重要な課題となっており、こうしたテーマを、普段は途上国の現場を飛び回る研究者や実践者の方々と議論する機会を当地の秋田で持つことができた意味は大きい。

途上国においても出生率の低下と長寿化の傾向はすでに確認されており、人口減少と高齢化が将来的に国際協力や開発学においても重要なテーマとなると予測される。

こうした国内地方が抱える課題への解決策を見出す手続きのなかで、途上国とつながりながら論点を整理し、双方向に学び合いながら対応を模索していくような、新たな関係性の構築が示唆されるセッションとなった。

報告者:工藤尚悟(国際教養大学)


[P1] ポスター発表

    [P1-01] 国際協力における社会的インパクト評価のあり方検討〜財源基盤のない組織が評価を実践するために〜

    佐藤 夢乃(関西学院大学大学院)

    [P1-02] 自治体ネットワークによる持続的な能力向上と技術の普及をめざす開発協力のマネジメント~「タイ国の自治体ネットワークによるコミュニティベース統合型高齢者ケア普及プロジェクト」の事例整理~

    鈴木 知世(国際教養大学学部生、タイ国の自治体ネットワークによるコミュニティベース統合型高齢者ケアプロジェクトコーディネーター)、山口 佳小里(国立保健医療科学院医療・福祉サービス研究部主任研究官)、沖浦 文彦(東京都市大学都市生活学部教授)

    [P1-03] 怒りと情熱—世界銀行内部に残された知恵—

    玉村 優奈(東京大学)

    [P1-04] ショックを用いる貧困表象の道徳的・政治的悪性に関する一考察:貧困表象への留意のために

    木山幸輔(筑波大学)

    [P1-05] 「愛知用水の久野庄太郎」の地域総合開発思想-愛知用水と愛知海道の関係性に着目して

    柴田 英知(歩く仲間)

    [P1-06] 開発途上国における課題解決能力向上に着目した教育支援に関する研究-ネパール公立学校の中学生を対象として-

    三笘 源(九州大学大学院)

    [P1-07] Exploring Teacher’ s Perception of Play-Based Learning in ECE: A Case Study of Bangladesh

    Kohei UNO(Graduate School of International Cooperation Studies)

    [P1-08] An Analysis of Home-based Discipline on Children’ s Foundational Learning Skills in Malawi

    Chang SUN(Kobe Univ.)

    [P1-09] An Analysis of the Effect of a School Violence on Learning Achievement in Primary Education in Colombia

    Rika SUGIURA(Kobe University)

    [P1-10] An Analysis of Community Participation and Learning Achievement: A Case of Kenyan Primary Education

    Yuka FURUTANI(Kobe University)

    [P1-11] Analysis of Household Educational Expenditure under Free Pre-primary Education Policy in Kenya

    Ayumu YAGI(Graduate School of International Cooperation Studies, Kobe University)

    [P1-12] Analysis of Short-term and Mid-term Association between Early Childhood Education and Academic Achievement in Uganda

    Kaori Uchiyama(Kobe University)

    [P1-13] Influence of School Autonomy on Learning Achievement in Senegal: Multilevel Analyses Using PASEC Surveys

    Yudai ISHII(Kobe University)

    [P1-14] タンザニアの学童の野生食物・食品群摂取と健康―中部・南東部内陸/海岸沿い3村の事例から

    阪本 公美子(宇都宮大学国際学部)、人見 俊輝(宇都宮大学国際学部)

    [P1-15] 里地里山の多面的な評価基準に関する一考察~中山間地で実践される維持・管理の取り組み事例を通じて~

    根岸 宏旭、徳永 達己(拓殖大学)

    [P1-16] 東アジアにおける環境大気モニタリングネットワークの比較評価

    竹内 友規、藤江 幸一、迫田 章義(放送大学)

    [P1-17] ベトナム北部・中部・南部の持続可能なライフスタイルに関する定性調査

    吉田 綾(国立研究開発法人国立環境研究所)


    その他の座長報告




    第24回春季大会「優秀ポスター発表賞」選考結果

    第24回春季大会において、柴田英知会員に優秀ポスター発表賞を、玉村優奈会員に優秀ポスター発表奨励賞を授与

    第24回春季大会において、柴田英知会員(報告タイトル:「愛知用水の久野庄太郎」の地域総合開発思想ー愛知用水と愛知海道の関係性に着目してー)に優秀ポスター発表賞、玉村優奈会員(報告タイトル:怒りと情熱:世界銀行内部に残された知恵)に優秀ポスター発表奨励賞を授与しました。

    優秀ポスター発表賞

    『「愛知用水の久野庄太郎」の地域総合開発思想ー愛知用水と愛知海道の関係性に着目してー』

    柴田英知会員

    優秀ポスター発表・奨励賞

    『怒りと情熱:世界銀行内部に残された知恵』

    玉村優奈会員

    2023年度春季大会のポスターセッションでは、17件の意欲的な研究報告がありました。

    報告内容は教育開発分野を中心に認知論、コミュニティーケア、インフラ開発、生態・環境や生活観察など多岐にわたり、また、報告者も半数強の大学院生に加えて、大学教員、社会人会員からの参加も多数あり、ポスターセッションの裾野が広がりつつあることが感じられました。

    2人の受賞者は賞選考委員会による審査の結果、主題の独創性や堅実な資料調査手法などが評価され、選出されました。

    ポスター発表セッションの参加してくださった皆さま、誠にありがとうございました。 

    賞選考委員会
    委員長:三重野文晴(京都大学)




    大会組織委員会からのお知らせ(2023年8月)

    大会組織委員会からのお知らせ(2023年8月)

    2023年6月10日に秋田県の国際教養大学(工藤尚悟実行委員長)で開催された第24回春季大会が成功裏に終了した。

    地元に根付きながらグローバルに展開している開催校の実績に基づくプレナリーセッションやエクスカーションに基づく魅力的なプログラムが提供された。

    また、実行委員会も、高知や東京など、秋田以外に拠点を置く地方展開委員会のメンバーが中心的役割を担うなど、通信技術を駆使したコロナ後の新しい大会運営のモデルを示した大会でもあった。

    2023年の第34回全国大会は上智大学(小松太郎実行委員長)にて11月11、12日に開催予定である。

    アクセスのいい都心での開催となるので、多くの会員が対面で交流する機会となれば幸いである。

    また、大会登録・運営のためのオンラインシステム「Confit」を導入してから3回目の大会となり、実行委員会の業務効率化とともに、会員にとっても使い勝手のいいシステムとして定着するよう、大会組織委員会としても継続支援をしていくつもりである。

    大会組織委員会
    委員長・山田肖子(名古屋大学)




    【重要】全国大会での発表を目指して入会される方へ

    国際開発学会では、全国大会・春季大会で発表申し込みを行えるのは会員(正会員、学生会員、名誉会員)のみとなっております。

    この発表申し込みには個人での口頭・ポスター発表及び企画セッション・ラウンドテーブルの提案が含まれます。

    2023年11月11・12日に開催される第34回全国大会で発表することを目指して新規に入会される場合は、下記の日程にご留意のうえ、期日までにオンラインシステム上での手続きをお済ませいただくようにお願いいたします。

    全国大会発表希望者向け・入会申請スケジュール

    1)新規入会申込

    6月30日(金曜)までに新規入会申込を完了(締切厳守)

    (*申請に必要な書類、手順は、入会案内 を参照)

    2)審査・承認

    翌日以降に常任理事会を開催し、入会申請の審査・承認を行います。

    週明けに届いた入会申請は審査の対象外となり、第34回全国大会において発表する資格を得ることはできません。

    3)初年度会費

    入会承認後、初年度会費の請求書が発行されますので速やかに会費をお支払いください。

    会員マイページからクレジットカードでお支払いいただくことをお勧めします。

    初年度会費支払を完了(申し込みが常任理事会で受理され、会費が支払われたことが確認される)まで、大会発表申し込みサイトにアクセスできる会員IDが発行されません。

    4)会員番号の付与

    入金確認後に会員番号を付与し、会員サービスが開始されます。会員番号の通知メールがとどきましたら、大会発表申し込みサイトから、大会発表の申込手続きを行なってください。


    本件にかんするお問い合わせ先

    国際開発学会・本部事務局




    2023年第24回春季大会(国際教養大学)開催のお知らせ

    The 24th JASID Spring Conference

    世代間のつながりとサステイナビリティ:
    何を引き継ぎ、何を見直し、次世代に何を手渡していくのか

    この度は、多数の発表応募をありがとうございました。深くお礼を申し上げます。応募について2023年4月1日に開催された第24回春季大会実行委員会と大会組織委員会の合同会合にレビューされ、採択結果を応募者の皆様にご案内したところです。

    今大会では、産業、教育、移民・難民、環境、文化と開発、国際協力、保健・福祉、などのテーマで19セッション(企画セッション3セッション、ラウンドテーブル5セッション、一般口頭セッション11セッション)、ポスターセッションとブックトークを予定しています。

    口頭発表、企画セッション、ラウンドテーブル、ポスターセッションにて発表予定の方は、採択通知の指示に従って参加申込み、及び論文・要旨の提出をお願い致します。

    以下、論文提出、参加登録方法、その他についてお知らせします。

    今後の流れ

    口頭発表者(一般口頭発表、または企画セッション)

    1. 大会ページよりJASID規定論文フォーマットダウンロード
    2. 大会ページ内、参加者登録フォームより参加登録
    3. 参加費支払い(クレジットカード払いのみ)
    4. 論文提出(5月19日まで)
    5. 当日参加

    ポスターセッション発表者

    1. 大会ページ内、参加者登録フォームより参加登録
    2. 参加費支払い(クレジットカード払いのみ)
    3. A1サイズで印刷したポスターを持参し、当日会場にて指定の場所に掲示
    4. 発表参加

    企画セッション、ラウンドテーブルオーガナイザー

    1. JASID規定要旨フォーマットダウンロード
    2. 大会ページ内、参加者登録フォームより、参加登録
    3. 参加費支払い(クレジットカード払いのみ)
    4. セッション要旨のアップロード提出(5月14日まで)
    5. 当日参加

    座長、司会者、コメンテーター、およびその他の参加者について

    1. 大会ページ内、参加者登録フォームより、参加登録
    2. 参加費支払い(クレジットカード支払いのみ)
    3. 当日参加

    *オンラインセッションの方にはZoomリンクを大会実行委員会よりお送りします。


    <注意事項>

    ※以下、全セッションの発表予定者に関しては採択通知の際にお知らせしたものと同じです。

    *口頭発表者(一般口頭発表、または企画セッション)の方へ

    当日大会における発表は、15-20分となります。大会当日までに論文をもとにプレゼンテーション資料を用意して頂き、当日発表して頂きます。発表時間については、座長の指示に従ってください。

    *ポスター発表者の方へ

    ポスターはA1サイズでご用意頂き、当日会場へご持参ください。会場1階の指定の場所に掲示してください。

    *企画セッション・オーガナイザーの方へ

    採択結果を受けた企画セッションオーガナイザーは、発表者全員に各発表者自身で参加登録をし、大会参加登録フォームより作成した論文を各々アップロードして提出するよう伝えて下さい。

    また、座長、発表者、コメンテーター名を入れ、企画セッション全体の要旨を、JASID規定フォームA4・1ページ以内で作成して、5月14日(土曜)23:59までに大会ホームページの大会参加登録フォームより参加登録をした後、アップロードして提出して下さい。

    *ラウンドテーブルセッション・オーガナイザーの方へ

    ラウンドテーブルオーガナイザーは、司会、パネリスト名が入った全体の要旨(話題提供者の要旨は別でも、含んでも良い。)をA4・1ページ以内で作成し、5月14日(土曜)23:59までに大会ホームページの大会参加登録フォームより参加登録をした後、参加登録フォームよりアップロードして提出して下さい。

    *各セッションの座長、コメンテーターの方々へ

    4月中旬より、各セッションにおける座長、コメンテーターの依頼メールを実行委員会からお送りさせて頂いております。ご協力をぜひ宜しくお願い致します。お引き受けくださる方は、必ず大会参加登録フォームを提出し、参加費をお支払い下さい。


    参加者登録および参加費について

    参加費については、大会ウェブサイトをご確認ください。

    クレジットカードでのみ支払いが可能です。領収書は支払い後に発行されます。

    参加人数の把握のため、5月14日(日曜)までに、参加申込みと参加費の支払いをお願い致します。


    大会プログラム

    最新の大会プログラムはこちらからご確認ください。

    • 会場の利用開始時間が繰り上がったことにより、午前の最初のセッションを9:30より開始することとなりました。ご確認下さい。

    *オンラインセッションについて

    今大会では、パラレルセッションのうちの1つをフルオンラインセッションとして実施致します。大会当日、ビデオオンにできるのは、基本的に座長、コメンテーター、発表者になります。

    参加登録フォームにおいて、肖像権、著作権、個人情報保護法について伺っていますので、ご確認下さい。

    *各セッションのフォーマット

    各セッションは120分で、座長・司会1名、コメンテーター2〜3名、発表者3〜5名で構成されます。基本的には、発表20分、コメンテーター5分、回答3分、残りの時間はディスカッションを考えています。

    座長・司会者は、残りの時間でファシリテーションをお願いいたします。ただし、発表者5名のセッションでの時間配分は、座長・司会の指示に従ってください。

    *会場について

    今回の会場は、秋田市文化創造館()です。国際教養大学キャンパスではありませんので、お気をつけ下さい。

    秋田市文化創造館へのアクセスはこちらよりご確認下さい。


    *プレナリーセッション

    世代間のつながりとサステイナビリティ:
    何を引き継ぎ、何を見直し、次世代に何を手渡していくのか

    最後に、今大会のプレナリーセッションについてご案内します。大会当日、6月10日(土曜)17:00~19:15は、全体テーマ「世代間のつながりとサステイナビリティ:何を引き継ぎ、何を見直し、次世代に何を手渡していくのか」のもとプレナリーセッションを開催します。

    持続可能な開発において重視される世代間のつながりについて、先行世代から将来世代までを含めた通時的な視点から、そもそもどのような物事をサステイナブルにしようとしているのかについて論じていきます。セッションの詳細については、こちらをご覧下さい。

    尚、今大会のプレナリーセッションは、英語で行われます。


    その他の情報についても、第24回春季大会のウェブサイトをご確認下さい。

    会員の多くの皆さまにとって遠方となる秋田での開催となりますが、ぜひ一人でも多くの方にご来秋頂き、大会と共に6月11日(日曜)のエクスカーションにもご参加頂きたいと思っております。

    エクスカーションの情報はこちらです。

    皆さまを当地にてお迎えできることを、心よりお待ちしております。


    国際開発学会・第24回春季大会実行委員会

    実行委員長:工藤尚悟(国際教養大学・准教授)

    • プログラム担当:梶英樹(高知大学・講師)
    • 広報担当:山崎瑛莉(上智大学・講師)
    • 会場担当:高橋今日子(東京大学・客員研究員)
    • 会計担当:桝屋彩子(JICA東北・秋田デスク)

    お問い合わせ先

    • jasid2023spring [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)



    優秀ポスター発表賞

    目的

    国際開発学会の研究大会におけるポスターセッションでの卓越した研究者の研究発表を表彰することにより、研究水準の向上をはかり、もって国際開発研究の発展に資することを目的とする。

    賞の種類

    「優秀ポスター発表賞」及び「優秀ポスター発表奨励賞」とし、また、「優秀ポスター発表賞」審査委員会が必要性を認識し、3 分の2以上の賛成により追加的に賞を設置することがある。

    受賞資格

    第2条に掲げる賞の対象となる者の資格は、国際開発学会研究大会時におけるポスター発表者の会員(学生会員を含む)とする。

    審査基準

    審査は研究内容、ポスターの提示方法、口頭説明(質疑を含む)のそれぞれの質を総合的に判断して行う。

    受賞者数

    受賞件数は若干数とする。

    審査委員会

    審査委員会は国際開発学会賞選考委員と賞選考委員会が指名する若干名の委員を加えて大会ごとに組織される。審査委員長は審査委員会の3分の2の賛成を持って選出する。

    審査方法

    各大会におけるポスターセッション発表時間に審査委員が全てのポスターを見るとともに口頭説明を一定時間聞き、審査する。

    表彰

    審査委員会は、選考経過および選考理由を付して大会期間中に速やかに受賞者を公表する。


    過去大会の受賞者

    第34回全国大会(2023年)

    八郷真理愛

    『発達障害のつくられ方-個性と障害の境界線をめぐる人々の認識と国際的診断基準のギャップ-』

    奨励賞
    • 佐藤美奈子
      『僧院が担う新たな社会的包摂機能-ブータン王国における仏教とウェルビーイング-』
    • 井川摩耶
      『太平洋島嶼国パラオに見る開発の多元性-援助ドナーとの相互依存関係と地域社会に着目して-』

    第24回春季大会春季大会(2023年)

    柴田英知

    『「愛知用水の久野庄太郎」の地域総合開発思想ー愛知用水と愛知海道の関係性に着目してー』

    奨励賞
    • 玉村優奈
      『怒りと情熱:世界銀行内部に残された知恵』

    第33回全国大会(2022年)

    小林匠

    『ウガンダの初等教育におけるコミュニティと親の参加が教育の質に与える影響-ブシェニ県とワキソ県の事例から』

    奨励賞
    • 石井あゆ美
      『日本における多様な教育ニーズに即した「包摂的かつ公正で質の高い教育」の実現に向けた課題—神奈川県における外国につながる子どものノンフォーマルな学び場と学校教育との関係性の考察から—』

    2022年春季大会

    松田華織

    An Analysis of Access to Education for Children with Disability in Indonesia”

    太田洋舟

    モルディブ共和国における「ムスリムネス」の多様性に関する一考察―首都マレ圏のスポーツ活動を行うムスリム女性を事例として―」

    2021年全国大会

    矢野泰雅

    『An Analysis of Applicability of Self-Determination Theory to Teachers’ Motivation in Public Primary Schools in Lao PDR』

    奨励賞

    • Traitip Siriruang
      『Friendship Networks of Thai Students and Its Impacts as a Result of a Study Abroad Program in ASEAN』

    2021年春季大会

    白井恵花

    『重度障害者の生存の難しさ-ネパール地方都市とその周辺地域から見えてきたこと―』

    奨励賞
      • 大門毅
        『「アラブの春」とは何だったのか-革命 10 年後のチュニジアから―』
      • Wang Kexin
        『Home Learning Environment for Early Childhood Development Outcomes in Bangladesh』

      2020年全国大会

      近藤加奈子

      『利用からみる住民の水の選好―モザンビーク農村における水源の多様性と選択に着目して―』

      奨励賞

      • 隅田姿
        『日本教育における持続可能な開発のための教育(ESD)とグローバル市民教育(GCED)-学習指導要領の内容分析―』

      2019年全国大会

      Wang Kexin

      『Household Financing on Secondary Education in Cambodia: An Analysis of Household Over-indebtedness on Public Schooling and Supplementary Tutoring』

