1. HOME
  2. ブログ
  3. ニューズレター
  4. NL35巻2号 [2024.08]
  5. 第25回春季大会:エクスカーション

WHAT'S NEW

Recent Updates

NL35巻2号 [2024.08]

第25回春季大会:エクスカーション

オプション1:「足尾銅山問題を通じて開発を考える」

2024年6月16日(日曜)08:30~17:00

於:足尾銅山観光―古河歴史館―植佐食堂(講話:上岡健司氏)―朝鮮人強制連行犠牲者慰霊塔―中国人殉難烈士慰霊塔―(車窓より:簀子橋堆積場―足尾銅山精錬所―足尾植林現場)―松木渓谷
担当・案内:重田康博(国際学部)、匂坂宏枝(大学院博士課程)、佐藤佑樹(大学院修士課程)

本エクスカーションは、足尾銅山から栃木県の開発問題を知り、日本の開発問題の歴史と現状、そして国内の足尾の問題をグローバルな問題とつなげることを目的として、2024年6月16日に実施された。参加者は、38名(内担当者・案内人3名、欠席者1名除く)であった。

朝8時15分宇都宮駅東口に集合し、8時30分にバスが出発した。梅雨時で天気が心配されたが、晴天に恵まれた。バスの中では、趣旨説明の後、各自参加者の紹介を行い、経験豊かな研究者・企業人から若手の研究者・留学生が参加した。

10時に足尾町に到着し、A班とB班に分かれて、「足尾銅山観光(銅山坑道)」、「古河足尾歴史館」を訪問した。銅山坑道内では参加者は熱心に展示物を見て回り、歴史館では長井一雄名誉館長の説明を聞いたが、この歴史館に代わり、2025年5月には古河市兵衛記念センター・古河機械金属株式会社により「足尾銅山記念館」が開館される予定である。

11時30分からの昼食では上岡健司足尾銅山簀子(すのこ)橋ダム安全対策協議会会長の簀子橋堆積場の問題等を聞き、移動した。その後、細い山道を通って第2次世界大戦中に足尾銅山で亡くなった朝鮮人強制連行犠牲者慰霊碑、中国人殉難烈士慰霊塔を見学したが、初めての方も多く上岡会長の参加者説明を熱心に聞いていた。

最後に、足尾植林現場を通って、煙害激甚地である松木渓谷を訪問し、上岡会長の説明を聞き、全員で記念撮影を行った。

その後、宇都宮に向かい、バスは無事予定通り17時に宇都宮駅東口に到着し、解散した。

今回の足尾エクスカーションでは、終了後アンケートを行い、16名から回答を得た。アンケート結果(アンケートまとめ:匂坂宏枝)は、以下の通りであった。

最初の「印象に残った見学場所はどこですか?(複数回答可)」という質問では、最も多かったのは「上岡氏による簀子橋堆積場等」(16名、100%)、「松木村跡」(16名、100%)、次いで「古河足尾歴史館」(12名、75%)、「朝鮮人強制連行犠牲者慰霊碑」(12名、75%)、3番目は「足尾銅山観光」(11名、68.8%)、「中国人殉難烈士慰霊塔」(11名、68.8%)であった。

次の質問「足尾銅山を起源とする問題の今後の課題について、お考えがあればお書きください」については、以下の主な意見があった。

  • 観光資源としての活用
  • 緑の再生で煙害問題が風化
  • 足尾銅山の海外の事例と比較
  •  影の部分を可視化するのは「研究者」
  • 今後勉強会や研究会などへ参加希望
  • 足尾、水俣、福島に共通する資本主義の問題に関する経済学者の取り組み
  • 声をあげることの重要性
  • 堆積場のように現在進行形の課題を多くの人に周知

最後に、今回の国際開発学会「足尾銅山エクスカーション」を通じて感じたのは、上記の意見にもある「研究者」が現場を伝えることの意義である。

簀子橋堆積場や松木村跡の煙害地域の植林の問題の様に、まだ足尾銅山問題が終わっていないにも関わらず、100年の歴史の経過で問題が風化してしまい、「光」の部分の記憶だけが残り「影」の部分が消えていく可能性がある。

近代化や開発の「光」と「影」の記録を可視化していくのは、「研究者」の役割である。

今後国際開発学会の中に「足尾銅山鉱毒問題研究会(仮称)」などを開催し、足尾鉱毒問題を学び、この問題を日本や世界に伝えていきたいと考えている。

図:足尾銅山エクスカーションアンケート結果(まとめ:匂坂宏枝)

エクスカーション オプション2:「日本初の完全新設LRTとコンパクトシティ」

2024年6月16日(日曜)10:00~12:00

於:交通未来都市うつのみやオープンスクエアおよび宇都宮ライトレール車両基地
担当・案内:栗原俊輔(国際学部准教授)、宇都宮おもてなし隊メンバー:春日明人(国際学部3年)、宮ひより(国際学部2年)、與那嶺悠(国際学部2年)

日本では75年ぶりとなる、完全新設の路面電車である宇都宮ライトレールは、宇都宮市および芳賀町にて深刻化する通勤時の渋滞解消や少子高齢化社会におけるコンパクトシティを目指すために2023年に開業した、いわゆるLRT(Light Rail Transit)と呼ばれる次世代型路面電車である。

参加者20名は、宇都宮市が運営している交通未来都市うつのみやオープンスクエアにて、路面電車を街づくりの軸とした宇都宮市のネットワーク型コンパクトシティとLRTの位置づけについて、宇都宮市LRT整備課安保氏より伺った。参加者からの多くの質問とともに、参加者同士も宇都宮市の担当の方々も含めた活発な議論が行われた。その後、実際にLRTに乗車して、郊外の車両基地を見学し、エクスカーションを終了した。

第25回春季大会実行委員長
阪本久美子


そのほかの第25回春季大会報告ページ

image_printPrint This Content

関連記事

インタビュー