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開催案内(会員・一般):アジアアフリカ研究会6月例会のご案内

パレスチナ問題と中東情勢を焦点として、人類社会規模の歴史的転換の可能性について突っ込んだ話し合いをする企てとして、アジア・アフリカ研究所公開研究会を下記要領にて行います。

皆様、どうぞ奮ってご参加ください。

テーマ: 本源的資本蓄積暴力への損害賠償(脱植民地化世界形成)運動の最前線に立たされるパレスチナの人々
話題提供者: 岡野内正(法政大学)
第一発言者: 金城美幸(名古屋学院大学/愛知学院大学)

最初に、岡野内氏が、『アジア・アフリカ研究』第66巻第2号(2026年4月)特集「グローバルサウスの行方――複合危機と展望(中東・アフリカ編)」所収の巻頭小論文「人類史規模の植民地化不正義を総決算せずにはいられない――特集によせて」をもとにした、「パレスチナ問題解決論の地平――社会学的考察」と題する日本中東学会ポスター報告(2026年5月30-31日)の内容を、その後の情勢の展開を踏まえて簡潔に紹介します。

最初の発言者として、「トランプ大統領の『20項目の和平案』の衝撃 ——制度化されるジェノサイド」『憲法運動』 (547) 4-11 (2026年1月)などの諸論文でガザ戦争について論陣を張る金城氏がコメントし、さらに、参加者のみなさんから、次々に発言していただき、たっぷり時間をとって、議論を深めたいと考えています。

参加無料、お申し込みの必要はありません。真剣なる学究の徒は大歓迎ですので、どなたさまも、直接会場(終了後は近くでちょっと一杯やりますのでどうぞ)あるいはZOOMにおいでください。

日時:2025年6月21日(日)15:30~17:30
場所: 法政大学市ヶ谷キャンパス ボワソナードタワー610教室
開催形式:ハイフレックス(対面&Zoomの併用)

※ZOOM情報は以下のようになります。


アジア・アフリカ研究所研究会
2026年6月21日 03:30 PM 大阪、札幌、東京
ミーティング ID  854 7032 0890
パスコード     567526
招待リンク
https://hosei-ac-jp.zoom.us/j/85470320890?pwd=B61pyTaeIH9FsybpubFYZamCaHybW2.1


お問い合わせ先:岡野内正(otadashi[at]hosei.ac.jp)
(* [at] の部分を@に修正してご使用ください)

*以下、参考資料。日本中東学会ポスター報告(2026年5月30-31日ライトキューブ宇都宮)の一部です。

パレスチナ問題解決論の地平――社会学的考察
岡野内 正(法政大学社会学部 otadashi[at]hosei.ac.jp)

はじめに――分析視角と概要

「パーソンズからウェーバーを経てマルクスへ」という系譜を掲げるユルゲン・ハーバーマスの社会理論の基本命題である「システム(経済、法、政治、行政、軍事的な社会制度の束)、による生活世界(諸個人が自己と対話する内的世界、そして自然環境の生態系でもある物理的世界と、諸個人間の意思疎通が行なわれる社会環境・人間関係の総体でもある社会的世界とからなる外的世界、とからなる三つの世界が形成されていく日常生活実践)の植民地化(抵抗を排して変質させ資源として利用し尽くそうとすること)」命題を用いて、社会問題解決に向けて、意思疎通的権力形成作戦とシステム転換作戦とからなる二正面作戦の構想を示す(Habermas1 962,1973,1981,1992)。

ハーバーマスの限界(①ドイツとせいぜいヨーロッパの具体的な事象をもとに、グローバルな植民地支配の歴史的文脈が抜けたままで、時事的問題を分析する時に見せる時論の西欧中心主義的見解。コソボ空爆論、ガザ戦争時のイスラエル擁護論。②多国籍企業のグローバル戦略の論理と具体的様相の把握なしに、グローバル化総体の分析を放棄するかのような「新たな不透明性」論。③ドイツとヨーロッパの問題に専念するあまりの、グローバルな植民地支配と「資本の本源的蓄積の暴力」に関する歴史的記憶が人類社会全体の生活世界および公共圏でもつ意思疎通的権力の潜勢力を大西洋奴隷貿易問題にまで拡張せず。)にもかかわらず、基本命題を活用したい。

