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NL34巻3号 [2023.08]

第3回「国際開発論文コンテスト」選考結果(2023年8月)

人材育成委員会

国際開発に関心を持つ学部生の人材育成を目的とする「第3回国際開発論文コンテスト」について報告致します。

  1. 募集期間:
    2023年3月1日~24日(前年秋の学会誌及び学会メーリングリストで広報)
  2. 応募状況:
    応募論文13編(全て和文)。2023年3月時点の所属大学は、共立女子大学、関西学院大学、釧路公立大学、法政大学。
  3. 審査結果:
    それぞれの応募論文を複数の委員で審査した結果、以下の通りとなった。

【最優秀論文賞】

該当者なし

【優秀論文賞】

4編(順不同)

「カンボジア農家の作物栽培と食料消費の実態―CSES2014を用いた計量経済分析―」

中西勇太(釧路公立大学)

カンボジアの世帯調査ミクロデータを用い、カンボジア農家の生産、消費の両側面に配慮した同時方程式モデルに基づく分析を行っている。

学部学生でミクロデータを用いた分析を行っている点や消費と生産の同時性に配慮した分析手法を採用するなど、技術的な点で優れた論文といえる。全体として文章表現が的確かつ明瞭で、論理構成も一貫性がとれている点が高く評価できる。

研究の目的と意義が明確に示されており、それぞれの分析結果を受けた要因をその都度考察し、分析の内容や結果そのものにおいて不備や不十分がある点を筆者自身が理解・認識した上で、それらについても適所に言及しているところも、論述の丁寧さが伺えた。

本研究のオリジナリティである分析手法を提示する決定関数の定式化の記述のところでも、詳細に読み手に分かり易く説明されていた。

「マダガスカル農民のコメ生産性に男女のネットワークが与える影響~性格特性に着目した2段階推計を用いて~」

中本絢子、中泉澄美、棚橋愛梨咲(関西学院大学)

本論文は、マダガスカル農民を事例に、個人の男女という性格特性や認知能力・非認知能力の違いがソーシャルネットワークを介して農業生産性に与える影響を検証し、農業のソーシャルネットワークの大きさが生産性向上に影響を与えることを明らかにしている。

先行研究の指摘を踏まえて現地調査を設計し、独自の調査データを用いて2段階推計を行っており、外向性と神経性に関しては男女で正反対の作用をしているという興味深い結果も得られている。

これらの点について多角評価された一方で、章見出しなど執筆要項のルールおよび要件を満たしていない体裁であるために残念ながら減点対象となってしまった。その他、本研究の課題を最後に示すと、論文全体の流れが引き締まって説得力が増す論文になる、などのコメントが審査委員からなされた。

「ソ連崩壊後のロシアの開発協力―英文学術誌の研究サーベイをもとに―」

渡辺彩(法政大学)

ソ連邦崩壊後のロシアにおける開発協力の変遷を英文誌のサーベイ、並びにロシアの行政文書を元に読み解き、4つの時代に区分しうることを明らかにしている。ロシアの行政文書についての比較分析を行ったり、レビューから浮かび上がった今後の研究課題を示したりと、独自の議論を展開しているところも高く評価された。

ソ連崩壊後のロシアに着目する意義についても丁寧な説明を行っており、読者との共通理解を築くことにも成功している。

調査方法(レビューする文献の抽出方法)を明示することで、自身の調査の射程と限界について自覚的であろうとする姿勢も窺えた。文章表現も明確で学部生のサーベイ論文としては良い評価を得られた一方で、審査委員からは文献レビューの範囲を狭く絞りすぎているという指摘もなされた。

「子どもの認知・非認知能力を促すピア効果の影響~マダガスカル農村で行った介入実証実験をもとに~」

任百香、石橋由唯、塚本真世(関西学院大学)

マダガスカル農村の教育において、短期間の物的介入が子どもの成績にどの程度影響するのかという実験を行い、その分析・考察を通してマダガスカルの学校現場及び学習環境の改善に向けた政策提言に繋げた論文である。

本研究のオリジナリティは、10歳から12歳の子ども計296人もの対象者に3週間という期間をかけて独自の介入実験(使用する数学と読解問題の教材を自分たちで作成して実験を設計)を行ったところにある。

先行研究の体系的なレビューや独自の現地調査など、学部生としては非常に高い水準の調査が行われていることが評価された。

その一方で、介入実験の説明や実験結果の記載など、論文の根幹に係わる部分が曖昧な記載になっており、研究論文としての完成度については改善の余地が指摘された。

表彰等

春季大会での表彰は実施せず、受賞者には賞状と記念品を郵送し、規程に基づく研究奨励金を授与した。受賞者の声については、次号のニュースレターで掲載する。

また、受賞論文の要旨を今年秋に発行する学会誌で公表する予定である。なお、人材育成というコンテストの目的に鑑み、応募者全員には審査員からの講評を伝えている。

人材育成委員会
委員長:松本悟(法政大学)

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