会長挨拶(2024年2月)

2023年11月の総会で12期会長を拝命しました名古屋大学の山田肖子と申します。

2026年総会まで、約3年間、皆様に気持ちよく、やりがいを持って関わっていただける学会になるよう、努めて参りたいと思っております。前任の佐藤仁会長をはじめ、この学会をこれまで作り上げてきた常任理事、理事経験者の礎と志を継ぎつつ、国際開発や学術を取り巻く今日の状況にみあった改革も進めていきたいと思っています。

今期の方針は

  1. 国際開発学の再定義
  2. 多様性からのシナジー
  3. ワクワクの創造

です。

まず1点目の “国際開発学の再定義” は、変化の節目を、この学問分野の発展に活かす発想です。

1990年に学会が設立されて30年以上が経ち、国際開発を取り巻く環境も大きく変わっています。今年(2023年)に改定された開発協力大綱をみると、援助国-被援助国の垂直的な関係が多極化し、開発の主要アクターとしての国家の在り方が揺らぐなか、日本社会でのODAの捉え方も大きく変わっていることが分かります。

また、持続可能な開発が標ぼうされ、「国際開発」が目指す人道的で公共の利益の実現についても、誰にとって何が望ましい状態なのかが一元的に語れなくなりました。昨今の地政学的な危機やコロナ禍を経て、「国際開発」が国内や先進国と切り離された途上国の課題だという発想も陳腐化しているように思われます。

そうした変化の局面で、研究がどんな役割を果たすのか、実務者と研究者が集うこの学会がどんな場になっていくのか、皆さんと一緒に創り、考えていけたらと思っています。

2点目の “多様性からのシナジー” は、学問分野や職業、属性の違いを尊重しながら、相乗効果を生むことです。

私自身は、この学会では初めての女性の会長です。しかし、性別に限らず、世界の様々な状況での人々と関わってきたこの学会の会員の皆さんは、きっと何かしらの属性においてマイノリティになった経験や、そうなる人々に関わったことがあるでしょう。他者との違いをいかに尊重するかは、国や社会の違いを超えて国際開発学の本質を問う姿勢にもつながると思います。学問の再定義をするためには、まず我々の活動の場である大会や研究部会、学会誌などが、多様性から前向きな化学反応を生む場でありたいと思います。

12期では、障がいを持った学会員への合理的配慮を進めるべく、以前から準備を進めていた山形辰史元会長をはじめとするメンバーが、ワーキンググループを立ち上げています。

また、研究面では、学際的なこの学会にふさわしく、様々なディシプリン、研究テーマ、手法、研究対象地域、所属機関の人々が、いつも同じ顔ぶれとだけ交流するのでなく、越境し、協働してくことが重要です。

どうすればそのようなシナジーが生まれるのか。それは、まずこの学会が、会員の皆さんにとって、「あそこに行けば、いつもとは違う学問的刺激がもらえる、新しい発想が得られる、面白い人に出会える」、そういう期待感を抱き、しかもそれを裏切らない経験をできる場になることだと思います。

ですから、この3年間、私を含め、12期の役員たちは、ここをワクワクする場にするために全力を尽くしたいと思います。

学術大会が、その開催を引き受けてくれる開催校にとって、作業負担の多さに圧倒されるのでなく、自分たちならではの魅力や研究、地域社会との関わりなどを発信できる機会となるよう、サポートしていきます。

また、良い研究をしている若手や、国際開発学会では従来あまり紹介されてこなかったような分野やその研究者にも注目が当たるよう、学会賞、学生論文コンクールなどを選考に注力するとともに、広報メディアを通じた受賞者の紹介や学会内外の活動への参加奨励なども進めたいと思います。

萌芽的、実験的な研究アイディアを持った会員が本学会の研究部会を立ち上げ、学術大会での企画セッションや学会誌での論文発表につながるような道筋も積極的に示していきたいと思っています。

学会で既に活動している人だけでなく、国際開発や地域の開発課題に取り組んでいる潜在的な関心層にリーチしていくイベントや仕組みも検討しています。

こうした盛りだくさんの活動をどこまで実現できるか?それは、我々役員自身がその活動を楽しみ、それが会員の皆さんにどこまで伝播していくかに依るかもしれません。

学会の運営は大いなるボランティアである、と佐藤前会長がよく言っておられました。我々は、直接的対価のためではなく、自分たちを育ててくれたこの学会が、今後も会員にとって自らの研究を発信し、先輩や他の会員からコメントをもらったり意見を交わしたりする中で成長する場であり続けるために貢献したいという思いでやっています。

会員の皆さんにワクワクしてもらう場をつくるために、まず我々役員が、「次は何をしよう、こうなったらもっといいんじゃないか?」と提案し、アクションを取る、そんな12期でありたいと思います。そしてそんな役員に対して、会員の皆さんからもアイディアを寄せていただければ幸いです。

第12期国際開発学会
会長 山田 肖子




2023年度「国際開発学会賞」選考結果と受賞者からのことば

池田真也会員、杉江あい会員の2著書に、2023年度学会賞を授与

第34回全国大会(上智大学:2023年11月11・12日)において、池田真也会員の著書『商人が絆す市場―インドネシアの流通革命に交わる伝統的な農産物流通』(京都大学学術出版会)と、杉江あい会員の著書『カースト再考―バングラデシュのヒンドゥーとムスリム』(名古屋大学出版会)に奨励賞を授与しました。

今年度も本事業にたくさんの応募がありました。 その中で惜しくも受賞に至らなかったものの最終選考に残った作品としては、湖中真哉会員の編書Reconsidering Resilience in African Pastoralism (Trans Pacific Press, 2022)、 一柳智子会員の著書『社会的企業の挫折―途上国開発と持続的エンパワーメント―』(名古屋大学出版会2023)、杉田映理会員・新本万里子会員の編書『月経の人類学―女子生徒の「生理」と開発支援』(世界思想社2022)の3つがありました。

応募くださった皆様、誠にありがとうございます。選考委員一同、応募作から多くのことを学ばせていただきました。学会賞の趣旨は、会員の研究を励ますことにあります。会員の皆様には、ご自身の研究を、さらに磨き高めていくための機会として、ご活用いただけましたら幸いです。

賞選考委員会
委員長:三重野文晴(京都大学)


選評


奨励賞:池田真也

『商人が絆す市場―インドネシアの流通革命に交わる伝統的な農産物流通』(京都大学学術出版会 2022)

本作品は、インドネシアにおける農産物の生産・流通市場についての多角的な分析によって、農産物流通の変容と、そこにおける伝統的な取引慣行がどのように変容し、その機能をどのように変えてきたのかを考察するものである。

現地調査と個票データ分析という実証分析によって、スーパーマーケットを代表とした近代的な農産物流通システムの導入がインドネシア(ジャワ)の伝統的な農産物流通システムを完全に代替するのではなく、そうした環境変化の下で伝統的な流通システムの方も進化し、場合によっては近代的なシステムを補完っているという実態を明らかにしている。

本作品は課題設定が先行研究の中によく位置付けられている。ギアツに代表される人類学・農村研究的なインドネシア農村の伝統構造についての問題提起を踏まえ、それを実証的な農業経済研究によって解明するという研究スタンスは、多くの研究者が関心を持ちながらも容易には実現できずにきたものであり、その意味で大きな貢献をなしている。

各章のテーマと分析アプローチの統一性・統合性や、一部の分析において設問と分析結果・解釈の間の一貫性に不明確さが残るといった課題が残るにせよ、国際開発研究として新しい知見を提出していることは間違いない。長期にわたる現地調査を踏まえて完成された本書をもとに、著者が今後一層の活躍によって本学会に貢献してくれる期待をこめて奨励賞に選出された。(三重野文晴)

奨励賞:杉江あい

『カースト再考―バングラデシュのヒンドゥーとムスリム』(名古屋大学出版会 2023)

本書は、カーストを属性的に捉える還元主義を批判的に捉える立場から、バングラデッシュにおけるヒンドゥーとムスリムの関係性というテーマについて、農村の調査を通じて住民の交流や関係性の現状を明らかにしようとしている。

インド・南アジアのカースト制度に関わる膨大な既存研究を整理した上で、バングラデシュ人の家族をもつ著者のポジショナリティをうまく利用しながら、複数の村の全数調査という丹念なフィールド調査をおこなっている。

綿密で精度の高いデータから、複数の宗教的背景をもつ人びとが空間を共有する中で、人々は必ずしもカーストに規定された捉えられ方をしておらず、多様な相互行為が行われている実態を析出する。それによって、植民地主義的、還元主義的な見方を乗り越えようとする、良質の地域研究の成果である。

提示するデータの完成度に改善の余地があること、社会空間の変動と動態に目を向けるアプローチがポストモダニズム的解釈の視点を克服するという結論が若干不明確なことなど、いくつかの課題が残ってはいるが、本書が南アジア社会の研究において一石を投じるものであることは間違いなく、国際開発研究とその周辺分野への貢献は大変大きい。今後の一層の活躍への期待もこめて、奨励賞に選出された。(三重野文晴)


学会賞(奨励賞)受賞の言葉


奨励賞・池田真也

『商人が絆す市場―インドネシアの流通革命に交わる伝統的な農産物流通』(京都大学学術出版会 2022)

このたびは、国際開発学会奨励賞を頂戴し、誠に光栄に思います。選考委員の先生方、これまでご指導いただきました先生方に厚く御礼申し上げます。また、出版にあたりご尽力いただいた京都大学学術出版会の方々にも改めて御礼申し上げます。

この本では、インドネシア・ジャワ島の伝統的な野菜流通に着目してその発展経路を明らかにしようとしました。具体的には、新興国のインドネシアでは伝統的な流通が今後も残り続けるのか、それとも2000年代以降に台頭したスーパーマーケットが形成する近代的な流通に代替されるのかという問題です。2008年1月に初めてインドネシアを訪問して以来、生産地から消費地までの各地の商人を追って得た結果をまとめました。

その回答を簡潔にまとめれば、伝統的な流通はスーパーの台頭に適応して残り続けるとしました。具体例を1つ挙げると、スーパーが農作物を集荷する段階で、自ら集荷するのではなく地場商人に委託することが多いです。農家を監視・モニタリングする費用が高いので、それを地場商人が担っており、伝統的な流通と近代的な流通が補完的に機能していると言えます。

国際開発への直接的な貢献という点でこの本には不十分な点もあります。そうした反省もあって、ここ数年ほど野菜流通に関する技術協力プロジェクトに関わっています。開発の現場では、伝統的な流通の商人は農家を買い叩き搾取していると認識されることもあり、伝統的な流通を近代的な流通に代替させるための戦略が注目されがちです。

この本から言えることは、伝統的な流通を所与としたうえでの近代化戦略が必要ということになります。では具体的にどうすればいいのかという点を今開発の現場を視野に入れつつ考えています。

今回の受賞を励みとして、研究をさらに発展させていきたいと思います。今後とも皆様からのご指導ご鞭撻のほど宜しくお願いいたします。このたびは、誠にありがとうございました。


奨励賞・杉江あい

『カースト再考―バングラデシュのヒンドゥーとムスリム』(名古屋大学出版会 2023)

このたびは国際開発学会奨励賞という栄誉ある賞を賜り、誠にありがとうございます。

賞をいただきました拙著は、調査に協力してくださったフィールドの方がた、指導してくださった先生方、度重なる改稿に根気強くお付き合いくださった出版社の方がた、そしていつも見守り、支えてくれる家族なしには出版できませんでした。

このたびの賞は、私だけでなく、本書に関わるこれらのすべての方がたにいただいたものと思っております。改めて心から感謝いたします。

拙著はフランスの社会地理学者であるアンリ・ルフェーヴルの理論的枠組みに拠っており、一見すると理屈っぽく見えるかもしれませんが、フィールドの現状をいかに理解できるのかを追究する中で生まれたものです。

私のもともとの関心は地域社会の実態から開発援助を捉え直すことにあります。拙著のもととなったバングラデシュ農村でのフィールドワークも、はじめはこの開発援助に対する関心から、はじめたものでした。

しかし、私がフィールドで目の当たりにしたのは、一部の集落の人びとだけが、近年の目覚ましい経済発展や社会開発から取り残され、多くの人が物乞いをして暮らし、近隣の村の人びとから差別されている状態でした。もともとの開発援助に対する関心にもとづく研究をする前に、まずはこのような状況がどのように生みだされたのかを明らかにしなければ、と思いました。

そして、この疑問に答えるには、従来の研究で使われてきたカーストという概念や、「ヒンドゥー社会」「ムスリム社会」という枠組みを再検討する必要がありました。未熟な私がそのような大仕事をするのはとても勇気がいることで、拙著は処刑台に乗せるような気持ちで出版したものです。それがこのような形で評価されたことは、望外の喜びです。

私の研究はまだまだ途上の段階にありますが、このたびの受賞を励みに、いっそう研鑽を積んでまいりたいと思います。ありがとうございました。




賞選考委員会からのお知らせ(2024年2月)

2023年度活動報告

(1)2023年度(2022年10月~2023年9月)活動報告(事業概要)

  1. 学会賞応募作を公募・審査し、受賞作を決定・表彰した。
  2. 全国大会、春季大会において優秀ポスター発表賞の審査を実施し、受賞作を決定・表彰した。今年度から対面開催が再開したため両大会とも実地のポスター発表とその評価のプロセスに戻った。全国大会、春季大会においてそれぞれ2件の報告への表彰を行った。
  3. 学会ウェブサイトの学会賞ページを更新し、学会賞受賞者とその作品を紹介した。