      Thomas Kloepfer

      『大麻草産業化による貧困削減のための規制と政策:西ネパール山岳コミュニティーの事例』

      奨励賞

      • 羽間久美子
        『タイにおけるSufficiency Economy Philosophyに基づいた教育の効果と課題』

      2019年春季大会

      山口(上舘)美緒里

      『初等教育におけるICTを活用した遠隔教員研修の成果と課題―バングラデシュのNGO校におけるe-learning研修を事例として―』

      奨励賞

      • 田中志歩
        『バングラデシュ丘陵地帯の少数民族における教育開発の可能性と課題―小規模少数民族クミによるノンフォーマル教育学校運営の事例より』
      • 太田美帆
        『陸前高田とゼミ活動の8年間―変わりゆくニーズとの試行錯誤の軌跡―』

      2018年全国大会

      Yiqiong Mai

      『The Influence of Interactive Learning Materials on Self-Regulated Learning Processes and Outcomes of Primary School Teachers in Mongolia』

      奨励賞

      • 飛田八千代
        『セネガルにおける食料消費の傾向について―サンルイ市の女性消費者調査より―』
      • 薗畠ひとみ
        『熱帯地域における廃棄物起因のベクター発生対策に関する研究―パナマのデング熱とジカウィルス感染症を中心に―』
      • 畑杏奈
        『Examining the Relationship between Parent Characteristics and Parent Involvement in Early Childhood Education in Cambodia』

      2018年春季大会

      奨励賞

      • 木村文哉
        『性別の違いと競争的環境の関係に関する比較実験―ミャンマーインレー湖上の住民を対象として―』

      2017年全国大会

      奨励賞

      • 松原加奈
        『エチオピアにおける革靴製造企業―従業員の技術の形成に着目して―』
      • Seonkyung CHOI
        『Impact of Education Paths in Secondary and Tertiary Education on Labor: Market Performance in South Korea: Focusing on TVET High School Graduates』

      2017年春季大会

      奨励賞

      • 三好友良
        『タイにおける地域包括ケアシステムの構築に向けた動き―LTOPプロジェクトサイトの事例を中心に― 』
      • 孟暁東(Xiaodong MENG)
        『Parental Involvement in Early Childhood Education in Lao PDR: Case of Vientiane Province』

      2016年全国大会

      牧貴愛

      『タイにおける優秀教師群像(2)―「Prawat Khru(教師列伝)」の内容分析―』

      2016年春季大会

      奨励賞

      • 高橋香名
        『Impact of Groundwater Development Project on Child Schooling in Rural Zambia』

      2015年全国大会

      奨励賞

      • 金子佳世
        『ブルンジ共和国看護師に求められるCompetency』
        [共著者:Juma NDARAYE; Illuminée NAHABAGANWA; Fabrice KAKUNZE; 古川佳恵]
      • 入江憲史
        『世界遺産における湿地帯保全に対する人々の態度研究:ラオス国ルアンパバーンの事例を用いて』
        [共著者:山口しのぶ、高田潤一]

      2015年春季大会

      奨励賞

      • 清野佳奈絵
        『イタリアにおけるバングラデシュ人移民の社会経済状況:ローマ市に暮らすバングラデシュ人移民を事例に』

      2014年全国大会

      中村洋

      『牧畜民のレジリエンスを分ける要因とは?:モンゴル国ドンドゴビ県で2009年から2010年に発生した災害後の牧民の資産回復過程の分析』

      奨励賞

      • 朝隈芽生
        『イランにおけるアフガニスタン難民の教育:若者のアイデンティティ形成に着目して』

      2014年春季大会

      奨励賞

      • 山口健介・渡辺俊平
        『産業地域の「適応」:集積論の分析視角』

      2013年全国大会

      大谷順子・張玉梅

      『中国四川大地震による中国の社会変容に関する考察:2008年汶川地震と2013年雅安地震』

      奨励賞

      • 山本香
        『シリア難民による学校運営と教員の役割:トルコ共和国アンタキヤ市の事例から』

      2013年春季大会

      田中樹・伊ヶ崎健大

      『作物収量の向上と風食抑制を同時成立させる砂漠化対処技術とその普及』

      奨励賞

      • 佐々木夕子・田中樹
        『西アフリカ・サヘル地域の村落における社会ネットワーク構造と女性世帯の生存戦略』

      2012年全国大会

      奨励賞

      • 篠原亜絵
        『東ティモールにおけるコーヒー生産者協同組合のパフォーマンスと家計への影響』
      • 野村理絵
        『ケニアにおけるマサイ女子生徒の学習動機に対する教師の影響』
      • 吉田綾
        『アジアの途上国におけるE-waste インフォーマルリサイクラーの社会・経済状況』

      2012年春季大会

      奨励賞
      • 佐藤希
        『女性組織が女性のジェンダー意識変容に及ぼす影響:ネパール、パタン市を事例に』
      • 日向淳
        『災害時における「外部者」の役割:内発的発展論の視点から』
      • 山田悦子
        『国際連合安全保障理事会決議1325 :平和構築における国連による女性への政策に関する考察』



      第24回春季大会情報・参加登録開始のお知らせ【第6報】

      第24回春季大会(2023年6月10日)の情報更新、及び参加登録についてのお知らせです。

      1.参加登録の受付開始

      参加登録と参加費のお支払いが可能となりましたのでご案内致します。下記、大会参加申し込みのリンクよりご登録をお願いいたします。お支払いはクレジットカード払いのみとなりますので、ご了承下さい。皆さまの参加登録をお待ち申し上げております。

      ▼大会参加登録URL

      • 事前登録締切日:2023年4月29日(土曜)
      • 最終参加申込締切日:2023年5月14日(日曜)

      2.暫定プログラムについて

      大会プログラムにつきまして、暫定版を大会ウェブサイトにアップしました。下記リンクよりご確認下さい。

      ▼暫定版プログラム(2023年4月13日時点)

      3.プレナリーセッションについて

      プレナリーセッションの情報を大会ウェブサイトにアップしましたので下記リンクよりご確認下さい。

      なお、今大会のプレナリーセッションの主たる使用言語は[英語]となります。日本語を含む他言語への通訳はありませんがリアルタイムでの文字起こし(英語)を予定しています。​

      ▼プレナリーセッション・プログラム

      4.エクスカーションについて

      春季大会の翌日、6月11日(日曜)に実施するエクスカーションの情報を大会ウェブサイトにアップしました。大会参加登録と合わせてお申し込み頂けます。

      男鹿市・五城目町・羽後町という3つのオプションから選択頂けますので、ぜひご検討下さい。当日会場でのお申込みはできません。必ず大会参加申込みと合わせて【5月14日(日曜)】までにお申し込み下さい。

      ▼エクスカーションのご案内

      • 申込締切日:2023年5月14日(日曜)まで

      5.実行委員長より

      発表のお申し込みを頂きました皆さまにおかれましては、採択結果通知をお待ち頂いているところかと存じます。4月下旬のご案内にむけて、大会組織委員会の皆様にもご尽力頂きながら準備を進めているところです。ご案内までもうしばらくお待ち下さい。なお、論文提出締切は【5月19日(金曜)頃】を予定しています。

      開催地の秋田もようやく桜が満開となりました。もう間もなく、田に水を入れ、代掻きをして、田植えがはじまっていきます。大会が開催される6月10日頃は、目に映えるような多彩な緑が山を覆う心地よい時期です。

      皆さまの来秋を心よりお待ちしております。参加登録をぜひ宜しくお願い致します。


      本件にかんするお問い合わせ先

      第24回春季大会実行委員会
      実行委員長:工藤 尚悟(国際教養大学・准教授)

      • jasid2023spring [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)



      『日本アフラシア学会(JSAS)研究セミナー』4月15日開催(会員・一般)

      4月15日に日本アフラシア学会(JSAS)と東京大学未来ビジョン研究センター(IFI)共催の研究セミナーをハイブリッドにて開催します。

      若手のウガンダ研究者である大平和希子さん(ハーバード大学)とイアン・カルシガリラさん(GRIPS)の研究発表をもとにみなさんと議論したいと思いますので、ぜひご参加ください。

      JSAS Research Seminar

      Date & Time

      10:00-13:00, April 15 (Sat), 2023 *Venue open: 9:40

      Venue

      Ito International Research Center, 3F Conference room The University of Tokyo

      *Online participation is also available

      Language

      English

      Registration

      Please register from this form by April 13.

      Overview

      JSAS is an academic association established to promote Afrasian (Afro-Asian) studies, inter alia, the study of Afro-Asian relations as well as African and Asian area studies and development studies, empower young scholars and disseminate multiple research outcomes, thereby contributing to the global, African, Asian and Japanese academic communities. JSAS periodically holds mini-research seminars to share information and exchange opinions on African research to achieve its objective. In this first seminar of 2023, we invite two young researchers in Ugandan studies as speakers to discuss with participants based on their research presentations.

      6. Program

      10:00-10:10
      Opening remarks: Vick Lukwago Ssali, outgoing JSAS President / Aichi Gakuin University

      10:10-11:10
      Presentation 1 : Wakiko Ohira, Visiting Fellow, Harvard University
      “Institutional Transformation of Traditional Authorities: The Bunyoro Kitara Kingdom and Museveni’s Regime”

      11:20-12:20
      Presentation 2: Ian Karusigarira, National Graduate Institute for Policy Studies (GRIPS)
      “Victims of Violence or Heroism? A Relational Historical Analysis of Revolutionary Regime Culture and Survival Apocalypse in Uganda”

      12:20-13:00
      Discussions

      Organizer

      Host: Japan Society for Afrasian Studies (JSAS)
      Co-host: SDGs collaborative research unit, Institute for Future Initiatives, UTokyo


      Contact

      日本アフラシア学会(JSAS)事務局

      • info [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)



      重要:発表申込締切の再リマインド(3月18日締切)

      2023年6月10日(土曜)に開催される、第24回春季大会の発表申込締切日は3月18日(土曜)です。以下、発表申込に関する再リマインドです。

      1.発表申込について

      発表申込締切は「明日まで」となっております。発表をご検討されている方は、下記ページの内容をご確認いただき、各種申込フォームを入手の上、ご準備をおすすめください。皆さまからのご発表を心よりお待ちしております。

      ◆発表申込

      ◆提出先(発表申込サイトURL)

      発表申し込みはすべて以下の発表申し込みサイトからオンラインで受け付けております。

      2.スケジュール

      • 発表申込締切:3月18日(土曜)*厳守。本サイトの公開が遅くなりましたので、申込み締切りについても延長致しました。
      • 学会参加申込オープン:4月初旬
      • 採択結果通知:4月下旬
      • 報告論文提出締切:5月上旬

      3.大会参加について(再掲載)

      • 大会参加申込は4月初旬から開始する予定です。
      • 大会参加費は、クレジットカード払いのみとさせていただきます。
      • 大会報告論文集の印刷の配布はありません。参加費を支払った方のみ、論文集を事前にオンラインで入手することができます。

      4.大会の開催形態について(再掲載)

      • 第24回春季大会は、対面開催とし、ハイブリッドでの実施は致しません。
        *対面セッションをオンライン視聴する、ということができませんのでご注意下さい。
      • 6つのパラレルセッションのうちの1つを終日のフルオンライン開催と致します(対面会場なし)。こちらについては、遠方よりオンラインにてご参加頂くことが可能です。
      • 現地にてオンラインセッションにご参加頂く場合にも、ご自身のパソコン・タブレット等からログインしてご参加下さい。

      本件にかんするお問い合わせ先

      第24回春季大会実行委員会
      実行委員長:工藤 尚悟(国際教養大学・准教授)

      • jasid2023spring [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)



      報告募集「京滋支部・研究報告会」4月23日開催(会員限定)

      京滋支部では、研究(計画)発表・交流会を下記の日程で開催を予定しております。

      研究成果に加え、中間発表(たとえば研究テーマ、背景、意義、研究仮説、予想される結論・政策提言など)も歓迎いたします。

      特に若手・院生会員の全国大会発表に向けて準備を後押しし、また外国人留学生と日本人研究者の研究交流の促進も企図しています。ぜひふるって応募ください。

      開催概要

      • 日時:2023年4月23日(日曜) 13:00-17:00
      • 場所:京都大学稲盛記念財団会館(神宮丸太町)Google Mapリンク:
        (対面/ハイブリッド:オンライン参加のURLは追って参加者に連絡します)
      • 報告言語: 日本語/英語
      • 発表時間:一人あたり10-15分の発表と意見交換10-15分を予定しています。
      • 募集期限:2023年4月7日(金曜)23:55

      応募方法

      報告概要(300〜400字、または英200-250語程度)、およびJELコードまたはキーワード(3から5個)を以下のGoogleフォームに提出


      本件にかんするお問い合わせ先

      JASID 京滋支部
      渡邉松男(京滋支部長:立命館大学)

      • [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)



      第33回全国大会セッション報告(一般口頭発表)

      A. 一般口頭発表

      A-1. 教育

      • 2022年12月3日(土曜)09:45ー11:45(アカデミーコモン8F 308F1E)
      • 座長:山田 肖子(名古屋大学)
      • ディスカッサント:荻巣 崇世(上智大学)、川口 純(筑波大学)

      発表題目と発表者

      (報告:山田 肖子)


      A-2. Community

      • 2022年12月3日(土曜)13:20ー14:50(リバティタワー7F 10751B)
      • 座長:佐藤 峰(横浜国立大学)
      • ディスカッサント:野田 真里(茨城大学)、近藤 菜月(名古屋大学)

      このセッションには対面で20名、オンラインで14名の参加を得て行われた。座長は佐藤峰(横浜国立大学)、コメンテーターは野田真理(茨城大学)と近藤菜月(名古屋大学)、佐藤峰が担当した。

      まず、第一発表 “Youth Safeguarding Intangible Cultural Heritage in Luang Prabang through Community-centered Innovations”では、ラオスの古都ルアンプラバンにおける、コミュニティを中心とした若者の無形文化資産(ICH)保護の試みについての発表がなされた。野田会員からは、本研究の核となるコミュニティの示すものが明確ではないとの指摘がなされた。

      続いて、SDGsの観点から、「持続可能な開発の第4の柱」としての開発リソースとしてのICHの在り方、経済・社会・環境の持続可能性との関係、ラオスの文化の基盤である仏教との関係について質問がなされた。

      第二発表 “Group Identity and Self-Accountability with Autoethnography: A Privileged Mestizo amidst an Indigenous Community in Mexico”では、研究する側がオートエスノグラフィーを実施することで、より調査される側に対してより倫理的でアカウンタブルでいられるのではないかと言うアイディアが共有された。

      佐藤会員からは、アイディア自体は優れているが、何故オートエスノグラフィーなのか、これがある調査とない調査での比較検討があったほうがより説得力があるのではないかと言う質問と共に、先住民およびメスチーソとしてのアイデンティティの流動性についてなどの指摘もあった。

      第三発表 “Transdisciplinary Community Practice (TDCOP) for Rural Women’ s Empowerment: A Case Study in Gorontalo Province, Indonesia”では、伝統的な手工芸カラウォへの支援を通じて、女性の経済的エンパワーメントや、男性の人力小規模金採掘への参加率低下を目指すプロジェクトが紹介された。

      近藤会員からは、プロジェクトが机やライトなどの物質的支援や技術的側面に焦点を当てているのに対し、伝統的手工芸や人力小規模金採掘に男女が従事する文化的社会的構造の調査とそれに基づくアプローチが必要ではないかという質問などが出された。

      セッション自体はコメンテーターと発表者の対話があり有意義だったが、発表時間を5分短くしてフロアからの質問を受け付けられるとよりよいという印象を得た。

      (報告:佐藤 峰)


      A-3. 平和構築、レジリエンス

      • 2022年12月3日(土曜)15:10ー16:40(リバティタワー7F 10731A)
      • 座長:志賀 裕朗(横浜国立大学)
      • ディスカッサント:湖中 真哉(静岡県立大学)、関谷 雄一(東京大学)

      発表題目と発表者

      1. 「人道・開発・平和構築のポケットと人道的開発支援の可能性-ティモール島の国境をめぐる考察」
        堀江正伸(青山学院大学)
      2. 「自然資源管理におけるレジリエンス概念の役割について-東アフリカを事例として」
        久保英之(地球環境戦略研究機関)、三浦真理(国際協力機構)
      3. 「複合的災害下におけるパタンに居住するネワール民族の女性自助組織の果たす役割-2015年ネパール大地震と新型コロナウイルスパンデミック以後のコミュニティ復興の事例から」
        竹内愛(南山大学)

      堀江会員は、東ティモールの独立に伴って東西に分断されたティモール島では、東ティモールへは国際社会の注目が集まる一方、東側からの難民も多い西側が話題に上ることはなかったとしたうえで、分断後20年を経て、両地域の人々が国境を越えた新たな経済社会的相互依存関係を生み出していると指摘し、そうした国境を越えた連帯を促す支援のあり方について検討した。

      これに対して、討論者の湖中会員は、「人道的開発」とは、当事者以外の周辺住民等を含むアクターを対象とした社会集団の拡がりを想定した開発のあり方なのか、それとも緊急/平時の二分法に囚われず、時間的な拡がりを想定して、慢性的問題に取り組むことを主張する開発のあり方なのかといった点等を質問した。

      また同じく討論者の関谷会員は、ティモールの事例は、欧米列強が画定した国境に沿って独立国として歩まざるを得なくなったアフリカ諸国の国境線沿いの人々を彷彿させると指摘したうえで、このような歴史を持つ人々にとって、持続的な開発の未来にはどのような落としどころがありうるのだろうか、との問いを提起した。

      続いて、竹内愛会員は、ネパールのパタンにおける女性自助組織である「ミサ・プツァ」が2015年の大地震や新型コロナ感染爆発に際して実施したコミュニティ復興支援活動について報告し、彼女たちが20年にわたる活動を通じて地域行政組織やコミュニティの男性と信頼関係を構築した結果、災害等の緊急状態下で迅速かつ効果的な活動を展開することができたと主張した。

      これに対して、討論者の関谷会員は、カースト制度や男性優位の伝統が根強いネパール社会において、「ミサ・プツァ」は女性が持続的な社会的役割を営むようになる突破口になりうるのか、その活動がネパール社会に根付き、ジェンダーバランスを是正したり、カーストを超えた女性の繋がりに発展したりする可能性があるのか、等の問いを投げかけた。

      最後に、久保英之会員と三浦真理会員は、気候変動の影響を被りやすい乾燥・半乾燥地帯を抱えるエチオピアとケニアを事例として、気候変動レジリエンス概念の政策実施への反映状況を分析し、自然資源管理におけるレジリエンス概念の効果的な活用のあり方について検討した。

