第34回全国大会セッション報告(一般口頭発表)

一般口頭発表


1C:教育(日本語)

  • 座長:小川 啓一(神戸大学) 
  • コメンテーター:坂上 勝基(神戸大学)、黒田 一雄(早稲田大学)
  • 2023年11月11日(土曜)09:30 〜 11:30
  • 会場:紀-B104 (紀尾井坂ビルB104)
  • 聴講人数:32名

第1発表:[1C01] ケニア農村部の初等教育の公正性と包摂性―公立と私立の二項対立分析の再考

西村 幹子(国際基督教大学)

西村会員は、ケニア農村部の初等教育において、それぞれの学校を率いる校長やシニア教員が公正性や包摂性をどのように捉えているかについて発表した。

学校の公正性と包摂性は、校長や教員の背景にある考え方や経験、マサイ族の文化、地域との関係性に依っており、必ずしも私立校、公立校という二項対立軸で捉えられるものではないことを明らかにした。

これに対して、コメンテーターの黒田会員から、私立-公立という二項対立軸ではなく、それぞれの学校運営を支えるコミュニティや民族の文化、校長や教員のこれまでの経験に関するインタビュー調査の分析に基づく、本発表のユニークネスについての評価がなされた。

第2発表:[1C02] 授業形態別にみた教育効果の検証:バリ島における環境教育を事例に

栗田 匡相(関西学院大学)

第二発表では栗田会員から、バリ島における環境教育を事例にして、授業形態別による教育効果の差について検証した研究成果の報告が行われた。

座学のみと比べて、地域における体験型の環境学習を組み合わせた形態によって授業を提供する方が、教育効果が中長期間継続することを示した。

これに対し、コメンテーターの坂上会員は、環境教育の効果を実証した本研究のSDGs時代における重要性を強調した上で、対照群と処置群の選定方法について確認する質問を行った。

また、環境問題に関する児童の認知能力向上のみならず、介入が環境保全状況の改善に与える効果まで検討する、今後の研究の展開の可能性についての指摘がなされた。

第3発表:[1C03] 現状に見るミャンマー連邦共和国の基礎・高等教育の課題 

牟田 博光(国際開発センター)

第三発表で牟田会員は、新型コロナウイルスと軍事政権の成立という二重のショックを受けたミャンマー連邦共和国の基礎・高等教育における現状と課題について、発表した。

教員研修の重要性、学力低下の危惧、人的資源蓄積の滞り、混乱収束後の課題が示された。

これに対して、コメンテーターの黒田会員は、日本が長年援助してきたミャンマーにおいて、教育システムが不安定になっている状況について言及した。

また、本発表で使用されたデータの貴重性を強調した上で、今後学術論文として世に公開されることへの期待を述べられた。

第4発表:[1C04] コートジボワールの初等教育における非認知能力の視点からみた教育の質

小松 勇輝(大阪大学大学院)

第四発表では小松会員から、コートジボワールの初等学校に通う児童の非認知能力、特に自己効力感と教育の質に関する報告がなされた。

学校内の児童-教師間のインタラクションと職業教育における徒弟制が、児童の自己効力感の涵養プロセスに関与していることが、主に参与観察を用いた長期間のフィールド調査によって明らかになった。

これに対してコメンテーターの坂上会員は、初等教育を対象とする研究の中で、公立校とインフォーマルセクターである職業教育の事例のみ取り出して、並列にして分析をすることの妥当性について質問した。

また、学術的蓄積が比較的乏しい西アフリカにおける、本研究の意義の大きさについても言及した。

【総括】

本セッションでは、ケニア、インドネシア、ミャンマー、コートジボワールにおける教育の現状や課題、最新の動向についての研究成果が報告された。

コメンテーターからのコメント・質問はもとより、フロアからも積極的に質問やコメントが挙がり活発な議論が行われ、発表者・参加者の双方にとって有意義なセッションとなった。

報告者:小川 啓一(神戸大学)

1D:若者と雇用(日本語)

  • 座長:吉田 和浩(広島大学) 
  • コメンテーター:狩野 剛(金沢工業大学)、谷口 京子(広島大学)
  • 2023年11月11日(土曜)09:30 〜 11:00
  • 会場:紀-B108 (紀尾井坂ビルB108)
  • 聴講人数:00名
  1. [1D01] ウガンダにおける社会的遺児の強いられた自立と職業訓練
    *朴 聖恩(京都大学大学院)
  2. [1D02] アフリカによるアフリカのための研修-ケニアの気候変動の脅威に対する第三国研修の実施を通じたサブサハラアフリカ諸国への貢献-
    *本庄 由紀(ケニア国技術協力プロジェクト)
  3. [1D03] ケニアにおけるコンピテンシーにもとづくカリキュラム改革-導入の背景と新たな課題-
    *大塲 麻代(帝京大学)

【総括】

報告者:吉田 和浩(広島大学)

1E:経済(日本語)

  • 座長:西浦 昭雄(創価大学) 
  • コメンテーター:山形 辰史(立命館アジア太平洋大学)、會田 剛史(一橋大学)
  • 2023年11月11日(土曜)09:30 〜 11:00
  • 会場:紀-B112 (紀尾井坂ビルB112)
  • 聴講人数:16名

第1発表:[1E01] 中国における地域の教育格差: CHFSに基づくジニ係数の分解分析

李 鋒(中央大学大学院)

コメンテーターの會田会員より、質の高い研究であり、都市・農村内の教育格差が都市と農村間の教育格差より大きいことを示した点がユニークである一方で、①どのような仮説を検証したいのか、なぜそれが重要なのか、先行研究の中でどのような貢献があるのか、といった研究課題を明らかにすべき点、②都市・農村内での教育格差が拡大した理由まで掘り下げる点、③2014年度の制度改革による教育格差の是正に関する効果を分析する点、のコメントがあった。

これに対して、李会員より、先行研究では都市に住んでいる農村出身の人々の格差までは計測できていないと回答した。

フロアからの質疑応答では、修学年数をジニ係数で計測した先行研究の存在や格差を示す値の目安、農村戸籍から都市戸籍にコンバージョンするプロセスについての質問があった。

第2発表:[1E02] 生成系 AIの勃興がもたらす開発途上国への影響の考察:機会と脅威

内藤 智之(神戸情報大学院大学)

コメンテーターの山形会員より、生成系AIがアフリカの労働者・農民にとって脅威なのか、それとも機会なのかという議論を経済学の代替性と補完性に分けて考えると、新技術が一般的労働者の補完的になったバングラデシュ縫製業による事例からも、一般的労働力(非熟練労働)が生成系AIによって補完的になることがアフリカ貧困削減につながることになるとのコメントがあった。

これに対し、内藤会員からは、過去のインターネットの経験から考察すると、アフリカの雇用とAIをトレードオフではなく、ポジティブな関係だと捉えていること、補完的になれるよう今後の20年を考えるための政策提言を考えていきたい、そのため農業の中では小作農のリテラシー教育が重要性をもつのではないかと、いう回答があった。

次にフロアより、大規模言語モデルではマイナー言語の蓄積が少なくなるので言語による格差が広がるのではないかという質問があった。

第3発表:[1E03] 農産品サプライチェーンにおける多様な連帯:グローバルノースとグローバルサウスの歯車

楊 殿閣(ソリダリダード・ジャパン)

コメンテーターの山形会員より、発表では社会的連帯経済を形成するために、インドネシアのパーム油とインドのコットンを事例に国際NGOであるソリダリダードの役割について考察しているが、その役割は研究や技術協力であり、買い付けや販売組織をもっているわけではなく、ユニリーバやサラヤといった買い付けを行う企業にとってソリダリダードはどのように評価されているかを視点に加えていくべきではないかというコメントがあった。

これに対し、楊会員より、植物油を使用する企業は人権や環境保護の観点からサプライヤーとの関係に注力しているが、農業生産を専門にしているわけではないため、農業が持続可能性を保つために小農、農法支援の面で市民社会と企業のパートナーシップをとる事例が増えているとの回答があった。

フロアからの、消費者の行動変容の視点、現地政府主導の認証システム、開発途上国発の加工企業の場合のグローバルノースとグローバルサウスの立て分けについてのコメント・質問があった。

【総括】

経済分野のセッションとして、中国の都市・農村の教育格差、生成系AIによるアフリカ雇用への影響、グローバルノースとサウスの社会的連帯経済の形成など広い観点から発表され、活発なコメントならびに質疑応答があった。

そこでは国際開発を考える上での新しい視点が多く提起されるなど、有意義なセッションであったと総括できる。このセッションを萌芽としてこれらの議論が発展することを願っている。

報告者:西浦 昭雄(創価大学)

1H:水と衛生(日本語)

  • 座長:杉田 映理(大阪大学) 
  • コメンテーター:西野 桂子(関西学院大学)、緒方 隆二(国際協力機構)
  • 2023年11月11日(土曜)09:30 〜 11:30
  • 会場:紀-108 (紀尾井坂ビル108)
  • 聴講人数:20名

第1発表:[1H01] バングラデシュ南西沿岸部における世帯単位の給水サービスの可能性-ポンド・サンド・フィルターと逆浸透膜給水装置の比較から-

山田 翔太(立教大学)

バングラデシュ沿岸部の水源管理および支払い意思に関しての研究であり、今後の現場での国際協力の方法を考える際に有用な研究発表であった。その点を評価したうえで、コメンテーターからは次のコメントがあった。

1)給水施設の区分に関して、公共の水源(コミュニティ型水源)、個人単位で設置や運営できる水源、ビジネスを通じた給水サービスの3区分に分けるべきではないか?また、その上で先行研究をもとにそれぞれの長所、短所をまとめると分かり易い。

2)結論に関して、一般化しすぎているようにも見える。例えば、PSFでもうまくいっている事例もあるはずであり、ビジネスを通じたサービスでもうまくいっていない事例もあるのではないか(もしくは収入によって支払い意思が低い層の存在もあるだろう)。

3)コミュニティ型水源にもPSF以外に深井戸や小規模水道もあり、今回の1カ所のPSFを通じた調査結果や教訓をすべての公共の水源に適用できるかは疑問が残る。

第2発表:[1H02] 住民は手押しポンプをどのように用いるのかーモザンビーク北部農村における水源の多様性と季節性に着目してー

近藤 加奈子(京都大学大学院)

コメンテーターからは、モザンビーク農村住民の複数水源の利用状況、季節による水源利用の違いを明らかにしようとしている興味深い研究であったと評価された。

一方で、次の点が指摘された。分析の方法を多少改良する必要があること。まず、いくつかの種類の水源を調査対象としているが、水源の客観的なカテゴリーを明らかにした上で比較検討する必要がある(JMPによるカテゴライズ:Improved or Unimproved もしくはSafely managed, Basic, Limited, Unimproved)。

住民が複数の水源を使う場合は、水源によって使い方(例えば飲料用、料理用、その他)が異なるはずであり、データがあれば具体的使い方も含めて分析すべきではないか。また、提言は具体的な例を入れた方が良い(従来の水源の改良が望ましい→例えばどのような改良?)。

さらに、用語に関しても、「手押しポンプ」→「深井戸」もしくは「手押しポンプ式深井戸」、水源は「メイン、サブ」ではなく、「飲料用、料理用、その他」で分けた方が良いのではとの助言があった。

第3発表:[1H03] ベトナム農村部における浄水需要:個別家庭型アプローチの有効性

黒川 基裕(高崎経済大学)

コメンテーターから、ヒ素除去が可能となる小型浄水ボトルの商品企画・開発」を通じて、ハノイ近郊農家のヒ素問題が解決できるかの実証実験を試みた意欲的な研究であると評価したいこと、また、援助ではなく、BOPビジネスを検討している点が経済発展が著しいベトナムに適していると考えられることが示された。

サブスクリプション形式とし、ラテライトのフィルターを回収するところまで寛がられており、今後に対して示唆が多いとのコメントもフロアからもあった。

第4発表:[1H04] 市民参加と情報公開を通じた統合水資源管理、環境管理分野の協力アプローチの可能性

大塚 高弘(独立行政法人国際協力機構)

「参加型の取り組みを効果的に活用する協力アプローチとは?」という問い、すなわち、「JICA・カウンターパート・住民(社会)の三方よしの協力アプローチが作れないか?」という問いに対する実践的な研究であるとコメンテーターから評価された。

また、行政から市民への情報公開の重要性は明らかである一方、タイとボリビアの2案件において参加のはしごの参加のレベルをどのように評価できるのか、質疑応答がなされた。

【総括】

個人発表枠で「水と衛生」というセッションが組めたのは、国際開発学会では久しぶりであり、非常に中身の濃い、有益なセッションとなった。

安全な水の確保を目的としながら、給水のしくみとしは、ポンド・サンド・フィルター、逆浸透膜給水装置、手押しポンプ付き深井戸、小型浄水ボトルと多様であり、水分野研究の奥行きを示すセッションであった。

また、すべての発表に共通して、住民が、それぞれの活動にどのように参加する(サブスクも含め)のかが議論されており、重要課題であることが確認された。

報告者:杉田 映理(大阪大学)

1L:海洋文化・先住民族(日本語)

  • 座長:関根 久雄(筑波大学) 
  • コメンテーター:佐藤 敦郎(九州大学)、東方 孝之(アジア経済研究所)
  • 2023年11月11日(土曜)09:30 〜 11:00
  • 会場:紀-404 (紀尾井坂ビル404)
  • 聴講人数:13名

第1発表:[1L01] 開発に直面する先住民族の協議・ FPICに関する国際比較研究プロジェクトの構想

寺内 大左(筑波大学)
小坂田 裕子(中央大学)
深山 直子(東京都立大学)

コメンテーターから、インドネシアの一民族であるダヤックを事例として取り上げた分析からはどの程度の一般化が可能なのか、多民族国家インドネシアに注目することにより分析を拡張できる可能性、そして地方政府の特徴に注意する必要性、といった指摘や質問があった。

これらに対して、事例研究としてダヤックに注目する(インドネシアの代表例として位置付けることは重視していない)ことや、アクターとしての地方政府についても注目する予定であることなどの回答があった。

また、「国連宣言の中には『継続的な協議』という文言がなく、FPICにおける『同意』が『契約』に近いことから、将来、予想外の悪影響が生じても『同意』が縛りとなり、先住民族に悪影響を強いる危険性がある」という発表内容について、フロアから国連宣言やFree Prior and Informed Consent((FRIC)の中に”Continuous”という文言を加える方法は取れないのか、という質問があり、それに対して、すでに採択された文言なに改良を行うことは非現実的であり、目の前で生じている事態に対する短期的・即効的な方策を考える必要がある、という応答があった。

第2発表:[1L02] コミュニティベース海洋環境教材の国際ネットワーク化に関する研究

小林 かおり(椙山女学園大学)

里海とは人が環境にアクセスすることであり、利活用が必然だとすれば、ゴミの海洋投棄は必要悪とも言える現象ではないのか。

「そういうもの」という発想に立脚して里海のあり方、環境教育のあり方、漂着ゴミ問題を考えることはできないか、という質問に対し、自然と人間との関係性の観点からそういう見方はありうるが、現状はすでに必要悪の次元を超えていて、改善すべき課題として直視しなければならないところまで来ており、その意味からも環境教育の必要性は待ったなしの状態にある、という趣旨の応答があった。

また、「海外と日本」の海洋環境教育といった具合に対象を二項対立的に捉えているのではないかという質問があり、それに対し、「先行研究において(海洋に限らず)環境保護は欧米と日本の捉え方は異なっていて二項対立的に捉えられ書かれる傾向があるものの、海洋環境教材はそのような発想で書かれているわけではない。

なぜなら、台湾の場合も日本と同様に「海洋環境の持続可能性」に焦点を当てた海洋環境教材が主流であるから」という回答であった。

第3発表:[1L03] 諫早湾干拓の開発史

松原 直輝(東京大学)

発表者が諫早湾干拓事業に関して、官の役割に着目していることに対して、コメンテーターは、事業主体としては官ではあるが、その中にも公共の論理と民間の論理が混在しているとの問題意識から、漁民、農民(半農半漁)、自然環境保護活動家、ディベロッパー、国(食糧増産、防災)、裁判所の立場で公共と民間の論理を指摘した。

また、歴史分析の反実仮想的な発想から、干拓事業を見るとどのように考えられるか、質問した。

コメントに対して、発表者からは、公共の論理と民間の論理について、前者について時代を越えて一貫したものが存在せず、後者が前者の中に吸収されている印象があること、また、反実仮想的な発想からの分析は今後の課題である、という回答があった。

また、諫早湾の事例について、第2発表者に対するものと同様に、発表者は「行政/市民」と二項対立的に対象を捉えているのではないかという質問が出されたが、過去の事例を踏まえると二項対立的に解釈せざるを得ない、という応答であった。

【総括】

3事例ともに外的要因に基づく開発行為が当該地域住民の暮らしに重大な影響を及ぼし、かつ彼らの生活域内における自然環境と地域住民との関係のあり方に懸念が生じたり、その関係性のあり方に変更を迫ったりするような事態を対象にした研究であった。

いずれも発表者の視点は地域住民の側に注目し、微視的に対象を捉えながら、自然環境と住民を取り巻くマクロな動きとミクロの現実との接合を試みる意欲的な研究内容であった。

報告者:関根 久雄(筑波大学)

1M:Development theory and practice (English)

  • 座長:新海 尚子(津田塾大学) 
  • コメンテーター:後藤 健太(関西大学)、島田 剛(明治大学)
  • 2023年11月11日(土曜)09:30 〜 12:00
  • 会場:紀-407 (紀尾井坂ビル407)
  • 聴講人数:00名
  1. [1M01] Dragon Rouge Redux: Assessing China’s Economic Hegemony in Cambodia
    *Toufic SARIEDDINE(Nagoya University)
  2. [1M02] CDMモデルから考察した途上国におけるイノベーションと外資系企業の役割ーベトナムの製造業企業を事例に
    *TranThi Hue(神戸女子大学)
  3. [1M03] Digital Currency and Development: Exploring the Potential Contribution and Challenges of Central Bank Digital Currency, “ Bakong,” for Development in Cambodia
    *Hisako KOBAYASHI(Oriental Consultants Global Co., Ltd.)
  4. [1M04] The Role of Private Sector toward Poverty Reduction – Analysis of Case Study in India –
    *伊波 浩美(JDI)
  5. [1M05] Regional decline and structural change in Northeast China: An exploratory space-time approach
    *Chen Yilin(Nagoya University, Graduate School of International Development)

【総括】

報告者:新海 尚子(津田塾大学)

1N:オンライン(日本語)

  • 座長:高柳 彰夫(フェリス女学院大学)
  • コメンテーター:戸田 隆夫(明治大学)、高橋 基樹(京都大学)
  • 2023年11月11日(土曜)09:30 〜 12:00
  • 会場:紀-409 (紀尾井坂ビル409)
  • 聴講人数:00名
  1. [1N01] インドネシア・リアウ州における泥炭火災予防:現状・課題・対応案 *久保 英之1、Albar Israr2、Kurniawan Anung 2 (1. JICA専門家、2. インドネシア国環境林業省)
  2. [1N02] ASEAN諸国におけるデジタル経済促進分析:課題と戦略
    *原 正敏1、*橋 徹2 (1. ビジネス・ブレークスルー大学大学院、2. 早稲田大学)
  3. [1N03] 障害者権利条約に基づく国際協力を巡る論点及び概念整理の課題に関する一考察一各国への総括所見及び建設的対話の分析から
    *福地 健太郎(国際協力機構)
  4. [1N04] 島嶼は日本の縮図たるか?——離島及び日本における水・エネルギーの対外依存状況に着目した一考察
    *關谷 武司1、*吉田 夏帆2、*芦田 明美3 (1. 関西学院大学、2. 兵庫教育大学、3. 名古屋大学)
  5. [1N05] エジプト日本科学技術大学における教育研究機器導入、および活用プログラム開発
    *松下 慶寿(エジプト日本科学技術大学)

【総括】

報告者:高柳 彰夫(フェリス女学院大学)

1O:援助機関と現場(日本語)

  • 座長:林 薫(グローバル・ラーニング・サポート・コンサルタンツ代表/元文教大学教授)
  • コメンテーター:小林 誉明(横浜国立大学)、志賀 裕朗(横浜国立大学)
  • 2023年11月11日(土曜)09:30 〜 11:00
  • 会場:紀-412 (紀尾井坂ビル412)
  • 聴講人数:20名

第1発表:[1O01] 日本の政府開発援助の効率性とコンサルタントの関係

*大須賀 誠(法政大学大学院 公共政策研究科 博士後期課程)

本報告は日本のODA の技術協力に関して、ODA 大綱の変遷、経済団体と政府の関与、援助体制とコンサルタントの役割などについて概観し、日本の援助実施体制が欧米に比較して弱体であること、このギャップを埋めているのがコンサルタントであるが、ODA予算の減少によって、コンサルタントの雇用が減少したり単価が引き下げられたりしていることなどが、ODAの実施体制を更に困難に陥れていることを説明しようとした報告である。

