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東海支部共催講演会『日本企業の”知の創造”と海外拠点との関わり』11月9日開催(会員・一般)

国際開発学会東海支部(JASID東海)・ 南山大学アジア太平洋研究センター 共催講演会

「日系企業の国際経営技術移転の経緯と知の創造ー中南米、ASEAN、中国、米国の拠点比較からの考察ー」

  • 日時:2023年11月9日(木曜)17:30-19:00
  • 場所:南山大学Q棟5階会議室 (Q51、52) 対面のみで開催
    <アクセス>
    <キャンパスマップ>

講師

植木英雄 氏(東京都立産業技術大学院大学客員教授/日本ナレッジ・マネジメント学会、知の創造研究部会長)

参加申込方法

11/9(木)9:00amまでに、以下からお申込みください


本件にかんするお問い合わせ先

南山大学アジア太平洋研究センター

  • center-asiapacific [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)
  • 電話:052-832-3111 (代表)



会長からの手紙(2023年11月)

あっという間の3年間でした。Visible, Inclusive, Entertaining をスローガンに、常任理事の皆さんと事務局スタッフに助けられながら、ここまで来られたことに感謝の気持ちで一杯です。

特に、任期前半の大会がすべてオンラインになってしまったために、Entertaining な側面を十分に展開できなかったことは心残りでした。それでもHPの全面改訂や学会管理システムの導入、学会誌のデザインとコンテンツの刷新、学部生論文コンテストの導入、若手による選管PR動画の配信、学会費の割引制度、学会としての科研費の獲得や英文ジャーナルの充実など、それなりに visible な成果を出すことができました。

「学会」と呼ばれる集団の多くが会員数を減らしている中で、どうにか会員数を維持できた背景には、3年会費未納で自動退会になりそうな人に声をかけて踏みとどまらせるという、きわめて地味な活動もありました。

どれほど visible な活動にも、このように、それを下支えしてくれた皆さんの invisible な貢献があります。日々の理事会の日程調整や議題の整理なども、事務局長、総務委員長をはじめとするスタッフの献身的な努力があったからこそ円滑に進められました。

とかくアイディア先行で、実施となると周りを振り回しがちな私をサポートし、着実に成果に結びつけてくれた常任理事、理事の皆様にも厚く御礼申し上げます。

これまでの大会実行委員の先生方、そして大会に参加してくれて活動を盛り上げてくださった会員のみなさんにも厚く御礼を申し上げます。

次の会長が山田肖子さんになったことは本当に喜ばしいことです。彼女は、大会組織委員長として大会のホスト校を口説くという、まさに invisible 仕事をやってきた学会の大黒柱です。

山田さんのつくる新しいチームの下、学会が新しい時代を切り開く推進力になることを祈って、私の退任のあいさつとさせていただきます。本当にありがとうございました!

2023年11月
第11期会長 佐藤仁(東京大学)




追悼:内海成治先生(本会元副会長)

JASID名誉会員で、2011年から14年まで副会長としても活躍された内海成治先生(大阪大学名誉教授)が2023年9月16日に急逝されました。

JICAの国際協力専門員(教育分野)、アフガニスタン教育大臣のアドバイザー、大阪大学、お茶の水女子大学、京都女子大学等で教授を歴任され、日本の国際開発分野で大きな足跡を残されました。ここに生前の内海先生のご貢献に感謝し、安らかな眠りをお祈りいたします。 

佐藤仁


アフリカでの教育開発研究を先導された内海先生との思い出

1998年から始まった私のケニア通いにフィールド調査の要素が加味されたのは、内海先生が2000年にJSPSナイロビ連絡センターに赴任されことが契機になっています。

広島大学に着任したのが1997年で、その前にJICAに勤めていたこともあり、少なくないお付き合いはありました。大学で働くことになったものの、私にはフィールドでの調査経験が圧倒的に不足していました。

今のように大学が忙しくない時、先生が泊まる場所もあるというので、2000年9~10月の3週間ほどケニアへ行くことにしました。これが、今につながるケニアでのフィールド研究の始まりです。基本的に学生を含めた合宿調査でしたので、研究のことや世間話、朝から晩まで、話が尽きることはありませんでした。

この初期の頃、アフリカの教育研究と言えば、日本では援助に関わる研究者の一部が細々と行っていました。学会で発表すると珍しがられたぐらいです。今日のようにアフリカの分科会が立ち上がるなど、考えられないことでした。

内海先生は、当時、センターのニュースレター「ふくたーな」(2000年6月発行)の編集後記に、「アフリカ研究の中では教育は非常にマイナーな分野ですが、国際協力では非常に重要な分野です」と書かれています。

時代は移り変わり、教育開発研究の中で、アフリカはメジャーな地域になりました。そのようなフィールド経験を経て、多くの学生が巣立っていきました。

2000年から2010年代前半までは、マサイの人々の暮らすナロック県の小学校をベースに調査をしてきました。2006年には「ケニア教育開発研究合宿」と称して、8名ほどの本学会会員の参加も得て(今では皆さん50代以上になっています)、1週間ほどの調査を合同で行いました。

ナイロビでの合宿生活に加え、平原にポツリとある小学校の寄宿舎に1泊した経験は、特に忘れがたい思い出です。シマウマやキリンが近くで見られることもありました。その後、イスラム圏のラム島や難民キャンプのあるカクマにもフィールドを広げていきました。

内海先生の訃報に接したのは、ちょうどナイロビで定宿としているアパートに滞在していた時でした。そこには、様々な調査用具に加え、一緒に購入した洗濯用のバケツや炊飯器もあります。

ケニアのご友人たちも一様に驚き、深く悲しまれていました。20年以上にわたるケニアでの調査生活を思い出すと寂しくてなりません。私自身を研究者として育ててくれたのも先生とのこの生活があったからこそです。

内海先生のまかれた種は、立派に成長しています。これからも私たちを温かく見守って下さい。本当にありがとうございました。

澤村信英




学会誌編集委員会からのお知らせ(2023年11月)

30巻1号(2021年6月発刊)から始まった現在の執行部の任期は、この11月で終了します。

編集委員の先生方の多くは、すでに3年の任期を大幅に超えており、いつも多忙な中で特集の企画や論文審査にご協力いただいてきました。

また、この3年の間、査読に多くの先生方にご協力をいただきましたこと、ここに感謝申し上げます。 この3年間、佐藤仁会長の”Visible, Inclusive, and Entertaining”のスローガンのもと、誌上セミナーという取り組みを行ったり、討論というセクションを始めたり、グローバル連携委員会と共に学会誌の表紙を新たにしました。

手探りで前進してきましたが、多くの皆様のご協力と支援のおかげです。

また、任期の途中から以前は独立して行われていた大会におけるブックトークを編集委員会として実施し、書評との連携を図ってきました。

これは学会誌の編集とは異なる仕事ですが、「本をつくる」という側面から国際開発を見るのは新しい発見があり、楽しい経験でした。

編集委員会の仕事を通じて、個人的には専門分野を超えて考えることの楽しさと難しさを感じています。

次回の33巻からは新しい編集委員会のメンバーでの編集になります。今後も会員の皆様からのご協力とご支援をお願いいたします。

学会誌編集委員会
委員長:島田剛(明治大学)




社会連携委員会からのお知らせ(2023年11月)

2023年10月1日(日曜)にグローバルフェスタにて「国際開発キャリアセミナー」を開催しました。

本事業は今年で3年目になりますが、毎年、若手の方を対象に本学会の会員が自身のキャリアについて経験をお話し、その後、質疑応答を行う形式で実施しています。今年は佐藤仁会長、本委員会の委員でもある大橋正明会員、上智大学の荻巣崇世会員にご登壇頂きました。

質疑応答では「なぜ開発の世界に入ったのか」、「実務と研究の関係性について」、「ワークライフバランスの取り方」等について質問が出され、お3人に率直なところをお答え頂きました。

オンラインで時間も限られていましたので、1往復のやり取りだけになってしまいましたが、本来はもっとじっくりとお酒でも飲みながら聞きたい内容でした。今後のご参考にして頂けますと幸いです。本事業は3年件で11名の方にご登壇頂きました。改めて全ての登壇者、参加者の皆様に御礼申し上げます。

また、この3年間で本委員会主催のシンポやセミナーに多くの方にご参加頂き、充実した委員会活動をして頂きました。ご尽力頂きました委員を初め、関係各位にこの場をお借りして深く御礼申し上げます。本当にどうも有難うございました。

 

社会連携委員会
委員長:川口純(筑波大学)




【会員限定】常任理事会議事録(第239・240・241回)

第239回常任理事会

  • 日時:2023年8月19~22日
  • 方法:メール審議

議題

(1) 審議事項

  1. 第33回全国大会(@明治大学)の大会運営予算に係る留保金の取り扱いが審議された。
  2. 3名の新規入会希望者が承認された。

第240回常任理事会

  • 日時:9月3日(日曜)13時00分~15時15分
  • 方法:オンライン(Zoom)
  • 出席:佐藤仁(会長)、高田(副会長)、池上、佐野、島田、小林、杉田、川口、三重野(以上、常任理事)、志賀(事務局長)、秋保(事務局次長)

議題

(1)審議事項

  1. 総務委員会より、2024年度の支部・研究部会の設置について説明があり、了承された。
  2. 人材育成委員会より、2024年の第4回国際開発論文コンテストの開催案について説明があり、了承された。
  3. 本部事務局より、現行定款の改正の検討状況について説明があり、改正する方向性について了承された。
  4. 本部事務局より、2年間連続して会費を未納としている会員の退会処分について提案があり、了承された。

(2)報告事項

  1. 社会連携委員会より、国際協力キャリアセミナーの開催について報告があった。
  2. 賞選考委員会より、春季大会のポスター発表の表彰結果および今年度の学会賞選考の進展状況について報告があった。

第241回常任理事会

  • 日時:2023年10月5~7日
  • 方法:メール審議

議題

(1)審議事項

  • 15名の新規入会希望者が承認された。

(2)報告事項

  • 39名の退会者、25名の休会申請者、58名の会費減額申請者が報告された。

本部事務局
事務局長:志賀裕朗(横浜国立大学)




【会員限定】理事会議事録(第120・121回)

第120回理事会

  • 日時:2023年8月5~8日
  • 方法:メールによる開催

(1)審議事項

以下が提案され、いずれも了承された。

  1. 小國和子会員(日本福祉大学)および松本悟会員(法政大学)を副会長候補として、小山田英治会員(同志社大学)、狩野剛会員(金沢工業大学)、北村友人会員(東京大学)、木全洋一郎会員(国際協力機構)、工藤尚悟会員(国際教養大学)、澤田康幸会員(東京大学)、島田剛会員(明治大学)、杉田映理会員(大阪大学)、関谷雄一会員(東京大学)を常任理事候補として、2023年11月11日開催予定の会員総会に提案すること。
  2. 星野晶成会員(名古屋大学)を本部事務局長候補として上記会員総会に提案すること。
  3. 萱島信子会員(国際協力機構)および佐藤峰会員(横浜国立大学)を監査役候補として上記会員総会に提案すること。

第121回理事会

  • 日時:2023年9月4~7日
  • 方法:メールによる開催

(1)審議事項

  • 38名の会員について、会費を連続して2年間未納としていることを理由とする退会処分に付することが提案され、了承された。

(2)報告事項

  • 2024年度支部・研究部会の申請状況が報告された。

本部事務局
事務局長:志賀裕朗(横浜国立大学)




大阪大学「内海成治先生お別れの会」12月3日開催

JASID名誉会員で、2011年から14年まで副会長としても活躍された内海成治先生(大阪大学名誉教授)が2023年9月16日に急逝されました。

下記のとおり、内海成治先生のお別れの会を開催させていただきますので、ご案内させていただきます。

概要

  • 日時:2023年12月3日(日曜)13~17時(12時15分より第51講義室前で受付)
  • 場所:大阪大学人間科学研究科棟(吹田キャンパス:吹田市山田丘1-2)

第1部:内海先生の思い出を語る会

(本館5階 第51講義室 キャノピーホール)13時00分~15時00分

第2部:内海先生のご縁でつながる交流会

(東館2階 第207講義室 ユメンヌホール)15時15分~17時00分

参加方法

どなたもご参加していただけますが、準備の都合もございますので、参加していただける方は、次のリンクより11月15日までに参加登録(オンラインを含む)をお願いします。

語る会、交流会のいずれかのみの参加も可能です。第1部 語る会につきましては、オンラインでの配信を予定しています。

交流会では茶菓類を準備する予定ですが、感染症の拡大状況によっては変更される場合もあります。

寄せ書き

また、オンラインで寄せ書きができる「kudoboard」というWebサービス(サイト説明は英語しかありませんが、入力は日本語でできます)を利用して、内海先生との思い出など、写真やメッセージを募っています(参加されない方も書き込みしていただけます)。

次のリンクからアップロードしていただけますと有り難いです(左上のバナー(+ Add to board)から入っていただけます)。

なお、ご供花 ご供物の儀はご辞退申し上げます。当日は平服にてお越しください。


本件にかんするお問い合わせ先

内海成治先生お別れの会実行委員会

  • [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)



社会連携委員会「国際開発キャリアセミナー」10月1日開催(会員・一般)

社会連携委員会より「国際開発キャリアセミナー」のお報せです。
グローバルフェスタ2023のサブステージで本学会主催の企画を開催致します。

開催概要

  • 日時:2023年10月1日(日曜)15:00~15:45
  • 方法:オンライン
  • 申し込み:不要
  • 参加費:無料

登壇者

  1. 佐藤仁会長(東京大学)
  2. 大橋正明会員(社会連携委員、聖心女子大学)
  3. 荻巣崇世会員(上智大学)

参加方法

オンライン(URLはグローバルフェスタHPに掲載予定)
#stage-program

*何方でもお気軽にご参加頂けますので、是非、ゼミの学生さんなどに参加を勧奨下さいませ。冒頭、3名の登壇者からご自身の国際開発キャリアについてプライベートな部分も含めて面白いお話を頂き、その後、参加者の皆様から質問を頂き、質疑応答を実施致します。


本件にかんするお問い合わせ先

社会連携委員会
川口 純

  • kawaguchi [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)



12 期1号理事候補者選挙の開票結果の御報告(2023年8月)

第 34 回会員総会(2023 年 11 月)から 3 年後の会員総会までを任期とする第 12 期 1 号理事候補者の選挙を、 日本時間の 5 月 9 日(火曜) 8 時から 23 日(火曜) 17 時まで、下記のとおり電子投票にて実施いたしました。

投票率は11.5%となり、前回の2020年の選挙11.9%を僅かに下回りました。会員の皆様には、ご協力を頂きありがとうございました。

以下に、1)理事選挙の経過、2)開票結果、3)1号理事候補者、4)選挙管理委員会からの申し送り事項について報告いたします。

1.1号理事候補者選挙の経過

2020 年 12 月の総会にて選挙管理委員会の承認を頂き、選挙管理委員4名体制でスタートしました。過去2回の投票率は、2017年9.9%、2020年11.9%と高くはなく、選挙管理委員会の活動として、投票率を上げることだけを目標とすることには限界がある考えました。そこで、学会理事の仕事および選挙の仕組みのvisibility を上げて学会の活動自体に会員に関心を持ってもらうことを目指して、若者の視点で広報企画・発信をしてもらうべく、選挙管理委員会の幹事を学生会員から2021年5月に公募しました。その結果幹事4名が加わり、2023年5月までの間に、委員会委員長(会長や理事)へのインタビュー動画の配信、ツイッターでの発信、選挙のしくみやシステムの利用マニュアルなどのHP作成などの活動を展開しました。

また、2014年(この時に電子投票シスエムを導入)、2017年、2020年に利用していた選挙システムとの契約が終了することから、新たな選挙システムに切り替える必要がありました。学会本部事務局の協力を得ながら、選挙管理委員会でWEB選挙システムのサービスを持つ数社から情報収集を行い協議をした結果をふまえ、国際文献社を選定しました。2022年夏ごろから国際文献社と密な調整をしながら国際開発学会に合わせたカスタマイズを進めていきました。あわせて投票マニュアル(PDF)や投票方法の動画を日本語と英語で作成しました。

正式なプロセスとして、2022年 12月の総会にて1号理事候補選挙を実施することを報告し、これに基づき、2023年 1月に選挙実施を公告するメール(和・英文)を会員あてに送付するとともに、国際開発学会のホームページに同内容を掲載しました。さらに2月 1日付のニューズレターVol. 34, No.1(通巻第127号)にて選挙告示を掲載しました。 2022年 12月 4日時点で会員の資格を有し、その後退会した者、休会申請した者を除いた名簿を 2023年 4月 9日付(電子投票 実施の30日前)で確定しました。そして、電子投票の公告を 5 月 1 日付ニューズレター No.2(通巻第 128 号)で行いました。学会ウェブサイトから被選挙者名簿と電子投票マニュアルをダウンロードできるようにするとともに、ML にてその旨を配信しました。

電子投票は、予定どおり5月9日(火曜)8時から23日(火曜)17時まで実施されました。選挙期間中、選挙管理委員が交代制でヘルプデスクを設置しました。投票開始日の当日にWEB選挙システムのURLと個々人のパスワードが配信されましたが、一部の会員がメールを受けとれないという状況があり、その対応をいたしました。

開票は5月23日(火曜)18時に選挙管理委員・幹事および学会事務局長立ち合いのものと、東京の学士会館会議室にて行われました。

以下、投票状況とあわせて報告いたします。

2.開票結果

投票率、投票者数等は、次の表のとおり。

  2023年 (今回) 2020年 2017年 2014年 2011年 2008年
選挙権保有者数 (a) 1,557 1,607 1,669 1,677 1,626 1,574
投票者数 (b) 179 191 165 325 285 249
投票率 (b/a) 11.5% 11.9% 9.9% 19.4% 17.8% 16.0%

【注】2008年と2011年は紙による投票。2014年は紙と電子投票の併用。2017年、2020年、2023年は電子投票のみ。

3.1号理事当選者

開票結果に基づき、18名を当選者として本部事務局に報告し、会長名で本部事務局が打診したところ、16名内諾、2名辞退となりました。そのため、選挙管理委員会は本部事務局の連絡を受け、補欠候補予定者を追加当選者とし、その該当者3名を本部事務局に連絡し、本部事務局はその3名について打診をして内諾を得ました。その結果、以下の会員が 1 号理事候補者の当選者となりました。
 なお、選挙管理委員会は追加当選者の次に得票数が多かった同点4名を補欠候補として本部事務局に連絡しました。

氏 名(50音順)

*カッコ内は所属先

  • 伊東 早苗(名古屋大学)
  • 小川 啓一(神戸大学)
  • 小國 和子(日本福祉大学)
  • 川口 純(筑波大学)
  • 北村 友人(東京大学)
  • 黒田 一雄(早稲田大学)
  • 樹神 昌弘(神戸大学)
  • 坂上 勝基(神戸大学)
  • 佐藤 仁(東京大学)
  • 佐藤 寛(開発社会学舎)
  • 澤村 信英(大阪大学)
  • 島田 剛(明治大学)
  • 杉田 映理(大阪大学)
  • 高田 潤一(東京工業大学)
  • 高橋 基樹(京都大学)
  • 藤掛 洋子(横浜国立大学)
  • 松本 悟(法政大学)
  • 山形 辰史(立命館アジア太平洋大学)
  • 山田 肖子(名古屋大学)

4.選挙管理委員会からの申し送り事項

今回の選挙で利用したWEBシステムは、3年後の次回の1号理事候補選挙にも引き継がれることを報告いたします。今回、得られた経験を3年後の選挙に引き継いで、会員の多様な意思がより反映できる理事会となることを目指したいと考えております。

2023 年 5 月 23 日
国際開発学会 選挙管理委員会

  • 委員長:杉田 映理 (大阪大学)
  • 委員: 岡部 恭宜(東北大学)
  • 委員:仲佐 保(シェア=国際保健協力市民の会)
  • 委員: 鍋島 孝子 (北海道大学)
  • 幹事:Fanantenana Rianasoa Andriariniaina
  • 幹事:藤山 美律
  • 幹事:神正 光
  • 幹事:松田 華織

選挙管理委員会
委員長:杉田映理(大阪大学)




【会員限定】常任理事会議事録(第236・237・238回)