      これに対して討論者の湖中会員は、そもそもレジリエンス概念は開発学にどんな新規性をもたらしうるのかを考える必要性を指摘したうえで、気候変動の影響を受ける社会生態システムの内部と外部が連動しながら変化するというシステムの変容可能性を考慮してレジリエンスをどのように定義すべきか、コンテクストが変化しうる状況下において、攪乱要因と社会生態システムの脆弱性を特定することはできるのか、といった問いを提起した。

      このように、本セッションは、ティモール、ネパール、アフリカという多様な地域を対象とした観察結果をもとに、多様な人々が変化する自然社会環境の中で共存していく道筋を考えるうえで根本的に重要な「国境」「レジリエンス」「ジェンダー」等の概念について熟考する貴重な機会となった。座長の時間管理が不適切だったためにフロアとの質疑応答の時間が取れなかったことが悔やまれる。

      (報告:志賀 裕朗)


      A-4. 教育、子ども

      • 2022年12月3日(土曜)15:10 ー 16:40(リバティタワー7F 10751B)
      • 座長:黒田 一雄(早稲田大学)
      • ディスカッサント:山﨑 泉(学習院大学)、小川 未空(大阪大学)

      本セッションは、会場とオンライン併用によるハイブリッド形式で行われ、日本語による2発表により構成された。

      第一に、追手門学院大学の平井華代会員により、「Southから Northへ:フィリピンのNGOの支援事例から得る日本の子ども食堂への示唆」と題した発表が行われた。本研究は、岩手県の子ども食堂の活動と、フィリピン・セブにおける貧困な子ども・家庭を支援するNGOの活動を、インタビューを中心とした質的研究手法により比較する研究であった。

      この研究の独自性は、貧困な子ども支援に先進的なフィリピンから、日本に対する教訓抽出を目的とするというユニークな問題意識から出発していることであり、その試みは発表で示された具体的な提言により、十分に達成されていると見受けられた。途上国の教育を対象とした比較研究の新しいあり方を提示しており、挑戦的な取り組みとなっていた。

      第二の発表は、東洋大学の金子(藤本)聖子会員による、「マレーシアにおける難民の学習環境-クアラルンプール近郊のコミュニティセンターの多様性-」と題する報告であった。マレーシアは難民条約を批准していないながら東南アジア最大の難民受け入れ国となっており、その多くがミャンマーからのロヒンギャ難民である。

      本研究では、クアラルンプール近郊の難民が集中する地域において、難民を対象とした4つのコミュニティスクールでの調査を基にして、難民にとっての教育の役割・重要性を考察しながら、各校に潜む多様な課題が明らかにされた。難民の教育は、世界的な政策課題としてはその重要性を認識されながらも、学術的な研究の乏しい分野であり、今後の一層の展開が期待される。

      この2報告に次いで、学習院大学の山﨑泉会員、大阪大学の小川未空会員(名古屋大学)両指定討論者によるコメントが行われ、それぞれの学術研究としての方法論について活発な議論が行われた。

      (報告:黒田 一雄)


      A-5. 教育

      • 2022年12月3日(土曜)15:10ー16:40(リバティタワー7F 10761C)
      • 座長:日下部 達哉(広島大学)
      • ディスカッサント:佐野 麻由子(福岡県立大学)、坂上 勝基(神戸大学)

      発表題目と発表者

      (報告:日下部 達哉)


      A-6. Gender, Education

      • 2022年12月3日(土曜)15:10ー16:40(アカデミーコモン8F 308E1D)
      • 座長:石田 洋子(広島大学)
      • ディスカッサント:島津 侑希(愛知淑徳大学)、崔 善鏡(広島大学)

      本一般口頭発表では、教育開発における重要な課題の一つであるジェンダー平等について、各国における現状とそうした不平等を生み出す要因、或いはCOVID-19の感染拡大による影響などに関する研究発表が行われた。座長は石田洋子氏(広島大学)が、ディスカッサントは島津侑希氏(愛知淑徳大学)及び崔善鏡氏(広島大学)が務めた。

      Jean-Baptiste SANFO氏(滋賀県立大学)の発表、“Factors Explaining Gender Inequalities in Learning Outcomes in Francophone Sab-Saharan African Primary Education”では、サブサハラアフリカ諸国の基礎教育の成果におけるジェンダー不平等について、教育制度や所得の影響に加えて、社会や家族など客観的な測定が難しい要因が影響していることを解明するため、PASECの結果を用いて分析の進捗について報告が行われた。

      Naoko Otobe氏(Gender, Work and Development Expert)の発表、“The Socioeconomic impact of multiple global crisis: Gender dimensions”では、日本国内におけるCOVID-19感染拡大による社会・経済的影響によってより明確になったジェンダー不平等について、政府発表の国内データの分析やOECDデータを用いた国際比較を通して課題を示し、日本政府による対応策と今後の課題について報告が行われた。

      本一般口頭発表には対面・オンラインを併せて約30名が参加した。両発表ともジェンダー平等についてタイムリーで重要な課題を扱っているが、現時点では二次データを用いた分析であり、今後は一次データを用いたより詳細な分析が期待されることなど、活発な議論が行なわれた。

      (報告:石田 洋子)


      A-7. 社会開発

      • 2022年12月3日(土曜)15:10ー16:40(大学会館3F 第1会議室1F)
      • 座長:木全 洋一郎(JICA)
      • ディスカッサント:松岡 俊二(早稲田大学)、関根 久雄(筑波大学)

      発表題目と発表者

      1. 「潜在的に田園回帰志向を持つ人の要因分析」
        戸川 椋太(立命館大学)
      2. 「人口減少に関する要因研究–マーシャル諸島共和国を事例として–」
        野原 稔和(マーシャル諸島海洋資源局)
      3. 「米国社会における差別問題と負のスパイラル—トランプ政権における国民の分断を中心に—」
        安部 雅人(東北大学)

      本セッションでは、3本の研究発表が行われ、会場16名、オンライン14名の計30名による議論が行われた。

      第1の戸川報告では、日本の大都市圏から地方への移住(田園回帰)を志向する要因として、一軒家の購入や車の所有、農業体験の参加経験、勉強に意欲的の3点を挙げ、若い移住者向けの居住意欲のわく住宅を用意すること、農業体験を通じて特産品の魅力を印象付けることを提言した。

      戸川報告に対し、討論者の松岡会員からは、世界的に人口減少社会になっていく中で社会や家族の在り方が問い直されており、その中で地方移住促進策を捉え直す重要性が指摘された。

      第2の野原報告では、マーシャル諸島共和国で2011年から2021年に人口減少に転じた要因として、平均余命、人口移動、出生率の観点から分析し、0歳代から10歳代の人口が大幅に減少しており、特に0歳代は0歳代から10歳代の人口よりもさらに下回っていることから、出生率が人口減少の一因と結論づけた。

      野原報告に対し、討論者の松岡会員からは、出生率が減少した要因は何か、他の島嶼国の人口動態はどうなっているか、島嶼地域社会の持続性の阻害要因を考えるにはどういった問いを立てるのかといったコメントが出された。

      第3の安部報告では、米国の差別問題の背景として歴史的な白人男性優位社会やコロナ禍による白人低所得者層の失業を挙げ、抗議運動の高まりが更なる警察の治安対策強化や民間人による銃の重武装化につながるとする負のスパイラルを指摘した。これに対し、黒人・アフリカ系の若年層からの教育・就業機会の充実化を提言した。

      安部報告に対し、討論者の関根会員からは、差別問題の構造的問題は教育や収入向上の視点を超越しており、差別する側の視点から、なぜ差別をするのか、そもそも平等とは何なのかを問い直す必要性が指摘された。

      3報告ともこれまでの国際開発学会ではあまり見られない課題設定をしている点に将来性を感じる一方で、必ずしも研究精度の高くない発表もあった。特に学生会員においては、大会での門戸を広げる意味でポスターセッションでの発表を奨励しているが、あえてセッション発表とするには、一定の質を確保すべく指導教官の監督指導の徹底をお願いしたい。

      (報告:木全 洋一郎)


      A-8. 経済と環境

      • 2022年12月3日(土曜)15:10ー16:40(大学会館3F 第2会議室1G)
      • 座長:豊田 利久(神戸大学)
      • ディスカッサント:黒川 清登(立命館大学)、渡邉 松男(立命館大学)

      このセッションでは、途上国の経済と開発援助資金に関する3つの発表がなされた。その報告と討論の概要は次の通りである。なお、参加者は約20名であった。

      (1) 「中国の国際協力資金が各国のIMFの金融支援プログラム参加に与える影響の検討」

      大森佐和(国際基督教大学)

      最近の中国の開発資金増大がIMFプログラムへの参加に影響するか否かを計量分析した。特に、中国の開発資金がIMFプログラムを短期的にはクラウドアウトしていること、中国と選好(国連投票行動)が離れている国では長期的にIMFプログラムに参加する傾向があること、などが示された。

      討論者から、中国資金の長期的な影響の有無や異なった基準での選好の把握などを分析する必要性が指摘された。

      (2) 「カンボジア銀行業の資本構成:高度ドル化経済における銀行業の計量分析」

      奥田英信(帝京大学)

      銀行経営の健全性を資本構成(資本金の体操資産比率)の決定要因によって解明することを試みた。2011年から7年間のデータを用いた計量分析により、ドル化経済の下で中央銀行の最後の貸手機能に制約があるにもかかわらず、商業銀行がリスクに十分な注意を払っていない可能性を見出した。討論では、ドル化経済と商業銀行の資本構成との関係に関する仮説のより明白な叙述の必要性が指摘された。

      (3)「政府開発援助が直接投資に与える影響-VAR モデルによる検証」

      大野沙織(京都大学)

      主要5カ国のODAが海外直接投資(FDI)に及ぼす効果を2003年-2020年のデータによって計量分析した。主な結果は、ODAは必ずしもFDIに影響を及ぼしていないこと、1990年代のデータで実証されてきた日本のODAの先兵効果は見いだされないことである。討論では、日本の先兵効果が1990年代に終わったとされる理由のさらなる検討や分析手法再考の必要性が指摘された。

      (報告:豊田 利久)


      A-9. 教育

      • 2022年12月3日(土曜)16:50 ー 18:50(リバティタワー7F 10731A)
      • 座長:内海 成治(大阪大学)
      • ディスカッサント:澤田 康幸(東京大学)、平山 恵(明治学院大学)

      12月3日16:50から行われた教育分科会には、会場に25人Zoom参加者約25人と合わせて約50人の参加があり、教育分野への関心の高さが感じられた。

      本分科会では4つの発表が行われた。コメンテーターは澤田康幸先生(東京大学)、平山恵先生(明治学院大学)で、初めの2つの発表を澤田先生、後の2つの発表を平山先生に初めのコメントをいただいた。

      最初の発表は内海悠二(名古屋大学)会員の「アフガニスタンにおける教育に対するコミュニティレジリエンス」であった。これは2014年の社会調査を利用したマルチ分析である。教育に対するコミュニティの役割を女性、児童労働、紛争状況等から分析したものである。澤田先生からは統計分性に関する指摘等があった。現在アフガニスタンは再びタリバン政権となり教女子教育は厳しい状況にあるが、こうしたコミュニティの意向は重要な意味を有すると思われる。

      2つ目の発表は狩野豪(金沢工業大学)・石川健太(マンチェスター大学)会員の「日本のGIGAスクール構想はOne Laptop per Childと同じ道を歩むのか?」で、狩野会員が発表した。2005年から開始されたOLPCの経験から、現在日本で展開されているGIGAスクール構想の課題を分析したものである。標準仕様、教員研修、子どもの学習機会、性別や地域の格差等に考慮する必要性が明らかになった。澤田先生からはOLPCとGIGA構想とは状況が大きく変わっているので、比較対象の正当性への指摘があった。GIGA構想はOLPCのみならず、国際的な比較の中で検討されるべき重要な課題と思われる。

      3番目は藤枝詢子(京都精華大学)会員の「フィジーにおける伝統的住居の建築技術継承の可能性」とい非常にユニークな教育課題である。フィジーのブレという伝統的な茅葺住居は全住居の1%と危機的状況にあり、その建築技術の継承には教育機関による技術教育の役割が重要であり、そのための課題を抽出したものである。平山先生からはこの発表がまとまりのある発表であるため、ご自身の経験した伝統的事業の継承に関する例が紹介された。ネパールの伝統医療、フィリピンの薬草事業、奈良正倉院の校倉津造りの継承の例である。

      伝統技術の継承は国際的な課題であり、国際協力において注目する必要性が高いことが分かった。

      4つ目の発表は、近藤葉月(名古屋大学)会員の「『いずれ自営業者のなりたい』若者たち:ガーナ農村部の学卒者のschool to work transition調査から」で、質問票調査とFG調査からの報告である。学卒者が政府セクターあるいはNGOへの就職を希望しながらも、将来的には自営業を目指していることが明らかになった。ガーナの雇用状況の不安定さが起業家精神を育んでいる状況が示された。平山先生からは、FGインタビューの採用、大学の教員の能力、雇用者側の問題等が指摘された。

      熱心な発表と丁寧なコメントで非常に有意義な分科会になった。座長のミスで会場からのコメント・質問の時間がとれず申し訳なかった。今回の分科会は幅白い教育分野の各地の調査の報告であり、教育開発分野の広がりと深まりを感じた次第である。

      (報告:内海 成治)


      A-10. African Economy

      • 2022年12月3日(土曜)16:50 ー 18:20(リバティタワー7F 1075 1B)
      • 座長:笹岡 雄一(明治大学)
      • ディスカッサント:武内 進一(東京外国語大学)、福西 隆弘(ジェトロ・アジア経済研究所)

      African Economyのセッションでは、Joseph Enoch Garcon氏が「TICADとアフリカの米セクターの参加型政策形成」Christian Otchia氏が「経済特別区(SEZ)の意味と構造変容」Hoi Yee Regina氏が「アフリカ地方の環境リスク認識」の3つの発表を行った。コメンテーターは武内進一氏、福西隆弘氏であった。

      最初のTICADの発表ではTICADの経緯、米生産についてはアジアの緑の革命や日本の経済モデルとの関係、TICAD型開発理念の意義が語られたが、オーナーシップとパートナーシップの原則が反映されている特徴は首肯されるものの、日本の農業の実績とCARD実施体制に有意な関係はないのではないか、アフリカが力を注ぐべきは米なのかメイズなのかといったコメントがあった。

      SEZについてはアジアやラ米では経済的な効果をもたらしたが、アフリカでは顕著な効果がなかった、ないしその効果は特定地域に限定されていたとの発表であった。なぜアフリカでは効果がなかったのかについてはlocal captureの問題があり、効果のスピルオーバーがアフリカでは低く、従ってマクロの産業構造も工業化などの変化に乏しかったという説明であった。発表趣旨は明確であったが、産業構造の変化はSEZだけで捉えられるのかといった問いや回帰分析で適切な変数について注意を払うべきとのコメントがあった。

      環境リスクはナイジェリア中部の人々の認識について長年のデータ分析から行ったもので、降雨量や時期の集中化による洪水の発生や、気温の変化なども相まって牧畜民の移動や生活の変化をもたらす認識の変化が現れているという趣旨であった。これがフラニ族の移動や周囲の人々との紛争にもたらす影響については今後の課題とのことであった。

      3つの発表とも内容の濃い力作であったが、最初の2つはやや当初の想定に思い込みもあった気がした。最後の発表は降雨量などの物理的なデータと遊牧民の意識とを組み合わせた長期の調査を反映したもので、構想の大きさにとても感心させられた。

      (報告:笹岡 雄一)


      A-11. 援助、環境

      • 2022年12月3日(土曜)16:50 ー 18:50(リバティタワー7F 1076 1C)
      • 座長:大塚 健司(ジェトロ・アジア経済研究所)
      • ディスカッサント:小林 尚朗(明治大学)、山口 健介(東京大学)

      本セッションでは4本の報告があった。

      まず槇田容子(国立環境研究所)会員から「開発援助における気候変動適応主流化―ボトムアップアプローチの普及について」というタイトルで報告があり、気候変動適応策の策定には、科学主導型のトップダウンアプローチに加えてコミュニティ主導型のボトムアップアプローチを組み合わせたデュアルアプローチが有効であることを指摘し、JICAのプロジェクトを事例にその課題と解決策を明らかにした。

      次に侯テイ玉(お茶の水女子大学)会員から「市民社会の視点から見たミャンマーの経済特区における日本のODA政策と中国の『一帯一路』構想の実践に対する比較について」というタイトルで報告があり、ミャンマーにおける日本、中国それぞれの経済特区に対する開発援助のアプローチの同異を検討し、いずれも市民社会サイドから批判を受けてきたものの、その背景にある政策意図、リーダーシップと人的コネクションなどに違いがあることを指摘した。

      続いて榎本直子(法政大学)会員から「健康的に、地球環境問題の解決を目指した『行動変容』モデルに関する一考察」というタイルとで報告があり、法政大学環境センターによる独自の環境マネジメントシステム「EMS」に注目して、学生アンケート調査を基に行動変容の実態を明らかにしつつ、さらなる行動変容を促す企画を行ったことを紹介した。

      最後に高柳彰夫(フェリス女学院大学)会員から「DAC市民社会勧告の実施:南の市民社会の支援をめぐって」というタイトルで報告があり、DAC勧告を概観した上で勧告採択後に策定中の南の市民社会組織支援のためのツールキットのプロセスを紹介し、日本社会へのインプリケーションについて論じた。

      槇田会員と榎本会員の報告に対しては小林尚朗会員(明治大学)から、侯会員と高柳会員の報告に対しては山口健介会員(東京大学)からコメントがあり、フロアからの質問やコメントも含めて報告者との間で質疑応答が活発に行われた。

      (報告:大塚 健司)


      A-12. Economy and Environment

      • 2022年12月3日(土曜)16:50 ー 18:20(大学会館3F 第2会議室1G)
      • 座長:小島 道一(ジェトロ・アジア経済研究所)
      • ディスカッサント:柳原 透(拓殖大学)、岡本 由美子(同志社大学)

      発表題目と発表者

      • “Overseas Employment as Means to Sustain Economic Growth and Development: The Case of Overseas Filipino Workers”
        Armand Rolla
      • “Future Estimation of the Amount of Solid Waste in Fiji -Empirical analysis based on quantitative and qualitative analysis”
        高木 冬太(立命館大学)
      • “Addressing the Japanese elderly mobility problems with autonomous vehicle”
        PANDYASWARGO Andante Hadi (Waseda University)

      Three presentations were delivered in the session on “Economy and Environment”.

      Ms. Armand Rola made presentation on “Overseas Employment as Means to Sustain Economic Growth and Development: The Case of Overseas Filipino Workers“. This paper seeks to illustrate how the overseas employment of Filipinos can be both beneficial to the host country and to the Philippines by looking at the various host countries’ demand for labor and the overseas remittances’ contributions to the Philippines’ Gross National Product. Based on historical secondary data, the remittance contributions to the country’s GNP were valued at % in 1984 and grew to as much as % in 2006. In addition, there were only 350,982 Filipinos deployed in 1984 which grew to almost 2.3 million in 2018. Dr. Yumiko Okamoto, a commentor of the session, recommended to compare the magnitude and the role of remittances and foreign aid (grant portion) in the economy of the Philippines, because both of them appear in the current transfer balance of the current account of BOP.