報告ではコンサルタントは相手国の要望に合わせた機材を国際的な経験によって把握しているので、助言や専門的知識を提供することで技術協力が効果的に推進できるであろうが、残念ながら、コンサルタントの知見が政策立案に十分反映される条件になっているとは言えない。

さらに、個々のコンサルタントの処遇も十分ではなく、何らかの育成策が必要であると結論づけている。

本報告に対しては、「日本のODAの効率性とコンサルタントの関係」がリサーチ・クエスチョンであり「コンサルタントを活用すること」がその答えなのだとすると、新聞報道、ODA大綱、経済団体の要望書、日本の援助体制の未整備(職員数の少なさ)はエビデンスとして不十分ではないかという疑問が提起された。

むしろ、人数で「効率性」を測っているのであるとすれば、現在すでに日本のODAは極めて効率的と判断することもできるわけであるから、そもそもODAの効率性とは何かという概念定義からしっかりと行う必要がある点も指摘された。

座長からも、ODAの規模の指標として予算額は必ずしも適切ではなく、事業規模も見るべきであること、コンサルタントの雇用形態や役割は多様であり、さらなる分析と考察が必要であることを指摘した。

第2発表:[1O02] バングラデシュ郡自治体円借款事業によるガバナンス改善:ガバナンス借款の可能性

*宗像 朗1、*杉山 卓2 (1. 独立行政法人国際協力機構、2.株式会社コーエイリサーチ&コンサルティング)

本報告は、バングラデシュの郡自治体借款事業(UGDP)1を事例にガバナンス借款の可能性を検討したものである。

この事業では①バングラデシュ全郡(約500 郡)を対象に実施した行政評価、②行政評価に基づいた開発資金の郡への供与、③研修とファシリテーターによる基本行政実施支援、の三つを柱にする約147 億円の円借款事業である。

このPDCAとインセンティブを組み合わせた仕組みにより、群自治体関係者のオーナーシップが高まり、説明責任の向上や適正な手続きの確保など実際にガバナンス改善が見られたとし、ガバナンス借款には大きな可能性があるとした報告である。

本報告に対しては、円借款によって全国的・広域的にガバナンス改革を促進する可能性を検討した興味深い論考であること、またその経緯を丹念に記録しデータを採った上でシンプルな記述統計を使って効果の発現を示した実証分析であることから、極めて高い評価がなされた。

一方、「日本の援助機関によるバングラデシュという特定の国に対する一事例」の紹介(アネクドート)にとどまっている嫌いがあるため、比較事例研究とするなどして、一国事例を超えた普遍的な教訓を引き出すことを検討してほしいとのコメントがなされた。

座長からは、これは日本の国際協力におけるプログラム支援の成功例であり、円借款という資金規模が大きい仕組みを使って全国をカバーできたことが、指摘されたような効果を生んだと考えられ、特筆すべきであるが、ガバナンス改善効果についてはより客観的なデータで評価する必要があること、インパクト評価を実施すれば教訓を一般化できることなどを指摘した。

第3発表:[1O03] 技術協力プロジェクトにおける効果的な実施・監理手法に関する考察~パキスタン国パンジャブ州上下水道管理能力強化プロジェクト(フェーズ1、フェーズ2)の事例における非技術的要素の検討~

*佐藤 伸幸(日本テクノ株式会社)

本報告は、技術協力のプロジェクト・マネジメントの一要素としてペタゴジー(Pedagogy;子供を教える技術と科学)に対するアンドラゴジー(Andragogy:成人の学習を援助する技術と科学)に焦点を当てた。

前者では知識を教えることに重点が置かれるが、後者では気づきと学びが重要である。

アンドラゴジーの要素を検討の結果、報告では、効果的なプロジェクト・マネジメントは、①どのような考え方でプロジェクトのカウンター・パートに対応してゆくのか、② どのような視点・問題意識とプロセスで協力を進めてゆくのか、③技術協力専門家の役割と立ち位置はどのようなものかの3点が重要であると結論づけた。

本報告に対しては、技術協力プロジェクトの成功要因の概念化に取り組んだ興味深い論考であり、見えにくく注目されにくい「非技術的要素」にも光を当てている点は意義深いとの評価がなされた。

そして、単一事例研究に終わらせずにより広い普遍的なrelevanceを持つものに発展させるためには、他国・他機関の事例との比較研究を行って理論的な精緻化を進めてほしいとの提案がなされた。

その一方で、「アンドラゴジー」という概念の有効性を証明するための事例分析をしているようなきらいがみられるため、既存のドグマに囚われすぎる必要はなく、むしろ現場の経験に基づいて既往理論に修正を加えるくらいの姿勢があっても良いのではないかという指摘もなされた。

座長からは、教育で「気づきと学び」を重視するアプローチは、現在ではアクティブ・ラーニングのように小中学校の学習でも重視されるようになってきており、ペダゴジーとアンドラゴジーの対比はやや古いパラダイムになりつつあるのではないかという指摘を行った。

【総括】

総じて、本セッションはODAを通じた人材育成の重要性に焦点が当てられ、その最適な手法についての議論が行われたセッションになった。

日本のODAの強みは人材育成であり、これが日本の国際的な役割として重要であること、ODA政策において人材育成がもっと重視されるべきであることを座長から指摘して、セッションを終わった。

報告者:林 薫(グローバル・ラーニング・サポート・コンサルタンツ代表/元文教大学教授)

2L:Health, gender, family (English)

  • 座長:松山 章子(津田塾大学)
  • コメンテーター:高松 香奈(国際基督教大学)、宇井 志緒利(明治学院大学)
  • 2023年11月12日(日曜)09:30 〜 11:30
  • 会場:紀-404 (紀尾井坂ビル404)
  • 聴講人数:20名

第1発表:[2L01] Scalable and Sustainable Adaptive Solutions to COVID-19 Disruptions in Family Planning (FP) Health Service Delivery in the Philippines

Leslie Advincula LOPEZ
Jessica Sandra Claudio
Haraya Marikit Mendoza
(Ateneo de Manila University)

The presentation was on a policy advocacy-oriented research on family planning health service delivery in the Philippines based on the experiences during the COVID-19 pandemic. Dr. Shiori Ui, the discussant, acknowledged its academic and practical significance in flexibility and innovative adaptation experiences of the project activities during normal time which can be utilized for the pandemic time. She, however, raised some important inquiries including the needs of detailed analysis of BARMM (Bangsamoro Autonomous Region in Muslim Mindanao). She also emphasized the importance of further analysis on its role of the identified Health Care Provider Network. Exploring how it contributes to UHC (Universal Health Care) would be very much insightful for us.

第2発表:[2L02] Caring through a Pandemic: Filipino transnational families’ survival of disrupted mobility during the COVID-19 crisis

Derrace Garfield MCCALLUM(Aichi University)

The presentation was on the study exploring the impact of digital technology on Filipino transnational families, focusing on how ICT (Information and Communication Technology) ’s influence the (re)creation and maintenance of family bonds during the COVID-19 pandemic. The discussant, Dr. Kana Takamatsu, appreciated that the paper was convincing and well organized. Acknowledging its nique feature which challenged the existing notion, she inquired some important methodological and analytical approaches. She asked if the results would be different by age and gender. It was also pointed out by her the term, “care”, should be clarified and defined since care is an ambiguous word, could mean emotional and/or financial spheres. Moreover, she raised interesting question that intimate relationships of ICTs could become possible “possessive relationship”.

第3発表:[2L03] Gender dimensions of the world of work under crises: Trends and challenges

Naoko OTOBE

The presenter reported, using the existing panel data of world of work, how these multiple crises have impacted women and men differently in the arena of work. Dr. Kana Takamatsu acknowledged that it was an informative paper to enhance the understanding of the impact of COVID-19 on work/ employment by gender perspective. She raised several questions, however, including accuracy of analysis period. Although the paper covered the crises such as COVID-19, climate change, and Ukraine and Russia conflict, the framework of the analysis period for the study was not very clear. Moreover, “intersectionality” is an important notion in gender analysis and she suggested discussion on the point would be useful for further study.

第4発表:[2L04] カンボジアにおける紛争と信頼ー2021年カンボジア社会経済調査を用いた実証分析ー

大貫 真友子(早稲田大学)
小暮 克夫(会津大学)
高崎 善人(東京大学)

This was the presentation on the study on impact of conflict exposure on social trust in Cambodia, using Cambodia Socio-Economic Survey (CSES) 2021. The data on social trust was collected through informally added questions by one of the study collaborators who was a part of the CSES 2021 team. The significance of the research topic, how conflicts may affect attitude and feelings in relation to social trust of people and community is well taken at this time of violent conflict around the world. However, Dr. Shiori Ui, the discussant, who are familiar to Cambodian society, raised an important issue regarding relevance of the questions used to measure social trust. Additionally, validity of the study topic, whether the lack of trust in non-kin-based networks is attributable to violent conflict (genocide) in Cambodia, was questioned. Rather, Dr. Ui said, a deeper-rooted problem in Cambodian society may be that trust among close kin members such as family members, relatives, and friends has been affected by violent conflict. Finally, further study prospects were discussed.

【総括】

The session offered wide variety of topics ranging from health, gender, care among family through ICT, to social trust in relation to conflict. The first three presentations, although different in topic, were all related to the impact of the COVID-19 pandemic. The last presentation, which explored the relationship between historical conflict and people’s social trust, is a very timely and important topic in light of the current global situation. I believe that those who attended the session learned a lot from these presentations. The comments by the discussants and discussion followed were also insightful and thought-provoking which would contribute to the prospect of future research.

報告者:松山 章子(津田塾大学)

2M:Sustainability (English)

  • 座長:高田 潤一(東京工業大学)
  • コメンテーター:藤倉 良(法政大学)、道田 悦代(アジア経済研究所)
  • 2023年11月12日(日曜)09:30 〜 11:30
  • 会場:紀-407 (紀尾井坂ビル407)
  • 聴講人数:00名
  1. [2M01] Sustainability Reporting: Quality Concerns of Third-Party Tools and A Call for High-Quality Third-Party Tools to Avoid Greenwashing
    *Vivek Anand ASOKAN(Institute for Global Environmental Strategies)
  2. [2M02] 生物多様性条約の「 DSI」の国際開発への影響
    *渡邊 幹彦(山梨大学)
  3. [2M03] 太平洋島嶼地域における環境意識調査~ミクロネシア連邦の事例研究~
    *高木 冬太(立命館大学)
  4. [2M04] Global RCE Network: Action-oriented Education for Sustainable Development
    *Jongwhi Park2, *Sawaros Thanapornsangsuth1,2, *Shengru Li2, Fred Emmanuel Sato2(1. Tokyo Institute of Technology, 2. Institute of Advanced Studies, United Nations University)

【総括】

報告者:高田 潤一(東京工業大学)

2N:Online (English)

  • 座長:西村 幹子(国際基督教大学)
  • コメンテーター:マエムラユウ・オリバー(東京大学)、内海 悠二(名古屋大学)
  • 2023年11月12日(日曜)09:30 〜 10:30
  • 会場:紀-409 (紀尾井坂ビル409)
  • 聴講人数:00名
  1. [2N01] 観光と環境のネクサス:ラグーナ州パグサンハン、カビンティにおける地元の認識に対する多面的な検証
    *ALINSUNURIN Maria Kristina2、*新海 尚子1 (1. 津田塾大学、2. フィリピン大学ロスバニョス校)
  2. [2N02] インドネシアにおける職業教育と非認知能力が労働成果に与える影響
    *崔 善鏡(広島大学)

【総括】

報告者:西村 幹子(国際基督教大学)

2O:社会開発、コミュニティ(日本語)

  • 座長:小早川 裕子(東洋大学) 
  • コメンテーター:藤掛 洋子(横浜国立大学)、松丸 亮(東洋大学)
  • 2023年11月12日(日曜)09:30 〜 11:30
  • 会場:紀-412 (紀尾井坂ビル412)
  • 聴講人数:18名

第1発表:[2O01] 通域的な学びの実践 – Africa-Asia Business Forumにおける学び合いを媒介とした地域間のつながり

工藤 尚悟(国際教養大学)

本研究では、国際協力や開発学の地域研究に従来の研究者や実務者による知見共有から直線的に課題解決が設計される方法ではなく、具体的な現場を持つ全く異なる地域の実践者たちが共同フィールドワークを通して得られる視点や気づきのリフレクションを基に、習慣的な思考パターンへの気づきや新しい視点の獲得といった自己変容を促す「通域的な学び」に関する調査が行われた。

コメンテーターからの課題解決型ではないプログラムの成果をどう評価できるのか、との質問に対し、工藤会員は、課題の出口として、方法論を提供する発展的評価になる回答した。

第2発表:[2O02] 開発学における表情解析の応用可能性:マダガスカル農村の女性における事例

山田 浩之(慶應義塾大学)

開発研究における調査では、回答者の設問理解度の把握の難しさ、考えずに回答している可能性、主観的で要因が多様な幸福感の測定が難点であるため、客観的調査が可能な顔を認識するソフト、FaceReader (FR)を起用した。

マダガスカル農村女性の笑顔をデータ化したものと記述調査を照合し、幸福感と個人や世帯の特性との関連性が調査された。

コメンテーターからは、FRをマダガスカルで使う有効性、調査結果が従来の調査結果と変わらなかった事から、FRを開発学で利用する意義の説明が必要ではないかとの指摘があった。

第3発表:[2O03] ブータン東部におけるアブラナ科野菜の普及の実態とその要因-タシガン県バルツァム郡を事例に-

生駒 忠大(京都大学/日本学術振興会)

本研究は、ブータンにおける新たな換金作物の普及は単に高換金性が引き金になっているのではなく、農業実践や地域文化の変容が普及の要因となっている可能性を調査した。

その結果、アブラナ科野菜が普及していった要因として、若者の離村と労働力確保の難しい村において、長期間の栽培適期と栽培の簡便性、副次的栽培、労働集約性の低さと高い生産性が村の現状に適合していたこと、アブラナ科野菜の食文化への浸透、牛の飼料としての有用性などが明らかにされた。

第4発表:[2O04] 潜在的に田園回帰志向を持つ人の要因分析 -地方に関心のある大学生に魅力的な地方自治体の施策とは-

戸川 椋太(立命館大学大学院)

田園回帰志向を持つ学生の実態を把握し、地方自治体への政策提言を目的に、潜在的に回帰思考のある大学生の特徴を明らかにする目的の研究である。

追跡調査も予定されているが、本発表では、コメンテーターから、田園回帰の定義の明確化の必要性、アンケート調査の対象が立命館大学の学生に限定されていた事による一般化の難しさ、田園回帰志向分析の設問内容が、都市でも可能な活動ではないかとの指摘があった。

【総括】

各発表は時間通りに進んだ。どれも興味深い研究発表だったため、フロアーからの質疑がたくさんあるように見受けたが、時間が限られていたため、1名の質問しか受けられなかったのが残念だった。

報告者:小早川 裕子(東洋大学)

2L:Rural development (English)

  • 座長:澤田 康幸(東京大学) 
  • コメンテーター:髙橋 和志(政策研究大学院大学)、米倉 雪子(昭和女子大学)
  • 2023年11月12日(日曜)12:45 〜 14:45
  • 会場:紀-404 (紀尾井坂ビル404)
  • 聴講人数:不明

第1発表:[2L05] 「園芸の商品化と家庭の意思決定が小規模農家の収入に及ぼす不均一な影響:エチオピアのジマ地帯における準実験研究の証拠」

*FIKADU ASMIRO ABEJE、*Nomura Hisako(Kyushu University)

本論文はエチオピアでJICAが進めているSHEP(市場志向型農業振興)アプローチが農家所得の向上に寄与しているか、寄与している場合、それが所得レベルや男女間でどのような違いがあるか、定量分析したものである。

データは2022-23年に集めたクロスセクショナルデータで、610の農家から集めた。

推定には、マッチングとQuantile regressionを用いている。

推定の結果からは、SHEPは全体として農家所得を有意に増やしているが、その効果はもともとの高所得家庭、また男性の意思決定力が強い農家でより大きくなることが判明した。

本論文は潜在的に重要なイシューを扱っているものの、以下のような点を改訂することが望ましい。

  • アウトカムである園芸作物所得と、説明変数である園芸作物指数の間には強い相関があるため、これを説明変数に使わない方がよい。
  • アウトカムをレベルのまま使っていると、ほぼ必然的に高所得家計の方に強い影響が出がちなので、ログを採った方がよい。
  • 推定式の説明の際にいくつかの誤りが見られた。
  • マッチングの方法をもう少し丁寧に説明した方がよい。

第2発表:[2L06] Empowerment Mechanisms of the ‘ SHEP Approach’ on Horticultural Behaviour Change of Smallholder Farmers. A Case of Kenya

Peter Nyamwaya ORANGI,
Hisako Nomura
(KYUSHU UNIVERSITY)

本論文はケニアでJICAが進めているSHEP(市場志向型農業振興)アプローチ農家のビジネスや農業スキルに寄与しているか、またそれらのスキル向上を通じてエンパワメントに役立っているか、定量分析したものである。

データは4058家計によるパネルデータで。推定には、差の差の分析とOLSが用いられている。推定の結果からは、SHEPは全体としてスキル向上に寄与し、それにより、生産やマーケティング面におけるエンパワメントに繋がっていることが判明した。

本論文はSHEPのプロジェクト目標が満たされているか定量的に検証した点で意義深いものの、以下のような点を改訂することが望ましい。

  • スキルのカテゴリーづくりややや恣意的なだめ、どのような理論的背景があるのか示せるとなおよい。
  • データがどのようにとられたのか、また4058はバランスパネルなのかそうでないのかなど、詳しい説明が必要。
  • DIDよりも近年はANCOVAが好まれる傾向にあるため、DIDを使うメリットを丁寧に説明してほしい。
  • エンパワメントの分析にはOLSが使われているが、スキル変数は内生なので、その点を考慮した推定方法に改善する必要がある。

第3発表:[2L07] Economic Analysis of Income Generation Through Creation of Dairy Farmers Union. A Case Study on Balkh Dairy Union, Afghanistan

Hamed ARIF SAFI(Kyushu University)
Nomura HISAKO(Kyushu University)
Shoichi ITO(Kyushu University)
Hiroshi ISODA(Kyushu University)

Key Points
  • 7 interviewers conducted semi-structured interview in 8 villages in Dehdadi District, Balkh province in Aug 2014. 355 milk producers, 192 Balkh Livestock Development Union (BLDU) members and 163 dairy farmers not BLDU members.
  • Examination of the impact of dairy union membership on the productivity of dairy farmers and the net annual milk income of households using the propensity score matching method (PSM).
  • Union membership significantly reverberates impacts critical economic outcomes of dairy farming dynamics.
  • It recommends stakeholders in the dairy farming sector, including policymakers and farm management, to recognize the positive aspects of union participation on production and income.

Questions to understand the situation further to promote union

  1. The amounts of income and dairy production. How many cows do they have. Is the size of farmers relevant to the result?
  2. Why/how the farmers became union members: Did anybody suggest them to become members? What are the merits that they recognise? ie) info, training, funds, etc from the union.
  3. Why non-members do not join unions? What prevents them? ie) In Cambodia, people were traumatised by their experience of forced labor during communist/socialist era.
  4. How many days did 7 researchers interview 355 farmers in 8 villages. Did they simply ask their annual income and production or had farmers recorded the amounts?

第4発表:[2L08] 高価値な換金作物の導入後の農村移住と民族間の格差における変遷:ベトナム中央高地の台湾から導入されたウーロン茶産業の事例

呉 昀熹(京都大学)

Key Points
  • Semi-structured questionnaires targeting Kinh migrants for April-June 2019, and the minority settlements for Oct-Nov 2019 in D and L Communes, hubs for oolong tea enterprises, in Lam Dong province in the Central Highlands, Vietnam. Sites included oolong tea factories, farms, and various households. A total of 123 households heads: 96 Kinh, 10 ethnic minority migrants (Muong, Cham), 16 indigenous minorities (Kohor, Ma), 1 Vietnamese Chinese individual.
  • geographical access to employment, Kinh has easier access, Muong have relatively comparable access to Kinh, able to reach oolong tea enterprises within a half-hour walk, Ma and Kohor at more remote locations.
  • 2 categories of spontaneous migrants: Early migrants, dependent on network, organised migrants; Late migrants. less-dependent on network.
  • Ma, traditionally engaged in shifting agri, adapted themselves to the tea industry, changed gender roles. Kohor, traditionally nomadic lifestyle, limited engagement with industry.

Questions to understand the Discussion further

  1.  Describing “3 key attractions of the tea system included higher income, varied job chances, and accommodation” regarding each ethnic group may show the differences clearer. How it becomes as “a stepping stone to cash crop farming. As migrants’ farms become sustainable, their dependency on the system decreases”?
  2.  About Gender role, Ma has seen the changes while Kohor did not. How about other ethnic groups?
  3.  Explain more in section “3 Findings” about the socio economic impact including health risks and loss of personal time.
  4.  About “the indirect marginalization of indigenous groups”, may be discuss about Ma and Kohor separately? How about Muong and Cham?

