人材育成委員会からのお知らせ(2021年11月)

人材育成委員会の活動報告(8月~10月)

1.委員会等

第5回委員会

2021/8/29(日):コンテスト応募状況確認。

[2021/9中旬 審査員決定、審査用紙作成、理事会で審査基準等承認]

第6回委員会

2021/10/24(日):コンテスト応募論文の審査・入賞者決定。

2.国際開発論文コンテストの審査結果

2021年3月時点の学部生を対象とした「国際開発論文コンテスト」に対して10編の応募がありました。所属大学・学部は、埼玉大学教養学部、東京大学工学部社会基盤学科、法政大学国際文化学部、中央大学経済学部・法学部・商学部・総合政策学部・理工学部(共著)、名古屋外国語大学外国語学部、関西学院大学経済学部で、和文4編、英文6編でした。審査の結果、以下の3編を入賞としました。

■最優秀論文賞(1編)奨励金・5万円

玉村優奈
「見過ごされる配慮――JICA環境社会配慮ガイドラインと異議申立案件をめぐって」

■優秀論文賞(2編)奨励金・各2万円

  • 大崎勇
    「Network Centrality, Credit Constraints and Subjective Expectation for Support from Friends: Evidence from Rural Madagascar」
  • 坂田成優
    「予備的動機の貯蓄に対する信用制約の影響―マダガスカル農村部の事例から―」

3.国際開発論文コンテスト2022の募集予定

学部生(2022年3月時点)を対象に、国際開発や国際協力に関する論文を募集します。募集締め切りは3月半ば、6月の春季大会で表彰する予定です。募集要項は、2021年末までに学会ホームページで公開します。多くの大学で対面授業中心に移行しつつありますので、学内に募集用のポスターを掲載していただける方がいらっしゃいましたら、人材育成委員会の松本(smatsumoto[アットマーク])までご連絡頂けますと幸いです。

人材育成委員会
委員長・松本悟(法政大学)




研究×実践委員会からのお知らせ(2021年11月)

この時期は、予定していた現地活動が難しくなり、研究者と実務家との有機的な連携のための土壌づくりを行なうための議論の場を提供することを中心に活動をしています。

学会内における議論を喚起すべく、全国大会においてラウンドテーブルを継続して企画、実施しております。11月の全国大会においては、以下の二本のラウンドテーブルを開催します。みなさんのお越しをお待ちしております。

  • 「研究と実践のインターフェースを探る」(2021年11月21日、第32回全国大会にて)
  • 「ODAを活かしてCollective impactを実現することは可能か? ―JICA「クラスター・アプローチ」を通じた共創の試みとその課題―」(2021年11月21日、第32回全国大会にて)

研究×実践委員会
委員長・小林誉明(横浜国立大学)




地方展開委員会からのお知らせ(2021年11月)

地方展開委員会では、地方在住の学会員の皆様の相互交流やネットワーク構築につながるように、「国際開発学会出前講座」を開設しました。12月頃に地方展開委員会ウェブサイトなどで、講師登録のご案内をさせていただく予定です。どうぞよろしくお願い申し上げます。

地方展開委員会ページ

地方展開委員会
委員長・佐野麻由子(福岡県立大学)




賞選考委員会からのお知らせ(2021年11月)

夏以降、賞選考委員会の業務が本格化してきました。

今年度の学会賞の公募が6月末を締め切りに進められ、その後、秋口から選考審査を進めてきました。11月の常任理事会と理事会において正式決定され、全国大会の総会冒頭に発表されます。

日本学術振興会が実施している若手研究者奨励「育志賞」の学会推薦区分が創設されたことを受けて、試行的に本学会からの推薦を行いました。年内に結果が判明します。結果を踏まえて、応募体制をつくりあげていく予定です。

学会賞募集や審査プロセスについて、趣旨やルールの明確化を目指して、内規改訂の検討を始めました。とりわけ、論文における学会賞のあり方について検討しています。

賞選考委員会
委員長・三重野文晴(京都大学)




賞選考委員会からのお知らせ(2024年2月)

2023年度活動報告

(1)2023年度(2022年10月~2023年9月)活動報告(事業概要)

  1. 学会賞応募作を公募・審査し、受賞作を決定・表彰した。
  2. 全国大会、春季大会において優秀ポスター発表賞の審査を実施し、受賞作を決定・表彰した。今年度から対面開催が再開したため両大会とも実地のポスター発表とその評価のプロセスに戻った。全国大会、春季大会においてそれぞれ2件の報告への表彰を行った。
  3. 学会ウェブサイトの学会賞ページを更新し、学会賞受賞者とその作品を紹介した。

(2) 事業の成果と課題

  1. ポスター発表表彰については、対面による発表と審査に復帰した。ポスター発表の件数が全国大会で9件、春季大会で17件と増加する傾向があり、また発表者参加者も多様になってきた。一方で、半日の短時間で審査の結論を出すこと、複数の賞選考委員にこの日時に時間を確保する必要があること、昼に開催される理事会との時間重複が発生すること、など運営の負荷が大きくなってきており、その解決について、検討する必要がでてきている。
  2. 2021 年度(2023 年12 月の全国大会で表彰)の学会賞事業については、著書6件、論文0 件と、応募が低迷したが、2022 年度(2022 年12 月全国大会で表彰)については著書13 件、論文2件の応募があり、大きく回復した。2023 年度(2023 年11 月全国大会で表彰予定)については、引き続き著書12 件、論文3 件の応募があり、活発な状況が継続している。
  3. 著書の出版形態が、電子出版も含めて多様化する中、どこまでを出版物書籍として取り扱うか、また、応募者に審査委員の人数分の作品の提出を印刷物によって求めるべきかなど、内規を検討する余地がある。
  4. 論文に対する表彰(論文賞)については、「論文」の定義、学会誌における審査対象論文、公募方式など運営方法に課題が多く、今後抜本的な改革の必要がある。

賞選考委員会
第11期 委員長・三重野文晴(京都大学)


国際開発学会第12 期:委員会の構成および幹事の委嘱

委員長

澤田康幸 (東京大学)

委員

小川啓一(神戸大学)
樹神昌弘(神戸大学)
佐藤 仁(東京大学)
佐野麻由子(福岡県立大学)
澤村 信英(大阪大学)
藤掛 洋子(横浜国立大学)

幹事

加治佐敬(京都大学)
幹事 山田浩之(慶応義塾大学)




広報委員会からのお知らせ(2021年11月)

前号でもご案内させていただいたとおり、メーリングリストによる告知依頼は、現在Webフォームのみから受け付けております。また、ご希望がある場合にはWebサイトにも同じ内容を掲載しますので、ご利用下さい。

国際開発学会メーリングリスト配信依頼フォーム

広報委員会
委員長・高田潤一(東京工業大学)




選挙管理委員会からのお知らせ(2021年11月)

選挙管理委員会では、学会の活動や理事および各委員会の役割などについて広く知っていただくための情報発信をしていこうとしています。公募した学生幹事4名が中心となり、委員8名で準備を進めています。ツイッター、YouTube、ナレッジベースで徐々に発信をする予定です。

ツイッターについては、11月1日からついにツイート開始しました。「学会をもっと身近に。国際開発学会(JASID)選挙管理委員会の学生幹事による学会情報発信アカウント。」ということで、アカウント名は「国際開発学会せんかん学生幹事」(@JASID19900207)ですので、是非フォロー等よろしくお願いいたします。

@JASID19900207

選挙管理委員会
委員長・杉田映理(大阪大学)




【会員限定】常任理事会議事録(第219・220回)

第219回常任理事会

  • 日時:2021年8月17日~8月25日
  • 方法:メールによる開催

審議事項

17名の新規入会者が承認された。

報告事項

5名の退会者が報告された。


第220回常任理事会(その1)

※第220回常任理事会は議事多数につき、2日に分けて開催された

  • 日時:2021年9月19日(日曜) 10時00分~12時40分 
  • 方法:オンライン
  • 出席者(敬称略):佐藤、高田、島田、杉田、三重野、松本、池上、志賀、紺野

審議事項

  1. 国際開発論文コンテストについて:
    人材育成委員会の松本委員長より、コンテストの応募及び審査の状況について説明があった。国際開発学会を支える将来の有望な「戦力」を取り込んでいくという観点から、受賞者と様々な形態で関与を継続していくことが重要ではないかとの指摘がなされた。
  2. 選挙管理委員会幹事の企画内容について:
    選挙管理委員会の杉田委員長より、学会選挙を学会員により身近なものとして感じてもらうことを目的とした、選挙管理委員会幹事の企画内容について報告があった。様々な媒体(SNS等)を活用した学会活動内容の発信については、効果を途中で適宜検証しながら進めていく必要があるとの指摘がなされた。
  3. 地方支部・研究部会の設置申請について:
    総務委員会の池上委員長より、2022年度の地方支部および研究部会の設置申請状況について報告があり、当時時点で申請がなされていた支部・部会の設置が承認された。
  4. 入会希望者および退会処分者について:
    志賀事務局長より、20名の入会希望者が紹介され、承認された。また、3年会費未納を理由とする退会処分者56名の提案がなされ、承認された(併せて18名の希望退会者が報告された)。

報告事項

  1. 学会ウェブサイト等の運用状況について:
    広報委員会の高田委員長より、今年に全面リニューアルを行った学会ウェブサイトの運用状況や、メーリングリスト・ニューズレターの運営上の問題点について報告があった。テクニカルな問題点を解決していくためのノウハウの蓄積を含め、持続可能なかたちで運営していくための工夫が必要であるとの指摘がなされた。また、高田委員長からは、ウェブサイトについて今後は魅力あるコンテンツ作りに注力していきたいとの発言があった。
  2. 今後の各種会合の予定について:
    志賀事務局長より、第32回全国大会までの理事会、常任理事会の日程および議事について報告がなされた。事務の簡素化・合理化の観点からはオンラインでの開催が望ましいとの意見があった一方、理事・常任理事が対面で会合することの意義・効果を考えるべきという意見も出された。

第220回常任理事会(その2)

  • 日時:2021年9月26日(日曜) 10時00分~12時45分 
  • 方法:オンライン
  • 出席者(敬称略):佐藤、高田、山田、道中(理事)、三重野、池上、川口、小林、佐野、島田、杉田、志賀、紺野

審議事項

  1. ブックトークセッションについて
    これまで、大会時に開催されてきているブックトークセッションの今後のあり方について、道中理事より説明があった。学会員の研究成果を広く会員に認知してもらうための活動としてブックトークセッションは重要であるという意見が出され、大会での扱い(現在の企画セッションから公式イベントとするか等)や他の学会活動との連携のあり方について、引き続き議論していくこととなった。
  2. 全国大会・春季大会について:
    大会組織委員会の山田委員長より、第32回全国大会の準備状況の説明および今年度の春季大会の実施結果と余剰金の取扱について報告があった。併せて、新型コロナ感染状況下での大会開催方法(全面オンラインか、オンラインと対面方式のハイブリッドか等)の判断指針をどう設定すべきかについても議論された。
  3. 英文学会誌の編集体制について:
    グローバル連携委員会の北村委員長より、英文学会誌の編集体制(編集委員会および諮問委員会を設置する案)について説明がなされ、了承された。
  4. 会費制度の改訂について:
    総務委員会の池上委員長より、70歳以上の会員に対する会費減額制度の創設や、会費未納がない会員への会費請求は毎年4月1日以降に実施することとすることについて提案があり、了承された。
  5. 志賀事務局長より、コロナ禍に起因する経済的困窮を理由とする2022年度の会費減免措置の対象となる会員の申請状況について報告があり、承認された。

報告事項

  • 賞選考委員会の三重野委員長より、今年度の学会賞への応募状況と審査日程について報告があった。併せて、学会賞のあり方について議論がなされ、概して応募数が少ないという現状を変えるために、どういう応募作を求めているかなどを含めた広報を行っていく必要があるという意見が出された。
  • グローバルフェスタへの参加について:
    社会連携委員会の川口委員長より、外務省主催のグローバルフェスタへ学会として参加し、会員の参加を得て「キャリア形成セミナー」と題する企画を実施する予定であるとの報告があった。

第11期・本部事務局
事務局長志賀裕朗(JICA研究所)




【会員限定】理事会議事録(第109回・第110回 )

第109回理事会

  • 日時:2021年10月11日~10月18日
  • 方法:メールによる開催

議題

(1) 審議事項

  1. キム・ソヤン会員がグローバル連携委員会の幹事に就任することが承認された。
  2. 3年会費未納による退会処分者の提案(54名)が承認された。
  3. 2022年度の地方支部・研究部会の設置案(ただし、当理事会開催時点までに申請手続きを行っていた地方支部・研究部会に限る)が承認された。

(2) 報告事項

  1. 26名の新規入会希望者および16名の退会者が報告された。
  2. 会費制度につき、10月1日時点で会費滞納がない会員の会費請求は翌4月1日以降に行うこととすること、10月から翌3月までは、新入会員の入会申請対応および滞納会員に対する会費請求業務を行うようにすること、という2点の変更が報告された。

第110回理事会

  • 日時:2021年10月21日~10月28日
  • 方法:メールによる開催

議題

グローバル連携委員会より英文学会誌の編集体制についての提案が審議事項として付議され、編集委員会および国際諮問委員会の候補者リストが承認された。

第11期・本部事務局
事務局長
志賀裕朗(JICA研究所)




横浜支部:2021年度活動報告(2021年11月)

1. 研究会等の開催

2021年度は、新型コロナウィルス感染症の感染拡大防止のため、集合形式による支部定例研究会は不開催の措置をとった。その一方で、国際開発学会の研究大会における横浜支部会員の活躍が顕著であったので、以下に記しておきたい。

オンライン開催となった国際開発学会全国大会(2021年12月5日・6日、津田塾大学)においては、藤掛洋子会員が「『パラグアイ農村女性生活改善プロジェクト』の評価にかかる一考察」と題する報告を行った。また、小林誉明会員らがセッションのコメンテータとして登壇した。

2021年6月12日にオンラインで開催された春季大会(文教大学・東京あだちキャンパス)においては、林薫会員が共通論題の企画責任者をつとめ、コロナ禍における子どもへの支援活動をテーマに報告と討論が行われた。

また、小林誉明会員の企画・司会による「研究×実践委員会」や、佐藤峰会員の企画・司会によるセッション「人が自ら動くための条件」においても活発な議論が行われた。

そのほか、横浜国立大学大学院の石暁宇会員の企画による「若手による開発研究セッション」が開催されたことも顕著な活動として記しておきたい。

 2. その他

横浜支部のホームページを漸次更新した。

横浜支部
支部長・小池 治(横浜国立大学)




東海支部(2021年11月)

2021年度活動報告

2021年度(2020年10月~2021年9月)における東海支部の活動は、つぎのとおりでした。

1 GSIDとJASID東海による公開ウェビナー

  • 題目:Schooling is Not Learning: The Impact of Learning-Adjusted Years of Schooling on Economic Growth
  • 開催日時:2020年10月1日(木曜)17時30分~18時30分
  • 開催場所:Zoomによるオンライン・セミナー(参加料は無料)
  • 講演者:Linda Glawe (University of Hagen, Germany)
  • 討論者:Carlos Mendez (Associate Professors, Nagoya University)

2 GSIDとJASID東海による連続公開ウェビナー

(1) 2020年10月29日(木曜)12時00分~13時30分

  • 題目:Regional Inequality and Convergence in Large Emerging Economies: A Distribution Dynamics Approach.
  • 講演者:Kiril Tochkov (Texas Christian University, USA)
  • モデレーター:Carlos Mendez (Nagoya University)

(2) 2020年11月26日(木曜)20時00分 ~21時30分

  • 題目:Beyond GDP: An analysis of the socio-economic diversity of European regions.
  • 講演者:Adres Vallone (Catholic University of the North, Chile)
  • モデレーター:Carlos Mendez (Nagoya University)

(3) 2020年12月3日(木曜)18時00分 ~19時30分

  • 題目:Social progress around the world: Measurement, evolution and convergence.
  • 講演者:Jesús Peiró-Palomino (University of Valencia, Spain)
  • モデレーター:Carlos Mendez (Nagoya University)

3 南山大学アジア・太平洋研究センター主催講演(共催:JASID東海)

  • 日時:2020年11月29日(日曜)13:30~17:00
  • 開催場所:Zoomミーティングにて開催

①13:30~15:00 寺﨑新一郎 (立命館大学准教授)
「カントリー・オブ・オリジン研究とカントリー・バイアス研究:ある国の製品イメージは顧客にどのような影響を及ぼすのか」

②15:10~17:00 北原敬之 (京都産業大学教授)
「日本企業の海外拠点における現地化の進化:人材の現地化・経営の現地化の視点から」

4 国際ビジネス研究学会(JAIBS)中部部会(共催:JASID東海)

(第39回中部部会研究会)

  • 日時:令和3年5月15日(土曜)16:05~17:05
  • 場所:オンライン(Zoom)にて開催(Zoomには15:55頃より入室可)

事例発表 <一般公開企画>

16:05~17:05  垣谷幸介(豊田汽車技術中心(中国)有限公司)

「中国NEV市場と日系メーカーの対応 トヨタ自動車の事例を中心に」

司会 伊藤 清道(中京大学)

5 JASID東海主催 出版記念オンライン・シンポジウム

『Education and Migration in an Asian Context (2021, Springer Publishers)』

  • 日時:2021年6月11日(金曜)16:00~18:00 (日本時間)
  • 場所:オンライン
  • 報告者: Jing Liu(編著者、東北大学教育学研究科)、Francis Peddie(編著者、名古屋大学大学院国際開発研究科)、その他各章執筆者
  • 討論者: Yi-Lin Chiang(台湾国立政治大学)
  • 司会: 染矢正和(名古屋大学大学院国際開発研究科、JASID東海副代表)
  • 言語: 英語のみ
  • 主催: 国際開発学会東海支部

本シンポジウムは、Springer出版,Economics, Law and Institutions in Asia Pacificシリーズ 『Education and Migration in an Asian Context』()の発刊を記念して開催されました。