パレスチナ問題の解決に向けて、「国連体制に集約される人類社会システムによる人類社会の生活世界の植民地化」という枠組みで、国連総会に集約される人類社会公共圏の議論に焦点を合わせる。

そこでは、グローバルな資産運用・不労所得資本主義(asset manager/ rentier capitalism)経済(Christophers 2023, Braun & Christophers 2024, Maher & Aquanno 2024, resser-Pereira 2025)の「システムの論理=道具的目的合理性」を追求し、世界の再植民地化を求める第二次トランプ政権のアメリカ政府が、ガザ戦争を契機に第二次大戦後の国連体制を事実上の解体に追い込んでいる(岡野内 2026)。

これに対して、人類史的規模での歴史的正義回復=賠償的正義を求める人類社会全体の「生活世界の論理=意思疎通的合理性」の追求が対抗して、脱植民地化世界形成(decolonial worldmaking)(Getachew 2019)に向けた国連体制の再建への動きが確認できる。

パレスチナ問題解決を展望する地平は、そのような動きの中に、人類史的規模の強奪資産返還と、近隣住民コミュニティを基礎とするジェンダー平等の包摂的共有資産管理システム(内戦時北東シリア自治政府の事例に関する岡野内2025b)形成とを同時に追求することで開けてくるだろう。

Ⅰ 国連総会の小さな第一歩――賠償的正義宣言2026年3月25日
近代世界システム形成以来の「資本の本源的蓄積の暴力」に対する賠償の必要性を人類社会規模の公共圏(国連総会)で初めて承認した(193カ国中賛成123, 反対3,棄権52,欠席15)。

人類社会全体によるグローバルな私的資本の公的接収(Cf.「収奪者が収奪される」マルクス『資本論第1巻』)、暴力的蓄積の遺産を相続している多国籍企業集団(岡野内2017)の株式資本接収による人類遺産基金創設(岡野内2024a)への第一歩と言える。

ただし、アフリカと南北アメリカとの関係が中心であり、ヨーロッパやアジア、国内での本源的蓄積の暴力への言及はない。また具体的な賠償的正義実現構想はこれからの課題とされている。反対(アメリカ、イスラエル、アルゼンチン)と棄権(北欧と東欧を含む全欧州諸国、カナダ、オーストリアリア、ニュージーランドと日本)、欠席(アフガニスタン、ブータン、ボリビア、エクアドル、ベネズエラなど)の背景分析も課題である。

だが、これは脱植民地化世界形成に向けた法=イデオロギー的権力形成への第一歩である。

Ⅱ 国連体制の事実上の解体――国連安保理の平和評議会(BoP)承認、2025年11月17日
ガザ・ジェノサイド後に向けた戦後復興へのアメリカ提案を、国連安保理が承認した。

しかし2026年1月に米軍によるベネズエラ大統領拉致事件、2月に不動産業者トランプと友人の不動産業者や投資会社オーナー主導の平和評議会(BoP:Board of Peace)発足、さらに米軍によるイラン元首暗殺、その後の湾岸諸国を巻き込むイランとの戦争、そして5月現在、米軍支援のイスラエル軍がレバノン南部を侵略し、ガザ・ジェノサイドは継続している。

これは、国連憲章の趣旨(ジェノサイドを防ぎ、国家主権尊重の外交努力で戦争を防ぎ、そのための軍事力を持つ強力な国連安保理を設置する)に反する事態であり、国連体制は事実上解体した。

Ⅲ 国連安保理はなぜ屈服したか?――資産運用・不労所得資本主義経済システムの形成
1929年以来最大の2008年金融危機以来、世界経済システムは変化した。「はじめに」で触れたグローバルな資産運用・不労所得資本主義経済システムの形成である。