【総括】

Rural Developmentセッションの名にふさわしい意欲的な論文が4本報告された。

特に、JICAが進めているSHEP(市場志向型農業振興)アプローチやアフガニスタンにおける酪農組合プロジェクトの評価など、厳密なエビデンス(科学的根拠)が求められている研究対象について、ミクロデータを用い、マッチング(matching)、差の差分析(difference in differences)、分位点回帰(quantile regression)など緻密な手法を用いた研究につき、計量分析を洗練化することのみならず、ドメイン知識に基づいて研究をさらに深化させるという観点から、コメンテータの高橋和志教授(政策研究大学院大学)、米倉雪子教授(昭和女子大学)より多数の建設的なコメントがなされ、活発な議論が行われた。

座長としては、今後も国際水準の開発研究・教育の成果が日本発で期待でき、国際開発学会のあるべき姿を示す有意義なセッションとなった、と感じた。

報告者:澤田 康幸(東京大学)

2M:国際開発援助(日本語)

  • 座長:伊東 早苗(名古屋大学) 
  • コメンテーター:大門(佐藤) 毅(早稲田大学)、宗像 朗(国際協力機構)
  • 2023年11月12日(日曜)12:45 〜 14:45
  • 会場:紀-407 (紀尾井坂ビル407)
  • 聴講人数:00名
  1. [2M05] 政府開発援助が海外直接投資に与えた影響―援助形態別の分析―
    *大野 沙織(京都大学)
  2. [2M06] 現地主導の開発(locally-led development)とCSOの南北パートナーシップの再検討
    *高柳 彰夫(フェリス女学院大学)
  3. [2M07] 日本政府の支援がパキスタン気象局の能力向上に果たした役割に関する考察
    *内田 善久(株式会社国際気象コンサルタント)
  4. [2M08] 国際協力における Co-Financeの「全体像」をどう捉えるか~中国と DACドナー間の取り組みを事例に~
    *石丸 大輝1、*土居 健市2、*汪 牧耘3、*林 薫4 (1. 独立行政法人国際協力機構、2. 早稲田大学、3. 東京大学、4.元 文教大学)

【総括】

報告者:伊東 早苗(名古屋大学) 

2N:環境、サスティナビリティ(日本語)

  • 座長:松岡 俊二(早稲田大学)
  • コメンテーター:佐々木 大輔(東北大学)、古沢 広祐(國學院大学)
  • 2023年11月12日(日曜)12:45 〜 14:15
  • 会場:紀-409 (紀尾井坂ビル409)
  • 聴講人数:25名

第1発表:[2N03] インドネシア国アッパーチソカン揚水発電所建設に関わる原石山の補償問題

筒井 勝治(株式会社ニュージェック)
冨岡 健一(Global Utility Development Co., Ltd)

インドネシア国アッパーチソカン揚水発電所周辺の地域住民に対する補償の法制度とその運用のあり方をめぐって議論をした。

第2発表:[2N04] 環境知識の移転をめぐる地政学的ダイナミクス:中国の環境協力機関の比較分析

WU Jingyuan(東京大学大学院)

中国における環境協力機関の展開について、リアリズムの視点、リベラリズムの視点、コンストラクティビズムの視点から議論を行った。

第3発表:[2N05] 生産国の実情から考える持続可能なパーム油-インドネシアとマレーシアの事例に着目して-

吉田 秀美(一般社団法人持続可能なサプライチェーン研究所)
楊 殿閣(一般社団法人ソリダリダード・ジャパン)

持続可能なパーム油の国際的認証と各国のナショナルな認証制度との関係のマーケット・企業の動向について議論を行った。

【総括】

インドネシアの発電所建設に伴う住民補償、中国の環境協力機関の歴史的展開、インドネシアとマレーシアの持続可能なパーム油の認証制度をめぐって議論を行い、東アジアの環境問題と環境協力のあり方について、深く考える機会となった。

報告者:松岡 俊二(早稲田大学)

2L:Education (English)

  • 座長:澤村 信英(大阪大学) 
  • コメンテーター:劉 靖(東北大学)、川口純(筑波大学)
  • 2023年11月12日(日曜)15:00 〜 17:00
  • 会場:紀-404 (紀尾井坂ビル404)
  • 聴講人数:20名

第1発表:[2L09] Inclusion in Higher Education: Exploring the Experiences of Nepalese College Students with Disabilities

Bhuwan Shankar BHATT(International Christian University, Tokyo)

障害を有するネパール人大学生の経験をもとに、高等教育におけるインクルージョンのあり方を多面的に検討するものである。

高等教育におけるインクルージョンに関する実証研究は貴重であり意義があり、その重要性はますます大きくなっている。

それゆえに、研究のスコープを発展させれば(例えば、学部生と大学院生、学生の専攻を分けるなど)、さらに学術的・実践的な示唆が得られるだろう。

集団的相互作用の概念枠組みに、なぜ財政上の視点を入れていないのか、あるいは今後の研究として制度的なインクルージョンに対する考え方について質疑応答があった。

第2発表:[2L10] Case studies of a positive outlier and a negative outlier municipal education departments in supporting primary schools in Brazil

Danilo LEITE DALMON(Kobe University)

ブラジルの同一州にある人口規模や経済指標が類似する市を対象として、初等学校を管轄する教育局の中で最も効果的な教育行政が行われている市と、反対にそうでない市を選別し、両者を比較検討、要因の分析を行おうとするものである。

ブラジルを対象とする希少性はあるが、これに類似する効果的学校研究に関わる蓄積は膨大にあるので、さらなる文献レビューを進めてほしい。

また、サンプリングをいかに行ったかのプロセスが不明であり、その妥当性を明確にする必要がある。対象とする国、地域、学校の状況がわかる基礎データを示してほしい。

オリジナルのファインディングが何なのか、従来の効果的学校研究に対していかなる貢献があるのかなど、質疑が行われた。

第3発表:[2L11] Citizenship education and Malagasy philosophy: An analysis of the upper secondary school curriculum

Andriamanasina Rojoniaina RASOLONAIVO(Osaka University)

マダガスカルの後期中等学校のカリキュラムを分析することにより、グローバルなシティズンシップ教育の中でいかなる価値観が育成されるのか、されようとしているのかを探索するものである。

脱植民地化やグローバル・シティズンシップ教育の議論の中で、学校のカリキュラムがいかなる影響を受けつつ内在化していくかを検討することは重要なことである。

一方で、シティズンシップ教育やマダガスカルのフィロソフィーがそれぞれ何を意味するかは、丁寧に記述する必要がある。リサーチクエスチョンに対する結果の提示にやや齟齬があるように思えるとの意見も出された。

第4発表:[2L12] Parental Involvement in Malagasy Students’ Career Planning: the Case of Public High Schools in Urban and Suburban Settings

Fanantenana Rianasoa ANDRIARINIAINA(Osaka University)

マダガスカルの都市部の公立高校を事例として、生徒のキャリア計画にいかに親が関わっているかを考察するものである。

このようなテーマ設定自体は、教育を受けた後の就業に関わることで興味深く、重要なテーマである。

ただし、キャリア計画の定義がやや不明瞭で、どのように親が子どものキャリア計画に関わっているのか、さらなる丁寧な分析と解釈がなされることが期待される。

現在の結論は、親が何を考えているか、何を行っているかに留まっており、いかに関わっているかが十分に探索できていないように思える。

【総括】

ネパール、ブラジル、マダガスカルと、発表者は日本の大学に属しながら、それぞれの母国を研究対象としている。

このような多様な対象国の研究発表が本学会の場で行われることは、少なくない影響を日本人研究者にも与えてくれているように思う。

今後もこのような学術面での国際交流が展開され、将来的に国際共同研究などに進展することを期待したい。

報告者:澤村信英(大阪大学)

2M:事業評価・分析(日本語)

  • 座長:大橋 正明(聖心女子大学) 
  • コメンテーター:石田 洋子(広島大学)、桑島 京子(青山学院大学)
  • 2023年11月12日(日曜)15:00 〜 16:00
  • 会場:紀-407 (紀尾井坂ビル407)
  • 聴講人数:8名

第1発表:女性自助組織を通した母親の資源獲得と子どもの教育への影響―インド Rajasthan州の Rajeevikaプログラムを事例に―[2M09] 

水島 侑香(東京大学)

この発表は、本年の3月に行ったインド西部の州の3県(District)の3つの郡(Block)で政府が進める女性の自助組織(Self-Help Group、以下SHGs)の15名のメンバーに、半構造化インタビューを行った結果を軸に分析したものである。

報告者によると、多くのメンバーがSHGのマイクロファイナンスにより事業やSHGs組織の役職報酬よる収入向上、情報や人間関係といった形での資源を獲得し、結果的に子どもの教育にポジティブな影響を与えることを示した。

この発表に対してコメンテーターである広島大学の石田洋子会員は、SHGsの活動によってその本人だけでなく、その夫、女性の両親、子ども、教員、上位機関メンバー等がどう変化して、結果的に子どもたちの教育における変化につながっているのかを、セオリー・オブ・チェンジ(Theory of Change)といった形で把握すること、SHGプログラムの全容や対象地域の教育事情などが不明である、といった指摘をした。

第2発表:カンボジア・つばさ橋建設をめぐる環境社会配慮と事業化検討プロセス[2M10] 

小泉 幸弘(独立行政法人国際協力機構)
花岡 伸也(東京工業大学)

小泉会員の報告は、カンボジアにおける同様な橋梁プロジェクトと比較して、本案件がカンボジア側からの要請から無償資金協力実施の意思決定に至るまでに、10年ほどの時間を費やしたことの要因として、2004年改定のJICA環境社会配慮ガイドラインを適用した経緯をもとにしたものであった。

結果として、早期開通を希望していたカンボジア側の声には応えられなかったことが提起された。

これに対して青山学院大学の桑島会員からは、改定後の環境社会配慮ガイドラインの画期性、外務省・JICAの権限関係の「今」、カンボジアの運輸交通開発における環境社会配慮の「今」などのより幅広い検討の必要が指摘された。

また会場から相次いだ質問を通じて、こうした配慮がなされることでより丁寧な検討がされたことを評価するという指摘や、他の新興ドナーとの対抗を意識する日本政府はこうした配慮の適用範囲を限定しようとする動きがあるという懸念などが示された。

【総括】

このセッションでは、二人のコメンテーターからのコメントと発表者による応答、そして会場の参加者との興味深いやり取りが行われた。

四人の発表者を前提にした時間枠に二人の発表だったため、時間的に余裕があったので、しっかりしたやり取りをすることができた。それでも16時半に終了した。

報告者:大橋 正明(聖心女子大学)

2N:平和構築、レジリエンス(日本語)

  • 座長:湖中 真哉(静岡県立大学) 
  • コメンテーター:松本 悟(法政大学)、桑名 恵(近畿大学)
  • 日時:2023年11月12日(日曜)15:00 〜 17:00
  • 会場:紀-409 (紀尾井坂ビル409)
  • 聴講人数:約40名

第1発表:[2N06] 特定地域における民族間の勢力均衡論(ドミノ式)についての一考察ー勢力均衡のパターン分析を中心にー

安部 雅人(東北大学)

安倍会員による最初の報告では、民族間の勢力均衡論として3つの類型が提示され、中国新疆ウイグル自治区の紛争、パレスチナ紛争、ルワンダのジェノサイド等の事例が、その3つの類型の観点から検討された。

これに対して、松本会員によるコメントでは、リサーチクエスチョンの所在、先行研究に対する位置づけ等に関する質問が投げかけられた。

また、フロアからは、なぜインクルーシブな国家を形成できなかったのかという問題意識からの再検討の可能性等の論点が提出され、報告された類型が多角的に検討された。

第2発表:[2N07] 中国の都市におけるコミュニティレジリエンスの構築に関する質的研究—ソーシャル・キャピタルの視点から

王 藝璇(大阪大学大学院)

つづく王会員による報告では、2021年の中国河南省洪水災害で被災したコミュニティを対象とするインタビュー調査結果がおもに報告された。

同会員は被災コミュニティを都市・農村の移行期コミュニティの脆弱性に注目しながら3つに類型化し、各コミュニティのレジリエンスをソーシャルキャピタルの類型の観点から分析した。

松本会員によるコメントでは、ソーシャルキャピタルの有効性を論じるに当たっての基準設定の問題、比較の前提となる影響要因の評価の問題、調査対象者の選定上の問題等が質問された。

王会員は質問に回答しながら、今後の研究にコメントをフィードバックしていく見通しを述べた。

第3発表:[2N08] エルサルバドル共和国帰国研修員によるパイロット事業の形成過程と実施に関する要因分析:
ポストコンフリクトにおける地域住民の主体的生活改善活動に着目して

藤城 一雄 (独立行政法人国際協力機構)

その後の藤城会員他の報告では、研究対象地はエルサルバドルに移り、長期内戦後のポストコンフリクト状況において、JICA本邦研修による中米地域生活改善研修を事例として、パイロット事業実施5年後の現地調査の分析結果が報告され、おもにインタビュー結果から、パイロット事業参加者の幸福感が変容した成果等が示された。

コメンテーターの桑名会員によるコメントでは、過去の教訓を踏まえている点等が評価され、今後の展望が質問された。

また、フロアからは、事業に対するネガティブな反応がなかったのかという点が質問された。藤城会員は、その後エルサルバドルで政権交代があったため、組織全体が消滅したこと等、その後の事業の経緯を踏まえつつ、これらの質問に回答した。

第4発表:[2N09] グローバル・ナレッジとしての東日本大震災とそこからの復興(途上国に役に立つ知識とするために何が必要か?)

林 薫 (グローバル・ラーニング・サポート・コンサルタンツ代表、元文教大学教授)

最後の林会員による報告は、東日本大震災の震災以降に着目し、震災伝承施設をグローバルなレッジの観点からどのように評価できるかを探究し、その調査成果が豊富な事例とともに示された。

コミュニティ防災の軽視や失敗学の不在等の課題を示しつつ、最後に何が世界に発信すべきコアなナラティブになり得るかという展望が示された。桑名会員はこれに対して調査の方法や協働知の双方向性について質問を投げかけた。

林会員は震災伝承施設の展示方針の硬直性の問題により、双方向性が現状では困難であること等を回答した。

【総括】

本セッションでは各報告が時間を超過しなかったため、充実した討議を行うことでき、多角的に報告を検討することができた。

なかでも林会員は報告を通じて、本セッションの他の報告やプレナリーセッションにも言及され、本大会の最後を締めくくるに相応しい報告となった。

報告者:湖中 真哉(静岡県立大学)

その他

  • 一般口頭発表
  • 企画セッション
  • ラウンドテーブル
  • プレナリー、ブックトーク、ポスター発表



[RG21-1] 倫理的食農システムと農村発展

Ethical Agri-food Systems and Rural Development

主査:池上甲一(近畿大学名誉教授)

貧困削減は、MDGsと同様にSDGsでも第1目標に位置づけられている。貧困人口の多くは南側諸国の農民である。だから、農村発展はSDGsの観点からも優先度が高い。しかし、現行のグローバル食農システムのもとで貧困を抜け出すことは難しい。

フェアトレード(FT)は、代替的な食農システムの提供によりこの状況を改善する可能性をもっているが、今のところ、その可能性を十分に発揮できていない。その理由のひとつに、FT市場の狭隘さがある。FT商品は消費者の効用改善に直結しにくいからである。

そこで重要になるのは消費者の社会的責任に対する認識、南側生産者への共感といった倫理性(アダム・スミスの「徳の経済」)である。人権、環境、公正さに配慮するエシカル消費の定着と拡大は、こうした倫理性の具体化の一例として捉えることができる。

本研究部会では、FTとエシカル消費(両者を合わせて倫理的取引とする)に基づく、倫理的食農システムが生み出す農村発展の成果と課題を解明する。その際に、北側諸国でも関心を集めている「食への権利」や「食料主権」といった食料運動の観点も参照枠として採用する。

本研究部会によって明らかになる主な成果は以下の 3 点である。

  1. 現行食農システムの問題解明と、倫理的食農システムの構築・拡大条件。
  2. 貧困削減を含む農村の総合的な発展への道筋。
  3. とくに「先進国」の消費者に対する倫理的食農システムの利点の提示と、それによる FT市場の拡大。

本研究部会へのお問い合わせ窓口

関連情報



『倫理的食農システムと農村発展』研究部会(2024年2月)

倫理的食農システムと農村発展

Ethical Agri-food Systems and Rural Development

メンバー

代表

池上甲一(近畿大学)

副代表

牧田りえ(学習院大学)


活動開始から活動終了までの予定

1年目(2020年10月から2021年年9月)

オンラインによる研究会を計画通り4回開催した。第1回:「フード・アクティヴィズムの論じ方」(2020年12月27日)、第2回:「食料主権とアグロエコロジー」(2021年3月12日)、第3回:「持続可能な農産品サプライチェーン構築と倫理的生産活動の支援」(5月15日)、第4回:「JICAインドネシア・スラウェシ貧困対策支援農村開発計画の経験」(7月31日)。

2年目(2021年10月から2022年年9月)

オンラインによる研究会を5回開催した。第1回:「倫理的生産者と倫理的消費者をつなぐ試み」(2021年10月10日)。第2回:「愛媛県今治市の食と農のまちづくりが示唆するもの」(2022年1月8日)、第3回:「ミルパとプルケー、メリポナ蜂:メキシコの小農とアグロエコロジー」(6月11日)、第4回:「CSAの現段階とTEIKEIの展開過程」(7月2日)、第5回:「宮城県・鳴子の米プロジェクトがめざす農と食のコミュニティ―日本版CSAの特徴をどうとらえるか?―」(7月10日)。

3年目(2022年10月から2023年9月)

全国大会でラウンド・テーブルを開催。2023年8月に今治市の研修ツアー開催。オンライン研究会を3回開催予定(第1回は7月1日、企業CSAについて)。

4年目(2023年10月から2024年9月)←今年度

従来と同様の非会員の一般参加も認める公開のオンライン研究会を4回程度開催するほか、学会誌に特集として寄稿することを目指す対面式の研究会を数回開催する。


成果の公表予定

<学会での発表、学会誌での特集企画など>

1年目<終了>

なし

2年目<終了>

他学会での論文掲載・投稿

3年目<終了>

2022年の全国(秋季)大会においてラウンド・テーブルを開催した。

4年目←今年度

学会誌の特集を企画する。


女性会員、外国人会員、若手研究者(若手正会員)の活動奨励策

本研究部会の副代表は女性であり、また賛同者にも多数の女性会員が名を連ねている。若手研究者の報告を支援するために、旅費の支給を予定していたが、これまではオンラインの研究会だったので、実施できていない。

しかし本年度は対面式の研究会も組み込み、face to faceの良さを生かした丁寧な議論を行いたい。外国人会員の報告についても積極的に取り入れ、研究の成果公表につながるような議論を期したい。


『倫理的食農システムと農村発展』研究部会
代表:池上甲一(近畿大学名誉教授)




2022年度・活動報告『ODAの歴史と未来』研究部会(2022年11月)

2021年10月~2022年9月

「ODAの歴史と未来」研究部会の2022年度の活動は、下記のように四回の研究会の実施と、オーラルヒストリー調査を実施したことである。

2022年初回の研究会は、1月29日に二部構成で行なった。第一部では、日下部尚徳会員(立教大学)が「対バングラデシュ援助の表象」というテーマで報告し、第二部では、藏本龍介会員(東京大学)が「土木」、そして橋本憲幸会員(山梨県立大学)が「人づくり」を取り上げ、「英語にしにくい日本の開発概念」の研究成果を共有した。

二回目の研究会は3月26日に実施した。第1部・小林誉明会員の報告、第2部・英語にしにくい日本の開発概念から近江加奈子会員の「内発的発展」、松原直輝会員「現場主義」であった。いずれも日本的な開発概念と実践の在り方に迫る報告であったが、そもそも「日本的」とは何であるかの一層掘り下げた研究が必要とのコメントがあった。

三回目の研究会は、7月16日に開催され、は汪牧云会員、鄭会員、近江加奈子会員が共同で「日・中・韓の現場からみるODAの歴史と未来——農村開発の経験輸出を中心に」を行い、第二部では松原直輝会員が「現場主義の理想と現実」と題してJICAの現場主義に関する行政学的な研究成果を報告した。

2022年度の最終回は、9月17日に実施し、「部会活動の到達点とこれからの課題」と題して小林誉明会員、佐藤仁会員、大山貴稔会員の報告で総まとめを行った。また部会のスピンオフ企画として下村恭民氏、廣野良吉氏、星昌子氏らのオーラルヒストリーもとりまとめに成功し、充実した部会活動を行うことができた。いずれの会もオンラインで15名前後の参加者を得て3時間ほど熱心に議論に参加した。何よりもベテランから大学院生まで、幅広い層の参加者を得られたことがよかった。

『ODAの歴史と未来』研究部会
代表:佐藤仁(東京大学)




第32回全国大会セッション報告

11 月 20 日 (土曜)/ Sat. Nov. 20th, 2021

午前 I セッション/ Morning Session I 9:00-11:00 (GMT +9)

A1. 医療

  • 座長:松山章子(津田塾大学)
  • コメンテーター:明石秀親(国立国際医療研究センター)、青柳恵太郎(メトリクスワークコンサルタンツ)