同書では、JASIDメンバーでもあるJing Liu(東北大学教育学研究科)、およびFrancis Peddie(名古屋大学大学院国際開発研究科)が編著に携わり、アジア地域における教育と移住との多面的かつ複雑な関係性に関する諸研究がまとめられています。

各章では、中国・日本・インド・フィリピン・タイ・東ティモールの各事例が取り上げられ、国内移住、国際移住あるいは強制移住といった移住の視点から、学校選択、教育機会の提供、教育と社会的包摂、紛争後国家の生徒の学力など、教育の諸課題が議論されています。

そして本書全体として、アジアにおける教育と移住に関する課題や状況を幅広く包括的に示しつつ、アジア諸国が直面する重層的な移住問題や人間開発に対する懸念や課題を読者に伝えることが意図されています。

シンポジウム当日は、JASID東海の染矢正和先生(名古屋大学大学院国際開発研究科)をモデレーターに、Yi-Lin Chiang先生(台湾国立政治大学)を討論者に迎え、編著者および各章の著者により、アジア地域における教育と移住に関する上記の諸問題について議論が深められました。

6 若手研究者報告会の開催(JASID Tokai 2021 Conference for Young Researchers)

  • 日時:2021年8月21日(土曜)13:00~16:50
  • 場所:オンライン

プログラム:

  1. 13:00-13:30  Bangkit A. Wiryawan(名古屋大学)
    Productivity Impact of Political dynamics in a Decentralized Indonesia: The case of the 2016 centralization policy of Batam Free Trade Zone
  2. 13:30-14:00 Utumporn Jitsuttthiphakorn(名古屋大学)
    Innovation, Firm Productivity, and Export Survival: Firm-Level Evidence from ASEAN Developing Countries
  3. 14:00-14:30 Chantha Hor(名古屋大学)
    Effects of Tourism Demand Increase in the Tourism Sector: a Computable General Equilibrium Model to Cambodia
  4. 14:40-15:10 Al Muizzuddin Fazaalloh(名古屋大学)
    Regional Distribution of Foreign Direct Investment in Indonesia: An Insight from Provinces and Sectors
  5. 15:10-15:40 Asmao Diallo(同志社大学)
    The Role of Agricultural Cooperatives in Women’s Agency for Their Access to Agricultural Resources: Case Study of Baguineda in Mali
  6. 15:40-16:10 Masahiko Jin(名古屋大学)
    Determinants of Farm Household’s Vulnerability: A Case Study of Municipality of Dingalan, Aurora Province, Philippines
  7. 16:10-16:40 Truong PHAM(立教大学)
    Firm-level efficiency analysis of garment industry in Vietnam

※16:40-16:50 Overall discussion and comments

上記7名から、2名(④、⑥)を第32回・国際開発学会全国大会(金沢大学)の報告者として、JASID東海支部で推薦することとした。

東海支部
代表:梅村哲夫(名古屋大学)

副代表:染矢将和 名古屋大学
副代表: 林尚志 (南山大学)




京滋支部:2021年度活動報告(2021年11月)

京滋支部では、 2021年9月に、長浜市のNPO法人まちづくり役場が取り組む、「手作り鳥瞰図」によるまちづくりセミナーを開催しました。コロナ禍で海外調査、留学生の来日が制限されるなか、京滋地区ならではのローカルな取り組みに着目してきました。

作者である松井善和先生(元県立長浜高校長、美術科・社会科教諭)によれば、手作り鳥瞰図は、「①ネット上に載っている地図と比較すると手書きの場合、温かみがあり描き手の想いを載せられる②大きく載せたい町は大きく描くことができ、山間部の集落は手前の山で見えない場合があるが、デフォルメをして描くことが出来る。」という利点があるとのことです。

一方、「紙に描いていく情報は描き手が事前に把握していなければならない」という手間がかかる面があり、長浜の鳥瞰図の作成までには、約3年の調査期間を費やしています。

参加した会員からは、防災マップなどへの応用の可能性、他の地域への応用の可能性などの質問も出ました。松井先生によれば、防災マップへの応用も十分可能であること、他の地域としては、甲賀市での鳥瞰図を検討中であることなどが議論されました。

2021年10月以降の京滋支部の取り組みについては、新支部長に立命館大学国際関係学部の渡邊松男教授をむかえ、アフターコロナを見据えた活動計画を立案中です。新支部長との引き継ぎ作業中で、2022年1月からは新体制が発足予定です。

第6波の襲来も懸念されますが、Zoomでの活動にくわえ、対面も含めた支部活動の検討も行っています。とくに修士、博士の大学院生を大会発表に促すことを第一に、院生のための対面も含めた研究交流会を実施していく予定です。

コロナ禍では、本来9月に入学であった外国人留学生は、入国延期を余儀なくされていましたが、幸い、JICA枠の院生の入国も順次再開されており、不安を抱いている留学生のためにも、支部レベルでの研究交流会は開催が待たれています。

今のところ、2022年1~3月には支部総会を再開し、大学院生の研究交流を行ない、2022年の春季大会への参加を促す予定です。これらの成果については次回以降のニュースレターで報告したいと思います。

京滋支部
支部長・黒川清登(立命館大学)




広島支部:2021年度活動報告(2021年11月)

本年度は、昨年度に引き続き、九州地域を含む西日本地域の国際開発・協力に関わる研究者、実務者、学生を集めて議論する、JASID第8回西日本地区研究発表会(於:九州大学)を開催した。

当初の計画では、九州大学のホストによる対面での開催予定だったが、COVID-19の影響により昨年同様オンライン(Zoom)開催となった。

参加大学は、九州大学(本年度のホスト校)と広島大学だったが、開催にあたり参加を呼び掛けたAPU(立命館アジア太平洋大学)、長崎大学、熊本大学、山口大学のうち、APUからの報告参加者があったため、3大学による発表会となった。

開催日時は8月30日午前9時~午後5時、報告総数は47本(4セッション)となり、参加者はのべ150人を超える数であった。 本年度の発表会では九州大学側の提案により、各セッションでのベストプレゼンテーション賞を各2名の座長の採点により選考し、閉会式の際に表彰した。なお、受賞者には景品が贈られた。

広島支部
支部長・市橋勝(広島大学)




関西支部:2021年度活動報告(2021年11月)

関西支部では、国際開発の課題克服に貢献しうる研究を展開していくことを目的に、2021年度は国際開発・国際協力に関するさまざまな分野の専門家を、国際機関、政府機関、学術機関から招聘して研究会を中心に活動を行った。

本支部が開催する研究会では、現在、世界的な問題となっているコロナ禍、また、コロナ後における国際開発・国際協力に関する議論も精力的に展開した。具体的には、第149~156回の研究会をオンライン(Zoom)で開催したので、その内容について、以下のとおり報告する。

第149回研究会

  • 日時:2021年8月10日(火曜)17:00-19:00
  • 発表テーマ:Innovation and New Partnerships in International Development after the Post-Covid World
  • 発表者:Dr. Mariko Gakiya, Former Shine Advisory Board Member, Harvard T.H. Chan School of Public Health
  • 参加人数:32名
  • 言語:英語
概要:

本研究会では、ハーバード大学の我喜屋まり子博士を招聘し、「Innovation and New Partnerships in International Development after the Post-Covid World」をテーマに講演をしていただいた。我喜屋博士はまず、グローバル社会においての重要課題である人的資源開発、国際開発、パートナーシップ強化に関する国際的動向について説明し、持続可能な開発と福祉をめざし「学習から技術革新・協調・パートナーシップ、そしてより質の高い公益財」にいたる社会システムが形成されつつあることについて言及した。

また、COVID-19感染拡大後の傾向として、オンラインによる多様な学習機会の整備、経済成長を見据えたニーズの高いスキルを習得できる学習環境の拡大、官民など多様なアクターの連携強化を挙げた。とくに、パートナーシップ強化に関してはSDG 17がパートナーシップの活性化を掲げている点、技術革新や国際開発は協調関係のなかで加速する点、加えて信頼関係構築の重要性を明らかにした最新の研究報告をふまえ、多様性・公正・インクルージョンを考慮した組織形成の必要性を強調した。

講演後には我喜屋博士と参加者とで多岐にわたる話題に関して活発な議論が行われただけでなく、我喜屋博士から若手研究者に対してグローバルに活躍するためのアドバイスが語られる場面もあり、参加者が新たなポスト・コロナ時代の技術革新、パートナーシップ、人的資源開発について深い知見を得た大変貴重な機会となった。


第150回研究会

  • 日時:2021年8月17日(火曜)17:00-19:00
  • 発表テーマ:Education Under the COVID-19 in Yemen
  • 発表者:Dr. Hamound Al-Seyani, Advisor, Ministry of Education, Yemen
  • 参加人数:34名
  • 言語:英語
概要:

本研究会では、イエメン教育省アドバイザーとして長年イエメンの教育発展に寄与されているHamound Al-Seyani博士を招聘し、「Education Under the COVID-19 in Yemen」をテーマに、イエメンにおける教育制度・状況について新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大以前・以後の両観点から講演をしていただいた。

冒頭では、同国における社会問題は、紛争を筆頭にCOVID-19感染拡大以前から中高等教育の就学率の低さや全教育段階での男女差、校舎の再建、教員のストライキなどといったかたちで教育にも大きく影響してきたことが説明された。

つづいて、コロナ感染拡大以後のイエメンについて言及し、第一波(2020年4月)、第二波(2021年2月)に続き、現在の第三波とイエメン全土で感染拡大しているCOVID-19が、国民の社会生活に深刻な打撃を与えていることは明らかにされているものの、政府発表の感染者数や死亡者数は実際の10%以下であるという指摘がなされた。

また、同国教育省もCOVID-19感染拡大による教育のアクセス・質への影響を問題視しており、サナとアデンにある南北両政府は共通したコロナ対策教育プランを策定し、コロナ禍においての教育改善に尽力していると強調した。とりわけ重要な課題として、学校閉鎖期間も教育環境を担保できるICT導入を挙げ、SDGs達成には多くの支援が必要であることを訴えた。

講演後にもイエメンの複数政府での政策遂行やout of school childrenの軍への入隊についてなど多岐にわたる参加者の質問に明快に回答がなされ、参加者がイエメンの教育現状について理解を深める意義の大きい研究会となった。


第151回研究会

  • 日時:2021年8月24日(火曜)17:00-19:00
  • 発表テーマ:Ugandan Journey to Achieve SDGs under the COVID-19
  • 発表者:Dr. Albert Byamugisha, Senior Technical Advisor, Office of Prime Minister, Uganda
  • 参加人数:32名
  • 言語:英語
概要:

本研究会では、ウガンダ内閣府のシニア・アドバイザーをされているAlbert Byamugisha博士を招聘し、「Ugandan Journey to Achieve SDGs under the COVID-19」をテーマに講演をしていただいた。

Byamugisha博士は、ウガンダ政府がこれまでにSDGs達成に焦点をおいて政策立案・実施を行ってきたことに触れ、政府組織の形成、国家・地方レベルでのリーダーシップ養成、国際機関や民間セクター・地域社会とのパートナーシップの強化などの多様な政策の結果、2030年までの達成目標の50%超を現時点で達成されており、アフリカ52か国中18位と評価されていることを強調した。

現在のCOVID-19感染拡大の影響としては、経済成長率の前年比3.9%減少に加えてロックダウンによるオンライン教育や在宅の推進、労働時間の減少、移動の減少などを挙げ、とくに社会の格差を深刻化させた点が憂慮されると指摘した。

一方で、COVID-19によるさまざまな社会変化は持続可能な社会やバランスの取れた経済成長の重要性を市民に訴えかけるものでもあったとし、今後も2030年の目標に向けてコロナ感染拡大からの復興プランの実施、SDGs関連政策のe-ガバナンスや地方分権を促進していく方針を示した。

関西支部が今年度のテーマとして掲げている「コロナ禍、また、コロナ後における国際開発・国際協力」について、ウガンダ政府の内閣府アドバイザーと実際に議論を交わすことができた本研究会は、参加者にとって大変意義深い場となった。


第152回研究会

  • 日時:2021年8月27日(金曜)17:00-18:00
  • 発表テーマ:SDG4 and National Policy Implementation under the COVID-19 in Cambodia
  • 発表者:Mr. Sothea Lim, Director-General, Ministry of Education, Youth, and Sports, Cambodia
  • 参加人数:28名
  • 言語:英語
概要:

本研究会では、カンボジア教育青少年スポーツ省政策計画局の総局長として長年にわたってカンボジアの教育政策と計画に携わっておられるSothea Lim氏を招聘し、「SDG4 and National Policy Implementation under the COVID-19 in Cambodia」と題する講演をしていただいた。

はじめに、MDGsからSDGsへの転換のなかで、カンボジアの国家戦略Vision 2030がどのようにSDGsの達成に寄与していくのかが説明された。とくに、教育セクターは、国家戦略において重要な人的資源開発に貢献する分野であり、カンボジアではSDG4達成に向けた教育戦略やロードマップが作成されていると紹介があった。

また、国家レベルの中長期目標を展開するだけでなく、地方・学校レベルでの短期の計画と連携しながら政策を進めていくことの重要性が指摘され、カンボジアにおける教育省と地方行政の繋がりが紹介された。

つづいて、Lim氏はそうしたビジョンの実現をめざすなかで、COVID-19に教育省としてどのように対応していくのかという展望について解説した。SDG4が掲げる公正なアクセスや質の高い教育を阻む課題に対して、テレビやラジオ、ウェブを通じた遠隔授業体制の拡充や学校・教員への積極的なサポートなどの実施策が挙げられた。

また、子どものワクチン接種の推進や健康を守るためのガイドラインを作成することで、コロナ禍が明けた後に子どもたちが安心して教室へと戻ってくることができるようにと準備が進められていることに言及された。

講演後にも参加者からの積極的な質問に対して一つ一つ丁寧に回答がなされ、参加者がカンボジアにおける教育戦略の動向に理解を深める意義深い研究会となった。


第153回研究会

  • 日時:2021年9月7日(火曜)17:00-19:00
  • 発表テーマ:Education in Emergencies: Education for Refugee and Migrant Children in Egypt
  • 発表者:Ms. Marie Kunimatsu, Education Officer, UNICEF Sudan
  • 討論者:Dr. Asayo Ohba, Associate Professor, Teikyo University 
  • 参加人数:43名
  • 言語:英語
概要:

本研究会では、現在ユニセフ・スーダン事務所で勤務されている國松茉梨絵氏を招聘し、「Education in Emergencies: Education for Refugee and Migrant Children in Egypt」をテーマに、國松氏のユニセフ・エジプト事務所での経験に基づいた緊急時の教育支援について講演をしていただいた。

講演ではまず、緊急時の教育や緊急事態に関する定義や背景について、またエジプトにおける難民の現状と緊急時の教育支援について説明がなされた。國松氏は、緊急援助には突発的なものと長期的なものの大きく2つがある点、ユニセフはその両援助を行っている点に触れ、援助時における他のセクターや機関、NGOとのパートナーシップの重要性についても強調した。

エジプトの場合、難民の約半数がシリア難民であり、エジプト政府はシリア難民の子どもたちの公教育システムへの統合に積極的な姿勢を見せているものの、シリア式の教育制度に基づくコミュニティ・スクールへのニーズも高い点を指摘し、緊急時の教育支援の課題と展望について参加者に多くの知見を与える講演となった。

講演後には討論者として大塲麻代博士を迎え、コミュニティ・スクール閉鎖の背景や國松氏自身のユニセフでの経験についてなどの質問・議論がなされた。今回の研究会は、参加者43名と多くの学会員にとって高い関心のある議題であり、アフリカにおける緊急支援、教育開発に携わるお2人を招聘した大変貴重な機会であった。


第154回研究会

  • 日時:2021年9月14日(火曜)17:00-19:00
  • 発表テーマ:Education in Myanmar under the COVID-19 and Military Coup
  • 発表者:Dr. Natsuho Yoshida, Assistant Professor, Takasaki City University of Economics
  • 討論者:Ms. Thet Mon Myat Myint Thu, Lecturer, Yangon University of Education
  • 参加人数:26名
  • 言語:英語
概要:

本研究会では、高崎経済大学の吉田夏帆先生とヤンゴン教育大学のThet Mon Myat Myint Thu先生を招聘し、「Education in Myanmar under the COVID-19 and Military Coup」をテーマとした講演会を開催した。

吉田先生はまず、ミャンマーにおけるCOVID-19感染拡大の影響として、対面授業の中止と公立学校においてのオンライン授業の未実施について言及し、公立・私立・インターナショナル校での教育格差の拡大が問題視されていることを背景とした、子どもたちの学習に対するCOVID-19感染拡大と軍事クーデターの影響についての研究発表をされた。

吉田先生は本研究の結果として、社会経済的地位の低い家庭の子どもは高い家庭の子どもよりも初等中等学校を退学しやすく、貧困家庭であればあるほど子どもたちの教育機会へのCOVID-19感染拡大と軍事クーデターの影響が大きくなる可能性を示した。

また、Thet Mon Myat Myint Thu先生は、社会経済的地位の差による基礎教育の格差拡大についての吉田先生の議論に同意したうえで、児童労働の増加や早婚、ICT設備の不足などの課題も挙げた。また、市民の反軍事政権運動として、教職員・児童・生徒・学生が学校や大学への出勤・通学を拒否しているという状況についても強調した。

その後の質疑応答ではミャンマーにおける教育の現状や今後の展望についてなど多くの質問が挙がり、COVID-19感染拡大と軍事クーデターがいかに教育の機会と質に多大な影響を与えているか、多くの知見を深める有意義な研究会となった。


第155回研究会

  • 日時:2021年9月23日(木曜)9:00-11:00
  • 発表テーマ:World Bank Support under Covid-19 in Latin America
  • 発表者:Dr. Marcelo Becerra, Senior Economist, World Bank
  • 討論者:Mr. Danilo Leite, Former Director, Ministry of Education, Brazil
  • 参加人数:31名
  • 言語:英語
概要:

