『開発途上国における働きかたの質に関する』研究部会(2026年7月)
『開発途上国における働きかたの質に関する』研究部会
- 代表者:高橋基樹(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
- 副代表:井手上和代(明治学院大学)
本研究部会は、2026年7月までに3回の研究会を開催するとともに、研究成果の書籍化に向けた出版企画の打ち合わせを実施しました。研究会では、開発途上国における「働きかたの質」に関わる多様な実証研究の成果をもとに活発な質疑応答・意見交換が行われ、参加者間で多様な視点や課題を共有する貴重な機会となりました。また、出版企画では、これまでの研究会の議論を振り返るとともに、2021年度から2023年度まで学会の助成を受けて活動した「アフリカ・アジアにおけるものづくり研究部会」の成果と本研究部会で得られた知見を整理・統合し、それらをどのように体系化して社会へ発信していくかについて検討を行い、今後の方針を確認しました。
活動実績
第4回研究会(JICA緒方貞子平和開発研究所との共催)
- 開催日時:2025年11月11日(火) 16:30~18:30
- 開催場所:JICA緒方貞子平和開発研究所(ハイブリッド形式)
- 開催方法:ハイブリッド開催(対面+Zoom)
プログラム
- 報告
- 報告者:日野博之氏
(米デューク大学グローバル問題研究室客員研究員。元ケニア共和国首相府経済アドバイザー、元国際通貨基金アジア太平洋事務所長・アフリカ局上級審議役などを歴任。) - タイトル:「アフリカにおける零細企業のインフォーマリティとダイナミズム:従来の政策は正しかったのか?」
- コメント
- 高橋基樹会員(神戸大学・京都大学名誉教授)
- 阿久津謙太郎会員(JICA緒方貞子平和開発研究所)
- 閉会挨拶
- – 峯陽一会員(JICA研究所長)
- 報告者:日野博之氏
概要:本研究会では、アフリカ諸国における零細企業のインフォーマリティ(非公式性)を、生産性向上や包摂的成長の観点から再評価する研究成果が報告された。従来の開発経済学では、インフォーマル企業は低生産性・低成長と捉えられてきたが、本研究では、経営者が金銭的利益だけでなく、社会的貢献や文化的価値などの非金銭的志向を重視している点に着目した。ガーナ、ケニア、ナイジェリアで実施した大規模サーベイデータを用いた回帰分析の結果、こうした志向に適合した経営形態を採用する企業ほど、成長や生産性と正の相関を持つ傾向が確認された。これらの結果を踏まえ、制度への適応を促す従来の政策に代わり、インフォーマルな志向の生産的側面を活かし、運営形態との相乗効果を高める支援策を通じて、零細企業の発展と包摂的な経済成長を実現する新たな政策の方向性が提示された。
第5回研究会
- 開催日時:2025年12月20日(土) 15:00~17:00
- 開催場所:京都大学稲盛財団記念館3階 中会議室
- 開催方法:ハイブリッド開催(対面+Zoom)
プログラム
- 報告
- 報告者:松本愛果会員(京都大学アフリカ地域研究資料センター 特任研究員)
- タイトル:「TVETの学びと働きかたの質 —ケニア・ナイロビの事例から―」
概要:第5回研究会では、松本愛果会員による報告が行われた。報告では、博士課程で実施したケニア・ナイロビにおける技術・職業教育訓練(TVET)に関する研究をもとに、TVET卒業生への聞き取り調査を通じて、「働きかたの質」について検討がなされた。質疑応答では、「働きかたの質」がどのような意味で重要なのかという、研究会の根幹に関わる問いも提起され、途上国における働きかたの質をどのような視点から捉えるべきかについて活発な議論が交わされ、研究テーマの理論的な論点が深められた。
第6回研究会
- 開催日時:2026年3月28日(土) 15:00~17:00
- 開催場所:京都大学稲盛財団記念館3階 中会議室
- 開催方法:ハイブリッド開催(対面+Zoom)
プログラム
- 報告①
- 報告者:畔柳理会員(京都大学大学院)
- タイトル:「モザンビーク・マトラ市における零細金属加工業の展開―消費市場との関わりと働きかたの質―」
- コメント
- 井手上和代会員(明治学院大学)
- 報告②
- 報告者:島田龍人会員(京都大学大学院)
- タイトル:「ジュア・カリの世界における働きかたの質―ケニア・ナイロビ市の非正規自動車修理工の事例から—」
- コメント
- 福西隆弘会員(日本貿易振興機構アジア経済研究所)
概要:第6回研究会では、畔柳会員が、モザンビークの零細金属加工業者が消費市場との関わりのなかで技術をどのように活用し、生産活動を展開しているのかを、工学的・社会的側面から検討した。続いて、島田会員が、ケニアのインフォーマルな自動車修理工における仕事の質について検討を行った。それぞれの報告に対して井手上会員および福西会員がコメントを行い、「働きかたの質」を捉える視点や分析方法について活発な議論が交わされた。
その他の活動(出版企画打ち合わせ)
2026年7月13日、研究部会発起人4名(高橋基樹会員、黒川基裕会員、渡邉松男会員、井手上和代会員)により、研究部会の成果を取りまとめる書籍出版に向けた打ち合わせを実施した。「働きかたの質」の概念整理や理論的枠組み、本書の構成・方向性について議論を行い、研究会で蓄積してきた成果を体系化するための今後の方針を確認した。
『開発途上国における働きかたの質に関する』研究部会
代表:高橋基樹(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