      Mr. Tota Takagi presented “Future Estimation of the Amount of Solid Waste in Fiji -Empirical analysis based on quantitative and qualitative analysis”. The paper estimated future generation of waste in Fiji, using Input-output Table with some assumption on consumption expenditure per tourist, and the number of tourists. It is estimated that waste generation would increase by 20,000 tons per year in 2030, at least compared to the amount in 2018. Mr. Michikazu Kojima, the chair of the session, suggested some further research such as impact of mismanaged waste in Fiji to tourism, comparing economic ripple effect and cost of waste management, and financing mechanism on waste management such as tourist tax.

      Third speaker, Ms. PANDYASWARGO Andante Hadi, made a presentation titled “Addressing the Japanese elderly mobility problems with autonomous vehicle.” The study analyzed the Japanese Study of Aging and Retirement (JSTAR) data and gained insights through multiple correspondence analyses and nonparametric tests. The study found that technology adjustments, such as universal designs, may help ease the use of autonomous vehicles by drivers with lower cognitive and physical functions. However, the steep price of the technology must be aided with innovative business models. Dr. Toru Yanagihara, the commentator, pointed out that regarding transportation modes, it is necessary to consider not only the two extremes, personal vehicle and public transportation, but also various methods in between personal and public transportation. He also pointed out that autonomous driving was a major technological innovation, with maintaining the status quo in daily life and with reducing the psychological resistance.

      (報告:小島 道一)


      A-13. Disasters, Infrastructure, Education

      • 2022年12月4日(日曜)09:30 ー 11:00(リバティタワー8F 1085)
      • 座長:本田 利器(東京大学)
      • ディスカッサント:松丸 亮(東洋大学)、桜井 愛子(東洋英和女学院大学)

      Disasters, Infrastructure, Educationのセッションでは、災害を軸に多岐にわたる発表がなされた。

      “Preparedness of the Coastal Inhabitants of Pakistan towards Natural Hazards”では、パキスタンの4地区を対象とした住民の災害意識や災害情報の入手経路などの調査報告がなされた。当日はそれに加え、脆弱性および災害対応力に対する分析も報告された。会場から全国的な傾向との比較について質問があり、それを含めた分析を進める予定であることが報告された。

      “Barriers to education and lifelong learning of the climate change displaced persons: a case study in Indonesia”においては、インドネシアの教育環境について女子の教育に課題があること等が報告された。また、気候変動対策の政策に対して教育制度が十分に対応できていない現状等が報告された。会場からのコメントとの議論の中では、行政が人々の移動等のデータを収集管理することや高度教育への支援の必要性も言及された。

      “Case study of Biomass Clearance in Dam Reservoir related to Nam Ngiep 1 Hydropower Project in Lao PDR”では、ダム建設に伴うリスクとその対応として、不発弾処理の課題や地方行政の対応の遅さ、地元建設企業への技術指導の課題が紹介された。会場との議論で、これらがラオスだけではなく一般性のある課題であること等が言及された。いずれの発表も時宜を得た発展性のあるものであり、議論も有意義なものであった。

      (報告:本田 利器)


      A-14. Education and Culture

      • 2022年12月4日(日曜)09:30 ー 11:30(リバティタワー9F 1096)
      • 座長:工藤 尚悟(国際教養大学)
      • ディスカッサント:小川 啓一(神戸大学)、汪 牧耘(東京大学)

      発表題目と発表者

      1. 「留学生・日本人学生の個人的体験と教科書をつなげる試み」
        吉田秀美(法政大学)
      2. “Measurement of the level of intangible cultural heritage awareness and knowledge among the local community of Luang Prabang in Lao People’s Democratic Republic”
        Jerome Silla (United Nations University)
      3. ”China’s Belt and Road Initiative and Reshaping Internationalization of Local Higher Education Institutions”
        劉靖(東北大学)
      4. “The factors influencing the diffusion process of the teacher portal use among lower secondary school teachers in Mongolia”
        Yuji Hirai (Tokyo Institute of Technology)

      本セッションでは、以下の4件の発表があり、参加者は10名ほどであった。コメンテーターは、小川啓一(神戸大学)および、汪 牧耘(東京大学)の各会員であった。いずれの報告も国際化や新型コロナ感染症の拡大などで多様化する教育現場のダイナミズムを捉える、重要な研究テーマであった。

      “留学生・日本人学生の個人的体験と教科書をつなげる試み”

      吉田秀美(法政大学)

      アジアからの留学生が増加していくなか、大学教育の現場でサステイナビリティを議論するとき、その背景となる条件に対する異なる意見があることによって、議論の深化が生まれるという内容であった。発表者はこれまで自身の担当する科目にて学生が用いた発表スライドを見せながら、学生の持つ多様性を示した。会場からは、豊富なデータに対するコメントや、一科目のデータからどのようにESD全体への提言につなげていくのかなどの質問が出された。

      “Measurement of the level of intangible cultural heritage awareness and knowledge among the local community of Luang Prabang in Lao People’s Democratic Republic”

      Jerome Silla (United Nations University)

      ラオス・Luang Prabangにて、コミュニティの無形文化財(ICH: intangible cultural heritage)に対するawarenessとknowledgeの理解度を定量的に調査した内容が報告された。具体的にはICHに関する12項目を網羅するアンケートを作成し、Luang Prabangにある29村において435人に対して実施した内容が示された。会場からは、発表者が実施した大規模調査に対するコメントと共に、ICHに関わる政策の意思決定に誰がどのように関わるのかなどの質問が出された。

      ”China’s Belt and Road Initiative and Reshaping Internationalization of Local Higher Education Institutions”

      劉靖(東北大学)

      中国の一帯一路政策における高等教育の国際化について、ドキュメント分析手法を用いて調査した内容が報告された。一帯一路政策は中国の地方大学においても国際化を起こすカタリストとしての役割が期待されているという内容に対して、興味深いという会場からのコメントが多くあった。

      “The factors influencing the diffusion process of the teacher portal use among lower secondary school teachers in Mongolia”

      Yuji Hirai (Tokyo Institute of Technology)

      新型コロナ感染症の拡大によって学校教師の研修制度が実施できなくなるなか、モンゴルではインターネットを介した研修プログラムの普及が進んでいる。本発表は、モンゴルの中学校教師の間でオンライン研修プログラムの普及プロセスを、ウランバートル内の4地区で実施したアンケート調査(835件)のデータを用いて分析した内容が報告された。会場からはクラスター分析の内容に対する質問の他、現地での大規模調査に対するコメントなどが出された。

      (報告:工藤 尚悟)


      A-15. Aid Organization, Economic Growth and Poverty

      • 2022年12月4日(日曜)09:30 ー 11:00(リバティタワー10F 1105)
      • 座長:岡部 正義(共立女子大学)
      • ディスカッサント:高橋 基樹(京都大学)、伊東 早苗(名古屋大学)

      本セッションは2名の会員による報告が行われ、参加者は対面8名・オンライン2名、進行は全て英語で行われた。

      第一報告は、伏見勝利会員(JICA緒方貞子平和開発研究所)による”Ceremonial Implementations at Overseas Locations: A Multi-Case Study of a Bilateral Development Cooperation Agency”

      報告者はまず、様々な事業体が海外展開し、海外子会社や現地海外事務所(OO)を展開する中で、HQから下された事業がOOの実施局面では、“ceremonial implementations”(儀礼的な実施、CI)にとどまっていることの功罪に問題意識を示し、二国間開発協力機関(BDCA)にも該当すると問題提起があった。

      そして、報告者自身の豊富なこれまでの情報の蓄積に加え、OOに勤務する現地スタッフへのインタビュー調査を用いて一次データを構築し、CIが行われる背景やその性格、メカニズムを丹念に分析。HQや本国との関係に緊張性をはらむなかで、CIはセーフガードとしての機能を果たしていることをBDCAの事例でも立証したとする結論が報告された。

      第二報告は、原正敏会員(ビジネスブレークスルー大学)による“A Development Strategy on Middle-Income Trap and Startups Promotion in the Philippines”

      報告者は、高所得国や上位中所得国に移行した域内近隣国の台頭と対照的に、フィリピンが過去三十年にわたり低位中所得国から抜け出せない「中所得国の罠(MIT)」に問題関心を設定する。そして、MITから抜け出せない原因のひとつに、同国ではスタートアップにかかる取引費用・初期コスト等が高いという仮説を開発計画や先行研究から示した。

      世銀のWorld Development Indicatorsから「ビジネスのしやすさ(EDB)」尺度という変数を集計・構築してこれを関心ある独立変数とし、経済成長の尺度として一人当たりGDPに回帰する線形回帰分析を行った。さらに政府文書等の丹念な解釈に基づく定性的分析も実施した。主たる結果はEDBの説明力を示す結果となったとする結論が報告された。

      各報告後、第一報告には伊東早苗会員(名古屋大学)、第二報告には高橋基樹会員(京都大学)がディスカッサントとなって質問や提案事項を議論し、さらにフロア参加者の質問も活発に寄せられ、所期の時間を超えて活発に報告者との間に議論を展開することができ、たいへん有意義なセッションとなった。

      (報告:岡部 正義)


      A-16. 援助機関と現場

      • 2022年12月4日(日曜)09:30 ー 11:00(リバティタワー10F 1106)
      • 座長:源 由理子(明治大学)
      • ディスカッサント:松本 悟(法政大学)、北野 収(獨協大学)

      本セッションの第一報告は、隅田姿(広島修道大学)会員による「開発援助における現地実務者の役割~境界連結者としての貢献~」である。現地に派遣された援助実務者の働き方に焦点をあて、境界連結者(boundary spanner)の概念を使い、現地実務者が果たす役割について検討したものである。報告に対しコメンテーターの松本悟(法政大学)会員から、境界線の両側の視点から見る必要性や現地実務者の役職による違いなどについてコメントがあった。

      続く第二報告は、松原直輝(東京大学)会員による「現場主義の理想と現実~JICAの本部・現地事務所関係から見た組織経営~」である。JICA独立行政法人化にともなう「現場主義」の組織改革プロセスで組織改革の巻き戻しが起きた背景を、地方分権化の議論を分析の枠組みとして考察したものである。

      松本会員からは、効率性に重きをおく地方分権化の枠組みで「現場主義」を検討することの是非、現場を理解した中堅職員の増加との関係性、緒方貞子氏の存在の影響についてコメントがあった。また、隅田報告と松原報告をつなぎ、境界連結者分析と「現場主義」双方から考えるとどうなるのかという問いかけがあり、両者の継続的・発展的な研究への期待が述べられた。

      最後に、第三報告である若林基治(JICA)会員による「開発途上におけるソーシャルイノベーションの実現にかかる開発協力機関の役割について」は、開発途上国のソーシャルイノベーションのためには開発協力機関が一定の役割を果たすという仮説のもと、日本の高専がアフリカにおいて企業、大学等と協力して行ったプロジェクトを事例として仮説検証を行ったものである。

      コメンテーターの北野収(獨協大学)会員からは、かつての技術移転論・普及教育論との違い、語法としてのイノベーションの整理上の課題、イノベーションの目的が成長に限定されることへの懸念、イノベーションにおける市民社会の位置づけなどのコメントがあった。

      フロアからの質問・コメントも含め、3人の報告者ともに可能な範囲でのフィードバックを行いつつ、今後の研究上の課題として捉えていくことが表明された。援助の現場と理論を架橋する研究の更なる発展を期待したい。

      (報告:源 由理子)


      A-17. 経済

      • 2022年12月4日(日曜)12:45 ー 14:45(リバティタワー8F 1083)
      • 座長:後藤 健太(関西大学)
      • ディスカッサント:受田 宏之(東京大学)、會田 剛史(ジェトロ・アジア経済研究所)

      第一報告:「インドネシアにおける労働市場の構造変化と賃金格差」

      • 報告者:本台進会員(神戸大学)
      • 討論者:會田剛史会員(ジェトロ・アジア経済研究所)

      本報告は、通貨危機後のインドネシアの労働市場に起きた構造変化の分析にフォーカスをあて、その賃金格差への影響を分析したものであった。討論者からは、非常に多くの示唆に富む報告であるというコメントとともに、現在の分析が労働供給側の観点に限定されていることから、ミクロレベルでの賃金の決定要因や、男女間・都市農村間の賃金格差の決定要因の推定など、労働需要側の分析の可能性が示された。

      第二報告:「GVCと自律共生的発展との連携:日系自動車メーカーのASEAN地域活動史の検討」

      • 報告者:竹野忠弘会員(名古屋工業大学)
      • 討論者:受田宏之会員

      本報告は、東南アジアにおける日系自動車メーカーの事業展開を、多国籍企業とローカル企業・産業間連携におけるメリットを、製品・製造設計の観点から検討し、地場企業にとっての「経営発展」の可能性に関してするものであった。討論者からは、東南アジア地域の多様性をどのように考えるのか、さらにグローバル・バリューチェーンの開発的な側面をどのように扱うのか、といった質問があった。

      第三報告:「メキシコにおけるトランジット移民―法整備と現実のはざまで」

      • 報告者:柴田修子会員(同志社大学)
      • 討論者:受田宏之会員

      本報告では、最近の米墨国境における非正規な越境者の急増と、そこにおける非メキシコ人(トランジット移民)の比率の急増という背景の下、メキシコにおける移民・難民に関する法整備の状況と、これとの整合性な政策実践に焦点を当てていた。そこでは、移民をプロセスととらえる視点の重要性や、最終目的地として考えられてきた米国に向けて、トランジット移民が必ずしも直線的な移動経路を取らない多様な実態を、詳細な現地調査でえられた知見に基づいた報告がなされた。討論者からは、こうした、データの取りにくい課題に対して、NGOからアクセスした点に対する評価があった。また、プッシュ・プル要因の中でも、近年高まりを見せているプッシュ要因の重要性、さらにはNGOのアドボカシー活動の影響などに関する質問があった。

      第四報告:「ラオス日系企業工場労働者の生産性改善とピア効果―作業グループにおける性格特性の異質性に着目したミクロ計量分析―」

      • 報告者:栗田匡相会員(関西学院大学)
      • 討論者:會田剛史会員

      本研究は、途上国(ラオス)の工場労働者を対象に、観測不能な「能力」を性格特性(性格五⼤因⼦)で代用とし、こうした能力のグループ内の異質性の労働生産性への影響を推計することで、そのピア効果を検証しようとしたものである。討論者からは、本研究のユニークで意欲的な側面への言及があった。また、理論モデルおよびデータ収集(実験)にいける作業環境に関するにいくつかの重要なコメントがなされた。

      4つの全ての研究発表が、それぞれ大変興味深いものだった。二人の討論者の的を射た建設的なコメントもあり、新たな研究の視点を提供するような有意義なセッションだった。なお、本セッションでは4つの報告があり、それぞれ20分の発表、討論者による5分のコメント、その後の討論者の回答とフロアからの質問を合わせて5分という時間配分となっていたが、やや時間不足な印象があったのが若干残念であった。

      (報告:後藤 健太)


      A-18. 思想、人類学、文化

      • 2022年12月4日(日曜)12:45 ー 14:45(リバティタワー10F 1103)
      • 座長:重田 康博(宇都宮大学)
      • ディスカッサント:橋本 憲幸(山梨県立大学)、木山 幸輔(筑波大学)

      本報告は、一般口頭発表「思想、人類学、文化」セッションについてである。参加者は、4名の発表者、2名の討論者など事務局関係者を含めて約20名であった。

      最初の清水大地(筑波大学大学院)会員の「多元世界におけるアフリカの開発論:ウブントゥ的開発論への展望」は、エスコバルの多元的世界観におけるアフリカのウブントゥ的開発論を ILO、マラウィの事例に考察し、その本質が他者との関係性にあるとした。

      討論者の橋本憲幸(山梨県立大学)会員からは、「ウブントゥ」概念が表象の政治のなかで利用されてきたことを清水会員自身はどう評価しているのかといった質問が出された。

      次の浅田直規(筑波大学)会員の「人類学と開発(学)の交点としての『開発予後』を考える―ルーマニアの児童福祉制度を事例に」は、開発プロジェクト終了後の影響を「開発予後」として、ルーマニアの児童福祉制度/国際援助を事例に調査し、その歴史、児童養護施設の長所と課題を取り上げ、ポスト共産主義の文化からどのように持続するのかが重要だと述べた。橋本会員からは、ルーマニアへの児童福祉制度に対する国際援助が共産主義の文化とどのように結びついているのかという質問があった。

      三番目の宮澤尚里(早稲田大学)会員の「伝統文化の現代的役割―インドネシア・バリ島の事例から」は、インドネシアのガムラン音楽活動は参加者のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)にどのような影響を与えているかのアンケート調査を行い考察した。討論者の木山幸輔会員(筑波大学)からは、QOL 増進を目指す「政策提言」の位置付け、ガムランの営みと QOL の因果関係などの質問があった。

      最後の岡野内正(法政大学)会員の「SDGs 思想の歴史的起源―トーマス・スペンス(1750-1814)の自由移民・土地総有・全員参加・住民管理原則に基づくグローバルなベーシックインカム資本主義発展構想」は、総有制法人によるオーナーシップの確立構想を提案しベーシックインカム理念の創設者スペンスの著作などをテキスト分析しグローバル資本主義発展と普遍的人権保障が両立できるかを検討している。木山会員からはスペンスの総有制法人とSDGs や人権の概念との関係、SDGs や人権の「何に」寄与するのかといった質問があった。

      (報告:重田 康博)


      A-19. 保健衛生

      • 2022年12月4日(日曜)12:45 ー 14:15(リバティタワー10F 1106)
      • 座長:杉田 映理(大阪大学)
      • ディスカッサント:松山 章子(津田塾大学)、福林 良典(宮崎大学)

      発表題目と発表者

      (報告:杉田 映理)


      A-20. 社会開発、コミュニティ

      • 2022年12月4日(日曜)12:45 ー 14:45(リバティタワー11F 1113)
      • 座長:長畑 誠(明治大学)
      • ディスカッサント:大橋 正明(聖心女子大学)、秋吉 恵(立命館大学)

      発表題目と発表者

      (報告:長畑 誠)


      B. 企画セッション

      C. ラウンドテーブル

      D. ブックトーク、プレナリーほか

      第33回全国大会を終えて




      Q:休会中ですが大会に参加できますか?