本研究会では、世界銀行シニア・エコノミストのMarcelo Becerra博士を招聘し、「World Bank Support under Covid-19 in Latin America」をテーマとして講演をしていただいた。

まず、Becerra博士はラテンアメリカ・カリブ諸島におけるCOVID-19危機と学校閉鎖について言及し、ラテンアメリカは影響が多大だった地域の一つであり、学校閉鎖がニカラグアを除くすべての国で実施され、1億7千万人の子どもに影響があったことを述べた。

そのような多大な影響に対し、各国政府並びに国際機関などはラジオやその他媒体を用いて教育を継続させるため尽力してきたものの、インターネット環境が整った家庭は限られており、とりわけ脆弱な子どもたちの教育格差を拡大してしまう点を考慮すると、オンライン授業を対面授業の完全な置換として導入することは困難であると強調された。

講演後には討論者として、元ブラジル教育省局長のDanilo Leite氏を迎え、コロナ感染拡大下においていかにして子どもたちに質の高い平等な教育機会を提供できるのか、また世界銀行はこのコロナ感染拡大によるプロジェクト実施の困難性にどのように対応しているのかなど多岐にわたる議論が交わされた。

本研究会はラテンアメリカ及びカリブ諸国でのCOVID-19の教育への影響とそれに対する世界銀行の支援について理解を深める大変貴重な機会となった。


第156回研究会

  • 日時:2021年9月30日(木曜)17:00-19:00
  • 発表テーマ:Prospects and Challenges of Japanese FDI in Bangladesh
  • 発表者:Dr. Abdullah Al Mamun, Assistant Professor, University of Dhaka
  • 討論者:Dr. Shiro Nakata, Senior Economist, World Bank
  • 参加人数:102名
  • 言語:英語
概要:

本研究会では、ダッカ大学のAbdullah Al Mamun博士を招聘し、「Prospects and Challenges of Japanese FDI in Bangladesh」をテーマに講演をしていただいた。

Mamun博士は、バングラデシュにおいて拡大傾向にある日本の海外直接投資(FDI)がもたらす効果として、雇用の創出、インフラの開発、経済成長、貧困の軽減などを挙げ、これらはバングラデシュの持続可能な開発目標(SDGs)の達成に寄与するという展望について言及した。

また、日本側にもたらされる効果として、東南アジア諸国連合諸国並びに南アジア地域協力連合諸国とベンガル湾産業成長地帯(BIG-B)の関係強化、公海や航空ルートの利用拡大、豊富な天然ガス・水・肥沃土の利用、巨大な労働市場を背景とする低コストによる生産、著大な消費者市場の存在を強調した。

日本によるFDIの課題としては、バングラデシュの低い「ビジネスのしやすさ指数」(世界銀行発表)、期待ギャップ、輸入時の電子送金の不可、銀行における海外企業への貸付制限、税制制度などがあるとした。

講演後には、世界銀行シニア・エコノミストとしてバングラデシュの支援に携わってこられた中田志郎博士を迎え、日本からバングラデシュへのFDIを中心に、多岐にわたる論点について活発な議論が行われた。本研究会はMamun博士の講演並びにその後の議論を通じ、てバングラデシュにおける日本のFDIの展望と課題について深い知見を得ることができた大変意義深い研究会となった。

関西支部
支部長・小川啓一(神戸大学)
副支部長・關谷武司(関西学院大学)




活動報告『ODA の歴史と未来』研究部会(2021年11月)

本研究会は日本の開発協力の歴史を学び、そこからよりよい未来を開拓するためのアイデアを様々な世代の研究者や実務家、学生が議論する場の提供を目的に設置された。初回会合では20名近くの参加者を得て、2020年11月15日に開催され、研究部会の方向性や体制について話し合いをした。

その結果、部会のウェブサイトの立ち上げ、「日本の開発協力の歴史」(東京大学出版会)の輪読と議論、日本のODAで足跡を残された先達に対するオーラルヒストリーなどを活動の柱とすることを決定した。

正式発足してから1月24日には第二回研究会を開催し、第一部ではメンバーである下村恭民会員(法政大学名誉教授)から新著『日本型開発協力の形成』(東京大学出版会、2020年)の主要な論点についてご報告いただき、参加者全員で議論した。

また第二部では峯陽一会員(同志社大学)、浜本篤史会員(早稲田大学)から、それぞれオーラルヒストリーの方法論について、これまでの経験を踏まえたご報告をいただいた。その後、

  • 第三回研究会:会の目的や問いの共有(2021年3月20日)
  • 第四回研究会:佐藤仁、高橋基樹、汪牧耘による研究報告(2021年5月30日)
  • 第五回研究会 :近江加奈子、大山貴稔による研究報告(2021年7月31日)
  • 第六回研究会 :黒田一雄、キム・ソヤンによる研究報告(2021年9月25日)

と会を重ね、随時、議論の概要を部会ウェブサイト() にアップデートしてきた。毎回、20名程度の参加者を国内外から得て、若手からシニアに至る幅広いメンバーが活発な議論を行っている。

またオンライン研究会とは別に、部会主導「オーラルヒストリー」を企画し、すでに下村恭民先生(法政大学名誉教授)、廣野良吉先生(成蹊大学名誉教授)、星野昌子先生へのインタビューを完了し、順次、テープ起こしを実施している。

『ODA の歴史と未来』研究部会
代表:佐藤仁(東京大学東洋文化研究所)




最終活動報告『内なる国際化』研究部会(2021年11月)

本研究部会は、2021年9月で3年間の活動を終了した。活動後半の1年半は、COVID-19の影響により当初の計画通り実施できない活動もあったが、3年間を振り返ると、学会メンバーの皆様から、多大な支援と協力をいただいた。本研究部会で実施した調査・勉強会を具体的に振り返る。

2019年度は、飲食店およびコンビニで働く外国人留学生に関する調査・勉強会、医療通訳を含む在日外国人の医療に関する調査・勉強会、ベトナムにおける技能実習候補生に関する調査・勉強会を実施した。

2020年度は、日本における難民に関する勉強会、外国人留学生と地域社会に関する調査・勉強会を実施した。

2021年度は、COVID-19の影響で、対面で勉強会や調査を実施することは困難な状況になり、予定していた活動が、十分できたとは言い難いことが反省点である。しかし、上記の調査・勉強会で行なってきた活動を、中途半端に終わらせるのではなく、他の研究会や科学研究費などで実施する研究活動へとつなげる目途を立てることができた。

本研究部会の活動は、研究者だけでなく、企業・地方公共団体・NPO/NGOで活躍する人々と協力関係のネットワークを構築することができたことに大きな意味があった。さまざまな立場の人々と協働することの大切さは、今後の研究活動においても胸に刻んでおきたい。最後に、本研究部会を理解し、支援してくださった皆様に、心より感謝申し上げます。

『内なる国際化』研究部会
代表:小林 かおり(椙山女学園大学)




活動報告『子どもの安全保障への開発アプローチ』 研究部会(2021年11月)

「子どもの安全保障への開発アプローチ」研究部会では、「人間の安全保障」について、子どもに焦点を絞った「子どもの安全保障」の概念について議論し、研究部会メンバーのそれぞれの研究領域における事例研究を発表し、政策提言にもつながるような理論的枠組みを構築することを目指して研究活動を進めようとしている。

2021年10月17日(日曜)14:00-15:30、「子どもの安全保障〜日本において社会的に周縁化されやすい子どもたち」と題して研究会を(オンライン)開催した。

まず、研究部会代表者である勝間 靖会員(早稲田大学、国立国際医療研究センター)が、企画者として、事例研究を発表するうえでの共通の枠組みを提示した。そして、高柳 妙子会員(早稲田大学)が「沖縄に住むムスリムの子どもたち」と題して、中村 安秀会員(日本WHO協会)「生まれてくる子どもの安全保障〜日本における母子手帳の経験から」と題して発表した。質疑応答と議論が活発におこなわれた。

『子どもの安全保障への開発アプローチ』 研究部会
代表:勝間 靖(早稲田大学)




活動報告『開発と栄養改善』研究部会(2021年11月)

去る8月に、以下のとおり第8回「開発と栄養改善」研究部会を実施した。マルチセクターによる栄養改善が国際的に推進されるなか、本部会ではJICAの平岡専門員を迎え、おもに農業セクターが栄養改善において果たす役割について発表いただいた。

  • 日時:2021年8月27日(金曜)17:30-19:30
  • 場所:Zoom(オンライン)開催
  • 発表テーマ:「農業セクターに必要なパラダイムシフトとJICAの案件形成」
  • 発表者:平岡洋 氏(JICA経済開発部・国際協力専門員) 

部会当日は、学会員を中心に大学関係者から開発実務者まで15名の参加があり、活発な議論がなされた。

発表概要

「パラダイムシフトとは」

従来、農業セクターにとっての目的は、食料不安を解決するためカロリーの摂取量を増やすことだったが、栄養改善において微量栄養素欠乏も含むあらゆる形態の栄養不良を解決するため、どの栄養素摂取のために何を生産するか、が問われるようになってきた。

栄養改善を達成するためには食料安全だけでなく、補完食や完全母乳等の適切なケアと保健サービス・衛生環境の改善が必要であるため、マルチセクターによる取り組みが求められる。

「食料システムとは」

  • 食料の生産、加工、流通、調理、消費、そして、それを通して生じる社会経済的・環境的な結果に関する、すべての要素を含む。栄養改善の実現のためには生産だけでなく、各個人の口に食料が届くまでの経緯が保障される必要があり、農業セクターはその経緯を支援する役割をもつ。
  • 母子などの特定の裨益者に必要な栄養素を供給することで、農業セクターが効果的に栄養改善に貢献できる。
  • 栄養素の需給ギャップを埋めるため、JICAではIFNAを通じて、アフリカ諸国をはじめとしてセクターを超えた栄養改善のための事業を進めている。

おもな議論点

食料を食べる前に、何を食べるかを選ぶ消費者としての行為があると考えられるが、民間企業はどのように位置づけられるのか。マーケティングに関するアクターも含むことが重要なのではないか。

民間企業にとっては、従来の不健康な食物からヘルシーフードを提供するビジネスチャンスとも言える。マーケティングにおいて、栄養改善に貢献する食料を流通させるためのセンシタイゼーションも必要となる。


農業生産に関する政策やプロジェクトのもとで、どのように栄養改善コンポーネントを組み合わせられるのか。また、生産者や流通業者にとって特定の栄養素の推進が可能なのか。

昨今、パームオイルがWHOにより規制させるという働きかけもあり、規制や補助金を通じて消費者や流通業者が応じることが考えられる。食生活や習慣を変える消費者側の意識変容には時間がかかるが、戦後日本で学校給食を通じて食習慣が浸透していったように不可能ではない。農家にとっても、同じ栽培面積で栽培する作物の栄養価と、市場価値が変わるというのはインセンティブがあるのでは。


セクターを超えた栄養素を通じた栄養改善への理解とは。

栄養素を通じた栄養改善に反応するのはむしろ保健セクターで、農業セクターの活用方法として良い反応がある。実際、保健セクターが行なう栄養サプリメントの配分システムは未発達な部分があり、食物で不足した栄養素を補える根拠は十分あるのではないか。

農業セクターとして新たな食物を推進しようとしているのではなく、日ごろ市場で入手できるものをベースとしている。アクセスできる食は同じだが、その構成・分量を変えていくことで、栄養改善に貢献することができるのでは。

『開発と栄養改善』研究部会
代表:樽本(服部)朋子(NTCインターナショナル株式会社)




活動報告『開発とビジネス』研究部会(2021年11月)

《2021年7-9月期》

本部会は民間企業、とりわけ日本の中小企業アクター(場合によっては大企業、多国籍企業も含む)がどのような形で「途上国の開発問題/社会問題」解決に貢献できるのかを、具体的な取り組み事例の検討を中心に行うことを目指している。2021年7-9月期は、2回研究会を開催した。

まず1つめに、2021年8月24日(木曜)、午後1時30分~午後5時にオンラインの形で開発とビジネスに関連した研究を行なう若手研究者を対象としたブートキャンプを、学会員から参加者を募り実施した。

本ブートキャンプは、近年、国際開発学会の若手会員のなかで、国際開発とビジネスとを結びつける分野の活動に注目し、これを論文のテーマに設定している人も増えているが、大学院等で研究する場合、国際開発、国際貿易、国際経営、さらにはボランティア学など、さまざまな指導教官がいるなかで、適切な指導が受けにくいという現状に対処するものである。

また、国際開発学会の春季大会、全国大会などで研究報告をしても扱うテーマごとに「教育」「保健」「農村開発」などのセッションに配置されてしまい、同じような切り口で研究している人とうまく情報共有できないという問題が散見されていた。

研究部会では、若手研究者を中心にこの「開発とビジネス」分野を研究テーマとしている方からの話題提供を求め、これに対してシニア、中堅研究者がコメントをする「ブートキャンプ」を試行することとした。

会の進行および主コメンテーターとして佐藤寛氏(ジェトロ・アジア経済研究所)が助言を行なったほか、下記の開発とビジネスの分野に経験豊かな各研究者がコメントおよび指導を行った。吉田秀美氏(法政大学)、下田恭美氏(早稲田大学)、小林かおり氏(椙山女学園大学)、功能聡子氏(ARUN)、八鍬(山崎)ひかり氏(元ボーダレスジャパン)。

参加した若手研究者及び、テーマは下記のとおりであった。

発表1.「世帯内ジェンダー格差とデジタルテクノロジー -バングラデシュおける賃⾦⽀払いのデジタル化の事例から」

綿貫竜史氏(名古屋大学国際開発研究科博士課程)

発表2.「The mechanism of promoting corporate responsibility to respect for human rights through international norms – how it works in Africa」

井上直美(東京外国語大学サステナビリティ研究博士課程)

発表3.「ウガンダの難民起業家の成功要因について」

中村恵理氏(慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科博士課程/ 独立行政法人国際協力機構)

発表4.「日本の民間教育団体の海外展開史-民営化する国際教育協力との関係に注目して-」

朝倉隆道氏(株式会社富士通総研、一橋大学大学院)

参加者からは、経験・知識が豊富な、いつもは指導を受けることが出来ない先生方から助言をいただけたこと、開発とビジネスという共通の分野で研究を進める若手研究者から学ぶことが出来たこと、および知り合えたこと、実務と学術の両方の視点をつなげて議論できたこと、多岐に渡る話題を議論できたこと、等が非常に有意義であったとの感想をいただいた。

気軽に発表し、分野横断的に意見交換できる会をもっと企画して欲しいという声も多くあがった。今回は、代表の佐藤のアイデアでこうした会を開催したが、今後も、同様の企画を何らかの形でできないか検討することに価値があることが確認できた。


ミズノヘキサスロンのベトナム公教育への導入について

-対立事物の相互浸透の法則-

2回目は、2021年9月24日(金曜)に、開発途上国の抱える課題に、本業を通じて取り組む企業の事例を学ぶオンライン研究会を開催した。企業の担当者に話をうかがい、参加者全員で意見交換を行なった。研究会のタイトルは、「ミズノヘキサスロンのベトナム公教育への導入について-対立事物の相互浸透の法則-」。

講師には、森井征五(もりい・せいご)氏(ミズノ株式会社・総合企画室・アジアグローバルセールスマネジャー)をお招きした。なお、研究部会の開催時間は、通常の昼間の研究部会には参加できないとの会員の声を反映し、ランチタイムに開催した。参加者は、合計で21名であった。

ミズノ株式会社のベトナムでのヘキサスロン運動プログラム事業の背景は次のとおりである。ベトナムでは、2021年9月から、40数年ぶりに初等義務教育「学習指導要領」の改訂と、その運用の開始が予定されている。ミズノ株式会社はベトナム教育訓練省と、同社ヘキサスロン運動プログラムを新学習指導要領に採用する「協力覚書」を2018年10月に締結し、本プログラムを、同国の学習指導要領へ導入すべく、その採用に向けた活動を行なっている。

当日は、まず同社の事業概要を説明するムービーを使用し、その後に森井氏から、事業概要と現状の取り組み内容をご報告いただいた。そして、今後想定されるサービスの価格や知的財産権を含めたサプライチェーン、事業収益化への課題、日越関係機関との合意形成や連携のあり方について議論を進めていただいた。

同社は、急速な経済成長が進むベトナムで問題となっているこどもの肥満、そこからつながる健康被害等のリスクを社会課題と捉え、この課題を解決するための鍵は、限られた時間とカリキュラムで行なわれる体育授業にあると特定した。

同社のプログラムは、学習指導要領に採用されることで体育授業プログラムを多様化させ、子どもの前述の問題を解決することに役に立つものであるとのことであった。現に、報告では、ベトナムの小学校が十分に体育授業を行うためのフィールドを確保できないままに、ごく短時間の簡単な運動の機会しか与えられていないという現状が、ビデオで報告された。

森井氏からは、ベトナム政府との交渉、関係各所との役割分担、価格や知的財産権の商流に関する各所との合意形成活動、現地日本大使館との連携等における、難しさや事業を進める喜び等が共有され、参加者との意見交換が行われた。

参加者からは、同社がベトナムで事業を推進する理由やきっかけについての質問、本事業の競合に対する優位性や模倣品への対策、そこから派生して知的財産権をベトナムのようなコントロールの難しい国で守りつつ利益を確保する事業を進めるための工夫に関する意見交換が行われた。

また、本事業が当初、公的資金の援助を受けつつパイロット事業をベトナムで始めたことに関連し、今後そうした公的資金の支援を受けずに利益事業として成り立つためには何が必要か、利益確保するためのマーケット規模は十分か、ベトナム以外のマーケットへの進出予定等について参加者から質問が挙がり、これに関する意見交換が行われた。

また、ODA事業として進めた経験から、国際協力分野に経験の厚いコンサルタントと企業がどのように協力し、お互いの得意分野を使い事業拡大の可能性を広げることが出来るか、ということについて、コンサルタントと企業の双方の立場からの率直な意見を聞くことが出来た。