第236回常任理事会

  • 日時:2023年5月2~5日
  • 方法:メール審議

議題

(1) 審議事項

18名の新規入会希望者が承認され、7名の退会者が報告された。


第237回常任理事会

  • 日時:5月28日(日)9時00分~11時15分
  • 方法:オンライン(Zoom)
  • 出席:佐藤仁(会長)、高田(副会長)、池上、佐野、島田、小林、杉田、川口、三重野(以上、常任理事)、志賀(事務局長)、秋保(事務局次長)

議題

(1)審議事項

  1. 第3回国際開発論文コンテスト審査結果について:大山・人材育成委員会委員(松本委員長の代理)より、応募論文13編のなかから優秀論文賞の授与対象として4編が選出されたことが報告され(最優秀論文賞は該当者なし)、承認された。
  2. 優秀ポスター発表賞の審査方法の変更について:三重野・賞選考委員長より、優秀ポスター発表賞の審査方法を変更したい旨の要請があり、承認された。
  3. 障害者の権利に関する合理的配慮について:佐藤会長(企画運営委員長)より、2019年に導入された「国際開発学会における障害者の権利に関する合理的配慮について」を、障害を有する会員の意見を踏まえてまとめた改訂案について報告がなされ、承認された。

(2)報告事項

  1. 第12期1号理事候補選挙結果および候補者の確定について:杉田選挙管理委員長より、5月に実施された第12期1号理事候補選挙結果が報告された。続いて、志賀事務局長より、選挙における得票数上位者に1号理事就任を打診した結果、19名の第12期1号理事候補者が確定されたことが報告された。
  2. 第12期会長候補者について:志賀事務局長より、本年11月11日の会員総会に提案する次期(第12期)会長候補者の推薦手続きについて説明が行われた。
  3. 入会者、退会者、会費未納退会になる可能性がある会員について:志賀事務局長より、68名の会員が2年度分の会費未納を理由として退会処分になる可能性がある旨が報告され、会費納入促進の方策について議論が交わされた。

第238回常任理事会

  • 日時:2023年7月7~10日
  • 方法:メール審議

議題

(1)審議事項

     

    本部事務局
    事務局長:志賀裕朗(横浜国立大学)




    【会員限定】理事会議事録(第117・118・119回)

    第117回理事会

    • 日時:2023年5月6日(土曜)~7日(日曜)
    • 方法:メールによる開催

    (1)審議事項

    会費未納会員の退会処分

    2021年度および2022年度の2年間にわたり会費を支払っていない会員15名について、事務局が国際開発学会定款附則第5項に従って退会処分とすることを提案し、承認された。

    理事候補者選挙細則の改正

    選挙管理委員会より国際開発学会理事候補者選挙細則の改正案が提案され、承認された。

    (2)報告事項

    19名の新規入会希望者、10名の退会者が報告された。


    第118回理事会

    • 日時:2023年5月28日(日曜)13時00分~14時40分
    • 方法: Zoom(オンライン)による開催
    • 出席者(敬称略):佐藤仁(会長)、高田(副会長)、池上、佐野、島田、小林、川口、三重野(以上、常任理事)、志賀(事務局長)、小國、藤掛、岡島、山形、西川、市橋、小川、大橋、鍋島、勝間、黒田、藤倉、萱島、佐藤寛、高橋(以上、理事)、秋保(事務局次長)

    (1)審議事項

    第3回国際開発論文コンテスト審査結果について

    大山・人材育成委員会委員(松本委員長の代理)より、応募論文13編のなかから優秀論文賞の授与対象として4編が選出されたことが報告され(最優秀論文賞は該当者なし)、承認された。

    障害者の権利に関する合理的配慮について

    佐藤会長(企画運営委員長)より、2019年に導入された「国際開発学会における障害者の権利に関する合理的配慮について」を、障害を有する会員の意見を踏まえてまとめた改訂案について報告がなされ、承認された。

    (2)報告事項

    第12期1号理事候補選挙結果および候補者の確定について

    杉田選挙管理委員長より、5月に実施された第12期1号理事候補選挙結果が報告された。続いて、志賀事務局長より、選挙における得票数上位者に1号理事就任を打診した結果、19名の第12期1号理事候補者が確定されたことが報告された。

    優秀ポスター発表賞の審査方法の変更について

    三重野 賞選考委員長より、優秀ポスター発表賞の審査方法を変更したい旨の報告があった。

    入会者、退会者、会費未納退会になる可能性がある会員について

    志賀事務局長より、10名の入会希望者、3名の退会希望者が報告された。また、68名の会員が2年度分の会費未納を理由として退会処分になる可能性がある旨が報告され、会費納入促進の方策について議論が交わされた。


    第119回理事会

    • 日時:2023年6月10日(土曜)11時30分~12時15分
    • 方法:対面(第24回春季大会会場)による開催
    • 出席者(敬称略):佐藤仁(会長)、高田、山田(以上、副会長)、池上、川口、小林、佐野、杉田、松本(以上、常任理事)、志賀(事務局長)、池見、黒田、佐藤(寛)、澤村、高橋、鍋島、西川、道中、山形(以上、理事)、渡邉(オブザーバー、京滋支部長)、秋保(事務局次長)、工藤(第24回春季大会実行委員長)、小松(第34回全国大会実行委員長)

    冒頭に、工藤・第24回春季大会実行委員長から挨拶が行われた。また、小松・第34回全国大会実行委員長から、挨拶および大会の準備状況についての報告があった。

    (1)審議事項

    第12期会長候補の選出について

    志賀事務局長より、山田肖子・第12期理事(第11期副会長)を次期会長候補として推薦し、本年11月11日に実施される会員総会に提案することが報告され、承認された。

    第12期会長候補の選出について

    次期(第12期)会長候補者の選任について、5月30日から6月6日までの期間、現任(第11期)の理事より候補者の推薦の受付を行った。その結果、理事6名から山田肖子会員を推薦したい旨の届け出があった。これを踏まえ、理事会では、推薦人代表者からの説明を徴したのち、山田会員を次期会長候補として本年11月11日に実施される会員総会に提案することを承認した。

    (2)報告事項

    今後の会合予定について:志賀事務局長より、本年11月11日の会員総会までの理事会、常任理事会の会合日程(予定)について説明があった。

     

    本部事務局
    事務局長:志賀裕朗(横浜国立大学)




    【会員限定】第2号理事決定会合議事録

    • 日時:2023年6月10日 19時30分~20時30分
    • 方法:対面(第24回春季大会会場近隣の会議場)およびオンラインの併用による開催

    • 出席者(敬称略):佐藤仁(会長)、高田、山田(以上、副会長)、池上、川口、北村、小林、佐野、島田、杉田、松本(以上、常任理事)、志賀(事務局長)、伊東、池見、小川、黒田、佐藤(寛)、澤村、高橋、鍋島、藤掛、藤倉、山形(以上、現理事)、坂上、樹神(以上、次期1号理事)

    議事

    志賀事務局長より、本年5月に実施された第12期第1号理事選挙の結果選出された次期第1号理事の属性(所属・性別・専門分野等)についての説明が行われた。これを踏まえ、第12期第2号理事候補者についての議論が行われ、15名の会員を次期第2号理事候補者として選出した。

    本部事務局
    事務局長:志賀裕朗(横浜国立大学)




    日本評価学会:社会実験分科会『話題提供:EBPMの最新動向と課題』7月1日開催(会員・一般)

    日本評価学会-社会実験分科会では2023年度研究報告会を開催することになりました。

    毎回100名近くの参加申込をいただいている大会です。今回も自由論題セッションにて、国際協力分野の発表が3本ございます。

    なお、社会実験分科会では、過去20年で4回にわたり「エビデンスに基づく実践」(EBP)および「エビデンスに基づく政策立案」(EBPM)をテーマとした学会誌特集号を発行して参りました(日本評価学会の学会誌「日本評価研究」2006,2010,2016,2020)。

    今回も珠玉の発表が揃えておりますところ、ぜひご参加ください。Zoom開催で参加は無料です。

    開催主旨

    近年、『エビデンスはあるのか?』が、政策論争において叫ばれるようになりました。エビデンスとは効果検証の結果のことを指します。今回の研究報告会は、『話題提供:EBPMの最新動向と課題』と題して開催致します。また、例年通りに自由論題セッションも開催して、幅広くエビデンスに基づく実践の研究成果をご発表いたたく場と致します。指定討論者も置き、成果は日本評価学会の本体にも提出される、正式な学会発表の場となります。

    • 主催:日本評価学会-社会実験分科会
    • 日時:2023年7月1日(土曜)9:30~12:30
    • 場所:Zoom
    • 参加費用:無料

    プログラム

    9:30-9:40 キーノートスピーチ
    田辺智子(早稲田大学教育総合科学学術院 准教授、日本評価学会-社会実験分科会長)

    9:40-10:20 話題提供:EBPMの最新動向と課題
    <このセッションの主旨>
    EBPM(Evidence-Based Policy Making)(エビデンスに基づく政策立案)が国内外で盛り上がっております。この最新動向と課題について、当分科会の各研究者から短時間でご発表いただきます。(10分x3名程度+質疑応答10分の予定)

    1. 『Theory of Change に関わる階層とレベル感』
      正木朋也・国際開発機構(JICA)
    2. 『ODAにおけるインパクト評価の再現性の問題』
      佐々木亮・国際開発センター(IDCJ)

    10:20-12:20 自由論題セッション
    <このセッションの主旨>
    通常の学会の自由論題セッションと同じです。定量的な分析・評価の報告を想定しています。指定討論者を社会実験分科会から指名します。

    発表1:尾瀬国立公園トイレチップ支払増加プロジェクト
    Oze National Park Toilet Tip Payment Increase Project
    鈴木宏和(特定非営利活動法人Policy Garage)
    指定討論者:選定中

    発表2:子どもの心理的ストレスに対する図書館活動の効果―ミャンマー帰還難民の事例から-
    Impact of library activities on the psychological stress of children: Case of the returnees from Myanmar
    三宅隆史・シャンティ国際ボランティア会 指定討論者:津富宏・静岡県立大学

    発表3:SDGs達成に向けた革新的資金のインパクト評価の可能性:ODAとグローバル・タックスの支出に関する一考察
    A Study on the Potential Impact Assessment of Innovative Financing mechanism for SDGs Achievement: An Examination of ODA and Global Tax Expenditures
    唐語思(横浜市立大学)
    指定討論者:佐々木亮・国際開発センター(IDCJ)

    発表4:ヨルダン国ヨルダンにおけるシリア難民への平和の創出に係るインパクト評価
    Evaluation of the Peacebuilding Impact: Water Supply Improvement in the Host Communities of Syrian Refugees in Jordan
    佐々木亮/高杉真奈・国際開発センター(IDCJ)
    指定討論者:田辺智子・早稲田大学

    12:20-12:30 閉会の挨拶
    正木朋也(国際協力機構(JICA))

    参加申し込み方法

    参加(視聴)を希望される方は以下のURLして必要事項を記載して6/26(月曜)までにお申し込みください(最大100名まで)。

    その他

    本会は全日程をZoomで実施します。最新情報につきましては参加登録の際に登録いただきましたメールアドレスにご案内をいたします。ご確認いただきますようよろしくお願いいたします。また、ご登録いただいたメールアドレスに今後の社会実験分科会の活動のご案内をお送りさせていただく場合があります。


    本件にかんするお問い合わせ先

    国際開発センター(IDCJ) 評価部
    主任研究員 佐々木亮/Ryo SASAKI

    • [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)
    • 電話番号:03-6718-5932
    • FAX番号:03-6718-0910
    • 〒108-0075 東京都港区港南1-6-41 芝浦クリスタル品川12階



    新刊案内:2023年5月新刊、野田真里編著『SDGsを問い直す:ポスト/ウィズ・コロナと人間の安全保障』法律文化社

    茨城大学の野田と申します。この度、SDGsの各分野でご活躍の第一線の多くの学会員にご執筆をいただき、拙編著『SDGsを問い直す:ポスト/ウィズ・コロナと人間の安全保障』を法律文化社より上梓いたしました。

    本研究は当学会のSDGsに関する2つの研究部会(「持続可能な開発とSDGs」、「開発のレジリエンスとSDGs」)の成果でもあります。

    概要と特色

    SDGs(2016~2030年)の中間年にあたる2023年、SDGsを問い直す野心的研究として、人間の安全保障上の危機であるコロナ禍の教訓を踏まえ、ポスト/ウィズ・コロナを展望しています。

    本書はSDGsの17目標に因んで17の論稿から構成され、第1部では「取り残される人々」とレジリエンス、第2部ではSDGsの「5つのP」に焦点をあて、経済・社会・環境の持続可能性やパートナーシップについて重層的・多角的にSDGsでこれまであまり論じられてこなかった点や批判的な観点もふまえている点も特色といえます。

    学会員限定のご案内

    会員割引

    国際開発学会第24回春季大会にて配布の申し込み用紙をご利用いただきますと割引価格でご提供。

    ラウンドテーブル

    同春季大会にて、本書の刊行に合わせて「SDGsを問い直す」セッションをオンラインにて開催(6月10日、12:30-14:30)。詳細は下記をご参照ください。何卒、よろしくお願い申し上げます。

    執筆者を代表して 野田真里

    『SDGsを問い直す ポスト/ウィズ・コロナと人間の安全保障』

    • 2023年5月1日刊行
    • A5判/並製/302頁/税込3,520円(本体3,200円+税)
    • ISBN 978-4-589-04208-8

    目次

    序文 なぜ、SDGsを問い直すのか?
    SDGs 17の目標
    第 1 章 SDGsと人間の安全保障の再考——新型コロナ危機とポスト/ウィズ・コロナを切り拓く

    <第 1 部 新型コロナ危機で「取り残される」人々とSDGs、レジリエンス>
    第 2 章 貧困層とSDGs——ポスト・コロナ時代の貧困撲滅と社会的保護
    第 3 章 難民とSDGs——地球社会のパイオニアとして
    第 4 章 移民・外国人労働者とSDGs——新たな連帯の構築に向かって
    第 5 章 災害弱者とSDGs——危険から誰一人取り残さないための思考
    第 6 章 女性・女子とSDGs——世界の未来を背負う人々
    第 7 章 高齢者とSDGs——高齢社会の可能性
    第 8 章 障害者とSDGs——取り残されてもなお生き延びるマイノリティ

    <第 2 部 ポスト/ウィズ・コロナとSDGs>
    第 9 章 グローバルヘルスとSDGs——ワクチン・ナショナリズムの克服に向けて
    第 10 章 教育とSDGs——教育のあり方を問い直す
    第 11 章 資本主義経済とSDGs——豊かさの意味を問い直す
    第 12 章 環境とSDGs——気候変動や生物多様性問題からみる社会変革の必要性
    第 13 章 平和とSDGs——新型コロナ禍のSDGsを支える平和と正義、強固な行政組織
    第 14 章 開発協力(ODA)とSDGs——新しいパートナーシップが切り拓く未来
    第 15 章 グローバル・ガバナンスとSDGs——グローバル・タックス、GBI、世界政府
    第 16 章 NGO・市民社会とSDGs——市民社会スペース、COVID-19対応支援、アドボカシー

    編者・執筆者

    • 野田真里 (編者、第1章)茨城大学人文社会科学部教授、同大学地球・地域環境共創機構兼務。国際開発学会本部事務局長、常任理事(大会組織委員長)、「持続可能な開発とSDGs」研究部会代表、「開発のレジリエンスとSDGs」研究部会副代表等を歴任。
    • 伊東 早苗(第2章)名古屋大学大学院国際開発研究科教授、国際開発学会第10期副会長
    • 佐藤 安信(第3章)東京大学大学院総合文化研究科元教授、同大学グローバル地域研究機構持続的平和研究センター元センター長、早稲田大学アジア太平洋研究センター特別センター員
    • 藤田 雅美(第4章)国立国際医療研究センター国際医療協力局連携協力部長、みんなの外国人ネットワーク(MINNA)運営メンバー
    • 佐藤 寛(第4章)開発社会学舎主宰、みんなの外国人ネットワーク(MINNA)運営メンバー、国際開発学会第8期会長
    • 小松 愛子(第4章)長崎大学大学院博士前期課程、みんなの外国人ネットワーク(MINNA)実施メンバー
    • 関谷 雄一(第5章) 東京大学大学院総合文化研究科教授、同大学グローバル地域研究機構持続的開発研究センター長、国際開発学会「開発のレジリエンスとSDGs」研究部会代表
    • 大谷 順子(第6章)大阪大学大学院人間科学研究科教授
    • 稲葉 美由紀(第7章)九州大学基幹教育院教授
    • 西垣 千春(第7章)神戸学院大学総合リハビリテーション学部教授
    • 森 壮也(第8章)日本貿易振興会アジア経済研究所前主任調査研究員
    • 神馬 征峰(第9章) 東京大学大学院医学系研究科元教授、日本国際保健医療学会前理事長
    • 北村 友人(第10章) 東京大学大学院教育学研究科教授、同大学大学院新領域創成科学研究科サステイナビリティ学グローバルリーダー養成大学院プログラム教授(兼任)
    • 劉 靖(第10章)東北大学大学院教育学研究科准教授
    • 芦田 明美(第10章)名古屋大学大学院国際開発研究科准教授
    • 大門(佐藤) 毅 (第11章) 早稲田大学国際教養学部教授、同大学国際平和戦略研究所所長
    • 蟹江 憲史(第12章) 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授、SFC研究所 xSDG・ラボ代表、Global Sustainable Development Report2023 執筆者
    • 森田 香菜子(第12章) 国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所主任研究員
    • 長 有紀枝(第13章)立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科・社会学部教授、難民を助ける会(AAR Japan)会長、人間の安全保障学会(JAHSS)第5代会長
    • 戸田 隆夫(第14章)明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科特別招聘教授、国際協力機構元上級審議役
    • 上村 雄彦(第15章) 横浜市立大学国際教養学部教授
    • 高柳 彰夫(第16章)フェリス女学院大学国際交流学部教授、国際協力NGOセンター(JANIC)政策アドバイザー

    本件にかんするお問い合わせ先

    法律文化社

    • eigyo [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)



    第12期1号理事候補選挙結果のお知らせ

    先日行われた次期(第12期)1号理事候補選挙の結果を踏まえ、下記19名の会員から了承を得られましたので、第12期1号理事に就任することが決まりました。就任(任期開始)は、2023年11月11日(土曜)に開催される第34回会員総会終了後となります。

    国際開発学会第12期1号理事

    (敬称略・五十音順)

    伊東早苗(名古屋大学)、小川啓一(神戸大学)、小國和子(日本福祉大学)、川口純(筑波大学)、北村友人(東京大学)、黒田一雄(早稲田大学)、樹神昌弘(神戸大学)、坂上勝基(神戸大学)、佐藤仁(東京大学)、佐藤寛(開発社会学舎)、澤村信英(大阪大学)、島田剛(明治大学)、杉田映理(大阪大学)、高田潤一(東京工業大学)、高橋基樹(京都大学)、藤掛洋子(横浜国立大学)、松本悟(法政大学)、山形辰史(立命館アジア太平洋大学)、山田肖子(名古屋大学)

    なお、第12期会長候補については、役員候補選出規程(下記参考をご参照ください)に基づき、上記19名から選出することになります。春季大会時(6月10日)に開催される第119回理事会で次期会長候補者を決定する予定です。

    専攻分野や地域、所属機関等のバランスを考慮して選任される2号理事の候補者については、6月10日夜に開催される第12期2号理事候補決定会合で決定し、会合後にご本人への打診を行います。候補者が確定した後、改めてご連絡いたします。


    (参考:国際開発学会役員候補選出規程の該当箇所。太字は事務局による。)

    第1条 学会定款第11条第1項にもとづき、次期会長・副会長・常任理事の各候補は、現任の理事会において選出し、次期理事会の了承を得たうえで、直近に開催される会員総会の出席者(委任者も含む)の過半数の承認をもって、会長・副会長・常任理事として正式に選任するものとする。

    第2条 現任の理事会が次期理事会及び直近に開催される会員総会に提案する会長候補は、次期1号理事に選出された者の中から現任理事5人以上の推薦にもとづき、現任の理事会での審議を経て決定する。会長候補の推薦・選考にあたって各理事は学識、学会への貢献、会務の円滑な執行の可能性を十分に考慮しなければならない。複数の会長候補の推薦があった場合は、現任の理事会出席者による投票において最も得票の多い者を候補とする。