      Answer

      休会中は、会員としてのサービスを享受することができません。

      このため、発表者として大会参加することはできません(企画セッションやラウンドテーブルへの登壇も不可。応募者にもなれません)。

      ただし、聴講者として大会に参加することは可能です。

      このばあい、参加費は会員価格ではなく、一般価格が適用されますのでご了承ください。


      本件にかんするお問い合わせ先

      国際開発学会・本部事務局




      第23回春季大会の開催報告と総括

      第23回春季大会報告

      第23回春季大会は2022年6月18日(土曜)に、福岡県立大学を開催校としてオンライン(Zoom)で実施されました。

      福岡県立大学が立地する福岡県田川市は、旧産炭地として日本の近代化、戦後復興を支えてきたものの、1960年代のエネルギー転換を受け急激な衰退を経験し、鉱害からの復旧、新たな産業づくりによる安定した生活基盤の確保など地域再建を続けてきた「課題先進地域」です。この地でこれからの時代の開発、国際協力を考える学会を催すことができ、大変嬉しく思います。

      今大会では、大学を超えて「チーム福岡」として実行委員会を組織し大会に臨みました。山あり谷ありの準備の六ヶ月ではありましたが、御縁に恵まれ、国際開発学会第23回春季大会の全てのプログラムを無事実施することができました。参加者の皆様、学会関係者の皆様、そして、地域の皆様のご支援に心より感謝申し上げます。

      当日は225名の方に参加登録いただき、4つの企画、7つのラウンドテーブル、7つの個人発表において、それぞれ活気ある議論が交わされました。

      プレナリーセッション「知っちょるよ、もうやっとるよSDGs」では、筑豊(田川郡川崎町・田川市)で地域づくりに奮闘する関係者を招き、オンライン越しではございましたが、2030年に真の持続可能な社会をつくるために必要なことについて、専門分野の異なる参加者の皆様と議論を深めることができたと思います。

      本大会が「学会員が少ないから…」「地方だから…」と学会開催に二の足を踏んでいる皆さまの背中を押すものになれば望外の喜びです。

      大会実行委員長
      佐野麻由子(福岡県立大学)

      プレナリーセッション「知っちょるよ、もうやっとるよSDGs」

      【第1部】
      「日本の地域と国際開発をつなぐ“よりよい生”-金沢大会からのバトンを受け継ぐ」

      • 佐野麻由子(国際開発学会第23回春季大会実行委員長/ 福岡県立大学) 
      • 和田一哉(国際開発学会第32回全国大会実行委員長/金沢大学)

      【第2部】
      基調講演および座談会「生が営まれる場としての地域-筑豊・田川-」

      登壇者(1)杉本利雄氏(ラピュタファーム代表)
      「“生”をつなぐ宿り木としてのラピュタファーム-筑豊・田川の新しい“地域ブランド”ができるまで」

      登壇者(2)佐野典久氏(佐野畳屋三代目店主)
      「畳からつながるよりよい暮らし-生きてるだけで儲けもの」

      本セッションは、(1)炭鉱だけではない筑豊・田川の魅力を感じていただくこと、(2)海外のフィールドと日本の地域とを往還し国際協力の想像力を高めていただくこと、(3)個々人の日常の実践がカギを握る個人化時代の開発のあり方、その中でもSDGsの実現可能性、継続性、波及性を高める条件を議論することを目的に企画された。

      第1部では、金沢大会の和田実行委員長より、日本の地域に目を向けるこが先進国・途上国問わず「よりよい生」を考える一歩になるというメッセージを頂いた。

      第2部では、杉本利雄氏、佐野典久氏に、活動に至った経緯、活動を支える思い等についてお話をうかがった。

      杉本氏は、ラピュタファームの経営を通し、地域に対するネガティブなイメージを払拭し、筑豊の魅力を発信し続けてきた。質の良い農作物であっても地名を聞くと美味しそうに思えないという消費者の反応、地元での産業廃棄物施設操業の危機などマイナス要因が、「バイキングや加工品を通して地域のイメージを刷新しよう」「自然を残すだけでなく活用しよう」と奮起する契機になった。

      また、地域内外の他業種の仲間との関わりや「元お客の従業員」との試行錯誤の中でヒット商品が生みだされたエピソードなど、地域・業種・生産者/消費者の関係を超えて活動が展開されていることが紹介された。

      佐野氏は、畳学校で国産イグサの良さを知って以来、イグサ生産者と消費者をつなぎ、畳をつくるだけでなく古畳を解体して土に戻す活動を行ってきた。閉鎖されることになった精米所を引き取りそこでとれた米糠を土づくりで活用したり、土づくりの傍らでアルバイトの学生のために野菜を作ったりする等のユニークな循環型社会実現の例も紹介された。

      「求めるべき真の自由についてどのように考えるのか」というフロアからの質問に対して、「真の自由は、行きたいときにみんなで支えあって授業参観に行けること。それを許容する社会」とこたえていたのが印象的だった。

      お二人に対しては「勇気づけられた」「楽しそうな仕事ぶりに励まされた」「捨てようと思ったものを蘇生して楽しく活用するのが田川モデル」等、多数のコメントが寄せられた。日常のなかで個々人がよりよい生を実践することが重要な意味をもつ今日、「楽しい」「お互い様」「足るを知る」が、SDGsの実現可能性、継続性、波及性を高める秘訣であると感じた。

      (佐野麻由子)


      セッション報告A(6月18日土曜日 Saturday 18th June 2022)

      【午前の部I】Morning Session 9:30-11:30 (GMT +9)

      A1. 地域から考えるオルタナティブ開発―近代的開発実践・モデルの超克に向けて―

      • 座長:真崎克彦(甲南大学)
      • 討論者:平山恵(明治学院大学)
      • 秋吉恵(立命館大学)

      「アフワット:パキスタンにおける社会的連帯経済の実践-互酬性が貧困削減に果たす役割」

      高須直子(立命館アジア太平洋大学)

      「地域コミュニティの『ありのまま』と多遍性(pluriversality)をどう捉えるか―館ヶ丘団地における人々のかかわりと価値創造からの考察」

      藍澤淑雄(拓殖大学)  

      国際開発学会「市場・国家との関わりから考える地域コミュニティ開発」研究部会の企画セッションである。最初の座長による趣旨説明では、西洋近代型の「普遍」的とされる進歩観と一線を画した、オルタナティブ開発のあり方が概説された。

      高須会員の報告では、パキスタンのイスラム金融マイクロファイナンス組織、アフワットの事例が、社会的連帯経済モデルに依拠しながら取り上げられている。地域コミュニティに存する伝統的「協同性」が、いかにアフワットの無利子融資の拡大や政府の政策形成の成功を後押ししてきたのかを軸として、報告がなされた。

      討論者の平山会員のコメントでは、イスラム世界で遍く見られる喜捨の伝統に絡めて「協同性」が論じられ、アフワットが、被支援者が支援者に転じることもあるユニークな社会連帯経済の一例として、広く知られていくことの意義が述べられた。

      藍澤会員の報告は、東京都八王子市の館ヶ丘団地で学生たちと行ってきた地域コミュニティ振興活動の紹介である。高齢化が進む同団地での自治会住民と学生のかかわりの中から防災の仕組み作りが始まった事例について報告がなされた。

      この経験を踏まえて、西洋近代的な「普遍的」社会づくりモデルでは見えてこない、人びとのありのままの暮らしに寄り添う「多遍的(pluriversal)」な生活支援のあり方が論じられた。

      討論者の秋吉会員からは、藍澤報告の事例に引きつけて、地域コミュニティの支援活動での支援者と被支援者との関係が、いかに変容的なものへと発展し得るのかが解説された。またそうして、地域にある潜在的な共同性が解き放たれる仕組みが示された。

      以上の通り両報告を通して、支援者と被支援者の壁が低くなることで、地域に存在する価値観や暮らしを引き立てたオルタナティブ開発が立ち上がってくる様子が明らかにされた。本セッションには常時25 名前後の会員に参加いただいた。

      (真崎克彦)


      【午後の部I 】Afternoon Session I 12:15-14:15 (GMT +9)

      A2. 企画”Soft Skills and Employability in the Face of Asymmetry between the Labor Market and School Education: Soft Skills Training and Development in Africa”

      労働市場と学校教育の非対称状況におけるソフトスキルと雇用可能性―アフリカにおけるソフトスキル訓練と開発―

      • 登壇者: エストレルヤド エマヌウェル(名古屋大学)・チャロエンシルプ ピンマダ(名古屋大学)・近藤菜月(名古屋大学)・山崎裕次郎(名古屋大学)
      • 司会: 山田肖子(名古屋大学)
      • 討論者: 高田明(京都大学;非会員)・島田剛(明治大学)

      本セッションでは、アフリカの労働者のソフトスキルについて4名の報告が行われた。

      初めに司会の山田会員より、ソフトスキルの概要、途上国の産業人材育成における重要性が説明され、第一報告(山崎)では、インフォーマル・セクターの労働においてソフトスキルがいかに活用されているのかの事例を報告した。第二報告(近藤)では、ガーナの大学卒業生のキャリアからソフトスキルの重要性とキャリア形成におけるその役割について議論した。

      上記の報告に対し、コメンテーターの高田明氏(非会員)より、インフォーマル・セクター内での差異、顧客からの視点、短い就業年数の理由、学校のカリキュラムとの関係について今後深めるべき点をご教示いただいた。

      島田会員からソフトスキルと専門的技能の重要性の比較、雇用可能性に対する自己評価の要因、起業の動機についてより考察ができると示唆をいただいた。

      続く第三報告(チャロエンシルプ)では、ゲームを用いた行動モデリングトレーニングによって、労働者にソフトスキルを習得させる新しい方法を紹介した。

      第四報告(エストレルヤド)では、第三報告で紹介したゲームを用いたソフトスキルトレーニングについて実施した内容を紹介し、トレーニングの結果、実施前と比べて、参加者のソフトスキルに統計的に有意な正の変化が見られたことを報告した。

      上記の報告に対し、コメンテーターの高田氏より、観察学習以外の学びへの視点、ゲーム作成・実施における対象者の文化への配慮、実際の仕事への相関について示唆を頂いた。

      島田会員から、ゲームベースのトレーニングが企業内研修として発揮する効果や、参加者の学校教育歴による結果の差異について今後考察を深める点をご助言頂いた。

      なお、本セッションの報告の一部では、名古屋大学の研究グループが実施しているSKY(Skills and Knowledge for Youth)プロジェクトのデータを使用している。

      (山田肖子)


      【午後の部Ⅱ】Afternoon Session Ⅱ 14:30-16:30 (GMT +9)

      A3. RT: 地方展開委員会主催「日本の地域から問い直す国際開発アジェンダ(実践編)」

      • 司会:木全洋一郎(JICA)
      • 発表者:富山泰庸(ロッツ株式会社)、山本あやみ((特非) 砂浜美術館)、 柳澤龍((一社)ドチャベンチャーズ)
      • 討論者:木全洋一郎(JICA)、梶英樹(高知大学)、工藤尚悟(国際教養大学)

      本セッションでは、2021年全国大会のラウンドテーブルでの議論を踏まえ、陸前高田、高知、秋田の各現場からの中継により、新たな地域活性化の実践事例を共有し、今後の国際開発アジェンダのあり方について、約30名による議論が行われた。

      はじめに、富山氏より、東日本大震災での医療支援を契機に、将来にわたってまち全体を健康にすべく、薬局、高齢者リハビリ、オーガニックカカオからチョコレート製造販売と多様な事業が紹介された。地元・日本のための事業が、フェアトレードのカカオを使うことで途上国の児童労働問題の解決にもつながっている。

      次に、山本氏より、建物のない、美しい砂浜そのものを美術館にしている取り組みが紹介された。ありのままを価値とすることに共感した元青年海外協力隊の方と、ガーナ、ケニア、モンゴル各地の自然の中でのTシャツアート展を共同実施している。

      柳澤氏からは、五城目町の廃校のシェアオフィスで、地域に根ざした土着のベンチャー事業が紹介された。まち全体をシェアビレッジとしたオープンにし、「世界一子供が育つ町」として、地域からの学びをデザインしている。敢えて社会全体の課題ではなく、局地的な願いに寄り添って場を作っていくことで、地域変容を見届けている。

      フロアからは、よそ者の役割や都会と地方との関係性を前提にした地方間競争への懸念といった質問が出された。

      議論を通じて、3つの事例とも、都会と田舎という対立構造ではなく、地域を同じテーブルに乗せて、それぞれが「オンリーワン」の魅力で人を惹きつけているという共通点が見えてきた。また、実践者はその地域でなくてはならないということではなく、どの地域でもオンリーワンを発見しているという意味において、途上国の地域開発にも通ずる視点が提供された。

      地球規模の開発アジェンダは「課題」志向で見出されるが、日本の地域におけるアジェンダは「創造性」から見えてくる。この間の橋渡しこそが、国際開発に携わる今後の役割として提起された。

      (木全洋一郎)


      セッション報告B

      B1. 子どもの安全保障

      • 企画責任者:勝間靖(早稲田大学/国立国際医療研究センター)
      • 司 会:勝間靖(早稲田大学/国立国際医療研究センター)
      • 発表者:池田直人(難民を助ける会)・田中敏裕(日本ブータン友好協会)
      • 討論者:勝間靖(早稲田大学/国立国際医療研究センター)

      「子どもの安全保障への開発アプローチ」研究部会では、「人間の安全保障」について、子どもに焦点を絞った「子どもの安全保障」の概念について議論し、研究部会メンバーのそれぞれの研究領域における事例研究を発表し、政策提言にもつながるような理論的枠組みを構築することを目指して研究活動を進めている。

      2022年6月18日(土曜)9:30-11:30、第23回春季大会(福岡県立大学、オンライン)において、「子どもの安全保障〜障害のある子どもの保護とエンパワーメント」と題してラウンドテーブルを開催(オンライン)した。

      まず、研究部会代表者である勝間靖会員(早稲田大学、国立国際医療研究センター)が、企画者として、これまでの研究部会での研究活動を説明し、事例研究を発表するうえでの共通の枠組みを提示した。

      そして、池田直人(難民を助ける会)が「パキスタンにおける障がいのある子どもたち」と題して、田中敏裕(日本ブータン友好協会)が「障がいのある子どものスポーツ参加」と題して発表した。質疑応答と議論が活発におこなわれた。参加者は、パネリストのほか、8名であった。

      (勝間靖)


      B2. 企画・信頼と開発協力

      • 企画責任者:石塚史暁(JICA)
      • 司会:佐藤仁(東京大学)
      • 討論者:佐藤寛(ジェトロ・アジア経済研究所)

      発表者:

      1. 開発協力における「信頼」とは―ODA案件の比較分析の試み―
        石塚史暁(JICA)
      2. ボホール灌漑事業における「信頼」の考察-開発協力と「信頼のジレンマ」-
        杉山秀男(JICA)
      3. インフラ整備への開発協力と信頼
        橋本大樹(JICA)
      4. ガーナ共和国におけるJICAボランティア事業と「信頼
        左近文子(JICA)

      冒頭、座長より、実務家自らが「信頼」のように扱いにくいテーマを研究対象として手掛けることの意義を述べた。その後、次の4本の発表があった(石塚「開発協力における『信頼』とは」、杉山「ボホール灌漑事業における『信頼』の考察」、橋本「インフラ整備への開発協力と『信頼』」、左近「ガーナ共和国におけるJICAボランティア事業と『信頼』」)。

      杉山は開発協力の複数の当事者間での信頼を両立することのジレンマ、橋本は大規模インフラ協力の意思決定において信頼が影響を及ぼせる領域の大きさ、左近はJICA海外協力隊が配属先との間で蓄積する信頼のストック等をそれぞれ扱った。

      石塚発表は、これら事例分析の総合的な結論として、当事者間の「信頼」は開発協力の効果や持続性を下支えし、開発協力の積み重ねは当事者間の信頼蓄積に貢献するという、両者の概念が相互に影響を及ぼしあっていることを指摘した。

      討論者及び参加者からは、次のような質問・コメントが寄せられた。

      開発協力の主体は、自ら当事者となる信頼に加え、第三者をつなぐ信頼にも注目すべきではないか。開発協力の主体は、相手からの信頼に加え、自らの相手に対する信頼を意識すべきではないか。開発協力によって相手国の信頼を買うことは可能か。海外協力隊員が得た現場での信頼は、日本の国レベルの信頼につながるか。「信頼のジレンマ」は、信頼のレベルが浅いことによるものと考えられないか。

      現場での関係者との信頼構築に加え、開発協力の制度にも改革が必要な点はないか、相手国と日本の間の信頼は、相手国と他ドナーの間の信頼と比べ、違いはあるか、コンサルタントや民間企業も、開発協力の当事者であり、分析対象に加えるべきではないか、など。

      セッション参加者は約40名で、議論は大変活発であった。この分野に対する高い関心も感じられたので、今後の信頼研究のさらなる深化を期待したい。

      (佐藤仁)


      B3. RT:翻訳しにくい開発のことば

      • 企画責任者:佐藤仁(東京大学)
      • 司会:佐藤仁(東京大学)
      • 発表者:松原直輝(東京大学大学院)、藏本龍介(東京大学)、橋本憲幸 (山梨県立大学)
      • 討論者:大山貴稔(九州工業大学)

      私たちが開発を語るときに用いる言葉はどこから来て、どこで、どのような意味を生み出すのか。開発にかかわる概念の射程の検討を通じて、それらの概念の組み合わせからなる開発学の場所性を議論するのが、このRTの目的である。

      本セッションでは、日本語として国内で流通している「開発」にかかわる3つの概念を例に取り上げて、翻訳の問題を検討した。具体的には、松原直輝(東京大学大学院)が「現場主義」を、藏本龍介(東京大学東洋文化研究所)が「土木」を、 橋本憲幸(山梨県立大学)「人づくり」を検討した。

      松原会員は、特に緒方理事長時代のJICAによる現場主義の実態分析に基づいて、本部と現場という日本的な組織構造から、「現場」概念の固有性をあぶりだした。

      蔵本会員は「土木」の概念史をたどり、寺社建造などの場面で用いられていた「普請」が、明治期に土木に置き換えられた背景や、泥臭さを強調する日本の技術協力と土木概念の関係について論じた。

      橋本会員は、「人づくり」が国内開発の文脈から報じた後に、特に途上国での人材育成で盛んに用いられるようになった一方で、対先進国には用いられないという非対称性に着目し、この概念がもつ道徳性と教育との関係について論じた。

      これに対して、討論者の大山貴稔(九州工業大学)は、これらの概念が用いられる文脈に応じて意味合いを反転させている点に注目し、概念に埋め込まれた世界認識の整理を行った。そして、概念の翻訳過程に注目することに、どのような学術的貢献を期待できるのかを問うた。

      この問いかけを皮切りに、フロアからも多数のコメントや質問が寄せられた。「翻訳しにくい開発のことば」は、今回取り上げたもののほかに数多く、今後も、バラエティーを増しながら、開発におけるアイデアの文脈性と普遍性を検討していく必要性が確認できた。セッションの参加者は概ね40名前後であった。

      (佐藤仁)