(2) 事業の成果と課題

  1. ポスター発表表彰については、対面による発表と審査に復帰した。ポスター発表の件数が全国大会で9件、春季大会で17件と増加する傾向があり、また発表者参加者も多様になってきた。一方で、半日の短時間で審査の結論を出すこと、複数の賞選考委員にこの日時に時間を確保する必要があること、昼に開催される理事会との時間重複が発生すること、など運営の負荷が大きくなってきており、その解決について、検討する必要がでてきている。
  2. 2021 年度(2023 年12 月の全国大会で表彰)の学会賞事業については、著書6件、論文0 件と、応募が低迷したが、2022 年度(2022 年12 月全国大会で表彰)については著書13 件、論文2件の応募があり、大きく回復した。2023 年度(2023 年11 月全国大会で表彰予定)については、引き続き著書12 件、論文3 件の応募があり、活発な状況が継続している。
  3. 著書の出版形態が、電子出版も含めて多様化する中、どこまでを出版物書籍として取り扱うか、また、応募者に審査委員の人数分の作品の提出を印刷物によって求めるべきかなど、内規を検討する余地がある。
  4. 論文に対する表彰(論文賞)については、「論文」の定義、学会誌における審査対象論文、公募方式など運営方法に課題が多く、今後抜本的な改革の必要がある。

賞選考委員会
第11期 委員長・三重野文晴(京都大学)


国際開発学会第12 期:委員会の構成および幹事の委嘱

委員長

澤田康幸 (東京大学)

委員

小川啓一(神戸大学)
樹神昌弘(神戸大学)
佐藤 仁(東京大学)
佐野麻由子(福岡県立大学)
澤村 信英(大阪大学)
藤掛 洋子(横浜国立大学)

幹事

加治佐敬(京都大学)
幹事 山田浩之(慶応義塾大学)




【会員限定】常任理事会議事録(第242・243回)

第242回常任理事会

  • 日時: 2023年11月4日(土曜)9時30分~12時
  • 方法:対面及びZoom併用
  • 場所:名古屋大学東山キャンパス グローバル・エンゲージメントセンター
  • 出席者(敬称略):佐藤(第11期会長)、山田(第11期副会長、第12期会長候補)、高田(第11期副会長)、池上、川口、北村、小林、佐野、志賀、島田、杉田、三重野(以上、第11期常任理事)、工藤、木全、小國、小山田、狩野、関谷、星野(以上、第12期常任理事候補)、尾和、島津(第12期事務局次長候補)
  • 欠席者(敬称略):松本(第11期常任理事・第12期常任理事候補)、澤田(第12期常任理事候補)

議題

※特段の記載がない場合、報告者は第11期の各委員会とする。

(1)報告事項

1. 第34回全国大会(@上智大学)の準備状況について(大会組織委員会)
山田大会組織委員長より、第34回全国大会の準備状況について報告がなされた。

(2)審議事項

1. 2023年度決算および監査役報告(本部事務局・総務委員会)
池上総務委員長より、2023年度決算およびそれに基づく貸借対照表について説明がなされた。これを受けて、監査役より、特に指摘すべき事項はなかった旨の報告があった。

2. 2023年度活動報告(各委員会)
各委員長より、2023年度の活動報告が行われた。

3. 2024年度予算案・活動計画案(第12期本部事務局・総務委員会)
各委員長より、2024年度の予算案と活動計画案について説明がなされた。

JICAから提案されているアジア圏を対象とする開発学会設立構想について、どの委員会が業務を担当すべきか、意見交換がなされた。

第12期において設置を予定している社会共創委員会が中心となり、第11期の北村グローバル連携委員長と連携して対応し、今後も議論していくことが決定された。

4. 2023年度学会賞の選出(賞選考委員会)
三重野賞選考委員長より2023年度学会賞の選出について提案があり、承認された。

5. 韓国国際開発学会冬季大会への会員派遣(グローバル連携委員会)
北村グローバル連携委員長より、韓国国際開発学会冬季大会への会員派遣について提案があり、承認された。

6. 会員向け情報発信方法の整理(広報委員会)
高田広報委員長より、会員向け情報発信方法の整理について提案があり、承認された。

7. 大橋正明会員の名誉会員への推挙(総務委員会)
池上総務委員長より、大橋正明会員の名誉会員への推挙がなされ、承認された。

8. 第33回会員総会議事(本部事務局、総務委員会)
志賀事務局長より、第34回全国大会(@上智大学)にて実施予定の第33回会員総会議事について説明され、承認された。

9. 定款改正(本部事務局)、定款細則改正(第12期本部事務局、総務委員会)
志賀事務局長と池上総務委員長より、定款と定款細則の改正について提案があり、承認された。

10. 会費支払い方法の変更(バンクチェック廃止)(本部事務局)
池上総務委員長より、会費支払方法の変更(バンクチェック廃止とPayPal導入の検討)について提案がなされ、承認された。

(3)その他

11.今後の予定について
今後の会合予定について確認が行われた。


第243回常任理事会

  • 日時: 2023年11月12日(日) 昼休み(上智大会中)
  • 場所:上智大学四谷キャンパス 紀尾井坂ビル B104室
  • 出席者(五十音順・敬称略):尾和、小山田、狩野、北村、木全、工藤、澤田、島津、島田、関谷、松本、山田(欠席:小國、杉田、星野)

議題

(1) 審議事項

1.1. 会員向け情報発信方法の整理について(広報委員会)

狩野広報委員長より、ニューズレターとメーリングリストの運用に関して改善案が出された。現在の課題としては、両者の役割が重複している点、ニューズレターに掲載する委員会・研究部会・支部からの報告が負担になっている点が挙げられた。

改善案としては、ニューズレターをアーカイブ目的、メーリングリストを即時性のある情報発信目的とし、メーリングリストの対象内容を強化するとともに、ニューズレターの発行を年4回から2回に減らすことが提案された。

常任理事より、ニューズレターに掲載している座長報告の負担が大きいことから、大会終了後に会員が論文集にアクセスできることが周知・広報されることを前提に座長報告を止め、代わりに改善案などを座長が任意でフィードバックできるGoogle フォームを作成し、Confitのメッセージ機能で流してはどうかという提案があった。

他にも、学会誌にアーカイブ的な情報(事務局報告・委員会報告など)を一元化して掲載し、ニューズレターを廃止してはどうかという提案もあった。

ニューズレターおよびメーリングリストの運用については、引き続き広報委員会が検討していくこととなった。

2.支部・研究部会の活動報告について(会長)

山田会長より、研究部会の活動報告を義務としてはどうかという提案があった。例として、大会で活動報告をするセッションを出す、ニューズレターやメーリングリストで発信するなどが挙げられた。

常任理事より、活動報告をしなければ予算が下りないという仕組みにする、自分たちでウェブサイト上の各部会のページを更新させる、期間中に部会での検討・研究状況を学会誌に必ず掲載することを義務とする、などの案が出された。

また、発信方法については、メーリングリスト、ニューズレター、ウェブサイト、学会のラウンドテーブル、総会でのフラッシュトークなど、様々な形から選択させてはどうかという案も出された。

引き続き山田会長が企画運営委員会として研究部会のルール(公開性や規定)を確認し、活動報告の発信方法について検討し、次回の常任理事会で提案することとなった。

3.ポスター賞および学会賞について(賞選考委員会)

澤田賞選考委員長より、(1)ポスター発表者によるフラッシュトークを次回大会から実施したい、(2)学会賞受賞者へ賞金を出す場合は定款の改定が必要となるため、今後、賞選考委員会内で改定案を作成する、(3)賞選考の基金を作るための方法を検討すべき旨の提案があった。今後の常任理事会に具体的な規定や手続き案を委員会から提示し、議論することとした。

4.学会における合理的配慮について(合理的配慮WG)

小國副会長より、合理的配慮WGのメーリングリストを作成することが提案され、承認された。また、ウェブサイト上の合理的配慮に関するページを、読み上げソフトを用いやすいように設定することが提案され、承認された。上記の二点については、石田さんにお願いすることとなった。

 加えて、「学会における合理的配慮について」のサブページを、今後作成される山田会長の挨拶ページからもリンクすることが提案され、山田会長の了承を得た。

 WG内で出されているその他のアイデアとして、「学会の合理的配慮を考える」セッションを大会で設けること、希望者には学会誌をテキストファイルで提供すること、などが挙げられていることが紹介された。

5.入会審査・退会報告(本部事務局)

関谷総務委員長より、入会者11名、復会・再入会者1名の審査について提案があり、承認された。また、退会者5名について報告がなされた。

6.その他

常任理事会の年間スケジュールを事前に決定して欲しいとの要望が常任理事より出され、事務局より具体的な提案を用意し、検討することとした。

(2) 報告事項

なし


本部事務局
本部事務局長:星野晶成(名古屋大学)




【会員限定】理事会議事録(第122・123回)

第122回理事会

  • 日時:2023年11月4日(土曜)14時~16時
  • 方法:対面及びZoom併用
  • 場所:名古屋大学
  • 出席者(敬称略):佐藤(第11期会長)、山田(第11期副会長、第12期会長候補)、高田(第11期副会長)、池上、川口、北村、小林、佐野、志賀、島田、杉田、三重野(第11期常任理事)、工藤、木全、小國、小山田、狩野、関谷、星野(以上、第12期常任理事候補)、尾和、島津(以上、第12期事務局次長候補)、池見、石田、伊東、大橋、岡部、小川、片柳、萱島、樹神、工藤、坂上、佐藤(峰)、澤田、澤村、関谷、高橋、鍋島、西川、西野、初鹿野、藤掛、藤山、山形、渡邉(以上、第12期理事候補)
  • 欠席者(敬称略):市橋、岡島、勝間、黒田、澤田、仲佐、藤倉(以上、第12期理事候補)、松本(第11期常任理事、第12期副会長候補)、道中、峯(以上、第12期理事候補)

議事

特段の記載がない場合、報告者は第11期の各委員会とする。

(1)報告事項

第34回全国大会(@上智大学)の準備状況について(大会組織委員会)
山田大会組織委員長より、第34回全国大会の準備状況について報告がなされた。

(1)審議事項

1. 2023年度決算および監査役報告(本部事務局・総務委員会)
池上総務委員長より、2023年度決算および監査報告結果について説明がなされた。石田監査役、西野監査役より、適切に会計が行われている点が評価に値するとのコメントがなされた。

2. 2023年度活動報告(各委員会)
各委員長より、2023年度の活動報告がなされた。

3. 2024年度予算案・活動計画案(第12期本部事務局・総務委員会)
第12期星野事務局長と各委員長より、2024年度の予算案と活動計画案の説明がなされ、委員会・支部・部会の設置及び予算案とともに承認された。

4. 2023年度学会賞の選出(賞選考委員会)
三重野賞選考委員長より、書籍について12件の応募があり、選考の結果、池田真也会員、杉江あい会員が奨励賞を受賞、論文については該当なしとなった旨、報告があった。

5. 韓国国際開発学会冬季大会への会員派遣(グローバル連携委員会)
北村グローバル連携委員長より、学会賞受賞者と近藤久洋会員を2023年12月に開催予定の韓国国際開発学会冬季大会へ派遣する予定である旨、説明があった。

6. 会員向け情報発信方法の整理(広報委員会)
高田広報委員長より会員向け情報発信の方法を整理していく必要性について説明があった。

7. 大橋正明会員の名誉会員への推挙(本部事務局)
佐藤会長より、大橋正明会員の名誉会員への推挙がなされ、承認された。

8. 第33回会員総会議事(本部事務局、総務委員会)
志賀事務局長より第33回会員総会議事案について説明があり、承認された。

9. 定款改正(本部事務局)、定款細則改正(第12期本部事務局、総務委員会)
志賀事務局長より、定款と定款細則の改正について説明があり、承認された。

10. 会費支払い方法の変更(バンクチェック廃止)(本部事務局)
池上総務委員長より会費支払い方法の変更について説明があり、承認された。

(その他)

11.今後の予定について
今後の会合予定について確認がなされた。


第123回理事会

    • 日時:2023年11月11日(日曜)11時45分~12時45分
    • 会場: 上智大学 紀尾井坂ビルB104教室
    • 出席者(敬称略):佐藤(第11期会長)、山田、高田(以上第11期副会長)、池上、川口、北村、小林、佐野、島田、杉田、松本、三重野(以上、第11期常任理事)、池見、市橋、伊東、大橋、岡部、岡島、小川、小國、萱島、黒田、佐藤(寛)、澤村、高橋、藤掛、道中、山形(以上、第11期理事)、石田、西野(以上、第11期監査役)渡邉(京滋支部長)、志賀(第11期事務局長)、秋保(第11期事務局次長)
      小山田、狩野、木全、工藤、関谷(以上、第12期常任理事候補)、坂上、初鹿野(以上、第12期理事候補)、佐藤峰(第12期監査役候補)、星野(第12期事務局長候補)、尾和、島津(以上、第12期事務局次長)
    • 欠席者(敬称略):勝間、仲佐、鍋島、西川、藤倉、藤山(以上、第11期理事)、澤田(第12期常任理事候補)、樹神(第12期理事候補)

    *第11期役員で第12期も役員に就任予定の場合、第11期欄に名前を記載

    議事次第

    第34回全国大会実行委員長からのご挨拶(上智大学・小松太郎先生)
    小松・第34回全国大会実行委員長より挨拶があり、開催中の大会には学会員400名程度が参加しているとの報告がなされた。

    (1)審議事項

    1. 定款細則の改正について(第11期 本部事務局)
    志賀本部事務局長より、定款細則の変更に関する提案がなされ、承認された。

    2. 2024年度予算案について(第11期 総務委員会)
    池上総務委員長より、2024年度予算案について説明がなされ、承認された。支部・研究部会の活動費については、各支部・部会あたりの支給額の上限を20万円に設定することとなった。

    3. 理事会におけるオブザーバー参加について(第11期 本部事務局)
    理事以外の支部長(市橋先生、渡邉先生、梅村先生)を理事会オブザーバーとして認める提案がなされ、承認された。

     

    佐藤仁第11期会長からの挨拶

    佐藤第11期会長より退任挨拶があり、第11期のスローガンであるvisible, inclusive, entertainingはほぼ実現できたと考えているとの見解が披歴された。

    さらに、ホームページのアップデートや科研費を獲得したうえで英文学会誌を刊行できたことなどの具体的な成果についても言及がなされた。

     山田肖子・第12期会長候補からの挨拶

    山田・第12期会長候補より、第12期体制では「①国際開発学の再定義、②多様性からのシナジー、③わくわくの創造」をスローガンとして活動を行っていく旨の意向が表明された。