    本件にかんするお問い合わせ先

    国際開発学会・本部事務局




    新刊案内:『争わない社会ー「開かれた依存関係」をつくる』(NHKブックス)

    会長の佐藤仁です。常日頃、学会へのご支援に感謝申し上げます。

    本日は私事で恐縮ですが、拙著『争わない社会』刊行のお知らせをさせてくだい。

    この本は近代社会が重視してきた自立や競争を根本から問い直し、その陰で悪者扱いされてきた「依存」の価値を再評価する本です。

    学会員の皆さんにとって関心のある対外援助も、「新しい依存先をつくる行為」として総括してみました。目次は下記の通りです。ぜひ各方面からご批判いただければと思います。

    なお、6月10日の秋田における春季大会では午後1のセッション時間帯の一部で書籍販売ブースにて著者割、落款付きで著者本人が手売りを行います(数量限定)。

    ご関心ある方は、ぜひブースにお運びください。

    目次

    序章 争わないための依存

    Ⅰ部 発展の遠心力――「自立した個人」を育てる

    第1章 競争原理――規格化される人々
    第2章 社会分業――特技を社会に役立たせる
    第3章 対外援助――与えて生まれる依存関係

    Ⅱ部 支配の求心力――特権はいかに集中するか

    第4章 適者生存――格差を正当化する知
    第5章  私的所有――自然をめぐる人間同士の争い
    第6章  独裁権力――依存関係を閉じる言葉

    Ⅲ部 依存の想像力――頼れる「中間」を取り戻す

    第7章  帰属意識――踏みとどまって発言する
    第8章  中間集団――身近な依存先を開く
    第9章  依存史観――歴史の土を耕す


    本件にかんするお問い合わせ先

    佐藤仁

    • satoj709 [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)



    ミャンマーの民主化を考える国軍による見せかけの「選挙」と日本からできること

    法政大学国際文化学部、法政大学大学院メコン・サステナビリティ研究所、特定非営利活動法人メコン・ウォッチが共催し、以下のセミナーを開催いたします。

    お時間、ご関心のある方はぜひご参加ください。会場の人数制限、オンラインでの参加のご連絡をお届けするため、事前申し込みが必要です。

    詳しくは以下の案内をご覧ください。

    FICオープンセミナー:ミャンマーの民主化を考える:国軍による見せかけの「選挙」と日本からできること

    2021年2月1日にミャンマー国軍が引き起こしたクーデター以降、同国では国軍や警察による民間人に対する暴力が継続し、多数の死傷者及び拘束者が発生している。

    クーデターから2年3ヶ月になる2023年5月初旬の国連の報告では、ミャンマーには推定180万人以上の国内避難民(IDP)(クーデター以降の新たな避難民150万)が存在する。

    国軍は無差別砲撃や空爆を続け、子どもを含む多数の民間人が死傷、やむを得ず武器を取った市民も増え、各地で武力衝突が発生し事態は混迷を極めている。

    日本政府はクーデター以降、ミャンマー国軍に対し、暴力の即時停止、拘束された関係者の解放、民主的な政治体制の早期回復を求めている一方、 7千億円にも上る円借款(政府開発援助)を継続するなど、ミャンマーへの経済支援は停止していない。

    国軍は各地で市民や少数民族武装勢力と戦闘を行い、また、自らに批判的な政党の活動を妨害したまま、「選挙」を実施しようとしている。この国軍の動きを日本政府が支援するのではないか、とミャンマーの市民社会からは強い懸念の声が上がっている。

    今回のセミナーでは、ミャンマー市民社会の声を集め発信してきたProgressive Voiceのキンオーンマー氏をゲストに招き、市民社会がなぜ「選挙」に反対しているか、また、日本からどのような支援を求めているか話を伺い、議論する。

    開催概要

    • 日時:2023年6月4日(日曜)13:30-16:00(開場13:00)
    • 場所:法政大学市ヶ谷キャンパス・ボアソナードタワー3階マルチメディアスタジオ(BT0300)およびオンライン
    • 共催:法政大学国際文化学部、法政大学大学院メコン・サステナビリティ研究所、NPO法人メコン・ウォッチ
    • 協力:NPO法人アーユス仏教国際協力ネットワーク、国際環境NGO FoE Japan、NPO法人日本国際ボランティアセンター(JVC)、武器取引反対ネットワーク(NAJAT)

    申込みフォーム

    こちらにご記入ください。

    プログラム(予定)

    1. 「ミャンマー情勢、市民社会の望む支援」
      発表者:キンオーンマー(Progressive Voice)英語、逐次通訳付き
    2. 「ミャンマー国軍と日本の資金的なつながり」
      発表者:木口由香(NPO法人メコン・ウォッチ事務局長)
    3. 「議論・意見交換」
      モデレーター:松本悟(法政大学国際文化学部教授)

    キンオーンマー氏

    (民主化・人権運動家。NGO Progressive Voice 創設者・会長)

    大学時代から民主化運動に参加し、1988年の軍事クーデターでタイ国境に逃れた。以降、海外を拠点にミャンマーの民主化を目指す世界各国の団体の調整を担っている。

    Progressive Voice(プログレッシヴ・ヴォイス)

    ミャンマーに連邦制の民主主義がもたらされることをめざして活動する調査・政策提言団体。ミャンマーにおける民主主義と人権を求める諸団体の連合であったビルマ・パートナーシップを前身とする。ミャンマー全土の草の根団体との協力関係を活かし、ミャンマーの市民社会からの声を国際社会に伝える架け橋の役割を果たしている。


    本件にかんするお問い合わせ先

    NPO法人メコン・ウォッチ

    • info* [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)
    • 電話:03-3832-5034(開催前日と当日は不在にしております。メールでご連絡ください)



    佐藤仁学会長が、参議院のODA特別委員会で「ODA大綱の改定」について参考人として意見陳述

    2023年4月28日、佐藤仁会長(東京大学東洋文化研究所 教授)が「政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会(第五回)」の参考人として出席しました。

    『我が国の開発協力をめぐる諸課題と開発協力大綱の在り方に関する件』について、京都大学大学院法学研究科の中西寛教授らとともに意見を述べ、質疑に対応しました。




    会長からの手紙(2023年2月)

    第11期の2年目を振り返って

    国際開発学会の皆様、こんにちは。今年も、昨年度と同じように学会活動の1年間を振り返ったハイライトをみなさんにお届けします。これは、各委員会の活動報告を行う総会にご参加いただけなかった会員のみなさんに対して、学会活動の要点をお知らせするものです。

    昨年度の活動としてまずお伝えしたいのは、ロシアのウクライナ侵攻に対して学会として声明を発出し、日本と英語でHPに掲載したことです。学会として政治的な声明を出すことについては理事会の中でも賛否がございましたが、多くの皆様の賛同を得ることができたこと、そして何よりも、学会として世界のアクチュアルな問題への対応方法を常任理事の間で議論できたことが大きな収穫だったと思っています。今後も世界が難しい局面に入るごとに、学会としてどのように立ち居振る舞いをすべきなのか、議論してまいりたいと思います。


    さて、第11期はvisible, inclusive, entertaining の旗印を掲げて、2年目を無事に終えることができました。総会を明治大学にて対面で実施できたことは何よりうれしいことでしたし、400名以上の参加登録があったことは、みなさんがこの大会を待ち望んでいたことの表れでもあると思います。発表の合間に廊下やホールで見かけたおしゃべりの環、学会賞受賞者のスピーチやそのあとの写真撮影と談笑、旧友との思いがけない再会など、対面開催ならではの偶発的な喜びに満ちた大会でした。実行委員長の島田剛先生とスタッフの皆様に改めて御礼申し上げます。

    執行部の今年度の活動は、着手した活動をしっかりと定着させ、安定軌道に乗せることに力点をおきました。いくつか特筆すべき活動をあげるとすると、次のようなものがあります。

    まず、Visibleについては、選挙管理委員会のイニシアチブにより、学生会員の主導によってYouTubeやツイッターの発信を実施しました。また、人材育成委員会では継続的に(学部生向け)論文コンテストを実施し、前年度より多くの10篇の応募をいただき、その中から3篇を学会誌に掲載しました。学部生の開拓は未来の開発研究者・実務者を育てるうえで大切な事業であります。

    学会賞の方も、応募数が昨年度5件から、今年度13件と激増し、良質の作品を審査して3点に賞が出せたことは大きな成果でありました。社会連携委員会では、今年も外務省主催のグローバルフェスタにも出展し、「国際協力におけるキャリア形成」というセッションを設けて、若いみなさんを中心に100名の参加者を得ることができました。HPやメーリスを中心とする広報委員会の業務は、visibleであり続けるために重要な役割を果たしています。たとえば10月1ヶ月間のサイト全体のページ表示回数は約50,000回に上りました。

    Inclusive については、まず地方展開委員会の活動をあげなくてはなりません。地方展開委員会では、2021年の全国大会、2022年の春季大会でラウンドテーブルセッション 「日本の地域から問い直す国際開発アジェンダ」 「日本の地域から問い直す国際開発アジェンダ(実践編)」 を企画し、 福岡、高知、岡山、岩手、秋田に拠点をおく学会員、地域づくりという関心を同じくする非学会員とのネットワーク構築に貢献しました。この委員会が縁となり、2022年春の福岡大会に続き、2023年春の秋田大会へと地方での学会開催の輪を広げることができました。

    また、科研費(国際情報発信強化)を用いた特集号の編集体制の確立、原稿集め、査読、そして次号に向けた国際ワークショップ(@チュラロンコン大学)の段取りができたのも大きな成果でした。この科研費を利用した外国人会員のさらなる開拓、日本留学帰国組とのネットワーク化など、inclusive の範囲を海外に展開していきたいと考えています。

    また、様々な障害をおもちの会員にできるだけ大会に参加してもらえるよう、ニーズの把握を務めたのもの今年の活動でした。次年度は、合理的な配慮に関するタスクフォースを設けて、アドホックではない配慮のあり方について議論し、その成果を実施したいと考えています。

    最後にEntertaining については、引き続き学会誌の魅力を高めるための新たなデザインの検討を行いました。特に、次年度は英文特集号が加わる節目の年でもあります。表紙のデザインは会員の皆様に参加型で投票していただきました。3月には新しい表紙での最初の雑誌をお届けできると思います。どうかお楽しみに。


    このほかにご報告すべき活動として、研究×実践委員会では2021年全国大会において、JICAが新たに推進しようとしている「クラスター・アプローチ」に対して研究者や委員会メンバーが意見を述べるラウンドテーブルを開催しました。この試みはJICA側からの評価も高く、その後2022年4月まで4回に渡って意見交換会を継続しました。こうした実務者と研究者との成熟した関係が構築できるようになったのは、両者が相まみえる「場」を本学会が長年提供し続けてきたことの帰結といえましょう。

    こうした一連の事業を持続的なものにするためには、事務局が無理なく稼働できる体制が不可欠です。大会運営における特別ソフト confit の導入は、こうした省力化の努力の一環です。これらの着実な前進の背景には、多くの invisible な努力があります。各委員会の委員長や委員の皆さんはもちろんですが、事務局や広報委員会のスタッフは日常的な裏方として日々の業務をこなしてくれています。本当にありがとうございます。

    明治大会でのプレナリーでは「グローバル危機にどう向き合うか―国際開発学の役割」と題して充実した議論を行いましたが、「危機と方向感覚」と題した私の講演に対する反応として、私の尊敬するあるシニアの会員から加藤周一の次のような引用が励ましの言葉と共に送られてきました。これは、加藤が1946年の雑誌『世代』(1946年3月号)に書いたエッセイの一部で、つい昨日まで好戦的だった日本の青年が良心の呵責もなく平和主義者に変わってしまうという日本青年の現状について書いている部分です。

    「かなりの本を読み、相当洗練された感覚と論理を持ちながら、凡そ重大な歴史的社会的現象に対して新聞記事を繰り返す以外一片の批判もなしえない」

    『世代』(1946年3月号)

    論文を書くことは重要ですが、現実世界とのつながりに基づく方向感覚を失いたくないものです。学会は学問成果を取り交わすとこであると同時に、自分たちがどこに向かっているのかを確認する羅針盤のような機能を果たさなくてはいけないのかもしれません。引き続き、会員諸氏の叱咤激励をお願いする次第です。


    第11期の最後となる2022年11月からの1年は、着手済みの変革をさらに開花させ、最終年にはさらによい報告ができるよう努力してまいります。会員の皆様の一層のご支援をお願いする次第です。

    2023年1月
    第11期会長 佐藤仁(東京大学)

    Letter from the President
    Reflecting on the Second Year as the 11th President




    第33回全国大会セッション報告(企画セッション)

    企画セッション


    B-2.ウクライナ紛争と中東・北アフリカ地域の食糧不安・危機
    ――レバノン・エジプト・チュニジアの事例より

    • 2022年12月3日(土曜)09:45 ー 11:45
    • 企画責任者:井堂有子(日本国際問題研究所)
    • 司会:佐藤寛(アジア経済研究所)
    • 討論者:河村有介(神戸大学)

    発表題目と発表者

    1. 「中東・北アフリカ地域における食糧安全保障の共通課題―構造的脆弱性の背景―」
      井堂有子(日本国際問題研究所)
    2. 「レバノンの食料不安―金融危機と難民流入―」
      土屋一樹(アジア経済研究所)
    3. 「エジプトにおける食糧『危機』が直撃する脆弱層」
      岩崎えり奈(上智大学)、井堂有子(日本国際問題研究所)
    4. 「チュニジアにおける食料安全保障の構造的課題と食料主権」
      山中達也(駒澤大学)

    第33回大会全体テーマ「グローバル危機にどう立ち向かうべきか―紛争、食料高騰、飢餓」に呼応する形で、本企画は「ウクライナ紛争と中東・北アフリカ地域の食糧不安・危機」というテーマで4つの報告を行った。

    2022年2月に発生したロシアのウクライナ侵攻と黒海封鎖、さらに対ロシア経済制裁は、サプライチェーンを通じて相互依存を深めてきた世界全体に衝撃を与えたが、特に主要穀物を両国からの輸入に大きく依存してきていた中東・アフリカ地域は直接的打撃を受けた。

    本企画セッションでは、中東・北アフリカ(MENA)地域の共通課題とともに、特に注目されるレバノン、エジプト、チュニジアの個々の構造的課題を掘り下げることを目的とした。

    ウクライナ戦争以前から、同地域は2010-11年以降の幾度かの「アラブの春」、広範囲な抗議行動、世界的感染拡大、金融危機、極度のインフレ、気候変動による異常気象といった複合危機にすでに見舞われてきていた。こうした中での黒海封鎖は、この地域の食糧不安をさらに深刻化させ、政治危機を招く要因になりうる。

    第一の発表は、企画の趣旨説明として、約6億の人口を擁するMENA地域に共通する構造的課題の論点整理(気候変動への脆弱性、穀物輸入依存、「社会契約」としての食糧補助金、食糧援助)を行った。この地域では主要穀物(小麦)を国内生産でではなく海外輸入に依存する傾向が強まってきたが、この背景として、農業生産向上を阻む気候・地理条件に加え、広く実施されてきた食糧補助金制度、外部要因としての食糧援助の影響を指摘した。

    第二の発表では、ウクライナ危機以前、レバノンが既に深刻な金融危機(世界ワースト3位内)や政治的混乱、財政破綻等、度重なる危機に直面していたことが解説された。この背景として、脆弱な経済構造(送金・観光経由の外貨頼み、対外債務高)に加え、レバノン人380万~500万人に対してシリア難民150万人とパレスチナ難民1.6万人の受入れ等、元々厳しい状況にあったところ、低い小麦自給率(20%)もあり、黒海封鎖で市民と難民双方の食糧不安がさらに深刻化したことが報告された。

    第三の発表では、小麦輸入大国エジプトの家計調査データ(2010年代後半)の分析から、食糧不安に最も脆弱な層と彼らの生存戦略の詳細が明らかにされた。エジプトの小麦輸入相手先は米国一辺倒から多角化の時代を経て、2020年頃にロシア・ウクライナに集中するようになっていた。食糧補助金の大半を占める小麦のパン配給制度は同国の「社会契約」を象徴してきたが、危機の際には脆弱層の命の綱となってきたことが報告された。

    第四の発表では、革命期チュニジアの政治経済危機に関して、経済構造の諸課題が詳細に解説された。「アラブの春」唯一の成功例とされたチュニジアであっても、残存する縁故資本主義で硬直化した市場とFDIの停滞、30%もの高学歴失業者、インフォーマル部門の肥大化、財政赤字と対外債務の増大、低生産で脆弱な農業部門の現状により、コロナ禍以前において国民の4人に一人が中程度以上の食糧難に直面していた。こうした構造的悪循環を脱するため、国内穀物の半分を生産する小規模農民を中心としたチュニジアの市民社会による食料主権の樹立を求める動きが紹介された。

    討論者からは、地域の共通課題に対して、ロシア・ウクライナ産穀物への過度な輸入依存には経済的要因だけでなく政治的要因もあるのか、なぜ一般的な社会保障制度よりMENA地域では食糧補助金が大きな役割を果たしているのか、との質問がなされた。

    個別発表に対しては、(1) レバノンでのシリア難民受入れ、パン価格引き上げへの国民の反応、国連の支援スキームの多くが現金給付であるのはなぜか、(2) ウクライナ危機がエジプトの社会保障改革に与える影響、(3) チュニジアにおける食料主権の主体は誰なのか、あるべき農業政策(戦略)とはどのようなものか、といった質問がなされ、発表者との議論が続いた。

    初日午前の時間帯であったにもかかわらず、対面・オンライン併せて40名程度の参加を得た。

    (報告:井堂有子)


    B-3.中東における『障害と開発』

    • 2022年12月3日(土曜)12:50 ー 14:50
    • 企画責任者:森 壮也(ジェトロ・アジア経済研究所)
    • 討論者:小林 昌之(ジェトロ・アジア経済研究所)、長田 こずえ(名古屋学院大学)、細谷 幸子(国際医療福祉大学)、小村 優太(早稲田大学)、長沢 栄治(東京大学)、戸田隆夫(明治大学)

    発表題目と発表者

    (報告:森 壮也)


    B-4.信頼と開発協力:研究の到達点と今後の課題

    • 2022年12月3日(土曜) 12:50 ー 14:50
    • 企画責任者:石塚 史暁(東京大学)
    • 座長:佐藤仁(東京大学)
    • 討論者:佐藤 寛(日本貿易振興機構アジア経済研究所)

    発表題目と発表者

    • 大塚 高弘(独立行政法人国際協力機構)
    • 林 伸江(独立行政法人国際協力機構)
    • 大友 彩加(独立行政法人国際協力機構)

    冒頭、座長より本テーマの意義について触れた後、事例分析の結果についての結果について3名(林:留学生受入事業、大塚:ボリビア国水資源管理技術協力、大友:フィリピン鉄道マスタープラン。いずれも所属は国際協力機構)より発表した。

    発表では、いずれも信頼と開発協力に係る問題を、過去の事例分析を通じて扱った。林は関係者間の信頼関係が留学生の満足度に与えた影響、大塚はカウンターパートが頻繁に交代する国・地域における信頼の引継ぎ、大友は過去の実績の蓄積による信頼と案件実施中に新たに構築される信頼の構築過程を統合的に分析した。

    これに対し、討論者(佐藤寛・アジア経済研究所)より、日本の地方部における外国人に対する信頼の問題や、ODAの技術協力スキームにおける信頼の位置づけ、開発協力における信頼の構成要素などについてコメントがあった。加えて、フロアの参加者からも以下のような質問・コメントがあり、座長・発表者を交えて活発な意見交換を行った。

    「信頼」は「安心」や「信用」と区別して議論すべきではないか。

    (留学生の)満足度と信頼はかならず相関するものといえるのか。

    (モノなど)非人間的な要素に対する信頼はありえるか(信頼はどこまで属人的か)。

    日本企業以外が受注するアンタイド案件における日本への信頼はどう考えられるか。

    時代の変化に伴って開発協力における信頼の役割はどのように変化してきたか。

    個人・組織・国という信頼の主体を区別して議論すべきではないか。

    信頼は開発の目的になりえるのか(現場としては違和感あり)。

    信頼の効果を捉えるため信頼が得られなかった案件との比較をしてはどうか。

    セッションで提示された問いの幅は、開発研究における信頼というテーマがさらに深堀すべき要素を多く含んでいることの証左である。今後も、研究を継続したいという気持ちを強くした。なお、セッション参加者は約60名(会場:約15名、オンライン:約45名)で、議論は大変活発であり、この分野に対する高い関心が感じられた。