発表者

  1. 「パンデミックにおける医薬品へのアクセス― COVID-19との闘いにおける国際的な公正さとは―」
    勝間靖(国立国際医療研究センター(NCGM)グローバルヘルス政策研究センター(iGHP))
  2. 「出産をめぐる医療サービスの利用と課題―パプアニューギニア・アラペシュ人女性の出産場所の選択をめぐって―」
    新本万里子(広島大学)
  3. 「ベトナム中部における新型コロナウィルス感染症の医療サービス利用への影響 ― トゥア・ティエン・フエ省の医療データベースを使った分析 ―」
    島村靖治(神戸大学)
  4. 「ベトナム中部における妊産婦の検診・出産における医療施設選択行動の分析」
    佐藤希(愛知学院大学)

本セッションでは、「パンデミックにおける医薬品へのアクセスーCOVID-19 との闘いにおける国際的な公正さとはー」(国立国際医療研究センター グローバルヘルス政策研究センター・勝間靖)、「出産をめぐる医療サービスの利用と課題―パプアニューギニア・アラペシュ人女性の出産場所の選択をめぐってー」(広島大学・新本万里子)、「ベトナム中部における新型コロナウィルス感染症の医療サービス利用への影響―トゥア・ティエン・フエ省の医療データベースを使った分析―」(神戸大学・島村靖治)、「ベトナム中部における妊産婦の健診・出産における医療施設選択行動の分析」(愛知学院大学・佐藤希)の4件の発表が行なわれた。

勝間氏の発表は、COVID-19の医薬品、とくにワクチンをめぐる国際的格差の背景と公正に向けた取り組みの状況と課題を分析した、感染症パンデミック時代にタイムリーで重要な問題提起である。

新本氏は、文化人類学者マーガレット・ミードがかつて研究を行なった地域で行なわれた調査地からの報告であり、丁寧な聴き取りによって、女性の妊娠、出産を取りまく社会・文化的背景が近代化の中で変容しつつあることを描きだしている。

島村氏は、COVID-19パンデミックがベトナム中部地域における住民の医療サービスの利用にどのような影響を与えたかを、医療施設の受診記録を分析することで明らかにすることを試みた。この時期に大変貴重な研究であり、今後さらに追加されるデータの分析も待ち望まれる。

佐藤氏は、同じベトナム中部地域において、妊産婦の医療施設設選択行動、とくに1992年に導入された公的医療保険制度の加入の有無も考慮し調査、分析を行なった。中所得国における医療保険がサービス利用にどのような影響を与え、またどのような課題があるのかを明らかにすることは、他地域や国々にも有意義である。

コメンテーターは、国立国際医療研究センターの明石秀親氏と、METRICS WORK Consultantsの青柳恵太郎氏の2人がつとめ、各研究報告に対してより理解を深めるとともに、今後、研究を更に発展させるためのヒントとなるような質問やコメントが行なわれた。

初日朝一番のセッションであったが、20名近くの参加者があり関心の高さがうかがえた。

(松山章子)


B1. インフラと草の根開発

  • 座長:林薫(文教大学)
  • コメンテーター:花岡伸也(東京工業大学)、重冨真一(明治学院大学)

発表者

  1. 「バングラデシュ農村の飲料水供給におけるNGOの乱参入―シャムナゴール郡の事例から―」
    山田翔太(立命館大学大学院)
  2. 「ラオスの少数民族モン族の移転に関わるごみ処理のマネジメントの構築 ― ナムニアップ1水力発電プロジェクトに関わる少数民族の移転事例 ―」
    筒井勝治(ニュージェック)、冨岡健一(GUDC)、村上嘉謙(関西電力)
  3. 「NGOによる開発途上国での農道渡河部のアクセス向上に向けた橋梁架設支援」
    福林良典(宮崎大学)、木村亮(京都大学大学院)
  4. 「フィリピンのインフラガバナンス / Infrastructure Governance of the Philippines: Has “The Golden Age of Infrastructure” come?」
    伊藤晋(新潟県立大学)

本セッションではインフラ開発・支援に関する4件の報告が行なわれた。

第1発表の山田翔太会員による「バングラデシュ農村の飲料水供給におけるNGOの乱参入」では、バングラデシュの飲料水供給に取り組むNGOの課題を取り上げた。

本研究は、多くのNGOが飲料水支援をしているが、維持管理は受益者に任せており、NGO自身の水質調査やモニタリングは不十分であることが報告された。これに対し、需給状況、水質低下の原因などの点について議論が行なわれた。

第2発表では、筒井勝治会員、富岡健一会員、村上嘉謙会員による「ラオスの少数民族モン族の移転に関わるごみ処理のマネジメントの構築」について報告が行なわれた。ラオスではゴミ処理場の容量が不足しており、資機材の不足、人材不足、意識の低さも問題となっていることが報告された。

ダム建設とごみ処理の関係について指摘がなされたが、報告者からは、水力発電プロジェクトのコンポーネントとして実施されたことに意味があるとの回答がなされた。

第3発表の福林良典会員、木村亮会員による「NGOによる開発途上国での農道渡河部のアクセス向上に向けた橋梁架設支援」では、福林会員より途上国の農道や生活道路の5割以上の通行困難な状態な状況で、住民主体でどのように整備ができるかについての問題提起が行なわれた。

技術的制約も考慮してどの程度まで住民参加が可能か、オーナーシップの醸成はどのように確認できるかなどについて議論が行なわれた。

第4発表の伊藤晋会員「フィリピンのインフラガバナンス」は、フィリピンでは民間投資(PPP)が重視されてきたものの、進捗は思わしくなく、また公共投資も停滞していることが報告された。

実施機関のキャパシティー強化、PPPのさらなる活用と制度改善などが必要であると結論づけた。政治的なプロセス機能していないこと、ガバナンスが弱体で、民間が乱立、癒着が横行していることが問題ではないかという指摘があり議論が行なわれた。

以上、4件の報告に共通している問題は、社会システム、コミュニティーの対処能力、一人一人の意識などのすべてのレベルでの能力の向上が必要であるということである。キャパシティーは決して静的なものではなく、つねに生成発展している。これらの試みや調査研究のさらなる発展を望みたい。

(林 薫)


C1. RT「人の移動と開発―送出国にもたらす影響―」

  • 企画責任者:加藤丈太郎(早稲田大学)
  • 司会:金澤真実(上智大学)
  • 発表者:加藤丈太郎、バズラチャルヤ・ディヌ(Nepal Policy Research Institute)、田中雅子(上智大学)、石井洋子(聖心女子大学)
  • 討論者:齋藤百合子(大東文化大学)、米倉雪子(昭和女子大学)

本ラウンドテーブルは、個人や家族などミクロレベル、地域社会や特定の階層や集団などメゾレベルへの人の移動の送出国への影響を紹介することで、受入国の論理で展開されがちな移民をめぐる議論に一石を投じることを目指した。当日は3組の報告があり、約15名の参加が参加した。

最初に、加藤丈太郎会員(早稲田大学)が「COVID-19感染拡大による技能実習制度への影響―送り出し側の視点から」と題して発表した。「移住インフラ」を用いて、送り出し機関職員9名へのインタビュー結果が分析され、受入国の規制が送出国に影響を与える状況が報告された。

つぎに、バズラチャルヤ・ディヌ会員(Nepal Policy Research Institute)・田中雅子会員(上智大学)が「「親の移住が『残された子ども』に与える影響―ネパールの事例」と題して発表した。日本で就労する親の子どもが多く通う学校でのインタビュー調査をもとに、外国就労中の親の不在が子どもの学業や心理的側面に及ぼす影響が、ケーススタディを元に報告された。

最後に、石井洋子会員(聖心女子大学)が「在外ケニア人が出身国へもたらすインパクト―アメリカ・メリーランド州での人類学的調査をもとに」と題して発表した。在米ケニア人が政府とは異なる形で母国に暮らす人びととつながりを持っている様子が述べられ、「移民力」という概念から、母国・ケニアの未来を照らす存在としての可能性が報告された。

討論者の米倉雪子会員・齋藤百合子会員からは、他の属性の移民・他国との比較の必要性など、分析を深めるための視点がコメントされた。本ラウンドテーブルの成果は『国際開発研究』2022年度第1号特集企画をはじめとする論文執筆にいかされる。

(加藤丈太郎)


D1. RT「開発レジリエンスとSDGsの今後―新型コロナウイルスパンデミック以後の課題―」

  • 企画責任者:関谷雄一(東京大学)
  • 司会:関谷雄一
  • 発表者:関谷雄一、大門毅(早稲田大学)、大谷順子(大阪大学)、乙部尚子(ジェンダ-、労働、開発コンサルタント)
  • 討論者:野田真里(茨城大学)

本ラウンドテーブルは、2021年度より新たにスタートした「開発のレジリエンスとSDGs」研究部会の主催によるものである。同研究部会では新型コロナ禍で「取り残される人々」に対して、人間の安全保障の観点を踏まえつつSDGs目標の達成度や残されている課題に関して議論を続けている。

春季大会で行なわれた第1回目のラウンドテーブルでは、「開発レジリエンスと新型コロナ時代のSDGs」という題目のもとで議論が行なわれ、成果として新型コロナ禍により改めて、SDGsが途上国の問題ではなく私たち自身の問題であることを再確認し、SDGsを巡る言説の危うさにも言及がなされた。

また、インフォーマリティー(許容された違法性)や、「取り残された人々」に着目することの重要性も再確認された。第2回目RTの目標としては、パンデミック以後の時代を焦点に、開発、レジリエンス、SDsに関わる議論を展開した。

前半は4人による研究報告がなされた。関谷雄一からは「ハイブリッド調査の模索」、乙部尚子会員(ジェンダ-、労働、開発コンサルタント)からは「新型コロナウィルス禍に於けるジェンダーと労働問題」、大谷順子会員(大阪大学)からは「中国の事例から考える」大門毅会員(早稲田大学)からは「レジリエンスの多元的把握と比較制度分析」という題目でそれぞれ報告があった。

その後、討論者である野田真里会員(茨城大学)からのコメントがあり、それに応答する形で、報告者と聴講者が交わる形での討論が展開された。

オンラインのつながりがもたらす研究調査のレジリエンスとは何か、パンデミックで益々脆弱な立場にある女性の状況、それに連動する女性の社会参画に対する低い社会認識をいかに改善するか、専門家ムラ・権威主義・同調圧力に抗し、オルタナティブな考え方や取り組みをいかに促すか、目標設定としては参加が容易だが、危機的な問題へのアクションにはなかなかつながらないSDGsとどう向き合っていくか、といった課題が残されていることが確認された。

(関谷雄一)


E1. Education

  • 座長:澤村信英(大阪大学)
  • コメンテーター:荻巣崇世(上智大学)、芦田明美(早稲田大学)

発表者

  1. “Dynamic Use of Data and Evidence to Improve and Expand Operations for Educational Development: Case Study of Indian NGO “Pratham”
    Takao Maruyama (Hiroshima University)
  2. “Student Mobility to Japan in the Age of COVID-19 ―A Matter of Degree ―”
    Lauren Noelani Nakasato (Waseda University), Nobuko Kayashima (JICA Ogata Sadako Research Center)
  3. “Explaining Rural-Urban Learning Achievement Inequalities in Primary Education in Benin, Burkina Faso, Togo, and Cameroon”
    Jean-Baptiste M.B. SANFO (University of Shiga Prefecture)

本セッションでは、以下の3件の発表があった。参加者は25~30人、コメンテーターは芦田明美(早稲田大学)および、荻巣崇世(上智大学)の各会員である。いずれの発表も本学会にとって重要な研究トピックであった。

(1)「Dynamic Use of Data and Evidence to Improve and Expand Operations for Educational Development: Case Study of Indian NGO “Pratham”」(広島大学 丸山隆央):

開発援助機関がいかにデータとエビデンスにもとづきプロジェクトを改善、拡大することができるのか、インドのNGO Prathamを事例として検討し、どのようなレッスンが他の援助組織にあるかを考察したものである。実践者と研究者の協働によりプロジェクトを拡充させていく例であるが、二国間援助機関や国際機関、あるいは小規模なNGOにとって、どれほど応用が利くのかなど、議論が交わされた。

(2) 「Student Mobility to Japan in the Age of COVID=19―A Matter of Degree―」(早稲田大学 仲里ローレンほか):

コロナ禍において、世界的な留学生の動向と日本への移動を比較し、いかなる要因が影響を与えているかについて、検証するものである。パンデミック前後の留学生数の増減を、学位取得を目的とするか否かにより分類し、インタビューデータも活用し、分析している。学位取得型の留学に着目するなかで、修士と博士、あるいは専攻による差異がどのようにあるのか、日本で学位取得型の留学生が増えた背景などについて質疑が行なわれた。

(3) 「Explaining Rural-Urban Learning Achievement Inequalities in Primary Education in Benin, Burkina Faso, Togo, and Cameroon」(滋賀県立大学 Jean-Baptiste SANFO):

アフリカ仏語圏4か国を対象として、初等学校における都市農村の学習到達度の格差の要因を量的分析により明らかにしようとしている。その要因として、測定可能な(tangibleな)要因・特徴とそうでない(intangibleな)ものに着目し、それぞれでどれほどこの格差を説明できるかを検証している。格差のパターンが対象国により、いかなる違いがあるのか、ジェンダーや学校規模、公立・私立による差などに関して、議論が行なわれた。

(澤村信英)


午後 I セッション/ Afternoon Session I 12:00-14:00 (GMT +9)

A2. 企画「コロナパンデミックを踏まえたインフラ分野における途上国支援」

  • 企画責任者:川辺了一(国際協力機構)
  • 司会:小泉幸弘(国際協力機構)
  • 発表者:金子素子(アルメックVPI)、久保彩子(国際協力機構)、田中圭介(国際協力機構)、藤田朗丈(ボストンコンサルティンググループ)、松原康一(日水コン)、松本重行(国際協力機構)
  • 討論者:松丸亮(東洋大学)、花岡伸也(東京工業大学)

2020年初めから全世界に広がった新型コロナウィルスは、2021年の今なお、世界経済、国際政治に多大な影響を与え、市民生活にも大きな変化をもたらしている。とくに、衛生環境が十分整っていない途上国の市民は、この感染拡大リスクに晒されており、医療分野や公衆衛生分野の支援が多く展開されている。

また、これを機に、途上国の市民においても、衛生環境の改善、ソーシャルディスタンスの確保、デジタル技術の活用等についての認識が変化しており、インフラ分野の協力では、この変化を踏まえたアプローチが求められる。

かかる背景を踏まえ、JICAでは、都市開発分野、公共交通分野、水・衛生分野について、今後の協力方針の検討に向けて「全世界COVID-19等感染症に対する都市環境改善プログラム形成準備調査」、「ポストコロナ社会の公共交通事業のあり方に係る情報収集・確認調査」、「水供給・衛生分野の新型コロナウィルス対策の教訓と必要な支援方策の検討」等の調査を実施している。

本セッションでは、これら調査結果等を報告するとともに、インフラ分野の途上国支援における今後の協力方針や新たな支援アプローチについて、コロナ禍を踏まえ「変わること」「変わらないこと」を中心に意見交換を行なった。

都市開発分野については、「多極分散」「近隣住区」の重要性が再確認された。また、公共交通分野では、その必要性は変わらないものの、公共交通の安全性確保にあたり、「交通安全」に加え「感染予防」が重要となることが確認された。水・衛生分野では、「健全な水道事業体経営」の重要性は変わらないものの、「脆弱層への手洗い促進」の重要性が確認された。

また、参加者からコロナ禍におけるリモート協議の有効性と限界について言及があり、ポストコロナにおいては、現地渡航とリモート協議の適切な併用が重要となることを確認した。そして、最後に、今後も議論を継続していくことを確認した。

(川辺了一)


B2. 教育Ⅰ

  • 座長:吉田和浩(広島大学)、
  • コメンテーター:森下拓道(JICA)、劉靖(東北大学)

発表者

  1. 「教授言語と家庭言語の違いが学力に及ぼす影響 ―ミャンマー連邦共和国小学5年生の事例―」
    牟田博光(国際開発センター/大妻女子大学)
  2. 「モザンビークの初等教育におけるローカルカリキュラムの可能性と課題 ―カリキュラム開発者,教員,生徒へのインタビュー調査から―」
    日下智志(鳴門教育大学)
  3. 「新型コロナウィルスによる緊急事態宣言下における保護者の子どもへの家庭学習支援―国際比較調査の結果から―」
    谷口京子(広島大学)
  4. 「ネパール基礎教育における修学実態の分析 ― 留年は退学の主たる原因か ―」
    江嵜那留穂(愛知淑徳大学)

本セッションはコメンテーターを森下拓道会員、劉靖会員にお願いし、吉田和浩座長のもと、4本の発表を行なった。計39名の参加者があった。

まず、牟田博光会員が「教授言語と家庭言語の違いが学力に及ぼす影響」について、ミャンマーの小学5年生を事例として発表した。学力が低い子ほどミャンマー語が母語かどうかで大きく影響を受けるなど、学力、学校への好感度の高さへの家庭言語の説明力の高さを明らかにした。

参加者からは、少数民族にもミャンマー語との類似性に大きく差があることが指摘されるなど、活発な質疑応答がなされた。

つぎに、日下智志会員が「モザンビークの初等教育におけるローカルカリキュラムの可能性と課題」について発表した。教科内容的に普遍性の高い数学について、コミュニティーのニーズに対応し、またそれと連携することができていない実態が明らかになった。

コミュニティーの範囲と定義、また、普遍性が高い一方で5進法を使う現地の考え方と教科書の違いなど、さらに検討を加える余地について質疑応答があった。

3番目に、谷口京子会員が「新型コロナウィルスによる緊急事態宣言下の子どもへの家庭学習支援」について19カ国の国際比較調査の結果をもとに発表した。保護者の電子機器を使う自信度と学習支援には有意な関連性が認められた。一方で、日本では家庭での学習支援時間が対象国中で最も短かった。

質疑では、電子機器以外の学習手段、また電子機器の多様性についても考慮する必要性などが指摘された。

最後に、江嵜那留穂会員が「ネパール基礎教育における就学実態の分析」として、従来の横断的データが、留年が退学の主たる要因であると主張するのに対し、縦断的(個別事例の経年調査)から、留年せずに退学する児童、留年経験はあるが修了する児童が多い実態を明らかにした。

質疑応答では留年者、中退者の学年別の考察、さらには個別事例から得られた情報の発展的な設問に応用する余地などが指摘された。

(吉田和浩)


C2. 保健・栄養

  • 座長:斎藤文彦(龍谷大学)
  • コメンテーター:古川光明(静岡県立大学)、池見真由(札幌国際大学)

発表者

  1. 「タンザニアの小学生の食品群・野生食物摂取と健康 ―南東部リンディ市におけるパイロット質問票調査―」
    阪本公美子(宇都宮大学)、大森玲子(宇都宮大学)、Parinya Khemmarath(宇都宮大学)
  2. 「ケニアの灌漑地域における農家の食料消費の実態や意識に関する調査―消費における近代と伝統の共存―」
    伊藤紀子(農林水産政策研究所)
  3. 「ザンビアの都市部におけるCOVID-19の障害者団体への影響―障害者の対処に焦点をあてて―」
    日下部美佳(京都大学大学院)

本セッションでは3つの報告がなされた(以下敬称略)。

第1に阪本公美子、大森玲子、Parinya Khemmarathによる「タンザニアの小学生の食品群・野生食物摂取と健康」である。

この報告には、小学生たち自身の認識を問う意図があった。朝の体調不良などを訴える子供たちも少なくなく、また市内に通う小学生たちを対象に調査したにもかかわらず、野生の野菜や果物を摂取している場合も多いことなど、興味深い発見があった。とくに後者については、コメンテーターの池見真由から、経済的・社会的階層との関係性についての指摘がなされた。

第2に、伊藤紀子による「ケニアの灌漑地域における農家の食料消費の実態や意識に関する調査」では、食料消費の変化が食料安全保障に及ぼす影響などを意識した調査の結果、「伝統食」や「近代食」について、それぞれの特徴が存在していることが分かった。

池見からのコメントをふまえ、共食することが多いアフリカでの食文化において、「伝統食」や「近代食」の区別のありかたや、またこの2つのハイブリッド化についても議論された。

3つ目は日下部美佳による「ザンビアの都市部における COVID-19の障害者団体への影響」では、コロナ禍においてザンビアの障害者団体の運営にどのような影響が出ているかという、あまり日本では情報が得られない事柄についての基調な報告がなされ、(1)外国支援者との関係性の変化、(2)資金の多角化によるリスク分散、さらに(3)情報格差、といった視点からの考察がおこなわれた。

古川光明はコロナ禍の調査ではあるが、サンプル数の少なさ、評価基準や評価枠組みなどをどう考えるか、といったコメントがなされた。

全体に、コロナ禍という状況下において日本人研究者による訪問調査が難しいなか、多様な方法で調査を行なっていることには感銘を受けた。それゆえ3つの報告とも、今後のさらなる進展がおおいに期待できる。