      セッション報告C

      C1. RT:日本の国際協力NGOの過去、現在、そして挑戦–
      NGOデータブック2021と市民活動年表(国際協力分野)の調査・執筆から見えてきたこと

      本RTを企画したのは、以下の二つの出版とそれに伴う調査・分析である。

      一つは、国際協力NGOのネットワークの国際協力NGOセンター(JANIC)が2022年3月に出版した「NGOデータブック2021」である。1996 年から『NGO データブック』 としてJANICが NGO に関する 5 年毎の調査を開始し、2011年からは外務省の委託事業になっている。

      今回の調査対象とした424 団体の約51%、216 団体から有効回答を得て分析を行ったが、前回の有効回答数の二倍近いので、より正確にNGOの現状に迫ったと想定される。この企画・調査・執筆・監修に楯、長谷川、重田、大橋が関わり、外務省のHPで公開されている。

      もう一つは、大阪ボランティア協会が2014年に編集発行した「日本ボランティア・NPO・市民活動年表」(明石書店)の1880~2010年を対象とした国際協力分野の改訂と、2011~2020年の出来事の追加に、長谷川、楯、大橋が携わり、同じ22年3月に刊行されたその「増補改訂版」だ。

      これらから見えてきた日本の国際協力NGOの歴史的変化と現状を、長谷川と楯が発表した。

      まず長谷川が、「日本の国際協力NGOの歴史と今」と題するプレゼンを行い、日本の国際協力の1960年代からの歴史を6つの時期に分けて説明し、90年代をピークに新規NGOの創設数が10年ごとに約半減していること、一方でソシアルビジネス的なものが増えていることを示した。

      そして、現状については現地のパートナー団体を通じての活動が増えていること、活動地域はアジアが少し減り、代わりにアフリカが増えていること、活動では人権や国内課題が増えていること、個人会員数が増えていること、市民社会スペースの縮小がグローバルな問題であることを示した。

      続いて楯が、「日本の故高裁協力NGOの財務と人材」というタイトルで三点に関して報告した。まずNGOの財務に関して、NGOの資金は政府資金の増加だけでなく自己資金の増加があること、しかし相変わらず資金規模の二極化が続き、コロナで56.4%が負の影響を受けており、自己資金を伸ばしたのが主に大手によるものと指摘している。

      続いてNGOの人材については、人材確保が課題と多くのNGOが述べているが、他セクターでも同様であり、高齢化こそがNGOが直面する独自の課題であるとした。最後の「財務と人材に関する展望と課題」では、労働環境は整いつつあるが、待遇はまだ不十分であること、NGOの存在意義の見直しと自己成長が必要とまとめた。

      これらの発表に対する討論者JICAでNGO支援を担当している日浅美和・国内事業部市民参加推進課長、NGO向けのODA資金やその管理費がNGOに与えた影響について関心を寄せる国際開発センター社会開発部の高杉真奈次長、そして欧米や東南アジアのNGOや政府との関係に詳しい高柳彰夫フェリス女学院大学教授だった。会場からの質問もあり、充実したやり取りとなった。

      (以上)


      C2. RT:移動する人々のレジリエンスとSDGsー移民・難民・遊牧民を中心にー

      • 企画責任者:関谷雄一(東京大学)
      • 報告者:関谷雄一、マイヨール ロドリグ(民間TVディレクター)、キム ヴィクトリヤ(立命館大学)、湖中 真哉(静岡県立大学)
      • 討論者:野田真里(茨城大学)

      本セッションは「開発レジリエンスとSDGs」研究部会による第3回目のラウンドテーブルで、前2回のラウンドテーブルでは焦点化されなかった「移動する人々」に着目し、ウィズコロナの今日的な状況の中で、生活基盤に「移動の要素」を抱える人々のレジリエントな様相、SDGsの課題について議論を行った。

      始めに関谷が企画・研究部会の主旨説明と、日本における国内避難民のレジリエンスとSDGsに関する課題提供をした。

      続いてマイヨール氏(非会員)から、民間放送局の取材現場の視座から見える、日本国内の外国人移民のレジリエンス、政策の課題に関する報告がなされた。

      キム氏(非会員)からは、日本における移民の統合過程に関し、結婚移民女性のレジリエンスに焦点を当てた報告がなされた。最後に湖中会員からは東アフリカ遊牧社会からみた移動とレジリエンスに関する報告がなされた。

      各報告後に野田会員から報告者に対し質疑がなされ、議論が展開された。

      各報告で取り上げられた問題に共通する論点として、グローバルな課題であるSDGsという枠組みに対応する主体として、前提とされているのは国民国家であり、「移動する人々」は自ずとそこから取り残されていることが、それぞれの問題や課題と向き合うことに、どう影響しているのかというものがあった。

      各報告者から質疑に対し、それぞれの文脈で応答がなされたが、そこに通底していた論点としては、「移動する人々」の視座に立ったそれぞれの解決法が望まれており、そこには既存の枠組みでは解決できない課題があり、それぞれに個別かつ具体的な当事者性に目を向けることが重要であることが確認された。

      (関谷雄一)


      C3. RT: “Prospects in Innovation and Development for Solving Social Problems: Learning from Cases in Asia”

      • Organizer: Naoko Shinkai (Tsuda University)、Pei-Hsin Hsu (Taiwan Forest Research Institute)
      • Chair/Moderator: Naoko Shinkai (Tsuda University)、Pei-Hsin Hsu (Taiwan Forest Research Institute)
      • Presenter: Vincent Y. Chen (Minghsin University/National Taiwan University), Ariya Svetamra (Chiang Mai University)
      • Discussant: Guestspeakers and all the participants

       This roundtable session was organized by the research group on Innovation and Development for Solving Social Problems (IDSSP) of JASID, which was launched in January 2022. There are social problems, which have been observed for decades, and we encounter some of those problems commonly in the world. This session aimed to learn from successful cases of tackling those common social issues in Asia, share knowledge, and find commonality and differences in social issues and the process for solutions. 

       Two guest speakers were invited to talk about their experiences of solving social problems. First, Dr. Vincent Y. Chen at the Department of Leisure Management, Minghsin University of Science and Technology & Institute of Fisheries Science, National Taiwan University, Taiwan presented the application of Artificial Intelligence (AI) to prevent the harassment of green sea turtles in Xiao Liuqiu island, Taiwan, and develop sustainable tourism.

      Next, Dr. Ariya Svetamra at the Department of Women’s Studies, Faculty of Social Sciences, Chiang Mai University demonstrated the struggles and risks of migrant women in Northern Thailand and how Feminist Participatory Action Research (FPAR) was applied to understand the realities of migrant women and discuss the structure of gender dynamics for creating their opportunities in the future.

      After their presentations, all the participants were invited to ask questions, express their opinions about the lessons learned, and share their knowledge.

       This roundtable session was co-facilitated by Dr. Naoko Shinkai at the Department of Policy Studies, Tsuda University, the Chairperson of this research group and Dr. Pei-Hsin Hsu, at Taiwan Forestry Research Institute, the Vice-chair of this research group.

      (Naoko Shinkai)


      セッション報告D

      D1. 企画・JASID ブックトーク

      • 司会進行:
        島田剛(明治大学)
        芦田明美(名古屋大学)

      本セッションではブックトークとして、以下の4冊の本の紹介が著者および出版社の編集担当者よりなされた。セッションの中では各著者から出版にいたったきっかけ、経緯や苦労が共有された。また、編集者の方の工夫されたこと、今後出版するにはどのようにしたらよいかなどの助言がなされた。参加者は延べ約60名にのぼり活発な議論がなされた。


      報告書籍: Mine Sato, Nobuo Sayanagi, Toru Yanagihara. 2022. Empowerment through Agency Enhancement: An Interdisciplinary Explorations. Palgrave Macmillan

      • 報告者: 佐藤峰(横浜国立大学)
      • 担当編集者:河上自由乃(Springer英文書籍出版担当)
      • 討論者: 佐藤寛(アジア経済研究所)

      1980年代以降の開発援助の政策と実施においては、「主体の働きかけ(主体性)を支援するモデル」を採用しようというみが、政策および実践においてなされてきている。しかし、人を「主体的で自律的存在」として扱えば「主体的な課題対処プロセス」が無条件に始まるわけでなく、そこに至る「主体性の回復と醸成のプロセス」が存在する。

      現状では、関連学術領域では、定義や測定の議論が多く、現場では暗黙知や経験則はあるが体系立った整理はなく理論との対応付けも十分に進んでいない。この問題意識に基づき、本書では、主に3つの文脈(参加型開発、普及プログラム、社会サービス)での主体性醸成に関与する要因とメカニズムの理解に焦点を当て、経済学・心理学・人類学の立場から続けてきた共同研究の成果を共有する。

      報告書籍: 人権の哲学:基底的価値の探究と現代世界

      • 報告者: 木山幸輔(筑波大学)
      • 担当編集者: 斉藤美潮(東京大学出版会)
      • 討論者: 関谷雄一(東京大学)

      本書は、人が人であるがゆえに持つ人権、その正当化の根拠を探り、現代世界への含意を示すものである。本書はその探求を、以下の順番で行う。政治的人権構想と自然本性的人権構想の対立における後者の擁護、自然本性的構想において擁護されるべき構想としての二元的理論の提示、二元的理論の示唆の特定、当該示唆の国際開発援助構想への適用、という順序である。

      本書はまず、ロールズ、ラズ、ベイツ、グリフィン、センをはじめ、極めて多様な道徳・政治・法哲学者が参与してきた人権に関する論争を、特に自然本性的構想と政治的構想との論争として捉え、その分析を行う。本書が分析の中で擁護するのは、現在人気があるとは言い難い自然本性的構想の方である。

      そして、人間が人としてもつ利益に依拠するものと人権を捉える自然本性的構想、その最善の理論として、人々が同定した善に従って生きることと、平等に扱われることを2つの基軸とする二元的理論を描き出す。そうした知見を背景として、特に国際開発・援助構想に対して評価を与えることを念頭に、社会経済的権利とデモクラシーへの権利、そして国際的関係における人権の適切な描き方を提示する。

      最後に、現在影響力を持つ国際開発・援助構想に関する幾つかの論点に対し、描き出された人権構想をもとに評価を加え、私たちが開発・援助を構想する上で望ましい像を描き出す。

      報告書籍: 日本の「非正規移民」:「不法性」はいかにつくられ、維持されるか

      • 報告者: 加藤丈太郎(武庫川女子大学)
      • 担当編集者: 今枝宏光(明石書店)
      • 討論者: 日下部尚徳(立教大学)

      本書籍は、日本に暮らす非正規移民における「不法性」を問うた実証研究の成果である。移住は送り出し国・受け入れ国の間で発生する事象である。開発の文脈では送り出し国の事情が捉えることが多い。

      受け入れ国側から移住を捉えた本書を持って、国際開発学会員に新たな視点を提供したい。元相談員として筆者が抱いた問いを出発点として、1)移民はなぜ「不法」になるのか、2)何が非正規移民の「不法性」を維持させるのかという2つのリサーチクエスチョンを掲げ、質的研究方法を用い、38名の非正規移民をはじめ計69名へのインタビュー、のべ175箇所の参与観察を行った。

      報告書籍: デジタル技術と国際開発(リチャード・ヒークス著、竹内知成監訳、ICT4D Lab訳)

      • 報告者: 竹内知成((一社)ICT for Development)
      • 担当編集者: 道中真紀(日本評論社)
      • 討論者: 高田潤一(東京工業大学)

      本書は英国マンチェスター大学のRichard Heeks教授の著書「Information Communication Technology for Development」(2017年、Routledge社)の翻訳本であり、国際開発における情報通信技術(ICT)利用に関する初の日本語専用教科書になります。

      ケニアのモバイルマネー「M-Pesa」に代表されるように、途上国においてもデジタル技術を活用したサービスが普及し、国際開発においてもデジタル技術の活用が注目を集めています。また、SDGs達成に向けて公的機関のみならず民間企業も取り組みを進める中でICTの活用が進んでおり、様々な組織においてイノベーションやDXというキーワードが使われるようになっています。

      こうした背景から、これから求められるのはICTを目的達成の為に活用できる人材であり、技術的な知識と社会課題の両方を理解し、技術分野のエンジニアと社会課題分野の専門家や政策決定者とを橋渡しできるハイブリッドな知見や、どういった要因がICT利活用の成功と失敗を決めるのか、成功率を高める為には何が行われるべきかを様々な観点から理解する力も求められます。

      本書はそういった人材の育成に最適な教科書であり、社会課題の解決にテクノロジーの活用が重要性を増している現在、国際開発業界のみならずIT業界で社会課題を解決しようとする人達にとっても役立つ一冊です。

      (島田剛)


      D2. 「研究×実践」委員会主催企画:ラウンドテーブル「災害の現場における実践と研究との連携」について

      ラウンドテーブル「災害の現場における実践と研究との連携」 は、「研究×実践」委員会主催の企画としてとして継続的に実施されているもの。前回のJICAの「クラスターアプローチ」をテーマに「援助」にフォーカスを当てたセッションに続き、今回は「災害」に絞り込んだ議論を行った。

      浜名弘明会員より「コンサルティングファームからの防災分野における研究×実践」と題して都市OSの適用についての実践例の紹介がなされたのち、芝浦工業大学の市川学准教授より「災害時保健医療福祉活動⽀援システムと災害情報」と題してAIやデータサイエンスの研究成果を活かした災害支援システムの可能性が提示された。

      この2つの報告に対して、ユーザーサイドからの視点として、佐藤峰会員より「地域防災への自発的な取り組みと課題:横浜市西区羽沢西部自治会を例に」と題して元横浜市西区羽沢西部自治会長・現第四区地区者協会長の米岡美智枝氏の作成されたスライドを用いた報告がなされ、またカマル・ラミチャネ会員より、とりわけ障害者の視点からみたシステムの使い勝手についてのコメントがなされた。

      上記の報告を踏まえて活溌な議論が展開された。とりわけ、「システムの運営をするのは誰か?」という点に議論が集約された。この問いはすなわち「誰が収益を得て、費用負担するか?」という問いに変換されるわけだが、例えば、防災システムによって顧客の情報を把握できるメリットをもつ保険会社や、防災システムによって資産価値の向上が見こまれるデベロッパーに参加してもらうといった具体的なアイディアが検討された。

      一見すると、途上国の開発イシューとはかけ離れた議論のように見えるものの、議論をしてゆくなかで、結局は行政のコーディネーションや、費用負担の意志決定といった、開発につきまとうイシューそのものが本質であることが確認された。

      (小林誉明)


      D3. 教育/子ども(個人)

      • 座長:北村友人(東京大学)
      • 討論者:黒田一雄(早稲田大学)、内海悠二(名古屋大学)

      発表者

      1.「タンザニアの小学生の食品群・野生食物摂取と健康に関する予備的報告―ダルエスサラームとプワニ州における質問票調査より―」

      阪本公美子(宇都宮大学)、大森玲子(宇都宮大学)、津田勝憲(宇都宮大学)

      2.「新制度論による紛争後社会の教育改革分析」

      小松太郎(上智大学)

      3.「日本の非政府アクターによる教育輸出―公文教育研究会を事例に―」

      朝倉隆道(広島大学)

      本セッションでは、以下の3件の研究発表が行われた。いずれも教育や子どもに関する重要なテーマを扱い、学術的また実践的な示唆に富む研究であった。

      阪本公美子会員・大森玲子会員・津田勝憲会員(いずれも宇都宮大学)による「タンザニアの小学生の食品群・野生食物摂取と健康に関する予備的報告―ダルエスサラームとプワニ州における質問票調査より―」は、阪本会員が代表して発表を行った。

      タンザニアの地方都市における小学生96名を対象に、①雨季と乾季の食品・食品群別摂取頻度、②野生食物の摂取頻度、③健康状況、④食品群・野生食物の摂取頻度と、健康の関係について質問紙調査を行い、子どもたちの食習慣パターンを明らかにした。

      小松太郎会員(上智大学)による「新制度論による紛争後社会の教育改革分析」では、ボスニアを事例として、政治学等の研究で用いられる3つの新制度論(社会学的新制度論、歴史的制度論、言説的制度論)を援用して、紛争後社会の教育改革の分析・説明を行った。

      紛争後社会の復興において、多様なアクターが関与しながらいかにして制度が形成され、機能するようになるのかを、異なる視点から分析することで明らかにした。今後の実証研究にも期待を抱かせる、優れた分析であった。

      朝倉隆道会員(広島大学)による「日本の非政府アクターによる教育輸出―公文教育研究会を事例に―」では、民間企業を中心とした非政府アクター(non-state actor)が国際教育協力に参入し、教育サービスを提供する新展開が進む状況のなかで、そうした企業(この研究の事例としては公文教育研究会)が用いる戦略について検討した。

      事例分析を通して、供給側の形成するイメージや言説が、受容する人々の想起する教育への期待や幻想をかき立てようとしていることを明らかにした。

      これらの研究発表に対して、討論者の黒田一雄会員(早稲田大学)と内海悠二会員(名古屋大学)から的確かつ刺激的なコメントが提起され、また参加者からも重要な質問や指摘がなされ、活発な議論が交わされた。

      それらの論点は、理論と実践を架橋することの重要性や難しさに関する指摘から、研究の方法論に関するものまで幅広く、それぞれの発表者が研究のさらなる発展を目指すなかで参考になるものであったと確信している。

      (北村友人)


      セッション報告E

      E1. 環境(個人)

      • 座長:藤川清史(愛知学院大学)
      • 討論者: 豊田知世(島根県立大学)、山口健介(東京大学)

      発表者

      1.「熱帯地域における気候変動緩和策としての植林事業の方法論について」

      久保英之(地球環境戦略研究機関)

      2.「新興国における環境政策・制度の発展と課題について-タイとベトナムでの先駆的事例分析を踏まえて-」

      安達一郎(JICA)、檜枝俊輔(日本工営)、中川原 宏昭(日本工営)、櫻井幸子(日本工営)

      3.「国際開発とソーシャルワークの距離感と接近の可能性」

      小松豊明(特定非営利活動法人シャプラニール=市民による海外協力の会/ルーテル学院大学)

      環境セッション(E1)での報告は次の3本であった。

      1.久保英之(地球環境戦略研究機関)「熱帯地域における気候変動緩和策としての植林事業の方法論について、2.安達一郎(JICA)、檜枝俊輔(日本工営)、中川原宏昭(日本工営)、櫻井幸子(日本工営)「新興国における環境政策・制度の発展と課題について-タイとベトナムでの先駆的事例分析を踏まえて-」、3.小松豊明(特定非営利活動法人シャプラニール=市民による海外協力の会/ルーテル学院大学)「国際開発とソーシャルワークの距離感と接近の可能性」。

      これらの報告に対する討論は、豊田知世(島根県立大学)と山口健介(東京大学)にお願いした。

      植林活動は地球温暖化防止活動として注目されるが、同時に地域の貧困削減等の社会経済活動でもある。久保報告は、材木利用による所得向上が目的にもかかわらず、しばしば木材需要先が確保されていないことや、事業期間が短期間なので、間伐・伐採・再植林のサイクルが事業に組み込まれていない等の問題があることを指摘し、ベトナム(政府主導)とマダガスカル(JICA)での成功例では、こうした問題が解決されていると述べる。

