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NL35巻2号 [2024.08]

第25回春季大会:プレナリー

地域発! 国際協力と共創の実践~グローバル・グローカルな人材育成

大会プログラム最後の企画として開催されたプレナリーセッションは、「地域発! 国際協力と共創の実践~グローバル・グローカルな人材育成」と題して、宇都宮大学における人材育成の取り組みについての実践報告が行われた。

国際学部における地域発のグローバル/グローカル人材育成と共創の実践

(宇都宮大学国際学部 清水奈名子)

中村真国際学部長による挨拶のあとで、清水奈名子国際学部附属多文化公共圏センター長より、国内外のグローバルな課題の解決のために、国や地域の枠を越えて多様な背景をもつ人々が協働し合意形成を行うことができる場所としての「多文化公共圏」を構想し、創造していくことを目的として、2008年4月に発足した多文化公共圏センターにおける研究・教育・社会貢献への取り組みについて説明が行われた。

「内なる国際化・地域連携」、「国際協力・グローバル課題」、「異文化理解」の3分野を重点として、複数のプロジェクトを同時に運営していること、学内外の多様なアクターとの協働・共創によって新たな社会構想を模索する実践的な取り組みが続けられてきたことが紹介された。

その意義としては、首都圏ではない地方社会から見えるグローバル・グローカルな構造的問題を把握できる点があげられたが、課題としては日本の経済力低下によって学生たちが困窮しており、海外渡航の機会を確保することが年々困難になっていること、また大学運営に市場原理が導入された結果、社会問題に取り組むための時間と資源の先細りといった問題が発生していることが指摘された。

宇都宮大学における人材育成と国際交流の実践

(宇都宮大学留学生・国際交流センター 飯塚明子)

本発表では、宇都宮大学が全学で行っている人材育成と国際交流に関する2つの事業概要を紹介しました。1つ目は、アフリカの6大学と地域社会の持続的発展に貢献する高度専門的人材の育成を目的とする、世界展開力強化事業「アフリカの潜在力と日本の科学技術融合によるSDGs貢献人材育成プログラム」についてです。

本事業で実施しているオンラインの国際大規模講義や、アフリカ4か国の学生と研究者との交流を通して、新しい国際共同教育体制を構築しています。

2つ目は、大学近くの陽東地区で行っている留学生と地域の防災まちあるきの実践についてです。(留)学生が地域の危険な場所や避難所や交番などの役に立つ場所についてまちあるきを通して学び、防災意識を向上し、地域の方々にとっては、留学生と交流し、多様な視点を学ぶ機会となっています。

国際的な人材育成に向けたインタラクティブ・ティーチングの実践

(宇都宮大学国際学部 藤井広重)

「国際的な人材育成に向けたインタラクティブ・ティーチングの実践」では、宇都宮大学の藤井広重会員から、国際的な人材育成を図るために、戦略的な視座に立脚した教育の必要性について報告があった。

とりわけ、具体的な取り組みとしては、国際人道法の模擬裁判大会やロールプレイ大会に出場し、机上の学問を実践に結びつけることで、学生達が自己の学びを現実に即して活用する視点を養い、自らの当たり前を疑う機会を提供することの重要性が強調された。

その後、これまでに藤井広重研究室で学んだ5人の登壇者(福原玲於茄, 菊地翔, 榊原彩加, Hagiya Yukari, アティラナシル)が、国連機関や国際NGOでのインターンシップ、また、在外公館の専門調査員としての職務につながった学生時代の経験について紹介することで多様なインタラクティブ・ティーチングの事例を提示した。

グローバル・サウスとの共創

(宇都宮大学国際学部 阪本公美子)

CMPSの事業のひとつであるグローバル・サウスの事業において、学生参加と社会貢献が有機的につながり人材育成につながっている事例を紹介した。

「在来知・食・健康」プロジェクトでは、科学研究費研究課題「SDGs時代・将来世代のアフリカ在来知」(基盤研究A)の現地調査の研究分析・学会ポスター発表に参加した人見俊輝(宇都宮大学国際学部)は、自らからの研究にビジョンやそれに対する刺激を受け、ガーナ留学においてフィールド調査を実施し、本大会でも研究発表を実現し、自らの将来を見据えた研究に繋がっている。

『ニョタのふしぎな音楽』の絵本づくりと贈呈のクラウド・ファンディングに参加した森裕翔(同)は、この活動がガーナへの交換留学や部活運営にも活かされた。三浦優希(同)も、積極性や主体性を発揮するきっかけとなり、学生団体代表やイベント企画にもつながり、ガーナ留学においても、アフリカで生活するということやガーナ北部での現地調査につながり、現地でも活躍している日本人との出会いでさらなる人材育成につながっている。

地域での読み聞かせを行ってきた伊藤綾音(同)は、自らのアフリカの知識を再確認するとともに、子どもたちに伝える工夫することを学んだ。地域で活躍中の小野寺さちえ氏(宇大卒、爽菜農園)は、太鼓を交えた絵本の読み聞かせを地域の小学校全学年に実現してきたが、実際に会場で実演してくれた。

フロアから

最後にフロアからは、人材育成に関して「栃木県のグローカル・グローバルな課題と、他の地方に共通する課題の違いは何か」、「首都圏・大都市圏ではない場所で、国際協力・開発を学ぶ・研究することには、どのような意味があるか」、「卒業・修了後に宇都宮に拠点を置く学生はいるか、またどんな仕事についているのか」、「全学レベルでアフリカとの学生交流に取り組んでいるのが印象的だ」、「異なる地域の学生同士が学び合うことが目的であるならば、成績の評価などによって背後にある非対称性を再生産するのではないか」など、多様な観点からの質問・コメントが寄せられた。

また防災まち歩きの取り組みについても、「まち歩きの地域や住民はどのような経緯で、どのように選定したのか」「防災まち歩きや地区避難訓練を踏まえて、外国人に対する住民の認識に何らかの変化があったのか、また他の自治体や地域への波及はないのか」といった質問が寄せられた。プレナリーの参加者は約200人にのぼり、多くの会員・非会員の参加者の熱心な参加をえて、無事に終了することができた。

(清水奈名子・飯塚明子・藤井広重・阪本公美子)


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