オンライン開催となったこのセッションにおいても、手話通訳の実施やチャットを活用した意見交換などの工夫がなされ、学界全体にとってもコロナ禍後への示唆が大きかった。

(斎藤文彦)


D2. Community and Development in Asia(英語)

  • 座長:豊田利久(神戸大学)
  • コメンテーター:高木泰士(東京工業大学)、荒神衣美(アジア経済研究所)

発表者

  1. “Regional Distribution of Foreign Direct Investment in Indonesia: An Insight from Provinces and Sectors”
    Al Muizzuddin Fazaalloh (Nagoya University)
  2. “Consideration of Possible Tsunami Impact in the Coastal Areas of Pakistan by Numerical Modeling and Geographical Information Techniques”
    Babar Ali (Pakistan Meteorological Department / Toyo University), Ryo Matsumaru (Toyo University)
  3. “A Traditional Community House for the Ethnic Minorities in Central Vietnam ―A Qualitative Study on Ten Years of Community Management-”
    Akiko Iizuka (Utsunomiya Univeristy), Ayako Fujieda (Kyoto Seika University), Ueru Tanaka (Setsunan University)

発表1は、インドネシアにおけるFDIの決定因を、33州のパネルデータ(2010-2018)によって、産業全体および4産業部門(農業・製造業・公益産業・サービス業)別に分析した内容である。

産業全体では一人当たりGDP、 賃金、貿易開放度、都市化指標等が有意な正の効果を示す。他方、産業部門別では決定因に大きな違いがあることが示される。集積経済の効率性が達成されるようにFDIの誘導政策が必要であるとの結論も示す。製造業を1つのセクターとしていることの限界などの有益なコメントが与えられた。

発表2は、アラビア海に面したパキスタン沿岸部の津波リスクを数値モデリングとGISの手法でシミュレーション分析したものである。1945年に生じた大津波に関する2つの先行研究に基づくシナリオを考える。

津波の到達時間が早いので早期警戒の効果は大きくない。同じ沿岸部でも地理的条件が違い、西部は比較的津波被害が小さいが、東部は低地で産業・人口も密集しており被害が甚大になる。

過去に観測されたMw8.2の地震によって起きた津波高12mではなく、Mw9.2の地震による津波高16mに備える必要があるとする。これに対して1945年のデータの精度や津波高の現実性の検証の必要性などが指摘された。

発表3は、コミュニティ・ハウスの住民自身による工夫された管理が、農山村の持続的発展に重要な役割を果たすことを示す。

ベトナム中部の少数民族が居住するホン・ハ(Hong Ha)地区には、外部からの支援で建てられたコミュニティ・ハウスがいくつか存在する。京都大学とフエ大学のグループが共同設立したハウスは、地域住民によって自発的に改善・管理がなされている事例である。

当初は、災害避難と環境管理を主な目的に建てられたが、現在は、宿泊可能なエコツーリズムの拠点として収益をもたらし、またカフェを運営して住民の集う拠点となっている。住民自身によるコミュニティの自発的発展の重要性を示した。

このセッションは、経済、社会、工学分野の開発に関する事例を扱う学際的な構成となっており、まさに、この学会の縮図を感じさせるものであった。参加者数は15~20名であった。

(豊田利久)


E2. Agriculture

  • 座長:島村靖治(神戸大学)
  • コメンテーター:會田剛史(ジェトロ・アジア経済研究所)、倉田正充(上智大学)

発表者

  1. “Women’s Socio-Economic Empowerment Through Agricultural Cooperatives: Case Study of Mali”
    Asmao Diallo (Doshisha University)
  2. “Determinants of Farm Households’ Vulnerability: A Case Study of Municipality of Dingalan, Aurora Province, Philippines”
    Masahiko Jin (Nagoya University, Former student)
  3. “Assessing the Performance of Agricultural Insurance Programs Using Korten’s Model of Fit: A Comparative Study of Japan and the Republic of the Philippines”
    Armand Christopher Rola (Doshisha University)

本セッションは、開発途上国の農業に関連する3つの報告が行なわれた。

第1の発表(Asmao Diallo)では、マリにおける農業協同組合(cooperatives)を通じた女性のエンパワーメントを主に、融資へのアクセス、市場へのアクセス、トレーニングのための機会の3つ視点から、質的な手法による検証が行なわれた。

コメントとして、男性の協同組合との違いや土地の所有権制度について質問が出されたが、発表者より詳細な説明がなされ、参加者の理解がより深まった。

第2の発表(Masahiko Jin)では、フィリピンにおける農業家計の脆弱性の決定要因を量的な手法により探求し、非農業就業や果樹栽培、家畜の保有が脆弱性の緩和に寄与していることが示された。一方でコメントとして、地域で共通する傾向のある(covariate)リスクと、各家計に特有の(idiosyncratic)リスクの明確な定義を確認する質問が出された。

また、リスクに対する事前的な対処(risk management)と事後的な対処(risk coping)とを峻別して、結果を解釈すべきという意見も出された。それぞれのコメントに対して発表者からの補足的な説明があり、有益な議論が交わされた。

第3の発表(Armand Christopher Rola)では、混合法(mixed method)を用いたフィリピンにおける農業保険と日本の農業保険(農済)との比較分析が行なわれた。

コメントとして、比較対象の選び方の妥当性やサンプリング方法の正当性、そして、分析結果の真偽性を確認する質問が出されたが、発表者によりひとつひとつ丁寧な追加説明があり、多くの疑問点が解消された。ただし、日本の農済についての分析については少し課題を残した。

そして最後に、発表者同士での質疑応答の時間もあり、とくにリスクに対する対処方策について活発な議論が行なわれた。

(島村靖治)


プレナリーシンポジウム14:20-17:05 (GMT +9)

『おんぼらーっとしまっし。石川仕立ての創成と共生、そして開発』

  • 企画責任者:和田一哉(金沢大学)
基調講演
  • 「FAO世界農業遺産事業の概要と農村開発への可能性」
    遠藤芳英(FAOローマ事務局)
  • 「持続的発展のための人材育成:世界農業遺産(GIAHS)『能登の里山里海』と『フィリピン・イフガオの棚田』の連携事業」
    中村浩二(金沢大学)
話題提供
  • 「地域資源の再評価と地域づくり -東洋大学能登ゼミの経験から-」
    髙橋一男(東洋大学)
  • 「自然資源経済と“輝く農山村”の創成-個性的な“顔(FACE)”を大事にする自治的地域づくりへ-」
    寺西俊一(一橋大学)
  • 「見渡せる範囲の実践共同体-コスタリカと能登で学んだこと-」
    北村健二(金沢大学)
  • 「ごちゃまぜのまちづくり」
    清水愛美(佛子園理事・Share金沢)
パネルディスカッション 
  • 司会・ファシリテーター:宇野文夫

戦後間もない頃から長きにわたり、開発(Development)と言えば経済成長(Economic Growth)とほぼ同義であった時代がある。しかし、周知のとおり、その後、徐々にその言葉の意義が問い直され、「人間開発」という言葉が表れるなど、人間の生活の質、そして「より良い生」とは、ということが問われるようになっていく。

さらに言えば現在、人が「より良い生」を送るにはどうすれば良いか、それを実現するための社会の在り方とは、という問いが課題になっていると考えられる。言い換えると、「開発」は人類の普遍的課題である、というのがそもそもの問題意識である。

それゆえに、石川という一地方から「開発」の意義を問い直すことにこそ価値はあるとの考えのもとに、本セッションは企画された。

現在の社会は、効率化、規制緩和、都市への人口集中、その一方で地方の過疎化という状況にあると言える。これは経済効率一辺倒の流れ、とも言い換えられる。しかし、そのような流れとは一線を画し、地方に本質的な価値を見出そうという動きが、他方で存在する。

それは、「失われつつある何か」の価値を再検討しようとする動き、と換言できるかもしれない。ここでいう価値、価値観といった言葉は、その社会で重視すべきことは何か、あるいは社会はどうあるべきか、といった問いに答えるための基礎となるものが想定されている。

このような問題意識を検討すべく、まず2本の基調講演によって石川という地方の現状について「世界農業遺産」を切り口に把握した。そして、4本の話題提供とパネルディスカッションを通じ、失われつつある価値あるものとは何か、そのような価値観を醸成するためのヒント、社会の在り方、そして「より良い生」とは何か、をテーマに議論した。

真の「開発」とは、そして我々が目指すべき社会とはいかなるものかという壮大な問いに関して活発な議論が交わされた。

(和田一哉)


11月21日(日曜)/ Sun. Nov. 21st, 2021

午前 II セッション/ Morning session I 9:30-11:30 (GMT +9)

A3. RT「日本国内の課題解決にODA人材は貢献しうるのか ―途上国の教訓・ネットワークを国内に、国内の教訓・ネットワークを途上国へ―」

  • 企画責任者:河野敬子(海外コンサルタンツ協会)
  • 司会:佐藤仁(東京大学)
  • 発表者:平林淳利(JICA)、千田雅明(パシフィックコンサルタンツ)、細江絵梨(根浜MIND)
  • 討論者:高野翔(福井県立大学)

実務者からの情報発信強化および、研究者との交流によるODAの質的改善を目的とした、ECFAとJICA共同セッションは2018年より開始し、今回3回目の開催となった。

今回は、日本国内の社会的課題が深刻化するなか、1)ODA人材は国内の課題解決の役に立てるか?「何に」「どのように」役に立てるか、2)国内の取り組みを、途上国への技術協力のさらなる充実につなげることができるか、といった2つの問いを軸に事例発表を交え、ディスカッションを行なった。

平林氏の発表では、まちを元気にする支援として、岩手県釜石市におけるJICAの取組みの紹介と、JICAの今後の国内連携強化の可能性について報告があった。

千田氏の発表では、国内でのコンサルティング業務の転機となった東日本大震災の復興にかかわる業務や、その経験を生かした途上国での災害復旧支援業務、また、その両者の経験を活かした国内外を結ぶプロジェクトの紹介があった。

細江氏の発表では、釜石市の「オープンシティ戦略」に基づく根浜地域において、地域の外と中をつなぐコーディネータの役割を通して、課題解決に重要な「対話」や「意思決定」について紹介があった。

高野氏からは、これまでの経験を踏まえたまちづくりを実践・研究している立場から、ODA人材を「風の人」、その土地に根付いた地域の人を「土の人」と表現し、風の人が土の人の属性を少しでも持つことが重要であること、自分事と捉えて取り組むこと、自治体とのネットワーク構築、JICA海外協力隊の活用、働き方改革を実現するための仕組みづくりが大切であるとコメントした。

ディスカッションでは、国内外問わずこれからは「教訓」を「共有」し、「共感」を得ることでモチベーションを上げ、そのような人材で地域に根差したムーブメントを作っていくことが大切ではないか、また、その経験を含んだ事例を世界に向けて発信することも重要だろうといった議論があった。

40名前後の参加者をえて、ラウンドテーブルらしい活発な議論が行なわれた。

(河野敬子)


B3. 環境・復興

  • 座長:安達一郎(JICA研究所)
  • コメンテーター:佐々木大輔(東北大学)、石渡幹夫(JICA)

発表者

  1. 「パキスタン気象局技術グループ職員の専門知識共有に関する考察」
    内田善久(東洋大学大学院/国際気象コンサルタント)、松丸亮(東洋大学)
  2. 「グローバル化におけるネパールの災害復興のネットワーク―ネパールの被災地パタンと在日ネパール人コミュニティの関係から―」
    竹内愛(南山大学)
  3. 「ラオス国山岳民族モン族の移転に伴う灌漑水田の開発と生活の変化 ― 山地の陸稲から低地の水田へ ―」
    冨岡健一(GUDC)、筒井勝治(ニュージェック)、村上嘉謙(関西電力)
  4. 「インドネシアにおける泥炭地管理の制度的課題:西カリマンタン州パワン・クプル泥炭ドームを事例として」
    久保英之(地球環境戦略研究機関)、Arief Darmawan(インドネシア国ランプン大学)

本セッションは(環境・復興)となっていたが、当日の報告は防災がメインで、一点社会配慮に関する報告となった。報告の内容は、泥炭地管理から、ダム移転に関する少数民族の保護といったバラエティに富むもので、方法論含めて幅広かった。ただ、共通して現場でのさまざまな課題への取組みに関する研究であり、実務からの報告である。

また、泥炭地管理といった課題、震災復興に向けての取組み、気象局のキャパシティ、そして住民移転の報告すべてにおいて、現地のローカルナレッジや、先方関係機関の知恵やキャパシティの重要性を取り上げていることである。

コメンテーターからは、示されている結論や分析方法に対する指摘や、とくに実務研究としてどういった方法論を用いて分析を行なっていくのかという提起があった。

現場報告では、こうしたことがあったという調査報告的な側面が強くなりがちななかで、研究としての方法論の模索を行なっていくことが重要である。また、今回のセッションにおいては、開発協力のなかで、より現場でのキャパシティやナレッジの重要性が確認されたと言える。

(安達一郎)


C3. 産業・経済・労働

  • 座長:小國和子(日本福祉大学)
  • コメンテーター:佐藤裕(都留文科大学)、牧田りえ(学習院大学)

発表者

  1. 「グラミン銀行は何をもたらしたのか―マイクロファイナンスによる成功者と多重債務化する人々―」
    鰐部行崇(法政大学大学院)
  2. 「インドネシア共和国・ゴロンタロ州における生態系サービスと在来知を活用した持続可能な新産業の構築」
    榊原正幸(総合地球環境学研究所)、笠松浩樹(愛媛大学)、山口勉(エスペックミック)
  3. 「バングラデシュにおける伝統的なカワウソ漁の考察―持続可能な開発の視点から見る伝統保存の意義―」
    田中志歩(広島大学大学院)

本セッションでは、3本の個別報告が行なわれ、最多で38名の参加があった。

鰐部行崇会員による「グラミン銀行は何をもたらしたのか――マイクロファイナンスによる成功者と多重債務化する人々」では、グラミン銀行の歴史を遡り、1983年から2019年の財務資料の分析と債務者の語りから、グラミン銀行が激化する競争環境を背景に資本主義的経済活動を強化していった様と、その中で負債が膨れ上がり「借金人間」が生み出されたプロセスを批判的に考察した。

コメンテーターの佐藤裕会員からは、節構成に関する助言、関連文献の紹介、「成功」と「失敗」の判断においてMF/MCの運営がさまざまなアクターにもたらす、意図せざる結果にも着目する必要性が提示された。

榊原正幸会員による「インドネシア共和国・ゴロンタロ州における生態系サービスと在来知を活用した持続可能な新産業の構築」では、零細小規模金採掘が大気の水銀汚染の主たる汚染源となっている状況を説明し、問題低減の道筋を明らかにする手立てとして、住民、民間、研究者などさまざまなステークホルダーの対話と協働の場となるトランスディシプリナリー実践共同体の結成と、その協働を通じて権力の非対称性を低減し、フォーマルなマルチセクター間協働へと発展させる可能性を、具体例にもとづき提示した。

コメンテーターの牧田りえ会員からは、これら実践の学術的示唆として、実践共同体の概念的構成をより深める必要性が提示された。

田中志歩会員による「バングラデシュにおける伝統的なカワウソ漁の考察――持続可能な開発の観点から見る伝統保存の意義」では、カワウソ漁を行なうA村10世帯に対する詳細な聞き取り調査から、現地におけるカワウソ漁の位置づけやその経年変化の一端が描写された。

コメンテーターの牧田会員からは、個々の情報の面白さの先に、いかなる学術的な問いが立てられるのか、そのリサーチクエスチョンの明確化に向けて助言がなされた。

最後に全体での質疑応答がなされ、チャットや口頭で複数のコメントが寄せられた。

(小國和子)


D3. 市民社会

  • 座長:林裕(福岡大学)
  • コメンテーター:華井和代(東京大学)、西浦昭雄(創価大学)

発表者

  1. 「紛争影響国における全国スポーツ大会の観客への効果:南スーダンを事例として」
    古川光明(静岡県立大学)
  2. 「日本企業のアフリカ進出に対するTICAD6の影響」
    森尾貴広(筑波大学)
  3. 「冷戦下における米国平和部隊の追放は何を意味するのか―ラテンアメリカ5カ国の比較検証―」
    河内久実子(横浜国立大学)
  4. 「キャパシティ・デベロップメント事業における参加型評価とモニタリングの可能性:スリランカ 紅茶プランテーション農園コミュニティと大学生の協働事業評価から見えてきたもの」
    栗原俊輔(宇都宮大学)

オンライン開催となったため、本セッションの4名の発表者もオンラインでの発表となった。そのような状況においても、4名による報告は有意義で活発な議論を喚起した。

発表1:古川光明氏(静岡県立大学)は「紛争影響国における全国スポーツ大会の観客への効果:南スーダンを事例として」と題して、紛争影響国の分断された社会におけるスポーツ大会が各層における平和と団結に貢献することを、事例に基づいて報告した。

発表2:森尾貴広氏(筑波大学)は、「日本企業のアフリカ進出に対するTICAD6の影響」において、日本が主導するアフリカ開発会議(TICAD)が、日本企業のアフリカ進出に対して複数の国へ同時に進出する傾向を明らかにした(西部アフリカを除く)。

発表3:河内久実子氏(横浜国立大学)は、「冷戦下における米国平和部隊の追放は何を意味するのか:ラテンアメリカ5カ国の比較検証」と題して、米国の平和部隊がラテンアメリカ諸国から追放された背景と動機の解明を、国際政治環境に目配りしつつ、米国の公文書等に依拠した考察として報告した。

発表4:栗原俊輔氏(宇都宮大学)は、「キャパシティ・デベロップメント事業における参加型評価とモニタリングの可能性:スリランカ 紅茶プランテーション農園コミュニティと大学生の協働事業評価から見えてきたもの」と題して、宇都宮大学で実施するJICA草の根技術協力事業評価のなかで、学生とスリランカ紅茶プランテーション農園青年層による参加型モニタリング・評価が、相互に学びと自信を与えたことを報告した。

市民社会セッションでは、華井、西浦両コメンテーターによる鋭く、かつ生産的な指摘、そして、参加者との活発な質疑応答によって、問いの在り方や研究の意義、研究手法と結果等、有意義で今後の更なる研究の深化に向けた貢献がなされた。

また、本セッション自体もオンラインであったが、栗原報告は報告内容そのものがオンラインでの事業評価を考察するなど、現代の世相を反映するものであった。

(林 裕)


E3. 企画 “International Development Cooperation of Japan and South Korea -New Strategies for an Uncertain World-”

  • 企画責任者:Tatsufumi Yamagata (Ritsumeikan Asia Pacific University)
  • 司会:Tatsufumi Yamagata
  • 発表者:Tatsufumi Yamagata, Shinichi Takeuchi (Tokyo University of Foreign Studies / IDE-JETRO), Huck-ju Kwon (Seoul National University), Jisun Song (Korea National Diplomatic Agency), Hyomin Jung (Kyoto University), Motoki Takahashi (Kyoto University), Eunju Kim (Hansung University)
  • 討論者:Toru Yanagihara (Takushoku University)

本セッションは、以下の本の出版を契機として開催された。

Huck-ju Kwon, Tatsufumi Yamagata, Eunju Kim and Hisahiro Kondoh eds., International Development Cooperation of Japan and South Korea: New Strategies for an Uncertain World, Palgrave, 2022。

本書は、当学会と韓国国際開発協力学会(KAIDEC)との協力プロジェクトの成果であり、2022年初めに出版予定である。

本セッションは、編者の一人である山形辰史が座長を務め、本書の執筆者のうちの数名が報告を行なう形態をとった。行なわれた報告は以下のとおりである。

  1. 山形辰史(立命館アジア太平洋大学)「序章および終章」
  2. 武内進一(東京外国語大学/ジェトロ・アジア経済研究所) “Policy Concepts and Normative Rationales in Japan’s Foreign Aid: Human Security, TICAD, and Free and Open Indo-Pacific.”
  3. Huck-ju KWON (Seoul National University) “Reflection on a normative rationale for Korean ODA policy: Duty, self-regards and obligation.”
  4. Jisun SONG (Korea National Diplomatic Agency) “Foreign Aid as Foreign Policy Instrument and its Institutional Development: Case Study of South Korea.”
  5. 鄭 傚民(京都大学)”Quest for Combination of Economic Development and Poverty Reduction: Dual Features of Japan’s Aid in the post-Cold War era and After.”
  6. (6) Eunju KIM (Hansung University) “Balancing Universal Values and Economic Interest through Development Cooperation in Korea.”