    その他(連絡事項など)

    第11期・第12期の役員紹介
    第11期佐藤会長、第12期山田会長より役員及び役員候補者の紹介がなされた。




    【会員限定】総会議事録(第34回)

    • 日時:2023 年 11 月 11 日(土曜)16:40~18:55
    • 場所:上智大学四谷キャンパス 2号館 17 階

    1.挨拶

    佐藤仁・第 11 期国際開発学会長及び小松太郎・第 34 回全国大会実行委員長による挨拶がなされた。

    2.議長選出

    島田剛会員が議長として選出された。


    3.議題

    報告事項

    (1) 会員数の動向および会員総会定足数充足の確認について

    志賀・事務局長より、現在の会員総数1,589名で、本日の参加者(319名)と委任状数(116名)の合計が定足数(159名)に達するため、定款第14条第5項に遵い、総会が成立することが報告された。

    (2)2024 年度支部・研究部会の設置について(資料1)

    志賀・事務局長より、2024年度支部・研究部会として一覧表が報告され、併せて、(一覧表上では空白となっていた)ジェンダーと開発部会については甲斐田きよみ会員が代表となることが報告された。

    (3) 学会賞・優秀ポスター発表賞について

    三重野・賞選考委員長より、22件のポスター発表から、選出された八郷真理愛会員(優秀ポスター発表賞)、佐藤美奈子会員(ポスター発表奨励賞)、井川摩耶(ポスター発表奨励賞)の3名の会員が選出された旨の報告がなされた。また、学会賞については、12件の応募の中から、池田真也会員および杉江あい会員の著書が奨励賞として選出された旨が報告された。


    審議事項

    (4)2023 年度活動報告,決算および監査役報告について(資料2、3)

    各委員会委員長より2023年度の活動報告、池上・総務委員長より2023年度の決算報告、北村・グローバル連携委員長より科研費を活用した活動に関する報告、西野・監査役より監査役報告がなされ、いずれも承認された。

    (5)第 12 期理事について(資料4)

    志賀・事務局長より12期理事候補について説明がなされ、承認された。

    (6)第 12 期会長,副会長,常任理事の選出および監査役の選任について(資料5)

    志賀・事務局長より、会長候補、副会長候補、常任理事候補、監査役候補について説明がなされ、承認された。

    (7)定款の改正について(資料6)

    志賀・事務局長より、定款の改正案について説明がなされ、承認された。

    (7)総括

    第 11 期会長による総括がなされた。

    (8)学会賞および優秀ポスター発表賞 授賞式

    三重野・賞選考委員長より、対象者に対して授賞式が行われた。

    第 11 期・第 12 期 役員交代

    第 12 期新会長挨拶および新役員紹介

    山田会長より挨拶がなされ、12期国際開発学会のテーマとして「国際開発学の再定義」、「多様性からのシナジー」、「ワクワクの創造」が報告された。


    審議事項

    (9)事務局長の選出および次期本部事務局について(資料7)

    山田会長より、星野・事務局長の選出および次期本部事務局について説明がなされ、承認された。

    (10)各委員会の構成および幹事の委嘱について(資料8)

    各委員会委員長より、委員会の構成および幹事の委嘱について説明がなされ、承認された。

    (11)2024 年度活動計画案,予算案について(資料9,10)

    関谷・総務委員長より、2024年度活動計画案および予算案について説明がなされ、承認された。


    報告事項

    (12)定款細則の改正について(資料11)

    星野事務局長より定款細則の改正について報告がなされた。

    (13)2024年春季大会の開催について

    坂本会員(次期春季大会実行委員長)より、2024年春季大会を2024年6月15日に宇都宮大学で実施することが報告された。


    本部事務局
    星野晶成(名古屋大学)




    第3回「国際開発論文コンテスト」受賞者のことば(2023年11月)

    学部論文を対象とした第3回国際開発論文コンテストで優秀論文賞を受賞した方々の「受賞の言葉」です。

    これまでは学会の大会でビデオメッセージを流していましたが、2023年春季大会は時間の関係で受賞者の紹介しかできませんでしたので、ニューズレターを通じて、皆さんの声をお伝え致します。

    なお、所属は応募時(2023年3月時点)のものです。  

    国際開発学会では2024年も学部生対象の国際開発論文コンテストを実施致します。詳しくは学会ホームページをご覧下さい。

    意欲的な学生からの多くの応募をお待ちしております。

    中西勇太(釧路公立大学)

    「カンボジア農家の作物栽培と食料消費の実態―CSES2014を用いた計量経済分析―」

    この度は、第3回国際開発論文コンテストにおいて優秀論文賞を頂き、大変光栄です。 研究当初はデータの整理や回帰分析に苦労し、執筆時もなかなか論理性を持った文章を書くことができませんでしたが、三輪加奈先生の丁寧で熱心なご指導のおかげで、この賞を受賞することができました。

    私は、国際開発という研究分野は非常に重要であり、途上国の開発問題だけでなく、先進国においてもジェンダー問題や貧困格差など研究が必要な課題が山積みだと考えております。

    一見、私たち個人が国際開発に対して貢献できることはとても少ないように思えますが、先行研究を読み、自分なりの解釈をし、論文を執筆するということは大きな一歩ではないでしょうか。

    そして、学部生は他大学の方に自分の論文を読んでもらう機会があまりない中で、本コンテストに応募して、審査委員の方に読んで頂くのは非常に良い機会だと思います。

    私は、受賞論文においてカンボジア農家の作物栽培と食料消費の現状について家計調査データを用いて明らかにしましたが、カンボジアの農業や栄養不足はまだまだ改善の余地があると考えます。

    また、研究を進めるにつれ、カンボジアの人々の伝統的な食文化や生活習慣にも興味を持ちました。途上国の暮らしは日本で過ごす私たちからは想像し難いものではありますが、そこから学べることは多いと考えており、今後より一層理解を深めていきたいと考えております。


    中本絢子、中泉澄美、棚橋愛梨咲(関西学院大学)

    「マダガスカル農民のコメ生産性に男女のネットワークが与える影響~性格特性に着目した2段階推計を用いて~」

    この度は、拙著『マダガスカル農民のコメ生産性に男女のネットワークが与える影響–性格特性に着目した2段階推計を用いて–』を第三回国際開発論文コンテストにて、優秀論文賞に選んでいただきまして、心より御礼申し上げます。

    本論文は、2022年8月に、マダガスカルにて私達が独自に取得したデータを用い、執筆いたしました。本研究の舞台であるマダガスカルという国は、世界最貧国家のひとつであり、貧困脱却や今後の人口増加に備えるために、国の主要産業である農林水産業の早急な発展が必要だといわれています。

    現在のマダガスカルにおいては、伝統的な農法が主流であり、化学肥料等も効果的に使用されていません。そこで、本研究ではマダガスカルの主食であるコメの生産性向上に着目し、ネットワークの構築と、それを促す性格特性についての研究を行いました。

    国際開発論文コンテストでは、私たちのような学生が国際開発という観点から、論文執筆を行い、コンテストに出場することで自身の知見を深めるとともに、さらなる国際開発をめぐる研究の発展に貢献できるのではないかと考えます。

    本論文の執筆と本コンテストで栄誉ある賞を頂けたことが、今後のマダガスカルにおいて、より良い政策の実行、また国の発展に貢献できることを心より願っております。私たちも、この度の経験を糧に国際発展という大きな目標に向かい日々精進してまいります。今後ともどうぞよろしくお願い致します。


    任百香、石橋由唯、塚本真世(関西学院大学)

    「子どもの認知・非認知能力を促すピア効果の影響~マダガスカル農村で行った介入実証実験をもとに~」

    この度は『子どもの認知・非認知能力を促すピア効果の影響〜マダガスカル農村で行った介入実証実験をもとに〜』を2023年度国際開発学会賞という栄誉ある賞をいただき、誠にありがとうございます。

    私たちは、最貧国家マダガスカルの農村地域で現地調査を行い研究を行いました。本研究の舞台であるマダガスカルは、世界の中でも特に貧困問題が深刻な国で、経済はもちろん、生活環境や教育環境なども決して良いとは言えません。

    特に農村部の教育に注目して研究しました。マダガスカル農村では、学校に通えない子どもがいることはもちろん、教育免許を持っていない村人も教えていること、教科書が教室に数冊しかなく勉強道具も十分でないこと、十分な授業が提供されていないことなどの問題があり、小学校高学年でも四則演算ができない子どもがたくさんいます。

    さらにその子どもたちの親世代となると、多くの親が子どもたちより計算問題ができない、字が読めない、字が書けないという現状があり、いかに昔から教育が不十分だったかがうかがえます。

    そのような農村の教育の現状の中で、教育レベルを向上させるために「ピア効果」に着目して大規模な実証実験を行いました。ピア効果とはある個人が周囲の人々から受ける影響のことを言い、意識や能力の高い集団の中に身を置くことで切磋琢磨しお互いを高め合う効果やその逆もあります。

    ピア効果によって、経験の豊富な教師を頼りにせず、しっかりした教科書を用いて子どもたちがグループ学習をすることによって、短期間で大きな学習効果があることを立証することができました。

    本研究が少しでも途上国開発研究の貢献材料となればと幸いに存じます。最後に研究や調査に協力してくださったマダガスカル農村の皆さまに感謝を述べるとともに、皆さまの生活に少しでも貢献できることを願って受賞の言葉と変えさせていただきます。ありがとうございます。


    渡辺彩(法政大学)

    「ソ連崩壊後のロシアの開発協力―英文学術誌の研究サーベイをもとに―」

    この度は優秀賞をいただき、心より感謝申し上げます。本コンテストに応募するということは私にとって「挑戦」でしたので、賞をいただくことができ、大変嬉しく思っております。 本論文は、冷戦後のロシアの開発協力に着目したサーベイ論文です。

    冷戦期、東側の旗頭だったソ連を引き継いだロシアは、冷戦終結後、どのような開発協力を行い、新冷戦と呼ばれる状況に至る過程で、どのように変化しているのかという問いを探究しました。

    本コンテストは、賞を受賞する機会があるだけではなく、応募者全員が講評をもらうことができます。書いたものを誰かに読んでもらうということは非常に重要だと論文執筆の過程で強く感じました。

    なぜなら、執筆者本人では気がつくことができない指摘を得ることができるからです。その過程を踏むことにより、論文をより洗練されたものにすることができます。

    講評をもらう機会はさほど多くありません。そのため、応募者全員が講評をもらうことができるというのは、本コンテストの特徴の一つであり、意義なのではないかと思います。

    本論文を執筆するにあたり、たくさんの方に支えていただきました。これまでご指導、ご尽力いただきました、先生やゼミ生、関係者の皆様に心より感謝申し上げます。 いただいた講評を踏まえ、賞をいただいたことを励みに、より研究に努めてまいります。この度は誠にありがとうございます。


    人材育成委員会
    委員長:松本悟(法政大学)




    【会員限定】常任理事会議事録(第239・240・241回)

    第239回常任理事会

    • 日時:2023年8月19~22日
    • 方法:メール審議

    議題

    (1) 審議事項

    1. 第33回全国大会(@明治大学)の大会運営予算に係る留保金の取り扱いが審議された。
    2. 3名の新規入会希望者が承認された。

    第240回常任理事会

    • 日時:9月3日(日曜)13時00分~15時15分
    • 方法:オンライン(Zoom)
    • 出席:佐藤仁(会長)、高田(副会長)、池上、佐野、島田、小林、杉田、川口、三重野(以上、常任理事)、志賀(事務局長)、秋保(事務局次長)

    議題

    (1)審議事項

    1. 総務委員会より、2024年度の支部・研究部会の設置について説明があり、了承された。
    2. 人材育成委員会より、2024年の第4回国際開発論文コンテストの開催案について説明があり、了承された。
    3. 本部事務局より、現行定款の改正の検討状況について説明があり、改正する方向性について了承された。
    4. 本部事務局より、2年間連続して会費を未納としている会員の退会処分について提案があり、了承された。

    (2)報告事項

    1. 社会連携委員会より、国際協力キャリアセミナーの開催について報告があった。
    2. 賞選考委員会より、春季大会のポスター発表の表彰結果および今年度の学会賞選考の進展状況について報告があった。

    第241回常任理事会

    • 日時:2023年10月5~7日
    • 方法:メール審議

    議題

    (1)審議事項

    • 15名の新規入会希望者が承認された。

    (2)報告事項

    • 39名の退会者、25名の休会申請者、58名の会費減額申請者が報告された。

    本部事務局
    事務局長:志賀裕朗(横浜国立大学)




    第8回「アフリカ・アジアものづくり研究部会」10月7日開催(会員・一般)

    神の克服か、家畜化か?―原材料階級とネットビジネスの社会学

    次回研究会を来月、10月7日(土曜)に開催致します。今回は、一橋大学名誉教授・武蔵大学客員教授の西口敏宏さんに講演をいただきます。

    西口さんは、経営学における組織論の大家で、最近では大著『コミュニティー・キャピタル―中国・温州企業家ネットワークの繁栄と限界』有斐閣、2016(辻田素子さんとの共著)を発刊され、いくつかの学会賞を受賞しておられます。

    今回は、現在手がけておられる、インターネットによる個人情報の集中と資源化という変化の本質と影響の研究について講演をしていただきます。そのうえで、皆さんで講演内容をめぐって議論をしたいと考えております。

    インターネット・ビジネスは、世界各地で、ビジネスのみならず、経済・社会のほぼあらゆる次元に影響を与えており、アフリカとアジアのものづくりを研究するにあたっても、避けて通ることのできないものとなっています。

    たくさんの皆さまのご参加をお待ちしております。

    要旨

    21世紀初頭、アメリカから画期的なインターネット・ビジネスが産まれ、世界を席巻した。代表格はGAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)である。その衝撃は、新たなビジネス様式といった次元をはるかに超えて、人類の大多数のつながり方を不可逆的に一変してしまった。