意見交換の話題は、同社のサプライチェーン・マネジメント、SDGsに関する取り組み、CSRに関してまで広がった。短時間ではあったが、非常に密度の濃い意見交換を行うことが出来た会であった。

「開発とビジネス」研究部会
代表:佐藤寛(ジェトロ・アジア経済研究所)




活動報告『開発のレジリエンスとSDGs』研究部会(2021年11月)

「開発のレジリエンスとSDGs」研究部会の活動としては、来る11月20・21日に開催予定の国際開発学会第32回全国大会において実施する、ラウンドテーブルに向け準備を進めてきた。  

11月20日の午前のセッションで行なわれる予定のラウンドテーブル「開発レジリエンスとSDGsの今後―新型コロナウイルスパンデミック以後の課題―」は、「開発のレジリエンスとSDGs」研究部会による、第2回目のラウンドテーブルとなる。

今年の春季大会のラウンドテーブルの議論をふまえ、全国大会ではパンデミック以後の時代に焦点をあて、開発レジリエンスとSDGsの課題について、大門毅会員(早稲田大学)、大谷順子会員(大阪大学)、乙部尚子会員(ジェンダ-、労働、開発コンサルタント)そして、関谷雄一(東京大学)から話題提供をし、討論者に野田真里会員(茨城大学)を迎え、フロアも交えて双方向的な討論を展開する。

話題提供者の発題は下記のとおりである。

  • 関谷雄一「ハイブリッド調査の模索:レジリエントな研究調査を目指して」
  • 乙部尚子「新型コロナウイルス禍に於けるジェンダーと労働問題」
  • 大谷順子「中国を見て考える」
  • 大門毅「レジリエンスの多元的把握と比較制度分析」

主要な論点としては、下記のような点が挙げられるだろう。

  1. パンデミック以後の開発レジリエンス
  2. パンデミック以後のSDGsの課題
  3. 貧困、格差、インフォ―マリティーのなか、取り残された人々の今後
  4. その他の課題

皆さんのご参加をお待ちしております。

『開発のレジリエンスとSDGs』研究部会
代表:関谷雄一(東京大学)




活動報告『市場・国家との関わりから考える地域コミュニティ開発 』研究部会(2021年11月)

第8回研究会

  • 日時: 9月25日(土曜)14:00-16:00
  • 場所: オンライン
  • 報告:「子どもの視点から考える社会的結束(Social Cohesion)」松田 裕美(元ユニセフ・ヨルダン事務所)
  • コメンテーター:平井 華代(岩手大学)

概要

社会的結束(Social Cohesion)は、各国政府や国際機関が重視するテーマになっている。ただし、それを測るための国際的な統一指標は存在しない。また、これまで国連や世界銀行、研究機関等が指標の構築を試みてきたが、大半が収入の格差や司法へのアクセスといった、大人を念頭に置いたものであり、子どもを対象とした研究は見当たらない。

そこで、報告者の松田会員に社会的結束の概念や定義のレビューをしていただいたうえで、ユニセフヨルダン事務所にて子ども対象の社会的結束の定義と指標の構築について、オックスフォード大学と協力して進めたご経験を話していただいた。その後、平井会員に、子どものための社会的結束の指標を日本で構築する意義を中心としたコメントをいただき、参加者との討論を行なった。

『市場・国家との関わりから考える地域コミュニティ開発 』研究部会
代表:真崎克彦(甲南大学)




活動報告『人の移動と開発』研究部会(2021年11月)

下記の研究会を行いました。敬称略で報告します。

第9回研究会「『移民力』を発揮する:渡航先と出身国における在米ケニア・ギクユ人の生活実践」」

  • 日時:2021年9月5日(日曜)10:00-12:00
  • 参加者:約90名(学会員、外部)
  • 主催:上智大学アジア文化研究所、国際開発学会「人の移動と開発」研究部会
  • 司会・進行:田中雅子(上智大学アジア文化研究所)

報告1:「移民として生きる:国境を越えるケニア・ギクユ人移民の日常世界と母国との関係」

石井洋子(聖心女子大学現代教養学部准教授、グローバル共生研究所副所長)

報告2:「アメリカン・ジャーニー:ケニア人移民を阻むアメリカ社会への適応と統合」

マイク・モゴ(米国ジョンズ・ホプキンス病院精神科看護師、地域活動家 )

報告3:在ケニア帰還ギクユ人移民 

インタビュー・ビデオ

1.「非熟練労働者としての苦悩」

アンソニー・ゼウリ 

2.「郷里で事業を興す」

キャシー・ムワンギ

米国の当事者とケニアの家族との関係や、米国の入管収容所などに関する質問のほか、日本の移民政策に示唆を与える点があるという意見が多数出た。

ケニアからの報告者については、事前にインタビューを行い、字幕をつけたビデオを上映した。この方法は、米国の移民と、ケニアに帰還した移民双方の話を聞くうえで、効率的かつ効果的であった。

なお、当日の報告は、日英同時通訳で配信した。


『国際開発研究』2022年第1号・特集企画「人の移動と開発」が採択された。上記の趣旨に沿って、論文を執筆予定である。執筆予定者は随時、意見交換を行った。

『人の移動と開発』研究部会
代表:田中雅子(上智大学)




活動報告『倫理的食農システムと農村発展』研究部会(2021年11月)

1.研究部会概要

「倫理的食農システムと農村発展」研究部会は池上甲一(近畿大学名誉教授)を代表者、牧田りえ(学習院大学教授)を副代表者として、2020年11月にスタートした。本研究会の目的は、いわゆるフェアトレードとエシカル消費(人権、環境、公正さに配慮する消費)の両者を倫理的取引として把握し、この倫理的取引に基づく倫理的食農システムが生み出す農村発展の成果と課題を解明することにある。

その際に、北側諸国でも関心を集めている「食への権利」や「食料主権」といった食料運動の観点も参照枠として利用する。具体的には、第1に現行食農システムの問題解明と倫理的食農システムの構築・拡大条件、第2に貧困削減を含む農村の総合的な発展への道筋、第3に「先進国」を中心とする消費者に対する倫理的食農システムの利点の提示とそれによるフェアトレード市場の拡大可能性を解明することをめざしている。

貧困削減・撲滅はPRSPの登場以降、人類共通の課題として捉えられてきた。2015年に合意されたSDGsでも第1目標に位置づけられている。しかし、とりわけCOVID-19による感染症の世界的な拡大によって、減少傾向にあった貧困人口が再び増大に転じている。貧困人口の多くは、医療・保健体制の脆弱な南側諸国の農民である。だから、農村発展はSDGsの観点からも国際公共保健の観点からも優先度が高いといえる。

2.活動実績概要

2021年度は、新型コロナウィルス感染症の拡大を受けて、オンラインによる研究会の開催を行ってきた。研究会の実施状況は次のとおりである。

第1回(2020年12月27日)

科研費(代表・牧田りえ学習院大学教授)との共催で開催された。講師は安藤丈将氏(武蔵大学教授)に依頼し、「フード・アクティヴィズムの論じ方」というテーマの報告を受けた。

第2回(2021年3月12日)

に、本研究部会代表の池上が「食料主権とアグロエコロジー」について報告した。この研究会には、賛同者と科研の研究メンバー以外にも国際開発学会会員、それ以外の一般参加者も多数参加し、このテーマに対する関心が大きいことを痛感した。

第3回(2021年5月15日)

ソリダリダード・ジャパンの楊殿閣氏に、「持続可能な農産品サプライチェーン構築と倫理的生産活動の支援」というタイトルで国際NGOソリダリダードの活動について報告してもらった。

第4回(2021年7月31日)

龍谷大学名誉教授の河村能夫氏に「JICAインドネシア・スラウェシ貧困対策支援農村開発計画の経験」を報告してもらった。


年度内に共催を含めて、4回程度の研究会を予定していたが、その計画を達成することができた。次年度は学会大会での企画セッションまたはラウンドテーブルを企画したいと考えている。

『倫理的食農システムと農村発展』研究部会
代表:池上甲一(近畿大学名誉教授)




活動報告『若手による開発研究』研究部会(2021年11月)

活動初年度である本年度は、おもに活動体制の整備に力を入れました。部会メンバーの若手会員は、それぞれが互いに面識がないばあいも多く、また、研究分野、研究手法、研究環境もそれぞれ異なっていました。

そのため、部会においてどのような活動を行なうことが適切かを探ることから始めました。

具体的な活動内容として、まず、本研究部会の目標どおり、春季大会と全国大会において研究部会メンバーでラウンドテーブルを開催しました。それに加えて、オンラインでの研究会を原則月に一度開く体制を整え、今年度は8回開催しました。

研究会では、大学院生活で考えるべきことや奨学金の獲得方法といった研究環境に関するトピックから、メンバーによる研究発表まで幅広いテーマを扱いました。さらに、ホームページ()を開設し、活動の広報や新規メンバーの募集を行ないました。  

以上のように、今年度は活動の方向性を模索し、活動体制の整備に注力しました。2年目からは、研究会メンバーだけでなく、広く開発学会会員も対象としたオープンな研究会や、対面での研究会を開催するなど、活動の範囲を広げていく予定です。

『若手による開発研究』研究部会
代表:宮川慎司(東京大学大学院・博士課程)




【会員限定】入退会員のお知らせと会員数動向(2021年11月)

第219回・常任理事会承認

(順不同・敬称略)

正会員

保希未子(八千代エンジニヤリング株式会社)、佐川徹(慶應義塾大学)、波佐間逸博(東洋大学)、孫暁剛(静岡県立大学)、渡邉さやか(慶応義塾大学大学院)

学生会員

Al Muizzuddin Fazaalloh(名古屋大学大学院)、Chantha Hor(名古屋大学大学院)、CHUNG TRINH THI(名古屋大学大学院)、菅野智子(横浜国立大学大学院)、KAZIA YESMEN(横浜国立大学大学院)、牛夢婷(横浜国立大学大学院)、小椋菜津子(神戸大学大学院)、侯テイ玉(お茶の水女子大学大学院)、宮村侑樹(大阪大学大学院)、呉育潔(ハワイ大学)、イダ 侑子(ハワイ大学マノア校)


第220回・常任理事会承認

正会員

佐藤洋史(国際協力機構)、川辺了一(国際協力機構)、重冨真一(明治学院大学)、矢野泰雅(国際協力機構)

学生会員

小関 創太(拓殖大学)、Nguyen Thanh Van(上智大学)、HADDIS Solomon(GRIPS)、KIM Seil(神戸大学大学院)、NAKASATO Lauren Noelani(早稲田大学大学院)、徐 聞天(横浜国立大学)、KIM Yoonjung(国際基督教大学)、SOUBEIGA Abdoul-Karim(神戸大学大学院)、正延憲人(神戸大学大学院)、PHAM Thu(神戸大学大学院)、劉子瑩(神戸大学大学院)、金恩昊(神戸大学大学院)、李淑敏(神戸大学大学院)、Daas Yousuf(神戸大学大学院)、レイテ ダルモン ダニロ(神戸大学大学院)


第221回・常任理事会承認

正会員

五十嵐和代(なし)、岩本あき子(株式会社アルメックVPI)、中島朋子(UNICEF)、長谷部貴俊(日本イラク医療支援ネットワーク)、中村ひかり(個人事業主)、重本彰子(早稲田大学)、近藤裕基(NPO法人/名古屋大学)、山本シャーリ(甲南大学)、縄田浩志(秋田大学)、鈴木麻衣(一般財団法人国際開発機構)、吉川成美(県立広島大学)、大橋弘明(立命館大学)、佐藤 勝正(国際協力機構)、Stewart Jennifer(ECC本社)、楯晃次(株式会社 EMA)、渡辺裕史(国際協力機構)

学生会員

吉 心語(神戸大学大学院)、藤田茜(神戸大学大学院)、松原直輝(東京大学大学院)、井川摩耶(東京大学大学院)、小塩若菜(大阪大学)、坂井華海(熊本大学)、森本佳月(法政大学)、JUMAMUDUN UULU Ernis(立命館大学 国際関係学部)、ZHAKISHOV Akylbek(立命館大学 国際関係学部)、SAYSANAVONGPHET Phonepaseuth(立命館大学 国際関係学部)、KEOBOUNPHAN Nittaya(立命館大学 国際関係学部)、VANH Leego(立命館大学 国際関係学部)、PECH Sophany(立命館大学 国際関係学部)、VANNSOK Vansakd(立命館大学 国際関係学部)、TENZIN Karma(立命館大学 国際関係学部)、LHAMO Sangay(立命館大学 国際関係学部)、AMINATH Naufa Rushdi(立命館大学 国際関係学部)、HASSAN Nawaaf(立命館大学 国際関係学部)、BHATT Santosh Kumar(立命館大学 国際関係学部)、ADHIKARI Sanjaya(立命館大学 国際関係学部)、AKUMBUTUM Andrew Abadeka(立命館大学 国際関係学部)、DERY Alfred Batiernye(立命館大学 国際関係学部)


退会者

加藤 涼、伊藤 かおり、高田 美穂、西村邦雄、三上恵美子、鹿野和子、大西翔、谷口 裕亮、薮兼 忠昭、福田 幸正、市村 富保、李 春紅、井関 ふみこ、田中 佑里恵、和気 邦夫、宮本 健吾、湯浅 岳史、三宅 浩太、CHAKMA Swarnali、押谷 一、マカリンタル レブ・ニッコ、榎井克明、Ho An


会員数

合計:1619名(2021 年 11 月 10 日現在)

(内訳:正会員 1437名、名誉会員 8 名、学生会員 174名)

*第 221回常任理事会で入会承認し、会費納入をした方を含む。


住所など不明会員について

以下の会員は住所などが不明となっており、現在連絡が取れない会員の方々です。もし、ご存知の方がいらっしゃいましたら、ご本人に本部事務局まで連絡するようお伝えください。よろしくお願い申し上げます。(以下、敬称略)

西田(宇山)かや子、島野涼子、堀江新子、吉野文雄、草苅康子、受田宏之、荒木真衣、工藤正樹、梅野知子、姫野麻美、中田志郎、上野修平、長島聡、根来宏行、神福壽子、宮澤尚里、服部敦、小林久子、松田教男、田中智章、SHAH THAKURI Sunil、間宮優人、山縣弘照、梶由利子、NGUYEN THI NGOC    Lien、PURI Bhakta kumar、TRINIDAD Dennis、QUTUBUD DEEN Molla Ahmad、會田篤敬、温淞翔、ティパヤライ・カティカー、MUTAQIN Dadang Jainal、フィッシャー樹里、HUTAGALUNG Binson、伊藤幸代

本部事務局
事務局長志賀 裕朗(JICA研究所)




Q:学会からのメールが届きません

Answer

メールが届かないケースとしてよくある事例をご紹介します。学会からのメールが届かないときは、以下のケースに該当しないかご確認ください。それでもなお、メールが届かないばあいは「お問い合わせフォーム」より、本部事務局までご連絡ください。

一時的にメールの不達が続き、メール配信が停止された

当学会の利用する会員システムは、メールの送信に何度か失敗したメールアドレスに対して自動的に配信を停止する仕様となっております。

メールアドレスを変更していないのに、学会からのメールが届かなくなったばあいは、所属機関のサーバーメンテナンス等で一時的にメールが届かないタイミングで送信されたメールが届かなかったため、システム側で配信を停止した可能性があります。

もし、このケースに該当するばあいは、「メール配信再開依頼」に、必要事項を記入してメール配信の再開を依頼してください。

学会の会員システムから配信するメールには重要なお知らせも含まれておりますので、在会中の会員におかれましては、学会からのメールを受信していただきますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

メール配信再開依頼

JASIDのメールアドレスをブロックしてしまっている

当学会からのご案内は原則として、ドメインまたは、ドメイン(会員システム)のメールアドレスから配信しております。この2つのドメインから届くメールを受信できるよう受信設定をお願いいたします。

なお、所属機関が管理するメールアカウントを使用している場合は、所属機関のシステム担当者に上記2つのドメインから届くメールをブロックしていないかをお尋ねください。

所属機関のセキュリティによってJASIDのメールを受信できないときは、個人のメールアドレスを会員マイページにご登録ください。

学会に登録したメールアドレスを使用していない

勤務先の変更などで、学会に登録したメールアドレスを使用しなくなっていた(メールが届かなくなったと思ってしまった)というケースも散見されます。

これまで使用していたメールアドレスを使わなくなる際は、会員システムよりメールアドレスを変更してください。

すでに会員システムにアクセスできなくなってしまっているばあいは、本部事務局までご連絡ください。

迷惑メールやプロモーションのフォルダに入っている

会員システムを利用した一斉配信で重要なお知らせをすることもございますので、上記ドメインから届くメールについて、受信トレイに届くよう設定をお願いいたします。

学会あてにメールを送ったが返事が来ない

会員システムより配信されたメールに返信をしたばあい、事務局へメールが届きません(配信専用メールのため)。学会へのお問い合わせについては、お問い合わせフォームをご利用になるか、会員システムに記載されたメールアドレスまでご連絡ください。

なお、事務局業務は原則として、毎週火曜・金曜となっております。回答までにお時間がかかるばあいもございますので、あらかじめご了承ください。

上記のいずれについて確認しても、なおメールが届かないというばあいは、本部事務局までご連絡ください。スムーズな学会運営にご協力を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。


本件にかんするお問い合わせ先

国際開発学会・本部事務局




広報委員会より各種サービスのリニューアルに関するお知らせ

会員サイトのリニューアルに続き、ニューズレターとメーリングリストのリニューアルを行いました。

ニューズレターについては、今回より試行的にWebでの発行とさせて頂きます。皆さまには目次のURLを配信し、必要な記事をダウンロードして頂くこととしました。アーカイブのためのPDFファイルについては、Webページのコピーを束ねた形で作成します。

なお、会員限定コンテンツについてはパスワードを掛けておりますので、会員サイトにログインしてご確認下さい。これまでとは大きく形態が異なるため、皆様からご意見を頂きながら、改善を重ねて行きたいと考えています。