    (報告:佐藤仁)


    B-5.The ‘Easternisation’ of Development: The politics of East Asia’s Developmentalist Cooperation

    • 2022年12月3日(土曜)16:50 ー 18:50
    • 企画責任者:伊東 早苗(名古屋大学)
    • 司会:藤川 清史(愛知学院大学)
    • 討論者:佐藤 仁(東京大学)、KIM Soyeun(Sogang University)

    発表題目と発表者

    1. ”The Easternization of Development: The Politics of East Asia’s Developmentalist Cooperation”
      伊東 早苗(名古屋大学)
    2. ”The Politics of East Asian Developmentalism: Paradigms, Practices and Prospects of Foreign Development Assistance”
      von Luebke Christian(コンスタンツ応用科学大学)
    3. Huan Meibo(上海対外経貿大学)
    4. Wang Zhao(上海対外経貿大学)

    本企画セッションは、対面とオンライン合わせて約30名ほどの参加者があり、盛況であった。藤川清史会員(愛知学院大学)による司会のもと、4名による研究報告を予定していたが、大会直前になって、急遽、上海対外経貿大学の報告者2名(Meibo Huan氏 およびWang Zhao氏)が不参加となった。

    彼らの報告を期待して参加くださった会員の皆様には、深くお詫びしたい。一方で、報告者2名(Sanae Ito, ”The Easternization of Development: The Politics of East Asia’s Developmentalist Cooperation”およびChristian von Lübke, ”The Politics of East Asian Developmentalism: Paradigms, Practices and Prospects of Foreign Development Assistance”)の報告後、討論者2名(佐藤仁会長/東京大学、およびSoeun Kim会員/Sogang University)およびフロア全体を巻き込む諸議論に十分な時間を費やすことができ、その意味で、大変有意義なセッションであった。

    2名の報告内容は、ポスト2015時代における開発協力のパラダイムシフトと、近年の、日本、韓国、中国による国益重視型開発協力をめぐる政治的力学を「開発主義国家」概念と合わせて論じるものであった。

    報告者によると、国益重視の開発協力は、「持続可能な開発目標SDGs」を推進する国際社会が民間セクターとの協働を促進する動きと連動している。また、それぞれの東アジア諸国が「非欧米型開発モデル」という言説を掲げ、欧米先進国が先導する開発アプローチに代わる「オータナティブ」を標榜しがちな状況とも連動しているとする。

    具体的な事例として、日本政府による「質の高いインフラ事業」がとりあげられ、日本企業によるインフラ投資を促進するためにODAが戦略的に使われていることを「開発主義国家的な産業政策の復活」として議論した。

    討論者からは「開発の東洋化」という概念にどのような意味があるか、また、国内産業の振興を目的とする産業政策が外交面で開発協力政策と接続する場合の距離感等についてコメントおよび質問があった。さらに、「開発の南化」や「Blended Finance」といった概念に関わる研究と実践上の動向について、知見の共有がなされた。

    フロアからは、グローバル社会の動向と東アジアの動向を区別できるか、開発実践の現場における民間企業の本音はどこにあるか、といった論点が指摘された。また、開発主義国家の定義や、その多様な側面について当該分野の専門家からコメントがあり、学びの多い議論につながった。

    (報告:   )


    B-6.包摂的な産業開発は可能か―アフリカにおけるものづくりの現場から

    • 2022年12月4日(日曜)12:45 ー 14:45
    • 企画責任者:井手上 和代(明治学院大学)
    • 討論者:黒川 基裕(高崎経済大学)、渡邉 松男(立命館大学)

    発表題目と発表者

    1. 「アフリカにおける製造業の『失われた中間』を問い直す―ソファ製造の多系的発展の事例から―」
      高橋 基樹(京都大学)
    2. 「ケニアの小規模零細金属加工業者のものづくりと資金調達 ―企業者的能力に着目して―」
      井手上和代(明治学院大学)
    3. 「支援を渡る―政府と国際援助機関によるエチオピア皮革産業の現地企業への影響―」
      松原加奈(東京理科大学)
    4. 「ザンビア・ルサカにおける障害者団体の技能訓練と生産活動―技能形成に着目して―」
      日下部 美佳(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)

    本セッションには、対面で11名、オンラインで11名の参加があった。本セッションは、「アフリカ・アジアにおけるものづくり」研究部会の活動を踏まえ、その成果を学会に還元することを念頭に置いて企画したものである。

    アフリカ諸国が21世紀初頭からの高度成長を経てかえって強まった資源・一次産品への依存からの構造転換のために、ものづくり・製造業の現状を、実証研究を通じて考察することが要請されている。そこで必要なことは、多くの人が経済活動の担い手として参加する包摂的な開発が実現されてゆくことである。

    最初の報告「アフリカにおける製造業の『失われた中間』を問い直す―ソファ製造の多系的発展の事例から―」(高橋基樹会員・京都大学)では、ケニア・ナイロビのソファ製造の複数のクラスターを取り上げ、製品について生じた革新的な知識が異なる業者の間で容易に共有される開放的なケースと知識が秘匿される閉鎖的なケースがあることが指摘された。それは従来の「失われた中間」=二重構造論では捉えきれない多系的な発展とそれに応じた包摂が生じている可能性を示唆するものである。

    続く「ケニアの小規模零細金属加工業者のものづくりと資金調達 ―企業者的能力に着目して―」(井手上和代会員・明治学院大学)では、ナイロビの金属加工業の資金調達と企業者能力について、製品と技術(機械化の程度)が異なる二つの地区の業者への聞き取り調査に基づき論じた。長期資金需要の相対的多さにもかかわらず、金融市場における機会が狭められており、機械化の進んだ事業者も自己資金への依存率が高く、金融機関からの借り入れが限られていることが分かった。事業者の企業者能力はそうした生産環境の負の要因を補うために発揮されている。

    「支援を渡る―政府と国際援助機関によるエチオピア皮革産業の現地企業への影響―」(松原加奈会員・東京理科大学)は、最初にエチオピアの革靴産業と産業政策の歴史を跡付けた。それを踏まえて、異なる3つの規模の企業が受けてきた支援を詳述し、小企業にも政府による外国援助を活用した支援が及んでいることを指摘する。各企業は異なる複数の支援を渡りつつ恩恵を受けるものの、逆に支援を渡ることができずに廃業に追い込まれる場合があり、包摂が不均等なかたちで生じていることが示された。

    「ザンビア・ルサカにおける障害者団体の技能訓練と生産活動―技能形成に着目して―」(日下部美佳会員・京都大学博士課程)は、福祉用具に携わる障害者団体の活動に着目し、個々人の技能の熟練及び多能工化と活動参加前の教育や技能の習得とがどのように関わっているかについて考察した。技能形成とものづくりという障害者の開発への主体的な参加が団体の存在によって可能となっている。

    各報告に対して黒川基裕会員(高崎経済大学)、渡邉松男会員(立命館大学)から、理論的枠組みを踏まえた議論の陶冶に向けた助言や、考察をさらに深めるための問題の提起がなされた。これらは上記研究部会での議論を進展させるために非常に有益なものであり、本セッションを開催した意義を確認することができた。

    (報告:井手上 和代)


    B-7.開発途上国におけるミクロ実証分析

    • 2022年12月3日(土曜)09:45 ー 11:45(オンライン発表)
    • 企画責任者:島村 靖治(神戸大学)
    • 討論者:樋口 裕城(上智大学)、倉田 正充(上智大学)、會田 剛史(アジア経済研究所)

    発表題目と発表者

    1. 「女性自助組織活動と公的雇用保証政策は女性の民間での雇用にどのような影響を及ぼしたのか?―インド・アーンドラ・プラデーシュ州農村部の事例―」
      佐藤 希(愛知学院大学)
    2. 「地域内における資源配分と消費水準との関係の探求―マラウイの農業用投入資材補助金政策を事例としてー」
      藤田 茜(神戸大学)
    3. 「インドネシア医療ボランティアの活動報酬に対する選好―離散選択実験による実証分析―」
    4. 劉 子瑩(神戸大学)
    5. 「ベトナム中部の村落医療施設における医療従事者の利他性の分析」
      島村 靖治(神戸大学)

    本セッションでは開発途上国におけるミクロデータを用いた実証分析に関する4つの報告が行われた。

    第1の発表では、インド、アーンドラ・プラデーシュ州農村部の女性の自助組織活動と全国農村雇用保障法(NREGA)による雇用保証事業との関係、ならびにNERGAの民間雇用への影響に関する分析結果が報告された。そして、コメントとして、自助組織活動への参加によってNREGAの効果に違いがみられる理由をより丁寧に分析し議論すべきとの指摘があった。

    第2の発表では、マラウイの農業投入資材補助金政策を題材に地域内における資源配分と地域全体の平均的な一人あたり消費水準との関係に関する分析結果が報告された。コメントとしては、地域や地域内における資源配分の捉え方の手法を再検討した上で結論についてもより丁寧に議論すべきとの指摘があった。

    第3の発表では、インドネシア、ジョグジャカルタ郊外で活動する医療ボランティアの活動報酬に対する選好がボランティアの利他性により異なることを見出した分析結果が報告された。一方で、コメントとして、結果の解釈にあたっては純粋利他性と不純利他性の違いを考慮に入れて行うべきとの指摘があった。

    第4の発表では、ベトナム中部の村落医療施設(CHC)で働く医療従事者の利他性の分析を行い、医療従事者の利他性は同じCHCで働く同僚の利他性と強い相関関係があることが報告された。他方、コメントとして、そうした相関が生じる理由がピア効果なのか、社会における職業的なソーティングなのかを峻別すべきとの指摘があった。加えて、医療従事者の人数が増えたCHCほどその効果が大きくなるメカニズムについても探求すべきとの指摘もあった。

    そして最後に、4つの発表すべてについての質疑応答の時間があり、それぞれの研究の今後の発展可能性について活発な議論が行われた。

    (報告:島村 靖治)


    B-8.ジェンダーと開発

    • 2022年12月4日(日曜) 09:30 ー 11:30
    • 司会:高松香奈(国際基督教大学)
    • コメンテーター:菅野美佐子(青山学院大学)

    発表題目と発表者

    1. 「バングラデシュにおけるマイクロファイナンスと女性のエンパワメント」
      本間まり子(早稲田大学)
    2. 「ネパールの家族農業における変化への対応」
      甲斐田きよみ(文京学院大学)
    3. 「南スーダンでの全国スポーツ大会を通じたスポーツとジェンダー」
      古川光明(静岡県立大学)

    ジェンダー平等と女性のエンパワメントの推進は、持続可能な開発目標(SDGs)をはじめ、開発における重要な取り組み課題として認識されている。しかし、SDGsの達成度やジェンダー格差指数が示すように、これらの課題を解決するための取り組みは、未だに十分であるとは言えない。

    こうした状況において、実務者と研究者が活動報告や情報共有、調査や啓発活動のためのアプローチなどを紹介することにより、ジェンダーと開発を考えるうえでの課題や可能性について検討することを目的に「ジェンダーと開発」研究部会が、2022年8月に設立された。

    本企画セッションでは、家父長制下で制約を受けている女性に焦点をあて、研究部会の有志会員が関わってきた事例を紹介した。コロナ禍において、女性は以前より増して不利な状況におかれている。しかし、受動的な弱者として位置付けるのではなく、変化を引き起こす主体として位置付けるために、国際協力を通じ何が出来るのか検討した。

    セッションの冒頭で、司会の高松会員より、研究部会の目的や活動内容の紹介をおこなった。続いて本間会員の発表では、バングラデシュのマイクロファイナンス事業の参加女性たちの融資金の利用について、コロナ禍の影響と関連した現状及び今後の調査計画が共有された。

    甲斐田会員の発表では、ネパールの先住少数民族で最貧困層のダヌワールを対象にした聞き取り調査結果に基づいて、様々な社会経済状況の変化に対する農民の対応を、ジェンダー視点で分析し、性別役割分業やジェンダー規範の影響が報告された。

    古川会員の発表では、南スーダンのジェンダーとスポーツに関連して、スポーツ大会がジュバ女性市民のスポーツ参加やスポーツを継続することの認識への与える効果について、質問票調査を通じた検証がなされた。

    コメンテーターの菅野会員からは、各研究報告に対してより理解を深めるとともに、今後、研究を更に発展させるためのヒントとなるような質問やコメントが行なわれた。セッション参加者のうち、研究部会の新規登録者が数名あり、今後の活動に繋がった。

    (報告:高松香奈)


    A. 一般口頭発表

    C. ラウンドテーブル

    D. ブックトーク、プレナリーほか

    第33回全国大会を終えて




    第33回全国大会セッション報告(前夜祭、ブックトーク、プレナリーほか)

    P. 前夜祭

    現代アフリカの開発における課題
    ―危機下の市民生活から

    • 2022年12月2日(金曜)18:00 ー 20:00
    • 企画責任者:林 愛美(日本学術振興会/大阪公立大学)
    • 討論者:佐藤 光(明治大学)、山崎 暢子(京都大学・ハーバード大学)、笹岡 雄一(明治大学)、佐久間 寛(明治大学)

    前夜祭の趣旨は以下の通りである。サハラ以南アフリカの多くの地域では、独立を経験してから60年以上が経った。近年、アフリカ社会は民主化やグローバルな資本主義経済化、そして開発プロジェクトの影響を受けて急激な変化を経験してきた。

    また、現在はCOVID-19という世界的な感染症の危機の只中にある。こうした環境の変化や危機において、開発途上であるアフリカ社会では、支援と開発が必要とされている。しかしそのためには、アフリカの人びとがどのような危機に置かれており、どのような支援が必要であるかをまず明らかにする必要がある。したがって本企画では、現代のアフリカにおける開発と市民生活の課題について、それぞれの研究者のフィールドから報告を行った。

    まず第1発表者の佐藤は、COVID-19の危機に際して生活困窮者が増加する中、アフリカ諸国で社会保障制度の強化が急速に進められている状況に着目し、非民主主義国が多いサハラ以南アフリカにおいて社会保障を整備する上での課題についてジンバブエの事例を取り上げ、民主化が進んだ南アフリカと比較しながら考察を行った。

    第2発表者の山崎は、ウガンダの地方都市において交通インフラ整備といった開発事業が労働移動の契機となって地方の都市化を推し進めた一方、地方住民の生活に大きな影響を与えている点を指摘し、現代の地方都市住民の就労上の課題について論じた。

    第3発表者の林は、ケニア西部の村落部において女性器切除という慣習を廃絶しようとする運動が市民社会組織によって展開されているものの、相互扶助的な地域社会においては両者の間でコンフリクトが生じていることを報告した。  

    以上の発表に対して第1コメンテーターの笹岡からは、特に佐藤に対して民主化過程が社会保障制度の形成にどのようにつながっていくのか、また、外部からの財政的支援とはどのようなものかという質問がなされた。一方、外部支援に頼ることは、アフリカの社会保障制度の構築につながることになるのかという指摘も行われた。さらに、3名の発表の接合がうまく見出されていない点が企画の課題として挙げられた。

    第2コメンテーターの佐久間は、本企画においてアフリカが「危機の大陸」として漠然と想像されているが、研究者はそれが誰にとって、どのような危機であるのかをより具体的に明らかにする必要があると指摘した。そうした作業の先にそれぞれの研究の接合が見出される可能性があるとした。各発表に対してはフロアからも多数の質問が寄せられ活発な議論が交わされた。発表者は新たな課題を得ることができ、充実したセッションとなった。

    (報告:林 愛美)


    D. ブックトーク

    • 2022年12月4日(日曜)09:30 ー 11:30(リバティタワー1F 1011)
    • 企画責任者・モデレーター(学会誌編集委員会、ブックトーク担当):芦田明美(名古屋大学)、佐藤寛(アジア経済研究所)、道中真紀(日本評論社)

    本ブックトークセッションでは会員による近刊4冊の書籍についての紹介が、著者および出版社の編集担当者よりなされ、出版にいたったきっかけや経緯、苦労等が共有された。討論者からは、内容を踏まえての貴重なコメントが提供された。参加者はオンライン・対面双方含め30名以上にのぼり、活発な質疑応答となった。

    D-1.月経の人類学―女子生徒の「生理」と開発支援

    • 2022年6月、A5版、304ページ、3,850円
    • 報告者:杉田映理(大阪大学)、新本万里子(広島市立大学)
    • 担当編集者:大道玲子(世界思想社)
    • 討論者:佐藤寛(アジア経済研究所)

    月経は、いまやグローバルな課題となっている。国際開発の現場では、女子教育の向上、ジェンダー平等、水衛生分野における女性への配慮、女性のリプロダクティブ・ライツ/ヘルスなどの観点から2010年代前半から月経衛生対処が開発支援の対象とされた。

    月経衛生対処(略称MHM)とは、生理用品へのアクセス、生理用品を取り替えやすいトイレや水回り、生理用品の廃棄設備が整備されており、月経に関する「適切な」知識へのアクセスがある状態を指す。一方、月経はそれぞれの文化に深く根差した慣習やタブーが存在する。MHM支援が広がる潮流のなかで、地域に固有の文化的慣習や月経観は、いま揺らいでいる。 

    本書では、第1部で、月経をめぐる国際開発の動向を整理する。第2部では、世界8か国における女子生徒の月経対処について、ローカルな月経対処の文脈と実態を明らかにする。各地で実施したフィールドワークに基づく情報をもとに、月経対処の「今」を同時期にとらえる。第3部では、第2部でとらえた各地の実態を比較検討することで、国際開発による支援を月経対処に及ぼすときに何を検討する必要があるのか、その示唆を抽出する。


    D-2.紛争後の東ティモールの環境管理:平和構築・国際協力におけるコミュニティの役割

    • 2020年2月、A5版、208ページ、4,450円
    • 報告者:宮澤尚里(早稲田大学)
    • 担当編集者:大江道雅(明石書店)
    • 討論者:石塚勝美(共栄大学)

    紛争直後の東ティモールにおける、3年半のフィールド調査に基づく実証的研究の成果である。紛争後の国家が紛争状態に後戻りしない「平和と安定の国造り」を目指すにあたり、紛争後の環境資源問題に取り組むことの重要性を喚起する。そして、紛争後の平和構築プロセスにおける環境管理の具体的政策の検証結果を考察した。


    D-3.Millennial Generation in Bangladesh: Their Life Strategies, Movement, and Identity Politics

    • 2022年3月、A5版、222ページ、USD 21
    • 報告者:南出和余(神戸女学院大学)
    • 担当編集者:Mahrukh Mohiuddin(The University Press Limited, Dhaka, Bangladesh)
    • 討論者:村山真弓(アジア経済研究所)

    1990年代生まれの現在の若者世代は、バングラデシュ人口の最多世代を占め、同国の政治経済社会の大きな変化を経験している。彼らは1971年のバングラデシュ独立から20年後に生まれ、誕生以来、絶えず開発の取り組みの対象となり、国際援助、グローバル経済、イスラーム化などの直接的影響を受けながら育ってきた。さらに、グローバルな文脈では「ミレニアルズ」と呼ばれる世代である。グローバル化の傾向の中で、彼らは移住や職業の変化を通じて、社会を変革する大きな可能性を占めている。

    本書は、現代バングラデシュの、特に都市部の若者の生活戦略、社会運動、アイデンティティ・ポリティクスについて論じる。グローバル化の様相は社会階層ごとにあまりにも多様であるが、どの階層もその影響を受けている。グローバル化時代における同世代の共通性と多様性こそが同世代の特徴であり、本書はそれを詳細に把握する。

    1990年代生まれの若者世代に焦点を当てることは、バングラデシュ研究のみならず、グローカルな環境における「若者と社会」研究に重要な議論をもたらす。またその民族誌的記述は、バングラデシュの若者のダイナミックな実態を理解する上で読者を惹きつけるだろう。