討論者は、柳原透会員(拓殖大学)であった。

序章では問題意識として(1)日韓のODAの共通のメカニズム、(2)日韓ODAの究極目的、(3)日韓ODAの今後の戦略を問うた。それに対して終章では、(1)援助を受け入れて産業発展を行なった経験と、その経験を基にした周辺アジア諸国への国際協力、がメカニズムとして指摘された。

(2)については、国際公共財の構築が目的とされ、(3)に対しては、産業発展のための官民連携を行なう際にも、民間側の制約に官側が縛られるのではなく、むしろ民間側のスコープを広げるべきであることや、共通点の多い日韓ODAが戦略的に強調行動をとった場合のシナジーの大きさが指摘された。

これに対して柳原会員は、(1)(2)(3)それぞれの結論が可能性の指摘に止まっており、十分な説得材料に欠けることを課題として挙げた。

(山形辰史)


午後 II セッション/ Afternoon Session II 12:15-14:15 (GMT +9)

A4. RT「開発協力事業における評価の方向性」

  • 企画責任者:佐藤洋史(国際協力機構)
  • 司会:佐藤洋史
  • 発表者:鴨谷哲(JICA)、川本華子(JICA)、秋元祥恵(JICA)、富田洋行(JICA)、大川太郎(JICA)
  • 討論者:伊藤 晋(新潟県立大学)

本セッションでは、開発協力事業における評価の今後の方向性および、あるべき姿に関する議論を深めるため、4つのテーマについて6名の報告者からの話題提供を受け、討論者・参加者を交えた議論が行なわれた。

冒頭、本ラウンドテーブルの企画者である佐藤より、ラウンドテーブル企画の背景、目的について説明した。

最初の発表として、鴫谷哲氏より、本ラウンドテーブルの他の報告内容を含むJICAの事業評価の昨今の取り組みを俯瞰する報告がなされた。

つづいて、川本華子氏より、ルワンダにおける教員間の校内相互研鑽強化プロジェクトの効果発現に至るプロセスを遡り、DAC評価項目とは異なる視点で事業を振り返りながら、今後の類似事業の形成・実施に向けての教訓が報告された。

その後、秋元祥恵氏、吉岡佐知子氏より、Theory of Change (ToC)を用いた、目標達成に向けた事業の変化の軌跡の検証結果を踏まえた留学生事業の評価の在り方について報告された。

最後に、富田洋行氏、大川太郎氏より、開発課題別の事業戦略の強化・推進に向けた最新の取組み状況と、今後の評価上の対応課題等について報告された。

報告の後、討論者である新潟県立大学の伊藤晋会員より、プロセスの分析を実施するうえでの課題、TOCを活用する際の限界や、新たな事業マネジメントにおけるクラスター評価と内包される個別事業の評価との関係、これら新たな取り組みを、さまざまな制約のなかでどのように実施していくか等についてコメント、議論が行なわれた。

また、参加者からも、新たに追加された整合性評価を実施する際の留意点について質問が挙がるなど活発な議論が行なわれた。

(佐藤洋史)


B4. 教育Ⅱ

  • 座長:關谷武司(関西学院大学)
  • コメンテーター:笹尾隆二郎(アイシーネット株式会社)、石田洋子(広島大学)

発表者

  1. 「日本のODAによる留学生招へいの歴史―国費留学生とJICA留学生―」
    萱島信子(JICA)、杉村美紀(上智大学)
  2. 「中国におけるアフリカ人留学生の進路選択とキャリア計画―浙江師範大学の学位取得型学生を事例に―」
    羅方舟(大阪大学大学院)
  3. 「コミュニティ学習センター(CLC)の自立発展性-ネパールでの協力事例から-」
    三宅隆史(シャンティ国際ボランティア会)

萱島信子会員(国際協力機構緒方研究所)と杉村美紀会員(上智大学)から、『日本のODAによる留学生招へいの歴史―国費留学生とJICA留学生―』について発表いただいた。ODAによる留学生招聘の辿ってきた道筋を、史資料と統計資料の分析から明らかにし、今後の発展に向けての示唆を得ようとする報告であった。

コメンテーターである石田洋子会員(広島大学)からは、これらの事業の達成度や、受入人数の増減にある背景、今後も続けることの意義などについて質問があり、発表者からマレーシアの例などを踏まえた説明がなされた。

つぎに、羅 方舟(大阪大学 人間科学研究科)会員から『中国におけるアフリカ人留学生の進路選択とキャリア計画―浙江師範大学の学位取得型学生を事例に―』について発表があった。本研究の目的は、中国におけるアフリカ人留学生の進路選択とキャリア計画を明らかにすることであり、多様な進路選択とキャリア計画を、留学生の個人的経験と関連づけながら分析した。

コメンテーターの笹尾隆二郎会員(ICネット株式会社)から「アフリカ人の留学先として中国を取り上げたこと、加えて、教育面に限定されていない学生の留学後の進路選択やキャリア計画をとりあげたことで新規性があり、興味深い課題設定がなされている」とのコメントが寄せられた。

3つ目の発表は、三宅隆史会員(シャンティ国際ボランティア会)から『コミュニティ学習センター(CLC)の自立発展性―ネパールでの協力事例から―』が発表された。本発表では、コミュニティ学習センタ ー(CLC) の自立発展性を確保する支援のあり方はどうあるべきかを研究課題として、ネパールでの協力事例を基に考察が行なわれた。

コメンテーターである石田洋子会員から自治体との連携などが質問され、発表者からスケールアップと資金確保が課題として挙げられることなどが報告された。

(關谷武司)


C4. 企画「アフリカ遊動社会におけるレジリエンス変容の探究―人道支援・開発ギャップ克服に向けて―」

  • 企画責任者:湖中真哉(静岡県立大学)
  • 司会:湖中真哉
  • 発表者:島田剛(明治大学)、孫暁剛(静岡県立大学)、佐川徹(慶應義塾大学)、波佐間逸博(東洋大学)、湖中真哉
  • 討論者:柳原透(拓殖大学)

本企画セッションは、東アフリカ遊動社会を対象として、彼らの社会におけるグローバルな領域とローカルな領域の接合状況に着目しながら、彼らのレジリエンスの在り方を探究することを目的とし、そこから開発と人道支援の可能性を探った。おもに扱われたのは、気象的リスクと紛争リスクである。

最初の島田剛による報告「気候変動による災害のアフリカの経済成長、 農業、紛争への影響と、援助の役割:1961-2011のパネルデータによる計量分析」では、アフリカ全域における気候変動による災害の影響を解明し、マクロな視点からレジリエンス課題の大枠を概観した。

第2の孫暁剛による報告「水資源の開発と利用に見られる遊牧民のレジリエンス」では、ケニアの遊牧民レンディーレ社会における水資源の利用を事例とし、遊牧民が新しい技術や資源を積極的に取り入れていることが解明された。

第3の佐川徹による報告「生業多様化とレジリエンス─東アフリカ牧畜民が漁労をはじめた論理」では、エチオピアの農牧民ダサネッチ社会において漁撈へと生業が多様化した背景を理解するためには、関係論的な視座が不可欠であることが示唆された。

第4の波佐間逸博による報告「構造的暴力に対抗するレジリエンス ─遊牧の人為的危機に直面したウガンダの牧畜社会におけるシティズンシップの実践─」 、および第5の湖中真哉による報告「遊牧社会における内在的なレジリエンスの在り方と開発・人道支援 ─ケニア・サンブル社会における紛争と国内避難民の事例から─」は、ともに紛争リスクに対するレジリエンスを扱っており、遊牧社会の内在的なロジックを探った。

柳原透より全体に対してコメントがあり、レジリエンスの定義、内在性、対象となる社会集団の単位等が議論され、また、レジリエンスのモデルが整理された。フロアからは資料評価をめぐっての質問があった。

最後に、レジリエンスの研究においては、イーティックな視点とイーミックな視点の共存が必要であることなどが指摘され、学際的なレジリエンス研究の必要性が確認された。

(湖中真哉)


D4. RT「研究と実践のインターフェースを探る―研究×実践委員会主催ラウンドテーブル―」

  • 企画責任者:小林誉明(横浜国立大学)
  • 司会:小林誉明
  • 発表者:小林誉明、志賀裕朗(JICA緖方研究所)、ラミチャネ・カマル(筑波大学)、佐藤峰(横浜国立大学)、浜名弘明(デロイトトーマツコンサルティング)、功能聡子(ARUN)

研究と実践との関係について議論するための場を提供すべく、春の大会に続いて、研究×実践委員会が主催したラウンドテーブルである。「研究と実践のインターフェースを探る」と題し、“研究と実践との幸せな結婚”はありえるのか?“を議論した。

小林会員による全体像の見取り図が示された後、各登壇者(委員)から、それぞれの考えるインターフェースの具体例が提示された。

その後、フロアからは活溌な意見が繰り出された。例えば、メインストリームの実践のあり方に対して代替案を出すような研究があってもよいのではないかという意見が提出され、研究者と権力の側との距離感について意識することの重要性が再認識された。

また、研究のたねにはならないようなものを吸収する仕組みが研究者側にあってもよいという意見は、研究者側の受け入れの姿勢を問うものであり、一方、大きな組織の場合、実務家のリテラシーに比較して研究者の権限が弱くなっているという事案も示され、実務家の側のあり方も問い直される機会となった。

末筆ながら、筆者は、プレナリーセッションにて北村健二先生が指摘されていた「見渡せる範囲の実践共同体」、つまり「小さくてもよいので、その人の次の一歩を支援」するような実践というものに、大きなヒントが隠されているように感じた。

実践の現場はそれぞれのセクターのなかにあり、例えば研究者が所属している大学でいえば、教育の現場がまさにそうなのではないかと感じた次第である。

(小林誉明)


E4. Peace, Democracy and Global Divide

  • 座長:花谷厚(JICA)
  • コメンテーター:片柳真理(広島大学)、重田康博(宇都宮大学)

発表者

  1. “Global Citizenship Education – Youth work in an undemocratic society― AIESEC – an international student organization in Vietnam ―”
    Nguyen Thanh Van (Sophia University)
  2. “Indigenous Self-determination in Cherán, Mexico: Organised Distrust as a Democratic Practice”
    Erick Cosme Gomez (Hiroshima Jogakuin University)
  3. “Transcending the Global-Local Divide: A Framework for Analyzing Technocracy in Peace Work” 
    BALLESTEROS, Marie Donna (Nagoya University)
  4. “Formulation of Practical Model in Poverty Reduction by Microfinance―Analysis of Case Study in India-”
    Hiromi Inami (JDI)

本セッションでは標題テーマのもと、4件の報告が行なわれた。 コメンテーターは、広島大学大学院・片柳真理教授(報告1.および3.)、宇都宮大学・重田康博教授(報告2.および4.)が務められ、座長は、JICA緒方研究所の花谷厚が務めた。

報告1は、社会主義体制下にあるベトナムにおける地球市民教育(GCE)の可能性について研究したもの。国際学生団体であるAIESEC活動経験者に対する調査を通じて、同団体での活動が、経験者の国際的・社会的問題への理解を深めるとともに、社会貢献活動への参画、リーダーシップ育成に貢献していることが確認され、ベトナムにおいてAIESECがGCEの一つの有効な機会を提供し得ることが示された。

報告2では、メキシコ中西部の先住民族の町チェランにおける住民自治のメカニズムを、ローザンバランの「対抗民主主義」の視点から分析した。チェランの4つのコミュニティにおける観察を通じて、審判・監視・否定の「組織化された不信」(organized distrust)が、地域の民主的統治に有効な役割を果たしていることが示された。加えて平和構築論への含意として、信頼とともに不信のメカニズムを構築することの重要性が指摘された。

報告3では、平和活動を支援する国際社会とローカル組織間の関係を、「テクノクラシー」の浸透に注目して論じた。フィリピンで平和活動に従事する市民社会組織(CSO)とドナー等外部組織間の関係分析を通じて、平和活動におけるテクノクラシーの分析枠組を提示した。

報告4は、インドの「女性自営者協会(SEWA)」を対象に、同団体の行なう融資・起業支援活動が、受益者女性の生計・生活に与えた影響について評価した。メンバー女性への聞き取りに基づき、融資や訓練を通じて受益者の生計が改善するだけでなく、家庭内・対流通業者関係において、発言権を増していることが報告された。

コメンテーターからは、RQ、分析枠組み、調査対象選定理由等をより明確にすべきとの指摘のほか、報告2.については「組織化された不信」の他の紛争影響国への適用可能性について意見が交わされた。フロアからは、報告4.のSEWAの活動実態や運営方針について質問があった。

全体を通じて、グローバルに共通する課題に対してローカル組織による独自の取組みの有効性・可能性が示された有意義なセッションとなった。

(花谷厚)


午後 III セッション/ Afternoon Session III 14:20-16:20 (GMT +9)

A5. 企画「ODAを活かしてCollective impactを実現することは可能か?―JICA「クラスター・アプローチ」を通じた共創の試みとその課題―」

  • 企画責任者:永見光三(JICA)
  • 司会:小林 誉明(横浜国立大学・JASID研究×実践委員会委員長)
  • 発表者:室谷龍太郎(JICA)、吉田友哉(JICA)、永見光三(JICA)
  • 討論者:功能 聡子(ARUN)、キム・ソヤン(東京大学・西江大学)

本ラウンドテーブルでは、ODA・開発援助機関の役割が、個別事業の実施に留まらず、多様なパートナーと協働してのCollective impact創出へと変化しているという認識のもと、JICAが始めているグローバル・アジェンダ(GA)および、クラスター・アプローチの取り組みについて、その意義や課題について議論した。本ラウンドテーブルは、国際開発学会の「研究×実践」委員会の活動の一環として企画された。

JICAから参加した室谷室長がクラスター・アプローチの概要を説明したうえで、吉田会員・永見会員とともに、平和構築、保健医療、防災のそれぞれの分野での取組み・検討状況を紹介した。

この取組みについて、討論者3名からコメントや問題提起があった。功能氏は、SSIR(スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー)の議論も紹介しつつ、エクイティ(公平・公正)の視点の重要性を指摘し、Collective impact成功の5条件(共通のアジェンダ、共通の測定システム、相互に補強し合う取り組み、継続的なコミュニケーション、活動をサポートするバックボーン組織)を満たす構造づくりにJICAがどのような役割を果たすか、という問題を提起した。

キム会員からは、このような変革をなぜ今、何のために取り組むのか、クラスターによって役割分担が固定化されることはないか、どのような制度改革が考えられているか、という指摘があった。

大山会員からは、組織内でのクラスターの位置づけと制度変更の可能性、JICA側の支援策の整理に被援助側の視点を取り込む方法、Collective impact実現のためにアクターの継続的な関与を促す仕組み、といった点への指摘があった。

聴衆からの参加も含めた意見交換では、JICA内の制度的な変更の検討についても共有されたほか、日本の経験に拘りすぎずにどのようなベスト・ミックスを実現するか等が議論された。

司会の小林会員は、研究者がクラスターの検討の段階から貢献できる可能性を示唆しつつ、引き続き実践的な改革のためにも研究者と実務者の議論を続けたいとしてセッションを終えた。

(小林誉明)


B5. RT「『開発』の多重性―アジア・アフリカから語り始める―」

  • 企画責任者:汪牧耘(東京大学)
  • 司会:近江加奈子(国際基督教大学)
  • 発表者:綿貫竜史(名古屋大学)、須藤玲(東京大学)、神正光(元名古屋大学学生)

本ラウンドテーブルは、「若手による開発研究」部会による企画セッションである。「開発とは何か」という古くて新しいテーマに対して、「非欧米社会」に立脚する若い世代の研究者なりに改めて問題提起をしようとした、野心的な計画だといえる。

そこで、5人の若手研究者が、東ティモール、バングラデシュ、中国、日本、フィリピンと南アフリカから見た「開発」の多重性を共有した。それは、単一言語や国際的な観念上の約束だけでは回収できない多様な「開発」のあり方を横並びするだけではない。

多様なあり方の関連性を見出し、さらに、ひとりの若手研究者としてどのように「開発」に向き合っていくかという点まで踏み込んだことで、有意義な議論になったと考える。

なかでも、(1)開発をめぐる知識と実践が「言語」によって区切られている現状と、(2) 開発を目指す「豊かさ」の先にあるもの、という2つの論点をめぐって、登壇者は意見を活発に交わしていた。

具体的には、「開発」を研究していくにあたって、ある国や地域の人びとの年齢、人口規模、時代体験や時間感覚などの視点の重要性が言及された。また、尊厳の奪還、アイデンティティの追認、素朴の維持、人間性への回帰などといった、非物質的な「豊かさ」が現実的に「開発」の語り方を形づくっているような実態もあぶり出されている。

本セッションでは合計30人ほどにご参加いただいた。フロアから、障がいを持つ人が求める開発、開発と近代化の線引き、さらに開発の次に語り始めるべき議題など、示唆に富むコメントが多く示された。

開発に携わる人びとが「開発」を語ろうとする意欲と、語り方を洗練していく必要性を実感したところ、「若手による開発研究」部会のこれからの活動に着手するヒントを得たといえる。今後、若手の開発研究者が共同研究を通して、既存の「開発」の語りを相対化し、アジア・アフリカからの知見を体系的に構築していくことを望む。

(汪牧耘)


C5. 企画「それぞれのウェルビーイングのかたち ―多様化する新興国・途上国での社会課題とコミュニティの現在―」

  • 企画責任者:佐藤峰(横浜国立大学)
  • 司会:佐藤峰
  • 発表者:菅野智子(横浜国立大学)、Yesmen Kazia(横浜国立大学)、Saidur Rahman(横浜国立大学)、牛夢婷(横浜国立大学)
  • 討論者:小國和子(日本福祉大学)

今回は、横浜国立大学佐藤峰研究室として企画セッション「それぞれのウェルビーイングのかたち ―多様化する新興国・途上国での社会課題とコミュニティの現在―」を行ないました。

セッションでは、司会の方で企画の説明をしたのちに、当事者のウェルビーイングの戦略もしくは、新たな社会課題の認識に関わる発表を行ないました。前半の二つの発表では、より新しい社会課題と当事者の課題認識に焦点を当てて論じました。

第一発表(菅野智子)では、トンガ王国における生活習慣病の文化的に適切な対処を、第二発表(Yesmen Kazia)は、バングラデシュにおける大卒女性の就活における障壁、および当事者の認識を取り上げました。

後半の二つの発表では、より社会課題の当事者による対処や戦略に視座をシフトしました。第三発表(Saidur Rahman)では、バングラデシュの都市部における女性縫製工場労働者のウェルビーイング戦略について、第四発表(牛夢婷)は、中国における、文化的に非常に特徴がある、性的マイノリティの「カミングアウト戦略」を取り上げました。

討論者には日本福祉大学の小國和子先生をお迎えし、ふわりとした口調ながら、かなり本質的なコメントをいただきました。とくに、well-being概念をinteractiveに生成されるものとして、そのdynamismを事例から詳細に出していくことは、それぞれの現場における課題に対してcontextualにappropriateな解決策を検討していくことにつながるのではないかというコメントは本質をつくものでした。

その後、25名ほどの参加者からのご意見もいただきながら、かなり充実したセッションをすることができました。学生と指導教員という組み合わせでのセッションをすることには、ご批判を受ける可能性もあり、非常な躊躇がありましたが、いろいろと反省点もありながら、結果としてはやってよかったなと思っています。

金沢大学は父の母校なので、学生達と行けたら本当によかったので、オンラインになったのは、少し残念ではありましたが、自分の指導の限界も痛感でき、そのことも含めて大変によい機会をいただきました。

お忙しいところコメンテーターをお引き受けいただいた小國先生には重ねてお礼を申し上げます。

(佐藤峰)


D5. RT・地方展開委員会主催「日本の地域から問い直す国際開発アジェンダ」

  • 企画責任者:佐野麻由子(福岡県立大学)
  • 司会:木全洋一郎
  • 発表者:木全洋一郎(JICA)、梶英樹(高知大学)、工藤尚悟(国際教養大学)
  • 討論者:佐藤仁(東京大学)

本ラウンドテーブルセッションは、日本の地域づくりと国際開発という視点から今後の国際開発アジェンダを問い直すことを目的とし、パネリストを含め38名程度が参加した。

木全会員は、1990年代から2010年代の日本の地域と国際開発を巡る議論として、(1)日本の知恵や経験を活用した途上国開発、(2)国際協力を通じた日本の地域づくりを経て、今後は(3)グローバルなトレンドにおける新しい日本の地域づくりを捉えた国際開発のあり方そのものの転換の必要性について、陸前高田市のポスト復興のまちづくりを例に提起した。

梶会員は、高知県の中山間地域の地方再生に携わる立場から、日本・途上国ともに地方においては、「地方創生」や「SDGs」という言葉に違和感を覚えており、それが地域の自己肯定感の低下につながっていることを指摘した。

この点において構造的に国内外の地方に共通軸を見出し、地域の自己肯定感の醸成により、途上国/日本の双方にとって有用な新しい開発のあり方を探究する意義を問いかけた。

工藤会員は、直線的な発展史観に基づく開発/ポスト開発の議論に対して、地域には各々の発展の姿があるとする空間的な発展史観を踏まえつつ、敢えて複数の地域を繋ぐ通域的な学びの場を設定することで、異なる発展のあり方に触れて価値観の揺らぎが起こり、自らの自立的な発展への模索につながることを、秋田県五城目町と南アフリカでのフィールドワークを例に述べた。

佐藤会員からは、「外を知っているからこそ、自国を深く理解できる。構造的な権力関係に対し、ローカルな視点に依拠した新たな知見をもって対峙することができる。学会は自己肯定感を高める知識を提供できるのではないか」等のコメントが出された。