    その結果、「個人情報の集中と資源化」が一方的に進められ、これまで私たちが永年親しんできた諸制度や道具立ての多くが反故にされつつある。本講演では、この切迫した現実問題の陥穽と可能性を読み解いていく。

    開催概要

    日時

    2023年10月7日(土曜) 午後3時~6時

    • 西口さんの講演:午後3時から1時間強
    • 討論:休憩後終了時間まで

    開催形式

    オンサイト(対面)及びオンライン

    会場(対面出席の場合):

    東京理科大学富士見校舎 F201教室
    [富士見校舎の住所およびアクセス]
    〒102-0071 東京都千代田区富士見1-11-2
    ■東京メトロ半蔵門線、東西線、都営新宿線「九段下」駅下車、徒歩8分
    JR総武線、東京メトロ有楽町線、東西線、南北線、都営大江戸線「飯田橋」駅下車、徒歩10分
    (※今回、通常の京都大学稲盛財団記念館ではなく、東京の千代田区にある東京理科大学富士見校舎で行いますので、ご注意ください)


    本件にかんするお問い合わせ先

    アフリカ・アジアにおけるものづくり研究部会 事務局

    研究会への参加申し込みやお問い合わせは、下記メールアドレスにご連絡いただきますよう、お願い申し上げます。重ねてたくさんの皆さまの積極的なご参加をお待ちしております。

    • africaasiamonozukuri [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)



    2023年度『国際開発学会賞』作品公募のお知らせ

    2023年度の学会賞の候補作品を公募します。2021年1月1日から2023年6月30日までに公表された国際開発学会員の著作または学術論文が審査の対象となります。

    学会賞、奨励賞、論文賞、賞選考委員会特別賞の4つの部門で審査が行われます。

    応募作品の受付は、2023年5月1日(日曜)から2023年6月30日(木曜)まで(当日消印[または発送記録]有効)です。応募は自薦、他薦を問いません。

    対象となる本または論文各5部(本についてはオリジナル1部、残り4部はコピーでも可;論文については全てコピーでも可)を、下記の学会賞選考事務局宛に送付してください。

    電子媒体がある場合にはあわせて提出して下さい。応募の際には、応募用紙を記入の上添付してください。応募用紙は学会Webサイトからダウンロードできます。

    • 2023年度『国際開発学会賞』応募用紙(word)

    学会賞の応募作品と、2022年1月1日から2023年12月31日までに『国際開発研究』に掲載された研究論文・研究ノート・調査研究報告を対象として、各賞に関わる審査を行います(当該の『国際開発研究』に掲載された研究論文等は自動的に審査対象になるので応募する必要はありません)。

    なお、応募者は、2023年5月1日時点で学会員であり、かつ2023年6月30日時点で会費未納者でないことを要します。受賞者には、原則として、当該年度の12月前後に開催される全国大会における授賞式や受賞者セッションに、参加することが求められます。

    数多くの作品のご応募をお待ちしております。詳細については「国際開発学会賞選考内規」をご覧ください。

    応募作品の送付先

    国際開発学会賞選考委員会事務局
    〒606-8501 京都市左京区吉田下阿達町46
    京都大学東南アジア地域研究研究所 三重野文晴研究室気付

    E-mail:

    • mieno-lab [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)

    賞選考委員会

    委員長・三重野文晴(京都大学)




    【学会賞】2023年度『国際開発学会賞』作品公募のお知らせ

    2023年度の学会賞の候補作品を公募します。

    2021年1月1日から2023年6月30日までに公表された国際開発学会員の著作または学術論文が審査の対象となります。

    学会賞、奨励賞、論文賞、賞選考委員会特別賞の4つの部門で審査が行われます。応募作品の受付は、5月1日(日曜)から6月30日(木曜)まで(当日消印[または発送記録]有効)です。

    応募は自薦、他薦を問いません。

    対象となる本または論文各5部(本についてはオリジナル1部、残り4部はコピーでも可;論文については全てコピーでも可)を、下記の学会賞選考事務局宛に送付してください。

    電子媒体がある場合にはあわせて提出して下さい。応募の際には、応募用紙を記入の上添付してください。応募用紙は学会賞のページからダウンロードできます。

    学会賞の応募作品と、2022年1月1日から2023年12月31日までに『国際開発研究』に掲載された研究論文・研究ノート・調査研究報告を対象として、各賞に関わる審査を行います(当該の『国際開発研究』に掲載された研究論文等は自動的に審査対象になるので応募する必要はありません)。

    なお、応募者は、2023年5月1日時点で学会員であり、かつ2023年6月30日時点で会費未納者でないことを要します。

    受賞者には、原則として、当該年度の12月前後に開催される全国大会における授賞式や受賞者セッションに、参加することが求められます。

    数多くの作品のご応募をお待ちしております。

    詳細については、学会賞のページに記載されている「国際開発学会賞選考内規」をご覧ください。


    本件にかんするお問い合わせ先

    国際開発学会・賞選考委員会
    事務局

    〒606-8501 京都市左京区吉田下阿達町46
    京都大学東南アジア地域研究研究所 三重野文晴研究室気付

    E-mail: mieno-lab [at] (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)




    会長からの手紙(2023年2月)

    第11期の2年目を振り返って

    国際開発学会の皆様、こんにちは。今年も、昨年度と同じように学会活動の1年間を振り返ったハイライトをみなさんにお届けします。これは、各委員会の活動報告を行う総会にご参加いただけなかった会員のみなさんに対して、学会活動の要点をお知らせするものです。

    昨年度の活動としてまずお伝えしたいのは、ロシアのウクライナ侵攻に対して学会として声明を発出し、日本と英語でHPに掲載したことです。学会として政治的な声明を出すことについては理事会の中でも賛否がございましたが、多くの皆様の賛同を得ることができたこと、そして何よりも、学会として世界のアクチュアルな問題への対応方法を常任理事の間で議論できたことが大きな収穫だったと思っています。今後も世界が難しい局面に入るごとに、学会としてどのように立ち居振る舞いをすべきなのか、議論してまいりたいと思います。


    さて、第11期はvisible, inclusive, entertaining の旗印を掲げて、2年目を無事に終えることができました。総会を明治大学にて対面で実施できたことは何よりうれしいことでしたし、400名以上の参加登録があったことは、みなさんがこの大会を待ち望んでいたことの表れでもあると思います。発表の合間に廊下やホールで見かけたおしゃべりの環、学会賞受賞者のスピーチやそのあとの写真撮影と談笑、旧友との思いがけない再会など、対面開催ならではの偶発的な喜びに満ちた大会でした。実行委員長の島田剛先生とスタッフの皆様に改めて御礼申し上げます。

    執行部の今年度の活動は、着手した活動をしっかりと定着させ、安定軌道に乗せることに力点をおきました。いくつか特筆すべき活動をあげるとすると、次のようなものがあります。

    まず、Visibleについては、選挙管理委員会のイニシアチブにより、学生会員の主導によってYouTubeやツイッターの発信を実施しました。また、人材育成委員会では継続的に(学部生向け)論文コンテストを実施し、前年度より多くの10篇の応募をいただき、その中から3篇を学会誌に掲載しました。学部生の開拓は未来の開発研究者・実務者を育てるうえで大切な事業であります。

    学会賞の方も、応募数が昨年度5件から、今年度13件と激増し、良質の作品を審査して3点に賞が出せたことは大きな成果でありました。社会連携委員会では、今年も外務省主催のグローバルフェスタにも出展し、「国際協力におけるキャリア形成」というセッションを設けて、若いみなさんを中心に100名の参加者を得ることができました。HPやメーリスを中心とする広報委員会の業務は、visibleであり続けるために重要な役割を果たしています。たとえば10月1ヶ月間のサイト全体のページ表示回数は約50,000回に上りました。

    Inclusive については、まず地方展開委員会の活動をあげなくてはなりません。地方展開委員会では、2021年の全国大会、2022年の春季大会でラウンドテーブルセッション 「日本の地域から問い直す国際開発アジェンダ」 「日本の地域から問い直す国際開発アジェンダ(実践編)」 を企画し、 福岡、高知、岡山、岩手、秋田に拠点をおく学会員、地域づくりという関心を同じくする非学会員とのネットワーク構築に貢献しました。この委員会が縁となり、2022年春の福岡大会に続き、2023年春の秋田大会へと地方での学会開催の輪を広げることができました。

    また、科研費(国際情報発信強化)を用いた特集号の編集体制の確立、原稿集め、査読、そして次号に向けた国際ワークショップ(@チュラロンコン大学)の段取りができたのも大きな成果でした。この科研費を利用した外国人会員のさらなる開拓、日本留学帰国組とのネットワーク化など、inclusive の範囲を海外に展開していきたいと考えています。

    また、様々な障害をおもちの会員にできるだけ大会に参加してもらえるよう、ニーズの把握を務めたのもの今年の活動でした。次年度は、合理的な配慮に関するタスクフォースを設けて、アドホックではない配慮のあり方について議論し、その成果を実施したいと考えています。

    最後にEntertaining については、引き続き学会誌の魅力を高めるための新たなデザインの検討を行いました。特に、次年度は英文特集号が加わる節目の年でもあります。表紙のデザインは会員の皆様に参加型で投票していただきました。3月には新しい表紙での最初の雑誌をお届けできると思います。どうかお楽しみに。


    このほかにご報告すべき活動として、研究×実践委員会では2021年全国大会において、JICAが新たに推進しようとしている「クラスター・アプローチ」に対して研究者や委員会メンバーが意見を述べるラウンドテーブルを開催しました。この試みはJICA側からの評価も高く、その後2022年4月まで4回に渡って意見交換会を継続しました。こうした実務者と研究者との成熟した関係が構築できるようになったのは、両者が相まみえる「場」を本学会が長年提供し続けてきたことの帰結といえましょう。

    こうした一連の事業を持続的なものにするためには、事務局が無理なく稼働できる体制が不可欠です。大会運営における特別ソフト confit の導入は、こうした省力化の努力の一環です。これらの着実な前進の背景には、多くの invisible な努力があります。各委員会の委員長や委員の皆さんはもちろんですが、事務局や広報委員会のスタッフは日常的な裏方として日々の業務をこなしてくれています。本当にありがとうございます。

    明治大会でのプレナリーでは「グローバル危機にどう向き合うか―国際開発学の役割」と題して充実した議論を行いましたが、「危機と方向感覚」と題した私の講演に対する反応として、私の尊敬するあるシニアの会員から加藤周一の次のような引用が励ましの言葉と共に送られてきました。これは、加藤が1946年の雑誌『世代』(1946年3月号)に書いたエッセイの一部で、つい昨日まで好戦的だった日本の青年が良心の呵責もなく平和主義者に変わってしまうという日本青年の現状について書いている部分です。

    「かなりの本を読み、相当洗練された感覚と論理を持ちながら、凡そ重大な歴史的社会的現象に対して新聞記事を繰り返す以外一片の批判もなしえない」

    『世代』(1946年3月号)

    論文を書くことは重要ですが、現実世界とのつながりに基づく方向感覚を失いたくないものです。学会は学問成果を取り交わすとこであると同時に、自分たちがどこに向かっているのかを確認する羅針盤のような機能を果たさなくてはいけないのかもしれません。引き続き、会員諸氏の叱咤激励をお願いする次第です。


    第11期の最後となる2022年11月からの1年は、着手済みの変革をさらに開花させ、最終年にはさらによい報告ができるよう努力してまいります。会員の皆様の一層のご支援をお願いする次第です。

    2023年1月
    第11期会長 佐藤仁(東京大学)

    Letter from the President
    Reflecting on the Second Year as the 11th President




    2022年度「国際開発学会賞」選考結果と受賞のことば

    牛久晴香会員、阿部和美会員および佐藤峰・佐柳信男・柳原透会員(共著)の3著書に2022年度学会賞を授与

    2022年度「国際開発学会賞」選考結果

    第33回全国大会(明治大学:2022年12月3・4日)において、牛久晴香会員の著書『かごバッグの村―ガーナの地場産業と世界とのつながり』(昭和堂 2020)に学会賞を、阿部和美会員の著書『混迷するインドネシア・パプア分離独立運動 ―「平和の地」を求める戦いの行方』(明石書店 2022)に奨励賞を、佐藤峰・佐柳信男・柳原透会員の共著書”Empowerment through Agency Enhancement: An Interdisciplinary Exploration” (Palgrave Macmillan 2022)に賞選考委員会特別賞を授与しました。

    今年度も本事業にたくさんの応募がありました。その中で惜しくも受賞に至らなかったものの最終選考に残った作品としては、藍澤淑雄の著書『アフリカの零細鉱業をめぐる社会構造―貧困解消に向けたタンザニアの零細鉱業支援のあり方』(日本評論社 2021)、木山幸輔会員の著書『人権の哲学:基底的価値の探究と現代世界』(東京大学出版会 2022)の2つがありました。

    応募くださった皆様、誠にありがとうございます。選考委員一同、応募作から多くのことを学ばせていただきました。学会賞の趣旨は、会員の研究を励ますことにあります。

    会員の皆様には、ご自身の研究を、さらに磨き高めていくための機会として、ご活用いただけましたら幸いです。2023年度にも多くの皆様からのご応募をお待ちしております。

    賞選考委員会
    委員長:三重野文晴(京都大学)


    選評


    学会賞 牛久晴香

    『かごバッグの村―ガーナの地場産業と世界とのつながり』昭和堂

    本作品は、ガーナの「かごバック」=ボルガ・バスケット産業という国際開発の「成功事例」について、長期フィールドワークを通して歴史、技術、流通や文化に関する詳細なデータを入手し、グローバル化した手工芸産業の実態を丁寧に解き明かすものである。

    その生産と流通の構造を、地元の経済社会と国際市場との関係で詳細に調査し、その商品としての出現過程についても可能な限りの検証と考察を行って、さらにその構造の中にミドルマンの役割の評価など多面的な要素を見いだしている。