    D-4.国際協力NGOによる持続可能な開発のための教育: SDGsのための社会的実践を通じた学び

    • 2022年7月、B5判、168ページ、1,892円
    • 報告者:三宅隆史(シャンティ国際ボランティア会)
    • 担当編集者:なし(デザインエッグ社)
    • 討論者:小松太郎(上智大学)

    本書は第一に、日本の国際協力NGOは、多様な 国内事業(教育、広報、情報伝達、社会的実践)を通じていかにして持続可能な開発のための教育(ESD)を推進しているのかを明らかにした。一方、NGOはESDを推進する上での人材・資金・専門性の不足といった課題を抱えている。

    そこで本書は第二に、NGOによるESDの課題を克服するための方策は何かを検討した。これらの研究課題に取り組むことで、学術面においてはESD学習論に新たな知見を提供し、政策・実践面ではNGOのESD活動の質的・量的な強化に貢献することを目指した。


    E. プレナリー

    E-1. 「対話型」プレナリーパネル「グローバル危機にどう向き合うか – 国際開発学の役割」

    • 2022年12月4日(日曜)15:00 ー 16:30(オンライン/リバティタワー1F 1011)
    • 挨拶:源由理子(明治大学)
    • プレナリーパネル:佐藤仁(東京大学)、長畑誠(明治大学)、牛久晴香(北海学園大学)、島田剛(明治大学)

    (報告:源由理子)


    E-2. JASID-KAIDEC Session: Prospects for New Approaches to Promote International Development Cooperation

    JASID/KAIDEC共同セッション「国際開発協力を促進する新たなアプローチの展望」

    • 2022年12月4日(日曜)15:00 ー 16:30
    • 北村友人(グローバル連携委員長)

    国際開発学会(JASID)と韓国国際開発協力学会(KAIDEC)は、これまでお互いの学会年次大会において共同セッションを開催したり、毎年韓国の済州で開催される学術フォーラムに参加するなど、積極的に学術交流を深めてきた。

    しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、オンラインでの交流は継続しつつも、過去2年間にわたり対面での交流を一時中断せざるを得なかった。それが、今年度のJASID秋季大会で、3年ぶりに対面での交流が可能になったことを関係者一同、何よりも嬉しく感じた。

    今回の学会大会では、JASIDとKAIDECの共同セッション「国際開発協力を促進する新たなアプローチの展望(Prospects for New Approaches to Promote International Development Cooperation)」を開催した。なお、このセッションでは英語が使用され、対面とオンラインのハイブリッド形式で実施された。

    まず、KAIDECのSung-gyu Kim会長(高麗大学)による開会の挨拶が行われ、JASIDとKAIDECの間で築き上げられてきた交流の実績を踏まえつつ、先を見通すことが難しい時代において2つの組織が協力し合いながら国際開発協力のあり方を検討していくことの重要性が強調された。

    Kim会長の挨拶に続き、JASIDとKAIDECからそれぞれ新進気鋭の若手研究者たちによる講演が行われた。まず、KAIDECの国際委員会でChairを務めるKyung Ryul Park博士(KAIST)が登壇し、「Digital Transformation and Sustainable Development Cooperation: the Case of Artificial Intelligence」と題した講演を行った。

    この報告では、これからの国際開発協力において「データ」がいままで以上に重要な役割を果たすと共に、そうした「データ」を分析し、その結果を実践に反映させるうえで、人口知能をはじめとする多様な技術の活用が不可欠であることが指摘された。とりわけ、国際機関によるデータ収集の現状や、国際開発協力の現場におけるデータ活用の具体例など、興味深い事例がいくつも紹介された。

    続いて、JASIDからはグローバル連携委員の荻巣崇世会員(上智大学)が「Education and Sustainable Development Cooperation: Japanese experiences」と題した講演を行った。

    まず、日本の若者たちが国際開発協力をどのように認識しているのかについての分析を踏まえたうえで、とくに教育開発分野を例として日本の国際開発協力がいかに現地との多様なアクターたちとのパートナーシップを大切にしているかが指摘された。

    そのうえで、若者たちの視点を取り入れつつ、国際開発協力における「Global Knowledge Commons」を構築していくことの重要性が強調された。

    これらの講演に続き、聴衆との間で活発な質疑応答のやりとりがなされた。そして、今後も、JASIDとKAIDECの間で学術交流を深めていくなかで、これからの国際開発協力のあり方についてアジアからいままで以上に積極的な発信を行っていくことが大切であることが確認された。

    (報告:北村友人)


    F. 第33回会員総会

    • 2022年12月4日(日曜)16:40 ー 18:10(リバティホール1F)

    ※会員総会のページを参照(要パスワード)


    G. ポスター発表

    • 李 鋒(中央大学大学院)
      「中国における地域の教育格差:ジニ係数の分解分析」
    • 小林 匠(神戸大学)
      「ウガンダの初等教育におけるコミュニティと親の参加が教育の質に与える影響:ブシェニ県とワキソ県の事例から」
    • 宇野 耕平(神戸大学)
      「バングラデシュにおける需要側に着目した就学前教育へのアクセスの分析」
    • 石井 あゆ美(青山学院大学)
      「日本における多様な教育ニーズに即した「包摂的かつ公正で質の高い教育」の実現に向けた課題—神奈川県における外国につながる子どものノンフォーマルな学び場と学校教育との関係性の考察から—」
    • 石井 雄大(神戸大学大学院)
      「セネガル初等教育における学習達成に対する自律的学校運営の影響分析」
    • DAAS Yousuf(Kobe University)
      ”The Influence of Mothers’ Education, Childs Labour and Family Income on Expected Education Attainment in Bangladesh”
    • Danilo LEITE DALMON(Kobe University)
      “Factors Influencing the Effectiveness of Municipal Governments in Primary Education Student Achievement in Brazil”
    • 内山 かおり(神戸大学)
      「就学前教育とウガンダ初等教育における学習達成度の関係」
    • 枝元 美帆(立命館大学院)
      「自然災害に対する防災意識を維持する要因 ―滋賀県の意識調査を事例としてー」

    A. 一般口頭発表

    B. 企画セッション

    C. ラウンドテーブル

    第33回全国大会を終えて




    【会員限定】常任理事会議事録(第231・232回)

    第231回常任理事会

    • 日時:2022年11月3日(木曜)10時~14時
    • 方法:対面とZoom(オンライン)のハイブリッド
    • 出席者:佐藤(会長)、高田、山田(以上、副会長)、池上、小林、島田、松本、北村、川口、佐野、志賀、杉田、三重野(以上、常任理事)

    議題

    (1) 審議事項

    1.支部・研究部会助成額の決定について

    池上総務委員長より、2023年度の支部・研究部会の助成額について報告があり、承認された。

    2.定款および定款細則の改正について

    志賀事務局長より、会員制度の変更等に伴う定款および定款細則の改正案が提案され、承認された。

    3.第12期1号理事選挙について

    杉田選挙管理委員長より、第12期1号理事選挙を2023年5月9日から23日の期間に実施するとの提案があり、承認された。また、選挙規程の改正案が提案され、承認された。

    4.2022年度学会賞について

    三重野賞選考委員長より、2022年度学会賞に13 作品の応募があったこと、審議の結果、 学会賞本賞に牛久晴香会員の『かごバッグの村―ガーナの地場産業と世界とのつながり』(昭和堂)、奨励賞に阿部和美会員の『混迷するインドネシア・パプア分離独立運動―「平和の地」を求める戦いの行方』(明石書店)、賞選考委員会特別賞に佐藤峰会員、佐柳信男会員、柳原透会員共著のEmpowerment through Agency Enhancement: An Interdisciplinary Exploration (Palgrave Macmillan)が選出されたこと、論文部門については該当なしとの結果であったことが報告され、承認された。


    (2) 報告事項

    1. 第33回全国大会

    島田大会実行委員長より、第33回全国大会のプログラム案と準備状況について報告がなされ、承認された。

    2. 入会・退会者の報告と会員数の動向

    志賀事務局長より、新規入会希望者・退会者の報告(新規入会希望者13名、退会者3名)ならびに会員数の動向について報告があった。

    3. 翻訳書の応募者への対応について

    三重野賞選考委員長より、翻訳書をもって学会賞への応募があった場合の対応や、論文賞の今後のあり方についての検討状況が報告された。

    4. ポスター賞選考の準備状況について

    三重野賞選考委員長より、ポスター賞選考の準備状況について報告された。


    第232回常任理事会

    • 日時:2022年11月26日(土曜)10時~11時30分
    • 方法:Zoom(オンライン)による開催
    • 出席者:佐藤(会長)、高田、山田(副会長)、池上、川口、小林、佐野、志賀、島田、杉田、松本(常任理事)

    議題

    (1)審議事項

    1.2022年度活動報告および監査役報告について

    各委員長より2022年度の活動について報告された。また、志賀事務局長および池上総務委員長より、2022年度監査については特段の問題点を指摘されることなく終了した旨が報告された。

    2.  2023 年度活動計画および予算案について

    各委員会から2023年度活動計画および予算案について説明がなされ、承認された。

    3.入退会承認について

    志賀事務局長より、30名の新規入会希望者(正会員8名、学生会員22名)について提案がなされ、承認された。また、1名が退会したことが報告された。

    4.第115回理事会議事および第33回会員総会の議事について

    志賀事務局長より、第115回理事会の議事案および第33回会員総会の議事案について説明がなされ、承認された。




    【会員限定】理事会議事録(第114・115・116回)

    第114回理事会

    • 日時:2022年10月28日(金曜)~29日(土曜)
    • 方法:メールによる開催

    (1)審議事項

    3年間会費未納を理由とする退会処分対象者について:志賀事務局長より、3年間会費未納を理由とする退会処分対象者17名について提案があり、承認された。


    第115回理事会

    • 日時:2022年11月26日(土曜)13時30分~16時30分
    • 方法: Zoom(オンライン)による開催
    • 出席者(敬称略):佐藤(会長)、高田、山田(以上、副会長)、池上、川口、佐野、志賀、島田、杉田、松本、三重野(以上、常任理事)池見、市橋、伊東、大橋、岡部、小川、小國、萱島、澤村、高橋、鍋島、西川、藤掛、藤山、道中、山形(以上、理事)、石田、西野(以上、監査役)、梅村(支部長)

    (1)審議事項

    1.2022年度学会賞について

    三重野賞選考委員長より、2022年度学会賞に13 作品の応募があったこと、審議の結果、 学会賞本賞に牛久晴香会員の『かごバッグの村―ガーナの地場産業と世界とのつながり』(昭和堂)、奨励賞に阿部和美会員の『混迷するインドネシア・パプア分離独立運動―「平和の地」を求める戦いの行方』(明石書店)、賞選考委員会特別賞に佐藤峰会員、佐柳信男会員、柳原透会員共著のEmpowerment through Agency Enhancement: An Interdisciplinary Exploration (Palgrave Macmillan)が選出されたこと、論文部門については該当なしとの結果であったことが報告され、承認された。

    2.2022年度活動報告、決算および監査役報告

    各委員長より2022年度の活動について報告された。また、志賀事務局長および池上総務委員長より、2022年度監査については特段の問題点を指摘されることなく終了した旨が報告された。

    3.  2023 年度活動計画および予算案について

    各委員会から2023年度活動計画および予算案について説明がなされ、承認された。

    4.2023年度の支部・研究部会への助成額について

    池上総務委員長より、2023年度の支部・研究部会の助成額について報告があり、承認された。

    5.2023年度活動計画案および予算案

    各委員会から2023年度活動計画および予算案について説明がなされ、承認された。

    6.定款および定款細則の改正について

    志賀事務局長より、会員制度の変更等に伴う定款および定款細則の改正案が提案され、承認された。

    7.第33回会員総会の議事について

    志賀事務局長より、第33回会員総会の議事案について説明がなされ、承認された。

    8.第12期1号理事候補者選挙および選挙規程の改正について

    杉田選挙管理委員長より、2023年5月9日から23日の期間に第12期1号理事選挙を実施するとの提案があり、承認された。また、選挙規程の改正案が提案され、承認された。


    (2)報告事項

    1.第33回全国大会の準備状況

    島田大会実行委員長より、第33回全国大会のプログラム案と準備状況について報告がなされ、承認された。

    2.入会者・退会者について

    志賀事務局長より、30名の新規入会希望者(正会員8名、学生会員22名)および、1名の退会者が報告された。

    3.第33回全国大会優秀ポスター発表賞対象作について

    三重野賞選考委員長より、第33回全国大会優秀ポスター発表賞対象作について報告があった。

    その他

    1.合理的配慮について

    障害を有する会員に対する合理的配慮のあり方について議論が行われた。


    第116回理事会

    • 日時:2022年11月4日(日曜)11時45分~12時30分
    • 方法:対面(明治大学 リバティタワー11階 1116教室)による開催
    • 出席者(敬称略):佐藤仁(会長)、高田、山田(以上、副会長)、池上、川口、北村、小林、佐野、島田、杉田、松本、三重野(以上、常任理事)、志賀(事務局長)、池見、伊東、大橋、岡島、岡部、小川、小國、萱島、黒田、佐藤寛、高橋、西川、藤掛、道中(以上、理事)、工藤(第24回春季大会実行委員長)、秋保(本部事務局次長)

    冒頭に、島田剛・第33回全国大会実行委員長および工藤尚悟・第24回春季大会実行委員長の挨拶が行われた。

    (1)審議事項

    1.優秀ポスター発表賞の受賞作について

    三重野賞選考委員長より、第33回全国大会優秀ポスター発表賞受賞作について報告があり、承認された。




    新刊案内:SDGsと地域社会ーあなたのまちで人間の安全保障指標をつくろう!

    高須幸雄・峯陽一編『SDGsと地域社会―あなたのまちで人間の安全保障指標をつくろう!』(明石書店、B5判/並製/304頁、定価3,200円+税)が刊行されました。

    SDGsも折り返し地点を迎えました。SDGsには17の目標、169のターゲット、247の指標があります。これらの指標は困難を抱える途上国を主として想定して設定されているので、日本はすでに多くの指標を達成しているようです。

    では、私たちは何をしたらいいのでしょうか。SDGsのバッジを身につけて、なんとなく「エコ」の雰囲気を出して、「やってる感」を出すだけでいいのでしょうか。

    私たちは、基本に立ち返るべきだと思います。SDGsの最上位の目標は「誰も取り残されない社会をつくる」ことです。日本では、そのような社会を実現できているでしょうか。

    「誰も取り残されない社会をつくる」という目標は、人間の安全保障の目標でもあります。様々な脅威に直面し、その影響を受けやすい一人ひとりの人間の命、生活、尊厳を守り抜こうとする人間の安全保障の目標は、根っこのところでは、SDGsと同じものです。

    私たちは、東日本大震災の甚大な被害を受けた宮城県の皆さんと力をあわせて、人間の安全保障指標<宮城モデル>を作成しました。この本で、その全体像を示します。地域社会が抱える問題を、県の平均値ではなく、市町村に脱集計化(アマルティア・セン)することで、一人ひとりが抱える問題に接近します。震災が残した課題、そしてコロナ禍をふまえ、どこで誰が困っているのか、問題点をあぶりだしていきます。

    <宮城モデル>は、客観データと主観データを組み合わせ、NPOの視点をふまえ、ビッグデータをとりいれ、命、生活、尊厳の領域に分けて、合計99個の指標で構成されています(人間開発指数の計算方法を応用)。そして、市町村ごとにレーダーチャートを作成し、課題を示し、具体的な提言を行っています。さらに、被災者、子ども、女性、多文化共生などについて、宮城県在住の皆さんを中心に考察を寄せていただき、問題を深く掘り下げています。

    SDGs、そして国際開発学会の活動においては、足元の日本国内の課題と、世界各地の開発課題を水平的に等しく扱い、片方の問題にかかわることで、他の問題にも想像力と応用力を広げていくことが問われています。

    この本では、他の地域、地方自治体でも手法を応用していただけるように、<宮城モデルから全国へ>の広がりも意識しました。ぜひ本書を手元に置いて参照していただきながら、皆さんのそれぞれの場所で、SDGsの真の課題に取り組む人間の安全保障指標をつくってみてください。

    アマゾンから注文していただけます。

    編者

    • 高須幸雄(人間の安全保障に関する国連事務総長特別顧問、NPO法人「人間の安全保障」フォーラム理事長、日本ユニセフ協会副会長、中部大学客員教授)
    • 峯陽一(同志社大学グローバル・スタディーズ研究科教授)

    本件にかんするお問い合わせ先

    峯陽一 

    • ymine [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)

    なお、全国データを都道府県に脱集計化した『全国データ SDGsと日本』も販売中です。

    JICA(国際協力機構)による『全国データ』の英語版もあります。こちらは無料でダウンロードしていただけます。




    ウェビナー「ODAソフトパワー論~国家安全保障の強化のために~」11月1・8日開催(会員・一般)

    前回のオンラインセミナー()
    の参加者によるフィードバックを基に、ソフトパワーの観点から日本の開発協力を論じ、国家安全保障をいかに強化するか提案するセミナーです。

    講師は引き続き橋本強司氏。2回シリーズですので、ぜひ皆さま続けてご参加ください。

    開催概要

    日時

    • 1回目:2022年11月1日(火曜)16:00-17:30頃予定
    • 2回目:2022年11月8日(火曜)16:00-17:30頃予定

    方法

    Zoomを利用したオンライン

    対象

    このテーマに関心がある方
    ※特に開発コンサルティング業界を目指す学生・若手の方、既に開発コンサルティング業界で働く若手の方におすすめです。

    プログラム

    第1回:11月1日(火曜)

    I. ソフトパワー概論
    ソフトパワーとは何か、歴史、実践、効果、評価などについて紹介します。

    II. ソフトパワー強化に向けて
    技術革新と文明、20世紀開発モデルの限界、仏教経済学の示唆、公共財としての開発協力、日本のソフトパワーの源泉などについて論じます。

    第2回:11月8日(火曜)

    III. 日本のためのODAソフトパワー論
    ODAソフトパワーの役割、強化の条件、代替開発モデル、防衛力と開発協力、ソフトパワーによる戦略的開発協力などについて提案します。

    申込み

    事前申し込みが必要です。期日までにお申込みください。開催日までに参加に必要なURLを送付します。

    • 第1回目(11/1)締切日:10月28日
    • 第2回目(11/8)締切日:11月4日

    講師

    (株)レックス・インターナショナル会長
    橋本強司(はしもと・つよし)さん

    1949年 東京生まれ
    1972年 東京大学工学部建築学科卒
    その後、米国南カリフォルニア大学で修士(環境工学)、コーネル大学でPh.D.(水資源計画、経済、オペレーションズ・リサーチ)取得。国際応用システム分析研究所(IIASA;在オーストリア・ウィーン、研究員)、(財)国際開発センター(研究員)、日本工営(株)(企画部副参事、経済部次長、都市・地域開発部次長)を経て、1995年(株)レックス・インターナショナルを設立、代表取締役。2001年より2016年まで学習院大学経済学部非常勤講師。2010年より一般社団法人海外コンサルタンツ協会理事。2014年より2021年まで「国際開発ジャーナル」論説委員。42年間にわたり国際協力事業団及び独立行政法人国際協力機構(JICA)による多数の技術協力案件で、総括責任者を歴任。
    専門分野:都市・地域開発、環境、組織・制度、水資源管理、プロジェクト経済他

    注意事項

    • 実施報告(匿名で質疑応答などをまとめる予定)は公開予定です。あらかじめご了承ください。
    • プレゼンテーション部分は後日配信する可能性があります。
    • 録音・録画・チャットの保存はご遠慮ください。

    詳細はこちら

    ご参考
    (株)レックス・インターナショナル


    本件にかんするお問い合わせ先

    (一社)海外コンサルタンツ協会(担当:河野)

    • E-mail:kono [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)



    ウェビナー『日本の戦後開発協力の展開と今後の展望』8月30日開催(会員・一般)

    今回は、40年近くにわたり開発コンサルタントとして、多数のODAプロジェクトに従事してきた(株)レックス・インターナショナル会長、橋本強司氏をゲストに迎え、オンラインセミナーを開催します。

    特に今後、開発コンサルティング業界を目指す学生の方、若手の方だけでなく、既に開発コンサルティング業界で働いている若手社員におすすめのセミナーです。

    今回はこんな話が聞けそうです。

     #戦後の開発協力とは?
     #これからの開発コンサルタントに必要なことは?
     #開発コンサルタントの将来は?