これまで、メーリングリストによる告知依頼をメールにより受け付けておりましたが、手続き簡素化のためWebフォームを使用することと致しました。

また、これまで随時配信して参りましたが、直前の依頼も増え、ボランティアベースで対応できる範囲を超えてまいりました。今後は、フォーム送信から配信まで最大1週間程度 お時間を頂くことをご了承頂き、余裕を持ってご依頼いただけますようお願い致します。

当面はメールでも配信依頼を受け付けますが、2021年8月末を目処に終了する予定です。フォームの冒頭に注意点をまとめておきましたので、よくお読みの上、ご依頼下さい。

なお、新たな試みとして、ご希望がある場合にはWebサイトにも同じ内容を掲載しますので、ご利用下さい。

配信依頼フォームのURL

  •  
    (URLをコピーしてブラウザに貼り付けてご使用ください。配信依頼を送信できるのは在会中の会員に限ります)

またWebリニューアル後にご不便をお掛けしていた会員限定コンテンツに関しても、トップページの「ログイン」メニューよりアクセスできるようになりました。パスワードは会員サイトにログインしてご確認下さい。

リニューアルについて、ご意見・ご不明な点・ご要望などがございましたら news[アットマーク] までお知らせ下さい。

広報委員長・高田潤一(東京工業大学)




第22回 春季大会開催報告・総括

第22回春季大会報告

第22回春季大会は2021年6月12日(土曜)に、文教大学・東京あだちキャンパスを開催校として実施されました。

当初、対面とオンラインの組み合わせによるハイブリッド方式で開催することを予定していましたが、4月下旬以降の新型コロナウイルス感染拡大とそれに伴う緊急事態宣言およびその延長等を勘案し、感染リスク軽減のため、全てオンライン(Zoom)で実施することに急遽変更をいたしました。251名の方に参加登録いただきました。

今回の大会は、格差の拡大や一国主義の蔓延、さらには新型コロナウイルスの感染拡大による移動制限措置によって分断されてしまった世界につながりをとりもどすことを求めて、全体テーマを「ともに生きる:課題解決のために知識と経験を共有する Live together: Sharing Knowledge and Experience for better solution」としました。

海外からも含め、多くの皆様にご参加頂きましたことに感謝申し上げます。

大会実行委員長・林 薫(文教大学)


【セッション報告】

午前の部(9:30-11:30)Morning Session

A1: RT「研究×実践」をめぐる諸課題をあぶりだす: 研究×実践委員会主催セッション(日本語)

  • 企画責任者: 小林誉明(横浜国立大学)
  • 司会:小林誉明(横浜国立大学)
  • 討論者:志賀裕朗(国際協力機構)、ラミチャネ・カマル(筑波大学)、佐藤峰(横浜国立大学)、浜名弘明(デロイトトーマツコンサルティング合同会社)、狩野剛(ミシガン大学)、功能聡子(ARUN)

本セッションは、研究と実践との有機的な相互作用を生み出すメカニズムを構築することを目指して設立された「研究×実践委員会」が、その活動の方向性を定めるためのニーズや現状課題を把握することを目的として企画された。
朝一番のセッションであるにも拘わらず、報告者を含めて30人弱の会員の参加を集め、研究と実践との連携というテーマが、本学会の会員が常態的に抱えている潜在的な問題意識でもあることを裏付けるものであることを実感した。

まず、小林より、委員会の趣旨、ラウンドテーブル企画の背景、議論したいアジェンダについて説明し、委員各位より、それぞれが考える論点が提出された。

研究と実践にまつわるイシューは多岐にわたるため、一度のラウンドテーブルで答えが見つかることは望むべくものないため、今回は、そもそもどんな課題が存在しうるのか、今後、取り組むべき射程を明らかにすることを主眼とし、“おもちゃ箱をひっくり返す”事を敢えて狙った。結果、広範囲にわたる論点が提示され、あらためてテーマの外延の広さが確認された。

その後の全体討論の時間には、フロアから更に多様な意見が続出した。とりわけ、大きな収穫と感じたのは、「研究×実践」委員会の側で想定していた「前提そのもの」を問う議論の数々である。

  • そもそも「有用性」を前提とした議論なのではないか?役に立たない実践も研究もある。
  • そもそも実践は、JICAなどのODA等の現場だけではないはず。海外も含めた民間の実践をみるべき。
  • そもそも研究が実践に結びつくのが良いこという前提があるが、本当にそうか。
  • 実践と結びつく便益が明らかな場合であっても、そもそも研究者がコストと手間をかけられるのか?実務者の側が負担する構造になっているのではないか。

(報告:小林誉明)

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A2: 教育(日本語)

  • 座長:黒田一雄(早稲田大学)
  • 討論者:北村友人(東京大学)、大塲麻代(帝京大学)

発表者

  1. 吉田夏帆(高崎経済大学)
    「ミャンマーの初等教育における修学パターン分析―社会経済的地位(SES)に着目して―」
  2. 森下拓道(国際協力機構)
    「女子教育における出生順位効果:マリ共和国のケース」
  3. 加藤俊伸(国際協力機構)
    「オンライン海外体験学習の可能性―「国際協力フィールドワーク(インド)」の実践から―」
  4. 前田美子(大阪女学院大学)
    「カンボジアにおけるカンニング行為―開発援助の影響に着目して―」

本セッションでは、4名の会員により、発展途上国における教育開発の諸相に接近を図った研究発表が行われた。

最初の吉田夏帆会員(高崎経済大学)研究発表は「ミャンマーの初等教育における修学パターン分析 ―社会経済的地位(SES)に着目して― 」と題し、同国における、学校記録にもとづく縦断的研究手法による初等教育の修学実態の把握に基づき、教育課題の抽出と政策提言を行うものであった。本研究は、教育開発研究手法の革新にも貢献する研究となっていた。

二番目の発表は、森下拓道会員(国際協力機構) による「女子教育における出生順位効果:マリ共和国のケース」と題する研究発表であった。本研究は、出生順位、性別による教育達成度の違い、や達成度に差異が生じる教育段階などについて分析し、女子教育の推進に当たっての政策的インプリケーションを導くことを目的に、同国のDHSを基に行われた精緻な実証分析であった。

三番目の発表は加藤俊伸会員(国際協力機構)による 「オンライン海外体験学習の可能性ー『国際協力フィールドワーク(インド)』の実践からー」と題した発表で、コロナ禍においてほぼ不可能となった海外体験学習を、現地機関(インドのNGO)と協力し、オンラインにより実現した発表者の活動報告であった。参加学生の前向きなアンケート調査結果も紹介され、オンライン海外体験学習の開発教育における今後の可能性が示された。

四番目の発表は前田美子会員(大阪女学院大学)による 「カンボジアにおけるカンニング行為ー開発援助の影響に着目してー」というユニークなテーマの研究発表であった。同国において深刻な教育課題であるカンニング行為が、先進国における先行研究において指摘された要因のみならず、開発援助などの途上国特有の要因との連関で議論されている点が興味深かった。

いずれの発表も実証データの精緻な分析に基づく研究であり、教育開発分野の研究水準の向上が示唆された。

(報告:黒田一雄)

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A3: 企画「社会連携委員会企画セッション『民間企業にとってのSDGsを問い直す』」(日本語)

  • 企画責任者:川口純(筑波大学)
  • モデレーター:佐藤寛(アジア経済研究所)
  • 討論者:大橋正明(聖心女子大学)、黒田かをり(CSOネットワーク)

発表者

  1. 関正雄(損害保険ジャパン日本興亜株式会社 CSR室シニアアドバイザー・明治大学)
    「SDGsとこれからの企業の役割1」
  2. 有元伸一(株式会社ローソン 経営戦略本部SDGs推進部長)
    「SDGsとこれからの企業の役割2」

本企画セッションは、SDGsに取り組んでいる民間企業から2名の発表者を招聘し、ご発表を行って頂いた後、指定討論者からのコメント、質問に続き、全体議論を実施した。参加者は計40名程であった。

第一発表者として、本学会の会員でもある関正雄氏(損害保険ジャパン株式会社・明治大学)からご報告頂いた。2020年11月に経団連が発表した「新成長戦略」についてご説明頂き、SDGsの浸透で2030年がマイルストーンイヤーとして認識されるようになったが、それは文字通り一つの通過点でしかないことが確認された。そして、その先にめざす社会像への想像力と、長期的なビジョンを自身の戦略や行動に落とし込む構想力を持つする必要性を提示された。 

つぎに、有元伸一氏(株式会社ローソン 経営戦略本部SDGs推進部長)から具体的な社内の取り組みについてご発表頂いた。社内文化や利益との関係を含めて試行錯誤の様子をご報告頂いた。決して順風満帆に推進されてきたのではなく、課題も山積していている内部事情もご共有頂いた。

その後、本委員会の委員である大橋正明会員(聖心女子大学)、黒田かをり会員(CSOネットワーク)から上記2名の発表に対するコメント、質問を出して頂き、同じく委員の佐藤寛会員(ジェトロ・アジア経済研究所)をモデレーターとして議論が展開された。

議論としては「如何なる観点からSDGsを捉え直すのか」という点に焦点が当たり、「人権」、「企業利益」、「社会貢献」と言った従来からのテーマだけでなく、そもそも「持続可能な社会とは何か?」「今後、起こりうるトラブルは?」という様な幅広い議論が展開された。

本企画は継続的に議論を進めていく予定であり、最終的には議論を纏めた書籍を刊行する予定である。

(報告:川口純)

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A4: 企画「『多遍性』(pluriversality)実現への道筋」―地域コミュニティから近代的「普遍性」(universality)の超克を探る―(日本語)

  • 企画責任者:真崎 克彦(甲南大学)、藍澤 淑雄(拓殖大学)
  • 司会:真崎 克彦(甲南大学)
  • 討論者:藍澤 淑雄(拓殖大学)、 飯塚 明子(宇都宮大学)

発表者

  1. 真崎 克彦(甲南大学)
    「多遍性(pluriversality)研究の背景・意義―企画の趣旨」
  2. 藤枝 絢子(京都精華大学)
    「地域コミュニティのレジリエンスの多遍性(pluriversality)―バヌアツの離島における自然災害からの考査―」
  3. 斎藤 文彦(龍谷大学)
    「地域の取り組みから考える多遍的(pluriversal)な社会づくり―スペイン・バルセロナと日本・二本松との比較を通じて―」

国際開発学会「市場・国家との関わりから考える地域コミュニティ開発」研究部会の一環として行われた。最初の座長による趣旨説明(「多遍性研究の背景・意義―企画の趣旨」)では、西洋近代型の「普遍的」とされる進歩観と一線を画した「多遍的」な世界各地の社会づくりに関する研究動向が紹介された。

藤枝報告(「地域コミュニティのレジリエンスの多遍性―バヌアツの離島における自然災害からの考査」)では、バヌアツの離島村落にて、自然災害時にどのような被害軽減や復興が果たされるのかが検証された。その際、地域在来の生活様式(住居や農業の形態、共同体の紐帯など)で培われてきたレジリエンスが発揚される。一般的に「小」島嶼国が持つとされる脆弱性では測り切れない。

斎藤報告(「地域の取り組みから考える多遍的な社会づくり―スペイン・バルセロナと日本・二本松との比較を通じて」)によると、バルセロナでは資本主義経済から社会連帯経済への転換が進み、市民政党が生まれて意思決定過程に影響を与えている。福島県二本松市の東和地区では東日本大震災の後、多様な外部関係者との連携が推進されており、バルセロナと同じく、政治経済的な主体性復権がその成果の重要な鍵を握る。

藍澤会員と飯塚会員からは両報告を踏まえて、「普遍的」とされるレジリエンスや経済発展についての従来の見方から離れて、地域固有の「多遍性」からとらえ直す必要性が指摘された。そして、考察を今後も深めていくことへの期待が表明された。本セッションには常時18名前後の会員が参加され、活発な質疑応答が交わされた。

(報告:真崎克彦)

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A5: RT「途上国の産業人材、生産性、カイゼン」―『途上国の産業人材育成-SDGs時代の知識と技能』出版記念企画―(日本語)

  • 企画責任者: 山田肖子(名古屋大学)
  • 司会:大野泉(政策研究大学院大学)
  • 討論者:神公明(国際協力機構)、島田剛(明治大学)、山田肖子(名古屋大学)

発表者

  1. 高橋基樹(京都大学)
  2. クリスチャン・S・オチア(名古屋大学)
  3. 辻本温史(国際協力機構)

本ラウンドテーブルは、2021年2月に日本評論社より刊行された『途上国の産業人材育成:SDGs時代の知識と技能』の出版を記念して開催された。

産業人材育成には、国の経済発展や産業振興、企業の生産性向上といった経済開発に関わる目的だけでなく、個人のキャリア形成、雇用、貧困削減といった教育、社会政策に関わる目的も存在する。このように、対象者や視点によって、多面的な意味を持つ産業人材育成に関して、本セッションでは、学際的かつ実務と研究を架橋した議論を試みた。それにより、執筆者はもとより、参加者とも問題意識を共有し、継続的に議論が行われるためのプラットフォームを形成することが目指された。

話題提供者として、高橋基樹会員(京都大学)、クリスチャン・オチア会員(名古屋大学)、辻本温史会員(JICA緒方貞子平和研究所)が登壇し、カイゼンの途上国への選択的適応と企業の生産性向上を前提とした介入の課題、エチオピアを事例とした産業人材の就業前教育と卒業者の労働市場成果、日本の産業人材育成分野における開発協力の変遷について現状と諸課題が報告された。その後、ディスカッサントである島田剛会員(明治大学)、神公明会員(JICA緒方貞子平和研究所)、山田肖子会員(名古屋大学)からの問題提起も踏まえた議論が展開された。

とくに、企業の生産性向上と労働者の能力向上のための介入としてODA事業で展開されてきた日本型カイゼンの特徴を改めて見直す必要性が指摘されるとともに、フォーディズムと対比してボトムアップだとされる日本型カイゼンが、モデル普及を目指す中で、むしろモデルの固定化を起こしており、状況や個別特殊性に基づいた帰納的発想の再確認が必要との意見もあった。

最後に総括として大野泉会員より、途上国の産業人材育成に関する議論を深める為には、研究と実務を架橋する多面的な視点を取り入れる重要性を改めて確認し、本RTは閉幕した。

(報告:山田肖子)

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A6: 企画「防災と気候変動適応における投資の促進に向けて」―アジアの視点からのレビュー・事例研究―(日本語)

  • 企画責任者: 佐々木大輔(東北大学)
  • 司会: 石渡幹夫(東京大学/国際協力機構)
  • 討論者: 広田幸紀(埼玉大学)

発表者

  1. 佐々木大輔(東北大学災害科学国際研究所)
    「防災投資に関する文献レビュー―最近の文献からみた防災投資の現状―」
  2. 吉岡渚(笹川平和財団海洋政策研究所)
    「アジア太平洋における海洋・沿岸域レジリエンスと適応ファイナンス」
  3. 地引泰人(東北大学)、ペルペシ・ディッキー(インドネシア大学)、佐々木大輔(東北大学)、井内加奈子(東北大学)
    「災害後復興ニーズ評価調査(Post Disaster Needs Assessment: PDNA)が災害リスク削減と気候変動 適応対策への投資に重要な意味を持つのか ―文献調査にもとづくインドネシアとフィリピンの二国 間比較分析―」
  4. 坂本壮(東北大学)、佐々木大輔(東北大学)、石渡幹夫(東京大学)
    「日本の治水事業における費用対効果分析手法の変遷と進化―治水経済調査マニュアル(案)改定過 程に着目して―」

本企画セッションでは、防災と気候変動適応における投資の現状について、既往研究等の文献レビュー、及びアジアの複数の地域(日本、インドネシア、海洋・沿岸域等)を対象とした事例研究の成果について、座長である石渡幹夫客員教授(東京大学/JICA)の進行のもと、4篇の報告があった。

佐々木報告では、仙台防災枠組が採択された2015年以降に公刊された防災投資に関する文献等のレビューを通して、防災投資の現状について整理がなされるとともに、テキストマイニングによる計量分析を行うことで、文献において特徴的な語や発行主体による差異等が明らかにされた。

吉岡報告では、オープンデータベースを用いて過去10年間の援助プロジェクトの承認状況を把握することにより、アジア太平洋地域における海洋・沿岸域の適応策への援助の流れを俯瞰し、現状の資金ギャップの具体的な所在を明らかにした。地引報告では、災害後復興ニーズ評価調査(Post Disaster Needs Assessment: PDNA)と、災害リスク削減(Disaster Risk Reduction: DRR)及び気候変動適応対策(Climate Change Adaptation: CCA)への投資との関係性等について考察を行った。

坂本報告では、治水事業における費用対効果分析手法を適用する際の利点と限界を検証するために、治水経済調査マニュアル(案)の改定過程や海外ODAプロジェクトにおける治水事業の費用対効果分析の実施状況についてレビューを行った。

何れの報告に対しても、討論者の広田幸紀教授(埼玉大学)から的確なコメント・質問を頂き、聴講者との質疑応答を通じて議論が深まり、充実したセッションとなった。これらの成果報告を通して、防災及び気候変動適応への投資を拡大する際の課題や今後の研究の方向性がより明確になったものといえる。

今後、仙台防災枠組・持続可能な開発目標(SDGs)・パリ協定といった国際アジェンダの動向も踏まえながら、さらに研究を発展させることにより、強靭な社会の実現に向けた政策提言に繋げていくことが期待される。

(報告:佐々木大輔)

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A7: 企画「国際教育開発への挑戦」―これからの教育・社会・理論―(日本語)

  • 企画責任者:荻巣崇世(上智大学)
  • 司会:川口純(筑波大学)
  • 討論者:橋本憲幸(山梨県立大学)

発表者

1.小原優貴(お茶の水女子大学、日本学術振興会特別研究員)
「誰が教育するか―質をともなう教育普及の実現に向けて」
2.芦田明美(早稲田大学)
「どう具現化するか—新たな「連携」と「協働」の形の模索」
3.荻巣崇世(上智大学)
「いかに関わるか—国際教育開発に関わる「わたし」を考える」