    包括的なこの研究によって導き出される発見は多岐にわたる。この国際的商品としての誕生には外部者である政府・国際機関の開発政策や企業の宣伝が関わってきたこと、原料育成地の減少と輸出の急増への対応の過程の課題が生産者側の「生活の論理」の中に読み替えられて、生産体制が維持・改善されてきたこと、つまり国際市場に取り込まれる中でも、生産者の現地社会における価値観が自律的に維持されてきたこと、そして、在村の仲買人(ミドルマン)が、本来相容れない2つの価値観の間を多様な方法で仲介していること、などである。

    国際開発の潮流を強く意識した堅固な課題設定のもとで、ボルガ・バスケットの生産と流通を多角的かつ詳細に調査・分析し、その結果として、在来産業の商品が国際商品化する過程で在来社会が主体性を失う方向に変質していくというステレオタイプとは異なる実態とそのメカニズムを、独創的な手法によって見事に描き出している。

    数々の発見は、国際開発研究における生業創出援助やフェア・トレード、あるいはより広く企業、流通、貿易に関わる論点に、一石を投じる内容となっている。

    本作品は、地域研究分野の博士論文研究の成果出版であり、大学院における語学習得や長期にわたる参与観察の過程をふまえて結実した、実にダイナミックな研究である。

    ボルガ・バスケットの材料調達や編み方の実践にまで体験的に参加するフィールドワーカーとしての姿勢と、一方でフィールド調査の事実発見のみに引きずられることなく、複数の分野の研究成果の知見を縦横に活用して普遍的な論点を展開していく力量が、巧みな文章とあいまって、完成度の高い研究書を生み出している。学会賞(本賞)に相応しい作品であると選考委員の意見が一致した。(三重野 文晴)


    奨励賞 阿部和美

    『混迷するインドネシア・パプア分離独立運動 ―「平和の地」を求める戦いの行方』明石書店

    本作品は、インドネシアのパプア社会に重点を置いて、パプア分離独立運動の考察を行ったものである。

    基本的な問いを、なぜ、スハルト政権が崩壊して民主化が定着した今日においてパプア分離運動が依然として続いているのかという点におき、それをパプアの社会的・歴史的背景環境と、民主化以降の分離独立運動を牽引する主体および彼らの要求を吟味することで、考察している。

    ここでは、パプア分離独立運動をインドネシア政府対パプア分離独立運動という二元的な構図のみで描くのではなく、分離独立運動や政府の開発事業がパプアの社会構造にもたらした変化を分析し、さらにそうした変化が分離独立運動にもたらしたインパクトが明らかにされる。

    すなわち、特別自治法によるパプア人の政治参加が結果としてエスニック・グループ間の対立を激化させたこと、インドネシア政府による開発事業によって伝統的なアダット組織が弱体化したこと、こうした変化により分離独立運動が穏健派と急進派に分裂しインドネシア政府との交渉が停滞していることなどであり、こうした事実が丁寧なフィールド調査をもとに描かれている。

    このような多角的な検討を通じて、パプア紛争の発端が国民統合過程においてパプア人の意思が反映されてこなかった民族自決の問題であり、これは例えばインドネシアへの国民統合そのものへの抵抗であったアチェ紛争と性格が異なることが指摘される。

    そして民族自決とインドネシア政府の意思決定への参画を欠いていたゆえに、インドネシアに併合以降もパプアの人々の基本的ニーズが充足されてこなかったとの解釈を導いている。

    民主化期に地域社会の中に蔓延する腐敗の構造についても目配せするなど、インドネシア政府対パプア分離独立運動の構図にとどまらない複雑な状況もよく考察され、問題の解決の困難さを描き出している。

    本作品には、惜しいことに取り上げる情報・文献に二次資料が多く分離独立派側のものに偏りがあるという意見、またパプア人の人権尊重、国際社会の関心の喚起という結論はやや一般的にすぎるという意見もあった。

    そのような課題が残るにせよ、国際開発研究として従来見逃されてきた貴重なテーマを取り上げ、学界にまとまりのよい知見を提供している点で貢献が大きいことには間違いない。若手研究者の今後の一層の活躍への期待もこめて、奨励賞に選出することとなった。(三重野 文晴)


    (講評)賞選考委員会特別賞:佐藤峰、佐柳信男、柳原透

    Empowerment through Agency Enhancement: An Interdisciplinary Exploration, Palgrave Macmillan

    本作品は、人類学、心理学、経済学の観点から、「人はどのようにイニシアティブをとるのか」という問いを掲げ、事例研究を織り交ぜながら理論的、実証的に論じるという、斬新な試みを行っている。

    「エージェンシー」をキー概念として、その定義やそれが発現するメカニズム、そして実態が可視化されて人や社会のポジティブな変化につながる「エンパワーメント」の現象を、3つの学問分野からどのように説明できるかを、比較対比させながら分析している。

    開発研究は学際的な学問領域であると言われながら、学際的研究において理論から実証研究まで異なる学問領域の研究者が論点を共有し、結論まで導き出すこのような試みは、その困難さから忌避されがちであるように思われる。

    その意味で、開発研究の学際性に正面から挑戦し、分野間にある共通点や補完性を見出し、開発の働きかけによる人や社会の変化の可視化に挑み、開発研究の今後の視点を見出すことに一定程度成功した本作品の意義は大きい。

    また、各分野に関わる取り組みに、日本の生活記録運動(Life Record Movement)、チリのSolidario Programなど開発援助の実践手法を取り上げて、それらの理論的根拠を析出することに繋がっていることも重要な貢献である。

    本作品は、そのテーマの特徴から、各章はそれぞれの分野や個別の実践のレビュー論文としての性格が強いもので、特定テーマを深掘りした研究書とは構成・性格が異なる。

    そして、残る課題として、それぞれの理論の改善や相互の補完性の可能性の指摘にはたどり着いたものの、分野横断的な批判的検討や理論構築には至っていないのではないか、という点も指摘された。

    このようなユニークさや限界があるとはいえ、日本を含む開発過程と援助経験の含意を世界に発信しながら、学際性が求められる開発研究者の立ち位置のありかたに正面から挑戦したこの本の趣旨は、学界に大きな示唆をもつ。この点を踏まえて、本作品は賞選考委員会特別賞に相応しいものと評価された。(三重野 文晴)


    受賞のことば

    学会賞・牛久晴香会員

    『かごバッグの村―ガーナの地場産業と世界とのつながり』
    (昭和堂 2020)

    このたびは国際開発学会学会賞という栄誉ある賞をいただき、誠にありがとうございます。わたしはガーナ北部のボルガタンガ地方というところで10年強研究を続けてきました。とくにこの地域の地場産品で、今やアフリカを代表するかごバッグである「ボルガバスケット」という輸出向けの手工芸品に着目してこの本をまとめました。

    この本で立てた問いはいくつかあるのですが、国際開発とも関係の深い問いとしては、「ボルガバスケットの産地で開発援助機関や外国企業の試みが『なかったこと』にされずにうまく取り込まれてきたのはどうしてか」があります。これは会員の小國和子先生がご著書『村落開発支援は誰のためか』で言及された、外部からの働きかけの「無効化」にヒントを得た問いです。

    アフリカ農村では数多くの産業創出プロジェクトや一村一品運動が実施されてきましたが、その多くはプロジェクト終了とともに立ち消えてしまう、あるいは「なかったこと」にされてしまうことは、みなさまがご存じのとおりです。

    それではなぜ、ボルガバスケットでは無効化されずにうまく取り込まれてきたのか。本書ではその理由を、ボルガタンガの人たちが新たに持ち込まれる技術や取引のしくみを村の生活の論理やものづくりの論理に適合的なかたちに改変してきたから、としました。この過程でとくに重要な役割を果たしてきたのは、ミドルマン(仲介者)たる在村の仲買商人なのですが、彼らの言う「僕らのやり方」がこの産業の発展に不可欠であったと結論づけました。

    この本には開発実務に役立つモデルや普遍性のある理論は書かれていません。しかし、「アフリカ農村のやり方」を研究するためのいくつかのヒントを、そして「アフリカ農村のやり方にもとづく産業発展」の一例を、本書が示すことができていれば幸いです。

    まだまだ未熟者ですが、さらに研究を発展させるべく、そしてこれから国際開発研究の発展にも貢献すべく精進いたしますので、今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。このたびは誠にありがとうございます。


    奨励賞・阿部和美会員

    『混迷するインドネシア・パプア分離独立運動 ―「平和の地」を求める戦いの行方』
    (明石書店 2022)

    この度は、国際開発学会奨励賞を頂戴し、大変光栄に存じます。これまでご指導・ご尽力いただきました先生方ならびに関係者の皆様に、心より感謝申し上げます。

    パプアを初めて訪れたのは、2010年12月です。パプアのことをほとんど知らないまま訪問しましたが、特別自治法の内容が適切に履行されていない、パプア人が警察や軍に不当逮捕や殺害されているなど、深刻な問題を次々と目の当たりにして、研究対象にしようと決意しました。

    『混迷するインドネシア・パプア分離独立運動―「平和の地」を求める闘いの行方』では、パプア分離独立運動の背景と社会変容を考察しながら、政府との対立が解決しない要因は安全保障、開発、アイデンティティへのニーズの不充足が依然として是正されていない実態にあると特定しました。

    近年、パプアでも開発が進み、利便性が大きく向上しましたが、外国人ジャーナリストの渡航が制限されるなど、パプアに関する情報は依然として厳しく規制されています。フィールド調査にも困難があり、治安上の問題から、分離独立運動が活発な内陸の山岳部ではほとんど調査ができません。入手できる資料も限られています。

    パプア分離独立運動も、大きく変化しつつあります。分離独立運動を牽引してきた第一世代の多くが死去し、著名な活動家がいません。パプアでは開発が進み生活が便利になる一方で、開発を進める企業と住民の間で土地問題が発生しています。内陸部では、武装集団と国軍の戦闘が激化して国内避難民が発生しています。

    研究にはまだまだ不十分な点や取り組むべき課題が多々ありますが、このようなパプアの現状を一人でも多くの読者の方々に知っていただきたいと思い、本書の出版に至りました。 今回の受賞を励みとして、パプアや類似する事例の問題解決に少しでも貢献できるよう、精進して参ります。このたびはありがとうございました。


    特別賞・佐藤峰会員・佐柳信男会員・柳原透会員(共著)

    ”Empowerment through Agency Enhancement: An Interdisciplinary Exploration”
    (Palgrave Macmillan 2022)

    この度は Empowerment through Agency Enhancement に対して国際開発学会特別賞をいただき感謝を申し上げます。賞状に「将来性に対して」とありましたので、まだまだ途上である学際研究のポテンシャルに対して賞を頂戴したと理解しております。

    本書は、国際協力などの社会サービスにおける当事者のオーナーシップやイニシアティブがどのようにしたら発揮されるのか(どのようにエンパワメントが起こるのか)、どのように支援できるかについて、エージェンシーを鍵概念として、人類学(佐藤峰)、心理学(佐柳信男)、経済学(柳原透)、の間での学際研究を行った成果です。

    三部構成になっており、エージェンシーの定義について、エージェンシーが発揮されるメカニズムについて、その可視化と測定について、それぞれの専門領域からの議論を展開しました。社会開発や社会福祉に関わる実践者の多くは、当事者が自ら意思決定し動いていけるようさまざまに努力をしてきましたが、得られた知見の多くは経験知に止まっています。それらを理論と結びつけ、実学としての開発学のひとつのかたちを示したい、という思いもありました。

    構想の発端は、柳原が代表であった「生活改善」に関する研究部会に佐藤が2007年に参加し後に共同代表を務める中で、生活改善にとどまらない「主体性」に関わる研究への関心が強まったことでした。その具体化として、JICA研究所の研究プロジェクトとして「主体性醸成のプロセスと要因にかかる学際的研究:中南米事例を中心に」(2012-2015)を立ち上げました。人の心の動きを扱う研究として心理学の視点・知見の必要が認識され、佐柳会員の参画を得ることとなりました。

    その後、国際開発学会やHDCA(Human Development and Capability Approach)など国内外での学会で企画セッションを持ち、反応から手応えを得て成果を書籍として世に問うことを考えました。2018年にPalgrave Macmillanの編集者にお会いする機会があり、プロポーザルをお送りしたところ採用となり、三人で研究会をしながら書き進め刊行に至りました。

    学際研究は、同一分野の研究者による共同研究とは違い、各分野での発想や暗黙の前提を相互に分からなければなりません。相互理解と相互啓発の過程では、しばしば行きつ戻りつが起きます。そのこともあり、本書でも、同一のテーマや事例につき各分野からの議論を収斂させ統合するところまでは、未だ至っていません。「特別賞」を学際研究への「特別奨励賞」として受けとめ、学際研究のひとつのあり方を打ち出せるよう、今後も努める所存です。大きな励ましをいただいたことに、あらためてお礼を申し上げます。




    【会員限定】常任理事会議事録(第231・232回)

    第231回常任理事会

    • 日時:2022年11月3日(木曜)10時~14時
    • 方法:対面とZoom(オンライン)のハイブリッド
    • 出席者:佐藤(会長)、高田、山田(以上、副会長)、池上、小林、島田、松本、北村、川口、佐野、志賀、杉田、三重野(以上、常任理事)

    議題

    (1) 審議事項

    1.支部・研究部会助成額の決定について

    池上総務委員長より、2023年度の支部・研究部会の助成額について報告があり、承認された。

    2.定款および定款細則の改正について

    志賀事務局長より、会員制度の変更等に伴う定款および定款細則の改正案が提案され、承認された。

    3.第12期1号理事選挙について

    杉田選挙管理委員長より、第12期1号理事選挙を2023年5月9日から23日の期間に実施するとの提案があり、承認された。また、選挙規程の改正案が提案され、承認された。

    4.2022年度学会賞について

    三重野賞選考委員長より、2022年度学会賞に13 作品の応募があったこと、審議の結果、 学会賞本賞に牛久晴香会員の『かごバッグの村―ガーナの地場産業と世界とのつながり』(昭和堂)、奨励賞に阿部和美会員の『混迷するインドネシア・パプア分離独立運動―「平和の地」を求める戦いの行方』(明石書店)、賞選考委員会特別賞に佐藤峰会員、佐柳信男会員、柳原透会員共著のEmpowerment through Agency Enhancement: An Interdisciplinary Exploration (Palgrave Macmillan)が選出されたこと、論文部門については該当なしとの結果であったことが報告され、承認された。