    皆さまのご参加お待ちしています。

    開催概要

    • 日時:2022年8月30日(火曜)16:00-17:30頃予定
    • 方法:Zoomを利用したオンライン
    • 対象:このテーマに関心がある方
      ※特に開発コンサルティング業界を目指す学生・若手の方、既に開発コンサルティング業界で働く若手の方におすすめです。
    • 詳細 

    お申込み

    8月28日までに以下のフォームよりお申込みいただければ、参加URLをご案内します。

    プログラム

    1.「日本の戦後開発協力の展開と今後の展望 」
    2.質疑応答

    講師

    (株)レックス・インターナショナル会長
    橋本強司(はしもと つよし)さん

    略歴

    1949年 東京生まれ
    1972年 東京大学工学部建築学科卒
    その後、米国南カリフォルニア大学で修士(環境工学)、コーネル大学でPh.D.(水資源計画、経済、オペレーションズ・リサーチ)取得。国際応用システム分析研究所(IIASA;在オーストリア・ウィーン、研究員)、(財)国際開発センター(研究員)、日本工営(株)(企画部副参事、経済部次長、都市・地域開発部次長)を経て、1995年(株)レックス・インターナショナルを設立、代表取締役。2001年より2016年まで学習院大学経済学部非常勤講師。2010年より一般社団法人海外コンサルタンツ協会理事。2014年より2021年まで「国際開発ジャーナル」論説委員。37年間にわたり国際協力事業団及び独立行政法人国際協力機構(JICA)による多数の技術協力案件で、総括責任者を歴任。
    専門分野 都市・地域開発、環境、組織・制度、水資源管理、プロジェクト経済他。

    著書

    『これからの開発コンサルティング』(勁草書房) 1992年
    『日本を変える 日本人が変わる』(山手書房新社) 1995年
    『21世紀のアジア国際河川開発』(勁草書房、共編著) 1999年
    『地域開発プランニング―その考え方・手法・海外事例』(古今書院)2000年
    『匿名性とブラックボックスの時代』(文芸社) 2006年
    『開発調査というしかけ-途上国と開発コンサルタント』(創成社)2008年
    『開発援助と正義』(幻冬舎ルネッサンス)2013年
    『日本の進む道』(国際開発ジャーナル社) 2018年 他

    ■プロジェクト計画・評価関連の論文(英文)多数
    「水資源計画における評価手法」
    「費用分担とプロジェクト評価」
    「複数インフラプロジェクトの評価手法」
    「多目的計画法による水資源配分」 他

    注意事項

    • 実施報告(匿名で質疑応答などをまとめる予定)は公開予定です。あらかじめご了承ください。
    • プレゼンテーション部分は後日配信する可能性があります。
    • 録音・録画・チャットの保存はご遠慮ください。

    本件にかんするお問い合わせ先

    (一社)海外コンサルタンツ協会
    (担当:河野)

    • E-mail:kono [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)

    (株)レックス・インターナショナル




    新刊案内:SRIDジャーナル第23号発行のご案内

    現在、世界は、COVID-19やウクライナ問題の大きな危機を迎えていますが、それとともに開発途上国では、様々な深刻な危機に直面しています。本年2月以降のロシアによるウクライナ侵攻は、全世界に大きな政治経済的インパクトを与えました。

    この世界を揺るがすウクライナ危機の方向性は、未だに定かではありませんが、今号では、論説やブックエッセイでこのような世界的な危機について、様々な視点から論じてみました。開発途上国を巡る政治経済問題の例として、危機の最中にあるトルコとスリランカを取り上げました。また、依然として重要な課題である地球環境問題についても、危機に対する環境開発協力の在り方について論じています。これらのペーパーは、SRID会員と非会員が専門的な視点から執筆しています。

    また、「SRID活動報告」では、SRID会員が趣味や特技等を紹介しつつ、自由に楽しく意見交換して交流する「SRIDサロン」の自由闊達な雰囲気をお伝えしたいと思います。

    SRIDジャーナル編集委員長:湊直信

    SRIDジャーナル第23号目次

    SRIDジャーナルとは

    論説・インサイト
    • 中沢賢治:ウクライナ危機と復興支援:欧州復興開発銀行 (EBRD) 設立の原点から考える
    • 高田有一郎:トルコの政治経済の危機と展望:建国100年を迎えて
    • N.S. Cooray and Wimal Rankaduwa: The Origins of Sri Lanka’s Crisis and Way Forward:
      Political Economy Perspectives
    • 竹本和彦、加藤真:迫りくる地球環境の危機と海外環境開発協力の展望
    徒然草
    • 浅沼信爾:ハンバントタの「白い巨象群」
    • 西川壮太郎:スタートアップ企業がアフリカの社会課題を解決する
    ブック・エッセイ
    • 福田幸正:リヴィウ(ウクライナ)が育んだ二大人道犯罪概念:そして、ロシアを裁く特別
      法廷へ、フィリップ・サンズ著、園部哲訳、2018年、『ニュルンブルグ合流「ジェノサイド」
      と「人道に対する罪」の起源』、白水社 (Philippe Sands. 2016. East-West Street: On the
      Origins of “Genocide” and “Crimes Against Humanity”. London: Weidenfeld & Nicolson.)
    • 高橋一生:危機対応から見る「最貧国」脱出戦略、岡野英之著、2022年、「西アフリカ・エボラ危機 2013-2016」、ナカニシヤ出版
    SRID活動報告

    山下道子:SRIDサロン

    SRID元会員を偲んで
    • 松本洋SRID元会長:松本 健:「兄松本洋の思い出」
    • 今井正幸SRID元会長:不破吉太郎:「今井さんの想い出」
    途上国アルバム

    春藤健二:チュニジア

    編集後記

    投稿規程

    本件にかんするお問い合わせ先

    SRIDジャーナル編集委員会

    中島千秋

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    第23回春季大会の開催報告と総括

    第23回春季大会報告

    第23回春季大会は2022年6月18日(土曜)に、福岡県立大学を開催校としてオンライン(Zoom)で実施されました。

    福岡県立大学が立地する福岡県田川市は、旧産炭地として日本の近代化、戦後復興を支えてきたものの、1960年代のエネルギー転換を受け急激な衰退を経験し、鉱害からの復旧、新たな産業づくりによる安定した生活基盤の確保など地域再建を続けてきた「課題先進地域」です。この地でこれからの時代の開発、国際協力を考える学会を催すことができ、大変嬉しく思います。

    今大会では、大学を超えて「チーム福岡」として実行委員会を組織し大会に臨みました。山あり谷ありの準備の六ヶ月ではありましたが、御縁に恵まれ、国際開発学会第23回春季大会の全てのプログラムを無事実施することができました。参加者の皆様、学会関係者の皆様、そして、地域の皆様のご支援に心より感謝申し上げます。

    当日は225名の方に参加登録いただき、4つの企画、7つのラウンドテーブル、7つの個人発表において、それぞれ活気ある議論が交わされました。

    プレナリーセッション「知っちょるよ、もうやっとるよSDGs」では、筑豊(田川郡川崎町・田川市)で地域づくりに奮闘する関係者を招き、オンライン越しではございましたが、2030年に真の持続可能な社会をつくるために必要なことについて、専門分野の異なる参加者の皆様と議論を深めることができたと思います。

    本大会が「学会員が少ないから…」「地方だから…」と学会開催に二の足を踏んでいる皆さまの背中を押すものになれば望外の喜びです。

    大会実行委員長
    佐野麻由子(福岡県立大学)

    プレナリーセッション「知っちょるよ、もうやっとるよSDGs」

    【第1部】
    「日本の地域と国際開発をつなぐ“よりよい生”-金沢大会からのバトンを受け継ぐ」

    • 佐野麻由子(国際開発学会第23回春季大会実行委員長/ 福岡県立大学) 
    • 和田一哉(国際開発学会第32回全国大会実行委員長/金沢大学)

    【第2部】
    基調講演および座談会「生が営まれる場としての地域-筑豊・田川-」

    登壇者(1)杉本利雄氏(ラピュタファーム代表)
    「“生”をつなぐ宿り木としてのラピュタファーム-筑豊・田川の新しい“地域ブランド”ができるまで」

    登壇者(2)佐野典久氏(佐野畳屋三代目店主)
    「畳からつながるよりよい暮らし-生きてるだけで儲けもの」

    本セッションは、(1)炭鉱だけではない筑豊・田川の魅力を感じていただくこと、(2)海外のフィールドと日本の地域とを往還し国際協力の想像力を高めていただくこと、(3)個々人の日常の実践がカギを握る個人化時代の開発のあり方、その中でもSDGsの実現可能性、継続性、波及性を高める条件を議論することを目的に企画された。

    第1部では、金沢大会の和田実行委員長より、日本の地域に目を向けるこが先進国・途上国問わず「よりよい生」を考える一歩になるというメッセージを頂いた。

    第2部では、杉本利雄氏、佐野典久氏に、活動に至った経緯、活動を支える思い等についてお話をうかがった。

    杉本氏は、ラピュタファームの経営を通し、地域に対するネガティブなイメージを払拭し、筑豊の魅力を発信し続けてきた。質の良い農作物であっても地名を聞くと美味しそうに思えないという消費者の反応、地元での産業廃棄物施設操業の危機などマイナス要因が、「バイキングや加工品を通して地域のイメージを刷新しよう」「自然を残すだけでなく活用しよう」と奮起する契機になった。

    また、地域内外の他業種の仲間との関わりや「元お客の従業員」との試行錯誤の中でヒット商品が生みだされたエピソードなど、地域・業種・生産者/消費者の関係を超えて活動が展開されていることが紹介された。

    佐野氏は、畳学校で国産イグサの良さを知って以来、イグサ生産者と消費者をつなぎ、畳をつくるだけでなく古畳を解体して土に戻す活動を行ってきた。閉鎖されることになった精米所を引き取りそこでとれた米糠を土づくりで活用したり、土づくりの傍らでアルバイトの学生のために野菜を作ったりする等のユニークな循環型社会実現の例も紹介された。

    「求めるべき真の自由についてどのように考えるのか」というフロアからの質問に対して、「真の自由は、行きたいときにみんなで支えあって授業参観に行けること。それを許容する社会」とこたえていたのが印象的だった。

    お二人に対しては「勇気づけられた」「楽しそうな仕事ぶりに励まされた」「捨てようと思ったものを蘇生して楽しく活用するのが田川モデル」等、多数のコメントが寄せられた。日常のなかで個々人がよりよい生を実践することが重要な意味をもつ今日、「楽しい」「お互い様」「足るを知る」が、SDGsの実現可能性、継続性、波及性を高める秘訣であると感じた。

    (佐野麻由子)


    セッション報告A(6月18日土曜日 Saturday 18th June 2022)

    【午前の部I】Morning Session 9:30-11:30 (GMT +9)

    A1. 地域から考えるオルタナティブ開発―近代的開発実践・モデルの超克に向けて―

    • 座長:真崎克彦(甲南大学)
    • 討論者:平山恵(明治学院大学)
    • 秋吉恵(立命館大学)

    「アフワット:パキスタンにおける社会的連帯経済の実践-互酬性が貧困削減に果たす役割」

    高須直子(立命館アジア太平洋大学)

    「地域コミュニティの『ありのまま』と多遍性(pluriversality)をどう捉えるか―館ヶ丘団地における人々のかかわりと価値創造からの考察」

    藍澤淑雄(拓殖大学)  

    国際開発学会「市場・国家との関わりから考える地域コミュニティ開発」研究部会の企画セッションである。最初の座長による趣旨説明では、西洋近代型の「普遍」的とされる進歩観と一線を画した、オルタナティブ開発のあり方が概説された。

    高須会員の報告では、パキスタンのイスラム金融マイクロファイナンス組織、アフワットの事例が、社会的連帯経済モデルに依拠しながら取り上げられている。地域コミュニティに存する伝統的「協同性」が、いかにアフワットの無利子融資の拡大や政府の政策形成の成功を後押ししてきたのかを軸として、報告がなされた。

    討論者の平山会員のコメントでは、イスラム世界で遍く見られる喜捨の伝統に絡めて「協同性」が論じられ、アフワットが、被支援者が支援者に転じることもあるユニークな社会連帯経済の一例として、広く知られていくことの意義が述べられた。

    藍澤会員の報告は、東京都八王子市の館ヶ丘団地で学生たちと行ってきた地域コミュニティ振興活動の紹介である。高齢化が進む同団地での自治会住民と学生のかかわりの中から防災の仕組み作りが始まった事例について報告がなされた。

    この経験を踏まえて、西洋近代的な「普遍的」社会づくりモデルでは見えてこない、人びとのありのままの暮らしに寄り添う「多遍的(pluriversal)」な生活支援のあり方が論じられた。

    討論者の秋吉会員からは、藍澤報告の事例に引きつけて、地域コミュニティの支援活動での支援者と被支援者との関係が、いかに変容的なものへと発展し得るのかが解説された。またそうして、地域にある潜在的な共同性が解き放たれる仕組みが示された。

    以上の通り両報告を通して、支援者と被支援者の壁が低くなることで、地域に存在する価値観や暮らしを引き立てたオルタナティブ開発が立ち上がってくる様子が明らかにされた。本セッションには常時25 名前後の会員に参加いただいた。

    (真崎克彦)


    【午後の部I 】Afternoon Session I 12:15-14:15 (GMT +9)

    A2. 企画”Soft Skills and Employability in the Face of Asymmetry between the Labor Market and School Education: Soft Skills Training and Development in Africa”

    労働市場と学校教育の非対称状況におけるソフトスキルと雇用可能性―アフリカにおけるソフトスキル訓練と開発―

    • 登壇者: エストレルヤド エマヌウェル(名古屋大学)・チャロエンシルプ ピンマダ(名古屋大学)・近藤菜月(名古屋大学)・山崎裕次郎(名古屋大学)
    • 司会: 山田肖子(名古屋大学)
    • 討論者: 高田明(京都大学;非会員)・島田剛(明治大学)

    本セッションでは、アフリカの労働者のソフトスキルについて4名の報告が行われた。

    初めに司会の山田会員より、ソフトスキルの概要、途上国の産業人材育成における重要性が説明され、第一報告(山崎)では、インフォーマル・セクターの労働においてソフトスキルがいかに活用されているのかの事例を報告した。第二報告(近藤)では、ガーナの大学卒業生のキャリアからソフトスキルの重要性とキャリア形成におけるその役割について議論した。

    上記の報告に対し、コメンテーターの高田明氏(非会員)より、インフォーマル・セクター内での差異、顧客からの視点、短い就業年数の理由、学校のカリキュラムとの関係について今後深めるべき点をご教示いただいた。

    島田会員からソフトスキルと専門的技能の重要性の比較、雇用可能性に対する自己評価の要因、起業の動機についてより考察ができると示唆をいただいた。

    続く第三報告(チャロエンシルプ)では、ゲームを用いた行動モデリングトレーニングによって、労働者にソフトスキルを習得させる新しい方法を紹介した。

    第四報告(エストレルヤド)では、第三報告で紹介したゲームを用いたソフトスキルトレーニングについて実施した内容を紹介し、トレーニングの結果、実施前と比べて、参加者のソフトスキルに統計的に有意な正の変化が見られたことを報告した。

    上記の報告に対し、コメンテーターの高田氏より、観察学習以外の学びへの視点、ゲーム作成・実施における対象者の文化への配慮、実際の仕事への相関について示唆を頂いた。

    島田会員から、ゲームベースのトレーニングが企業内研修として発揮する効果や、参加者の学校教育歴による結果の差異について今後考察を深める点をご助言頂いた。

    なお、本セッションの報告の一部では、名古屋大学の研究グループが実施しているSKY(Skills and Knowledge for Youth)プロジェクトのデータを使用している。

    (山田肖子)


    【午後の部Ⅱ】Afternoon Session Ⅱ 14:30-16:30 (GMT +9)

    A3. RT: 地方展開委員会主催「日本の地域から問い直す国際開発アジェンダ(実践編)」

    • 司会:木全洋一郎(JICA)
    • 発表者:富山泰庸(ロッツ株式会社)、山本あやみ((特非) 砂浜美術館)、 柳澤龍((一社)ドチャベンチャーズ)
    • 討論者:木全洋一郎(JICA)、梶英樹(高知大学)、工藤尚悟(国際教養大学)

    本セッションでは、2021年全国大会のラウンドテーブルでの議論を踏まえ、陸前高田、高知、秋田の各現場からの中継により、新たな地域活性化の実践事例を共有し、今後の国際開発アジェンダのあり方について、約30名による議論が行われた。

    はじめに、富山氏より、東日本大震災での医療支援を契機に、将来にわたってまち全体を健康にすべく、薬局、高齢者リハビリ、オーガニックカカオからチョコレート製造販売と多様な事業が紹介された。地元・日本のための事業が、フェアトレードのカカオを使うことで途上国の児童労働問題の解決にもつながっている。

    次に、山本氏より、建物のない、美しい砂浜そのものを美術館にしている取り組みが紹介された。ありのままを価値とすることに共感した元青年海外協力隊の方と、ガーナ、ケニア、モンゴル各地の自然の中でのTシャツアート展を共同実施している。

    柳澤氏からは、五城目町の廃校のシェアオフィスで、地域に根ざした土着のベンチャー事業が紹介された。まち全体をシェアビレッジとしたオープンにし、「世界一子供が育つ町」として、地域からの学びをデザインしている。敢えて社会全体の課題ではなく、局地的な願いに寄り添って場を作っていくことで、地域変容を見届けている。

    フロアからは、よそ者の役割や都会と地方との関係性を前提にした地方間競争への懸念といった質問が出された。

    議論を通じて、3つの事例とも、都会と田舎という対立構造ではなく、地域を同じテーブルに乗せて、それぞれが「オンリーワン」の魅力で人を惹きつけているという共通点が見えてきた。また、実践者はその地域でなくてはならないということではなく、どの地域でもオンリーワンを発見しているという意味において、途上国の地域開発にも通ずる視点が提供された。

    地球規模の開発アジェンダは「課題」志向で見出されるが、日本の地域におけるアジェンダは「創造性」から見えてくる。この間の橋渡しこそが、国際開発に携わる今後の役割として提起された。

    (木全洋一郎)


    セッション報告B

    B1. 子どもの安全保障

    • 企画責任者:勝間靖(早稲田大学/国立国際医療研究センター)
    • 司 会:勝間靖(早稲田大学/国立国際医療研究センター)
    • 発表者:池田直人(難民を助ける会)・田中敏裕(日本ブータン友好協会)
    • 討論者:勝間靖(早稲田大学/国立国際医療研究センター)

    「子どもの安全保障への開発アプローチ」研究部会では、「人間の安全保障」について、子どもに焦点を絞った「子どもの安全保障」の概念について議論し、研究部会メンバーのそれぞれの研究領域における事例研究を発表し、政策提言にもつながるような理論的枠組みを構築することを目指して研究活動を進めている。

    2022年6月18日(土曜)9:30-11:30、第23回春季大会(福岡県立大学、オンライン)において、「子どもの安全保障〜障害のある子どもの保護とエンパワーメント」と題してラウンドテーブルを開催(オンライン)した。

    まず、研究部会代表者である勝間靖会員(早稲田大学、国立国際医療研究センター)が、企画者として、これまでの研究部会での研究活動を説明し、事例研究を発表するうえでの共通の枠組みを提示した。

    そして、池田直人(難民を助ける会)が「パキスタンにおける障がいのある子どもたち」と題して、田中敏裕(日本ブータン友好協会)が「障がいのある子どものスポーツ参加」と題して発表した。質疑応答と議論が活発におこなわれた。参加者は、パネリストのほか、8名であった。

    (勝間靖)


    B2. 企画・信頼と開発協力

    • 企画責任者:石塚史暁(JICA)
    • 司会:佐藤仁(東京大学)
    • 討論者:佐藤寛(ジェトロ・アジア経済研究所)

    発表者:

    1. 開発協力における「信頼」とは―ODA案件の比較分析の試み―
      石塚史暁(JICA)
    2. ボホール灌漑事業における「信頼」の考察-開発協力と「信頼のジレンマ」-
      杉山秀男(JICA)
    3. インフラ整備への開発協力と信頼
      橋本大樹(JICA)
    4. ガーナ共和国におけるJICAボランティア事業と「信頼
      左近文子(JICA)