本企画セッションでは、2021年1月に刊行した『国際教育開発への挑戦―これからの教育・社会・理論―』(荻巣崇世・橋本憲幸・川口純編、東信堂)の執筆陣を中心に、「誰が教育するか」「どう具現化するか」「どう関わるか」という3つの視点から、2030年およびその先に求められる国際教育開発の理論と実践について改めて検討しました。

川口純会員(筑波大学)による進行のもと、小原優貴会員(お茶の水女子大学/日本学術振興会)「誰が教育するか―質をともなう教育普及の実現に向けて」、芦田明美会員(早稲田大学)「どう具現化するか—新たな「連携」と「協働」の形の模索」、そして荻巣崇世(上智大学)「いかに関わるか—国際教育開発に関わる「わたし」を考える」の三つの発表がなされ、書籍で展開した議論を改めて交流することができました。

橋本憲幸会員(山梨県立大学)による指定討論では、例えば紛争下など、国家も市場も教育を提供できないような状況では誰が教育を担うのか、「連携」「協働」など水平的な国際教育開発に問題があるとすればどんなものか、また、自己耽溺に陥ることなく自己を問い開いていくために、国際教育開発論として何が求められているのか、など、三つの発表を貫く質問が提示され、参加者も交えて議論を交わしました。

後半は、参加者からのコメントおよび質問を受けました。国際教育開発の分野で実践・理論の両方に関わり活躍してきた参加者からは、これまでの経験を踏まえた励ましを頂き、国際教育開発がこれまでどのように紡がれてきたのかを再確認する機会となりました。

また、発表者らと同年代の参加者からは、発表に対する共感とともに「共創」「共育」など新しい概念も提示され、書籍で展開した議論をさらに深め、広げることができました。参加して下さった皆様に感謝申し上げます。

(報告:荻巣崇世)

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午後の部 I(12:30-14:30)(GMT +9)Afternoon Session I

B1: RT「若手による開発研究セッション:開発における研究と実践を越境する」(日本語)

  • 企画責任者: 石暁宇(横浜国立大学大学院)、須藤玲(東京大学大学院)
  • 司会: 須藤玲(東京大学大学院)
  • 討論者: 池見真由(札幌国際大学)、木山幸輔(筑波大学)、小林誉明(横浜国立大学)、松本悟(法政大学)

本セッションは、研究と実践の世界、またその両方を見渡してきた討論者をお招きし、討論者と若手の対話や、討論者同士の対話を通じて、研究と実践の越境という古くて新しい課題に向き合うために企画された。また、将来のキャリアを模索する本学会の若手の会員にとっては、登壇者との交流を通じて、開発に携わる選択肢の多様性を考える機会と位置付けた。

本セッションでは、多様なバックグランドを有する登壇者4名(池見真由先生、木山幸輔先生、小林誉明先生、松本悟先生)を交えて、主に以下の2点について焦点を当てて対話が行われた。

一つ目は、「研究の『意義』」についてである。研究の意義についてある種執拗に求められる昨今において、開発研究がどのように生かされているのか、という若手の疑問が背景にあり、対話の中で、「開発実践」が必ずしも途上国にあるとは限らず、多様な活かされ方があることが示唆された。

二つ目のトピックは、「実務者と研究者という職業の選択について」である。実務者の役割と研究者の役割に触れつつも、登壇者のご経験を交えた対話を通して、それぞれのキャリアパスが必ずしも計画通りに進んできたわけではなく、「縁」などの外的な要因も大きな変数としてあることが指摘された。その上で、自分の置かれている環境や時代と照らし合わせつつ、自分が面白いと思えることを突き詰めて考えていく重要性が示唆された。そしてセッションの最後には、4名の登壇者から若手へ向けたメッセージもいただき、セッションは終了した。

本セッションでは、終始和やかな雰囲気の中で、討論者と司会者そして質問者を交えて活発な対話が行われた。今後は、今回のセッションで得られたヒントや視座を、本学会「若手による研究部会」へ持ち帰り、共有することが求められると同時に、本部会にしかできない企画を考えていく上で、非常に意義深いセッションとなった。

(報告:須藤玲)

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B2: 「NGO・方法」(日本語)

  • 座長:大橋正明(聖心女子大学)、
  • 討論者:西野桂子(関西学院大学)、高柳彰夫(フェリス学院大学)

発表者

  1. 飛田麻也香(広島大学大学院、日本学術振興会特別研究員)
    「イスラエル・パレスチナ紛争とNGO―教育分野で平和構築活動を行うNGO団体の類型化―
  2. 熊谷圭知(お茶の水女子大学)
    「参与観察と参加型開発をつなぐ『場所』―40年のパプアニューギニア調査研究から―」
  3. 田中博((一社)参加型評価センター)、束村康文((特活)ピースウィンズ・ジャパン)
    「MSC(Most Significant Change)手法とログフレーム評価の併用の試み―ネパールNGO農業プロジェクトにおける参加型・質的評価とログフレームの相互補完関係―」
  4. 松隈俊佑(京都大学)福林良典(宮崎大学)木村亮(京都大学)
    「国際NGOの参画により実現した草の根無償支援を活用した小規模道路整備 ―タンザニア南部ムトワラ州における事例―」

本セッションでは、4名の会員の発表があり、2名の討論者がコメントを行い、それに発表者が答え、可能な場合には他の参加者からの口頭、あるいはチャットやQ&Aを通じた質疑応答が行われ、全体としては活発なセッションとなった。討論者の役割分担は、NGOに関連した二つの発表はフェリス学院大学の高柳会員が、方法論に関連した二つの発表は関西学院大学の西野会員がそれぞれ担当した。

最初は、広島大学大学院の飛田会員の「イスラエル・パレスチナ紛争とNGO―教育分野で平和構築活動を行うNGO団体の類型化」と題する発表で、イスラエルとパレスチナで平和構築に関連する教育活動に携わる諸NGOの情報を集め、類型化し、そこから得られた知見をまとめた興味深いものである。困難な状況下での情報収集を行ったことは評価に値する一方、これらのNGOの財源に関すること、あるいはそうした活動の成果に関しては、今後の研究の中で明らかにされることが期待される。

つぎは、お茶の水女子大学の熊谷会員の「参与観察と参加型開発をつなぐ『場所』―40年のパプアニューギニア調査研究から」という、会員の40年間に渡る研究・活動をまとめた興味深い発表である。参与観察者は開発といった変化を望まない場合が多いが、発表者は「場所」がもたらした相手との互酬的な関係から、参加型開発の活動に積極的に関与してきたことに注目が集まった。

続く報告は、(一社)参加型評価センターの田中会員による「Most Significant Change(MSC)手法とログフレーム評価の併用の試みーネパールNGO農業プロジェクトにおける参加型・質的評価とログフレームの相互補完関係」であった。今まで多くのJICAやNGOによって使われてきたログフレームに準拠したプロジェクト評価の長所と問題点、そしてMSC手法の評価の長所と問題点を列挙し、両者の相互補完性が強調されたが、残された課題も確認された。

最後は、京都大学の松隈会員から「国際NGOの参画により実現した草の根無償支援を活用した小規模道路整備―タンザニア南部ムラワラ州における事例」という発表者の経験に基づいた発表がなされた。いくつかの制約がある草の根無償支援のプロジェクトが、日本のNGOを関与して実施されたことは注目される。一方でこれが普遍化できる可能性について、関心が集まった。

(報告:大橋正明)

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B3: 企画「人が自ら動くための条件」(日本語)

  • 企画責任者: 佐藤峰(横浜国立大学)
  • 司会: 佐藤峰(横浜国立大学)
  • 討論者: 田中由美子(城西国際大学)

発表者

  • 佐藤峰(横浜国立大学)
  • 「他者との関係性において自己の経験を物語ること―日本における「ストーリーベースメソッド」の 比較検証ー」
  • 佐柳信男(山梨英和大学)
  • 「開発援助における主体性(agency)の心理測定の課題と展望」
  • 柳原透(拓殖大学)
  • 「主体能力形成・強化の段階の可視化ーチリの最貧困層プログラム (チリ・ソリダリオ) の設計と実績―」

本企画セッションでは、当事者主体の開発やエンパワーメントの前提となる、主体性醸成(Agency Development)のプロセスの「見える化(物語化・段階化・計量化)」の取り組みについての発表と討議が行われ、約20名の方々にご参加いただいた。

第一発表「他者との関係性において自己の経験を物語ること」においては、佐藤峰会員(開発人類学)が生活記録運動において、ライフストーリーの文章化プロセスが、当事者にもたらした変容と要因の検証がなされた。

第二発表「主体能力形成・強化の段階の可視化ーチリの最貧困層プログラム (チリ・ソリダリオ) の設計と実績ー」では、柳原透会員(開発経済学)により、チリ・ソリダリオにおけるソーシャルワーカーと対象者の関わりに見る、段階的変容の記録の政策分析がなされた。第三発表「開発援助における主体性(agency)の心理測定の課題と展望」では、佐柳信男会員(教育心理学)が、開発援助の分野における、自己決定理論に基づく、心理測定の現状と課題について論考した。

その後、田中由美子会員より、ジェンダーと開発を中心とした開発実践の立場から、それぞれの発表に対してコメントを頂戴した。そして、全ての発表に関連する今後の課題として「開発途上国における、主体能力涵養については、その具体的なプロセスに関しては、十分な量的・質的研究が少ない。」、「課題は明らかになっている部分はあるが、途上国においても(デジタルも含め)ストーリーテリングの手法を応用し、女性自身の視点から、女性自身が言葉を紡ぎだして、主体能力涵養をどのように可能ならしめるのか。」、「国際協力の観点からは、フロントワーカーの主体能力涵養についても、研究があると良い。」という3点をご指摘いただいた。

最後に、フロアより「事例における活動の地域的特性」や「事例における外部支援者への拒絶の有無」などの質問をいただきそれぞれに回答をした。本セッションで頂戴したコメントは、英語で執筆中の共著書への内容に反映させていただくとともに、実践への反映もできるように努めてまいりたい。

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B4: RT「人新世(アントロポセン)の開発協力論」(日本語)

  • 企画責任者: キム・ソヤン(ソガン大学)
  • 司会(Chair/Moderator): 佐藤寛(アジア経済研究所)
  • 討論者: 松岡俊二(早稲田大学)、花岡伸也(東京工業大学)

発表者

  1. キム・ソヤン(ソガン大学)
  2. 大山 貴稔 (九州工業大学)

本セッションではまず企画者の金会員より、新型コロナウイルスなどの人獣共通感染症がグローバルな野生動物違法取引の拡大によって加速されることを指摘した上で、人間の活動が生態系の健全性に大きな影響を与える「人新世」において、脆弱層が抱えるリスクはより悪化し、その結果過去様々な開発成果の逆戻りが深刻化する恐れがあると強調した。このように、人新世において、COVID-19コロナウイルス題を踏まえつつ、人間と生態系との関係を根本的に見直す「惑星の正義」とグローバル公共財という概念によって開発協力を基礎づける視点を提供した。

つづいて、大山貴稔会員(北九州工業大学)は人新世的課題をめぐる議論から「設計主義的な回復/自生的秩序の手入れ」という2つの類型を抽出し、後者の類型と開発協力の結びつき方についての問題提起を行った。

これらを受けて、松岡俊二会員(早稲田大学)からはトランスサイエンスの時代における科学者と市民の科学コミュニーションという視点から、人新世概念をめぐる動向に踏み込む視点を提供した。花岡伸也会員(東京工業大学)は、工学(とくに土木計画学とインフラの構築)における計画性と不可逆性という観点から、人新世概念のような世界認識を支える思想の重要性が指摘された。

その後、佐藤寛会員(ジェトロ・アジア経済研究所)の司会で、a) 人新世における開発的介入のあり方とは? b) 知的権力と専門家の傲慢さの結びつきをどのように飼い馴らすか? c) グローバル・ジャスティス(公共財と惑星正義)のローカル実践の難しさとその実践主体、d)脱成長は「非開発」なのか、といった論点について活発な質疑応答が繰り広げられた。これに対して「Just transition(公正な移行)」議論、またグローバル・ジャスティスのローカル実践に関連して、empathy(共感)と政治的意思の重要性も指摘された。 

参加者は20名程度であったが、参加者からもチャットで質問、コメントが寄せられ、今後ともこのテーマを巡る議論を活性化していく必要性が指摘された。

(報告:キム・ソヤン)

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B5: RT「子どもの安全保障」―南アジアの脆弱な子どもへの開発アプローチ―(日本語)

  • 企画責任者: 勝間 靖(早稲田大学)
  • 司会: 勝間 靖(早稲田大学)
  • 討論者: 勝間 靖(早稲田大学)

発表者

1.小野道子(東京大学大学院)
「パキスタンに住むベンガリー移民の子どもたち」
2.新井和雄(国際ロータリー)
「ネパールで自然災害を経験した子どもたち」
3.田中志歩(広島大学大学院)
「バングラデシュに住む少数民族の子どもたち」

本セッションでは,「子どもの安全保障への開発アプローチ」研究部会における研究活動に基づき、部会メンバーの研究領域における事例研究を発表した。事例研究を深め、政策提言にもつながるような理論的枠組みを構築することを目指している。

まず、研究部会代表者である勝間靖会員(早稲田大学)が、このラウンドテーブルの企画者として、事例研究を発表するうえでの共通の枠組みを提示した。それぞれの事例につき、(1)脆弱な子どもとは誰かを社会的文脈において明らかにしたのち、(2)どのような生存・生活・尊厳の課題やリスクがあるかという状況の把握、(3)それがどのような脅威やハザードに起因するものかという原因の分析、(4)そして安全や安心を保障するため、脅威やハザードによるリスクそのものの軽減へ向けて、どのような保護の政策が取られるべきなのか、(5)また脅威やハザードによるリスクへ適応すると同時に強靭性を高めるため、啓発や教育などをとおして、子どものエンパワーメントをいかに進めるべきか、について検討した。

最初に、小野道子会員(東京大学大学院)が「パキスタンに住むベンガリー移民の子どもたち」と題して発表した。パキスタンで「ベンガリー」と呼ばれる人びとは、1960~1990年代後半にかけてパキスタンに移住したベンガル人ムスリムとアラカン出身ムスリム(ロヒンギャ)であり、200万人以上がカラーチーにあるカッチー・アーバーディと呼ばれるスラム地区に居住している。「ベンガリー」の子どもたちの多くは、市民権(IDカード)を所持できない無国籍者で、移動の自由がなく、社会保障制度へのアクセスがないとのことである。

つぎに、田中志歩会員(広島大学大学院)が「バングラデシュに住む少数民族の子どもたち」と題して発表した。バングラデシュに暮らす少数民族のなかでも、とくに山岳少数民族(チッタゴン丘陵地帯系少数民族)の人びとが困難な立場にあると報告した。両親は子どもが学校に行かなくてもよいと考えていることがあったり、少数民族言語での母語による教育が限られていたり、生活に乖離したカリキュラムを実施している学校が多いことから、就学率が低かったり、ドロップアウト率が高かったりするとの報告があった。

最後に、新井和雄会員(国際ロータリー)が「自然災害と子どもの安全保障 ネパールで自然災害を経験した子どもたち」と題して発表した。比較的に裕福な世帯の子どもが通う私立学校と、貧しい世帯の子どもが通うコミュニティ学校とを対比しながら、地震による影響の違いを説明した。また、貧しい世帯の子どもが通うコミュニティ学校のなかでも、防災教育を実施していた学校とそうでない学校との間で、教育の再開に違いがあることを示した。

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B6: RT「デジタル技術は経済開発をリープフロッグさせうるのか?」

  • 企画責任者: 狩野剛(ミシガン大学)
  • 司会: 狩野剛(ミシガン大学)
  • 登壇者:竹内知成(監査法人トーマツ)、内藤智之(神戸情報大学院大学)、 綿貫竜史(名古屋大学)
  • 討論者:高田潤一(東京工業大学)、井上直美(東京外国語大学)

本セッションでは、国際開発におけるデジタル技術の可能性と課題を探るため、教育・研究・実務という異なる立場でデジタル技術と国際開発に関わる3名からの発表および、討論者・参加者を交えた議論が行われた。

冒頭、ミシガン大学の狩野剛会員から主旨説明と国際開発におけるDX(デジタル・トランスフォーメーション)推進の現状と課題について紹介があった。また、ルワンダのIT立国を題材に、デジタル技術により経済開発のリープフロッグは起きうるのかという問題提起がなされた。

それを踏まえ、神戸情報大学院大学の内藤智之会員からは、コロナ禍があぶり出したデジタル適応力と社会的耐性の因果関係として、経済開発段階ごとのリープフロッグの可能性について言及。また、国家のデジタル化とコロナウイルスによる経済インパクトの分析が紹介された。

つづいて、名古屋大学の綿貫竜史会員からは、バングラデシュの縫製産業で働く女性たちをターゲットに、「女性の金融包摂を推進」という一見前向きに見える流れの裏で、家庭内立場に起因する、給与支払いのデジタル化がもたらす負のインパクトについての考察が紹介された。

また、(一社)ICT for Developmentの竹内知成会員からは、昨今の国際協力業界で増えているProof of Concept (PoC) の実情と抱える課題として、民間企業・被援助国など異なる立場からの視点で紹介があり、国際開発プロジェクトでのPoCのあるべき姿について問題提起がなされた。

その後、討論者である東京工業大学の高田潤一会員および東京外国語大学の井上直美会員を中心にコメントと議題提起が行われ、リープフロッグと人的資本の蓄積の関係、ICTサービスのローカリゼーション、PoC 導入と持続可能性、そしてビジネス開発における示唆などについて議論が行われた。また、参加者からもデジタル格差やDXと経済成長について質問が挙がり、活発な議論が行われた。

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B7: Industry / Agriculture (English/英語)

  • 座長(Chair):福西隆弘(アジア経済研究所)
  • 討論者(Discussant):後藤健太(関西大学)、新海尚子(津田塾大学)

発表者(Presenter)

  1. Khemmarath Parinya(Utsunomiya University)
    “Entrepreneurial Characteristics and the Production of Household Producers of Rice in Lao PDR―The  Case Study of Savannakhet Province’s Three Zones”
  2. Kiyoto Kurokawa (Ritsumeikan University)
    “How to identify the real value of the local treasures – A comparative study of old towns in Koka City, Shiga Prefecture, Japan -“
  3. Van-Truong Pham (Rikkyo University) and, Kataoka Mitsuhiko (Rikkyo University)
    “A non-parametric frontier analysis in Vietnamese garment firms (Preliminary study)”
  4. Inami Hiromi (Waseda University)
    “The Impact Analysis of Poverty Reduction by Hindustan Unilever―A Case Analysis of Shakti Project in India-”

The session B7 “Industry/Agriculture” consists of four presentations that explore research questions strongly reflecting the local context. The first presentation by Khemmarath Parinya is a unique study that investigates farmers’ characteristics from their entrepreneurial orientation in Laos. He shows that entrepreneurial orientation differs by regions and is associated with farming practice and other characteristics. Given the significant associations, the discussant encouraged to investigate more in detail, so that consistent interpretations can be drawn from the analysis. The second presentation by Kiyoto Kurokawa argues about marketing of the tourism in Koka city, suggesting Ninja for a symbol of the city among several local resources. It could be a common and important issue in Japan, where local towns may have lost their identity through the recent large-scale merger with neighboring towns. However, as discussed, process to select a symbol needs to be constructed based on the relevant literature and more comprehensive surveys to justify the author’s selection of Ninja.