参加者からは、「虫の目をもつ地域に暮らす研究者」の可能性、媒介者・翻訳者の役割の重要性、消費主義から外れた地域関係の構築、地方における「内なる国際化」等についての意見や質問が出された。

本セッションを通して、固有の風土をもつ地域が共通課題でつながることや通域的な学びが、地方の劣等感の解消、中心都市との権力関係の解消、新しい知見の獲得において効果的であり、今後の国際開発アジェンダを考えるヒントになりうることが確認できた。

(佐野麻由子)


E5. RT “Cambodia Education and Teacher Reform under COVID-19 Pandemic”

  • 企画責任者:Masato Noda (Ibaraki University)
  • 司会:Masato Noda
  • 発表者:Dy Samsideth (Ministry of Education Youth and Sport: MoEYS, Royal Government of Cambodia), Yuto Kitamura (The University of Tokyo), Chhinh Sitha (Cambodia Education Research Council), Ashida Akemi (Waseda University), Takayo Ogisu (Sophia University), Bo Chankoulika (MoEYS), Yasushi Hirosato (Sophia University), and Ngov Penghuy (Royal University of Phnom Penh)

本セッションは、Cambodia Education and Teacher Reform under COVID-19 Pandemic: Industrial Human Resource Development and Right to Educationと題し、日本とカンボジアの共同研究として、カンボジア教育青年スポーツ省(MoEYS)からもリサーチ・パートナーを招聘して開催された。英語を使用言語に、参加者31名により活発な議論がなされた。

第1報告では、座長の野田が本研究の概要として、SDGs, Education and Teacher Reform toward 2030 in Cambodia-Issues and New Challenges under COVID-19 Pandemic-と題し、発表を行なった。

第2報告では、Dy Samsideth (MoEYS)より教育総局次長としての政策立案の視点から、Teacher Training and Professional Support System in Cambodia – Under the Covid-19と題し、発表がなされた。

第3報告では、北村友人会員(東京大学)、Chhinh Sitha(Educational Research Council, MoEYS)、芦田明美会員(早稲田大学)により、教育現場・教室の視点から、Examining the Quality of Education in Cambodia via a Review of Classroom Activities and Interactionsと題し、発表がなされた。

第4報告では、荻巣崇世会員(上智大学)より、専門家の学習共同体(PLC)を軸に、Theorizing Teacher Learning through Collaboration: Implications for PLC in Cambodiaと題し、発表がなされた。

本セッションは、科学研究費補助金(基盤C)「カンボジアにおけるSDGs達成にむけた教員改革-産業人材育成と学ぶ権利の保障」(代表:野田真里)の成果による。

(野田真里)


午後 IV セッション/ Afternoon Session IV 16:25-18:25(GMT +9)

A6. 開発をどう見るか

  • 座長:久木田純(関西学院大学)
  • コメンテーター:関根久雄(筑波大学)、山田恭稔(中央大学)

発表者

  1. 「パラグアイ農村女性生活改善プロジェクトを評価する―第三の道としてのオンライン国際協力とその評価」
    藤掛洋子(横浜国立大学)
  2. 「『地域社会の組織力』をどう見つけるか―参加型農村開発実践のための地域社会調査手法構築に向けて―」
    重冨真一(明治学院大学)
  3. 「『見る』という普遍言語-写真を『読む』ことを通じて考える-」
    平田オーエン慈花(HAPTICS)
  4. 「開発における自律概念の再考―を基礎とした自律と関係性を基礎とした自律の視点から―」
    近江加奈子(国際基督教大学)

時間的制限があったが、4名の発表者の開発についての多様な視点からの考察に対して有意義で示唆に富む議論を行なうことができた。

発表1:藤掛洋⼦氏(横浜国⽴⼤学)により「 パラグアイ農村⼥性⽣活改善プロジェクトを評価する―第三の道としてのオンライン国際協⼒とその評価」と題して、コロナ禍におけるオンラインでの開発評価の試みに関する報告が行なわれた。オンライン・フィールドワークも含め、どのようにカウンターパートや参加者との信頼を構築するのかなどの問いが出された。

発表2: 重冨真⼀氏(明治学院⼤学)により「『地域社会の組織⼒』をどう⾒つけるか―参加型農村開発実践のための地域社会調査⼿法構築に向けて」と題して、農村の内発的・持続的な開発には地域社会の組織力が重要であり、それをどのように分析し見える化するかについての報告がなされた。リーダー交代など属人的な変化をどう見るかなどの問いが出された。

発表3:平⽥オーエン慈花氏(HAPTICS)により「『⾒る』という普遍⾔語-写真を『読む』ことを通じて考える」と題して、国際開発が価値を問うものであり、見る力が重要であるとの視点から報告が行なわれた。共通感覚やラポールの形成、見ると読むの概念の違い、開発実践は働きかけることによって成り立つのではないかなどの問いが出された。

発表4:近江加奈⼦氏(国際基督教⼤学)により「 開発における⾃律概念の再考―個人を基礎とした⾃律と関係性を基礎とした⾃律の視点から―」と題して、開発における自律の概念は個人を基礎としており、西洋近代市民社会の人間像を押し付けたのではないか、関係性を基礎とした自律の再認識が重要ではないかとの視点から報告がなされた。有効な開発のための自律とは何か、脱開発論につながる議論ではないかなどの問いが出された。

(久木田純)


B6. 企画「JASIDブックトーク」

  • 座長:佐藤寛(ジェトロ・アジア経済研究所)、道中真紀(日本評論社)
  1. 清水展・小國和子/編『職場・学校で活かす現場グラフィー:ダイバーシティ時代の可能性をひらくために』(明石書店、2021年2月刊)
    ・報告者:小國和子会員(日本福祉大学)、大江道雅氏(明石書店) 
    ・討論者:佐藤寛会員(アジア経済研究所)
  2. 飯塚倫子/編著『<善い>ビジネスが成長を生む:破壊と包摂のイノベーション』(慶應義塾大学出版会、2021年11月刊)
    ・報告者:飯塚倫子会員(政策研究大学院大学)、木内鉄也氏(慶應義塾大学出版会)
    ・討論者:高田潤一会員(東京工業大学)
  3. 大谷順子/編『四川大地震から学ぶ:復興のなかのコミュニティと「中国式レジリエンス」の構築』(九州大学出版会、2021年9月刊)
    ・報告者:大谷順子会員、高欣会員、陳逸璇会員、王芸璇会員、李婧会員(以上、大阪大学)、奥野有希氏(九州大学出版会) 
    ・討論者:飯塚明子会員(宇都宮大学)
  4. 佐藤由利子/著『日本の留学生政策の評価:人材養成、友好促進、経済効果の視点から〔増補新装版〕』(東信堂、2021年11月刊)
    ・報告者:佐藤由利子会員(東京工業大学)、下田勝司氏(東信堂) 
    ・討論者:黒田一雄会員(早稲田大学)
  5. (1)重田康博・太田和宏・福島浩治・藤田和子/編著『日本の国際協力 アジア編:経済成長から「持続可能な社会」の実現へ』(ミネルヴァ書房、2021年6月刊)
    (2)阪本公美子・岡野内正・山中達也/編著『日本の国際協力 中東・アフリカ編:貧困と紛争にどう向き合うか』(ミネルヴァ書房、2021年8月刊)

    ・報告者:阪本公美子会員(宇都宮大学)、重田康博会員(宇都宮大学) 
    ・討論者:大橋正明会員(聖心女子大学)
  6. 岡野内正/著『グローバル・ベーシック・インカム構想の射程:批判開発学/SDGsとの対話』(法律文化社、2021年6月刊)
    ・報告者:岡野内正会員(法政大学) 
    ・討論者:佐藤寛会員(アジア経済研究所)

JASIDブックトークは、会員が自著を担当編集者とともに紹介するセッションです。第5回となる今回も、書籍の内容紹介にとどまらず、出版企画が生まれた経緯、執筆・編集における苦労や工夫、主要読者層や販売動向、国際開発への貢献といった、いわば「本づくりそのもの」を、著者と出版社の双方の視点から語っていただきました。

約45名のご参加のもと、上記6冊の書籍につき、たいへん充実した報告・討論・質疑応答が展開されました。

(道中真紀)


 C6. RT「子どもの安全保障―日本において社会的に周縁化されやすい子どもたち―」

  • 企画責任者:勝間靖(早稲田大学)
  • 司会:勝間靖
  • 発表者:高柳妙子(早稲田大学)、中村安秀(日本WHO協会)

「子どもの安全保障への開発アプローチ」研究部会では、「人間の安全保障」について、子どもに焦点を絞った「子どもの安全保障」の概念について議論し、研究部会メンバーのそれぞれの研究領域における事例研究を発表し、政策提言にもつながるような理論的枠組みを構築することを目指して研究活動を進めている。

第32回全国大会の2日目、2021年11月21日(日曜)16:25-18:25、「子どもの安全保障〜日本において社会的に周縁化されやすい子どもたち」と題してラウンドテーブルを開催(オンライン)した。参加者は、20名ほどであった。

まず、研究部会代表者である勝間靖会員(早稲田大学、国立国際医療研究センター)が企画者として、これまでの研究部会での研究活動を説明し、事例研究を発表するうえでの共通の枠組みを提示した。

そして、中村安秀会員(日本WHO協会)「生まれてくる子どもの安全保障〜日本における母子手帳の経験から」と題して発表した。

日本における乳幼児死亡率を見ると、1948年の61.7(千人あたり)から2019年の1.9と大幅に改善している。しかし、無職の世帯は、11.4(2015年)と高く、社会的に周縁化されている。

その原因として、所得の低さ以外に、日本語能力の不足や社会的ネットワークの欠如からくる保健医療・栄養に関する情報不足も考えられる。母子健康手帳は日本語のほか、9カ国語に翻訳されて国内で使われており、妊産婦への保健医療・栄養の情報の普及に役立っている。

つぎに、高柳妙子会員(早稲田大学)が「沖縄に住むムスリムの子どもたち」と題して発表した。沖縄科学技術大学院大学の研究者のうちムスリムの方から紹介を受けて、スノーボール・サンプリングでインタビューが実施された。

子どもが沖縄の公立校に通うなか、体育で水着が着用できなかったり、給食の代わりにハラール弁当を食べたり、決まった時間に祈祷するなど、特別なニーズがあることが示された。それに対して、学校が多様性を尊重しながら、柔軟に対応できているかどうかなど、今後の研究課題が示された。

質疑応答と議論が活発に行なわれた。今後の研究課題として、「母子健康手帳を、従来からの妊産婦中心から、子ども中心に転換できるか?」「子どもの安全保障と、子どもの権利との関係を明らかにするような議論が必要」などが提案された。

(勝間靖)


E6. Social Development

  • 座長:伊東早苗(名古屋大学)
  • コメンテーター:田中雅子(上智大学)、:金 昭延 (Sogang Univeristy)

発表者

  1. “An Investigation of the Entrepreneurial Motivations and Environmental Factors influencing Entrepreneurship in Sub-Saharan Africa”
    1 Nathanael Nzoughe Ngome (Chuo University)
  2. “Gender and Sexual Diversity and Understanding Development: A Direction for Redesigning Post-Pandemic Development Paradigm”
    2 Takeshi Daimon-Sato (Waseda University)
  3. “The impact of incentive payment for health workers on patients’ health facility choice: A case study of the health sector in Cambodia”
    3 Ziying Liu (Kobe University)
  4. “The impact of COVID-19 crisis in Japan: Gender and the world of work”
    4 Naoko Otobe (Consultant on Gender, Work and Development)

The four presentations in this session addressed four different issues pertaining to social dimensions of development. Methodologically, the presentations drew on both quantitative and qualitative analyses. Given time limitations, it was difficult to engage audience in general discussions relevant to all the four presentations. Instead, separate discussions focused on the four individual issues were held between presenters, discussants, and myself as the chair. The session was attended by about twenty people.

The first presentation by Nathanael Nzoughe Ngome was about people’s motivation to start an enterprise in Sub-Saharan Africa, exploring what circumstances influence their decisions. A number of questions and comments were given by one of the discussants concerning the nature of the enterprises discussed as well as the structure of the paper presented.

The second presentation by Takeshi Daimon-Sato was based on his ‘Grant-in-Aid’ research project on sexual orientation and gender identity in Thailand and Malaysia. A discussion centring on his research methods ensued, and several suggestions were made to modify them. Interestingly, the presentation referred to an alternative vision to the SDGs framework that would incorporate individual freedom ‘to be left alone’. (We would have liked to follow up on this point if we had more time available.)

The third presentation by Ziying Liu was on the impact of incentive payment for health workers on patients’ health facility choice in Cambodia. A discussion followed concerning to what extent the rural poor in Cambodia have the substantive choice over health facilities and whether their choice, if any, can be equated with their trust in the facility.

The fourth presentation by Naoko Otobe was on the impact of Covid-19 crisis on gender and work in Japan. One of the discussants suggested several analytical dimensions to be looked at to make the research more exploratory.

(伊東早苗)


ポスターセッション

  1. “Analysis of Foreign Direct Investment on Child Working and Schooling in Secondary Education: Evidence from Cambodia”
    Ryoma Kanazawa (Kobe University)
  2. “Educational Reform of School Diversification and Its Consequences on Educational Stratification in the Republic of Korea: focusing on students’ choice of high school type”
    Seil Kim (Kobe University)
  3. “Effects of Armed Conflicts on Access to Education: The Case of the 1990s Cambodian Civil War”
    Eunho Kim (Kobe University)
  4. “An Analysis of Municipal Governments’ Education Practices on Primary School Children’s Learning Achievement in Brazil”
    Dalilo Leite Dalmon (Kobe University)
  5. “Maternal Employment, Household Division of Childcare and Children’s Development Outcomes in Uganda”
    Li Shumin (Kobe University)
  6. “Do Socioeconomic Factors Prevent Smallholder Farming Children from Enrolling and Attaining More Years of Schooling in Mozambique?”
    Nelson Manhisse (Kobe University)
  7. “An Analysis of Children’s Learning and Development Standards in Lao PDR”
    Xiadong Meng (Kobe University)
  8. “Analysis of ICT Use for Primary School Students’ Learning Outcomes in Ethiopia”
    Ryuto Minami (Kobe University)
  9. “Analysis on the Situation of Early Childhood Education in Lao PDR during COVID-19 Pandemic”
    Masaya Noguchi (Kobe University)
  10. “The Effect of Early Childhood Education on Reading Motivation of 15-Years-old in the Republic of Korea -Based on 2018 PISA data-”
    Natsuko Ogura (Kobe University)
  11. “Friendship Networks of Thai Students and Its Impacts as a Result of a Study Abroad Program in ASEAN”
    Traitip Siriruang (Tokyo Institute of Technology)
  12. “What Determines Children’s Access to Early Childhood Education in Bangladesh”
    Kohei Uno (Kobe University)
  13. “Trajectory of Home Learning Environment over the Preschool-aged Period in Bangladesh”
    Kexin Wang (Kobe University)
  14. “An Analysis of Household Spending on Pre-Primary Education in Kenya”
    Ayumu Yagi (Kobe University)
  15. “An Analysis of Applicability of Self-Determination Theory to Teachers’ Motivation in Public Primary Schools in Lao PDR”
    Taiga Yano (JICA / Kobe University)

第32回全国大会・実行委員会
委員長:和田一哉(金沢大学)




活動報告『開発とビジネス』研究部会(2021年11月)

《2021年7-9月期》

本部会は民間企業、とりわけ日本の中小企業アクター(場合によっては大企業、多国籍企業も含む)がどのような形で「途上国の開発問題/社会問題」解決に貢献できるのかを、具体的な取り組み事例の検討を中心に行うことを目指している。2021年7-9月期は、2回研究会を開催した。

まず1つめに、2021年8月24日(木曜)、午後1時30分~午後5時にオンラインの形で開発とビジネスに関連した研究を行なう若手研究者を対象としたブートキャンプを、学会員から参加者を募り実施した。

本ブートキャンプは、近年、国際開発学会の若手会員のなかで、国際開発とビジネスとを結びつける分野の活動に注目し、これを論文のテーマに設定している人も増えているが、大学院等で研究する場合、国際開発、国際貿易、国際経営、さらにはボランティア学など、さまざまな指導教官がいるなかで、適切な指導が受けにくいという現状に対処するものである。

また、国際開発学会の春季大会、全国大会などで研究報告をしても扱うテーマごとに「教育」「保健」「農村開発」などのセッションに配置されてしまい、同じような切り口で研究している人とうまく情報共有できないという問題が散見されていた。

研究部会では、若手研究者を中心にこの「開発とビジネス」分野を研究テーマとしている方からの話題提供を求め、これに対してシニア、中堅研究者がコメントをする「ブートキャンプ」を試行することとした。

会の進行および主コメンテーターとして佐藤寛氏(ジェトロ・アジア経済研究所)が助言を行なったほか、下記の開発とビジネスの分野に経験豊かな各研究者がコメントおよび指導を行った。吉田秀美氏(法政大学)、下田恭美氏(早稲田大学)、小林かおり氏(椙山女学園大学)、功能聡子氏(ARUN)、八鍬(山崎)ひかり氏(元ボーダレスジャパン)。

参加した若手研究者及び、テーマは下記のとおりであった。

発表1.「世帯内ジェンダー格差とデジタルテクノロジー -バングラデシュおける賃⾦⽀払いのデジタル化の事例から」

綿貫竜史氏(名古屋大学国際開発研究科博士課程)

発表2.「The mechanism of promoting corporate responsibility to respect for human rights through international norms – how it works in Africa」

井上直美(東京外国語大学サステナビリティ研究博士課程)

発表3.「ウガンダの難民起業家の成功要因について」

中村恵理氏(慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科博士課程/ 独立行政法人国際協力機構)

発表4.「日本の民間教育団体の海外展開史-民営化する国際教育協力との関係に注目して-」

朝倉隆道氏(株式会社富士通総研、一橋大学大学院)

参加者からは、経験・知識が豊富な、いつもは指導を受けることが出来ない先生方から助言をいただけたこと、開発とビジネスという共通の分野で研究を進める若手研究者から学ぶことが出来たこと、および知り合えたこと、実務と学術の両方の視点をつなげて議論できたこと、多岐に渡る話題を議論できたこと、等が非常に有意義であったとの感想をいただいた。

気軽に発表し、分野横断的に意見交換できる会をもっと企画して欲しいという声も多くあがった。今回は、代表の佐藤のアイデアでこうした会を開催したが、今後も、同様の企画を何らかの形でできないか検討することに価値があることが確認できた。


ミズノヘキサスロンのベトナム公教育への導入について

-対立事物の相互浸透の法則-

2回目は、2021年9月24日(金曜)に、開発途上国の抱える課題に、本業を通じて取り組む企業の事例を学ぶオンライン研究会を開催した。企業の担当者に話をうかがい、参加者全員で意見交換を行なった。研究会のタイトルは、「ミズノヘキサスロンのベトナム公教育への導入について-対立事物の相互浸透の法則-」。

講師には、森井征五(もりい・せいご)氏(ミズノ株式会社・総合企画室・アジアグローバルセールスマネジャー)をお招きした。なお、研究部会の開催時間は、通常の昼間の研究部会には参加できないとの会員の声を反映し、ランチタイムに開催した。参加者は、合計で21名であった。

ミズノ株式会社のベトナムでのヘキサスロン運動プログラム事業の背景は次のとおりである。ベトナムでは、2021年9月から、40数年ぶりに初等義務教育「学習指導要領」の改訂と、その運用の開始が予定されている。ミズノ株式会社はベトナム教育訓練省と、同社ヘキサスロン運動プログラムを新学習指導要領に採用する「協力覚書」を2018年10月に締結し、本プログラムを、同国の学習指導要領へ導入すべく、その採用に向けた活動を行なっている。

当日は、まず同社の事業概要を説明するムービーを使用し、その後に森井氏から、事業概要と現状の取り組み内容をご報告いただいた。そして、今後想定されるサービスの価格や知的財産権を含めたサプライチェーン、事業収益化への課題、日越関係機関との合意形成や連携のあり方について議論を進めていただいた。

同社は、急速な経済成長が進むベトナムで問題となっているこどもの肥満、そこからつながる健康被害等のリスクを社会課題と捉え、この課題を解決するための鍵は、限られた時間とカリキュラムで行なわれる体育授業にあると特定した。

同社のプログラムは、学習指導要領に採用されることで体育授業プログラムを多様化させ、子どもの前述の問題を解決することに役に立つものであるとのことであった。現に、報告では、ベトナムの小学校が十分に体育授業を行うためのフィールドを確保できないままに、ごく短時間の簡単な運動の機会しか与えられていないという現状が、ビデオで報告された。

森井氏からは、ベトナム政府との交渉、関係各所との役割分担、価格や知的財産権の商流に関する各所との合意形成活動、現地日本大使館との連携等における、難しさや事業を進める喜び等が共有され、参加者との意見交換が行われた。

参加者からは、同社がベトナムで事業を推進する理由やきっかけについての質問、本事業の競合に対する優位性や模倣品への対策、そこから派生して知的財産権をベトナムのようなコントロールの難しい国で守りつつ利益を確保する事業を進めるための工夫に関する意見交換が行われた。