    冒頭、座長より、実務家自らが「信頼」のように扱いにくいテーマを研究対象として手掛けることの意義を述べた。その後、次の4本の発表があった(石塚「開発協力における『信頼』とは」、杉山「ボホール灌漑事業における『信頼』の考察」、橋本「インフラ整備への開発協力と『信頼』」、左近「ガーナ共和国におけるJICAボランティア事業と『信頼』」)。

    杉山は開発協力の複数の当事者間での信頼を両立することのジレンマ、橋本は大規模インフラ協力の意思決定において信頼が影響を及ぼせる領域の大きさ、左近はJICA海外協力隊が配属先との間で蓄積する信頼のストック等をそれぞれ扱った。

    石塚発表は、これら事例分析の総合的な結論として、当事者間の「信頼」は開発協力の効果や持続性を下支えし、開発協力の積み重ねは当事者間の信頼蓄積に貢献するという、両者の概念が相互に影響を及ぼしあっていることを指摘した。

    討論者及び参加者からは、次のような質問・コメントが寄せられた。

    開発協力の主体は、自ら当事者となる信頼に加え、第三者をつなぐ信頼にも注目すべきではないか。開発協力の主体は、相手からの信頼に加え、自らの相手に対する信頼を意識すべきではないか。開発協力によって相手国の信頼を買うことは可能か。海外協力隊員が得た現場での信頼は、日本の国レベルの信頼につながるか。「信頼のジレンマ」は、信頼のレベルが浅いことによるものと考えられないか。

    現場での関係者との信頼構築に加え、開発協力の制度にも改革が必要な点はないか、相手国と日本の間の信頼は、相手国と他ドナーの間の信頼と比べ、違いはあるか、コンサルタントや民間企業も、開発協力の当事者であり、分析対象に加えるべきではないか、など。

    セッション参加者は約40名で、議論は大変活発であった。この分野に対する高い関心も感じられたので、今後の信頼研究のさらなる深化を期待したい。

    (佐藤仁)


    B3. RT:翻訳しにくい開発のことば

    • 企画責任者:佐藤仁(東京大学)
    • 司会:佐藤仁(東京大学)
    • 発表者:松原直輝(東京大学大学院)、藏本龍介(東京大学)、橋本憲幸 (山梨県立大学)
    • 討論者:大山貴稔(九州工業大学)

    私たちが開発を語るときに用いる言葉はどこから来て、どこで、どのような意味を生み出すのか。開発にかかわる概念の射程の検討を通じて、それらの概念の組み合わせからなる開発学の場所性を議論するのが、このRTの目的である。

    本セッションでは、日本語として国内で流通している「開発」にかかわる3つの概念を例に取り上げて、翻訳の問題を検討した。具体的には、松原直輝(東京大学大学院)が「現場主義」を、藏本龍介(東京大学東洋文化研究所)が「土木」を、 橋本憲幸(山梨県立大学)「人づくり」を検討した。

    松原会員は、特に緒方理事長時代のJICAによる現場主義の実態分析に基づいて、本部と現場という日本的な組織構造から、「現場」概念の固有性をあぶりだした。

    蔵本会員は「土木」の概念史をたどり、寺社建造などの場面で用いられていた「普請」が、明治期に土木に置き換えられた背景や、泥臭さを強調する日本の技術協力と土木概念の関係について論じた。

    橋本会員は、「人づくり」が国内開発の文脈から報じた後に、特に途上国での人材育成で盛んに用いられるようになった一方で、対先進国には用いられないという非対称性に着目し、この概念がもつ道徳性と教育との関係について論じた。

    これに対して、討論者の大山貴稔(九州工業大学)は、これらの概念が用いられる文脈に応じて意味合いを反転させている点に注目し、概念に埋め込まれた世界認識の整理を行った。そして、概念の翻訳過程に注目することに、どのような学術的貢献を期待できるのかを問うた。

    この問いかけを皮切りに、フロアからも多数のコメントや質問が寄せられた。「翻訳しにくい開発のことば」は、今回取り上げたもののほかに数多く、今後も、バラエティーを増しながら、開発におけるアイデアの文脈性と普遍性を検討していく必要性が確認できた。セッションの参加者は概ね40名前後であった。

    (佐藤仁)


    セッション報告C

    C1. RT:日本の国際協力NGOの過去、現在、そして挑戦–
    NGOデータブック2021と市民活動年表(国際協力分野)の調査・執筆から見えてきたこと

    本RTを企画したのは、以下の二つの出版とそれに伴う調査・分析である。

    一つは、国際協力NGOのネットワークの国際協力NGOセンター(JANIC)が2022年3月に出版した「NGOデータブック2021」である。1996 年から『NGO データブック』 としてJANICが NGO に関する 5 年毎の調査を開始し、2011年からは外務省の委託事業になっている。

    今回の調査対象とした424 団体の約51%、216 団体から有効回答を得て分析を行ったが、前回の有効回答数の二倍近いので、より正確にNGOの現状に迫ったと想定される。この企画・調査・執筆・監修に楯、長谷川、重田、大橋が関わり、外務省のHPで公開されている。

    もう一つは、大阪ボランティア協会が2014年に編集発行した「日本ボランティア・NPO・市民活動年表」(明石書店)の1880~2010年を対象とした国際協力分野の改訂と、2011~2020年の出来事の追加に、長谷川、楯、大橋が携わり、同じ22年3月に刊行されたその「増補改訂版」だ。

    これらから見えてきた日本の国際協力NGOの歴史的変化と現状を、長谷川と楯が発表した。

    まず長谷川が、「日本の国際協力NGOの歴史と今」と題するプレゼンを行い、日本の国際協力の1960年代からの歴史を6つの時期に分けて説明し、90年代をピークに新規NGOの創設数が10年ごとに約半減していること、一方でソシアルビジネス的なものが増えていることを示した。

    そして、現状については現地のパートナー団体を通じての活動が増えていること、活動地域はアジアが少し減り、代わりにアフリカが増えていること、活動では人権や国内課題が増えていること、個人会員数が増えていること、市民社会スペースの縮小がグローバルな問題であることを示した。

    続いて楯が、「日本の故高裁協力NGOの財務と人材」というタイトルで三点に関して報告した。まずNGOの財務に関して、NGOの資金は政府資金の増加だけでなく自己資金の増加があること、しかし相変わらず資金規模の二極化が続き、コロナで56.4%が負の影響を受けており、自己資金を伸ばしたのが主に大手によるものと指摘している。

    続いてNGOの人材については、人材確保が課題と多くのNGOが述べているが、他セクターでも同様であり、高齢化こそがNGOが直面する独自の課題であるとした。最後の「財務と人材に関する展望と課題」では、労働環境は整いつつあるが、待遇はまだ不十分であること、NGOの存在意義の見直しと自己成長が必要とまとめた。

    これらの発表に対する討論者JICAでNGO支援を担当している日浅美和・国内事業部市民参加推進課長、NGO向けのODA資金やその管理費がNGOに与えた影響について関心を寄せる国際開発センター社会開発部の高杉真奈次長、そして欧米や東南アジアのNGOや政府との関係に詳しい高柳彰夫フェリス女学院大学教授だった。会場からの質問もあり、充実したやり取りとなった。

    (以上)


    C2. RT:移動する人々のレジリエンスとSDGsー移民・難民・遊牧民を中心にー

    • 企画責任者:関谷雄一(東京大学)
    • 報告者:関谷雄一、マイヨール ロドリグ(民間TVディレクター)、キム ヴィクトリヤ(立命館大学)、湖中 真哉(静岡県立大学)
    • 討論者:野田真里(茨城大学)

    本セッションは「開発レジリエンスとSDGs」研究部会による第3回目のラウンドテーブルで、前2回のラウンドテーブルでは焦点化されなかった「移動する人々」に着目し、ウィズコロナの今日的な状況の中で、生活基盤に「移動の要素」を抱える人々のレジリエントな様相、SDGsの課題について議論を行った。

    始めに関谷が企画・研究部会の主旨説明と、日本における国内避難民のレジリエンスとSDGsに関する課題提供をした。

    続いてマイヨール氏(非会員)から、民間放送局の取材現場の視座から見える、日本国内の外国人移民のレジリエンス、政策の課題に関する報告がなされた。

    キム氏(非会員)からは、日本における移民の統合過程に関し、結婚移民女性のレジリエンスに焦点を当てた報告がなされた。最後に湖中会員からは東アフリカ遊牧社会からみた移動とレジリエンスに関する報告がなされた。

    各報告後に野田会員から報告者に対し質疑がなされ、議論が展開された。

    各報告で取り上げられた問題に共通する論点として、グローバルな課題であるSDGsという枠組みに対応する主体として、前提とされているのは国民国家であり、「移動する人々」は自ずとそこから取り残されていることが、それぞれの問題や課題と向き合うことに、どう影響しているのかというものがあった。

    各報告者から質疑に対し、それぞれの文脈で応答がなされたが、そこに通底していた論点としては、「移動する人々」の視座に立ったそれぞれの解決法が望まれており、そこには既存の枠組みでは解決できない課題があり、それぞれに個別かつ具体的な当事者性に目を向けることが重要であることが確認された。

    (関谷雄一)


    C3. RT: “Prospects in Innovation and Development for Solving Social Problems: Learning from Cases in Asia”

    • Organizer: Naoko Shinkai (Tsuda University)、Pei-Hsin Hsu (Taiwan Forest Research Institute)
    • Chair/Moderator: Naoko Shinkai (Tsuda University)、Pei-Hsin Hsu (Taiwan Forest Research Institute)
    • Presenter: Vincent Y. Chen (Minghsin University/National Taiwan University), Ariya Svetamra (Chiang Mai University)
    • Discussant: Guestspeakers and all the participants

     This roundtable session was organized by the research group on Innovation and Development for Solving Social Problems (IDSSP) of JASID, which was launched in January 2022. There are social problems, which have been observed for decades, and we encounter some of those problems commonly in the world. This session aimed to learn from successful cases of tackling those common social issues in Asia, share knowledge, and find commonality and differences in social issues and the process for solutions. 

     Two guest speakers were invited to talk about their experiences of solving social problems. First, Dr. Vincent Y. Chen at the Department of Leisure Management, Minghsin University of Science and Technology & Institute of Fisheries Science, National Taiwan University, Taiwan presented the application of Artificial Intelligence (AI) to prevent the harassment of green sea turtles in Xiao Liuqiu island, Taiwan, and develop sustainable tourism.

    Next, Dr. Ariya Svetamra at the Department of Women’s Studies, Faculty of Social Sciences, Chiang Mai University demonstrated the struggles and risks of migrant women in Northern Thailand and how Feminist Participatory Action Research (FPAR) was applied to understand the realities of migrant women and discuss the structure of gender dynamics for creating their opportunities in the future.

    After their presentations, all the participants were invited to ask questions, express their opinions about the lessons learned, and share their knowledge.

     This roundtable session was co-facilitated by Dr. Naoko Shinkai at the Department of Policy Studies, Tsuda University, the Chairperson of this research group and Dr. Pei-Hsin Hsu, at Taiwan Forestry Research Institute, the Vice-chair of this research group.

    (Naoko Shinkai)


    セッション報告D

    D1. 企画・JASID ブックトーク

    • 司会進行:
      島田剛(明治大学)
      芦田明美(名古屋大学)

    本セッションではブックトークとして、以下の4冊の本の紹介が著者および出版社の編集担当者よりなされた。セッションの中では各著者から出版にいたったきっかけ、経緯や苦労が共有された。また、編集者の方の工夫されたこと、今後出版するにはどのようにしたらよいかなどの助言がなされた。参加者は延べ約60名にのぼり活発な議論がなされた。


    報告書籍: Mine Sato, Nobuo Sayanagi, Toru Yanagihara. 2022. Empowerment through Agency Enhancement: An Interdisciplinary Explorations. Palgrave Macmillan

    • 報告者: 佐藤峰(横浜国立大学)
    • 担当編集者:河上自由乃(Springer英文書籍出版担当)
    • 討論者: 佐藤寛(アジア経済研究所)

    1980年代以降の開発援助の政策と実施においては、「主体の働きかけ(主体性)を支援するモデル」を採用しようというみが、政策および実践においてなされてきている。しかし、人を「主体的で自律的存在」として扱えば「主体的な課題対処プロセス」が無条件に始まるわけでなく、そこに至る「主体性の回復と醸成のプロセス」が存在する。

    現状では、関連学術領域では、定義や測定の議論が多く、現場では暗黙知や経験則はあるが体系立った整理はなく理論との対応付けも十分に進んでいない。この問題意識に基づき、本書では、主に3つの文脈(参加型開発、普及プログラム、社会サービス)での主体性醸成に関与する要因とメカニズムの理解に焦点を当て、経済学・心理学・人類学の立場から続けてきた共同研究の成果を共有する。

    報告書籍: 人権の哲学:基底的価値の探究と現代世界

    • 報告者: 木山幸輔(筑波大学)
    • 担当編集者: 斉藤美潮(東京大学出版会)
    • 討論者: 関谷雄一(東京大学)

    本書は、人が人であるがゆえに持つ人権、その正当化の根拠を探り、現代世界への含意を示すものである。本書はその探求を、以下の順番で行う。政治的人権構想と自然本性的人権構想の対立における後者の擁護、自然本性的構想において擁護されるべき構想としての二元的理論の提示、二元的理論の示唆の特定、当該示唆の国際開発援助構想への適用、という順序である。

    本書はまず、ロールズ、ラズ、ベイツ、グリフィン、センをはじめ、極めて多様な道徳・政治・法哲学者が参与してきた人権に関する論争を、特に自然本性的構想と政治的構想との論争として捉え、その分析を行う。本書が分析の中で擁護するのは、現在人気があるとは言い難い自然本性的構想の方である。

    そして、人間が人としてもつ利益に依拠するものと人権を捉える自然本性的構想、その最善の理論として、人々が同定した善に従って生きることと、平等に扱われることを2つの基軸とする二元的理論を描き出す。そうした知見を背景として、特に国際開発・援助構想に対して評価を与えることを念頭に、社会経済的権利とデモクラシーへの権利、そして国際的関係における人権の適切な描き方を提示する。

    最後に、現在影響力を持つ国際開発・援助構想に関する幾つかの論点に対し、描き出された人権構想をもとに評価を加え、私たちが開発・援助を構想する上で望ましい像を描き出す。

    報告書籍: 日本の「非正規移民」:「不法性」はいかにつくられ、維持されるか

    • 報告者: 加藤丈太郎(武庫川女子大学)
    • 担当編集者: 今枝宏光(明石書店)
    • 討論者: 日下部尚徳(立教大学)

    本書籍は、日本に暮らす非正規移民における「不法性」を問うた実証研究の成果である。移住は送り出し国・受け入れ国の間で発生する事象である。開発の文脈では送り出し国の事情が捉えることが多い。

    受け入れ国側から移住を捉えた本書を持って、国際開発学会員に新たな視点を提供したい。元相談員として筆者が抱いた問いを出発点として、1)移民はなぜ「不法」になるのか、2)何が非正規移民の「不法性」を維持させるのかという2つのリサーチクエスチョンを掲げ、質的研究方法を用い、38名の非正規移民をはじめ計69名へのインタビュー、のべ175箇所の参与観察を行った。

    報告書籍: デジタル技術と国際開発(リチャード・ヒークス著、竹内知成監訳、ICT4D Lab訳)

    • 報告者: 竹内知成((一社)ICT for Development)
    • 担当編集者: 道中真紀(日本評論社)
    • 討論者: 高田潤一(東京工業大学)

    本書は英国マンチェスター大学のRichard Heeks教授の著書「Information Communication Technology for Development」(2017年、Routledge社)の翻訳本であり、国際開発における情報通信技術(ICT)利用に関する初の日本語専用教科書になります。

    ケニアのモバイルマネー「M-Pesa」に代表されるように、途上国においてもデジタル技術を活用したサービスが普及し、国際開発においてもデジタル技術の活用が注目を集めています。また、SDGs達成に向けて公的機関のみならず民間企業も取り組みを進める中でICTの活用が進んでおり、様々な組織においてイノベーションやDXというキーワードが使われるようになっています。

    こうした背景から、これから求められるのはICTを目的達成の為に活用できる人材であり、技術的な知識と社会課題の両方を理解し、技術分野のエンジニアと社会課題分野の専門家や政策決定者とを橋渡しできるハイブリッドな知見や、どういった要因がICT利活用の成功と失敗を決めるのか、成功率を高める為には何が行われるべきかを様々な観点から理解する力も求められます。

    本書はそういった人材の育成に最適な教科書であり、社会課題の解決にテクノロジーの活用が重要性を増している現在、国際開発業界のみならずIT業界で社会課題を解決しようとする人達にとっても役立つ一冊です。

    (島田剛)


    D2. 「研究×実践」委員会主催企画:ラウンドテーブル「災害の現場における実践と研究との連携」について

    ラウンドテーブル「災害の現場における実践と研究との連携」 は、「研究×実践」委員会主催の企画としてとして継続的に実施されているもの。前回のJICAの「クラスターアプローチ」をテーマに「援助」にフォーカスを当てたセッションに続き、今回は「災害」に絞り込んだ議論を行った。

    浜名弘明会員より「コンサルティングファームからの防災分野における研究×実践」と題して都市OSの適用についての実践例の紹介がなされたのち、芝浦工業大学の市川学准教授より「災害時保健医療福祉活動⽀援システムと災害情報」と題してAIやデータサイエンスの研究成果を活かした災害支援システムの可能性が提示された。

    この2つの報告に対して、ユーザーサイドからの視点として、佐藤峰会員より「地域防災への自発的な取り組みと課題:横浜市西区羽沢西部自治会を例に」と題して元横浜市西区羽沢西部自治会長・現第四区地区者協会長の米岡美智枝氏の作成されたスライドを用いた報告がなされ、またカマル・ラミチャネ会員より、とりわけ障害者の視点からみたシステムの使い勝手についてのコメントがなされた。

    上記の報告を踏まえて活溌な議論が展開された。とりわけ、「システムの運営をするのは誰か?」という点に議論が集約された。この問いはすなわち「誰が収益を得て、費用負担するか?」という問いに変換されるわけだが、例えば、防災システムによって顧客の情報を把握できるメリットをもつ保険会社や、防災システムによって資産価値の向上が見こまれるデベロッパーに参加してもらうといった具体的なアイディアが検討された。

    一見すると、途上国の開発イシューとはかけ離れた議論のように見えるものの、議論をしてゆくなかで、結局は行政のコーディネーションや、費用負担の意志決定といった、開発につきまとうイシューそのものが本質であることが確認された。

    (小林誉明)


    D3. 教育/子ども(個人)

    • 座長:北村友人(東京大学)
    • 討論者:黒田一雄(早稲田大学)、内海悠二(名古屋大学)

    発表者

    1.「タンザニアの小学生の食品群・野生食物摂取と健康に関する予備的報告―ダルエスサラームとプワニ州における質問票調査より―」

    阪本公美子(宇都宮大学)、大森玲子(宇都宮大学)、津田勝憲(宇都宮大学)

    2.「新制度論による紛争後社会の教育改革分析」

    小松太郎(上智大学)

    3.「日本の非政府アクターによる教育輸出―公文教育研究会を事例に―」

    朝倉隆道(広島大学)

    本セッションでは、以下の3件の研究発表が行われた。いずれも教育や子どもに関する重要なテーマを扱い、学術的また実践的な示唆に富む研究であった。

    阪本公美子会員・大森玲子会員・津田勝憲会員(いずれも宇都宮大学)による「タンザニアの小学生の食品群・野生食物摂取と健康に関する予備的報告―ダルエスサラームとプワニ州における質問票調査より―」は、阪本会員が代表して発表を行った。

    タンザニアの地方都市における小学生96名を対象に、①雨季と乾季の食品・食品群別摂取頻度、②野生食物の摂取頻度、③健康状況、④食品群・野生食物の摂取頻度と、健康の関係について質問紙調査を行い、子どもたちの食習慣パターンを明らかにした。

    小松太郎会員(上智大学)による「新制度論による紛争後社会の教育改革分析」では、ボスニアを事例として、政治学等の研究で用いられる3つの新制度論(社会学的新制度論、歴史的制度論、言説的制度論)を援用して、紛争後社会の教育改革の分析・説明を行った。