The third presentation by Van-Trung Pham measured productivity of the Vietnamese garment firms, and found heterogeneity in production management by firm size. It has advantage over the existing studies in using census data, while the discussant indicated possibility of measurement errors in outputs. The study would be more meaningful if the productivity distribution is interpreted with good understanding of local industries including management, labor markets and input/output markets. The last presentation by Hiromi Inami critically evaluates the private company’s project for poverty reduction in India. She argues that the Unilever’s project that facilitates small business for poor women is a part of company’s BOP marketing activities, and likely to hurt future welfare of the poor. As suggested by the discussant, constructing analytical framework would help to clarify the problems and possibly strength of the private-driven project and to deliver effective policy recommendations.

Partly because of online format, few discussions were made with the audience unfortunately. However, attendance of audience motivated the presenters and the excellent comments by the discussants will help them to further develop their studies.

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B8: 企画「開発レジリエンスと新型コロナ時代のSDGs」―「誰一人取り残さない」のための人間の安全保障―(日本語)

  • 企画責任者:関谷雄一(東京大学)、野田真里(茨城大学)
  • 司会:関谷雄一(東京大学)
  • 討論者:大門毅(早稲田大学)

発表者

  1. 関谷雄一(東京大学)
    「開発レジリエンスとSDGs:震災復興から新型コロナ禍へ」
  2. 本田利器 (東京大学)
    「危機耐性」から考える社会的レジリエンス」
  3. 大谷順子(大阪大学)
    「女性と健康:コロナ禍のレジリエンス」
  4. 受田宏之(東京大学)
    「コロナ禍とインフォーマリティ、貧困」
  5. 野田真里(茨城大学)
    「新型コロナ時代のSDGsと『取り残される人々』」
  6. 乙部尚子(ジェンダ-、労働、開発コンサルタント)
    「ジェンダ-と労働の世界:コロナ感染危機の影響とレジリエンス」

本セッションは2021年度より新設の「開発レジリエンスとSDGs」研究部会によるラウンドテーブルで、同研究部会のキックオフミーティングでもあった。始めに関谷が企画・研究部会の主旨説明と、人類学の見地から議論されている開発及び新型コロナ禍以降の社会のレジリエンスに関して課題提供をした。

つづいて本田会員から、途上国の災害復興の在り方に見いだされる「危機耐性」における社会的レジリエンスの重要性を示唆する報告がなされた。大谷会員からは、開発レジリエンスに関わる様々な論考を踏まえつつ、新型コロナ禍における女性と子どもの健康にかかわる現状と課題の説明がなされた。受田会員からは、新型コロナ禍と向き合うメキシコ先住民のインフォーマリティ―を前提としたレジリエントな経済活動のありようが紹介された。そして野田会員からは、太平洋島嶼部と日本の離島を事例に、「取り残される人々」の開発レジリエンスに関する報告がなされた。最後に乙部会員からは、グローバルな視座からのコロナ危機下のジェンダーと労働の問題に関して報告がなされた。

各報告後に論点として、開発におけるレジリエンスとSDGs、レジリエンスの定義、「取り残される人々」の課題、「人間の安全保障」などを設定し、討論者に大門会員を迎え、来訪者も交えて議論が行われた。新型コロナ禍により改めてSDGsが途上国の問題ではなく私たち自身の問題であることが再確認され、SDGsを巡る言説の危うさも言及された。また、インフォーマリティ―(許容された違法性)や「取り残された人々」に着目することの重要性も再確認された。

(報告:関谷雄一)

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午後の部 II Afternoon Session II (14:40-16:40) (GMT+9)

C1: 政府系援助(日本語)

  • 座長:豊田利久
  • 討論者:北野尚宏(早稲田大学)、石田洋子(広島大学)

発表者

  1. 汪牧耘(東京大学)
    「途上国における中国の貧困削減経験の共有―対ラオスの援助事業からみる―」
  2. 李嘉悦(双日株式会社)
    「中国対外援助の基本構造と新たな展開」
  3. 藤城一雄(国際協力機構)
    「生活改善アプローチ研修の学びに影響を与える研修員属性の実証研究ー14年分の中米地域生活改善アプローチ研修データのテキストマイニング分析から―」
  4. 坂根徹(法政大学)
    「2004年スマトラ沖大地震・津波後のアチェにおけるインフラ復興と災害遺産の活用―日本の先行研究及び現地の現状分析を中心とした考察―」

全体として、良く練られた報告と討論がなされ、大いに盛り上がったセッションであった。参加者は、20~23名程度であった。

報告1、2は中国の援助政策に関する斬新で優れたものであるという評価を得た。しかし、その内容は対照的であり、討論も大いに盛り上がった。報告1は、中国政府が初めて行っている「村レベルでの貧困削減援助政策プロジェクト」のラオスでの事例を扱い、中国国内での貧困削減政策の経験が活かされているか、課題は何か、をめぐって討論された。報告2は、中国の援助の目的が国益重視(資源獲保、消費市場拡大)からDACを意識したソフト面への変貌が徐々にみえることをデータおよび制度改革によって示した。特に、商務部主体の援助事業に加えて新設された国家国際発展協力署の役割などが議論された。

報告3は、JICA研修を通じて蓄積されたデータを基に、「中南米での生活改善アプローチ」を根付かせ発展させるための研究成果である。インプリケーションとして、①適切な研修員の選抜、②帰国研修員との協働、③継続性、等が重要であると結論した。しかし、選抜方法と属性の関係など、より詳細な項目に関するデータ分析の必要性が指摘された。

報告4は、アチェにおける津波被害からの復興に関して、現地の視察とCiNii文献の検索を通じて行ったものである。報告者の視点は、インフラの公共資金調達の限界とそれを補完する災害遺産の活用である。文献検索の対象を拡大すればより多くのデータが扱える等の指摘があった。

(報告:豊田利久) 

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C2 政策・ガバナンス・開発(日本語)

  • 座長:絵所秀紀(法政大学)、
  • 討論者:笹岡雄一(明治大学)、松本悟(法政大学)

発表者

  1. 勝間靖(国立個億歳医療研究センター/早稲田大学)
    「世界的に公正なCOVID-19ワクチンへのアクセスをめぐる政治経済学― COVAXファシリティとワクチン外交―」
  2. 大塚健司(アジア経済研究所)
    「メコン流域の開発と環境をめぐる非対称な相互依存関係」
  3. 内田善久(東洋大学大学院)、松丸亮(東洋大学)
    「バングラデシュ気象局における日本政府の支援による気象レーダー観測網拡充の変遷と運用維持管理状況に関する考察」
  4. 岡野内正(法政大学)
    「SDGs達成危機において強まるベーシック・インカム政策要求―国連開発計画および世界銀行における政策思考の転換?―」

勝間靖「世界的に公正なCOVID-19ワクチンへのアクセスをめぐる政治経済学―COVAXファシリティとワクチン外交―」報告は、「世界的に公正なCOVID-19ワクチンへのアクセス」を進めるために何をするべきかという問題にアプローチするものであった。低所得国へのワクチン供与の国際協力枠組みとして設置されたCOVAX AMCに十分な資金が集まらず、二国間ワクチン外国が補完的な役割を果たしているが、外交のツールとして用いられないよう「国際公共財」としての位置づけが求められると結論づけている。

大塚健司「メコン流域の開発と環境をめぐる非対称な相互依存関係」報告は、2019年、2020年に開催されたメコン・ダイアログに参加した経験を踏まえた報告であった。メコン流域の開発と環境をめぐる中国と下流国、国家・科開発資本と地域住民との間には、根深い対立・相互不信がある。こうした非対称な相互依存関係の複雑な絡み合いについての共通認識を深めつつ、「越境的共創」に向けた流域ガバナンスを構築することが必要と提唱した。

内田善久「バングラデシュ気象局における日本政府の支援による気象レーダー観測網拡充の変遷及び技術官のモチベーションの向上に関する考察」報告の内容は表題通りであるが、気象レーダー塔施設の新設によって「技術官」の立場とモチベーションが高まり、気象観測能力の底上げに重要な役割を果たしたと結論づけた。

岡野内正「SGDs達成危機において強まるベーシック・インカム政策要求―国連開発計画および世界銀行における政策思考の転換?」報告は、国連諸機関は「労働に基づく所有」原則と抵触する懸念のあるベーシック・インカムを拒否しなくなり、これは経済成長主義からエコロジカル・ヒューマニズムへの開発パラダイムの歴史的転換であると評価した。

本セッションの討論者は、笹岡雄一会委員と松本悟会員であった。なお参加者数は最大で26名であった。

(報告:勝間靖)

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C3: Education/ Conflict (English)

  • 座長(Chair):澤村信英
  • 討論者(Discussant) 吉田和浩(広島大学)、小川啓一(神戸大学)

報告者/Presenters

  1. Yalei Zhai (Shinshu University)
    “Evacuation Decision-making During Armed Conflict: Evidence from Myanmar”
  2. Takao Maruyama (Hiroshima University), Kengo Igei (Metrics Work Consultants Inc.), Seiichi Kurokawa (JICA)
    “ Community-wide collaboration to improve basic reading and math: Empirical Evidence from Madagascar”
  3. Kazuro Shibuya (JICA)
    “Managing Conflicts within School Communities in Ghana: Focusing on Conviviality as a  
     Complementary Analytical Lens of Social Capital”
  4. Nakawa Nagisa (Kanto Gakuin University)
    “An episode leading to a linguistic issue in mathematics education in Zambia: A case study of teaching weight in an early childhood mathematic classroom”

本セッションでは、以下の4件の発表があった。参加者は25~30人、コメンテーターは小川啓一(神戸大学)および吉田和浩(広島大学)の各会員である。いずれの発表も本学会にとって重要な研究テーマであり、独創的な内容であった。

(1)「Evacuation decision-making during armed conflict: evidence from Myanmar」(信州大学 Yalei ZHAI)

ミャンマーを事例として、武力紛争時において世帯が避難を行う際の決定要因を明らかにし、避難行動における貧富の影響等を推定することを目的としている。紛争の影響を受けた6村、214世帯を対象として収集した量的データをもとに、3つの仮説を設定し、検証したものである。サンプリングの方法、指標の適否などについて意見が交わされた。

(2) 「Community-wide collaboration to improve basic reading and math: empirical evidence from Madagascar」(広島大学 丸山隆央ほか)

マダガスカルで行われているJICAプロジェクト(読み書き計算能力向上)の効果を実証的に検証しようとするものである。なぜ効果をあげたのかは、校長や学校運営委員会に対する情報共有の仕方(シンプルなフォーマットで)にあるという結論であった。分析結果の解釈、データ収集の時期(新学年始期とのタイミングなど)について質疑が行われた。

(3) 「Managing conflicts within school communities in Ghana: focusing on conviviality as a complementary analytical lens of social capital」(JICA 澁谷和朗)

ガーナの学校における生徒の規律をめぐる対立を抑制する方法として、「コンビビアリティ(共生的実践?)」が機能しているかを質的データから明らかにするものである。そして、コンビビアリティは、社会関係資本を補完する分析レンズとなり得る可能性を示唆した。社会関係資本とコンビビアリティの関係性やサンプリングに関する議論などが交わされた。

(4) 「An episode leading to a linguistic issue in mathematics education in Zambia: a case study of teaching weight in an early childhood mathematics classroom」(関東学院大学 中和渚)

ザンビアの算数授業における教授法の特徴を言語的な側面から明らかにするものである。言語は数学的理解に影響を与え、民族語と英語における数学的概念の微妙な違いを意識した授業づくりの大切さが示唆された。子どもの学習の様子、教師とのやり取りを丁寧に分析し、コロナ禍においても現地研究者の協力を得て研究が進められていることが印象的であった。

(報告:澤村信英)

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C4: 紛争・平和構築・移民(日本語)

  • 座長:穂坂光彦(日本福祉大学)
  • 討論者:華井和代(東京大学)、斉藤千宏(日本福祉大学)

発表者

  1. 明石留美子(明治学院大学)
    「日本で暮らすロヒンギャ女性の生活課題 ―多文化ソーシャルワークの視点からの考察―」
  2. 齋藤百合子(大東文化大学)
    「人身取引は現代の奴隷制か? ―<他者化>を超える社会開発の可能性―」
  3. 加藤丈太郎(早稲田大学)
    「技能実習制度による発展途上国への技能移転の課題と可能性―ベトナム人技能実習生の声から考える―」
  4. 黒川智恵美(広島大学大学院、日本学術振興会特別研究員)
    「意識的往還型人材の移住と帰還戦略―日本の高学歴スーダン移民の事例―」
  5. 小林かおり(椙山女学園大学)
    「『多文化共生』とポスト『留学生30万人計画』―別府市と福岡市の取組み事例から― 」

発表者5名の過密セッションであったが、いずれも入念に準備されたプレゼンとコメントにより、効率的で内容の濃い討論が行われた。参加者はピーク時で約25名。

明石留美子報告「日本で暮らすロヒンギャ女性の生活課題:多文化ソーシャルワークの視点からの考察」は、ロヒンギャ女性9名の身体・心理・社会に関わる実態調査に基づく欲求分析から、受け入れ側社会の課題を明らかにした。討論者の斎藤千宏会員は、マズローの欲求論を分析枠とすることの妥当性の検証と、ムスリムとしての特性を考慮する必要性を指摘した。

齋藤百合子報告「人身取引は現代奴隷制か? <他者化>を超える社会開発の可能性」は、人身取引議定書の採択(2000年)とそれ以降の言説を分析し、人身取引を「現代奴隷」としてみることが、「犠牲者」としての保護対象を拡大した一方、当事者の「他者化」を招くおそれがあると指摘した。斎藤千宏会員は、タイの人身売買事例が現代奴隷制言説の枠でどう分析できるのかを質問し、加えて座長の穂坂が、「他者の声を聴く」「社会開発」について補足説明を求めた。

加藤丈太郎報告「技能実習制度による発展途上国への技能移転の課題と可能性:ベトナム人技能実習生の声から考える」は、技能実習生、監理団体および送り出し機関からの聞き取りに基づき、日本で習得した「技能」と、帰国後に就業する業種や求められる技能とのミスマッチを明らかにした。そして移転を想定される「技能」の再定義が必要であると述べた。討論者の華井和代会員は、当報告の課題を「技能実習制度」全体の視野の中で位置づけ、「ミスマッチ」が制度自体の問題か制度運用の問題かを整理すべきこと、また「再定義」以前に現「定義」の分析が求められると指摘した。さらに明石会員は、実習生が被る人権侵害問題への言及を求めた。

黒川智恵美報告「意識的往還型人材の移住と帰還戦略:日本の高学歴スーダン移民の事例」は、頭脳流出・頭脳還元に関する独自の類型化を基に、スーダン出身の日本滞在者12名のオンラインインタビューから、母国貢献意識の生成を明らかにする試みであった。華井会員は、仮説と検証の構造を明瞭にする助言とともに、今後の展開として、「ABEイニシアティブ」などアフリカ青年向け往還型人材育成プログラムを枠組みのひとつに用いるヒントを与えた。

小林かおり報告「『多文化共生』とポスト『留学生 30 万人計画』:別府市と福岡市の取組み事例から」は、地域の「高度人材」として期待される留学生が、九州の二都市で実際にどのように受け入れられ、かれらのキャリア形成がどうなされているかを考察するものであった。華井会員は、留学生を労働力としてのみ期待する地域や、働き手としてのキャリアのみに注目する政策を越えて、全人的に受け入れられる「地域共生社会」の研究が社会や行政にフィードバックされる期待を述べた。

いずれの報告も、テーマ、アプローチ、データ等に新しさがみられ、扱われる社会課題の解決への道筋を感じさせるものであった。 

(報告:穂坂光彦)

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C5: 企画「アフリカ都市部における技能と雇用」(日本語)

  • 企画責任者:近藤菜月(名古屋大学)
  • 司会: 山田肖子(名古屋大学)
  • 討論者: 高橋基樹(京都大学)、町北朋洋(京都大学)

発表者

  1. 近藤菜月(名古屋大学)
    「<新しい能力>論への問い―アフリカでの調査から見えてくるもの―」
  2. 山崎裕次郎(名古屋大学)
    「ウガンダ都市零細金属加工業における学びの空間―正統的周辺参加の正統性とは何かー」
  3. 松原加奈(京都大学)
    「エチオピア都市部の革靴産業における民族間賃金格差―労働者の出身地と「再民族化現象」に着目して―」
  4. 水谷文(名古屋大学)
    「賃金と昇給の決定因子―エチオピア産業パークの若手労働者を対象として―」