    (2) 報告事項

    1. 第33回全国大会

    島田大会実行委員長より、第33回全国大会のプログラム案と準備状況について報告がなされ、承認された。

    2. 入会・退会者の報告と会員数の動向

    志賀事務局長より、新規入会希望者・退会者の報告(新規入会希望者13名、退会者3名)ならびに会員数の動向について報告があった。

    3. 翻訳書の応募者への対応について

    三重野賞選考委員長より、翻訳書をもって学会賞への応募があった場合の対応や、論文賞の今後のあり方についての検討状況が報告された。

    4. ポスター賞選考の準備状況について

    三重野賞選考委員長より、ポスター賞選考の準備状況について報告された。


    第232回常任理事会

    • 日時:2022年11月26日(土曜)10時~11時30分
    • 方法:Zoom(オンライン)による開催
    • 出席者:佐藤(会長)、高田、山田(副会長)、池上、川口、小林、佐野、志賀、島田、杉田、松本(常任理事)

    議題

    (1)審議事項

    1.2022年度活動報告および監査役報告について

    各委員長より2022年度の活動について報告された。また、志賀事務局長および池上総務委員長より、2022年度監査については特段の問題点を指摘されることなく終了した旨が報告された。

    2.  2023 年度活動計画および予算案について

    各委員会から2023年度活動計画および予算案について説明がなされ、承認された。

    3.入退会承認について

    志賀事務局長より、30名の新規入会希望者(正会員8名、学生会員22名)について提案がなされ、承認された。また、1名が退会したことが報告された。

    4.第115回理事会議事および第33回会員総会の議事について

    志賀事務局長より、第115回理事会の議事案および第33回会員総会の議事案について説明がなされ、承認された。




    【会員限定】理事会議事録(第114・115・116回)

    第114回理事会

    • 日時:2022年10月28日(金曜)~29日(土曜)
    • 方法:メールによる開催

    (1)審議事項

    3年間会費未納を理由とする退会処分対象者について:志賀事務局長より、3年間会費未納を理由とする退会処分対象者17名について提案があり、承認された。


    第115回理事会

    • 日時:2022年11月26日(土曜)13時30分~16時30分
    • 方法: Zoom(オンライン)による開催
    • 出席者(敬称略):佐藤(会長)、高田、山田(以上、副会長)、池上、川口、佐野、志賀、島田、杉田、松本、三重野(以上、常任理事)池見、市橋、伊東、大橋、岡部、小川、小國、萱島、澤村、高橋、鍋島、西川、藤掛、藤山、道中、山形(以上、理事)、石田、西野(以上、監査役)、梅村(支部長)

    (1)審議事項

    1.2022年度学会賞について

    三重野賞選考委員長より、2022年度学会賞に13 作品の応募があったこと、審議の結果、 学会賞本賞に牛久晴香会員の『かごバッグの村―ガーナの地場産業と世界とのつながり』(昭和堂)、奨励賞に阿部和美会員の『混迷するインドネシア・パプア分離独立運動―「平和の地」を求める戦いの行方』(明石書店)、賞選考委員会特別賞に佐藤峰会員、佐柳信男会員、柳原透会員共著のEmpowerment through Agency Enhancement: An Interdisciplinary Exploration (Palgrave Macmillan)が選出されたこと、論文部門については該当なしとの結果であったことが報告され、承認された。

    2.2022年度活動報告、決算および監査役報告

    各委員長より2022年度の活動について報告された。また、志賀事務局長および池上総務委員長より、2022年度監査については特段の問題点を指摘されることなく終了した旨が報告された。

    3.  2023 年度活動計画および予算案について

    各委員会から2023年度活動計画および予算案について説明がなされ、承認された。

    4.2023年度の支部・研究部会への助成額について

    池上総務委員長より、2023年度の支部・研究部会の助成額について報告があり、承認された。

    5.2023年度活動計画案および予算案

    各委員会から2023年度活動計画および予算案について説明がなされ、承認された。

    6.定款および定款細則の改正について

    志賀事務局長より、会員制度の変更等に伴う定款および定款細則の改正案が提案され、承認された。

    7.第33回会員総会の議事について

    志賀事務局長より、第33回会員総会の議事案について説明がなされ、承認された。

    8.第12期1号理事候補者選挙および選挙規程の改正について

    杉田選挙管理委員長より、2023年5月9日から23日の期間に第12期1号理事選挙を実施するとの提案があり、承認された。また、選挙規程の改正案が提案され、承認された。


    (2)報告事項

    1.第33回全国大会の準備状況

    島田大会実行委員長より、第33回全国大会のプログラム案と準備状況について報告がなされ、承認された。

    2.入会者・退会者について

    志賀事務局長より、30名の新規入会希望者(正会員8名、学生会員22名)および、1名の退会者が報告された。

    3.第33回全国大会優秀ポスター発表賞対象作について

    三重野賞選考委員長より、第33回全国大会優秀ポスター発表賞対象作について報告があった。

    その他

    1.合理的配慮について

    障害を有する会員に対する合理的配慮のあり方について議論が行われた。


    第116回理事会

    • 日時:2022年11月4日(日曜)11時45分~12時30分
    • 方法:対面(明治大学 リバティタワー11階 1116教室)による開催
    • 出席者(敬称略):佐藤仁(会長)、高田、山田(以上、副会長)、池上、川口、北村、小林、佐野、島田、杉田、松本、三重野(以上、常任理事)、志賀(事務局長)、池見、伊東、大橋、岡島、岡部、小川、小國、萱島、黒田、佐藤寛、高橋、西川、藤掛、道中(以上、理事)、工藤(第24回春季大会実行委員長)、秋保(本部事務局次長)

    冒頭に、島田剛・第33回全国大会実行委員長および工藤尚悟・第24回春季大会実行委員長の挨拶が行われた。

    (1)審議事項

    1.優秀ポスター発表賞の受賞作について

    三重野賞選考委員長より、第33回全国大会優秀ポスター発表賞受賞作について報告があり、承認された。




    2021年度「国際開発学会賞」受賞者からのことば

    2021年度「国際開発学会賞」 学会賞(奨励賞)/(特別賞)を受賞して

    第31回全国大会(金沢大学(オンライン):2021年11月20-21日)において、岩原紘伊会員の著書『村落エコツーリズムを作る人々:バリの観光開発と生活をめぐる民族誌』(風響社 2020)に奨励賞を、小山田英治会員の著書『開発と汚職:開発途上国の汚職・腐敗との戦いにおける新たな挑戦』(明石書店 2019)に賞選考委員会特別賞を授与しました。

    受賞者からの言葉を掲載いたします。なお、授賞作の選評については、ニューズレター前号(33.1)をご覧ください。

    受賞の言葉 岩原 紘伊

    この度は、拙著『村落エコツーリズムをつくる人びと――バリの観光開発と生活をめぐる民族誌』を2021年度国際開発学会奨励賞に選んでいただきまして、心よりお礼申し上げます。

    本書は、2018年3月に東京大学大学院総合文化研究科に提出した博士論文を加筆・修正し、出版したものです。本書の舞台であるインドネシアのバリ島は、近年マスツーリズム開発よる社会・環境への負の影響が国内外から指摘されるようになっており、持続可能な観光の実現が地域社会内部でも意識されるようになっています。

    本書はそうしたなか、マスツーリズムに代わる別様の観光のあり方として注目されているコミュニティベースト・ツーリズム(CBT)が、現地の環境NGOやその協力者たちによって、どのようにプロジェクト化され、バリのローカルな社会に導入・適用されているのかを描写しました。

    今日 CBT は、発展途上国を中心に国際機関やNGOといったアクターによって参加型開発として多数プロジェクト化されており、地域や国境を越えた現象となっています。同時にCBTに関する研究も増えてきていますが、多くは事業としてのCBT運営の成功や失敗、そしてその要因となる地域社会の内情に焦点が当てられがちで、CBTをローカルな社会へ持ち込むアクターの存在や役割は後景化されてきました。

    それに対し本書は、約 2 年にわたりバリのローカル環境NGO やその協力者の活動の内側に入り、参与観察を実施して得られたデータをもとに、CBT が村落社会へと導入されていく現場において、そのオルタナティブな形態が誰によってどのように移入され、当該コミュニティの事情に応じて調整・修正されていくのかを考察しました。

    新型コロナウィルス感染症の世界的な流行によって、マスツーリズムを主体とする観光活動が当面困難となるなか、小規模な観光形態が注目されるようになっています。ポスト・コロナ時代の観光活動において、CBTがプロジェクト対象地域の発展にどのような役割やインパクトを持つのか注視して研究を進め、国際開発をめぐる研究の発展に少しでも貢献できるよう精進してまいります。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。


    受賞の言葉 小山田 英治

    この度は、拙著『開発と汚職―開発途上国の汚職・腐敗との闘いにおける新たな挑戦』に対し、2021年度国際開発学会特別賞を付与して頂き、誠にありがとうございました。

    本書は、主に開発途上国並びに新興国の汚職問題を開発の側面から取り上げ、汚職や政府腐敗がどの程度市民や国家開発に影響を与えるか明らかにした上で、政府や市民社会、企業、国際社会の汚職との闘い、そしてその成果はどうなっているのか等を考察し、5か国の事例を通じて各国政府による反汚職政策の様子を描きだしております。

    汚職研究の多くは、政治学、刑法学そして行政学上の他研究との関連において行われており、クライエンテリズムやレント・シーキング研究などは別途行われていたものの、一研究分野としては確立しておらず、学術研究テーマとして長い間蚊帳の外となっておりました。その背景には、汚職は一個人の行為で道徳的問題である、そして贈賄・収賄者双方がともに事実を隠蔽するため、研究は困難であるとの理由でした。

    また、援助との関係では汚職は国内問題のため、それ自体を議論することは国内干渉となりタブー視されておりました。しかし、1990年代以降、汚職は国家開発を大きく損なわせる要因、そしてそれは構造的かつ国境を超える問題であると認識され、国内問題だけでは取り扱うべきでないというコンセンサスに至り、国際社会全体で汚職と闘うべき機運が高まってきました。

    途上国開発との関連で見れば、近年の汚職研究は、制度派経済学を中心とした、ガバナンス研究の枠組み内におけるものが多く、本書でも主に途上国ガバナンスの側面から議論展開をしております。

    本書では汚職研究の文献を意図的に多く引用し、途上国の汚職の区分、構造と実態、汚職対策において何が有効的なのか、そして汚職は本当に削減できるのか等、国際開発と絡めて多面的に議論致しました。本書が少しでも途上国開発研究の貢献材料となればと幸いに存じます。

    賞選考委員会
    委員長:三重野文晴(京都大学)




    2022年度「国際開発学会賞」作品公募のお知らせ

    2022年度の学会賞の候補作品を公募します。2020年1月1日から2022年6月30日までに公表された国際開発学会員の著作または学術論文が審査の対象となります。今年度より、優れた論文を対象とする「論文賞」を新たに設け、学会賞、奨励賞、論文賞、賞選考委員会特別賞の4つの部門で審査が行われます。応募作品の受付は、5月1日(日)から6月30日(木)まで(当日消印[または発送記録]有効)です。応募は自薦、他薦を問いません。

    対象となる本または論文各5部(本についてはオリジナル1部、残り4部はコピーで可;論文については全てコピーでも可)を、下記の学会賞選考事務局宛に送付してください。応募の際には応募用紙に記入の上、添付してください。応募用紙は学会Webからダウンロードできます。

    学会賞の応募作品および2020年1月1日から2022年12月31日までに『国際開発研究』に掲載された研究論文・研究ノート・調査研究報告を対象として、各賞に関わる審査を行います。

    なお、受賞者には原則として、当該年度の12月前後に開催される全国大会における授賞式や、受賞者セッションに参加することが求められます。

    数多くの作品のご応募をお待ちしております。詳細については、当学会の「学会賞」のページや、下記の「国際開発学会賞選考内規」をご覧ください。

    国際開発学会・賞選考委員会事務局
    〒606-8501 京都市左京区吉田下阿達町46
    京都大学東南アジア地域研究研究所 三重野文晴研究室気付
    E-mail: mieno-lab [at]
    (* [at] の部分を@に修正してご使用ください)


    〈賞選考内規〉

    1. 会員の研究を奨励し、研究成果の顕彰並びに広報を目的として、国際開発学会では賞を設ける。審査対象は、国際開発にかかわる諸問題に関する研究成果をとりまとめて出版された著作および論文(i)とし、単独研究・共同研究の別を問わない。使用言語は日本語または英語とする。
    2. 賞には、「学会賞」「奨励賞」「論文賞」「賞選考委員会特別賞」を設ける。
    3. 学会賞は、国際開発の分野での極めて優れた研究であり、国際開発研究の発展に重要な学術的貢献が認められる作品を対象とする。
    4. 奨励賞は、若手研究者及び実務家による業績で、優れた将来性のある作品を対象とする。
    5. 論文賞は、国際開発の分野における極めて優れた論文を対象とする。
    6. 上記3,4の賞の基準に該当しないが、特に顕彰すべき作品があった場合は、賞選考委員会特別賞を授与することができる。
    7. 対象文献の執筆者は、国際開発学会の会員であることを要する。共同研究の場合には、主たる執筆者が会員であることを要する。ただし、審査委員会が特に必要と認めた場合には、その限りではない。
    8. 学会賞の選考は年1回とし、審査対象文献は、(a)前々年1月1日から当該年6月30日まで(2年半)に公表され公募に応募した著作・論文、および(b) 前々年1月1日から前年12月31日までに『国際開発研究』に掲載された研究論文(原著論文および総説)・研究ノート・調査研究報告とする。ただし、同じ作品は1回のみ審査する。公募に対する応募者は、別途定める応募期間内に、所定の宛先に、当該著作5部(原本1部、残りはコピーで可)を送付すること。自薦・他薦を問わない。
    9. 賞選考委員会は、応募のあった著作・論文および『国際開発研究』に掲載された作品を審査した上で各賞候補を決定し、その結果を会長に報告する。賞選考委員会委員長は、必要に応じ、同委員会の委員以外の者に意見を求め、審査を依頼することができる。
    10. 委員長は、審査結果を常任理事会、理事会に諮り、各賞の決定を行う。各賞の表彰は、国際開発学会全国大会会員総会において行う。
    • ここでいう「出版された著作および論文」とは、ISSNまたはISBN番号が表示された定期刊行物および書籍を指すものとし、論文の場合は査読を経たものとする。