また、本事業が当初、公的資金の援助を受けつつパイロット事業をベトナムで始めたことに関連し、今後そうした公的資金の支援を受けずに利益事業として成り立つためには何が必要か、利益確保するためのマーケット規模は十分か、ベトナム以外のマーケットへの進出予定等について参加者から質問が挙がり、これに関する意見交換が行われた。

また、ODA事業として進めた経験から、国際協力分野に経験の厚いコンサルタントと企業がどのように協力し、お互いの得意分野を使い事業拡大の可能性を広げることが出来るか、ということについて、コンサルタントと企業の双方の立場からの率直な意見を聞くことが出来た。

意見交換の話題は、同社のサプライチェーン・マネジメント、SDGsに関する取り組み、CSRに関してまで広がった。短時間ではあったが、非常に密度の濃い意見交換を行うことが出来た会であった。

「開発とビジネス」研究部会
代表:佐藤寛(ジェトロ・アジア経済研究所)




活動報告『倫理的食農システムと農村発展』研究部会(2021年11月)

1.研究部会概要

「倫理的食農システムと農村発展」研究部会は池上甲一(近畿大学名誉教授)を代表者、牧田りえ(学習院大学教授)を副代表者として、2020年11月にスタートした。本研究会の目的は、いわゆるフェアトレードとエシカル消費(人権、環境、公正さに配慮する消費)の両者を倫理的取引として把握し、この倫理的取引に基づく倫理的食農システムが生み出す農村発展の成果と課題を解明することにある。

その際に、北側諸国でも関心を集めている「食への権利」や「食料主権」といった食料運動の観点も参照枠として利用する。具体的には、第1に現行食農システムの問題解明と倫理的食農システムの構築・拡大条件、第2に貧困削減を含む農村の総合的な発展への道筋、第3に「先進国」を中心とする消費者に対する倫理的食農システムの利点の提示とそれによるフェアトレード市場の拡大可能性を解明することをめざしている。

貧困削減・撲滅はPRSPの登場以降、人類共通の課題として捉えられてきた。2015年に合意されたSDGsでも第1目標に位置づけられている。しかし、とりわけCOVID-19による感染症の世界的な拡大によって、減少傾向にあった貧困人口が再び増大に転じている。貧困人口の多くは、医療・保健体制の脆弱な南側諸国の農民である。だから、農村発展はSDGsの観点からも国際公共保健の観点からも優先度が高いといえる。

2.活動実績概要

2021年度は、新型コロナウィルス感染症の拡大を受けて、オンラインによる研究会の開催を行ってきた。研究会の実施状況は次のとおりである。

第1回(2020年12月27日)

科研費(代表・牧田りえ学習院大学教授)との共催で開催された。講師は安藤丈将氏(武蔵大学教授)に依頼し、「フード・アクティヴィズムの論じ方」というテーマの報告を受けた。

第2回(2021年3月12日)

に、本研究部会代表の池上が「食料主権とアグロエコロジー」について報告した。この研究会には、賛同者と科研の研究メンバー以外にも国際開発学会会員、それ以外の一般参加者も多数参加し、このテーマに対する関心が大きいことを痛感した。

第3回(2021年5月15日)

ソリダリダード・ジャパンの楊殿閣氏に、「持続可能な農産品サプライチェーン構築と倫理的生産活動の支援」というタイトルで国際NGOソリダリダードの活動について報告してもらった。

第4回(2021年7月31日)

龍谷大学名誉教授の河村能夫氏に「JICAインドネシア・スラウェシ貧困対策支援農村開発計画の経験」を報告してもらった。


年度内に共催を含めて、4回程度の研究会を予定していたが、その計画を達成することができた。次年度は学会大会での企画セッションまたはラウンドテーブルを企画したいと考えている。

『倫理的食農システムと農村発展』研究部会
代表:池上甲一(近畿大学名誉教授)




活動報告『倫理的食農システムと農村発展』研究部会(2021年8月)

本研究部会の目的は、いわゆるフェアトレードとエシカル消費(両者を合わせて倫理的取引とする)に基づく倫理的食農システムが生み出す農村発展の成果と課題を解明することにある。その参照枠組みとして、「食への権利」や「食料主権」といった食料運動の観点も利用することとしている。

前回のニューズレター・活動報告では、2020年12月と2021年3月に行った2回の研究会について報告した。その後、5月15日(土曜)午後1時半からオンラインで、ソリダリダード・ジャパンの楊殿閣さんに「持続可能な農産品サプライチェーン構築と倫理的生産活動の支援-国際NGOソリダリダードの挑戦」というテーマで報告してもらった。連帯経済についてはかなり研究の蓄積もあるが、まだ広く知られていないソリダリダードについての紹介はそれだけで有意義だった。また本研究部会の趣旨からすると、フェアトレードから連帯経済への転換過程および「フェアデーター」の試行は興味深い論点となりうる。

次回は7月31日に、河村能夫さん(龍谷大学名誉教授・京都府立農業大学校名誉校長)に「JICAインドネシア・スラウェシ貧困対策支援農村開発計画の経験(仮)」をテーマにオンライン研究会を実施する予定である。

『倫理的食農システムと農村発展』研究部会
代表:池上甲一(近畿大学名誉教授)




「Resilience Seminar #41」1月26日開催(会員・一般)

The Resilience seminar cordially invite you to join the following hybrid seminar.
For zoom participation, prior registration is required here.

Resilience Seminar #41

  • Date & Time: January 26, 2023, Thu 16:30-18:15 JST
  • Language: English
  • Venue: Seminar Room E220, Graduate School of Agriculture, Kyoto University
    and Zoom Web Seminar (hybrid)

Speaker

Masanori Matsuura, Institute of Developing Economies (IDE-JETRO)

Title

Weather Shocks, Livelihood Diversification, and Household Food Security: Empirical Evidence from Rural Bangladesh

Abstract

Extreme weather shocks have occurred more frequently because of global climate change. Livelihood diversification including crop and income diversification is one of the most remarkable strategies to cope with economic and weather shocks to improve rural livelihood. We investigate the empirical linkages among weather shocks, livelihood diversification, and household food security, exploiting three waves of nationally representative rural household panel data merged with granular climate data in Bangladesh

Brief bio

Mr. Masanori Matsuura worked for a Japanese private think tank as an analyst and obtained MSc in Agricultural Economics at National Taiwan University, prior to joining IDE-JETRO. His research interests lie in the intersection among climate change, food security, health, and rural development.


Contact

Division of Natural Resource Economics
Graduate School of Agriculture, Kyoto University
Ken Miura

  • [at] (replace [at] with @)

*This seminar is co-hosted by Kyoto Environment and Development Seminar and Hokkaido Branch of Japan Association for African Studies.




研究会「倫理的食農システムと農村発展研究部会」7月2日開催(会員・一般)

「倫理的食農システムと農村発展」研究部会では、この7月、地域支援型農業(CSA)を連続して取り上げます。お気軽にご参加ください。

開催概要

2022年7月2日(土曜)午後2:00~4:00

  • 報告者:波夛野豪 氏(三重大学名誉教授)
  • 報告タイトル:「CSAの現段階とTEIKEIの展開過程」

2022年7月10 日(日曜)午後2:00~4:00

  • 報告者:中川恵 氏(山形県立米沢女子短期大学社会情報学科・准教授)
  • 報告タイトル:「宮城県・鳴子の米プロジェクトがめざす農と食のコミュニティ ―日本版CSAの特徴をどうとらえるか?―」

会場:

いずれもZOOM(前日に招待URLをお送りします)

参加料:

無料

参加申し込み:

以下のメールアドレスまで、参加希望の日にちを明記してお送りください。


本件にかんするお問い合わせ先

「倫理的食農システムと農村発展研究部会」

  • E-mail: ethicalagrifood [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)



研究会「倫理的食農システムと農村発展」7月2・10日開催 (会員・一般)

「倫理的食農システムと農村発展」研究部会研究会では6月のアグロエコロジーに続き、7月は地域支援型農業(CSA)を連続して取り上げます!

  • 日時:2022年7月2日(土曜)午後2時~4時
  • 報告者:波夛野豪 氏(三重大学・名誉教授)
  • 報告タイトル:「CSAの現段階とTEIKEIの展開過程」
  • 日時:2022年7月10日(日曜)午後2時~4時
  • 報告者:中川恵 氏(山形県立米沢女子短期大学社会情報学科・准教授)
  • 報告タイトル:「宮城県・鳴子の米プロジェクトがめざす農と食のコミュニティ ―日本版CSAの特徴をどうとらえるか?―」

会場

いずれもZOOM(前日に招待URLをお送りします)

お申込方法

参加希望の日にちを明記し、Eメールにてお申込みください。


本件にかんするお問い合わせ先

『倫理的食農システムと農村発展』研究部会

  • E-mail: ethicalagrifood [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)



ササカワ・アフリカ財団と行く!「アフリカ横断オンライン・クエスト&ギャザー」6月22日開催(会員・一般)

グローカルな仲間たちでは、国際協力と地域おこしの人財交流や勉強会を開催してきました。

今回は、アフリカをもっと身近に感じていただくために、アフリカでの農業・農村開発をすすめているササカワ・アフリカ財団-SAA-の協力で、アフリカに点在するオフィスをつないで、アフリカを知る参加型オンラインツアー「クエスト&ギャザー」企画しました。

アフリカの4つの国を周って各国の人たちと交流をしていくツアーです。通訳はSAAの職員の方々がしていただけますので誰でも安心して参加できます。

高校生以上となっていますが、お子さんと一緒に参加も大歓迎です。

第一部「クエスト(Quest=探究)しよう!」

「クエスト編」では、オンライン(Zoom)をつかって日本ササカワ・アフリカ財団(SAA)の東京本部を起点に、アフリカの4つのオフィス、エチオピア、ナイジェリア、ウガンダ、マリの現地事務所へ次々と訪問。

「食」や「農業」をテーマに、4カ国の事務所員がつくったクイズに答えていきながら、各国を冒険。現地中継でつながった現地の職員とリアルに交流しながら、楽しいクイズやミッションを解決していきます。クイズやミッションをたくさん解決した参加者には豪華賞品も!?

第二部「ギャザー(Gather=集まる)しよう!」

「ギャザー編」では、アフリカの4つのオフィス、エチオピア、ナイジェリア、ウガンダ、マリの現地事務所の好きな国へオンラインで訪問します。Zoomでわかれた部屋では、その国の事務所員といろいろとお話できます。アフリカの各国それぞれの文化・歴史、そして現地スタッフの身近な話題や、反対にアフリカのスタッフから日本の参加者にびっくり質問も飛びだすことも。本当のアフリカを自宅にいながら感じることができる懇親会です。みんなでギャザーしよう!

高校生以上を対象としていますが、中学生・小学生も保護者同伴で参加することができます。
各プログラムとも、スタッフが通訳を頑張りますので、言語に自信のある方・ない方関係なく、お気軽にご参加ください!

  • 日時: 2022年6月22日(水曜)
    第一部「クエスト編」18:00-19:00
    第二部「ギャザー編」19:00-20:00

参加者

アフリカや途上国援助に興味がある高校生以上から大人の方。パソコンとwifiが必要。小学生・中学生でも保護者(または類似の役割をしてくださる方)が同伴であれば参加可。

参加費

無料 (パソコンとwifi接続はご用意ください)


本件にかんするお問い合わせ先

グローカルな仲間たち・三好崇弘

  • miyoshi1970 [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)

三好 拝




「地域再生マネージャーが直接伝授! 地域を元気にする特産品開発講座」5月21日開催(会員・一般)

国際協力と地域づくりの融合を推進している「グローカルな仲間たち」では、国際協力の定番ツールPCMの研修を国内事例で実施したり、また国内の地域おこし事例を国際協力の視点から読み解いたりするイベントをしてきました。

最近、国際協力における農村開発は「生産」だけでなく、販売を意識した生産を進めるたけでなく、バリューチェーン(生産-加工-販売)そのものに焦点が広がってきています。その中で重要な牽引力となるのが地域の特産品。地域資源を生かし、かつ地域の格差是正や地域おこしにつながるような特産品をつくるノウハウについて、実践者から学ぶ勉強会です。

開催概要

  • タイトル:地域再生マネージャーが伝授! 地域を元気にする特産品開発講座ーー地域活性化バリューチェーンをつくるーー
  • 日時:2022年5月21日(土曜)9:45- 17:45
  • 場所:リアル会場「電気通信大学」(調布駅から徒歩10分)、オンライン会場(Zoom)
    *参加者はどちらでも選べます。
  • 講師:塚田佳満(ふるさと財団地域再生マネージャー、総務省地域力創造アドバイザー)
  • 参加費:5000円(1日間、計7時間)フルタイム学生の方は、学生割引500円。

特徴

1) 地域づくり・特産品開発の専門家である地域再生マネージャーの方から、特産品販売ビジネス・商品開発マーケティングの基礎と実際のノウハウを直接学べます。
2) 地域再生マネージャーの思考「地域ビジネスと組織づくりの2軸4象限」の思考法を活用して、理論的にかつ実践的に地域特産品開発の進め方を学びます。
3) 海外発展国におけるバリューチェーン強化や地域特産品ビジネスの導入研修にも使われた実績があるカリキュラムです。
4) 会場はリアルな参加と、オンラインを通じた参加が選べます。リアルとオンラインのファシリテーションの実例に触れられます。
5) 修了者は中之条町(群馬県)公認の中之条アカデミー*より「地域プロジェクトマネージャー実践講座」修了書が授与され、希望者は中之条町による地域づくり人財データベース(ロスター制)に登録されます。

参加資格

国際協力や日本の地域おこし・地方創生・地域再生にかかわっていきたい方。新たに地方でビジネスを立ち上げたいと考えている方、今のビジネスをより強い持続性のあるビジネスにブラッシュアップしたい方。地域再生マネージャー、地域プロジェクトマネージャーなど、地域づくりのプロになりたい方。業界を超えた新しい人脈を形成したい方。学生歓迎。オンライン参加の方は、パソコン技術(ワードの描画で簡単な図を描ける程度)と、当日はパソコン(カメラとマイク付き)とWifi接続(自己負担)が必要です。

応募方法、その他、詳しいことは、Webでご確認ください。


本件にかんするお問い合わせ先

グローカルな仲間たち
三好崇弘

  • miyoshi1970 [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)



「ベトナム中南部の再生可能エネルギーと石炭火力を考える」5月21日開催(会員・一般)

このたび、特定非営利活動法人メコン・ウォッチでは、ベトナム国家大学ホーチミン市人文社会科学大学ベトナム東南アジア研究所および沖縄大学吉井研究室との共催で以下の日越共同調査報告会を開催いたします。

ベトナムでは年々増え続ける電力需要に対応して、電源開発が進んでいます。2016年に原発計画が撤回された南部ニントゥアン省では、太陽光、風力の再生可能エネルギー開発が飛躍的に導入されています。

また今後の新規計画はないとされる石炭火力も、滑り込みの建設工事が南部ビントゥアン省や中部ハティン省等、ベトナム各地で日本の投資により進行中です。

今回の報告会は、2022年2月~3月に3名の研究者が共同で実施したフィールド調査の結果を紹介するものです。先住チャム民族の居住地域に集中する再エネ開発の生活への影響、原発計画撤回への地元住民の評価、そして、2か所の日本資本による石炭火力の問題等を、日本人ベトナム地域研究者、ベトナム人開発経済学者、チャム人民俗学者がそれぞれの視点で報告し、投資や支援を行う日本側への示唆を提供します。

開催概要

  • 日時:2022年5月21日(土曜)15:00~18:00
  • 参加費:無料
  • 参加方法:オンライン(zoom)または、対面(会場:浅草橋ヒューリックホール)
  • 参加人数:会場のみ先着30名(感染対策のため収容人数の半数で受け付けます)
  • 主催:特定非営利活動法人メコン・ウォッチ、ベトナム国家大学ホーチミン市人文社会科学大学ベトナム東南アジア研究所、沖縄大学吉井研究室

プログラム

  • 趣旨説明・進行:木口由香(メコン・ウォッチ)
  • 報告1:ベトナム中南部における電源開発と住民の生活環境への影響(日本語)
    吉井美知子(沖縄大学人文学部教授、ベトナム地域研究)
  • 報告2:ベトナム、ニントゥアンの持続可能な開発とは (“Sustainable Development in Ninh Thuan, Vietnam”)(英語、逐次日本語通訳あり)
    チャンディンラム (Mr. Tran Dinh Lam, Ph.D.)
    (ベトナム国家大学ホーチミン市人文社会科学大学教授、ベトナム東南アジア研究所所長、開発経済学)
  • 報告3:ベトナム、ニントゥアン省・ビントゥアン省のチャム人共同体における農村開発の現状と問題点―先住チャム民族の視点から― (“Realities and problems of the rural development of Cham communities in Ninh Thuan and Binh Thuan provinces, Vietnam – With the view of Indigenous Cham People – ”)(ベトナム語、逐次日本語通訳あり)
    タインファン(Mr. Thanh Phan, Ph.D.)
    (ベトナム国家大学ホーチミン市人文社会科学大学教授、ベトナム東南アジア研究所元副所長、民俗学)
  • 質疑応答・討論

申込方法

参加は対面とオンラインで可能です。(1)または(2)のどちらかにお申し込みください。対面でご参加予定の方は、ご都合がつかなくなった場合、キャンセルのご連絡をお願いします。

(1)会場参加の方

こちらのフォームにご記入ください:

(申込締切日:前日5月20日まで、または定員に達し次第締切)

  • 会場名:浅草橋ヒューリックホール
  • 東京都台東区浅草橋1-22-16ヒューリック浅草橋ビル2階(JR総武線浅草橋駅から徒歩1分)

(2)オンライン(Zoom)参加の方

以下のリンクからお申し込みください:
webinar/register/WN_BPYs9akxT72MEHMHeGiQiw
*お申し込み後、ウェビナー参加に関する確認メールが届きます


本件にかんするお問い合わせ先

メコン・ウォッチ

  • 電話番号:03-3832-5034
  • メールアドレス:event[at](* [at] の部分を@に修正してご使用ください)



新刊案内:A・エスコバル『開発との遭遇 第三世界の発明と解体』の刊行のお知らせ

翻訳期間10年を経て、ついに現代の古典『開発との遭遇』の日本語版が完成しました。底本は2012年増補版です。南米コロンビア共和国を舞台にして行われたアメリカ主導による壮大な「国づくり=開発実験」を、政策史でなく民族誌として描いたポスト開発論・批判開発学のバイブルです。

ミシェル・フーコーの生権力論を分析枠組みとして、各章で扱う事柄は、現代思想、開発経済学、農業農村開発、フェミニズム、ジェンダー、先住民族、自然環境、持続可能な開発、ブエンビビール、プルーリバースなど多岐に渡ります。難解な文章でしたが最善を尽くしたつもりです(各所に「超訳」あり)。

出版社サイト

本書は時代を超えて読み継がれるべき内容と説得力を持ちます。コロンビアでおきた出来事は、その後のアジア、アフリカを含む第三世界に対する開発介入の鋳型となりました。訳出を終えて驚きとともに気づいたことは、途上国開発だけでなく、戦後の日米関係について考えるためにも有益な示唆が多々含まれていたことでした。

「主流」の国際開発学徒も、開発の実務者にも、ラテンアメリカ研究者にも、日本国内の地域創生を考える人にも、是非一読をお勧めしたいです。お財布に優しい本ではありませんが、教員の方も、学生・院生さんも、是非、所属先の「図書館にリクエスト」していただければ幸いです。発行部数は僅少。程なく絶版になると思われます。

特徴

  • エスコバル氏の日本語版序文、エスコバル氏の同僚で日本研究者のマーク・ドリスコル氏の序文を収録しました。
  • 各章ごとに、訳者による概要およびキーワードの説明を付しました。
  • 初学者の便宜のため、可能な限りの膨大な訳注を設けました。
  • 各章の扉には、コロンビア研究者の幡谷則子先生(上智大学)他が撮影した写真が挿入されています。
  • 原著にあった誤記。分かりづらい箇所は適宜、>著者に連絡をとり、内容照会をしました。
  • エスコバル氏から発せられた日本人への問いに対する訳者の回答として、かなりのボリューム(2段組40頁)の解題を書きました。

 

目次

  • 日本語版序文Ⅰ 「開発との遭遇」日本語版に寄せて A・エスコバル
  • 日本語版序文Ⅱ 近代の普遍性を解体する M・ドリスコル
  • 序文
  • 第1章 序論:開発とモダニティの人類学
  • 第2章 貧困の問題化:三つの世界と開発をめぐる物語
  • 第3章 経済学と開発の空間:成長と資本をめぐる物語
  • 第4章 権力を拡散する:食料と飢えをめぐる物語
  • 第5章 権力と可視性:農民と女性と環境をめぐる物語
  • 第6章 結論:ポスト開発の時代を構想する
  • 第7章 2012年版への追補
  • 解題 ポスト開発の先にある多元世界の展望 北野収
  • 訳者あとがき
  • 文献一覧

本件にかんするお問い合わせ先

北野収(獨協大学)

  • shukitano1 [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)