本企画の報告者らは、アフリカをフィールドとして、労働者の属性及び能力と賃金の関係、具体的実践について、様々なアプローチで研究、考察を行ってきた。本セッションでは、アフリカ都市部における労働機会上の差異が生まれるメカニズムを、個々人の労働主体(の属性及び能力)と文脈/状況との相互作用に着目した。

近藤報告は、「不確実性」をキーワードに、<新しい能力>論と、アフリカの行為者の態度とを接合する理論的考察を行った。山崎報告はウガンダ都市インフォーマル金属加工の作業場における見習いの実践に焦点を当て、親方と見習いの関係について分析した。松原報告はエチオピア都市部の革靴産業における民族間賃金格差に注目し、民族的な扶助ネットワークの有無について論じた。水谷報告はエチオピア産業パークの企業と労働者を対象に、入社時と入社後の賃金決定因子についての分析結果を提示した。

高橋先生は、ご自分のインフォーマルセクターのご研究経験に基づき、主に近藤・山崎報告に対して、現地社会・共同体の性質に照らした質問をいただいた。町北先生からは、各報告へのコメントに加え、企画全体に対し、「急速な成長と目まぐるしい変化」を扱う上で、アジアの労働・組織史の研究蓄積から学ぶことの重要性を示唆して頂いた。

(報告:近藤菜月)

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C6: 経済開発(日本語)

  • 座長:梅村哲夫(名古屋大学)
  • 討論者:島田剛(明治大学)、栗田匡相(関西学院大学)、新海尚子(津田塾大学)

発表者

  1. 田村哲也(立命館大学)・大野敦(立命館大学)
    「AfT、不安定性、規範―GVCにおけるWTO体制―」
  2. 松本愛果(京都大学)・高橋基樹(京都大学)
    「ケニア・ナイロビにおけるインフォーマル経済活動へのCOVID-19の影響―教育の水準と種別に着目して―」
  3. 島根良枝(龍谷大学)
    「労働移動の経済社会的要因と教育投資への影響―インド全国標本調査を用いた実証分析―」

第一報告は、貿易のための援助(Aid for Trade, AfT)について、多くの研究で途上国の貿易コストを下げることが証明されている反面、途上国の貿易開放度の上昇と国際分業への編入によって、国内経済が不安定になり不遇な人々がより脆弱なる、これはAftの理念に反すると論じている。本報告は、ロールズの国際正義からAfTを論じたものであるが、結論としてAfTはいわゆる中所得国に対して相対的に集中しかつ効果的であったが、サブサハラ諸国などより援助を必要としている国に対しては、国内経済を不安定化させるなど負の影響についても考える必要がある、という新たな視点を提供したものであった。

第二報告は、ケニアの首都ナイロビにおいて、“COVID-19・移動制限によるインフォーマルな事業の収入変動や経営行動の変化に対して、事業主の最終学歴と教育種別(普通教育か職業教育かの別)がどのように影響しているのか”に関する分析である。結論としては、COVID-19によって引き起こされた経済ショックに対抗しうる抵抗力や回復力は、職業教育を受けた人々の方が基礎教育だけを受けた人々より高いことが実証分析で確認された。その理由として職業教育では、経営能力を修得しているからだという説明がなされた。

第三報告は、インドにおける人の移動に関して、①国内を移動するか、県内、州内、州外のどこに移動するかという選択に関して、世帯や移動する世帯構成員個人のどの経済社会的属性が影響しているのか、②労働移動によって子供の就学状況に影響が生じているかを検証したものである。結論としては、“より厳しい環境にある人々が労働移動していること、労働移動が子供の就学に中等教育の段階でマイナスになる一方、高等教育を受ける機会拡大につながっていること”が示された。

本セッションは経済開発となっているものの、国際貿易、COVID-19と教育・経済活動、労働移動という全く異なった研究発表となったが、それぞれ興味深く、また新たな視点を提供してもらった。また討論者による建設的なコメントをいただき、参加者の理解も深まったと思います。なお、今回キャンセルされた報告も含め、大会後も討論者の方々がコメントを交換するなど、極めて有意義なセッションであったと感じ、また報告者、討論者を含め、サポートの関係者に対して深くお礼を申し上げたいと思います。

(報告:梅村哲夫)

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C7: 企画「JASIDブックトーク」

  • 座長:佐藤寛(アジア経済研究所)・道中真紀(日本評論社)

1.「アフリカにおけるジェンダーと開発 女性の収入向上支援と世帯内意思決定」(甲斐田きよみ著 春風社 2000年)

  • 報告者:甲斐田きよみ(文京学院大学)・韓智仁(春風社)
  • 討論者:和田一哉(金沢大学)

2.「人類学者たちのフィールド教育――自己変容に向けた学びのデザイン」(箕曲在弘・二文字屋脩・小西公大編、ナカニシヤ出版2021年)

  • 報告者:箕曲在弘(東洋大学)
  • 討論者:小國和子(日本福祉大学)

3.「パプアニューギニアの「場所」の物語――動態地誌とフィールドワーク」(熊谷圭知、九州大学出版会2019年)

  • 報告者:熊谷圭知(お茶の水女子大学)
  • 討論者:小國和子(日本福祉大学)

4.「国際教育開発への挑戦――これからの教育・社会・理論」 (荻巣崇世・橋本憲幸・川口純/編著、東信堂2021年)

  • 報告者:荻巣崇世(上智大学)・橋本憲幸(山梨県立大学)・川口純(筑波大学)
  • 討論者:北村友人(東京大学)

5.「東日本大震災の教訓――復興におけるネットワークとガバナンスの意義」(D. P .アルドリッチ(著) 飯塚明子/石田祐(訳)、ミネルヴァ書房2021年)

  • 報告者:飯塚明子(宇都宮大学)
  • 討論者:斎藤文彦(龍谷大学)

6.「国際協力と想像力――イメージと「現場」のせめぎ合い」(松本悟・佐藤仁/編著、日本評論社2021年)

  • 報告者:松本悟(法政大学)
  • 討論者:山形辰史(立命館アジア太平洋大学)

JASIDブックトークは、会員が自著を担当編集者と共に紹介するセッションです。書籍の内容紹介に留まらず、企画から刊行、販売までの過程を含めて「出版」をトータルに語り、これから本を読む人/書く人の参考にしていただくことを目的に、2019年春季大会より継続的に行われています。今回は登壇者を含め最大46名にご参加いただき、充実した報告と討論が行われました。

(報告:佐藤寛)

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共通論題セッション 

  • 企画責任者:林薫(文教大学)
  • 司会:海津ゆりえ(文教大学)
  • 討論モデレーター:渡邊 暁子(文教大学)
  • 報告者:加賀大資(認定特定非営利活動法人カタリバ)
  • 報告者:Ashutosh Nema (Bachpan Bachao Andolan, India: インド・子ども時代を救え運動)
  • 討論者:勝間靖(早稲田大学)
  • モデレーター: 渡邉暁子(文教大学)

大会の全体のテーマ「ともに生きる:課題解決のために知識と経験を共有する Live together: Sharing Knowledge and Experience for better solution」の趣旨に沿い、新型コロナ感染症拡大以前から、困難な状況に置かれた子どもたちを対象として活動を行っている日本とインドの市民団体のパネリストに、特にコロナ禍における子どもへの支援活動について経験を共有することをセッションの目的とした。

第1報告はNPOカタリバの足立区拠点で活動する加賀大資氏にお話しいただいた。カタリバは2001年から「いかなる環境に生まれ育った子どもたちも、未来を自らつくりだす意欲と創造性を育める社会を目指し」活動を続けている。高校への出張授業プログラムから始まり、2011年の東日本大震災以降は子どもたちに学びの場と居場所を提供してきた。

報告では子どもの貧困の連鎖が文化資本、社会関係資本、経済資本の欠如と連鎖で発生するメカニズムで生じているとし、この連鎖を断つために行っている「安全基地」づくりの活動についてまず紹介されたあと、コロナ禍でこれまでのつながりを維持することが困難になった状況を踏まえて、給食から弁当への変更などの食事提供手段の変更をしたり、コロナ禍に伴って困窮した家庭にPCとWi-Fiを無償貸与し学習支援を行う「キッカケプログラム」を開始したりするなど、子どもと親の双方に同時に「伴走支援」を行うことなどの取り組みについて報告がなされた。

第2報告はインドのNGO、Bachpan Bachao Andolan(BBA)で活動されているAshutosh Nema氏にインドのCovid-19の状況についてお話しいただいた。BBAは1980年から子どもたちが児童労働の搾取から解放され、質のよい教育を受けられる社会づくりをめざして活動おり、ニューデリーのほか、設置して、デリー、ラジャスターン州、ウッタル・プラデシュ州、ビハール州などで活動している。

設立者であるカイラシュ氏は、2014年にノーベル平和賞を受賞した。Neema氏はまずインドにおける感染の拡大により貧困層の状況が急速に悪化しており、その結果(親の)失業、貧困、児童労働の増加というスパイラルに陥り、また学校の閉鎖による教育格差の拡大、子どもの感染などが深刻化している。これらの困難な状況に対して、BBAなどのNGOと政府関係機関が協力して対処している状況について報告した。

討論者の勝間会員からは、①重症化しにくく危機感をあまり持たない若者がウイルスの拡散者になりうることから、どのようにすればマスクの着用、三密の回避などにむけた若者の行動変容をもたらすか、②学校における対面授業からオンライン授業への変換に際して、いかにデジタル・ディバイドを埋めていくか、③コロナに関連した知的所有権の公開に関して途上国と英国やドイツなどの先進国との利害が対立しているが、どのようにして子どもの権利の主張を知的所有権の公開に結び付けて行くか、などの課題が提起された。

つづくフロアディスカッションでは、コロナ禍によって最も大きな影響を受けているのは貧困層と子どもであり、どのような対応策が可能かなどについて活発な議論が行われた。

(報告:林薫)

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ポスターセッション

  1. 家族の食事と個人の栄養摂取ータンザニア3地域の家計食事日誌と個人インタビューからー/阪本公美子・大森玲子・津田勝憲(宇都宮大学)
  2. ミャンマー少数民族紛争とクーデター -日本企業による平和構築の展望ー/丸山隼人(早稲田大学)
  3. 森林・自然資源管理プロジェクトで適用する活動アプローチの方法論化ー研究による効果的な現場フィード
    バックに向けてー
    /久保英之(地球環境戦略研究機関)・山ノ下麻木乃(地球環境戦略研究機関)
  4. コロナ禍における国内のモスクの感染症対策と支援活動/田村 まり(東京大学)・小谷仁務(東京大学)・子島進(東洋大学)
  5. 明治期の唱歌による音楽教育の経験が開発途上国の音楽教育に与える示唆ー情操教育の劣後と音楽教 
    育の継続性・浸透性の観点からー
    /鈴木智良(JICA緒方研究所)
  6. 「アラブの春」とは何だったのか?ー革命10年後のチュニジアからー/大門(佐藤)毅(早稲田大学)
  7. サヤインゲンの契約農家における農家の収益と参加に関する考察ーケニア・ナクル県の事例からー/久保田ちひろ(京都大学)
  8. 重度障害者の生存の難しさーネパール地方都市とその周辺地域から見えてきたことー/白井恵花(聖心女子大学大学院2021年3月卒業)
  9. COVID-19禍におけるバングラデシュの教育現場の対応と課題ー山岳少数民族地域を事例にー/ 田中志歩(広島大学)
  10. Community and Parental Participation in Ugandan Primary Education: Cases of Bushenyi and Wakiso Districts/ Takumi Kobayashi (Kobe University)
  11. Descriptive Modelling of Intergenerational Persistence in Education and the Influence of Family Lineage Descent Systems in The Democratic Republic of Congo/ Bernard Yungu Loleka (Kobe University)
  12. Ensuring Equitable Access to Early Childhood Education in Lao PDR before and during the COVID-19 Pandemic/ Masaya Noguchi (Kobe University)
  13. School to work transition in rural Madagascar: exploring parents’ influence on children’s aspirations/ Fanantenana Rianasoa Andriariniaina (Osaka University)
  14. Exploring the place of global citizenship education in the local context of Madagascar: from the views and practices of rural school stakeholders/ Andriamanasina Rojoniaina Rasolonaivo (Osaka University)
  15. Smallholder Households Characteristics and Offspring’s Basic Education in Mozambiq/ Nelson Manhisse (Kobe University)
  16. Local Autonomy and the Challenge of Industrial-Firm Upgrading in Post-Reform Indonesia: A Study on the Impact of the 2009 Local Tax Law/ Bangkit A. Wiryawan (Nagoya University)
  17. Home Learning Environment for Early Childhood Development in Banglades/ Kexin Wang(Kobe University)
  18. A review on Vulnerabilities Posed by Tsunami in Coastal Areas of Pakistan/ Babar Ali (Toyo University) and Ryo Matsumaru (Toyo University)

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プレセッション 6月11日(金曜)18:30-20:00

「若手実務者、研究者のための特別企画:COVID-19下で世界とどのようにつながっていくか」

  • 司会:林 薫(文教大学)
  • 報告・討論者:池田 直人(難民を助ける会)
  • 報告・討論者:高柳 妙子(早稲田大学日本学術振興会博士特別研究員RPD)

海外に行くことができないこの時期に、国際開発学に関わる事業運営や研究をどのように行うか、また研究をまとめていくのかについて、知識や経験を交換、共有することを目的とした。2人の話題提供者から、それぞれの立場での実務、研究上の経験やアイデアを伝え、それをめぐって参加者とともに意見交換・交流を行う方式で行った。

高柳妙子会員は、「アフリカ・アジア地域:Covid-19下におけるケニア・マサイの村での調査およびタイ先住民を対象とした調査研究」というテーマで、2020年(Covid-19発生後)から2021年6月時点まで、どのように調査研究を進めているかについて話題提供をした。

具体的には、過去に収集した教育と開発に関するインタビューデータの公衆衛生の視点からの再分析(英文雑誌に査読付き論文を投稿)やケニア・マサイの村で現地アシスタントによる補足調査などである。フィールド調査に際しては、PCR検査受診、陰性証明書持参、感染対策のためのマスク、アルコール消毒液の持参を徹底して、データ収集を実施するよう依頼した。

現在、タイ北部における幼稚園調査を準備中で、チェンマイ大学の共同研究者たちと、先行研究のレビュー、研究枠組みの構築、インタビュー質問項目の作成を行い、大学内の倫理委員会の承認を受けるべく準備中であることや、オンラインで研究打合せを頻繁に行っている、などの取り組みを紹介した。

池田直人会員は「パキスタンにおけるインクルーシブ教育事業とJICA『障害と開発』関連事業」というテーマで報告を行った。パキスタンにおける国際開発事業では、新型コロナウイルス流行前から、遠隔業務を強いられることがあった。

日本人が現地に行けない、現地のカウンタパートが日本人のいるプロジェクト事務所に来てもらえない、もしくは、彼らに集まってもらえる機会が作れない、のような様々な制限がある中、最も力を入れていたのはスタッフ育成だった。

それと同時に、現場に入れないことで時間に余裕ができたため、プロジェクトとは関連性の低いと考えてきたパキスタンの政治・経済・社会・文化的な背景についてより深く調べるようになった。ピンチをチャンスに変えられた事例として、障害者社会参加促進を目的とした事業であったが、政府の優先課題となっていた環境や気候変動に関連する活動を行い、政府とのさらなる関係改善に成功したことを紹介した。

ディスカッションではジェンダー格差に対する配慮はどのように行ったか、チームワーク強化の具体的な方法はどのようなものであったか、新しい人材の遠隔での育成方法はどのように行われたかなど、それぞれの取り組みの詳しい内容や今後の方向性に関する議論が活発に行われた。

(報告:林薫、池田直人、高柳妙子)




第32回全国大会(金沢大学)のお知らせ

日頃より大会の運営にご協力いただくとともに、大会での研究発表への積極的なご参加を通じ国際開発に寄与していただいていることを感謝いたします。

猛暑の最中ですが、第32回全国大会の準備を進めております。大会の最新情報は国際開発学会・大会公式ウェブサイトやメーリングリストを通してご連絡いたします。

日時・場所等は以下の通りです。

  1. 開催日:2021 年 11 月 20 日(土曜),21 日(日曜)
  2. 場所:金沢大学 角間キャンパス 人間社会第2講義棟(金沢市角間町)
  3. プレナリーセッションテーマ:「おんぼらーっとしまっし。 石川仕立ての創成と共生、そして開発」

さまざまな分野の方々に登壇いただき、石川という限定的な地域(主に能登)を材料にして「新たな価値観から人の幸せ、そして今後の社会のあり方」というテーマについて議論して頂こうと考えております。

既報の通り、8月初旬より報告申し込みの受付を開始しております。奮ってご応募頂ければ幸いです。現時点では対面での開催を予定しておりますが、新型コロナウイルスの動向次第では全面的にオンライン開催へと変更する可能性もございます。ご了解いただければ幸いです。皆様にお目にかかることを楽しみにしております。

第32回全国大会実行委員長・和田一哉(金沢大学)




大会組織委員会からのお知らせ(2021年8月)

大会組織委員会では、2021年6月12日に開催された第22回春季大会の準備及び実施において、文教大学の林薫委員長を中心とする実行委員会の支援を行った。

また、本年11月20~21日に開催を予定している第32回全国大会についても、和田一哉実行委員長を中心に金沢大学での準備を支援している。第22回春季大会は、対面・オンラインのハイブリッド実施を目指したが、新型コロナウィルスの感染状況を受けて、全面オンラインでの実施となった。金沢大会は、ハイブリッドを前提に準備を進めている。

また、2022年の第23回春季大会は、福岡県立大学を中心に実施されることが理事会で承認されている。比較的若手で構成される実行委員会で地域ならではのテーマを掲げた大会が続くことになり、学会の活性化に繋がれば幸いである。

大会の実施だけでなく、学会活動の主なイベントである大会が学会員同士および学会外との連携、相互の学び合いの機会となるよう、大会組織委員会としても運営手法や内容面でのインプットをしたいと考えている。

大会組織委員長・山田肖子(名古屋大学)