    紛争後社会の復興において、多様なアクターが関与しながらいかにして制度が形成され、機能するようになるのかを、異なる視点から分析することで明らかにした。今後の実証研究にも期待を抱かせる、優れた分析であった。

    朝倉隆道会員(広島大学)による「日本の非政府アクターによる教育輸出―公文教育研究会を事例に―」では、民間企業を中心とした非政府アクター(non-state actor)が国際教育協力に参入し、教育サービスを提供する新展開が進む状況のなかで、そうした企業(この研究の事例としては公文教育研究会)が用いる戦略について検討した。

    事例分析を通して、供給側の形成するイメージや言説が、受容する人々の想起する教育への期待や幻想をかき立てようとしていることを明らかにした。

    これらの研究発表に対して、討論者の黒田一雄会員(早稲田大学)と内海悠二会員(名古屋大学)から的確かつ刺激的なコメントが提起され、また参加者からも重要な質問や指摘がなされ、活発な議論が交わされた。

    それらの論点は、理論と実践を架橋することの重要性や難しさに関する指摘から、研究の方法論に関するものまで幅広く、それぞれの発表者が研究のさらなる発展を目指すなかで参考になるものであったと確信している。

    (北村友人)


    セッション報告E

    E1. 環境(個人)

    • 座長:藤川清史(愛知学院大学)
    • 討論者: 豊田知世(島根県立大学)、山口健介(東京大学)

    発表者

    1.「熱帯地域における気候変動緩和策としての植林事業の方法論について」

    久保英之(地球環境戦略研究機関)

    2.「新興国における環境政策・制度の発展と課題について-タイとベトナムでの先駆的事例分析を踏まえて-」

    安達一郎(JICA)、檜枝俊輔(日本工営)、中川原 宏昭(日本工営)、櫻井幸子(日本工営)

    3.「国際開発とソーシャルワークの距離感と接近の可能性」

    小松豊明(特定非営利活動法人シャプラニール=市民による海外協力の会/ルーテル学院大学)

    環境セッション(E1)での報告は次の3本であった。

    1.久保英之(地球環境戦略研究機関)「熱帯地域における気候変動緩和策としての植林事業の方法論について、2.安達一郎(JICA)、檜枝俊輔(日本工営)、中川原宏昭(日本工営)、櫻井幸子(日本工営)「新興国における環境政策・制度の発展と課題について-タイとベトナムでの先駆的事例分析を踏まえて-」、3.小松豊明(特定非営利活動法人シャプラニール=市民による海外協力の会/ルーテル学院大学)「国際開発とソーシャルワークの距離感と接近の可能性」。

    これらの報告に対する討論は、豊田知世(島根県立大学)と山口健介(東京大学)にお願いした。

    植林活動は地球温暖化防止活動として注目されるが、同時に地域の貧困削減等の社会経済活動でもある。久保報告は、材木利用による所得向上が目的にもかかわらず、しばしば木材需要先が確保されていないことや、事業期間が短期間なので、間伐・伐採・再植林のサイクルが事業に組み込まれていない等の問題があることを指摘し、ベトナム(政府主導)とマダガスカル(JICA)での成功例では、こうした問題が解決されていると述べる。

    これに対して討論者からは、民間企業と連携しての実施の可能性があり、REDD+やVCSの認証制度との整合性も重要だろうとのコメントがあった。

    安達報告は、途上国では産業振興政策が優先され、環境保存政策は後回しにされているというのが従来の認識であったが、近年は経済成長と環境保全対策の両立は可能という「エコロジー近代化論」に基づいた、従来型の規制的手段ではない先駆的な環境政策もタイやベトナムで見られると述べる。

    これに対して討論者からは、政策の設計段階で市民を巻き込むことを前提としていても、運用上で市民を巻き込めるのか、規制を受ける企業側の協力は担保されるのか等のコメントがあった。

    小松報告では、国際開発事業と国内の社会福祉・ソーシャルワークの分野は、かなり共通した活躍をしているものの相互理解が進んでいないと述べる。ソーシャルワーク側からは国際開発を「国際ソーシャルワーク」と捉える一方で、国際開発の分野では社会福祉ないしはソーシャルワークへの関心は薄いとのことである。

    討論者からは、国際ソーシャルワークの範囲を明らかにする必要があり、双方の接点を作るためにはどうすればよいかの提案をしてほしい等のコメントがあった。

    (藤川清史)


    E2. 開発(個人)日本語

    • 座長:斎藤文彦(龍谷大学)
    • 討論者:高橋清隆(恵泉女学園大学)、嶋田晴行(立命館大学)

    発表者

    1.「カンボジア農村女性の幸福度と社会関係資本」

    石黒馨(神戸大学)

    2.「中国における開発研究―その特徴と可能性―」

    汪牧耘(東京大学)

    3.「ターリバーンとともにアフガニスタンでSDGsを達成する―経済制裁から長期のベーシックインカム財源保障・給付条件整備援助へ」

    岡野内正(法政大学社会学部)

    本セッションでは3つの報告がなされた(以下敬称略)。第1は、石黒馨による「カンボジア農村女性の幸福度と社会関係資本」であった。社会関係資本についての研究は多いが、途上国の農村女性を対象にしたものは少ないので、その空白を埋めることを意図していた発表であった。

    幸福度と主観的健康を区別して調査した結果、幸福度の向上には、家族への信頼、金銭貸与、社会参加、家計所得、主観的健康度などが影響するのに対し、主観的健康の改善には、家族への信頼、金銭貸与、社会参加、子供の生存人数などが影響するとされた。

    これに対してコメンテーターの高橋清貴から、村の属性や、各種のコンテクストによって状況は変わるのではないかといった指摘がなされた。

    第2報告は、汪牧耘の「中国における開発研究」であった。西欧から入ってきた「開発研究」が中国にどのように受け入れられてきたかという大変興味深い研究発表であった。汪によれば、西欧の研究が普遍的発展モデルを提示する傾向があるのに対して、中国での研究はより実践的であるとまとめられた。

    コメンテーターの嶋田晴行からは、事前に詳細なコメントが提示されており、日本と中国の類似性や相違性も含めた幾つかの指摘がなされた。汪は返答として、中国が海外の研究者たちと交流することにより、中国自身の経験を明確化させることができ、それが重要であるとの指摘もあった。

    第3は、岡野内正による「ターリバーンとともにアフガニスタンでSDGsを達成する」であった。発表に際し、画面共有がうまくできなかったが、岡野内の主張としては、ベーシックインカムによって、(1)健康状況の改善、(2)経済の改善、(3)コミュニティの活性化が、もたらせたと指摘された。

    コメンテーターの高橋清貴からは、アフガニスタンが抱えるさまざまな課題が根深いものであるために、今後とも考察していくべき点は多々ある旨の指摘がなされた。

    座長としての感想を一言。全体に事例研究としては3報告とも特徴があり個性的であったが、今後、事例の研究意義をより明示的に提示できれば、それぞれの研究発表はさらに有益になるであろうと思われる。

    (斎藤文彦)


    E3. 社会/経済(個人)

    • 座長: 會田剛史(ジェトロ・アジア経済研究所)
    • 討論者:小國和子(日本福祉大学)、栗田匡相(関西学院大学)

    発表者

    1.「インドネシアとケニアの農村における農家の社会関係と食慣行の変化―食の入手・消費・共有に注目して―」

    伊藤紀子(農林水産政策研究所)

    2.「COVID-19のエジプト経済への影響」

    岡室美恵子(星城大学)、染矢将和(名古屋大学)

    3.「長期における新技術の導入・標準化・衰退」

    宮田幸子(立命館大学)、澤田康幸(東京大学)、高倉一真(東京大学)

    本セッションでは、発展途上国の社会・経済問題に関する3つの報告が行われた。

    第1報告は、伊藤紀子(農林水産政策研究所)「インドネシアとケニアの農村における農家の社会関係と食慣行の変化 ―食の入手・消費・共有に注目して―」で、主にインドネシアの農村調査に基づいて食事内容や共食の慣行についての分析結果が報告された。

    コメンテーターの小國和子氏(日本福祉大学)からは、共食儀礼が子供の栄養状態に与えたインパクトや、データ収集方法についての質問・コメントが挙げられた。他にも、現地における共食儀礼の詳細についての質問があった。

    第2報告は、岡室美恵子(星城大学)「COVID-19 のエジプト経済への影響」で、エジプトのマクロ経済状況を概観した後、クロスカントリーによるCOVID-19の経済成長への影響分析の結果に基づき、そのエジプト経済への影響をシミュレートした結果が報告された。

    コメンテーターの栗田匡相氏(関西学院大学)からは、データの制約に伴う計量分析モデルの妥当性や論文の構成についてコメントがあった。他にも、COVID前後の比較をすることで計量分析の精度を上げられる可能性が指摘された。

    第3報告は、澤田康幸(東京大学)「長期における新技術の導入・標準化・衰退」で、インドネシアのダム建設に伴う住民移転と養殖業への参入の決定要因に関する長期の計量分析結果が報告された。

    コメンテーターの栗田氏からは分析結果の解釈や住民移転が選好パラメータに与える心理的影響の可能性などについてコメントがあった。他にも、住民移転に伴う補償金が技術導入に与えた影響についての質問があった。

    (會田剛史)


    セッション報告F

    F1. Community Development

    • Chair: Koichi Ikegami (Professor, Emeritus, Kindai University)
    • Discussant: Emi Kojin (IDE-JETRO), Daisuke Sasaki (Tohoku University)

    Presenters

    “The evolution of community-based tourism in Vietnam – a critical review of policy and research-”

    Nguyen Quang Tan (Okayama University), Fumikazu Ubukata (Okayama University), Nguyen Cong Dinh (Hue University)

    “Influences of economic development among traditional mountain area – Case studies on remote tourist destinations in Shiga prefecture, Japan”

    Kiyoto Kurokawa (Ritsumeikan University)

    The session F1 “Community Development” comprised two presentations on local tourisms. The number of participants was approximately 20.

    Nguyen Quang Tan presented a case study on community-based tourism (CBT) in Vietnam. First, he analyzed tourism policy documents by a four -component framework, namely demands, decision, outputs, and impacts.

    As a result, he revealed that the process of tourism policy was divided into three periods, and the position of the CBT was still low for the government. Second, he showed the result of analysis of the peer-reviewed English articles by the qualitative thematic analysis (QTA) method.

    After he categorized them into three groups in terms of CBT perspective, he pointed majorities were ‘Development Supporters’ which put priority on an economic aspect. Other two categories, ‘Protectionists’ claiming importance of a cultural viewpoint and ‘Community Developers’ lying between the both categories were few.

    His main finding was the conformity of policies and studies. Emi Kojin commented three points; (1) unclear purpose and assumption of the study, (2) importance of narrowing down the area of policy (i.e., concentration on tourism policy), and (3) questions on economy-oriented policy and researches.

    Additional comment by a chair was a risk of bias caused from analyzing only English literature.

    Kiyoto Kurokawa explained the various local treasurers and a local tourism project planned at the ancient emperor palace of Shikaraki situated in Shiga Prefecture. According to his presentation, Shiga Prefecture is rich in local treasurers, ranging from nature parks to cultural heritages as well as traditional folk crafts, but they could not attract many domestic tourists because of low visibility.

    A local tourism project based on the historical backgrounds might change such situation because of increase in demand of cultural tourism.

    Daisuke Sasaki commented the necessity of verifying the conclusion in an evidence-based manner, and suggested effectiveness of Tourism Destination Competitiveness (TDC) for compensating for this weakness.

    Even though the demand of local tourism such as nature-based and cultural one is increasing instead of mass-tourism, there are a lot of tourism sites in the local area. The question is how tourists decide their destination. The TDC approach can open a new perspective for researchers and practitioners related with a tourism sector.

    (Koichi Ikegami)


    F2. Education (Individual) *English

    • Chair: Taro Komatsu (Sophia University)
    • Discussant:Mikiko Nishimura(ICU)、Katsutoshi Fushimi (JICA)

    Presenter

    “The Implementation of Practices Related to Student Achievement by Municipal Governments in Brazil”

    Leite Dalmon Danilo (Kobe University)

    “War Trauma and Education―A Case Study of Bosnia and Herzegovina―”

    Mari Katayanagi (Hiroshima University)

    “Long-term Impact Evaluation of Conditional Cash Transfer Program on Poverty: Evidence from the Philippine Fishers”

    Melisa Fabella (Ritsumeikan University)

    This session was attended by some 20 participants. There were three presentations as below.

    Leite Dalmon Danilo (Kobe University): The Implementation of Practices Related to Student Achievement by Municipal Governments in Brazil

    The proposed research intends to fill this gap in the literature by analyzing the practices of effective
    municipalities in primary education in Brazil by using the “district effectiveness framework.”

    The expected outcomes for this research include the analysis of the implementation of “effective district
    practices” by municipal secretaries of education in Brazil that are considered “effective”.

    This should contribute to the literature by expanding the range of contexts in which effective district practices can be used to describe the mid-level government practices associated to higher student achievement.

    Moreover, it will provide new evidence that Brazilian policymakers and those from other low- and middle-income countries can use to improve their government practices.

    A commentator suggested, among others, that the study take into consideration local contextual factors that may affect the study topic.

    Mari Katayanagi (Hiroshima University): War Trauma and Education ―A Case Study of Bosnia and Herzegovina―

    The study aims to interrogate the effects of war trauma on school education and learning in the case of Bosnia and Herzegovina.

    The data were examined using qualitative narrative analysis, questioning how children were psychologically affected by war, what consequences were observed in their education, and how they have coped or were coping with the consequences.

    The study concludes that children become particularly vulnerable when they are separated from their families; when the uncertainty of the future increases and credible threats to life are felt, children lose their motivation to study; education assists in holistic development and the attainment of resilience to overcome challenges, including psychological ones; and attention must also be paid to cultural specificities and attitudes towards psychological care and treatment.

    A commentator asked for clarification regarding the data analysis, literature gap and research ethics, which were answered by the presenter point by point.

    Melisa Fabella (Ritsumeikan University) Long-term Impact Evaluation of Conditional Cash Transfer Program on Poverty: Evidence from the Philippine Fishers

    The research evaluated the long-term impact of the CCT program (4Ps) on poverty and examine its alignment with the SDG No. 1, which was to eradicate extreme poverty.

    The study reveals that the program has reduced poverty among the poor across time. This study has also found some issues within the dataset that should be addressed such as data outliers and inconsistencies with other impact evaluation studies in the country.

    Furthermore, in order to keep the program`s effectiveness through time, critical impact monitoring and evaluation should be continuously done to ensure that the people, especially the poor and the marginalized sector, can truly benefit in the program.

    A commentator asked for clarification regarding the data analysis procedure. There was also a brief discussion regarding the impact of the program on education as it was the session’ theme.

    (Taro Komatsu)


    F3. Economy / Society (Individual)

    • Chair: Masato Noda (Ibaragi University)
    • Discussant: Yasushi Katsuma (Waseda University), Takao Toda (Meiji University)

    Presenter

    1. “Economic Analysis on Socio-Economic Growth by the Impact of Official Assistance: A Case Study of Laos’ Tertiary Education Relation to Growth; Knowledge of Electronic and Entrepreneur in the Field of Electronic Investment”

    Soulivanh CHANSOMBUTH (Ritsumeikan University)

    2. “Distribution of COVID-19 Vaccines to 49 Sub-Saharan African Countries: Which Vaccines Go Where and How?”

    Tatsufumi Yamagata (Ritsumeikan Asia Pacific University), Naoko Takasu (Ritsumeikan Asia Pacific University)

    当セッションでは、第1報告として、Soulivanh Chansombuth 会員(立命館大学)、第2報告としてNaoko Takasu会員 およびTatsufumi Yamagata会員(ともに立命館アジア太平洋大学)から次の報告がなされた。参加者は24名であった。

    第1報告では、Economic Analysis on Socio-Economic Growth by the Impact of Official Assistance A Case Study of Laos’ Tertiary Education Relation to Growth; Knowledge of Electronic and Entrepreneur in the Field of Electronic Investmentと題し、オーストラリアの援助がラオスの高等教育を通じて経済成長もたらす影響等について、産業人材の開発に着目した分析がなされた。

    また、第2報告では、Distribution of COVID-19 Vaccines to 49 Sub-Saharan African Countries: Which Vaccines Go Where and How?と題し、サブサハラアフリカ地域におけるCOVID-19ワクチン接種の現状と課題について、UNICEFのCOVID-19 Vaccine Market Dashboard等のデーターをもとに分析がなされた。

    質疑応答では、第1報告に対して討論者の戸田隆夫会員(明治大学)から分析方法の妥当性等について、座長の野田からはドナーとの関係や評価等について質問・コメント等がなされた。

    第2報告に対して、勝間靖会員(早稲田大学)からCOVAX等によるワクチン分配等について、戸田会員からサブサハラ地域の多様性とワクチン等について質問・コメントがなされた。続いて、参加者による活発な議論が時間いっぱいまでなされた。大変充実したセッションとなり、関係各位に感謝申し上げる。

    (野田真里)




    グローバル連携委員会からのお知らせ(2022年8月)

    グローバル連携委員会では、以前にお伝えしましたように、2023年2月の刊行を目指して、学会誌編集委員会と連携して学会誌英文号の準備作業を進めています。それに加えて、以下の活動を行いました。

    1.国際ワークショップの開催

    現在準備を進めている学会誌英文号の刊行へ向けて、特集企画のテーマを検討することを目的とした国際ワークショップを開催しました。このワークショップは、佐藤寛会員(ジェトロ・アジア経済研究所)が代表している研究プロジェクトと連携し、タイのチュラロンコン大学との共催で開いたものです。英文号の編集委員ならびに国際諮問委員の参加を得て、活発な議論が交わされました。

    • テーマ:Development Knowledge: Asian Style
    • 日時:17:00-19:00 (JST), March 18, 2022(Zoomによるオンライン開催)

    プログラム

    17:00 Opening Remark
    by Dr. Kim Eun Mee (Rector, Ewha Womans University, South Korea)

    17:10 Provocation/Questioning Development Knowledge in Asia
    by Dr. Soyeun Kim (Sogang University, South Korea)

    17:30 Struggle for Shaping Asian Development Sociology
    by Dr. Sato Kan Hiroshi (Institute of Developing Economies, Japan)

    17:45 Development Sociology in India
    by Dr. Yutaka Sato (Tsuru University, Japan)

    18:00 Primary Comment
    by Dr. Surichai Wungaeo (Chulalongkorn University, Thailand)

    18:10 Comments
    from other observers

    18:30 Reply
    from presenters and Discussion

    19:00 Closing Remark
    by Dr. Jin Sato (President of JASID, The University of Tokyo, Japan)
    Moderator: Dr. Yuto Kitamura, (Chief Editor for the Journal of International Development Studies [English-only issues], The University of Tokyo, Japan)


    2.ウクライナ緊急セミナーの開催

    2022年2月から始まったロシアによるウクライナへの侵攻を受けて、教育学の視点から何ができるのかを考えるために、以下の緊急セミナーを開催しました。このセミナーは、日本教育学会国際交流委員会が主催し、本委員会と日本比較教育学会・国際交流委員会との共催で開いたものです。

    現在、ロシアによるウクライナへの侵攻が続き、多くの人命が失われています。国外に脱出できない人も多く、また、国外に逃れることができた人々にも難民としての厳しい現実が待っています。とくに、子どもたちは厳しい状況に置かれています。こうした状況に対して、教育と平和の問題について考えるため、関連学会と連携して緊急セミナーを開催しました。

    このセミナーでは、これまで国連機関の教育担当官や国際協力機構(JICA)の専門家としてボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボ、アフガニスタンなどの紛争経験地域において教育協力事業に携わってこられた、小松太郎会員(上智大学)にご登壇いただきました。

    • テーマ:ウクライナ情勢を考える:教育学に何ができるか?
    • 日時:2022年3月24日(木曜)15:00~16:30(Zoomによるオンライン開催)

    プログラム

    1. 主催者代表の挨拶:小玉重夫(東京大学/日本教育学会会長)
    2. 対談:小松太郎(上智大学)× 北村友人(東京大学)

    グローバル連携委員会
    委員長:北村友人(東京大学)