      これに対して討論者からは、民間企業と連携しての実施の可能性があり、REDD+やVCSの認証制度との整合性も重要だろうとのコメントがあった。

      安達報告は、途上国では産業振興政策が優先され、環境保存政策は後回しにされているというのが従来の認識であったが、近年は経済成長と環境保全対策の両立は可能という「エコロジー近代化論」に基づいた、従来型の規制的手段ではない先駆的な環境政策もタイやベトナムで見られると述べる。

      これに対して討論者からは、政策の設計段階で市民を巻き込むことを前提としていても、運用上で市民を巻き込めるのか、規制を受ける企業側の協力は担保されるのか等のコメントがあった。

      小松報告では、国際開発事業と国内の社会福祉・ソーシャルワークの分野は、かなり共通した活躍をしているものの相互理解が進んでいないと述べる。ソーシャルワーク側からは国際開発を「国際ソーシャルワーク」と捉える一方で、国際開発の分野では社会福祉ないしはソーシャルワークへの関心は薄いとのことである。

      討論者からは、国際ソーシャルワークの範囲を明らかにする必要があり、双方の接点を作るためにはどうすればよいかの提案をしてほしい等のコメントがあった。

      (藤川清史)


      E2. 開発(個人)日本語

      • 座長:斎藤文彦(龍谷大学)
      • 討論者:高橋清隆(恵泉女学園大学)、嶋田晴行(立命館大学)

      発表者

      1.「カンボジア農村女性の幸福度と社会関係資本」

      石黒馨(神戸大学)

      2.「中国における開発研究―その特徴と可能性―」

      汪牧耘(東京大学)

      3.「ターリバーンとともにアフガニスタンでSDGsを達成する―経済制裁から長期のベーシックインカム財源保障・給付条件整備援助へ」

      岡野内正(法政大学社会学部)

      本セッションでは3つの報告がなされた(以下敬称略)。第1は、石黒馨による「カンボジア農村女性の幸福度と社会関係資本」であった。社会関係資本についての研究は多いが、途上国の農村女性を対象にしたものは少ないので、その空白を埋めることを意図していた発表であった。

      幸福度と主観的健康を区別して調査した結果、幸福度の向上には、家族への信頼、金銭貸与、社会参加、家計所得、主観的健康度などが影響するのに対し、主観的健康の改善には、家族への信頼、金銭貸与、社会参加、子供の生存人数などが影響するとされた。

      これに対してコメンテーターの高橋清貴から、村の属性や、各種のコンテクストによって状況は変わるのではないかといった指摘がなされた。

      第2報告は、汪牧耘の「中国における開発研究」であった。西欧から入ってきた「開発研究」が中国にどのように受け入れられてきたかという大変興味深い研究発表であった。汪によれば、西欧の研究が普遍的発展モデルを提示する傾向があるのに対して、中国での研究はより実践的であるとまとめられた。

      コメンテーターの嶋田晴行からは、事前に詳細なコメントが提示されており、日本と中国の類似性や相違性も含めた幾つかの指摘がなされた。汪は返答として、中国が海外の研究者たちと交流することにより、中国自身の経験を明確化させることができ、それが重要であるとの指摘もあった。

      第3は、岡野内正による「ターリバーンとともにアフガニスタンでSDGsを達成する」であった。発表に際し、画面共有がうまくできなかったが、岡野内の主張としては、ベーシックインカムによって、(1)健康状況の改善、(2)経済の改善、(3)コミュニティの活性化が、もたらせたと指摘された。

      コメンテーターの高橋清貴からは、アフガニスタンが抱えるさまざまな課題が根深いものであるために、今後とも考察していくべき点は多々ある旨の指摘がなされた。

      座長としての感想を一言。全体に事例研究としては3報告とも特徴があり個性的であったが、今後、事例の研究意義をより明示的に提示できれば、それぞれの研究発表はさらに有益になるであろうと思われる。

      (斎藤文彦)


      E3. 社会/経済(個人)

      • 座長: 會田剛史(ジェトロ・アジア経済研究所)
      • 討論者:小國和子(日本福祉大学)、栗田匡相(関西学院大学)

      発表者

      1.「インドネシアとケニアの農村における農家の社会関係と食慣行の変化―食の入手・消費・共有に注目して―」

      伊藤紀子(農林水産政策研究所)

      2.「COVID-19のエジプト経済への影響」

      岡室美恵子(星城大学)、染矢将和(名古屋大学)

      3.「長期における新技術の導入・標準化・衰退」

      宮田幸子(立命館大学)、澤田康幸(東京大学)、高倉一真(東京大学)

      本セッションでは、発展途上国の社会・経済問題に関する3つの報告が行われた。

      第1報告は、伊藤紀子(農林水産政策研究所)「インドネシアとケニアの農村における農家の社会関係と食慣行の変化 ―食の入手・消費・共有に注目して―」で、主にインドネシアの農村調査に基づいて食事内容や共食の慣行についての分析結果が報告された。

      コメンテーターの小國和子氏(日本福祉大学)からは、共食儀礼が子供の栄養状態に与えたインパクトや、データ収集方法についての質問・コメントが挙げられた。他にも、現地における共食儀礼の詳細についての質問があった。

      第2報告は、岡室美恵子(星城大学)「COVID-19 のエジプト経済への影響」で、エジプトのマクロ経済状況を概観した後、クロスカントリーによるCOVID-19の経済成長への影響分析の結果に基づき、そのエジプト経済への影響をシミュレートした結果が報告された。

      コメンテーターの栗田匡相氏(関西学院大学)からは、データの制約に伴う計量分析モデルの妥当性や論文の構成についてコメントがあった。他にも、COVID前後の比較をすることで計量分析の精度を上げられる可能性が指摘された。

      第3報告は、澤田康幸(東京大学)「長期における新技術の導入・標準化・衰退」で、インドネシアのダム建設に伴う住民移転と養殖業への参入の決定要因に関する長期の計量分析結果が報告された。

      コメンテーターの栗田氏からは分析結果の解釈や住民移転が選好パラメータに与える心理的影響の可能性などについてコメントがあった。他にも、住民移転に伴う補償金が技術導入に与えた影響についての質問があった。

      (會田剛史)


      セッション報告F

      F1. Community Development

      • Chair: Koichi Ikegami (Professor, Emeritus, Kindai University)
      • Discussant: Emi Kojin (IDE-JETRO), Daisuke Sasaki (Tohoku University)

      Presenters

      “The evolution of community-based tourism in Vietnam – a critical review of policy and research-”

      Nguyen Quang Tan (Okayama University), Fumikazu Ubukata (Okayama University), Nguyen Cong Dinh (Hue University)

      “Influences of economic development among traditional mountain area – Case studies on remote tourist destinations in Shiga prefecture, Japan”

      Kiyoto Kurokawa (Ritsumeikan University)

      The session F1 “Community Development” comprised two presentations on local tourisms. The number of participants was approximately 20.

      Nguyen Quang Tan presented a case study on community-based tourism (CBT) in Vietnam. First, he analyzed tourism policy documents by a four -component framework, namely demands, decision, outputs, and impacts.

      As a result, he revealed that the process of tourism policy was divided into three periods, and the position of the CBT was still low for the government. Second, he showed the result of analysis of the peer-reviewed English articles by the qualitative thematic analysis (QTA) method.

      After he categorized them into three groups in terms of CBT perspective, he pointed majorities were ‘Development Supporters’ which put priority on an economic aspect. Other two categories, ‘Protectionists’ claiming importance of a cultural viewpoint and ‘Community Developers’ lying between the both categories were few.

      His main finding was the conformity of policies and studies. Emi Kojin commented three points; (1) unclear purpose and assumption of the study, (2) importance of narrowing down the area of policy (i.e., concentration on tourism policy), and (3) questions on economy-oriented policy and researches.

      Additional comment by a chair was a risk of bias caused from analyzing only English literature.

      Kiyoto Kurokawa explained the various local treasurers and a local tourism project planned at the ancient emperor palace of Shikaraki situated in Shiga Prefecture. According to his presentation, Shiga Prefecture is rich in local treasurers, ranging from nature parks to cultural heritages as well as traditional folk crafts, but they could not attract many domestic tourists because of low visibility.

      A local tourism project based on the historical backgrounds might change such situation because of increase in demand of cultural tourism.

      Daisuke Sasaki commented the necessity of verifying the conclusion in an evidence-based manner, and suggested effectiveness of Tourism Destination Competitiveness (TDC) for compensating for this weakness.

      Even though the demand of local tourism such as nature-based and cultural one is increasing instead of mass-tourism, there are a lot of tourism sites in the local area. The question is how tourists decide their destination. The TDC approach can open a new perspective for researchers and practitioners related with a tourism sector.

      (Koichi Ikegami)


      F2. Education (Individual) *English

      • Chair: Taro Komatsu (Sophia University)
      • Discussant:Mikiko Nishimura(ICU)、Katsutoshi Fushimi (JICA)

      Presenter

      “The Implementation of Practices Related to Student Achievement by Municipal Governments in Brazil”

      Leite Dalmon Danilo (Kobe University)

      “War Trauma and Education―A Case Study of Bosnia and Herzegovina―”

      Mari Katayanagi (Hiroshima University)

      “Long-term Impact Evaluation of Conditional Cash Transfer Program on Poverty: Evidence from the Philippine Fishers”

      Melisa Fabella (Ritsumeikan University)

      This session was attended by some 20 participants. There were three presentations as below.

      Leite Dalmon Danilo (Kobe University): The Implementation of Practices Related to Student Achievement by Municipal Governments in Brazil

      The proposed research intends to fill this gap in the literature by analyzing the practices of effective
      municipalities in primary education in Brazil by using the “district effectiveness framework.”

      The expected outcomes for this research include the analysis of the implementation of “effective district
      practices” by municipal secretaries of education in Brazil that are considered “effective”.

      This should contribute to the literature by expanding the range of contexts in which effective district practices can be used to describe the mid-level government practices associated to higher student achievement.

      Moreover, it will provide new evidence that Brazilian policymakers and those from other low- and middle-income countries can use to improve their government practices.

      A commentator suggested, among others, that the study take into consideration local contextual factors that may affect the study topic.

      Mari Katayanagi (Hiroshima University): War Trauma and Education ―A Case Study of Bosnia and Herzegovina―

      The study aims to interrogate the effects of war trauma on school education and learning in the case of Bosnia and Herzegovina.

      The data were examined using qualitative narrative analysis, questioning how children were psychologically affected by war, what consequences were observed in their education, and how they have coped or were coping with the consequences.

      The study concludes that children become particularly vulnerable when they are separated from their families; when the uncertainty of the future increases and credible threats to life are felt, children lose their motivation to study; education assists in holistic development and the attainment of resilience to overcome challenges, including psychological ones; and attention must also be paid to cultural specificities and attitudes towards psychological care and treatment.

      A commentator asked for clarification regarding the data analysis, literature gap and research ethics, which were answered by the presenter point by point.

      Melisa Fabella (Ritsumeikan University) Long-term Impact Evaluation of Conditional Cash Transfer Program on Poverty: Evidence from the Philippine Fishers

      The research evaluated the long-term impact of the CCT program (4Ps) on poverty and examine its alignment with the SDG No. 1, which was to eradicate extreme poverty.

      The study reveals that the program has reduced poverty among the poor across time. This study has also found some issues within the dataset that should be addressed such as data outliers and inconsistencies with other impact evaluation studies in the country.

      Furthermore, in order to keep the program`s effectiveness through time, critical impact monitoring and evaluation should be continuously done to ensure that the people, especially the poor and the marginalized sector, can truly benefit in the program.

      A commentator asked for clarification regarding the data analysis procedure. There was also a brief discussion regarding the impact of the program on education as it was the session’ theme.

      (Taro Komatsu)


      F3. Economy / Society (Individual)

      • Chair: Masato Noda (Ibaragi University)
      • Discussant: Yasushi Katsuma (Waseda University), Takao Toda (Meiji University)

      Presenter

      1. “Economic Analysis on Socio-Economic Growth by the Impact of Official Assistance: A Case Study of Laos’ Tertiary Education Relation to Growth; Knowledge of Electronic and Entrepreneur in the Field of Electronic Investment”

      Soulivanh CHANSOMBUTH (Ritsumeikan University)

      2. “Distribution of COVID-19 Vaccines to 49 Sub-Saharan African Countries: Which Vaccines Go Where and How?”

      Tatsufumi Yamagata (Ritsumeikan Asia Pacific University), Naoko Takasu (Ritsumeikan Asia Pacific University)

      当セッションでは、第1報告として、Soulivanh Chansombuth 会員(立命館大学)、第2報告としてNaoko Takasu会員 およびTatsufumi Yamagata会員(ともに立命館アジア太平洋大学)から次の報告がなされた。参加者は24名であった。

      第1報告では、Economic Analysis on Socio-Economic Growth by the Impact of Official Assistance A Case Study of Laos’ Tertiary Education Relation to Growth; Knowledge of Electronic and Entrepreneur in the Field of Electronic Investmentと題し、オーストラリアの援助がラオスの高等教育を通じて経済成長もたらす影響等について、産業人材の開発に着目した分析がなされた。

      また、第2報告では、Distribution of COVID-19 Vaccines to 49 Sub-Saharan African Countries: Which Vaccines Go Where and How?と題し、サブサハラアフリカ地域におけるCOVID-19ワクチン接種の現状と課題について、UNICEFのCOVID-19 Vaccine Market Dashboard等のデーターをもとに分析がなされた。

      質疑応答では、第1報告に対して討論者の戸田隆夫会員(明治大学)から分析方法の妥当性等について、座長の野田からはドナーとの関係や評価等について質問・コメント等がなされた。

      第2報告に対して、勝間靖会員(早稲田大学)からCOVAX等によるワクチン分配等について、戸田会員からサブサハラ地域の多様性とワクチン等について質問・コメントがなされた。続いて、参加者による活発な議論が時間いっぱいまでなされた。大変充実したセッションとなり、関係各位に感謝申し上げる。

      (野田真里)




      第23回春季大会・優秀ポスター発表賞

      2022年度春季大会のポスターセッションでは、16件の意欲的な研究報告がありました。オンライン開催を考慮して、昨年度の全国大会に引き続き、今回もビデオ掲載による発表の形式となりました。

      ポスターセッション発表に対する賞選考委員会および常任理事会での厳正な審査の結果、下記の作品が優秀ポスター賞として選出されました。

      優秀ポスター発表賞

       松田華織・会員

       “An Analysis of Access to Education for Children with Disability in Indonesia”

       太田洋舟・会員

      「モルディブ共和国における「ムスリムネス」の多様性に関する一考察―首都マレ圏のスポーツ活動を行うムスリム女性を事例として―」

      賞選考委員会
      委員長・三重野文晴(京都大学)




      第33回全国大会(明治大学)のお知らせ

      今年の国際開発学会・全国大会を12月3日(土曜)および4日(日曜)に、明治大学(お茶の水・駿河台キャンパス)で開催させていただけることになりました(会場の都合から、4日にプレナリー、総会、ポスター発表を予定)。現時点では対面とオンラインの併用により実施していく予定です。

      1.テーマについて

      今回の大会では「グローバル危機にどう立ち向かうべきか ー 紛争・食糧高騰・飢餓」をテーマにしました。今、世界は新型コロナ禍に始まり、その後の世界的な物価高、さらにはウクライナ侵攻後の小麦などの食糧価格の上昇、そしてアフリカの角における飢餓など、次々に新たな危機が押し寄せてきています。

      いずれの危機も一つの国では対処するのが難しい国を超える課題であり、一人ひとりの人間の生活が脅かされているという人間の安全保障の危機とも言えます。

      これらの危機はまた、一つの学問分野だけでは対処が難しい問題でもあります。国際開発学という学際的なアプローチではどのような問題の捉え方ができ、どのように解決できるかを話し合える場になればと思っています。


      2.対面・オンライン併用での開催の難しさについて

      6月現在の状況であれば対面での開催が可能ですが、今後、再び感染の増加がないとは言い切れません。そのため、対面での開催と同時にオンラインでも開催できるように準備を進めています。準備を始めてみて、どちらにも対応できるようにという準備はとても難しいと感じています。不確定な未来の状況に対して、全てのケースに対して準備をすることはなかなかできそうにないからです。

      参加いただける方々にできるだけ満足いただけるようにしたいと思いつつ頭を悩ませながら対応しているというのが現状です。

      大会の実施にあたっては多くの学部の学生たちに手伝ってもらう予定です。新型コロナ禍の状況では、これらの学生に無理はさせられないですし、またスタッフ側とはいえ学生に対する感染症対策は学会として責任をもって実施していきたいと思っています。皆さまにもご協力いただければ幸いです。


      3.会員の交流会などについて

      新型コロナ禍により色々と制約のある中での開催となりますが、会場の近くの神田・神保町・お茶の水はとても魅力的な街です。源氏物語絵巻や解体新書が店で販売されるような場所は世界でも神保町ぐらいしかないのではないでしょうか。ぜひ学会の合間に街歩きなども楽しんでいただければと思います。

      残念ながら新型コロナ禍対策のため、学内における飲食を伴う懇親会は認められていないのですが、会員間で話し合う交流会はしたいと思っています(そしてぜひ神保町の喫茶店、カレー店(洋風カレーのみでなく、本格的な南インド、スリランカ、バングラデシュのカレー店)や、インドネシア、アルゼンチン、ロシアなどの料理で語り合いたいものです)。

      今回の大会は対面を再開し、学会員が交流できる場になればと思っています。以下の体制でお迎えできるように準備をしております。皆さまとお会いできることを楽しみにしております。

      大会実行委員長・島田 剛(明治大学)


      第33回全国大会・概要

      • 日程:2022年12月3~4日(土・日)プレナリー、総会、ポスター発表は4日を予定
      • 会場:明治大学(対面とオンラインを併用して開催)
      • テーマ: 「グローバル危機にどう立ち向かうべきかー 紛争、食糧高騰、飢餓」

      実行委員会

      事務局長

      • 高橋 華生子(明治大学):会場運営担当
      • 林 愛美(明治大学,大阪公立大学):オンライン担当
      • 三牧 順子(明治大学):会場運営担当
      • 李 洸昊(早稲田大学):会計担当

      アドバイザー

      • 小林 尚朗 (明治大学)
      • 笹岡 雄一 (明治大学)
      • 長畑 誠  (明治大学)
      • 源 由理子 (明治大学)

      *役職内の並び順は50音順

      第33回全国大会・実行委員会
      実行委員長:島田剛(明治大学)