大銀行と寡占企業との融合癒着に加えて、超富裕層と機関投資家の資金を投資ファンドとして運用する巨大資産運用会社集団が、銀行を含む全多国籍企業の大多数を支配する大株主として登場した。株式相互持ち合いによって財閥のように結託しつつも、相互の競争に促されて最大限の投資収益獲得を目的に、集団で多国籍企業経営を制御するようになった。その資産運用会社集団を制御する超富裕層にとっては、資産増加のみを純粋に追求できる仕組みへの転換であった。この超富裕層の末席には、各国の「政治家階級」や「グローバル・パワー・エリート」が加えられた(Phillips 2018=2020, 2024)。SDGsに敵対して資産増加を追 求するビリオネア政治家が率いる第二次トランプ政権の登場は、超富裕層にとっては好都合であった(岡野内2024a,2025a.2026)。

アメリカ政府による国連への兵糧攻めで身動きがとれなくなっていた国連にとって、豊富な資金提供とセットのアメリカ提案をもはや拒否できなかったのではないか。その結果、国連安保理は、ビリオネアの国際不動産業者と投資会社オーナーたちによる地上げ屋的タワマン開発の平和構想を受容した(Cf.カント永遠平和論のきっかけになった宿屋の墓場の絵)。

それは、超富裕層の資産を増加させるビジネスチャンスとなるだけでなく、イスラエルによる事実上のガザ植民地化の承認でもあった。

Ⅳ 脱植民地化世界形成に向けた国連体制の再構築――公共圏での記憶の語り合いによる意思疎通的権力形成作戦からシステム転換へ
だが、冒頭の賠償的正義宣言は、そのような国連安保理による国連解体にあらがい、脱植民地化世界形成を求める国連総会の動きであり、人類社会の大多数の動きであった。

BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ、さらに2024年に国際会議としてのBRICSに加盟したイラン、エジプト、アラブ首長国連邦、エチオピア、2025年加盟のインドネシア)を始め、国連加盟で投票権のある193カ国のうち過半数を占める植民地化を経験した123カ国、人口換算ではより圧倒的な多数が賛成し、常任理事国5カ国のうち、ロシアと中国が賛成した。 脱植民地化問題にほかならないパレスチナ問題を解決する地平は、この動きの先に開けるだろう。

この動きはまだ国連体制の再構築というシステム転換問題を提起していないが、脱植民地化世界形成に向けた国連体制の再構築への課題はすでに、賠償的正義宣言の中で示されている。すなわち、①強奪資産返還の前提となる歴史的事実に関する調査や証言に基づいて、真相解明、謝罪、賠償資産の確定に至る討議が行なわれる公共圏の形成、②返還された共有資産管理が適切に行なわれるような、共有資産管理システム形成の課題である。

①②の課題を同時追求できるように、現行の国民国家と国連の統治システムは再構築されねばならない。(パレスチナ問題解決論の展開におけるナショナリズム言説を批判的に整理した先行研究としてハディハーニ2020がある。二国解決か一国解決かの議論の鍵もナショナリズムである。岡野内2008-2009はニュージーランド先住民族マオリの独特の「部族」主義的ナショナリズムの飼い慣らし実践に触発されたパレスチナ問題解決論の問題提起である。トルコで獄中にあるクルド・ナショナリズムの闘士アブドゥッラー・オジャランの反国家主義ナショナリズムへの転回について、パレスチナ問題解決論に即して整理した岡野内2024bを参照。その 影響でシリア内戦時の危機に対応する住民主体の劇的なシステム転換として形成された北東シリア自治政府におけるジェンダー平等の近隣住民コミュニティを基礎とする包摂的統治システムについては、岡野内2025bで紹介した。①については、岡野内2006で紹介したニュージーランド先住民族に対する植民地化不正義審判所の事例、②については、岡野内編2026第4章で紹介したアラスカ先住民族の土地収用への補償としての先住民族株式会社設置が問題は多いが興味深い先例となる。)

とはいえさしあたりは、激しい議論の末賠償の記述が削除された2001年の国連ダーバン会議・宣言(2001年)から、それをついに明記した賠償的正義宣言までの25年間の、国連を軸とする人類社会公共圏での記憶の語り合いによる意思疎通的権力形成作戦に学ぶ必要がある。(1)そして、賠償的正義宣言に書き込まれたアフリカに関して具体化された行動提起を、パレスチナに即して具体化することが必要だ。(2)パレスチナ問題解決の取り組みは、脱植民地化世界形成の最前線に置かれている。
【以下、参考文献と脚注は省略】

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