    附則

    本内規は、2020年 4 月 5 日より施行する。

    賞選考委員会
    委員長:三重野文晴(京都大学)




    2022年度『国際開発学会賞』作品公募(6月30日まで)

    2022年度の学会賞の候補作品を公募します。2020年1月1日から2022年6月30日までに公表された国際開発学会員の著作または学術論文が審査の対象となります。

    今年度より、優れた論文を対象とする「論文賞」を新たに設け、学会賞、奨励賞、論文賞、賞選考委員会特別賞の4つの部門で審査が行われます。応募作品の受付は、5月1日(日曜)から6月30日(木曜)まで(当日消印[または発送記録]有効)です。応募は自薦、他薦を問いません。

    対象となる本または論文各5部(本についてはオリジナル1部、残り4部はコピーで可;論文については全てコピーでも可)を、下記の学会賞選考事務局宛に送付してください。応募の際には応募用紙に記入の上、添付してください。応募用紙は学会賞のページからダウンロードできます。

    応募に関する詳細は、学会賞のページをご覧ください。

    2022年度『国際開発学会賞』作品公募のご案内

    賞選考委員長
    三重野文晴(京都大学)




    2021年度「国際開発学会賞」選考結果

    岩原紘伊会員、小山田英治会員の著書に、2021年度学会賞を授与

    第31回全国大会(金沢大学(オンライン):2021年11月20・21日)において、岩原紘伊会員の著書『村落エコツーリズムを作る人々:バリの観光開発と生活をめぐる民族誌』(風響社 2020)に奨励賞を、小山田英治会員の著書『開発と汚職:開発途上国の汚職・腐敗との戦いにおける新たな挑戦』(明石書店 2019)に、賞選考委員会特別賞を授与しました。

    応募くださった皆様、誠にありがとうございます。選考委員一同、応募作から多くのことを学ばせていただきました。学会賞の趣旨は、会員の研究を励ますことにあります。会員の皆様には、ご自身の研究を、さらに磨き高めていくための機会として、ご活用いただけましたら幸いです。

    学会誌掲載論文以外は、応募されなければ選考対象となりません。2022年度にも多くの皆様からのご応募をお待ちしております。

    賞選考委員会
    委員長:三重野文晴(京都大学)


    選評1

    奨励賞:
    岩原紘伊 『村落エコツーリズムを作る人々:バリの観光開発と生活をめぐる民族誌』(風響社2020)

    作品は、バリ島という世界的な観光地におけるCommunity-based Tourism(CBT)を題材に、観光の対象となる「慣習村」(アダット)へのNGOや外部社会からの働きかけの作用を論じたものである。CBTを題材としながらも、それの舞台となる「慣習村」そのものより、NGOなどの外部社会との「仲介者」の行動とその影響に焦点をあてるという独創的な着想に基づく研究である。

    長期の参与観察と広範な先行研究のサーベイに基づきながら、そのグローバルな文脈、スハルト体制期以降の国内政治の文脈、ジャワを中心とするインドネシア社会とバリ社会の関係の文脈を明らかにした上で、NGOや村内の知識人など、外部社会と「慣習村」をつなぐアクターの功績と課題とを丁寧に解き明かした研究である。

    その中心的な結論は、NGOや村内の知識人などの「仲介者」が、もともとは権威主義体制との折り合いをつけながら広い活動を実践あるいは試行してきた経緯があり、その後グローバルな環境変化や国内政治環境の変化に適応するために、題材としてCBTの実践を「発見」したこと、それを反映して活動は外部社会におけるCBTの価値や諸々の近代的社会概念を「慣習村」に「翻訳的」に持ち込む形をとり、それが「慣習村」内におけるCBTやコミュニティーのあり方についての解釈を形成したというものである。

    本作品は文化人類学の立場からの研究であるが、人類学的な開発研究としても、地域研究としても読みごたえがあり、従来のツーリズム研究、例えば経営学や経済学などのから観光を論じた研究にはない視覚と情報を提供している。

    社会開発の手段としてのCBTが「仲介者」によって地場のコンテキストにどのように「翻訳」されたか、という視点は斬新である。その視点のもとで、豊富な先行研究レビューに基づいて、CBTをインドネシアの伝統的なアダット・コミュニティーの盛衰に引き付けおり、対象地域の文脈にしっかりと落とし込むことに成功している。この独創性と強い帰納的考察の両立は高く評価できる。

    本作品の記述の高い完成度の一方で、分析は少数の事例を扱ったケースタディーが中心ではあるので、一般化には相当に慎重であるべきとも感じられる。その点、選考委員からは、インタビューから登場する主要なアクターの意図をかなり断定的に解釈・記述する傾向も窺われ、考察実証について粗削りな部分も残るという意見もあった。素晴らしい若手研究者の登場を喜び、今後の一層の活躍を期待したい。

    (三重野文晴)


    選評2

    賞選考委員会特別賞:
    小山田英治 『開発と汚職:開発途上国の汚職・腐敗との戦いにおける新たな挑戦』 (明石書店 2019)

     経済開発下の汚職・腐敗という大きなテーマについて、1990年代以降の議論や先行研究を総括し、途上国の現状や国際社会のこれまでの取組みを評価した上で、5ヶ国の事例を分析し、国際開発の政策問題として包括的に論じたものである。

    本作品では、経済発展下の汚職・腐敗の問題について、その実態、開発への影響、さらにはそれを抑止する政策について豊富な先行研究を盛り込んで論じられる。また、5ヶ国のケースでは、それぞれの国の経験が詳細に分析され、現場の視点からの汚職の課題が整理され、わかりやすく示されている。

    汚職・腐敗という多岐にわたる論点をもつ国際開発の一大テーマに対して、詳細かつ網羅的で、理論と実践のバランスのとれたこの著作は、この分野にとって、いわば「ありそうで、なかった」待望の総合解説書である。

    本作品は、壮大な研究展望ともいうべきものであるので、選考委員からは、既存の情報や研究の紹介が中心で、著者独自の研究によって著者独自の知見を目指す要素は必ずしも多くはなく、本賞たる「学会賞」の対象とは性格が異なる、という意見もあった。一方で、この一冊が日本の国際開発分野の研究や実践について計りしれないほど大きな助けとなることは間違いない。その点、賞選考委員会特別賞にまさに相応しい作品である。

    (三重野文晴)

    *受賞者による受賞の言葉は、次号ニューズレターに掲載します。




    【会員限定】理事会議事録(第111回)

    • 日時:2021年11月14日(日曜)10時~12時30分
    • 方法:Zoom(オンライン)
    • 出席者:佐藤仁(会長)、高田、山田(以上、副会長)、池上、川口、北村、小林、佐野、島田剛、杉田、松本、三重野(以上、常任理事)、志賀(事務局長)、池見、市橋、伊藤、小川、小國、勝間、萱島、黒田、佐藤、高橋、鍋島、西川、道中、山形(以上、理事)、西野(監査役)、梅村、黒川、小池(以上、オブザーバー)

    議題

    1.第32回大会実行委員会・和田一哉大会実行委員長(金沢大学)からのご挨拶


    協議事項

    2.2020年度活動報告、決算および監査役報告について

    各委員長から2020年度の活動報告、池上総務委員長から決算報告をそれぞれ行なった。また、西野監査役から監査役報告が行なわれた。いずれも承認され、第32回会員総会に付議・報告することとした。

    3.2021年度活動計画および2022年度予算案について

    各委員長から2022年度活動計画について説明があった。また、池上総務委員長から2022年度予算案について説明があった。いずれも承認され、第32回会員総会に付議することとした。

    4.学会賞、国際開発学会論文コンテスト受賞者について

    三重野賞選考委員長より学会賞、松本人材育成委員長より国際開発学会論文コンテスト受賞者について説明があり、これを承認した。

    5.支部の設置承認について

    志賀事務局長より、2022年度の支部設置についての説明があり、これを承認した。

    6.2022年度支部・研究部会の助成額について

    池上総務委員長から支部・研究部会への助成額について報告が行なわれた。

    7.定款細則の改正、文書保存規定の改正について

    志賀事務局長から定款細則の改正、池上総務委員長から文書保存規定の改正についてそれぞれ説明が行なわれ、これを承認した。

    8.第32回会員総会の議事について

    志賀事務局長より第32回会員総会の議事について説明が行なわれ、これを承認した。


    報告事項

    9. 第33回全国大会について

    山田大会組織委員長から、明治大学にて開催したい旨の提案があり、これを承認した。(日程については明治大学と調整中)

    10.入会・退会者の報告

    志賀事務局長から入会者77名(第219回常任理事会承認19名、第220回常任理事会承認19名、第221回常任理事会承認39名)の報告があった。また、退会者23名(第219回5名、第220回5名、第221回13名)の報告も併せて行なわれた。

    11.第23回春季大会実行委員会

    佐野麻由子大会実行委員長(福岡県立大学)からの挨拶が行なわれた。




    賞選考委員会からのお知らせ(2021年11月)

    夏以降、賞選考委員会の業務が本格化してきました。

    今年度の学会賞の公募が6月末を締め切りに進められ、その後、秋口から選考審査を進めてきました。11月の常任理事会と理事会において正式決定され、全国大会の総会冒頭に発表されます。

    日本学術振興会が実施している若手研究者奨励「育志賞」の学会推薦区分が創設されたことを受けて、試行的に本学会からの推薦を行いました。年内に結果が判明します。結果を踏まえて、応募体制をつくりあげていく予定です。

    学会賞募集や審査プロセスについて、趣旨やルールの明確化を目指して、内規改訂の検討を始めました。とりわけ、論文における学会賞のあり方について検討しています。

    賞選考委員会
    委員長・三重野文晴(京都大学)




    【会員限定】常任理事会議事録(第219・220回)

    第219回常任理事会

    • 日時:2021年8月17日~8月25日
    • 方法:メールによる開催

    審議事項

    17名の新規入会者が承認された。

    報告事項

    5名の退会者が報告された。


    第220回常任理事会(その1)

    ※第220回常任理事会は議事多数につき、2日に分けて開催された

    • 日時:2021年9月19日(日曜) 10時00分~12時40分 
    • 方法:オンライン
    • 出席者(敬称略):佐藤、高田、島田、杉田、三重野、松本、池上、志賀、紺野

    審議事項

    1. 国際開発論文コンテストについて:
      人材育成委員会の松本委員長より、コンテストの応募及び審査の状況について説明があった。国際開発学会を支える将来の有望な「戦力」を取り込んでいくという観点から、受賞者と様々な形態で関与を継続していくことが重要ではないかとの指摘がなされた。
    2. 選挙管理委員会幹事の企画内容について:
      選挙管理委員会の杉田委員長より、学会選挙を学会員により身近なものとして感じてもらうことを目的とした、選挙管理委員会幹事の企画内容について報告があった。様々な媒体(SNS等)を活用した学会活動内容の発信については、効果を途中で適宜検証しながら進めていく必要があるとの指摘がなされた。
    3. 地方支部・研究部会の設置申請について:
      総務委員会の池上委員長より、2022年度の地方支部および研究部会の設置申請状況について報告があり、当時時点で申請がなされていた支部・部会の設置が承認された。
    4. 入会希望者および退会処分者について:
      志賀事務局長より、20名の入会希望者が紹介され、承認された。また、3年会費未納を理由とする退会処分者56名の提案がなされ、承認された(併せて18名の希望退会者が報告された)。

    報告事項

    1. 学会ウェブサイト等の運用状況について:
      広報委員会の高田委員長より、今年に全面リニューアルを行った学会ウェブサイトの運用状況や、メーリングリスト・ニューズレターの運営上の問題点について報告があった。テクニカルな問題点を解決していくためのノウハウの蓄積を含め、持続可能なかたちで運営していくための工夫が必要であるとの指摘がなされた。また、高田委員長からは、ウェブサイトについて今後は魅力あるコンテンツ作りに注力していきたいとの発言があった。
    2. 今後の各種会合の予定について:
      志賀事務局長より、第32回全国大会までの理事会、常任理事会の日程および議事について報告がなされた。事務の簡素化・合理化の観点からはオンラインでの開催が望ましいとの意見があった一方、理事・常任理事が対面で会合することの意義・効果を考えるべきという意見も出された。

    第220回常任理事会(その2)

    • 日時:2021年9月26日(日曜) 10時00分~12時45分 
    • 方法:オンライン
    • 出席者(敬称略):佐藤、高田、山田、道中(理事)、三重野、池上、川口、小林、佐野、島田、杉田、志賀、紺野

    審議事項

    1. ブックトークセッションについて
      これまで、大会時に開催されてきているブックトークセッションの今後のあり方について、道中理事より説明があった。学会員の研究成果を広く会員に認知してもらうための活動としてブックトークセッションは重要であるという意見が出され、大会での扱い(現在の企画セッションから公式イベントとするか等)や他の学会活動との連携のあり方について、引き続き議論していくこととなった。
    2. 全国大会・春季大会について:
      大会組織委員会の山田委員長より、第32回全国大会の準備状況の説明および今年度の春季大会の実施結果と余剰金の取扱について報告があった。併せて、新型コロナ感染状況下での大会開催方法(全面オンラインか、オンラインと対面方式のハイブリッドか等)の判断指針をどう設定すべきかについても議論された。
    3. 英文学会誌の編集体制について:
      グローバル連携委員会の北村委員長より、英文学会誌の編集体制(編集委員会および諮問委員会を設置する案)について説明がなされ、了承された。
    4. 会費制度の改訂について:
      総務委員会の池上委員長より、70歳以上の会員に対する会費減額制度の創設や、会費未納がない会員への会費請求は毎年4月1日以降に実施することとすることについて提案があり、了承された。
    5. 志賀事務局長より、コロナ禍に起因する経済的困窮を理由とする2022年度の会費減免措置の対象となる会員の申請状況について報告があり、承認された。