      【重要】全国大会での発表を目指して入会される方へ

      国際開発学会では、全国大会・春季大会で発表申し込みを行えるのは会員(正会員、学生会員、名誉会員)のみとなっております。ここでの発表申し込みには、個人での口頭・ポスター発表及び企画セッション・ラウンドテーブルの提案が含まれます。

      2022年12月3・4日に開催される、第33回全国大会で発表することを目指して新規に入会される場合は、下記の日程にご留意のうえ、期日までにオンラインシステム上での手続きをお済ませいただくようにお願いいたします。

      全国大会発表希望者向け・入会申請スケジュール

      1.7月20日(水曜)までに、新規入会申込の完了(*申請に必要な書類、手順は、入会案内 を参照)

      (常任理事会を開催し、入会申請の審査・承認を行います。入会承認後、初年度会費の請求書が発行されます)

      2.7月31日(日曜)までに、初年度会費支払を完了(申し込みが常任理事会で受理され、会費が支払われたことが確認されるまで、大会発表申し込みサイトにアクセスできる会員IDが発行されません)

      3.8月1日(月曜)から、大会発表申し込みサイトにて、発表申し込みスタート(第33回大会のウェブサイトの指示に従って、発表申し込みを行ってください)

       




      第23回春季大会(福岡県立大学)開催のお知らせ

      【第2報】

      この度は、多数の応募どうもありがとうございました。深くお礼を申し上げます。応募について国際開発学会第第23回春季大会プログラム委員会により、2022年3月27日に開催された会合にてレビューされ、採択結果については、応募者に、大会にて発表頂く際の使用言語、および発表形式(一般口頭、またはポスター発表)とともに、応募者の皆様にすでにお送りした通りです。ご確認下さい。

      なお、1日の大会で地域、教育、子供、開発、NGO、SGDs、災害、環境、社会経済、などのテーマで17セッション(企画セッション3セッション、ラウンドテーブル7セッション、一般口頭セッション7セッション)、ポスターセッションとブックトークを予定しています。

      以下、論文提出、参加登録方法、その他についてお知らせします。

      今後の流れ:

      口頭発表者(一般口頭発表、または企画セッション)

      1. 大会ページよりJASID規定論文フォーマットダウンロード
      2. 大会ページ内、参加者登録フォームより参加登録、論文提出
      3. 参加費支払い(リンクがフォームを送付すると送られます)
      4. 大会プログラムページ、およびオンライン出展ページにアクセス、そこでZoomのリンクも公開。
      5. 事前リハーサル参加(オプション)
      6. 当日参加

      ポスターセッション発表者

      1. 大会ページ内、参加者登録フォームより参加登録
      2. 参加費支払い(リンクがフォームを送付すると送られます)
      3. 第23回春季大会実行委員会からの連絡に従い提出物を提出
      4. 大会プログラムページ、およびオンライン出展ページにアクセス、そこでZoomのリンクも公開。
      5. 当日参加

      企画セッション、ラウンドテーブルオーガナイザー

      1. JASID規定要旨フォーマットダウンロード
      2. 大会ページ内、参加者登録フォームより、参加登録、セッション要旨の提出
      3. 参加費支払い(リンクが参加登録をすると送られます)
      4. 大会プログラムページ、およびオンライン出展ページにアクセス、そこでZoomのリンクも公開。
      5. 事前リハーサル参加(座長や司会者ではない場合はオプション)
      6. 当日参加

      座長、司会者、コメンテーター、およびその他の参加者について

      1. 大会ページ内、参加者登録フォームより、参加登録
      2. 参加費支払い(リンクが参加登録をすると送られます)
      3. 大会プログラムページ、およびオンライン出展ページにアクセス、そこでZoomのリンクも公開。
      4. 事前リハーサル参加(座長、司会者は必ず出席して下さい)
      5. 当日参加

      <注意事項>

      ※以下、全セッションの発表予定者に関しては採択通知の際にお知らせしたものと同じです。

      *口頭発表者(一般口頭発表、または企画セッション)の方へ

      当日大会における発表は、20分となります。大会当日までに論文をもとにパワーポイントなどプレゼンテーション資料を用意して頂き、画面共有をして当日発表して頂きます。なお、誤字やスペルチェックは事務局では致しませんので、ご自分ですませてから提出をお願いします。

      *ポスター発表者の方へ

      採択結果を受けた皆様は、国際開発学会第23回春季大会実行委員会よりすでに直接連絡が行っておりますので、そちらの指示に従って下さい。

      *企画・ラウンドテーブルセッションオーガナイザーの方へ

      採択結果を受けた企画セッションオーガナイザーは、発表者全員に各発表者自身で参加登録をし、大会参加登録フォームより作成した論文を各々アップロードして提出するよう伝えて下さい。また、座長、発表者、コメンテーター名を入れ、企画セッション全体の要旨を、JASID規定フォームA4・1ページ以内で作成して、4月30日(土曜)23:59までに大会ホームページの大会参加登録フォームより参加登録をした後、アップロードして提出して下さい。

      ラウンドテーブルオーガナイザーは、司会、パネリスト名が入った全体の要旨(話題提供者の要旨は別でも、含んでも良い。)をA4・1ページ以内で作成し、4月30日(土曜)23:59までに大会ホームページの大会参加登録フォームより参加登録をした後、参加登録フォームよりアップロードして提出して下さい。なお、誤字やスペルチェックは事務局では致しませんので、ご自分ですませてから提出をお願いします。

      *参加者登録および参加費について

      参加費は、一律1名3,000円で、クレジットカードでのみ支払いが可能です。また紙での領収書は、オンラインでの実施に伴い、今回の大会につきましては申し訳ありませんが用意できません。クレジットカード明細、また、支払い時に決済システムより発行される領収書をもってかえさせていただきたく存じます。

      座長、コメンテーターの方々は、オンラインでの事前リハーサルやProceedingsの関係上、大会ホームページより5月16日(月曜)23:59までに参加費をお支払い下さいますようお願いいたします。

      その他の参加者の皆様につきましては、大会前日6月17日(金曜)18:00まで参加費を受け付けております。随時、大会参加登録フォームを提出後、参加費をお支払い下さい。なお、一度支払いされると大会プログラム、オンライン出展ページへのアクセスが可能になるため、支払いについての返金はありません。

      *各セッションの座長、コメンテーターの方々へ

      各セッションにおける座長、コメンテーターは、3月下旬から4月上旬に依頼メールを実行委員会から送付しますので、ご協力下さい。お引き受ける方は、必ず大会参加登録フォームを提出し、参加費をお支払い下さい。

      *大会プログラムページ

      大会プログラムページは、大会プログラム最終版、Proceedings、ポスター発表、Zoomについてなどが掲載されるページで、参加費の支払いとともに、そのリンク先であるURLとパスワードをご連絡いたします。

      こちらのパスワードへの個人的な問い合わせには応じかねますので、保管をお願いいたします。大会プログラム最終版やProceedingsは、5月中下旬に大会プログラムページに掲載予定です。なお大会当日のZoomのID、PWにつきましては、大会プログラムページに6月上旬~中旬に掲載予定です。

      *オンライン出展ページ

      今大会では、従来の大会での出展をオンラインで実施いたします。複数の出版社が出店し、大会参加者は商品を特別割引で購入することができます。

      このページでは、注文書や問い合わせ先、商品が閲覧できます。参加費の支払い後、アクセスするためのURLとパスワードをお送りします。同じく、こちらのパスワードへの個人的な問い合わせには応じかねますので、保管をお願いいたします。

      6月上旬頃よりご覧になれますので、ぜひこの機会にご覧いただき、ご購入いただければと思います(商品の配達は日本国内のみ)。

      *大会セッションの録画について

      本大会はオンラインで実施されるため、途中で通信がダウンする可能性も考え、各セッションにおいて録画をさせて頂き、大会終了後も大会参加者のみがアクセスできる大会プログラムページにて、一定期間(大会終了後、視聴が可能になってから2週間程度を予定)視聴できるようにする予定です。

      なお、大会当日ビデオオンにできるのは、基本的に座長、コメンテーター、発表者になります。参加登録フォームにおいて、肖像権、著作権、個人情報保護法について伺っていますので、ご確認下さい。

      *各セッションのフォーマット

      各セッションは、120分で、座長/司会 1名、コメンテーター 2名、発表者 2~4名から成り立っています。基本的には、発表20分、コメンテーター 5分、回答3分、残りの時間はディスカッションを考えています。座長/司会者は、残りの時間でファシリテーションをお願いいたします。

      *特別セッション

      最後に皆様に我々の特別セッションについてお知らせします。大会当日の6月18日(土曜)16:50~18:50は、全体テーマ「知っちょるよ、もうやっとるよSDGs」のもとプレナリーセッションを開催し、地方創生のもとSDGsの理念にそった地域づくりに奮闘する関係者を招き、本音で語り合うことを通して、参加者の皆様と次の時代の開発、国際協力を考えたいと思います。

      すべてオンラインで実施されます。

      詳細につきましては、大会ホームページ()をご覧ください。ぜひ多くの皆様のご参加をお待ちしております。

      • お問い合わせ先: jasid2022spring [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)

      第23回春季大会・実行委員会
      実行委員長:佐野麻由子(福岡県立大学教授)
      事務局長:林 裕(福岡大学准教授)


      English Version




      第23回・春季大会のお知らせ【第2報】

      知っちょるよ、もうやっとるよSDGs

      この度は、多数の応募どうもありがとうございました。深くお礼を申し上げます。応募について国際開発学会第第23回春季大会プログラム委員会により2022年3月27日に開催された会合にてレビューされ、採択結果については、応募者に、大会にて発表頂く際の使用言語、および発表形式(一般口頭、またはポスター発表)とともに、応募者の皆様にすでにお送りした通りです。ご確認下さい。

      なお、1日の大会で地域、教育、子供、開発、NGO、SGDs、災害、環境、社会経済、などのテーマで17セッション(企画セッション3セッション、ラウンドテーブル7セッション、一般口頭セッション7セッション)、ポスターセッションとブックトークを予定しています。

      以下、論文提出、参加登録方法、その他についてお知らせします。

      今後の流れ

      口頭発表者(一般口頭発表、または企画セッション)

      1. 大会ページよりJASID規定論文フォーマットダウンロード
      2. 大会ページ内、参加者登録フォームより参加登録、論文提出
      3. 参加費支払い(リンクがフォームを送付すると送られます)
      4. 大会プログラムページ、およびオンライン出展ページにアクセス、そこでZoomのリンクも公開
      5. 事前リハーサル参加(オプション)
      6. 当日参加

      ポスターセッション発表者

      1. 大会ページ内、参加者登録フォームより参加登録
      2. 参加費支払い(リンクがフォームを送付すると送られます)
      3. 第23回春季大会実行委員会からの連絡に従い提出物を提出
      4. 大会プログラムページ、およびオンライン出展ページにアクセス、そこでZoomのリンクも公開
      5. 当日参加

      企画セッション、ラウンドテーブルオーガナイザー

      1. JASID規定要旨フォーマットダウンロード
      2. 大会ページ内、参加者登録フォームより、参加登録、セッション要旨の提出
      3. 参加費支払い(リンクが参加登録をすると送られます)
      4. 大会プログラムページ、およびオンライン出展ページにアクセス、そこでZoomのリンクも公開
      5. 事前リハーサル参加(座長や司会者ではない場合はオプション)
      6. 当日参加

      座長、司会者、コメンテーター、およびその他の参加者について

      1. 大会ページ内、参加者登録フォームより、参加登録
      2. 参加費支払い(リンクが参加登録をすると送られます)
      3. 大会プログラムページ、およびオンライン出展ページにアクセス、そこでZoomのリンクも公開
      4. 事前リハーサル参加(座長、司会者は必ず出席して下さい)
      5. 当日参加

      <注意事項>

      ※以下、全セッションの発表予定者に関しては採択通知の際にお知らせしたものと同じです。

      *口頭発表者(一般口頭発表、または企画セッション)の方へ

      採択結果を受けた皆様は、通知メール内の発表使用言語を確認の上、その言語で論文をJASID規定フォームを用いて、A4・4ページの短いバージョン、もしくはA4・16ページ以内のフルペーパー)を作成し、4月30日(土曜)23:59までに大会ホームページの大会参加登録フォームより参加登録をした後、アップロードして提出して下さい。締め切りまでに提出がない場合には、報告をキャンセルさせて頂く場合があります。

      当日、大会における発表は20分となります。大会当日までに論文をもとにパワーポイントなどプレゼンテーション資料を用意して頂き、画面共有をして当日発表して頂きます。なお、誤字やスペルチェックは事務局では致しませんので、ご自分ですませてから提出をお願いします。

      *ポスター発表者の方へ

      採択結果を受けた皆様は、国際開発学会第23回春季大会実行委員会よりすでに直接連絡が行っておりますので、そちらの指示に従って下さい。

      *企画・ラウンドテーブルセッション オーガナイザーの方へ

      採択結果を受けた企画セッションオーガナイザーは、発表者全員に対し、各発表者自身で参加登録をし、大会参加登録フォームより作成した論文を各々アップロードして提出するよう伝えて下さい。また、座長、発表者、コメンテーター名を入れ、企画セッション全体の要旨を、JASID規定フォームA4・1ページ以内で作成して、4月30日(土曜)23:59までに大会ホームページの大会参加登録フォームより参加登録をした後、アップロードして提出して下さい。

      ラウンドテーブルオーガナイザーは、司会、パネリスト名が入った全体の要旨(話題提供者の要旨は別でも、含んでも良い。)をA4・1ページ以内で作成し、4月30日(土曜)23:59までに大会ホームページの大会参加登録フォームより参加登録をした後、参加登録フォームよりアップロードして提出して下さい。なお、誤字やスペルチェックは事務局では致しませんので、ご自分ですませてから提出をお願いします。

      *参加者登録および参加費について

      参加費は、一律1名3,000円で、クレジットカードでのみ支払いが可能です。また紙での領収書は、オンラインでの実施に伴い、今回の大会につきましては申し訳ありませんが用意できません。クレジットカード明細、また、支払い時に決済システムより発行される領収書をもってかえさせていただきたく存じます。

      口頭発表者、ポスター発表者、また企画セッション、ラウンドテーブルオーガナイザー、座長、コメンテーターの方々は、オンラインでの事前リハーサルやProceedingsの関係上、大会ホームページより5月16日(月曜)23:59までに参加費をお支払い下さいますようお願いいたします。

      その他の参加者の皆様につきましては、大会前日6月17日(金曜)18:00まで参加費を受け付けております。随時大会参加登録フォームを提出後、参加費をお支払い下さい。なお、一度支払いされると大会プログラム、オンライン出展ページへのアクセスが可能になるため、支払いについての返金はありません。

      *各セッションの座長、コメンテーターの方々へ

      各セッションにおける座長、コメンテーターは、3月下旬から4月上旬に依頼メールを実行委員会から送付しますので、ご協力下さい。引き受ける方は必ず大会参加登録フォームを提出し、参加費をお支払い下さい。

      *大会プログラムページ

      大会プログラムページは、大会プログラム最終版、Proceedings、ポスター発表、Zoomについてなどが掲載されるページで、参加費の支払いとともに、そのリンク先であるURLとパスワードをご連絡いたします。こちらのパスワードへの個人的な問い合わせには応じかねますので、保管をお願いいたします。
      大会プログラム最終版やProceedingsは、5月中下旬に大会プログラムページに掲載予定です。なお大会当日のZoomのID、PWにつきましては、大会プログラムページに6月上旬~中旬に掲載予定です。

      *オンライン出展ページ

      今大会では、従来の大会での出展をオンラインで実施いたします。複数の出版社が出店し、大会参加者は商品を特別割引で購入することができます。このページでは、注文書や問い合わせ先、商品が閲覧できます。参加費の支払い後、アクセスするためのURLとパスワードをお送りします。同じく、こちらのパスワードへの個人的な問い合わせには応じかねますので、保管をお願いいたします。6月上旬頃よりご覧になれますので、ぜひこの機会にご覧いただき、ご購入いただければと思います(商品の配達は日本国内のみ)。

      *大会セッションの録画について

      本大会はオンラインで実施されるため、途中で通信がダウンする可能性も考え、各セッションにおいて録画をさせて頂き、大会終了後も大会参加者のみがアクセスできる大会プログラムページにて、一定期間(大会終了後、視聴が可能になってから2週間程度を予定)視聴できるようにする予定です。なお、大会当日ビデオオンにできるのは、基本的に座長、コメンテーター、発表者になります。参加登録フォームにおいて、肖像権、著作権、個人情報保護法について伺っていますので、ご確認下さい。

      *各セッションのフォーマット

      各セッションは、120分で、座長/司会・1名、コメンテーター・2名、発表者・2~4名から成り立っています。基本的に発表・20分、コメンテーター・5分、回答・3分、残りの時間はディスカッションを考えています。座長/司会者は、残りの時間でファシリテーションをお願いいたします。

      *特別セッション

      最後に皆様に我々の特別セッションについてお知らせします。大会当日6月18日16:50~18:50は、プレナリーセッションを全体テーマ「知っちょるよ、もうやっとるよSDGs」のもと開催し、地方創生のもとSDGsの理念にそった地域づくりに奮闘する関係者を招き、本音で語り合うことを通して、参加者の皆様と次の時代の開発、国際協力を考えたいと思います。

      すべてオンラインで実施されます。詳細につきましては、大会ホームページ(https://)をご覧ください。ぜひ多くの皆様のご参加をお待ちしております。


      本件にかんするお問い合わせ先

      国際開発学会 第23回・春季大会実行委員会
      実行委員長:佐野麻由子(福岡県立大学教授)
      事務局長:林 裕(福岡大学准教授)

      • jasid2022spring [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)
      • 国際開発学会第23回春季大会のお知らせ【第1報】 ()



      報告募集『京滋支部・研究報告会』5月15日開催(会員限定)

      京滋支部は下記の日程で、若手研究者の研究(計画)発表・交流会を、対面およびオンラインのハイブリッド形式で開催を予定しております。

      これは研究者の中間発表(たとえば研究テーマ、背景、意義、研究仮説、予想される結論・政策提言など)をイメージしております。

      とくに若手・院生会員の全国大会発表に向けて準備を後押しし、また外国人留学生と日本人研究者の研究交流の促進も企図しています。ぜひふるって応募ください。

      開催概要

      • 日時:2022年5月15日(日曜) 15:00~17:50
      • 場所:キャンパスプラザ京都(JR京都駅徒歩5分)第4講義室(4階)(オンライン参加のURLは追って参加者に連絡します)
      • 発表時間:一人あたり10~15分の発表と意見交換10~15分を予定しています。
      • 募集期限:2022年4月23日(土曜)23:55

      応募方法

      以下の応募フォームに、報告概要(300〜400字、または英語200~250程度)、およびJELコードまたはキーワード(3から5個)を提出してください。
      qiUpycFbTUTzbq8M6


      本件にかんするお問い合わせ先

      JASID・京滋支部
      渡邉松男(京滋支部長:立命館大学)

      • [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)