    報告事項

    • 賞選考委員会の三重野委員長より、今年度の学会賞への応募状況と審査日程について報告があった。併せて、学会賞のあり方について議論がなされ、概して応募数が少ないという現状を変えるために、どういう応募作を求めているかなどを含めた広報を行っていく必要があるという意見が出された。
    • グローバルフェスタへの参加について:
      社会連携委員会の川口委員長より、外務省主催のグローバルフェスタへ学会として参加し、会員の参加を得て「キャリア形成セミナー」と題する企画を実施する予定であるとの報告があった。

    第11期・本部事務局
    事務局長志賀裕朗(JICA研究所)




    【会員限定】常任理事会議事録(第217・218回)

    第217回常任理事会

    • 日時:2021年6月6日(日曜)10時00分~13時00分
    • 方法:オンライン開催
    • 出席者(敬称略):佐藤、高田、山田、池上、川口、小林、佐野、島田、杉田、三重野、松本、志賀、秋保

    審議事項

    支部・研究部会について

    池上総務委員長より、来年度の支部・研究部会の募集につき、これまでのところ研究部会について継続4つ、新規1つの申請があったとの報告があり、理事会に諮ることが承認された。

    2022年度会費について

    池上総務委員長より、学生会員に対する会費減額措置を来年度も継続すること、途上国/先進国会員という会費区分を撤廃することについて提案があり、承認された。

    事業年度と会費年度の分離について

    池上総務委員長より、事業年度と会費年度を分離する提案があり、今後も議論を継続していくこととなった。

    幹事の追加について

    小林研究×実践委員長より、功能会員、狩野会員の幹事就任に関する提案があり、承認された。また、杉田選挙管理委員長より、選挙管理委員会幹事を公募した結果、4名の学生会員から申請があったとの説明があり、4名の幹事就任が承認された。

    入会希望者

    志賀事務局長より34名の新規入会希望者が紹介され、承認された。また、26名の退会者が報告された。

    「人文社会系学協会メーリングリストへのご参加のお願い」への対応について

    人文社会系学協会連合連絡会からなされている「人文社会系学協会メーリングリストへの参加のお願い」への対応について志賀事務局長から説明がなされ、審議のうえ、参加の条件や方法について連絡会に改めて確認することとなった。

    「ミャンマーにおける人間の安全保障シンポジウム」への協賛依頼への対応について

    東京大学主催の「ミャンマーにおける人間の安全保障シンポジウム」への協賛依頼への対応について志賀事務局長から報告があり、承認された。

    (報告事項)

    宛名不明者一覧

    池上総務委員長より、メールアドレス不明者47名について報告があり、不明者の中に常任理事の知っている会員がいる場合、連絡をとって確認していただきたいとの依頼がなされた。

    2021年9月末で会費3年未納によって退会処分になる可能性がある会員一覧

    池上総務委員長より、9月末で会費3年未納を理由として退会処分になる可能性がある会員が73名いるとの報告があった。

    育志賞

    三重野賞選考委員長より、育志賞の候補者の選考状況が報告された。

    春季大会ポスターセッション表彰の選考

    三重野賞選考委員長より、次期春季大会では18件のポスターセッション発表者が予定されており、ビデオセッション形式で全選考委員が評価する方法を採用する旨が報告された。

    今年度の学会賞公募

    三重野賞選考委員長より、現時点では1件の論文と1件の書籍の応募があったことが報告された。

    i-vote選挙管理システム

    杉田選挙管理委員長より、選挙管理システム(i-vote)について報告があり、どのような選挙管理システムを採用するかについて今後も検討していくことが説明された。

    学会ホームページ改訂

    高田広報委員長より、学会ホームページのリニューアルの進捗状況について報告された。

    英文学会誌発刊準備

    英文学会誌の編集体制の構築や国際諮問委員会の設置にかかる準備状況について報告された。(北村グローバル連携委員長が欠席の為、佐藤会長から報告)


    第218回常任理事会

    • 日時:2021年6月30日~7月3日
    • 方法:メールによる開催

    審議事項

    キム・ソヤン会員がグローバル連携委員会の幹事に就任する案を審議し、理事会に諮ることが承認された。また、7名の新規入会者が承認された。

    報告事項

    6名の退会者が報告された。

    第11期本部事務局長志賀裕朗(JICA研究所)




    【公募】2021年度「国際開発学会賞」作品

    2021年度の学会賞の候補作品を公募します。2019年1月1日から2021年6月30日までに公表された国際開発学会員の著作または学術論文が審査の対象となります。

    今年度より、優れた論文を対象とする「論文賞」を新たに設け、学会賞、奨励賞、論文賞、賞選考委員会特別賞の4つの部門で審査が行われます。応募作品の受付は、5月1日(土)から6月30日(水)まで(当日消印[または発送記録]有効)です。

    対象となる本または論文各5部(本についてはオリジナル1部、残り4部はコピーで可;論文については全てコピーでも可)を、下記の学会賞選考事務局宛に送付してください。

    学会賞の応募作品および2019年1月1日から2020年12月31日までに『国際開発研究』に掲載された研究論文・研究ノート・調査研究報告を対象として、各賞に関わる審査を行います。

    なお、受賞者には、原則として、当該年度の12月前後に開催される全国大会における授賞式や受賞者セッションに参加することが求められます。

    数多くの作品のご応募をお待ちしております。

    詳細については「国際開発学会賞選考内規」をご覧ください。

    学会賞

    賞選考委員会 委員長
    三重野 文晴(京都大学)


    国際開発学会賞選考委員会事務局

    〒606-8501 京都市左京区吉田下阿達町46
    京都大学東南アジア地域研究研究所 三重野文晴研究室気付

    E-mail: mieno-lab (a) (*アットマーク部分を修正してご使用ください)

     




    賞選考委員会

    JASID Prize Selection

    賞選考委員会は、各年度に選出される学会賞、ポスター表彰の審査を行っています。学会賞には、学会賞(大賞)、奨励賞、論文賞、賞選考委員会特別賞の4つの部門があります。

    学会賞は対象期間に出版された優れた著作に、論文賞は学会誌『国際開発研究』をはじめとする国際開発分野の学術誌に発表された優れた論文に与えられます。

    奨励賞は主に若手による業績を、賞選考委員会特別賞は国際開発に関する実務、政策、啓発への貢献を表彰します。毎年度5月頃に、公募がはじめられます。

    ポスター表彰は、春季大会と全国大会のポスターセッションにおける優れた発表を表彰するものです。

    メンバー

    • 委員長:三重野文晴(京都大学)
    • 委員:萱島信子(国際協力機構)
    • 幹事:受田宏之(東京大学)、小山田英治(同志社大学)*、後藤健太(関西大学)、西村幹子(国際基督教大学)

    (*2021 年度の学会賞の選考には不参加)

    関連情報




    学会賞

    『国際開発学会賞』について

    種類

    以下の4つの賞を設けています。

    学会賞

    国際開発の分野での極めて優れた研究で、国際開発研究の発展に重要な学術的貢献が認められる作品に対する賞。

    奨励賞

    若手研究者及び実務家による業績で、優れた将来性のある作品が対象となる賞。

    論文賞

    国際開発の分野における極めて優れた論文を対象とする賞。

    賞選考委員会特別賞

    「学会賞」「奨励賞」の基準には該当しなかったものの、特に顕彰すべき作品があった場合に与えられる賞。

    応募要件

    審査対象文献

    (a) 前々年1月1日から当該年6月30日まで(2年半)のあいだに公表された著作もしくは論文

    (b) 審査対象となる期間に刊行された『国際開発研究』掲載の研究論文(原著論文および総説)・研究ノート調査研究報告

    • 単独研究・共同研究の別は問いません
    • 執筆者:国際開発学会の会員であること(共同研究の場合には主たる執筆者が会員であること)
    • 使用言語:日本語または英語
    • 同じ作品の審査は1回限り
    • 自薦・他薦を問わない

    応募方法

    毎年指定する応募期間内に、所定の宛先に以下のものを送付すること。

    • 応募用紙(指定書式をダウンロード):1作品につき1枚
    • 当該著作:5部(本についてはオリジナル1部、残り4部はコピーでも可)
    • 当該論文:5部(全てコピーでも可)
    • 電子媒体がある場合はあわせて提出

    応募用紙

    応募用紙は以下のリンクからダウンロードして取得してください。

    • 2023年度『国際開発学会賞』応募用紙(word)

    審査方法

    賞選考委員会が、応募のあった著作・論文と『国際開発研究』に掲載された作品を審査し、各賞候補を決定します。

    その後、賞選考委員長が審査結果(候補作品)を常任理事会、理事会に諮り、各賞の受賞作品が決定されます。

    賞選考内規

    1. 会員の研究を奨励し、研究成果の顕彰並びに広報を目的として、国際開発学会では賞を設ける。審査対象は、国際開発にかかわる諸問題に関する研究成果をとりまとめて出版された著作および論文(i)とし、単独研究・共同研究の別を問わない。使用言語は日本語または英語とする。
    2. 賞には、「学会賞」「奨励賞」「論文賞」「賞選考委員会特別賞」を設ける。
    3. 学会賞は、国際開発の分野での極めて優れた研究であり、国際開発研究の発展に重要な学術的貢献が認められる作品を対象とする。
    4. 奨励賞は、若手研究者及び実務家による業績で、優れた将来性のある作品を対象とする。
    5. 論文賞は、国際開発の分野における極めて優れた論文を対象とする。
    6. 上記3,4の賞の基準に該当しないが、特に顕彰すべき作品があった場合は、賞選考委員会特別賞を授与することができる。
    7. 対象文献の執筆者は、国際開発学会の会員であることを要する。共同研究の場合には、主たる執筆者が会員であることを要する。ただし、審査委員会が特に必要と認めた場合には、その限りではない。
    8. 学会賞の選考は年1回とし、審査対象文献は、(a)前々年1月1日から当該年6月30日まで(2年半)に公表され公募に応募された著作もしくは論文(『国際開発研究』に掲載されたものを除く)、および(b)直前の学会賞選考の対象になった巻号以降で前年12月31日までに刊行された『国際開発研究』掲載の研究論文(原著論文および総説)・研究ノート・調査研究報告とする。
      ただし、同じ作品は1回のみ審査する。公募に対する応募者は、別途定める応募期間内に、所定の宛先に、当該著作5部(原本1部、残りはコピーで可)を送付すること。自薦・他薦を問わない。
    9. 賞選考委員会は、応募のあった著作・論文および『国際開発研究』に掲載された作品を審査した上で各賞候補を決定し、その結果を会長に報告する。賞選考委員会委員長は、必要に応じ、同委員会の委員以外の者に意見を求め、審査を依頼することができる。
    10. 委員長は、審査結果を常任理事会、理事会に諮り、各賞の決定を行う。各賞の表彰は、国際開発学会全国大会会員総会において行う。

    (i) ここでいう「出版された著作および論文」とは、ISSNまたはISBN番号が表示された定期刊行物および書籍を指すものとし、論文の場合は査読を経たものとする。

    附則
    2020年 4 月 5 日改訂

    本内規は、2022年 11 月26 日再改訂し、同日より施行する。

    これまでの受賞作品

    過去の受賞作は以下のページでご覧いただけます。


    学会賞に関するお問い合わせ先

    国際開発学会・賞選考委員会事務局




    2020年度学会賞

    加治佐敬

    『経済発展における共同体・国家・市場―アジア農村の近代化にみる役割の変化』日本評論社2020年.


    奨励賞

    谷口美代子

    『平和構築を支援する―ミンダナオ紛争と和平への道』名古屋大学出版会 2020年.

    高柳妙子

    『Informal Learning and Literacy among Maasai Women: Education, Emancipation and Empowerment』Routledge、2020年.


    賞選考委員会特別賞

    萱島信子・黒田一雄

    『日本の国際教育協力―歴史と展望』東京大学出版会 2019年.

    応募くださった皆様、誠にありがとうございました。選考委員一同、応募作を拝読し、本当に沢山のことを学ばせていただきました。

    2020年度・賞選考委員長 伊東早苗




    2019年学会賞受賞作品

    奨励賞

    橋本憲幸

    『教育と他者―非対称性の倫理に向けて―』春風社  2018年.


    特別賞

    岡部恭宜編

    『青年海外協力隊は何をもたらしたか―開発協力とグローバル人材育成50年の成果―』ミネルヴァ書房  2018年.




    2018年学会賞受賞作品

    奨励賞

    芦田明美 

    The Actual Effect on Enrollment of “Education for All”: Analysis Using Longitudinal Individual Data, Union Press, 2018


    奨励賞

    内海悠二

    「生徒の紛争経験を考慮した教育効果に対する学校要因の分析―東ティモールにおける紛争と全国学力試験を事例として―」『国際開発研究』第26巻・第1号 2017年6月


    特別賞

    (会員執筆者:湖中真哉・内海成治・島田剛他)

    湖中真哉・太田至・孫暁剛編『地域研究からみた人道支援―アフリカ遊牧民の現場から問い直す―』昭和堂 2018年




    2017年学会賞受賞作品

    奨励賞

    林 裕

    『紛争下における地方の自己統治と平和構築―アフガニスタンの農村社会メカニズム―』ミネルヴァ書房 2017年

    鈴木弥生

    『バングラデシュ農村に見る外国援助と社会開発』日本評論社 2016年


    特別賞

    Shoko Yamada (ed.),

    Post-Education-for-All and Sustainable Development Paradigm: Structural Changes with Diversifying Actors and Norms, Emerald, 2016.